特許 6640059 外れ止め具および建具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6640059

(24)【登録日】2020年1月7日

(45)【発行日】2020年2月5日

(54)【発明の名称】外れ止め具および建具

(51)【国際特許分類】

   E05D 13/00 20060101AFI20200127BHJP

   E06B 3/46 20060101ALI20200127BHJP

【ＦＩ】

   E05D13/00 A

   E06B3/46

【請求項の数】6

【全頁数】12

(21)【出願番号】特願2016-187173(P2016-187173)

(22)【出願日】2016年9月26日

(65)【公開番号】特開2018-53446(P2018-53446A)

(43)【公開日】2018年4月5日

【審査請求日】2019年2月12日

(73)【特許権者】

【識別番号】390005267

【氏名又は名称】ＹＫＫ ＡＰ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000637

【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所

(72)【発明者】

【氏名】高山 幸久

(72)【発明者】

【氏名】三田 温

【審査官】 家田 政明

(56)【参考文献】

【文献】 特開２０１１−３２８００（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００１−２７０６８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 実開昭６０−７０１７１（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 実開昭５９−１７３８７４（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 実開昭５７−１０１２５５（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 特許第４９４６８２５（ＪＰ，Ｂ２）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｅ０５Ｄ １３／００

Ｅ０６Ｂ ３／４６

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

上枠の上レールが配置される割り溝が形成された本体部材と、
前記本体部材に沿って上下方向にスライド可能に配置されたスライド部材とを備え、
前記本体部材側には、上斜め向きに突出した弾性を有する係合片部が形成され、
前記スライド部材は、前記係合片部に係合される被係合部と、前記割り溝の底部よりも上方に配置可能な規制部とを有し、
前記係合片部は、その弾性変形によって前記被係合部との係合状態から非係合状態に切り替え可能に構成されている
ことを特徴とする外れ止め具。

【請求項2】

請求項１に記載の外れ止め具において、
前記係合片部が形成された位置決め部材を備え、
前記位置決め部材は、前記本体部材に対して上下方向に位置調整可能に固定される
ことを特徴とする外れ止め具。

【請求項3】

請求項２に記載の外れ止め具において、
前記位置決め部材は、前記本体部材に固定される固定部と、前記固定部から垂下した垂下片部とを備え、前記係合片部は、前記垂下片部から上斜め向きに折り返されて形成され、
前記固定部は、前記被係合部に対して上方に配置されている
ことを特徴とする外れ止め具。

【請求項4】

請求項２または請求項３に記載の外れ止め具において、
前記位置決め部材および前記本体部材間には、前記スライド部材がスライド可能に挟み込まれている
ことを特徴とする外れ止め具。

【請求項5】

請求項１から請求項３のいずれか一項に記載の外れ止め具において、
前記本体部材は、縦長の本体基部と、前記本体基部の下部に形成された戸当り部とを有し、前記本体基部のうち前記戸当り部よりも上側には、弾性変形可能な変形部が形成されている
ことを特徴とする外れ止め具。

【請求項6】

上枠、下枠および左右の縦枠を枠組みした枠体と、
前記枠体内に配置される戸体とを備え、
前記上枠には上レールが形成され、
前記下枠には下レールが形成され、
前記戸体は、上框、下框、左右の縦框および面材を框組みして構成され、
前記上框には、前記上レールが配置される上溝部が形成され、
前記下框には、前記下レールが配置される下溝部が形成され、
前記左右の縦框の上端部には、請求項１から請求項５のいずれか一項に記載の外れ止め具が取り付けられている
ことを特徴とする建具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、枠体のレールに沿ってスライド可能な網戸、障子等が前記レールから外れることを抑制する外れ止め具および建具に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、外れ止め具として、網戸の縦框の上端に取り付けられる本体部と、本体部に対して上下方向にスライド可能なスライド部とを備えた外れ止め具が知られている（特許文献１参照）。本体部には、窓枠の上枠のレールに係合する係合溝が形成されており、スライド部には、係合溝内に配置される規制部が形成されている。

【0003】

この外れ止め具は、頭部が本体部に当接し、ねじ部が係合溝を通ってスライド部に螺合した調節用ビスを備えている。この調節用ビスを緩めた状態では、スライド部が本体部に対してスライド可能な状態となり、スライド部のスライドによって規制部を係合溝内で上下方向に移動させられる。また、調節用ビスを締めた状態では、スライド部が本体部に固定される。このようにスライド部を本体部に対して上下方向の所望の位置に固定することで、規制部の上下位置を調節でき、規制部がレール下端に当接することで網戸の上方への移動を規制して当該網戸が窓枠から外れることを防止している。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】実用新案登録第２５６４５３８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

ところで、特許文献１に記載の外れ止め具では、調節用ビスを締めることでスライド部を本体部に締付け固定するため、ビス止めをするのにドライバー等の工具が必要であり煩雑である。
また、窓枠に対して網戸を取り外し、取り付ける度に調節用ビスを緩めたり締めたりするので、その都度、規制部を上下方向の所望の位置に正確に位置決めすることが困難である。

【0006】

本発明の目的は、規制部を簡単にかつ繰り返し正確に位置決めできる外れ止め具および建具を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明の外れ止め具は、上枠の上レールが配置される割り溝が形成された本体部材と、前記本体部材に沿って上下方向にスライド可能に配置されたスライド部材とを備え、前記本体部材側には、上斜め向きに突出した弾性を有する係合片部が形成され、前記スライド部材は、前記係合片部に係合される被係合部と、前記割り溝の底部よりも上方に配置可能な規制部とを有し、前記係合片部は、その弾性変形によって前記被係合部との係合状態から非係合状態に切り替え可能に構成されていることを特徴とする。

【0008】

本発明の外れ止め具によれば、係合片部が可撓性を有するので、スライド部材を上方へスライドすることで、被係合部が係合片部を弾性変形させながら上方に移動し、当該被係合部が係合片部よりも上方に位置した際に係合片部が元の形状に戻って被係合部と係合する。このように係合片部が被係合部にスナップフィット式に係合することで、規制部を割り溝の底部よりも上方に簡単に配置できる。
また、手動操作によって係合片部を弾性変形させることで被係合部との係合を解除し、次にスライド部材を下方へスライドすることで規制部の位置を割り溝に対して下げることができる。このツーアクションによって規制部の位置を下げることで、戸体を持ち上げて枠体から取り外すことができる。
さらに、再び戸体を枠体内に吊り込んだ際に、前述同様にスライド部材を上方へスライドして係合片部を被係合部に係合することで、規制部を前述した位置と同位置に正確に位置決めできる。

【0009】

本発明の外れ止め具では、前記係合片部が形成された位置決め部材を備え、前記位置決め部材は、前記本体部材に対して上下方向に位置調整可能に固定されることが好ましい。
このような構成によれば、各種寸法の上レール、戸体に対応して規制部の上下初期位置を調整でき、外れ止め具の汎用性を向上できる。
なお、規制部による戸体の持ち上がり規制および解除は、位置決め部材を本体部材に対して上下方向に位置調整することなく、前述したように、係合片部および被係合部の係合および解除、スライド部材のスライドによって繰り返し正確に行うことができる。

【0010】

本発明の外れ止め具では、前記位置決め部材は、前記本体部材に固定される固定部と、前記固定部から垂下した垂下片部とを備え、前記係合片部は、前記垂下片部から上斜め向きに折り返されて形成され、前記固定部は、前記被係合部に対して上方に配置されていることが好ましい。
このような構成によれば、スライド部材が過度に上方に移動されようとしても、被係合部が固定部に当接して当該スライド部材の上方への移動を規制でき、規制部の上下位置を保つことができる。

【0011】

本発明の外れ止め具では、前記位置決め部材および前記本体部材間には、前記スライド部材がスライド可能に挟み込まれていることが好ましい。
このような構成によれば、スライド部材を保持するための他の部材などを増やすことなく、スライド部材を上下方向にスライド可能に保持でき、構成を簡略化できる。

【0012】

本発明の外れ止め具では、前記本体部材は、縦長の本体基部と、前記本体基部の下部に形成された戸当り部とを有し、前記本体基部のうち前記戸当り部よりも上側には、弾性変形可能な変形部が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、戸体がスライドして戸当り部が縦枠に当たった際に、変形部が変形することで縦枠への衝撃を軽減でき、当該衝撃による縦枠の変形を抑制できる。

【0013】

本発明の建具は、上枠、下枠および左右の縦枠を枠組みした枠体と、前記枠体内に配置される戸体とを備え、前記上枠には上レールが形成され、前記下枠には下レールが形成され、前記戸体は、上框、下框、左右の縦框および面材を框組みして構成され、前記上框には、前記上レールが配置される上溝部が形成され、前記下框には、前記下レールが配置される下溝部が形成され、前記左右の縦框の上端部には、前述した本発明の外れ止め具が取り付けられていることを特徴とする。

【0014】

本発明の建具によれば、前述した本発明の外れ止め具による作用効果を発揮できる建具を構成できる。

【発明の効果】

【0015】

本発明によれば、規制部を簡単にかつ繰り返し正確に位置決めできる外れ止め具および建具を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【0016】

【図1】本発明の実施形態に係る引き違い窓を示す縦断面図。

【図2】前記実施形態に係る引き違い窓の網戸を示す斜視図。

【図3】前記実施形態に係る引き違い窓の網戸の要部を示す説明図。

【図4】前記実施形態に係る引き違い窓の網戸の要部を示す平面図。

【図5】前記実施形態に係る引き違い窓の外れ止め具の係合状態を示す斜視図。

【図6】前記実施形態に係る引き違い窓の外れ止め具の非係合状態を示す斜視図。

【図7】前記実施形態に係る引き違い窓の外れ止め具を示す分解斜視図。

【図8】前記実施形態に係る引き違い窓の外れ止め具の要部を示す説明図。

【発明を実施するための形態】

【0017】

［本実施形態の構成］
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図１において、本実施形態に係る建具である引き違い窓１は、図示しない建物躯体の開口部に設置されるものである。引き違い窓１は、窓枠２（枠体）と、左右引き違い形式にスライド可能に窓枠２内に配置される戸体である内障子３、外障子４および網戸５とを備えている。

【0018】

窓枠２は、アルミ押出形材によって形成された上枠２１、下枠２２および左右の縦枠を枠組みして構成されており、上枠２１には上レール２１１〜２１３が形成され、下枠２２には下レール２２１〜２２３が形成されている。上レール２１１および下レール２２１には、内障子３が左右方向にスライド可能に嵌合されており、上レール２１２および下レール２２２には、外障子４が左右方向にスライド可能に嵌合されており、上レール２１３および下レール２２３には、網戸５が左右方向にスライド可能に嵌合されている。

【0019】

内障子３および外障子４は、アルミ押出形材によって形成された上框、下框、左右の縦框を組んだ框内に面材であるガラスパネルを嵌め込んでそれぞれ構成されている。引き違い窓１の閉鎖状態で重なり合う内障子３および外障子４の縦框は、召合せ框として構成されている。

【0020】

図２は網戸５の内観を示す斜視図である。網戸５は、アルミ押出形材によって形成された上框５１、下框５２および左右の縦框５３を縦框勝ちに組んだ框内に面材である網材（図示省略）を張って構成されている。
上框５１および縦框５３の上端部には、上レール２１３が配置される上溝部５１１（図３参照）が形成されている。下框５２および縦框５３の下端部には、下レール２２３が配置される下溝部５２１（図１参照）が形成されている。

【0021】

下框５２の左右両端寄りの部分には、下レール２２３に載せられる戸車を有する戸車装置５５がそれぞれ取り付けられている。
左右の縦框５３の上端部には、外れ止め具１０がそれぞれ取り付けられている。なお、図２では右側の縦框５３に取り付けられた合成樹脂製の外れ止め具１０だけを示している。

【0022】

右側の縦框５３に取り付けられた外れ止め具１０と左側の縦框５３に取り付けられた外れ止め具１０とは、概略同様に形成されているが互いに左右逆向きに形成されている。以下、右側の縦框５３に取り付けられた外れ止め具１０について説明し、左側の縦框５３に取り付けられた外れ止め具１０の説明を省略する。

【0023】

外れ止め具１０は、図３〜７に示すように、上枠２１の上レール２１３が配置される割り溝１１０が形成された本体部材１１と、本体部材１１に沿って上下方向にスライド可能に配置されたスライド部材１２と、スライド部材１２の本体部材１１に対する上下位置を位置決めする位置決め部材１３と、本体部材１１に回動可能に軸支された当接アーム１４とを備えている。

【0024】

本体部材１１は、図７に示すように、前述した割り溝１１０が上部に形成された縦長の本体基部１１１と、本体基部１１１の前面下部に形成された戸当り部１１２と、本体基部１１１の背面上部に形成された軸支部１１３とを有している。

【0025】

本体基部１１１の前面側には、スライド部材１２を上下方向に沿ってガイドする第一ガイド部１１４と、位置決め部材１３を上下方向に沿ってガイドする第二ガイド部１１５とが形成されている。

【0026】

第一ガイド部１１４は、本体基部１１１の前面に上下方向に沿って縦長板状に形成されており、その両側面がスライド部材１２に対するガイド面として構成されている。
第二ガイド部１１５は、第一ガイド部１１４から突出して縦長ブロック状に形成されており、その上下方向に沿った両側面が位置決め部材１３に対するガイド面として構成されている。
本体基部１１１、第一ガイド部１１４および第二ガイド部１１５には、調整用ネジ６０が挿通される挿通孔１１６が形成されている。
本体基部１１１のうち第一ガイド部１１４よりも下側であって戸当り部１１２よりも上側の部分には、弾性変形可能な変形部１１７が形成されている。

【0027】

戸当り部１１２は、上下方向に直交する方向において本体基部１１１の前面下部から突出して形成されており、その突出端面１１２Ａ（図６参照）は、スライド部材１２および位置決め部材１３よりも本体基部１１１の前面から離れて位置している。
また、戸当り部１１２には、図６に示すように本体部材１１に対して下方へスライドした状態のスライド部材１２に当接する当接段部１１２Ｂが形成されている。当接段部１１２Ｂは、スライド部材１２に当接することでスライド部材１２のさらなる下方へのスライドを規制する。

【0028】

軸支部１１３は、本体基部１１１の背面上部に形成された一対の軸支板部１１３Ａ，１１３Ｂ（図４参照）と、当接アーム１４を付勢する捩りバネ１４５の一端を受ける受け板部１１３Ｃとを有している。軸支板部１１３Ａ，１１３Ｂには、後述する当接アーム１４の軸部１４３が差し込まれる軸孔１１３Ｄが形成されている。

【0029】

当接アーム１４は、上レール２１３に当接するヘッド部１４１と、ヘッド部１４１が先端に連続するアーム部１４２と、アーム部１４２の基端に連続する軸部１４３とを有している。軸部１４３は、軸支部１１３の軸孔１１３Ｄに差し込まれて軸支されている。また、軸部１４３には、捩りバネ１４５が装着されている。捩りバネ１４５の一端は前述したように受け板部１１３Ｃに受けられており、捩りバネ１４５の他端はアーム部１４２に受けられている。
この当接アーム１４は、網戸５が窓枠２に吊り込まれると、上レール２１３の下端に当接し、捩りバネ１４５の付勢に抗して下方に押し下げられる。このとき、当接アーム１４は上レール２１３に圧接した状態となり、この圧接によって網戸５のスライドに抗する摩擦抵抗を生じている。網戸５の位置は、前述した摩擦抵抗によってある程度保たれるので、網戸５が意図せずにスライドしてしまうことを抑制できる。

【0030】

スライド部材１２は、図７に示すように、縦長の一対のスライド片部１２１Ａ，１２１Ｂと、スライド片部１２１Ａ，１２１Ｂの下部に形成された被係合部１２２と、スライド片部１２１Ａ，１２１Ｂの上部に形成された規制部１２３と、スライド片部１２１Ａ，１２１Ｂに沿って縦長に形成された被挟込み片部１２４Ａ，１２４Ｂとを有している。

【0031】

スライド片部１２１Ａ，１２１Ｂは、後述する位置決め部材１３の固定部１３１を配置可能な間隔を隔てて配置されている。
被係合部１２２は、スライド片部１２１Ａ，１２１Ｂの長手方向に直交する方向に突出した被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂと、被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂから下方に延出した延出片部１２２Ｃ，１２２Ｄと、延出片部１２２Ｃ，１２２Ｄの下端を連結した下片部１２２Ｅとを有している。
規制部１２３は、スライド片部１２１Ａ，１２１Ｂの上端を連結した上片部によって形成されており、この上片部の上面に上レール２１３の下端が当接可能に構成されている。
被挟込み片部１２４Ａは、スライド片部１２１Ａからスライド片部１２１Ｂ側に突出しており、被挟込み片部１２４Ｂは、スライド片部１２１Ｂからスライド片部１２１Ａ側に突出して形成されている。このため、被挟込み片部１２４Ａ，１２４Ｂ間の間隔は、スライド片部１２１Ａ，１２１Ｂ間の間隔よりも狭くなっている。

【0032】

位置決め部材１３は、本体部材１１に固定される固定部１３１と、固定部１３１から垂下した垂下片部１３５と、垂下片部１３５から上斜め向きに折り返された可撓性を有する係合片部１３６とを有している。

【0033】

固定部１３１は、矩形板状であり、上下方向に沿った長孔１３２が形成されている。また、固定部１３１の上下方向に沿った両側縁部には、本体基部１１１との間に被挟込み片部１２４Ａ，１２４Ｂを上下方向にスライド可能に挟み込む挟込み用段部１３３Ａ，１３３Ｂが形成されている。
長孔１３２には、第二ガイド部１１５が配置されている。長孔１３２を形成する固定部１３１の上下方向に沿った孔形成面は、第二ガイド部１１５のガイド面に摺動可能に当接している。
固定部１３１の長孔１３２および本体部材１１の挿通孔１１６に調整用ネジ６０のねじ軸部が挿通されて本体部材１１の背面に当てられた裏板（図示省略）に螺合し、かつ、調整用ネジ６０の頭部が固定部１３１の前面に圧接することで、位置決め部材１３は本体部材１１に固定される。また、調整用ネジ６０を緩めることで、位置決め部材１３は第二ガイド部１１５のガイド面に沿って上下方向に位置調整可能な状態となる。
前述した固定部１３１は、被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂに対して上方に配置されている。

【0034】

垂下片部１３５は、固定部１３１の背面下部から下方に垂下して形成されており、本体基部１１１の変形部１１７の前面に当接している。
係合片部１３６の先端は、固定部１３１に対して上下方向の間隔を隔てて配置されている。係合片部１３６および被係合部１２２の係合状態（図８（Ａ）参照）では、係合片部１３６の先端は被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂの下端に当接し、係合片部１３６および固定部１３１間には被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂが配置される。
また、係合片部１３６の先端側部分には、係合片部１３６を垂下片部１３５側に撓ませるように押し操作可能な押し操作部１３７が形成されている。押し操作部１３７を押し操作した場合には、係合片部１３６が垂下片部１３５側に弾性変形し、係合片部１３６の先端が被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂの下端から外れて、係合片部１３６および被係合部１２２の係合が解除された非係合状態（図８（Ｂ）参照）となり、スライド部材１２は本体部材１１に対して下方にスライド可能な状態となる。

【0035】

前述した外れ止め具１０は、本体基部１１１に沿ってスライド部材１２が配置され、次に位置決め部材１３がスライド部材１２に沿って配置され、調整用ネジ６０によって位置決め部材１３が本体部材１１に固定され、当接アーム１４を軸支部１１３に軸支させることによって構成されている。このように構成された外れ止め具１０は、図３，４に示すように縦框５３に取り付けられ、軸支部１１３および当接アーム１４は上框５１の上溝部５１１に配置されている。

【0036】

［本実施形態の操作］
以下、本実施形態に係る引き違い窓１の外れ止め具１０の操作について説明する。
網戸５を窓枠２に組んだ状態では、上溝部５１１に上レール２１３が配置され、下溝部５２１に下レール２２３が配置されている。下レール２２３には戸車装置５５の戸車が載っている。上レール２１３は、外れ止め具１０の割り溝１１０に配置されており、上レール２１３の下端には、当接アーム１４のヘッド部１４１が圧接している。このとき、外れ止め具１０は、図５に示すようにスライド部材１２が位置決め部材１３に係合して位置決めされた外れ止めセット状態である。具体的には、図８（Ａ）に示すように、係合片部１３６の先端が被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂの下端に当接することでスライド部材１２の下方へのスライドを規制しており、固定部１３１が被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂの上端よりも上方に対向して位置することで、スライド部材１２の上方へのスライドを規制している。スライド部材１２の下片部１２２Ｅは、押し操作部１３７の下方に位置している。外れ止め具１０の規制部１２３は、割り溝１１０に重なって配置されており、割り溝１１０の底部１１０Ａよりも上方に位置している。このため、網戸５が持ち上げられようとしても、規制部１２３が上レール２１３の下端に当接することで、網戸５の持ち上がりを規制している。

【0037】

規制部１２３の位置を下げる場合には、先ず、押し操作部１３７を押し操作して係合片部１３６を垂下片部１３５側に弾性変形させ、図８（Ｂ）に示すように、係合片部１３６の先端を被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂの下端から外して非係合状態にする。次に、スライド部材１２を下方へスライドして図６に示す外れ止め解除状態とする。この状態では、規制部１２３は割り溝１１０よりも下方に位置するので、当該規制部１２３による網戸５の持ち上げ規制は解除される。これにより、網戸５を持ち上げて窓枠２から取り外すことが可能な状態となる。
なお、スライド片部１２１Ａ，１２１Ｂの下端は戸当り部１１２の当接段部１１２Ｂに当接することで、スライド部材１２の過度な下方へのスライドを規制している。

【0038】

前述したように外れ止め解除状態とした外れ止め具１０を再び外れ止めセット状態とする場合には、スライド部材１２を上方へスライドさせ、被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂを係合片部１３６に当接させて当該係合片部１３６を垂下片部１３５側に弾性変形させ、被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂの下端が係合片部１３６の先端よりも上方に位置させた際に、係合片部１３６が元の状態に復元し、係合片部１３６の先端が被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂの下端に当接する。つまり、係合片部１３６を被係合部１２２にスナップフィット式に係合させる。このとき、被係合突部１２２Ａ，１２２Ｂは、固定部１３１および係合片部１３６間に配置され、規制部１２３は割り溝１１０と重なって位置した外れ止めセット状態となる。このように位置決め部材１３によってスライド部材１２を位置決めするので、規制部１２３は繰り返し同位置に配置可能である。
なお、調整用ネジ６０を緩めて位置決め部材１３自体の上下位置を調整することで、規制部１２３の上下方向における初期設定位置を調整可能である。

【0039】

［本実施形態の効果］
（１）本実施形態によれば、外れ止め具１０は、上枠２１の上レール２１３が配置される割り溝１１０が形成された本体部材１１と、本体部材１１に沿って上下方向にスライド可能に配置されたスライド部材１２とを備え、本体部材１１側には、上斜め向きに突出した弾性性を有する係合片部１３６が形成され、スライド部材１２は、係合片部１３６に係合される被係合部１２２と、割り溝１１０の底部１１０Ａよりも上方に配置可能な規制部１２３とを有し、係合片部１３６は、その弾性変形によって被係合部１２２との係合状態から非係合状態に切り替え可能に構成されていることを特徴とする。
上記構成を有するため、係合片部１３６が可撓性を有するので、スライド部材１２を上方へスライドすることで、被係合部１２２が係合片部１３６を弾性変形させながら上方に移動し、当該被係合部１２２が係合片部１３６よりも上方に位置した際に係合片部１３６が元の形状に戻って被係合部１２２と係合する。このように係合片部１３６が被係合部１２２にスナップフィット式に係合することで、規制部１２３を割り溝１１０の底部１１０Ａよりも上方に簡単に配置できる。
また、手動操作によって係合片部１３６を弾性変形させることで被係合部１２２との係合を解除し、次にスライド部材１２を下方へスライドすることで規制部１２３の位置を割り溝１１０に対して下げることができる。このツーアクションによって規制部１２３の位置を下げることで、網戸５を持ち上げて窓枠２から取り外すことができる。
さらに、再び網戸５を窓枠２内に吊り込んだ際に、前述同様にスライド部材１２を上方へスライドして係合片部１３６を被係合部１２２に係合することで、規制部１２３を前述した位置と同位置に正確に位置決めできる。
さらに、本実施形態では、以下の各効果を発揮できる。
（２）係合片部１３６が形成された位置決め部材１３を備え、位置決め部材１３は、本体部材１１に対して上下方向に位置調整可能に固定される。
このため、各種寸法の上レール２１３、網戸５に対応して規制部１２３の上下初期位置を調整でき、外れ止め具１０の汎用性を向上できる。
（３）位置決め部材１３は、本体部材１１に固定される固定部１３１と、固定部１３１から垂下した垂下片部１３５とを備え、係合片部１３６は、垂下片部１３５から上斜め向きに折り返されて形成され、固定部１３１は、被係合部１２２に対して上方に配置されている。
このため、スライド部材１２が過度に上方に移動されようとしても、被係合部１２２が固定部１３１に当接して当該スライド部材１２の上方への移動を規制でき、規制部１２３の上下位置を保つことができる。
（４）位置決め部材１３および本体部材１１間には、スライド部材１２がスライド可能に挟み込まれている。
このため、スライド部材１２を保持するための他の部材などを増やすことなく、スライド部材１２を上下方向にスライド可能に保持でき、構成を簡略化できる。
（５）本体部材１１は、縦長の本体基部１１１と、本体基部１１１の下部に形成された戸当り部１１２とを有し、本体基部１１１のうち戸当り部１１２よりも上側には、弾性変形可能な変形部１１７が形成されている。
このため、網戸５がスライドして戸当り部１１２が縦枠に当たった際に、変形部１１７が変形することで縦枠への衝撃を軽減でき、当該衝撃による縦枠の変形を抑制できる。

【0040】

［変形例］
本発明は、以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、本体部材１１に位置決め部材１３が固定されているが、これに限られず、例えば、位置決め部材１３の構成を省略し、本体部材１１に直接に係合片部１３６形成してもよい。

【0041】

前記実施形態では、位置決め部材１３および本体部材１１間にスライド部材１２の被挟込み片部１２４Ａ，１２４Ｂを上下方向にスライド可能に挟み込んでいるが、例えば前述したように位置決め部材１３の構成が省略される場合には、本体部材１１自体に上下方向に沿った嵌合溝を形成し、この嵌合溝にスライド部材１２を上下方向にスライド可能に嵌合してもよい。

【0042】

前記実施形態では、本体基部１１１の下部に戸当り部１１２が形成され、本体基部１１１のうち戸当り部１１２よりも上側には変形部１１７が形成されているが、これら戸当り部１１２および変形部１１７の構成を省略してもよい。

【0043】

前記実施形態では、網戸５を外れ止め具１０が取り付けられる戸体として説明したが、このほか、内障子３や外障子４を外れ止め具１０が取り付けられる戸体としてもよい。
また、前記実施形態では、引き違い窓１を建具として説明したが、このほか、片引き窓等の戸体が枠体のレールに沿ってスライドするスライド式の建具であればよい。

【符号の説明】

【0044】

１…引き違い窓（建具）、２…窓枠、３…内障子（戸体）、４…外障子（戸体）、５…網戸（戸体）、１０…外れ止め具、１１…本体部材、１２…スライド部材、１３…位置決め部材、１４…当接アーム、２１…上枠、２２…下枠、５１…上框、５２…下框、５３…縦框、５５…戸車装置、６０…調整用ネジ、１１０…割り溝、１１０Ａ…底部、１１１…本体基部、１１２…戸当り部、１１２Ａ…突出端面、１１２Ｂ…当接段部、１１３…軸支部、１１３Ａ，１１３Ｂ…軸支板部、１１３Ｃ…受け板部、１１３Ｄ…軸孔、１１４…第一ガイド部、１１５…第二ガイド部、１１６…挿通孔、１１７…変形部、１２１Ａ，１２１Ｂ…スライド片部、１２２…被係合部、１２２Ａ，１２２Ｂ…被係合突部、１２２Ｃ，１２２Ｄ…延出片部、１２２Ｅ…下片部、１２３…規制部、１２４Ａ，１２４Ｂ…被挟込み片部、１３１…固定部、１３２…長孔、１３３Ａ，１３３Ｂ…挟込み用段部、１３５…垂下片部、１３６…係合片部、１３７…押し操作部、１４１…ヘッド部、１４２…アーム部、１４３…軸部、１４５…捩りバネ、２１１〜２１３…上レール、２２１〜２２３…下レール、５１１…上溝部、５２１…下溝部。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】