(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して、説明を省略する。
【0010】
[多孔体シートの処理方法]
図1は、一実施形態による多孔体シートの処理方法を示すフローチャートである。尚、多孔体シートの処理方法は、
図1に示すものに限定されない。例えば多孔体シートの処理方法は、
図1に示す複数のステップのうち、一部のステップのみを有してもよい。また、
図1に示す複数のステップの順序は、特に限定されない。
【0011】
先ず、
図1に示すステップS11では、第1芯21〜第4芯24の装着を行う。ステップS11について、
図2〜
図5を参照して説明する。
図2、
図4において、第1貯留槽31、第2貯留槽32を破断して示す。
図6、
図8において同様である。
【0012】
図2は、一実施形態による第1芯、第2芯および第3芯の装着が完了した時の、処理装置の状態を示す図である。
【0013】
第1芯21は、処理装置30に着脱自在とされており、処理装置30への装着前に基材シート10を巻取済みである。第1芯21の装着後、基材シート10の長手方向一端部10aが第3芯23に連結される。
【0014】
基材シート10は、本実施形態では緻密なものであるが、多孔質なものであってもよい。多孔質なものとしては、例えばネット、織布、不織布などが用いられる。基材シート10の材料は、基材シート10の処理の内容に応じて適宜選択される。
【0015】
第2芯22は、処理装置30に着脱自在とされており、処理装置30への装着前に第1多孔体シート11および第1多孔体シート11につながる第1緻密体シート13をこの順で巻取済みである。第2芯22の装着後、第1緻密体シート13の先端部が第3芯23に連結される。
【0016】
第1多孔体シート11は、第1処理液41(
図6、
図8参照)を保持する。第1多孔体シート11としては、例えばネット、織布、不織布などが用いられる。第1多孔体シート11の材料は、基材シート10の材料と同じものでもよいし、異なるものでもよい。第1多孔体シート11の材料は、処理の内容に応じて適宜選択される。
【0017】
図3は、
図2のIII−III線に沿った断面図である。
図3に示すように、第2芯22は、外周に吸引孔22aを有する吸引芯である。第2芯22の外周には第1多孔体シート11が巻き取られており、第1多孔体シート11の外周には第1緻密体シート13が巻き取られている。第1緻密体シート13は、第1多孔体シート11の外周を少なくとも一周している。
【0018】
第1緻密体シート13は、第1多孔体シート11よりも小さい通気率を有するものであればよい。第1緻密体シート13の幅は、
図3では第1多孔体シート11の幅と同じであるが、第1多孔体シート11の幅よりも大きくても小さくてもよい。
【0019】
その後、処理装置30は、第1芯21に巻き取られた基材シート10と、第2芯22に巻き取られた第1多孔体シート11とを巻き出して、
図4に示すように第3芯23に重ねて巻き取る。
【0020】
図4は、
図2に続く処理装置の状態を示す図であって、第4芯の装着が完了した時の、処理装置の状態を示す図である。
【0021】
第4芯24は、処理装置30に着脱自在とされており、処理装置30への装着前に第2多孔体シート12および第2多孔体シート12につながる第2緻密体シート14をこの順で巻取済みである。第4芯24の装着後、第2緻密体シート14の先端部が第1芯21に連結される。
【0022】
第2多孔体シート12は、第2処理液42(
図6、
図8参照)を保持する。第2多孔体シート12としては、第1多孔体シート11と同様のものが用いられる。
【0023】
図5は、
図4のV−V線に沿った断面図である。
図5に示すように、第4芯24は、外周に吸引孔24aを有する吸引芯である。第4芯24の外周には第2多孔体シート12が巻き取られており、第2多孔体シート12の外周には第2緻密体シート14が巻き取られている。第2緻密体シート14は、第2多孔体シート12の外周を少なくとも一周している。
【0024】
第2緻密体シート14は、第2多孔体シート12よりも小さい通気率を有するものであればよい。第2緻密体シート14の幅は、
図5では第2多孔体シート12の幅と同じであるが、第2多孔体シート12の幅よりも大きくても小さくてもよい。
【0025】
図1に示すステップS12では、処理装置30の内部に窒素ガスなどの不活性ガスを導入し続け、処理装置30の内部の空気を外部に押し出す。これにより、処理装置30の内部に不活性ガスを充てんする。
【0026】
図1に示すステップS13では、第1多孔体シート11や第2多孔体シート12の内部に残留する空気の吸引を行う。ステップS13について、
図2〜
図5を再度参照して説明する。
【0027】
例えば、処理装置30は、
図5に示すように第2緻密体シート14で覆われた第2多孔体シート12の内部に残留する空気を、第4芯24の吸引孔24aに吸引して、不活性ガスと入れ替える。これにより、後述のグラフト重合の重合効率やイオン交換基の導入効率を向上できる。
【0028】
第4芯24には、ポンプなどの吸引源が接続されている。この吸引源は、第4芯24の吸引孔24aを介して、第2多孔体シート12の内部に残留する流体を吸引する。このとき、第2緻密体シート14が第2多孔体シート12の外周を覆うため、第2多孔体シート12の内部に残留する流体を効率的に吸引できる。
【0029】
また、処理装置30は、
図3に示すように第1緻密体シート13で覆われた第1多孔体シート11の内部に残留する空気を、第2芯22の吸引孔22aに吸引して、不活性ガスと入れ替える。これにより、後述のグラフト重合の重合効率やイオン交換基の導入効率を向上できる。
【0030】
第2芯22には、ポンプなどの吸引源が接続されている。この吸引源は、第2芯22の吸引孔22aを介して、第1多孔体シート11の内部に残留する流体を吸引する。このとき、第1緻密体シート13が第1多孔体シート11の外周を覆うため、第1多孔体シート11の内部に残留する流体を効率的に吸引できる。
【0031】
その後、処理装置30は、第3芯23に巻き取られた基材シート10と、第4芯24に巻き取られた第2多孔体シート12とを巻き出して、
図6に示すように第1芯21に重ねて巻き取る。
【0032】
図1に示すステップS14では、第1処理液41および第2処理液42としての改質処理液の液溜めを行う。改質処理液は、基材シート10の改質を行うものである。ここで、改質とは、基材シート10の材料の、組成および/または性質を改良することをいう。ステップS14について、
図6を参照して説明する。
【0033】
図6は、
図4に続く処理装置の状態を示す図であって、基材シートの第1芯への巻き取りが完了した時の、処理装置の状態を示す図である。尚、本実施形態の改質処理液の液溜めは、
図6の状態で行われるが、
図8の状態で行われてもよい。
【0034】
処理装置30は、第2芯22の直下に設置される第1貯留槽31の内部に、第1処理液41を溜める。第2芯22に巻き取られた第1多孔体シート11の巻物の下部が第1処理液41に浸漬される。尚、第1多孔体シート11の巻物のうちの、少なくとも一部が第1処理液41に浸漬されていればよく、全体が第1処理液41に浸漬されていてもよい。
【0035】
第1貯留槽31は、第1貯留槽31に第1処理液41を供給する供給管、第1貯留槽31から第1処理液41を排出する排出管と接続されている。第1処理液41は、複数種類用意されてもよく、状況に応じて使い分けられてよい。
【0036】
また、処理装置30は、第4芯24の直下に設置される第2貯留槽32の内部に、第2処理液42を溜める。第4芯24に巻き取られた第2多孔体シート12の巻物の下部が第2処理液42に浸漬される。尚、第2多孔体シート12の巻物のうちの、少なくとも一部が第2処理液42に浸漬されていればよく、全体が第2処理液42に浸漬されていてもよい。
【0037】
第2貯留槽32は、第2貯留槽32に第2処理液42を供給する供給管、第2貯留槽32から第2処理液42を排出する排出管と接続されている。第2処理液42は、複数種類用意されてもよく、状況に応じて使い分けられてよい。
【0038】
第1処理液41と第2処理液42とは、本実施形態では同一の基材シート10に対し同一の処理を行うものであるが、同一の基材シート10に対し異なる処理を行うものでもよい。第2処理液42と第1処理液41とが同一のものである場合、第2貯留槽32と第1貯留槽31とは一体化されてもよい。
【0039】
第1処理液41や第2処理液42は、基材シート10の改質を行う改質処理液であってよい。改質処理液としては、基材シート10にモノマーをグラフト重合させるもの、基材シート10にイオン交換基を導入するものなどが挙げられる。
【0040】
基材シート10は、改質されることで、寸法変化を起こす。一方、第1多孔体シート11や第2多孔体シート12は、改質されないので、殆ど寸法変化しない。そのため、第1多孔体シート11の寸法変化率は、基材シート10の寸法変化率よりも小さい。
【0041】
図1に示すステップS15では、基材シート10の往復搬送を行う。ステップS15について、
図6の他、
図7〜
図9などを参照して説明する。
図7は、
図6のVII−VII線に沿った断面図である。
図8は、
図6に続く処理装置の状態を示す図であって、基材シートの第3芯への巻き取りが完了した時の、処理装置の状態を示す図である。
図9は、
図8のIX−IX線に沿った断面図である。
【0042】
処理装置30は、その状態を
図6や
図7の状態から
図8や
図9の状態に移行させる。具体的には、処理装置30は、第1芯21に巻き取られた基材シート10と、第2芯22に巻き取られた第1多孔体シート11とをそれぞれ巻き出して、第3芯23に重ねて巻き取る。
【0043】
第3芯23に巻き取られた基材シート10と第1多孔体シート11とは、
図9に示すように交互に重なっている。よって、第1多孔体シート11に保持される第1処理液41によって基材シート10を処理することができる。
【0044】
この処理方法は、ロールツーロール技術を用いるので、基材シート10を連続的に且つ大量に処理できる。また、第1多孔体シート11が第1処理液41を保持する保持層として機能するので、処理ムラを低減できると共に、第1処理液41の使用効率を向上でき、第1処理液41の使用量を削減できる。
【0045】
ところで、第1処理液41による基材シート10の処理が徐々に進むにつれ、基材シート10の寸法が徐々に変化する。
【0046】
そこで、基材シート10の寸法変化による不具合(例えばシワや締め付け)を抑制するため、処理装置30は、その状態を
図8や
図9の状態から
図6や
図7の状態に移行させる。具体的には、処理装置30は、第3芯23に重ねて巻き取られた基材シート10および第1多孔体シート11を巻き出して、第1多孔体シート11を第2芯22に巻き取ると共に、基材シート10を第1芯21に巻き取る。基材シート10は、第1多孔体シート11とは異なる寸法変化率を有するので、第1多孔体シート11とは異なる芯に巻き取る。
【0047】
このとき、処理装置30は、第4芯24に巻き取られた第2多孔体シート12を巻き出して、
図6や
図7に示すように第2多孔体シート12および基材シート10を第1芯21に重ねて巻き取る。第2多孔体シート12の表面の凹凸によって、基材シート10の巻き取り時の滑りを抑制できる。また、第2多孔体シート12に保持される第2処理液42によって、基材シート10を処理できる。
【0048】
この処理方法は、ロールツーロール技術を用いるので、基材シート10を連続的に且つ大量に処理できる。また、第2多孔体シート12が第2処理液42を保持する保持層として機能するので、処理ムラを低減できると共に、第2処理液42の使用効率を向上でき、第2処理液42の使用量を削減できる。
【0049】
ところで、第2処理液42による基材シート10の処理が徐々に進むにつれ、基材シート10の寸法が徐々に変化する。
【0050】
そこで、基材シート10の寸法変化による不具合を抑制するため、処理装置30は、その状態を
図6や
図7の状態から
図8や
図9の状態にさらに移行させてよい。具体的には、処理装置30は、第1芯21に重ねて巻き取られた基材シート10および第2多孔体シート12を巻き出し、第2多孔体シート12を第4芯24に巻き取ると共に、基材シート10を第3芯23に巻き取る。基材シート10は、第2多孔体シート12とは異なる寸法変化率を有するので、第2多孔体シート12とは異なる芯に巻き取る。
【0051】
このとき、処理装置30は、第2芯22に巻き取られた第1多孔体シート11を巻き出して、
図8や
図9に示すように第1多孔体シート11および基材シート10を第3芯23に重ねて巻き取る。第1多孔体シート11の表面の凹凸によって、基材シート10の巻き取り時の滑りを抑制できる。また、第1多孔体シート11に保持される第1処理液41によって、基材シート10を処理できる。基材シート10の処理が徐々に進むにつれ、基材シート10の寸法が徐々に変化する。
【0052】
その後、処理装置30は、その状態を、
図8の状態と
図6の状態との間で繰り返し移行させてよい。
【0053】
このように、処理装置30は、第1芯21に巻き取られた基材シート10を巻き出し、第3芯23に巻き取り、再び第1芯21に巻き取ることを、複数回繰り返してよい。基材シート10の処理を進めると共に、基材シート10の寸法変化による不具合の発生を抑制できる。
【0054】
この間、処理装置30は、第3芯23から巻き出された後、第3芯23に再び巻き取られるまでの間に、第1多孔体シート11に対し第1処理液41を補給してよい。これにより、第1多孔体シート11に含まれる第1処理液41の有効成分の濃度を回復でき、基材シート10の処理を促進できる。
【0055】
処理装置30は、第1多孔体シート11に対する第1処理液41の供給(補給を含む)を、第1多孔体シート11が基材シート10から分離された位置で行ってよい。基材シート10に対する第1処理液41の供給を、基材シート10を介さずに第1多孔体シート11のみを介して行うことができる。
【0056】
尚、本実施形態の第1処理液41は、第2芯22の直下に設置された第1貯留槽31の内部に溜められているが、第1処理液41の供給場所や供給方法は特に限定されない。例えば、第1貯留槽31は、第1多孔体シート11の搬送経路(第2芯22と第3芯23との間の搬送経路)の途中に設置されてもよい。また、第1処理液41を溜める第1貯留槽31の代わりに、第1処理液41を噴射するスプレーなどが用いられてもよい。
【0057】
また、処理装置30は、第3芯23に巻き取られた基材シート10を巻き出し、第1芯21に巻き取り、再び第3芯23に巻き取ることを、複数回繰り返してよい。基材シート10の処理を進めると共に、基材シート10の寸法変化による不具合の発生を抑制できる。
【0058】
この間、処理装置30は、第1芯21から巻き出された後、第1芯21に再び巻き取られるまでの間に、第2多孔体シート12に対し第2処理液42を補給してよい。これにより、第2多孔体シート12に含まれる第2処理液42の有効成分の濃度を回復でき、基材シート10の処理を促進できる。
【0059】
処理装置30は、第2多孔体シート12に対する第2処理液42の供給(補給を含む)を、第2多孔体シート12が基材シート10から分離された位置で行ってよい。基材シート10に対する第2処理液42の供給を、基材シート10を介さずに第2多孔体シート12のみを介して行うことができる。
【0060】
尚、本実施形態の第2処理液42は、第4芯24の直下に設置された第2貯留槽32の内部に溜められているが、第2処理液42の供給場所や供給方法は特に限定されない。例えば、第2貯留槽32は、第2多孔体シート12の搬送経路(第4芯24と第1芯21との間の搬送経路)の途中に設置されてもよい。また、第2処理液42を溜める第2貯留槽32の代わりに、第2処理液42を噴射するスプレーなどが用いられてもよい。
【0061】
処理装置30は、第3芯23と第1芯21との間において、第1多孔体シート11および第2多孔体シート12から分離した基材シート10をエキスパンダーロール33に抱き付かせることで、基材シート10に対し幅方向に張力を加えてもよい。基材シート10のシワや縮みを低減できる。基材シート10は、第1多孔体シート11や第2多孔体シート12とは異なる寸法変化率を有するので、単独でエキスパンダーロール33に抱き付かせる。
【0062】
尚、本実施形態では、基材シート10を改質する際に、第1多孔体シート11や第2多孔体シート12を改質しないが、改質してもよい。この場合、第1多孔体シート11や第2多孔体シート12も寸法変化する。
【0063】
そこで、第3芯23と第2芯22との間において、基材シート10から分離した第1多孔体シート11をエキスパンダーロールに抱き付かせることで、第1多孔体シート11に対し幅方向に張力を加えてもよい。
【0064】
同様に、第1芯21と第4芯24との間において、基材シート10から分離した第2多孔体シート12をエキスパンダーロールに抱き付かせることで、第2多孔体シート12に対し幅方向に張力を加えてもよい。
【0065】
エキスパンダーロール33は、一般的なものであってよく、例えばゴム紐ロールなどであってよい。ゴム紐ロールは、回転中心線に平行なゴム紐を、回転中心線の周りに間隔をおいて複数有する。複数のゴム紐は、回転に伴って独立に伸縮される。各ゴム紐は、基材シート10と接触している間は徐々に伸び、基材シート10から離れると縮む。尚、ゴム紐ロールは、基材シート10の蛇行修正に用いることも可能である。
【0066】
エキスパンダーロール33は、基材シート10に対し長手方向に作用する張力を制御するための、ダンサーロールの役割を兼ねてもよい。尚、ダンサーロールは、エキスパンダーロール33とは別に設けられてもよい。
【0067】
ダンサーアーム34は、ダンサーロールが取り付けられる一端部34aと、カウンターバランスが取り付けられる他端部34bとを有し、両端部34a、34bの間に設けられる支点34cを中心に揺動自在とされる。ダンサーロールの位置が一定になるように、第1芯21の回転速度や第3芯23の回転速度を制御することで、基材シート10に対し長手方向に作用する張力を一定に制御できる。ダンサーロールの位置は、例えば変位センサ35(
図10参照)によって検出可能である。
【0068】
処理装置30は、第3芯23と第1芯21との間で基材シート10に対し長手方向に作用する張力T1を、第3芯23と第2芯22との間で第1多孔体シート11に対し長手方向に作用する張力T2よりも小さく制御してよい。また、処理装置30は、第3芯23と第1芯21との間で基材シート10に対し長手方向に作用する張力T1を、第4芯24と第1芯21との間で第2多孔体シート12に対し長手方向に作用する張力T3よりも小さく制御してよい。基材シート10の意図しない変形を抑制できる。
【0069】
図10は、一実施形態による処理装置を示すブロック図である。処理装置30は、第1モータ51と、第2モータ52と、第3モータ53と、第4モータ54とを有する。第1モータ51は第1芯21を、第2モータ52は第2芯22を、第3モータ53は第3芯23を、第4モータ54は第4芯24をそれぞれ回転させる。また、処理装置30は、第1モータ51、第2モータ52、第3モータ53、および第4モータ54を制御するコントローラ60を有する。
【0070】
コントローラ60は、CPU(Central Processing Unit)61と、メモリなどの記憶媒体62と、入力インターフェイス63と、出力インターフェイス64とを有する。コントローラ60は、記憶媒体62に記憶されたプログラムをCPU61に実行させることにより、各種の制御を行う。また、コントローラ60は、入力インターフェイス63で外部からの信号を受信し、出力インターフェイス64で外部に信号を送信する。
【0071】
コントローラ60は、変位センサ35などの各種検出器の検出結果に基づいて、第1モータ51、第2モータ52、第3モータ53、および第4モータ54を制御する。各種検出器としては、変位センサ35の他に、例えば、第1モータ51の回転速度を検出するエンコーダ71、第3モータ53の回転速度を検出するエンコーダ73などが用いられる。
【0072】
例えば、コントローラ60は、エンコーダ71、73や変位センサ35の検出結果に基づき第1モータ51や第3モータ53を制御することで、基材シート10に対し長手方向に作用する張力T1を制御する。
【0073】
また、コントローラ60は、基材シート10の厚み、第1多孔体シート11の厚み、および第3芯23の回転量から、第3芯23に巻き取られる巻物の外径を算出し、その外径と目標張力とに基づいて第2モータ52を制御することで、第1多孔体シート11に対し長手方向に作用する張力T2を制御する。
【0074】
また、コントローラ60は、基材シート10の厚み、第2多孔体シート12の厚み、および第1芯21の回転量から、第1芯21に巻き取られる巻物の外径を算出し、その外径と目標張力とに基づいて第4モータ54を制御することで、第2多孔体シート12に対し長手方向に作用する張力T3を制御する。
【0075】
基材シート10の両端部のうち第3芯23寄りの端部が第3芯23に巻き取られてから第3芯23から巻き出されるまでの、経過時間が上限を超えないように、基材シート10の搬送速度や
図8の状態での停止時間が設定される。第3芯23に巻き取られてから第3芯23から巻き出されるまでの、基材シート10の最大寸法変化率を許容範囲内に収めることができる。
図8の状態での停止時間は、ゼロでもよい。
【0076】
同様に、基材シート10の両端部のうち第1芯21寄りの端部が第1芯21に巻き取られてから第1芯21から巻き出されるまでの、経過時間が上限を超えないように、基材シート10の搬送速度や
図6の状態での停止時間が設定される。第1芯21に巻き取られてから第1芯21から巻き出されるまでの、基材シート10の最大寸法変化率を許容範囲内に収めることができる。
図6の状態での停止時間は、ゼロでもよい。
【0077】
基材シート10の寸法変化率と、経過時間との関係は、予め試験などで求められる。試験では、例えば基材シート10と同じ材質かつ同じ厚さで100mm角の正方形のシートを、第1処理液41または第2処理液42に浸漬し、所定時間ごとに処理液から取り出して寸法を測定する。
【0078】
第1芯21または第3芯23に巻き取られてから巻き出されるまでの、基材シート10の最大寸法変化率は、例えば−1.0%〜1.0%、好ましくは−0.3%〜0.3%である。この許容範囲に基づき、経過時間の上限が設定される。
【0079】
処理装置30は、
図6の状態と
図8の状態とのどちらの状態で、基材シート10の処理を終了してもよい。
【0080】
図1に示すステップS16では、第1処理液41や第2処理液42としての改質処理液の液抜きを行う。これにより、処理装置30の状態は、
図2の状態または
図4の状態に戻る。
【0081】
図1に示すステップS17では、第1多孔体シート11や第2多孔体シート12の内部に残留する改質処理液の吸引を行う。改質処理液の吸引は、空気の吸引と同様にして行われる。
【0082】
例えば、処理装置30は、
図5に示すように第2緻密体シート14で覆われた第2多孔体シート12の内部に残留する改質処理液を、第4芯24の吸引孔24aに吸引して、不活性ガスと入れ替える。これにより、後述の洗浄処理液との置換効率を向上できる。
【0083】
また、処理装置30は、
図3に示すように第1緻密体シート13で覆われた第1多孔体シート11の内部に残留する改質処理液を、第2芯22の吸引孔22aに吸引して、不活性ガスと入れ替える。これにより、後述の洗浄処理液との置換効率を向上できる。
【0084】
図1に示すステップS18では、第1処理液41および第2処理液42としての洗浄処理液の液溜めを行う。洗浄処理液は、第1多孔体シート11や第2多孔体シート12、基材シート10の洗浄を行うものである。洗浄処理液の液溜めは、改質処理液の液溜めと同様にして行われる。
【0085】
図1に示すステップS19では、基材シート10の往復搬送を行う。この間、処理装置30は、
図6や
図7に示すように第2多孔体シート12および基材シート10を第1芯21に重ねて巻き取り、第2多孔体シート12に保持される洗浄処理液によって基材シート10を洗浄処理する。また、処理装置30は、
図8や
図9に示すように第1多孔体シート11および基材シート10を第3芯23に重ねて巻き取り、第1多孔体シート11に保持される洗浄処理液によって、基材シート10を洗浄処理する。
【0086】
図1に示すステップS20では、第1処理液41や第2処理液42としての洗浄処理液の液抜きを行う。これにより、処理装置30の状態は、
図2の状態または
図4の状態に戻る。
【0087】
続くステップS21では、第1多孔体シート11や第2多孔体シート12の内部に残留する洗浄処理液の吸引を行う。洗浄処理液の吸引は、改質処理液の吸引と同様にして行われる。
【0088】
例えば、処理装置30は、
図5に示すように第2緻密体シート14で覆われた第2多孔体シート12の内部に残留する洗浄処理液を、第4芯24の吸引孔24aに吸引して、乾燥用のガスと入れ替える。乾燥用のガスは、本実施形態では不活性ガスであるが、乾燥空気などでもよい。これにより、乾燥効率を向上できる。
【0089】
また、処理装置30は、
図3に示すように第1緻密体シート13で覆われた第1多孔体シート11の内部に残留する洗浄処理液を、第2芯22の吸引孔22aに吸引して、乾燥用のガス(例えば不活性ガス)と入れ替える。これにより、乾燥効率を向上できる。
【0090】
尚、処理装置30は、
図1に示すステップS18〜ステップS21を複数回繰り返し行ってもよい。その際、洗浄処理液の種類を途中で変更してもよい。
【0091】
その後、基材シート10は、第1多孔体シート11および第2多孔体シート12とは別に、第1芯21または第3芯23に巻き取られ、処理装置30の外部に搬出される。これにより、基材シート10を改質した改質シートが得られる。
【0092】
尚、基材シート10は、第1多孔体シート11および第2多孔体シート12とは別に処理装置30の外部に搬出されるが、第1多孔体シート11または第2多孔体シート12と共に巻き取られ処理装置30の外部に搬出されてもよい。
【0093】
[改質シートの製造方法]
上記実施形態の多孔体シートの処理方法は、基材シート10の改質に用いられてよく、例えば下記(1)のステップおよび下記(2)のステップの少なくとも一方に用いられてよい。
【0094】
(1)のステップは、基材シート10にモノマーをグラフト重合させるステップである。基材シート10としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、塩化ビニルなどのハロゲン化ポリオレフィン類、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVA)などのオレフィン−ハロゲン化オレフィン共重合体などを含み、放射線の照射によってラジカルを生成したものを用いてよい。第1処理液41や第2処理液42としては、例えば、スチレンなどのモノマーと、キシレンなどの溶媒とを含むモノマー液が用いられる。溶媒としては、炭化水素(ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン等)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、ケトン(アセトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサン等)、エーテル(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、含窒素化合物(イソプロピルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等)等が挙げられる。上記(1)のステップによれば、グラフト重合基材が得られる。
【0095】
(2)のステップは、基材シート10にイオン交換基を導入するステップである。基材シート10としては、予め上記(1)のステップでモノマーとしてイオン交換基に変換できる基を有するモノマーをグラフト重合させたものを用いてよい。イオン交換基に変換できる基を有するモノマーとしては、アクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。イオン交換基に変換できる基を有するモノマーをグラフト重合によって基材シート10に導入し、次にスルホン化剤を反応させることによってスルホン基を導入したり、又はアミノ化剤を反応させることによってアミノ基を導入することなどによって、イオン交換基を得ることができる。第1処理液41や第2処理液42としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、濃硫酸などのスルホン化剤、ジエタノールアミン、トリメチルアミンなどのアミノ化剤が用いられる。上記(2)のステップによれば、イオン交換膜が得られる。イオン交換膜は、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜のいずれでもよい。
【0096】
尚、上記(1)のステップで、モノマーとして、イオン交換基に変換できる基を有するモノマーではなく、イオン交換基を有するモノマーを、基材シート10にグラフト重合させてもよい。この場合、上記(1)のステップによってイオン交換膜が得られる。イオン交換基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0097】
以上、多孔体シートの処理方法の実施形態などについて説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0098】
処理装置30の構成は、
図2〜
図10に示す構成に限定されない。例えば、上記実施形態では、第1多孔体シート11と第2多孔体シート12の両方を用いるが、いずれか一方のみを用いてもよい。
【0099】
図11は、変形例による多孔体シートの第1芯への巻き取りが完了した時の、処理装置の状態を示す図である。
図12は、
図11の多孔体シートの第2芯への巻き取りが完了した時の、処理装置の状態を示す図である。
図11および
図12に示す処理装置30Aは、基材シートとしての多孔体シート11Aを処理する。以下、主に、
図2〜
図10に示す処理装置30との相違点について説明する。
【0100】
第1芯21Aは、処理装置30Aに着脱自在とされており、処理装置30Aへの装着前に多孔体シート11Aおよび多孔体シート11Aにつながる緻密体シート13Aをこの順で巻取済みである。第1芯21Aが処理装置30Aに装着された後、緻密体シート13Aの先端部が第2芯22Aに連結される。
【0101】
尚、本変形例の多孔体シート11Aおよび緻密体シート13Aは、第1芯21Aに巻き取られた状態で処理装置30Aの内部に搬入されるが、第2芯22Aに巻き取られた状態で処理装置30Aの内部に搬入されてもよい。
【0102】
多孔体シート11Aは、
図2〜
図10に示す基材シート10とは異なり、処理液41Aを保持できる。そのため、多孔体シート11Aは、
図2〜
図10に示す基材シート10とは異なり、別の多孔体シートと重ねて巻き取らなくても処理可能である。
【0103】
第1芯21Aは、外周に吸引孔を有する吸引芯である。第1芯21Aの外周には多孔体シート11Aが巻き取られており、多孔体シート11Aの外周には緻密体シート13Aが巻き取られている。緻密体シート13Aは、多孔体シート11Aの外周を少なくとも一周している。
【0104】
第1芯21Aには、ポンプなどの吸引源が接続されている。この吸引源は、第1芯21Aの吸引孔を介して、多孔体シート11Aの内部に残留する流体を吸引する。このとき、緻密体シート13Aが多孔体シート11Aの外周を覆うため、多孔体シート11Aの内部に残留する流体を効率的に吸引できる。
【0105】
処理装置30Aは、多孔体シート11Aを、第1芯21Aと第2芯22Aとの間で、少なくとも片道搬送する。この処理方法は、ロールツーロール技術を用いるので、多孔体シート11Aを連続的に且つ大量に処理できる。多孔体シート11Aは、改質されることで、僅かに寸法変化を起こす。
【0106】
そこで、多孔体シート11Aの寸法変化による不具合(例えばシワや締め付け)を抑制するため、処理装置30Aは、多孔体シート11Aを、第1芯21Aと第2芯22Aとの間で、少なくとも1回往復させてよい。
【0107】
この間、処理装置30Aは、多孔体シート11Aに対し処理液41Aを補給してよい。処理液41Aの補給によって、多孔体シート11Aの処理を促進できる。尚、処理液41Aの供給場所や供給方法は特に限定されない。
【0108】
処理装置30Aは、第1芯21Aと第2芯22Aとの間において、多孔体シート11Aをエキスパンダーロール33Aに抱き付かせることで、多孔体シート11Aに対し幅方向に張力を加えてもよい。多孔体シート11Aのシワや縮みを低減できる。
【0109】
コントローラは、多孔体シート11Aに対し長手方向に作用する張力を制御するため、第1芯21Aおよび第2芯22Aの一方の回転トルクを制御し、第1芯21Aおよび第2芯22Aの他方の回転速度を制御してよい。