特許第6640034号(P6640034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640034
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】有機EL表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20200127BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20200127BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20200127BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20200127BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20200127BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20200127BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   H05B33/12 B
   H05B33/22 Z
   H01L27/32
   G09F9/30 365
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-120448(P2016-120448)
(22)【出願日】2016年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-224547(P2017-224547A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2018年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 行生
(72)【発明者】
【氏名】小亀 平章
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−170493(JP,A)
【文献】 国際公開第03/061346(WO,A1)
【文献】 特開2015−022914(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/136670(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL層を含む画素を複数含む表示領域と、該表示領域を囲む外部領域とが形成された基板と、
前記画素を分離するリブ層と、
前記基板上の前記外部領域の一部に形成される隔壁と、
前記表示領域の少なくとも一部を覆い、前記隔壁の表示領域側に形成される有機材料を含む有機層とを備え、
前記隔壁の表示領域側の壁面が、前記基板から遠ざかるにつれ、前記表示領域側へ傾斜する傾斜面を含
前記リブ層と前記隔壁は、接し、同一材料で形成される、
有機EL表示装置。
【請求項2】
前記画素が、前記有機EL層の前記基板とは反対側に形成される第1電極を含み、
前記基板上で、前記第1電極の前記基板とは反対側に形成され、無機材料で構成される第1無機膜の前記基板とは反対側に、前記有機層が形成されている、請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記有機層と前記隔壁とを一体的に覆う、無機材料で構成される第2無機膜が形成されている、請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記隔壁が前記表示領域の全周を囲む、請求項1から3のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記表示領域の全周を囲む隔壁が複数形成されている、請求項4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
有機EL層を含む画素を複数含む表示領域および該表示領域を囲む外部領域が形成された基板の、前記表示領域および前記外部領域に前記画素を分離するリブ層を、前記外部領域に隔壁を形成すること、および、
前記隔壁の表示領域側に有機材料を含む有機層の形成用材料を滴下することを含み、
前記隔壁の表示領域側の壁面に、前記基板から遠ざかるにつれ、前記表示領域側へ傾斜する傾斜面を形成
前記リブ層と前記隔壁は、接し、同一材料で形成される、
有機EL表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記有機層の形成用材料を滴下する前に、前記基板上に無機材料で構成される第1無機膜を形成することを含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記有機層の形成用材料を滴下して有機層を形成した後、該有機層と前記隔壁とを一体的に覆う、無機材料で構成される第2無機膜を形成することを含む、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記基板上に感光性樹脂組成物で隔壁形成用膜を形成し、該隔壁形成用膜上に隔壁形成部に対応する透光部を有するフォトマスクを配置し、前記表示領域の上方に光源を配置し、露光して現像することにより前記隔壁を形成する、請求項6から8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記リブ層と前記隔壁は樹脂材料で形成される、請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項11】
前記リブ層と前記隔壁は一体形成される、請求項10に記載の有機EL表示装置。
【請求項12】
前記リブ層と前記隔壁は樹脂材料で形成される、請求項6に記載の製造方法。
【請求項13】
前記リブ層と前記隔壁は一体形成される、請求項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に開示されるように、有機EL表示装置において、有機EL層を水分等から保護するため、有機EL層を含む画素を複数含む表示領域を封止する方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−176717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記封止方法としては、例えば、無機材料膜と有機材料層とを組み合わせる方法が用いられている。しかし、封止領域端部から有機EL層に水分が侵入しやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑み、有機EL層への水分の侵入を確実に防止可能な有機EL表示装置およびその製造方法を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の有機EL表示装置は、有機EL層を含む画素を複数含む表示領域と、この表示領域を囲む外部領域とが形成された基板と、前記基板上の前記外部領域の一部に形成される隔壁と、前記表示領域の少なくとも一部を覆い、前記隔壁の表示領域側に形成される有機材料を含む有機層とを備える。上記隔壁の表示領域側の壁面は、上記基板から遠ざかるにつれ、上記表示領域側へ傾斜する傾斜面を含む。
【0007】
1つの実施形態においては、上記画素は、上記有機EL層の上記基板とは反対側に形成される第1電極を含み、上記有機EL表示装置には、上記基板上で、前記第1電極の前記基板とは反対側に形成され、無機材料で構成される第1無機膜の前記基板とは反対側に、前記有機層が形成されている。
【0008】
1つの実施形態においては、上記有機EL表示装置には、上記有機層と前記隔壁とを一体的に覆う、無機材料で構成される第2無機膜が形成されている。
【0009】
1つの実施形態においては、上記隔壁は上記表示領域の全周を囲む。
【0010】
1つの実施形態においては、上記表示領域の全周を囲む隔壁は複数形成されている。
【0011】
本発明の別の局面によれば、有機EL表示装置の製造方法が提供される。この有機EL表示装置の製造方法は、有機EL層を含む画素を複数含む表示領域と、この表示領域を囲む外部領域とが形成された基板の前記外部領域に、隔壁を形成すること、および、前記隔壁の表示領域側に有機材料を含む有機層の形成用材料を滴下することを含み、前記隔壁の表示領域側の壁面に、前記基板から遠ざかるにつれ、前記表示領域側へ傾斜する傾斜面を形成する。
【0012】
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記有機層の形成用材料を滴下する前に、上記基板上に無機材料で構成される第1無機膜を形成することを含む。
【0013】
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記有機層の形成用材料を滴下して有機層を形成した後、この有機層と上記隔壁とを一体的に覆う、無機材料で構成される第2無機膜を形成することを含む。
【0014】
1つの実施形態においては、上記基板上に感光性樹脂組成物で隔壁形成用膜を形成し、この隔壁形成用膜上に隔壁形成部に対応する透光部を有するフォトマスクを配置し、上記表示領域の上方に光源を配置し、露光して現像することにより上記隔壁を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の1つの実施形態における有機EL表示装置の概略を示す図である。
図2】有機ELパネルの断面の一部を示す図である。
図3A】本発明の1つの実施形態における有機EL表示装置の製造方法について説明するための図である。
図3B】本発明の1つの実施形態における有機EL表示装置の製造方法について説明するための図である。
図3C】本発明の1つの実施形態における有機EL表示装置の製造方法について説明するための図である。
図3D】本発明の1つの実施形態における有機EL表示装置の製造方法について説明するための図である。
図3E】本発明の1つの実施形態における有機EL表示装置の製造方法について説明するための図である。
図4図3Bに示すフォトマスクを上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の1つの実施形態における有機EL表示装置1の概略図である。有機EL表示装置1は、上フレーム2と、下フレーム3と、上フレーム2と下フレーム3とで挟まれるように固定された有機ELパネル10とから構成されている。なお、図示例に限られず、例えば、上フレーム2と下フレーム3がない有機ELパネル10単体で有機EL表示装置1を構成してもよい。
【0017】
図2は、有機ELパネル10の断面の一部を示す図である。図2に示すように、基板100上には、画素を駆動するためのTFT等(スイッチングトランジスタおよびドライバトランジスタ等)が形成されたTFT層401が設けられ、TFT層401上には層間絶縁膜402が形成されている。基板100には、表示領域101が形成されている。また、基板100には、表示領域101より外側に、表示領域101を囲むように外部領域501が形成さてれている。後述するカソード電極407に接続される配線層403は、外部領域501の一部に形成されている。
【0018】
層間絶縁膜402および配線層403上の所定の領域には、アノード電極404が形成されている。アノード電極404は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の透過性導電材料で形成される。
【0019】
上記構造上には画素を分離するリブ層405が形成され、アノード電極404およびリブ層405上に有機EL層406が形成されている。ここで、アノード電極404と有機EL層406とが接触する領域が発光領域となり、リブ層405は発光領域の外縁を規定する。
【0020】
有機EL層406上には、カソード電極407が形成されている。カソード電極407は、例えば、MgとAgの極薄合金やIZO等の透過性導電材料で形成される。なお、有機EL層406は、例えば、アノード電極404側から順にホール輸送層、発光層、電子輸送層を積層して形成されるが、周知であるので詳細な説明については省略する。
【0021】
外部領域501の一部には、表示領域101を取り囲むように、隔壁200が形成されている。図示例では、リブ層405上に隔壁200が形成されている。隔壁200は、その内側面(壁面)が外側に行くにしたがって下方に傾斜する傾斜面を含んでいる。基板側から見ると、内側面は、基板100から遠ざかるにつれ、内側へ傾斜する傾斜面を含んでいる。
【0022】
カソード電極407上には、無機材料で構成される第1封止膜408が形成され、第1封止膜408上には、有機材料を含む有機層(平坦化層)409を介して、無機材料で構成される第2封止膜410が形成されている。第1封止膜408は、表示領域101から連続して隔壁200も覆うように形成されている。有機層(平坦化層)409は、隔壁200の内側に形成されている。第2封止膜410は、表示領域101から連続して隔壁200も覆うように形成されている。なお、有機層(平坦化層)409は、表示領域101および/または外部領域501において、連続的に形成されていない領域があってもよい(図示せず)。
【0023】
以下、本発明の1つの実施形態における有機EL表示装置およびその製造方法について、図3Aから図3Eを用いて説明する。ここで、一般的な有機EL表示装置自体の製造方法は周知であるため説明を省略し、下記においては、主に、本実施形態の有機EL表示装置の封止構造および有機層の形成方法について説明する。
【0024】
図3Aに示すように、基板100上に形成されたTFT層401上に、層間絶縁膜402を介して、アノード電極404およびリブ層405をこの順に形成する。表示領域101の外側では、配線層403上にアノード電極404を形成する。
【0025】
次に、図3Bに示すように、基板100上に、感光性樹脂組成物(例えば、ネガ型のフォトレジスト)で隔壁形成用膜210を形成し、続いて、隔壁形成用膜210の上に、所定のマスクパターンを有するフォトマスク300を配置する。図4に、フォトマスク300を上から見た図を示す。フォトマスク300には、隔壁形成部に対応する透光部310が形成されている。図示例では、透光部310は、所定の幅を有し、表示領域を囲むライン状に形成されている。なお、フォトマスク300は、例えば、石英板のような光透過性を有する基材に、所望のパターンの光遮蔽部を形成することにより得ることができる。
【0026】
続いて、フォトマスク300を介して隔壁形成用膜210に対して露光し、任意の適切な方法により現像を行い、図3Cに示すように、内側面が外側に行くにしたがって下方に傾斜する傾斜面を含む隔壁200を形成する。具体的には、図4に示すように、表示領域中央部の上方に光源320を設置して、表示領域から外側に向かって光を照射することにより、側面が外側に行くにしたがって下方に傾斜する傾斜面を含む隔壁200を形成することができる。光源320の設置場所等の露光条件を調整することで、所望の形状(例えば、側面の傾斜具合)を有する隔壁200が形成され得る。なお、図示例では、隔壁200を1つ設けているが、複数設けてもよい。また、図示例では、リブ層405上に隔壁200を形成しているが、例えば、リブ層405に凹部または凸部を形成することで上述のような隔壁を形成してもよい(図示せず)。
【0027】
次に、図3Dに示すように、有機EL層406およびカソード電極407をこの順に形成し、続いて、第1封止膜408(例えば、SiN等の無機膜)を形成する。第1封止膜408は、有機EL層406への水分の侵入を防止するため、表示領域から連続して隔壁200も覆うように形成される。
【0028】
次に、図3Eに示すように、隔壁200の内側に、所定の厚み(例えば、10μm程度)の有機層(平坦化層)が得られるように、有機層の形成用材料を任意の適切な方式により滴下し、塗膜409aを形成する。内側面が外側に行くにしたがって下方に傾斜する傾斜面を含む隔壁200が形成されているので、滴下された有機層の形成用材料(塗膜409a)が隔壁200を越えて外側に流れ出すのを効果的に抑制することができる。具体的には、滴下量が過多であっても、まずは隔壁200に沿って塗膜が広がるので、膨大な有機層の形成用材料を滴下しない限りは隔壁200を超えて外側に流れ出すことはない。
【0029】
上記有機層の形成用材料は、代表的には、硬化性樹脂組成物を含む。滴下時の有機層の形成用材料の粘度は、例えば、均一な有機層(塗膜)を形成する観点から、低く設定される。例えば、E型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定した粘度で、1cps〜100cpsに設定されることが好ましく、さらに好ましくは5cps〜25cps、特に好ましくは10cps前後である。また、滴下面(第1封止膜408)に対する有機層の形成用材料の接触角は、例えば、均一な有機層(塗膜)を形成する観点から、低く設定される。例えば、10°以下に設定される。上述のような隔壁200が形成されているので、このような粘度、接触角に設定することができる。なお、滴下後、例えば、塗膜409aを硬化させて、有機層409を形成する。塗膜の硬化方法としては、用いる硬化性樹脂組成物に応じて、任意の適切な方法が採用される。例えば、光(UV)硬化と熱硬化の両方を用いてもよく、光(UV)硬化、熱硬化のいずれかを用いてもよい。
【0030】
次に、図2に示すように、有機層409上に第2封止膜410(例えば、SiN等の無機膜)を形成する。第2封止膜410は、有機EL層406への水分の侵入を防止するため、表示領域101から連続して隔壁200も覆うように形成される。上述のように、有機層409が隔壁200の内側に収容されているので、有機層409表面は第2封止膜410により良好に被覆され(有機層409がむき出しになる部位がなく)、有機EL層406への水分の侵入を効果的に防止し得る。
【0031】
なお、図示しないが、任意の適切なタイミングで、個々のパネル(個片)に分割する工程が必要となることはいうまでもない。
【0032】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 有機EL表示装置、2 上フレーム、3 下フレーム、10 有機ELパネル、100 基板、101 表示領域、200 隔壁、210 隔壁形成用膜、300 フォトマスク、310 透光部、320 光源、401 TFT層、402 層間絶縁膜、403 配線層、404 アノード電極、405 リブ層、406 有機EL層、407 カソード電極、408 第1封止膜、409 有機層(平坦化層)、410 第2封止膜。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4