特許第6640054号(P6640054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640054
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】梱包材および農産物用梱包容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/04 20060101AFI20200127BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20200127BHJP
   B65D 1/22 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   B65D65/04 B
   B65D85/50 120
   B65D1/22
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-164791(P2016-164791)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2018-30624(P2018-30624A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(74)【代理人】
【識別番号】100160668
【弁理士】
【氏名又は名称】美馬 保彦
(72)【発明者】
【氏名】田島 一雄
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔太
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−065540(JP,A)
【文献】 特開2008−148648(JP,A)
【文献】 特開2016−013864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/04
B65D 1/22
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口部が形成され、前記開口部から内部に被梱包物を収容する収容空間が形成された開口容器、
上方に開口部が形成された容器本体と、前記容器本体の開口部を覆うように被着自在な蓋体とを備え、前記容器本体に前記蓋体を被着した状態で、内部に被梱包物を収容する収容空間が形成される梱包容器、
前記梱包容器用の容器本体、および、
前記梱包容器用の蓋体、の1つのから選択される梱包材であって、
前記梱包材は、発泡樹脂粒子からなる成形体であり、
前記収容空間を形成する内壁面、または前記梱包材の外側に面した外壁面には、少なくとも上下方向に沿って複数の突条部が延在しており、
前記各突条部は、前記発泡樹脂粒子の粒径よりも小さい幅を有しており、前記各発泡樹脂粒子に膨らむように形成された山状凸部が、前記上下方向に沿って複数配列されることにより形成されており、
隣接する前記山状凸部の間には、谷状凹部が形成されていることを特徴とする梱包材。
【請求項2】
前記梱包材は、前記開口容器、前記梱包容器、および前記梱包容器用の前記容器本体から選択される1つであり、
前記突条部は、前記開口容器または前記容器本体に形成されており、前記突条部の一方側の先端部は、前記内壁面または前記外壁面を形成する壁部の表面のうち、前記開口部を形成する開口端面に到達しないように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の梱包材。
【請求項3】
前記開口容器または前記容器本体の前記内壁面または前記外壁面には、上下方向に沿って複数の凹溝部が形成されており、
前記突条部は、前記凹溝部の溝底部に形成されており、
前記凹溝部の深さは、前記突条部の高さよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の梱包材。
【請求項4】
前記梱包材は、前記梱包容器、または、前記梱包容器用の前記蓋体であり、
前記突条部は、前記蓋体に形成されており、前記突条部の一方側の先端部は、前記内壁面または前記外壁面を形成する壁部の表面のうち、前記開口部に対向する前記蓋体の端面に到達しないように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の梱包材。
【請求項5】
前記突条部は、前記蓋体の前記収容空間を形成する上側壁面に亘って連続して形成されていることを特徴とする請求項4に記載の梱包材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の梱包材は、前記梱包容器であり、前記梱包容器は、農産物を梱包することを特徴とする農産物用梱包容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被梱包物を好適に梱包することができる梱包材および農産物用梱包容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鮮魚、精肉、青果物、冷凍食品や食材等の保冷を要する商品の輸送、保管等に用いる梱包材として、上方に開口した平面矩形の容器本体と、その開口端部に嵌着される蓋体とからなる発泡スチロール等の発泡樹脂製の梱包容器が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような梱包容器の容器本体と蓋体とは、以下のようにして製造される。樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を成形型内に充填し、成形型内に蒸気を供給することにより予備発泡樹脂粒子を発泡させ、発泡樹脂成形体(容器本体と蓋体)をそれぞれ成形する。その後、成形型内で成形された発泡樹脂成形体(容器本体と蓋体)とは、成形型から脱型される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−065540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した梱包容器(梱包材)の容器本体と蓋体とは、脱型性の観点から、これらの表面は滑らかな面となっており、滑りやすい。蓋体を有しない開口容器(梱包材)であっても、同様である。特に、上述した商品を梱包した場合には、梱包容器の内壁面および外壁面が水分等で濡れて、蓋体、容器本体、または開口容器などの梱包材が滑りやすくなるため、内壁面および外壁面に水分等が付着した梱包容器を把持して、搬送することが難しい場合がある。
【0006】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、グリップ力を高めた梱包材および農産物用梱包容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本発明に係る梱包材は、上方に開口部が形成され、前記開口部から内部に被梱包物を収容する収容空間が形成された開口容器、上方に開口部が形成された容器本体と、前記容器本体の開口部を覆うように被着自在な蓋体とを備え、前記容器本体に前記蓋体を被着した状態で、内部に被梱包物を収容する収容空間が形成される梱包容器、前記梱包容器用の容器本体、および、前記梱包容器用の蓋体、の1つのから選択される梱包材であって、前記梱包材は、発泡樹脂粒子からなる成形体であり、前記収容空間を形成する内壁面、または前記梱包材の外側に面した外壁面には、少なくとも上下方向に沿って複数の突条部が延在しており、前記各突条部は、前記各発泡樹脂粒子に膨らむように形成された山状凸部が、前記上下方向に沿って複数配列されることにより、形成されており、隣接する前記山状凸部の間には、谷状凹部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、開口容器、梱包容器、容器本体、または蓋体の1つから選択された梱包材の内壁面または外壁面に形成された突条部は、複数の山状凸部が上下方向に沿って配列されることにより形成され、隣接する山状凸部の間には谷状凹部が形成されている。これにより、突条部が形成された梱包材の内壁面または外壁面のグリップ力を高めることができ、梱包材を容易に搬送することができる。
【0009】
このように、梱包材の内壁面または外壁面のグリップ力を高めることができるのであれば、突条部の先端部の位置は特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記梱包材は、前記開口容器、前記梱包容器、および前記梱包容器用の前記容器本体から選択される1つであり、前記突条部は、前記開口容器または前記容器本体に形成されており、前記突条部の一方側の先端部は、前記内壁面または前記外壁面を形成する壁部の表面のうち、前記開口部を形成する開口端面に到達しないように形成されている。
【0010】
一般的に、内壁面または外壁面を形成する壁部の表面のうち、開口部を形成する開口端面には、開口容器を搬送する際または容器本体を蓋体に着脱する際などに応力が作用し易い。この態様によれば、突条部の一方側の先端部は、この開口端面に到達しないように形成されているので、端面における突条部起因の応力集中を回避することができる。また、特に、梱包物が、梱包容器および前記梱包容器用の前記容器本体である場合には、蓋体と容器本体とが当接する端面には、突条部の一方側の先端部がないので、この先端部が削れることを回避することができる。
【0011】
前記梱包材が、前記開口容器、前記梱包容器、および前記梱包容器用の前記容器本体から選択される1つである場合のより好ましい態様としては、前記開口容器または前記容器本体の前記内壁面または前記外壁面には、上下方向に沿って複数の凹溝部が形成されており、前記突条部は、前記凹溝部の溝底部に形成されており、前記凹溝部の深さは、前記突条部の高さよりも大きい。凹溝部の深さを、突条部の高さよりも大きくすることにより、突条部を凹溝部内に配置し、被梱包物を収納する際または梱包材を搬送する際に、突条部が削れることを抑えることができる。
【0012】
同様に、蓋体の内壁面のグリップ力を高めることができるのであれば、突条部の先端部の位置は特に限定されるものではない。さらに好ましい態様としては、前記梱包材は、前記梱包容器、または、前記梱包容器用の前記蓋体であり、前記突条部は、前記蓋体に形成されており、前記突条部の一方側の先端部は、前記内壁面または前記外壁面を形成する壁部の表面のうち、前記開口部に対向する前記蓋体の端面に到達しないように形成されている。
【0013】
一般的に、開口部に対向する前記蓋体の端面は、容器本体を蓋体に着脱する際などに応力が作用し易いが、この態様によれば、突条部の一方側の先端部は、この端面に到達しないように形成されているので、端面における突条部起因の応力集中を回避することができる。また、特に、蓋体と容器本体とが当接する端面には、突条部の一方側の先端部がないので、この先端部が削れることを回避することができる。
【0014】
前記梱包材が、前記梱包容器、または、前記梱包容器用の前記蓋体である場合のより好ましい態様としては、前記突条部は、前記蓋体の前記収容空間を形成する上側壁面に亘って連続して形成されている。この態様によれば、蓋体にこのような突条部を形成することにより、蓋体の縁部から蓋体を安定して把持することができる。
【0015】
さらに、前記梱包材が、梱包容器、または、梱包容器用の前記蓋体である場合の好ましい態様としては、前記蓋体の前記内壁面または前記外壁面には、上下方向に沿って複数の凹溝部が形成されており、前記突条部は、前記凹溝部の溝底部に形成されており、前記凹溝部の深さは、前記突条部の高さよりも大きい。凹溝部の深さを、突条部の高さよりも大きくすることにより、突条部を凹溝部内に配置し、被梱包物を収納する際または梱包材を搬送する際に、突条部が削れることを抑えることができる。
【0016】
上述した梱包材は、前記梱包容器であり、梱包容器は、農産物を前記被梱包物として梱包することを特徴とする農産物用梱包容器である。梱包物として農産物を梱包した場合には、農産物の水分が農産物用梱包容器の外壁面および内壁面に付着することがあるが、この水分が起因とした梱包容器の滑りを低減することができる。特に、農産物用梱包容器の内壁面には結露水が付着することがあるため、複数の突条部を内壁面に形成することが好ましい。
【0017】
上述したように、複数の突条部は、上下方向に沿って延在しており、複数の山状凸部が、上下方向に配列されることにより形成され、隣接する山状凸部の間には谷状凹部が形成されているので、突条部の谷状凹部で結露水を保持し、結露水が容器本体の底部に流下することを抑えることができる。
【0018】
特に、結露水が付着し易い蓋体の内壁面に、複数の突条部を設ければ、結露水の流下を抑えることができ、さらには、突条部を、蓋体の内壁面から前記蓋体の収容空間を形成する上側壁面に亘って連続して形成した場合には、上側壁面に付着した結露水が容器本体の底部に水滴となって滴下することを抑えることができる。
【0019】
さらに、容器本体の内壁面に上述した凹溝部を形成し、凹溝部の深さを、突条部の高さよりも大きくすることにより、突条部の谷状凹部で保持された水滴を凹溝部内で保持(保水)することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、梱包材のグリップ力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る梱包容器の模式的分解斜視図である。
図2図1に示す容器本体を上方から見た斜視図である。
図3図1に示す容器本体の平面図である。
図4図3のA−A線に沿った矢視断面図である。
図5図1に示す容器本体の部分的拡大図である。
図6】(a)は、図5のB−B線に沿った矢視断面図であり、(b)は、突条部の上面図であり、(c)は、(b)のC−C線に沿った矢視断面図である。
図7図1に示す蓋体を下方から見た斜視図である。
図8図1に示す蓋体の底面図(下面図)である。
図9図7に示す蓋体の部分的拡大図である。
図10図9のD−D線に沿った矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図1図10を参照して、本実施形態に係る梱包容器10を説明する。
本実施形態に係る梱包容器10は、本発明の梱包材の1つであり、鮮魚などの水産物、精肉などの畜産物、青果物などの農産物、または冷凍食品などの食品を、被梱包物として、内部の収容空間Sに収容する容器である。
【0023】
図1に示すように、梱包容器10は、容器本体20および蓋体30からなる。蓋体30は、容器本体20の開口部21を覆うように被着自在となっており、容器本体20に蓋体30を被着した状態で、梱包容器10の内部に、上述した被梱包物を収容する収容空間Sが形成される。
【0024】
容器本体20及び蓋体30は、発泡樹脂粒子からなる成形体である。発泡樹脂粒子は、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を成形型内に充填し、成形型内に蒸気を供給することにより予備発泡樹脂粒子を発泡させたものである。発泡樹脂粒子同士を相互に融着した状態で、容器本体20および蓋体30は成形される。発泡樹脂粒子の粒径(平均粒径)は、1.0mm以上であることが好ましく、3.0mm以上であることがより好ましい。一方、発泡樹脂粒子の粒径(平均粒径)は、7.0mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましい。なお、発泡樹脂粒子の粒径(平均粒径)は、(未発泡の)発泡性樹脂粒子の粒径と、発泡倍率より算出することができる。
【0025】
発泡樹脂としては、たとえば、ポリスチレン、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種合成樹脂の発泡体を用いることができる。
【0026】
中でも、ポリスチレンまたはスチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡による成形体が好適に用いられる。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られるものであり、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の中でも、スチレン改質ポリエチレン樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは55〜75重量%のものが用いられる。
【0027】
また、ポリスチレンの発泡樹脂粒子の発泡倍率は30〜80倍が好ましい。本実施形態の梱包容器10で使用する発泡樹脂は、従来に比較して発泡倍率を高めに設定している。このように発泡倍率を高めることで、荷重が加わったときに従来の発泡倍率の場合と比較して、より潰れやすく緩衝効果に優れた構成となっている。
【0028】
図1および図2に示すように、容器本体20は、長辺及び短辺を有する上面視矩形状の形状であり、長辺および短辺を有する矩形状の底部23から立ち上った4つの側壁部22により、上方に開口した開口部21が形成されている。容器本体20に蓋体30を被着した状態で、容器本体20の側壁部22が梱包容器10の側壁部の一部となり、容器本体20の底部23が梱包容器10の底部となる。
【0029】
また、容器本体20の開口部21を形成する開口縁部21aの内側には嵌合凹溝27Aが形成されており、その外側の長手方向中央には、対向する位置に一対の嵌合凹部27B,27Bが形成されている。容器本体20に蓋体30を被着した状態で、嵌合凹溝27Aは、蓋体30の縁部31aに形成された嵌合凸条37Aに嵌合し、各嵌合凹部27Bは、蓋体30の嵌合凸部37Bが嵌合する(図7参照)。
【0030】
さらに、図2および図4に示すように、容器本体20の底部23の外側には4つの通気用溝28が形成されており、梱包容器10を段積みしたときに、通気用溝28と、蓋体30の上面30aに形成された通気用凹部35とにより、段積みされた梱包容器10を通気することができる。
【0031】
本実施形態では、容器本体20の底部23には、対向する位置に指係凹部29,29が形成されている。これにより、作業者は、一対の指係凹部29,29に指を入れ、梱包容器10を容易に持ち上げることができる。
【0032】
さらに、図3に示すように、容器本体20の底部23の底面23aには、リブ状凸部23bによりハニカム状に区画された平面六角形状の多数の凹部23cが設けられている。このリブ状凸部23bにより、必要な強度を確保しながら底部23を薄肉化でき、容器本体20を軽量化することができる。
【0033】
さらに、図2図3図5、および図6(a)に示すように、収容空間Sを形成する容器本体20の各側壁部22の内壁面22aには、上下方向に沿って複数の凹溝部26,26,…が延在しており、各凹溝部26の溝底部26aには、上下方向に沿って、複数の突条部4A,4A,…が延在している。本実施形態では、突条部4Aは、開口部21の近傍から、底部23の近傍に亘って形成されている。
【0034】
具体的には、図5に示すように、突条部4Aの一方側の先端部4aは、側壁部22の表面のうち、蓋体30と容器本体20とが対向する位置に形成され、開口部21を形成する開口端面22bに到達しないように、形成されている。より具体的には、突条部4Aの一方側の先端部4aは、開口端面22bよりも底部23側(下方側)に位置している。
【0035】
さらに、図4に示すように、突条部4Aの他方側の先端部4bは、容器本体20の凹溝部26の溝端部26bに到達しておらず、凹溝部26の内部に形成されている。溝端部26bは、下方向に湾曲するように凹んでおり(図2等参照)、突条部4Aの他方側の先端部4bは、凹溝部26よりも上側に位置している。これにより、後述する結露水が、凹溝部26から流下しても、溝端部26bに溜めることができ、底部23の底面23aに結露水が流れることを抑制することができる。
【0036】
このようにして、本実施形態では、各突条部4Aは、容器本体20の開口部21近傍から底部23の近傍に亘って形成されており、図5に示すように、複数の山状凸部41,41,…が上下方向に沿って一列に配列されることにより、形成されている。
【0037】
より具体的には、各山状凸部41は、発泡樹脂粒子6ごとに、突条部4Aの高さ方向に膨らむように形成されており、図6(a)に示すように、凹溝部26の深さDは、突条部4Aの高さHよりも大きい。各突条部4Aは、図6(a)および(b)に示すように、発泡樹脂粒子6の粒径(平均粒径)よりも小さい幅Wを有している。
【0038】
さらに、各突条部4Aには、図6(b)および(c)に示すように、隣接する山状凸部41,41の間に、谷状凹部42が形成されている。これにより、突条部4Aの長手方向に沿って、突条部4Aの高さ方向に各発泡樹脂粒子6の形状に応じた凹凸が形成される。このような突条部4Aは、突条部4Aの長さおよび幅Wに応じた成形型にスリットを形成し、予備発泡樹脂粒子を蒸気で発泡させた際に得ることができる。
【0039】
蓋体30には、図7に示すように、容器本体20の開口部21を覆う天板部33と、容器本体20に被着した状態で、天板部33の周縁から容器本体20に向かって延在した側壁部32が形成されている。
【0040】
上述したように、蓋体30の縁部31aの内側には、容器本体20の嵌合凹溝27Aと嵌合する嵌合凸条37Aが形成され、その外側中央には、容器本体20の嵌合凹部27Bと嵌合する嵌合凸部37Bが形成されている。
【0041】
さらに、図7および図8に示すように、収容空間Sを形成する蓋体の各側壁部32の内壁面32aには、少なくとも上下方向に沿って複数の突条部4B,4B,…が延在している。より具体的には、上下方向に沿って形成された各突条部4Bは、蓋体30の収容空間Sを形成する上側壁面(天井面)33aに亘って連続して形成されている。
【0042】
図9に示すように、少なくとも一部の突条部4Bの一方側の先端部4cは、内壁面22aを形成する側壁部22の表面のうち、蓋体30と容器本体20とが対向する位置に形成された端面32bに到達しないように、形成されている。具体的には、突条部4Bの一方側の先端部4cは、端面32bよりも天板部33側(上方側)に位置している。
【0043】
これにより、突条部4Bの一方側の先端部4cは、この端面32bに到達しないように形成されているので、端面32bにおける突条部4B起因の応力集中を回避することができる。また、蓋体30と容器本体20とが当接する少なくとも一部の端面32bには、突条部4Bの一方側の先端部4cがないので、蓋体30の着脱時に、この先端部4cが削れることを回避することができる。
【0044】
本実施形態では、各突条部4Bは、容器本体20の突条部4Aと同様に、複数の山状凸部41,41,…が長手方向に沿って配列されることにより、形成されている。より具体的には、各山状凸部41は、突条部4Bの高さ方向に膨らむように発泡樹脂粒子6ごとに形成されている。図10に示すように、各突条部4Bは、容器本体20に形成された突条部4Aと同様に、発泡樹脂粒子6の粒径(平均粒径)よりも小さい幅Wを有している。
【0045】
さらに各突条部4Bは、容器本体20に形成された突条部4Aと同様に、各発泡樹脂粒子6に膨らむように形成された山状凸部41が、一列に複数配列されることにより、形成されており、隣接する山状凸部41,41の間には、谷状凹部42が形成されている。このような突条部4Bは、突条部4Bの長さおよび幅Wに応じた成形型にスリットを形成し、予備発泡樹脂粒子を蒸気で発泡させたときに得ることができる。
【0046】
ここで、突条部4A,4Bの幅W、山状凸部41の平均高さH、谷状凹部42の平均深さP、および山状凸部41の大きさLの好適な範囲を以下に示す。
【0047】
突条部4A,4Bの幅W(図6(b)および図10参照)は、より大きい方が、上述したグリップ力を高めることができるが、大き過ぎると、山状凸部41のみに作業者の指が接触することがあり、グリップ力が僅かながら低下することがある。このような観点から、発泡樹脂粒子6の粒径(平均粒径)に対する突条部4A,4Bの幅Wは、20%以上であることが好ましい。発泡樹脂粒子6の粒径(平均粒径)の範囲は、上述した如く、好ましくは、1.0mm以上であり、より好ましくは、3.0mm以上であることから、突条部4A,4Bの幅Wは、0.2mm以上であることが好ましく、より好ましくは、0.6mm以上である。一方、発泡樹脂粒子6の粒径(平均粒径)に対する突条部4A,4Bの幅Wは、40%以下であることが好ましい。発泡樹脂粒子6の粒径(平均粒径)の範囲は、上述した如く、好ましくは、7.0mm以下であり、より好ましくは、5.0mm以下であることから、突条部4A,4Bの幅Wは、2.8mm以下であることが好ましく、より好ましくは、2.0mm以下である。
【0048】
山状凸部41の平均高さH(図6(a)、(c)、および図10参照)は、より大きい方が、上述したグリップ力を高めることができるが、大き過ぎると、山状凸部41のみに作業者の指が接触することがあり、グリップ力が僅かながら低下することがある。このような観点から、山状凸部41の平均高さHは、0.20mm以上であることが好ましく、より好ましくは、0.30mm以上であることが好ましい。一方、山状凸部41の平均高さHは、1.00mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.90mm以下であることが好ましい。なお、突条部4A(4B)の山状凸部41の平均高Hさは、1つの突条部4A(4B)において連続して配列された5つの山状凸部41の高さの平均値である。
【0049】
突条部4A,4Bの谷状凹部42の平均深さP(図6(c)参照)は、より大きい方が、上述したグリップ力を高めることができるが、大き過ぎると、蓋体30および容器本体20の把持の仕方によっては、山状凸部41が削れることがある。このような観点から、上述した山状凸部41の平均高さHに対する突条部4A,4Bの谷状凹部42の平均深さPは、50%以上であることが好ましい。したがって、突条部4A,4Bの平均深さPは、0.10mm以上であることが好ましく、より好ましくは、0.15mm以上である。一方、平均深さPは、70%以下であることが好ましい。したがって、突条部4A,4Bの平均深さPは、0.70mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.63mm以下である。突条部4A(4B)の谷状凹部42の平均深さPは、1つの突条部4A(4B)において連続して配列された5つの谷状凹部42の深さの平均値である。
【0050】
突条部4A,4Bの長手方向に沿った山状凸部41の大きさL(図6(b)参照)は、より大きい方が、上述したグリップ力を高めることができるが、大き過ぎると、谷状凹部42同士の間隔が広くなり過ぎるため、グリップ力が僅かながら低下することがある。このような観点から、上述した発泡樹脂粒子6の粒径(平均粒径)に対する、突条部4A,4Bの長手方向に沿った山状凸部41の大きさLは、50%以上であることが好ましい。したがって、突条部4A,4Bの大きさLは、0.5mm以上であることが好ましく、より好ましくは、1.5mm以上である。一方、発泡樹脂粒子6の粒径(平均粒径)に対する、突条部4A,4Bの長手方向に沿った山状凸部41の大きさLは、80%以下であることが好ましい。したがって、突条部4A,4Bの大きさLは、5.6mm以下であることが好ましく、より好ましくは、4.0mm以下である。
【0051】
本実施形態では、容器本体20および蓋体30の内壁面22a,32aに形成された複数の突条部4A,4B,…は、複数の山状凸部41,41,…が、少なくとも上下方向に沿って配列されることにより形成され、隣接する山状凸部41,41間には谷状凹部42が形成されているので、容器本体20および蓋体30の内壁面22a,32aのグリップ力を高めることができる。
【0052】
これにより、複数の突条部4A,4B,…が形成された容器本体20および蓋体30を容易に把持することができる。特に、蓋体30に、上側壁面33aに亘って連続して形成された突条部4Bを形成することにより、蓋体30の縁部から蓋体30を安定して把持することができる。
【0053】
ここで、梱包容器10が、被梱包物として農産物を梱包する農産物用梱包容器である場合には、農作物が呼吸をするため内部に結露水が発生する。しかしながら、突条部4A,4Bには、その長手方向に沿った断面において、隣接する山状凸部41,41の間に谷状凹部42が形成されているので、突条部4A,4Bの谷状凹部42で結露水を保持し、結露水が容器本体20の底部23に流下することを抑えることができる。
【0054】
特に、結露水が付着し易い蓋体30の内壁面32a等に、複数の突条部4B,4B,…を設ければ、結露水の流下をより一層抑えることができる。さらに、本実施形態では、上下方向に沿って形成された複数の突条部4B,4B,…を、蓋体30の収容空間Sを形成する上側壁面33aに亘って連続して形成しているので、上側壁面33aに付着した結露水が容器本体20の底部23に水滴となって滴下することを抑えることができる。
【0055】
また、容器本体20の凹溝部26の深さDを、突条部4Aの高さHよりも大きくすることにより、突条部4Aを凹溝部26内に配置し、突条部が削れることを抑えることができる。さらに、突条部4Aの谷状凹部42で保持された水滴を凹溝部26内で保持(保水)することができる。
【0056】
以上、本発明のいくつか実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0057】
本実施形態では、突条部を、容器本体および蓋体の双方に設けたが、グリップ力を高めたい容器本体または蓋体のいずれか一方に形成してもよい。
【0058】
さらに、本実施形態では、梱包材として、梱包容器を例示したが、梱包容器用の容器本体、または蓋体であってもよく、上方に開口部が形成され、開口部から内部に被梱包物を収容する収容空間が形成された開口容器であってもよい。梱包材が、開口容器の場合には、図2に示すように、側壁部の内壁部に、突条部と凹溝部が形成される。
【0059】
さらに、本実施形態では、突条部を、容器本体および蓋体の内壁面に形成したが、梱包容器の側に面した外壁面にも、上述したように山状凸部を上下方向に沿って配列した突条部をさらに形成してもよく、外壁面のみにこのような突条部を形成してもよい。さらに、外壁面に突条部を形成した場合には、本実施形態に示した内壁面と同様に、突条部を凹溝部の溝底部に形成し、凹溝部の深さを突条部の高さよりも大きくしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10:梱包容器。
20:容器本体、21:開口部、22:側壁部、22a:内壁面、22b:開口端面、23:底部、23a:底面、21a:開口縁部、26:凹溝部、26a:溝底部、27A:嵌合凹溝、27B:嵌合凹部、28:通気用溝。
30:蓋体、30a:上面、31a:縁部、32:側壁部、32a:内壁面、32b:端面、33:天板部、33a:上側壁面(天井面)、35:通気用凹部、37A:嵌合凸条、37B:嵌合凸部。
4A,4B:突条部、4a,4b,4c:先端部、41:山状凸部、42:谷状凹部、6:発泡樹脂粒子。
図1
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図10