【文献】
Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys., 2003, Vol.57, No.2, pp.563-572
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0023】
例示的な態様が、参照図において例証される。本明細書において開示される態様および図は、制限的というよりもむしろ例証的であると見なされるべきであることが意図される。
【0024】
【
図1A】
図1A〜1Eは、本発明の態様に従い、ラットにおけるモノクロタリン(MCT)誘導性肺高血圧症が、増加したPAI-1および減少したId1の転写活性と関連していることを実証するグラフである。右心室収縮期圧(RVSP、
図1A)および右心室肥大(RVH、
図1B)の変化を、MCT(40mg/kg 皮下(SC))によるSprague Dawleyラットの処理後に様々な間隔で測定した。RVSPを右心室カテーテル検査によって測定し、かつRVHを、左心室および中隔(LV+S)壁の合計に対する右心室(RV)自由壁の重量の比によって判定した(1つの時点につきn=3)。
【
図1B】
図1A〜1Eは、本発明の態様に従い、ラットにおけるモノクロタリン(MCT)誘導性肺高血圧症が、増加したPAI-1および減少したId1の転写活性と関連していることを実証するグラフである。右心室収縮期圧(RVSP、
図1A)および右心室肥大(RVH、
図1B)の変化を、MCT(40mg/kg 皮下(SC))によるSprague Dawleyラットの処理後に様々な間隔で測定した。RVSPを右心室カテーテル検査によって測定し、かつRVHを、左心室および中隔(LV+S)壁の合計に対する右心室(RV)自由壁の重量の比によって判定した(1つの時点につきn=3)。
【
図1C】MCT処理ラットの肺の定量的RT-PCRにより、TGF-βシグナル伝達の増加を反映するPAI-1転写の上昇が明らかとなり(
図1C)、そのレベルは、RVSPに基づくPHの程度と直接相関した(
図1D&
図1E)。対照的に、Bmpr2およびその転写標的Id1の発現の減少が観察され、両方とも、RVSPと逆相関するレベルを有した(n=5〜6、対照ラットと比較して
*p<0.05および
**p<0.01)。
【
図1D】MCT処理ラットの肺の定量的RT-PCRにより、TGF-βシグナル伝達の増加を反映するPAI-1転写の上昇が明らかとなり(
図1C)、そのレベルは、RVSPに基づくPHの程度と直接相関した(
図1D&
図1E)。対照的に、Bmpr2およびその転写標的Id1の発現の減少が観察され、両方とも、RVSPと逆相関するレベルを有した(n=5〜6、対照ラットと比較して
*p<0.05および
**p<0.01)。
【
図1E】MCT処理ラットの肺の定量的RT-PCRにより、TGF-βシグナル伝達の増加を反映するPAI-1転写の上昇が明らかとなり(
図1C)、そのレベルは、RVSPに基づくPHの程度と直接相関した(
図1D&
図1E)。対照的に、Bmpr2およびその転写標的Id1の発現の減少が観察され、両方とも、RVSPと逆相関するレベルを有した(n=5〜6、対照ラットと比較して
*p<0.05および
**p<0.01)。
【
図2】
図2A〜2Fは、免疫ブロットおよびグラフを示している。
図2A〜2Cは、本発明の態様に従い、ヒト肺動脈平滑筋細胞(PASMC)において、TGFBRII-Fcが、TGFβ1、TGFβ3、およびGDF15のシグナル伝達を選択的に阻害することを実証している。培養したPASMCから血清を取り除き、かつ様々な濃度におけるBMP4、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、およびGDF15リガンドとともに30分間インキュベートした。ウェスタンブロットおよびqPCRを実施して、TGFBRII-Fcがインビトロでシグナル伝達活性を調節し得る能力を査定した。
図2D〜2Fは、本発明の態様に従い、血管平滑筋細胞において、TGFBRII-Fcが、TGFβ1およびGDF15のシグナル伝達を選択的に阻害することを実証している。(
図2D)ヒト大動脈平滑筋細胞から血清を一晩取り除き、次いで、表示される濃度におけるBMP4、TGFβ1、TGFβ2、またはGDF15とともに30分間インキュベートし、かつ示されているように、Smad1、2、3、および5のリン酸化について免疫ブロットによって解析した。TGFβ1、TGFβ2、およびGDF15は、用量依存的形式でSmad2およびSmad3、ならびにより低い程度にSmad1および5の活性化を誘発し、一方でBMP4のみが、Smad1および5を活性化した。(
図2E〜
図2F)HASMCから血清を取り除き、TGFBRII-Fc(2000ng/ml)またはビヒクルで前処理し、その後にTGFβ1(1ng/ml)、TGFβ2(1ng/ml)、またはGDF15(30ng/ml)との2時間のインキュベーションが続いた。qRT-PCRによる遺伝子発現の解析によって、GDF15およびTGFβ1誘導性PAI-1およびId1 mRNA発現の強力な阻害が明らかとなったが、TGFβ2誘導性の場合はそうではなかった(それぞれn=3〜5個のサンプル、ビヒクルと比較して
*p<0.05、
**p<0.01)。
【
図3】
図3A〜3Dは、本発明の態様に従い、低用量TGFBRII-Fc処理が、右心室収縮期圧(RVSP)の低下への傾向、右心室肥大の減少への傾向、および肺血管再構築の有意な低下を引き起こすことを実証するグラフである。TGFBRII-Fc(5mg/kg、1週間に2回)を伴うまたは伴わないMCTによる処理の3週間後、ラットをペントバルビタールによる麻酔下でのカテーテル検査および気管内挿管によって盲検形式で解析して、RVSP(
図3A)、全身動脈圧(示さず)を判定し、かつ安楽死させた。Fulton比(RV/(LV+S))の測定に基づき、RVHの程度を盲検形式で査定した(
図3B)。値は平均±SEMとして表されている、n=6〜8、対照ラットと比較して
*p<0.05および
**p<0.01。肺組織切片をα平滑筋アクチンおよびフォン・ヴィレブランド因子で染色して、それぞれ血管平滑筋の血管および内皮を識別した。遠位細葉内血管の筋性化(muscularization)(直径10〜50μm)を定量し、かつ非筋性の、部分的に筋性化された、および完全に(周囲に)筋性化された血管のパーセンテージを算出した(
図3C)。すべての完全に筋性化された細葉内血管について内壁厚を算出した(直径10〜50μm、
図3D)。指数=(外径−内径)/外径×100として、壁厚指数を算出した。TGFBRII-Fc処理(5mg/kg、1週間に2回)は、完全に筋性化された血管のパーセンテージの低下への傾向、および内壁厚指数の有意な低下を引き起こした。値は平均±SEMとして表されている、それぞれ6〜8匹のラットからの1処理群につきn=100〜150本の血管、示されているとおりのp値。
【
図4】
図4A〜4Dは、本発明の態様に従い、高用量TGFBRII-Fc処理が、右心室収縮期圧(RVSP)、右心室肥大を減少させ、かつ肺血管再構築を阻止することを実証するグラフを示している。TGFBRII-Fc(15mg/kg、1週間に2回)を伴うまたは伴わないMCTによる処理の3週間後、ラットを盲検形式で解析してRVSPを判定した(
図4A)。Fulton比の測定に基づき、RVHの程度を盲検形式で査定した(
図4B)。値は平均±SEMとして表されている、n=6〜8。遠位細葉内血管の筋性化(直径10〜50μm)を定量した(
図4C)。すべての完全に筋性化された細葉内血管について内壁厚を算出した(直径10〜50μm、
図4D)。TGFBRII-Fc処理(15mg/kg、1週間に2回)は、完全に筋性化された血管のパーセンテージを有意に低下させ、かつ内壁厚指数を低下させた。値は平均±SEMとして表されている、それぞれ6〜8匹のラットからの1処理群につきn=89〜127本の血管、対照ラットと比較して
*p<0.05および
***p<0.001。
【
図5】
図5A〜5Dは、本発明の態様に従い、TGFBRII-Fcが、RV肥大を減少させることを心エコー検査により実証するグラフを示している。MCT(40mg/kg SC)処理後、ラットを、MCTの24時間後に開始する、ビヒクルまたはTGFBRII-Fc(15mg/kg、1週間につき2回)で処理した。MCTの2週間後、ラットを1.5%イソフルランによる麻酔下で小動物用超音波検査法によって解析して、右心室厚および拡張期径(
図5A&
図5B)、肺血流加速時間(PAT、
図5C)、ならびに肺駆出時間(PET、
図5D)を測定した。値は平均±SEMとして表されている、n=6〜8、対照ラットと比較して
*p<0.05および
***p<0.001。
【
図6】
図6A〜6Fは、本発明の態様に従い、TGFBRII-Fcが、PH肺組織においてTGFβ仲介による転写を阻害したことを実証するグラフである。MCT誘導性PHは、TGFβ1 mRNA発現の軽度の増加、およびTGFβ2 mRNA発現の有意な減少と相関した(
図6A〜
図6C)。MCT処理後のBmpr2およびId1発現の抑制は、TGFBRII-Fc(15mg/kg、1週間に2回、
図6D〜
図6E)によって影響を受けず、一方でTGFBRII-Fcによる処理は、TGFβ1およびその転写標的PAI-1の有意な減少をもたらした(
図6F)。値は平均±SEMとして表されている、n=3〜5、対照と比較して
*p<0.05および
**p<0.01。
【
図7】
図7A〜7Cは、本発明の態様に従い、PHの確立後のTGFBRII-Fcによる処理が、本発明の様々な態様に従った、PHおよび死亡率の部分的救済と関連していることを実証するグラフである。MCT(40mg/kg SC)による処理後、PHの確立後の17日目に開始する遅延形式で、ラットをTGFBRII-Fc(15mg/kg、1週間に3回)で処理した。Kaplan-Meier解析(
図7A)により、ビヒクルで処理されたラットと比較して、TGFBRII-Fc処理群における生存率の改善への傾向が明らかとなった(1群につきn=12、p=0.10)。35日目における生存動物の間で、TGFBRII-Fcで処理された動物の間にRVSPの有意な減少があった(
図7B)。しかしながら、生存動物の間に、RVHの有意な差異はなかった(C)。示される値は平均±SEMである、1群につきn=8〜11、対照と比較して
**p<0.01。
【
図8A】
図8Aおよび8Bは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4のヒンジドメイン(
図8A)、ならびにFcドメイン(
図8B)のアミノ酸配列を示している。IgG1ヒンジドメイン(SEQ ID NO: 65);IgG2ヒンジドメイン(SEQ ID NO: 66);IgG3ヒンジドメイン(SEQ ID NO: 67);IgG4ヒンジドメイン(SEQ ID NO: 68);
図8Bは、
図8Aと同じ順序で示されている:IgG1 Fcドメイン(SEQ ID NO: 69)、すなわちアミノ酸(aa)の1行目;IgG2 Fcドメイン(SEQ ID NO: 70)、すなわちaaの2行目;IgG3 Fcドメイン(SEQ ID NO: 71)、すなわちaaの3行目;IgG4 Fcドメイン(SEQ ID NO: 72)、すなわちaaの4行目。
図8Aおよび
図8Bに示されるアミノ酸残基は、Kabat EUの番号付けシステムに従って番号付けされている。重鎖間S--S結合を形成する、それぞれのヒンジ領域の最初および最後のシステイン残基を同じ箇所に配置することによって、アイソタイプ配列がIgG1配列とアラインメントされている。
図8Bに関して、CH2ドメインにおける残基はプラス記号(+)によって表示されており、一方でCH3ドメインにおける残基は波線によって表示されている。任意のFcドメインを本発明の方法において用いることができ、様々なFCドメインに対して手引きを提供する
図8に記載されるように、すべての抗体配列をアライメントすることができる。
【
図8B】
図8Aおよび8Bは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4のヒンジドメイン(
図8A)、ならびにFcドメイン(
図8B)のアミノ酸配列を示している。IgG1ヒンジドメイン(SEQ ID NO: 65);IgG2ヒンジドメイン(SEQ ID NO: 66);IgG3ヒンジドメイン(SEQ ID NO: 67);IgG4ヒンジドメイン(SEQ ID NO: 68);
図8Bは、
図8Aと同じ順序で示されている:IgG1 Fcドメイン(SEQ ID NO: 69)、すなわちアミノ酸(aa)の1行目;IgG2 Fcドメイン(SEQ ID NO: 70)、すなわちaaの2行目;IgG3 Fcドメイン(SEQ ID NO: 71)、すなわちaaの3行目;IgG4 Fcドメイン(SEQ ID NO: 72)、すなわちaaの4行目。
図8Aおよび
図8Bに示されるアミノ酸残基は、Kabat EUの番号付けシステムに従って番号付けされている。重鎖間S--S結合を形成する、それぞれのヒンジ領域の最初および最後のシステイン残基を同じ箇所に配置することによって、アイソタイプ配列がIgG1配列とアラインメントされている。
図8Bに関して、CH2ドメインにおける残基はプラス記号(+)によって表示されており、一方でCH3ドメインにおける残基は波線によって表示されている。任意のFcドメインを本発明の方法において用いることができ、様々なFCドメインに対して手引きを提供する
図8に記載されるように、すべての抗体配列をアライメントすることができる。
【
図9】
図9A〜9Bは、TGFBRII-Fc処理に応答した、僧帽弁の再構築、変性、または異常の欠如を実証する組織切片を示している。
図9A 対照。
図9B TGFBRII-Fc処理。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本明細書において引用されるすべての参考文献は、あたかも十分に明記されているかのように、参照によりそれらの全体として組み入れられる。別様に定義されない限り、本明細書において用いられる技術的および科学的な用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3
rd ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 2001);March, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 5
th ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 2001);およびSambrook and Russel, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY 2001)は、本出願において用いられる用語の多くに対する一般的ガイドを当業者に提供する。
【0026】
抗体を調製する方法についての参考文献に関しては、例えばD. Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor NY, 1988);Kohler and Milstein, (1976) Eur. J. Immunol. 6:511;Queen et al. 米国特許第5,585,089号;およびRiechmann et al., Nature 332:323 (1988)を参照されたい。本発明の実践は、別様に示されない限り、当技術分野の技能の範囲内にある、分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、および免疫学の従来的技法を採用する。そのような技法は、Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al., eds., 1999、2011年に至るまでの補足を含む);Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel et al., eds., 1987、2011年に至るまでの補足を含む);Short Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel et al., eds., fifth edition 2002、2011年に至るまでの補足を含む;Molecular Cloning: A Laboratory Manual, third edition (Sambrook and Russel, 2001);PCR: The Polymerase Chain Reaction (Mullis et al., eds., 1994);The Immunoassay Handbook (D. Wild, ed., Stockton Press NY, 1994);Bioconjugate Techniques (Greg T. Hermanson, ed., Academic Press, 1996);Methods of Immunological Analysis (R. Masseyeff, W. H. Albert, and N. A. Staines, eds., Weinheim: VCH Verlags gesellschaft mbH, 1993);Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1999;およびBeaucage et al. eds., Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2000)などの文献において十分に説明されている。
【0027】
当業者であれば、本発明の実践において用いられ得る、本明細書において記載されるものと同様または同等の多くの方法および材料を認識するであろう。本発明の他の特質および利点は、本発明の態様の様々な特質を例として図解している添付の図面と合わせると、以下の詳細な説明から明白になるであろう。実際、本発明は、記載される方法および材料に決して限定されるわけではない。本発明の目的のために、ある特定の用語を下記に定義する。
【0028】
「有益な結果」は、疾患状態の重症度を軽減するまたは緩和すること、疾患状態が悪化するのを阻止すること、疾患状態を治癒すること、疾患状態が発症するのを阻止すること、患者が疾患状態を発症する可能性を下げること、および患者の寿命または平均余命を延ばすことを含み得るが、決してそれらに限定されるわけではない。様々な態様において、疾患状態は、肺高血圧症、肺血管再構築、肺線維症、右心室肥大、過度のTGF-βシグナル伝達に関連した疾患、過度のGDF15シグナル伝達に関連した疾患、および過度のPAI-1シグナル伝達に関連した疾患である。
【0029】
本明細書において用いられる「治療」および「治療すること」とは、治療的処置および予防的または阻止的な手段の両方を指し、目標は、たとえ治療が最終的に不成功に終わったとしても、標的とされる病的状態を鈍化させる(軽減する)こと、病的状態を阻止すること、有益な結果を追求するもしくは獲得すること、または該状態を発症する個体の可能性を下げることである。治療を必要としている人には、該状態をすでに有する人、ならびに該状態を有する傾向がある人または該状態が阻止されるべき人が含まれる。
【0030】
本明細書において用いられる「肺高血圧症」(PH)は、肺血管系としても合わせて知られる、肺動脈(肺動脈高血圧症)、肺静脈、または肺毛細血管における血圧の増加を含み得、息切れ、めまい、失神、脚のむくみ、および他の症状につながる。PHは、著しく減少した運動耐容能および心不全を有する重度の疾患であり得る。PHは、動脈性、静脈性、低酸素性、血栓塞栓性、または混合型を含めた、少なくとも5つの考え得る異なるタイプのうちの1つであり得る。
【0031】
本明細書において用いられる「TGF-βリガンド捕捉体」とは、たとえ単に一時的であったとしてもTGF-βリガンドを捕捉し得、それによって、該リガンドが1種または複数種のさらなる分子と相互作用し得る能力を調節するタンパク質を指す。
【0032】
いくつかの態様において、TGF-βリガンドとは、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、およびGDF15の中より選択されるリガンドを意味し得る。
【0033】
TGF-βリガンド捕捉体の例には、TGF-β受容体のTGF-βリガンド結合ドメインおよび免疫グロブリンのFcドメインを含む、可溶性の組換えTGF-β受容体Fc融合タンパク質が含まれるが、決してそれに限定されるわけではない。
【0034】
したがって、一態様において、対象における肺高血圧症(PH)を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法が提供される。該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与し、それによって対象におけるPHを治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる工程を含み、該TGF-βリガンド捕捉体は、1)TGFβ受容体のTGF-βリガンド結合ドメインおよび2)免疫グロブリンのFcドメイン、ならびに3)任意で、該リガンド結合ドメインと該Fcドメインとの間にリンカー(免疫グロブリンリンカーまたは他のリンカー)を含む。
【0035】
一態様において、TGFβ受容体のTGF-βリガンド結合ドメインは、SEQ ID NO: 63:
もしくはその一部分、またはそれらの変種を含む。
【0036】
一態様において、TGFβ受容体のTGF-βリガンド結合ドメインは、SEQ ID NO: 3もしくはSEQ ID NO: 4もしくはSEQ ID NO: 5、またはそれらの一部分、あるいはそれらの変種を含む。
【0037】
一態様において、Fcドメインは、SEQ ID NO: 64:
もしくはSEQ ID NO: 64の断片/一部分、またはそれらの変種を含む。
【0038】
さらに、例示的なFcドメインは
図1Bに記載されており、例えばSEQ ID NO: 69、70、71、および72。ある特定の態様において、Fcドメインは、SEQ ID NO: 69、SEQ ID NO: 70、SEQ ID NO: 71、もしくはSEQ ID NO: 72を含む、あるいはSEQ ID NO: 69、SEQ ID NO: 70、SEQ ID NO: 71、もしくはSEQ ID NO: 72の断片、またはSEQ ID NO: 69、SEQ ID NO: 70、SEQ ID NO: 71、もしくはSEQ ID NO: 72の変種を含む。
【0039】
本明細書における開示に照らして、適切な結合ドメインを選択することは、当業者の能力の範囲内にある。ある場合には、結合ドメインは、TGF-βII型およびTGF-βI型受容体の細胞外ドメインより選択され得る。非限定的な一例は、可溶性の組換えTGF-βII型受容体Fc融合タンパク質(TGFBRII-Fc)である。
【0040】
さらなる例において、ポリペプチド結合ドメインを設計する由来となる天然受容体は、TβR-I-EDまたはTβR-II-EDであり得る。
【0041】
一態様において、TGFβ受容体のTGF-βリガンド結合ドメインは、TGF-βI型受容体細胞外ドメインの配列もしくは細胞外ドメインの一部分、例えばSEQ ID NO: 73:
もしくはその一部分、または例えばSEQ ID NO: 74:
(A鎖、Fkbp12を含まずに結晶化された非リン酸化I型Tgf-β受容体の細胞質ドメイン、GeneBankアクセッション番号1IAS_A GI:15988007)もしくはその断片/一部分を含む。
【0042】
一態様において、TGFβ受容体のTGF-βリガンド結合ドメインは、TβR-III-EDの配列つまりSEQ ID NO: 75:
(可溶性TGF-β受容体IIIとしても知られ、例えばヒト組換え可溶性TGF-βsRIIIは、Moren A, et al. Molecular cloning and characterization of the human and porcine transforming growth factor-beta type III receptors, 1992, J. Biochem. Biophys. Res. Commun. 189 (1), 356-362に記載されている)の一部分を含む。
【0043】
組換え可溶性TGF-βRII型cDNAは、Melissa A. Rowland-Goldsmith et al. Soluble Type II Transforming Growth Factor-β (TGF-β) Receptor Inhibits TGF-β Signaling in COLO-357 Pancreatic Cancer Cells in Vitro and Attenuates Tumor Formation1, 2001, Clin Cancer Res, 7:2931に記載されている。TβRIIの細胞外ドメインのコード配列(シグナル配列を含むヌクレオチド1〜477)のPCR増幅のための鋳型として、ヒトTβRIIの完全cDNAが用いられた。PCRは、センスプライマー:
およびアンチセンスプライマー:
を用いて実施された。SEQ ID NO: 78は、II型トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)受容体細胞外ドメインの例である:
。
【0044】
TGFβ受容体の完全な細胞外部分は、典型的に、それらの折り畳まれたリガンド結合ドメインに隣接する、構造化されていないセグメントを含む。これらの構造化されていない細胞外部分は、PDBデータベースより入手可能な実験的に決定された3D構造(Berman et al., 2000, Nucl. Acid Res. 28:235)、例えばII型TGF-β受容体細胞外ドメインに関する結晶構造(Hart et al., 2002 Nat. Struct. Biol. 9:203;Boesen et al., 2002, Structure 10:913;Groppe et al., 2008, Mol. Cell 29:157)、I型TGF-β受容体細胞外ドメインに関する結晶構造(Groppe et al., 2008, Mol. Cell 29:157)、またはII型TGF-β受容体細胞外ドメインのNMR構造(Deep et al., 2003, Biochemistry 42:10126)から明白である。当業者であれば、TGFβ受容体のリガンド結合ドメインを同定することに十分精通している。TGFβ捕捉体に関しては、当業者に周知の標準的リガンド結合アッセイ、例えば放射性リガンド結合アッセイを用いて、リガンドの結合を確認することができる(例えば、Sittampalam, G. S.; Kahl, S. D.; Janzen, W. P. High-throughput screening: Advances in assay technologies, 1997, Current Opinion in Chemical Biology 1(3):384-391;およびDe Jong, L. A. A.; et al. Receptor-ligand binding assays: Technologies and Applications, 2005, Journal of Chromatography B 829(1-2):1-25を参照されたい)。
【0045】
本明細書において用いられる「TGFBRII-Fc」とは、TGF-βII型受容体のTGF-βリガンド結合ドメインまたはその変種もしくは生物学的に活性な部分、および免疫グロブリンのFcドメインを含む融合タンパク質を指す。様々な態様において、TGF-βリガンド結合ドメインとFcドメインとの間には、リンカーが含まれ得る。また本発明に従って、融合タンパク質は、TGF-βII型受容体の細胞外部分全体またはその変種、および免疫グロブリンのFcドメインを含み得る。いくつかの態様において、融合タンパク質は、TGF-βII型受容体の細胞外部分の一部またはその変種、および免疫グロブリンのFcドメインを含み得る。変種の例には、保存的アミノ酸変異を含むもの、SNP変種、およびスプライシング変種が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。非限定的な一例は、TGF-βII型受容体のIIbスプライシング変種である。様々な態様において、TGF-βリガンド結合ドメインおよび/またはFcドメインは、そのような改変がこれらのドメインの機能を許容されないレベルまで低下させない限り、例えば精製を容易にするように改変され得る。
【0046】
Fc融合の基礎技術は、当技術分野において、例えばCzajkowsky et al. Fc-fusion proteins: new developments and future perspectives, EMBO Mol Med. 2012 Oct;4(10):1015-28に概して記載されており、それは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。TGF-βII型受容体は哺乳類由来であり得る。いくつかの例において、該受容体は、ヒト、サル、類人猿、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、マウス、またはラット由来である。免疫グロブリンは哺乳類由来であり得る。単なる例として、それは、ヒト、サル、類人猿、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、マウス、またはラット由来であり得る。
【0047】
抗体ドメインに言及する場合、各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabatの定義に従っている(Elvin A. Kabat, Tai Te Wu, Kay S. Gottesmanによる「Sequences of Proteins of Immunological Interest」, Carl Foeller 5
th edition, Publication no. 91 3242. National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1991、および以前の版を参照されたい)。免疫グロブリンの成熟型重鎖および軽鎖の可変領域由来のアミノ酸は、該鎖におけるアミノ酸の箇所によって指定される。Kabatは、抗体に関する無数のアミノ酸配列を記載し、各下位群に対するアミノ酸コンセンサス配列を同定し、かつ各アミノ酸に残基番号を割り当てた。Kabatの番号付けスキームは、保存されたアミノ酸を参照することにより、Kabatにおけるコンセンサス配列の1つを有する対象の抗体をアラインメントすることによって、彼の概論に含まれない抗体に拡張可能である。残基番号を割り当てるためのこの方法は、当分野における標準手法になっており、かつキメラ変種またはヒト化変種を含めた種々の抗体の同等箇所におけるアミノ酸を容易に同定する。例えば、ヒト抗体軽鎖の50位におけるアミノ酸は、マウス抗体軽鎖の50位におけるアミノ酸と同等箇所を占有する。
【0048】
本明細書において使用するとき、「Fc領域」、「Fcドメイン」という用語または類似用語は、IgG重鎖のCH2/CH3 C末領域を規定するために用いられる。ヒトIgG1を含有するアミノ酸配列の例が、
図8Bに示されている。Kabatシステムに従って番号付けされるとき、境界はわずかに変動し得るものの、Fcドメインはアミノ酸231からアミノ酸447にわたる(
図8Bにおけるアミノ酸残基は、Kabatシステムに従って番号付けされている:Kabat et al., 「Sequences of Proteins of Immunological Interest」, 5th Ed. Public Health Service, NIH, MD (1991)を参照されたく、それは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。
図8Bは、IgGアイソタイプのIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4のFc領域のアミノ酸配列の例も提供している。
【0049】
IgGのFc領域は、2つの定常ドメインCH2およびCH3を含む。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは、Kabatの番号付けシステムに従い、通常アミノ酸231からアミノ酸341にわたる(
図8B)。ヒトIgG Fc領域のCH3ドメインは、Kabatの番号付けシステムに従い、通常アミノ酸342から447にわたる(
図8B)。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメイン(「Cγ2」ドメインとも称される)は、それが別のドメインと密接に対合しないという点で固有である。むしろ、無傷の天然IgGの2つのCH2ドメイン間には、2つのN結合型分岐炭水化物鎖が介在している。
【0050】
TGFBRII-Fcの例には、SEQ ID NO: 1に明記される配列を有するタンパク質またはその変種が含まれるが、それらに限定されるわけではない。一態様において、SEQ ID NO: 1の変種は、SEQ ID NO: 1と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0051】
SEQ ID NO: 1において、アミノ酸1〜137はTGF-βリガンド結合ドメインであり、アミノ酸138〜141はリンカーであり、かつアミノ酸142〜364はFcドメインである。この例示TGFBRII-Fcは、SEQ ID NO: 2に記載のヌクレオチド配列またはその縮重型変種を含む核酸によって発現され得る。本明細書において用いられる「縮重型変種」とは、変異したヌクレオチド配列を有するが、遺伝子コードの冗長性により、依然として同じポリペプチドをコードする変種を指す。
【0052】
重鎖IgGの「ヒンジ領域」または「ヒンジドメイン」は、Kabat番号付けを用い、一般的に、ヒトIgG1のGlu216からPro230にわたると規定される。ヒトIgG1ヒンジ領域のアミノ酸配列の例が、
図8Aに示されている(
図8Aにおけるアミノ酸残基は、Kabatシステムに従って番号付けされている)。
図8Aに示されるように、他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間S--S結合を形成する最初および最後のシステイン残基を同じ箇所に配置することによって、IgG1配列とアラインメントされ得る。ある特定の態様において、リガンド結合ドメインとFcドメインとの間のリンカーは、ヒンジ領域、例えばSEQ ID NO: 65〜68のいずれかを含む(
図8Aを参照されたい)。一態様において、リンカーはTGGG(SEQ ID NO: 79)を含む。ある特定の態様において、リンカーはSEQ ID NO: 6〜48のいずれかを含む(実施例3を参照されたい)。
【0053】
当業者であれば、本明細書において具体的に記載されるものと実質的に同一のペプチドが企図され、かつそれは1つまたは複数の保存的アミノ酸変異を含み得ることを容易に解するであろう。参照ペプチドに対する1つまたは複数の保存的アミノ酸変異は、参照ペプチドと比較して生理学的、化学的、または機能的な特性の実質的な変化を有しない変異体ペプチドを産出し得ることが当技術分野において公知であり;かつそのような場合、参照ペプチドおよび変異体ペプチドは、「実質的に同一な」ポリペプチドと見なされる。
【0054】
保存的アミノ酸変異は、アミノ酸の付加、欠失、または置換を含み得る。保存的アミノ酸置換は、本明細書において、同様の化学的特性(例えば、サイズ、電荷、または極性)を有する別のアミノ酸残基へのアミノ酸残基の置換として定義される。非限定的な例において、保存的変異はアミノ酸置換であり得る。そのような保存的アミノ酸置換は、同じ群の別のものへ、塩基性、中性、疎水性、または酸性のアミノ酸を置換し得る。
【0055】
本明細書において使用するとき、「塩基性アミノ酸」には、7を上回る側鎖pKa値を有する親水性アミノ酸が含まれ、それは典型的に生理学的pHで正に帯電する。塩基性アミノ酸には、ヒスチジン(HisまたはH)、アルギニン(ArgまたはR)、およびリジン(LysまたはK)が含まれる。本明細書において使用するとき、「中性アミノ酸」(また「極性アミノ酸」)は、生理学的pHで帯電しない側鎖を有するが、少なくとも1つの結合において、2個の原子によって共同で共有される電子の対が、該原子の一方によってより近くに保たれている、親水性アミノ酸を意味する。極性アミノ酸には、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、システイン(CysまたはC)、チロシン(TyrまたはY)、アスパラギン(AsnまたはN)、およびグルタミン(GlnまたはQ)が含まれる。「疎水性アミノ酸」(また「非極性アミノ酸」)という用語は、Eisenberg(1984)の規格化されたコンセンサス疎水性尺度に従い、ゼロを上回る疎水性を呈するアミノ酸を含むことを意味する。疎水性アミノ酸には、プロリン(ProまたはP)、イソロイシン(IleまたはI)、フェニルアラニン(PheまたはF)、バリン(ValまたはV)、ロイシン(LeuまたはL)、トリプトファン(TrpまたはW)、メチオニン(MetまたはM)、アラニン(AlaまたはA)、およびグリシン(GlyまたはG)が含まれる。「酸性アミノ酸」とは、7未満の側鎖pKa値を有する親水性アミノ酸を指し、それは典型的に生理学的pHで負に帯電する。酸性アミノ酸には、グルタミン酸(GluまたはE)およびアスパラギン酸(AspまたはD)が含まれる。
【0056】
配列同一性は、2種の配列の類似性を評価するために用いられ、それは、2種の配列を残基箇所の間で最大一致するようにアラインメントした場合に同じである残基のパーセントを算出することによって決定される。任意の公知の方法を用いて配列同一性を算出し得、例えば、配列同一性を算出するコンピューターソフトウェアが入手可能である。非限定的な例として、配列同一性は、BLAST-P、Blast-N、もしくはFASTA-Nなどのソフトウェア、または当技術分野において公知である他の任意の適当なソフトウェアによって算出され得る。本発明の実質的に同一な配列は、少なくとも80%同一であり得る。他の例において、実質的に同一な配列は、本明細書において記載される配列と、アミノ酸レベルで少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%同一であり得る。
【0057】
上記で示されるように、様々な態様において、TGF-βリガンド結合ドメインとFcドメインとの間には、リンカーが存在し得る。そのようなリンカーの配列が、本明細書において提供される。一態様において、リンカーは、構造化されていないかつ柔軟性のあるポリペプチド配列である。リンカー領域は、構造化されたリガンド結合ドメインおよびFcドメインとは区別されるセグメントを提供し、ゆえに、該リガンド結合ドメインおよびFcドメインを化学的に改変する必要なく、補助分子(例えば、PEG化部分など、安定性を増加させるのに有用な分子)またはイメージングのための造影剤および毒素などのカーゴ分子への結合に用いられ得る。結合の方法論はいくぶん多様であるが、典型的に、第一級アミン、スクシンイミジル(NHS)エステル、およびスルフヒドリル反応基などの一般的な反応基を介した結合を可能にする商業的キットを用いて実施され得る。いくつかの非限定的な例は、Alexa Fluor 488タンパク質標識キット(Molecular Probes, Invitrogen detection technologies)およびPEG化キット(Pierce Biotechnology Inc.)である。
【0058】
リンカーは、関心対象のリガンドに対する受容体またはTGF-βスーパーファミリー内の別の受容体の細胞外部分における、天然の構造化されていない領域の配列と同じであり得るまたはそれへの保存的改変により派生し得る、構造化されていないアミノ酸配列を含み得る。他の場合には、そのようなリンカーは、組成および起源において完全に人工的であり得るが、関心対象のリガンドにごく接近してもたらされた場合に、静電的または立体的な妨害による複雑な関係に直面する低い可能性を有する、構造化されていない柔軟性のあるリンカーを提供するように選択されたアミノ酸を含有する。
【0059】
リンカーの長さは、(a)リンカーのN末端側(end)に位置する、結合ドメインのC末の主鎖炭素原子と(b)リンカーのC末端側に位置する、結合ドメインのN末の主鎖窒素原子との間のアミノ酸の数であると見なされる。リンカーの長さは、それにより結合ドメインがそれらの天然リガンド上のそれらの天然結合部位に結合することが可能となる場合、許容可能であると見なされる。変動する長さの天然および人工のリンカー配列の例が、表2に与えられている。例えば、かついかなる様式でも限定的であることを望むことなく、リンカーの長さは、約18〜80個のアミノ酸、25〜60個のアミノ酸、35〜45個のアミノ酸、または他の任意の適切な長さであり得る。
【0060】
ある場合には、本明細書において開示されるリガンド結合作用物質についてのポリペプチドベースの連結設計を、特定の適用に望まれる特徴についての最適化に供することが望ましくあり得る。例えば、リンカーを、原子レベルのシミュレーションおよび知識ベースの設計に基づいて長さおよび組成において改変して、結合親和性、特異性、免疫原性、および安定性を向上させ得る。これは、ホモ体(homomeric)、ヘテロ体(heteromeric)、二量体、および多量体のリガンド-受容体構造特徴を呈する広範囲の分子システムに適用可能である。さらなる異なる結合ドメインを組み入れて、さらにより高い結合効力を有する多価捕捉体を作製することができる。
【0061】
リンカーは、リンカーおよび/またはリガンド結合捕捉体の精製を容易にするように設計され得る。選定された正確な精製スキームは、どんな改変が必要とされるかを決定し、例えばかつ限定的であることを望むことなく、Hisタグなどの精製「タグ」の付加が企図され;他の例において、リンカーは、カーゴ分子または補助分子の付加を容易にする領域を含み得る。そのような付加が、リンカーの構造化されていない性質に影響を及ぼすまたは潜在的な静電的もしくは立体的な懸念を導入する場合、結合ドメインがリガンド上のそれらの部位に結合し得ることを確実にするように、リンカーの長さに適当な増加がなされる。本明細書における方法および教示に照らして、そのような決定は、当業者によってルーチン的に行われ得る。
【0062】
リガンド結合ドメインおよびリンカーが主に天然の配列を含有する本発明の態様において、それらは普通、典型的な患者において重度に免疫原性であるまたは毒性であるとは予想されない。
【0063】
本発明のポリペプチドは、増殖因子など、疾患関連の共有結合により安定化された二量体リガンドの作用を中和する治療用作用物質として有用であり得る。それらは、イメージングおよび非イメージングによる診断的適用における、増殖因子など、疾患関連の共有結合により安定化された二量体リガンドの存在を検出する診断用作用物質としての使用の商業的可能性も有し得る。
【0064】
本発明は、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も包含する。これらのヌクレオチド配列は、クローニングされ得かつ任意の適切なベクター(発現ベクターを含む)内に挿入され得、したがって、本発明のポリペプチドの産生に非常に適している。
【0065】
本明細書において用いられる「ベクター」という用語は、それが複製され得る細胞内への導入のための、その中に核酸配列を導入し得るキャリア核酸分子を指す。核酸配列は「外因性」であり得、それは、ベクターが導入されている細胞にとってそれが外来性であること、または配列が、細胞における、しかしながら該配列が普通では見出されない宿主細胞核酸内の箇所における配列と相同であることを意味する。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、および人工染色体(例えば、YAC)が含まれる。当業者であれば、標準的組換え技法により、ベクターを構築する能力を十分に備えているであろう(例えば、Maniatis et al., 1988およびAusubel et al., 1994を参照されたく、その両方は参照により本明細書に組み入れられる)。加えて、本明細書において記載されかつ参照図において実証される技法は、有効なベクター構築に関して有益でもある。
【0066】
「発現ベクター」という用語は、転写され得るRNAをコードする核酸を含む任意のタイプの遺伝子構築物を指す。ある場合には、RNA分子は、次いでタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の場合には、例えばアンチセンス分子またはリボザイムの産生において、これらの配列は翻訳されない。発現ベクターは、特定の宿主細胞における機能的に連結されたコード配列の転写およびおそらく翻訳に必要な核酸配列を指す、多様な「制御配列」を含有し得る。転写および翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、他の機能を同様に果たしかつ下記に記載される核酸配列を含有し得る。
【0067】
本明細書において用いられる「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、ペプチド結合によって特異的配列においてつなぎあわされたアミノ酸のポリマーを意味する。本明細書において使用するとき、「アミノ酸」という用語は、別様に具体的に指定されない限り、アミノ酸のD体またはL体の立体異性体形態のいずれかを指す。
【0068】
本明細書において用いられる、分子の「生物学的に活性な」部分とは、より大きな分子と同様の機能を果たし得る、より大きな分子の一部分を指す。単なる非限定的な例として、タンパク質の生物学的に活性な部分は、たとえほんのわずかだとしても、全長タンパク質の1つまたは複数の生物学的機能(例えば、別の分子との結合、リン酸化など)を果たし得る能力を保持する、タンパク質の任意の部分である。非限定的な例として、リガンド結合ドメインは、TGFβ受容体の生物学的部分である。
【0069】
本明細書において使用するとき、「治療有効量」という用語は、過度のTGF-βシグナル伝達を減少させるかまたは阻害し、ゆえに、本明細書において記載される疾患状態を治療する、阻止する、またはその進行速度を遅らせることをもたらすTGF-βリガンド捕捉体の量を意味する。有効量は、治療される対象となる病態または病状に応じて、患者および彼または彼女の状況、ならびに当業者に周知の他の因子によって変動する。有効量は、当業者によって簡単に決定される。いくつかの態様において、治療用量は、毎日から毎月の間隔で、皮下、髄腔内、対流強化(convection-enhanced)法、静脈内、または動脈内の経路を介して、体重1kgあたり0.05mg〜50mg、および任意で体重1kgあたり1.0mg〜10mgまたは体重1kgあたり0.3mg〜3.0mgに及ぶ用量で投与される。様々な態様において、TGF-βリガンド捕捉体は、1週間につき1〜7回、あるいは1週間に1回、または2、3、もしくは4週間ごとに1回、対象に投与される。様々な態様において、TGF-βリガンド捕捉体は、1〜5日間、1〜5週間、1〜5ヶ月間、または1〜5年間、対象に投与される。
【0070】
本発明に従って、ある特定の投与の例示経路が提供されるが、TGF-βリガンド捕捉体の任意の適切な投与の経路が採用され得、したがって本明細書において記載される投与の経路は限定的であることを意図されない。投与の経路には、静脈内、経口、頬側、鼻腔内、吸入、粘膜への局所適用、または皮内、髄腔内、嚢内、病巣内を含めた注入もしくは他の任意のタイプの注入が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。投与は、連続的または間欠的にもたらされ得、かつ治療される対象となる対象および病状によって変動する。当業者であれば、本明細書において記載される様々な投与の経路により、TGF-βリガンド捕捉体または組成物が、肺疾患の位置または標的細胞の上、中、または付近に送達されることが可能となることを容易に解するであろう。当業者であれば、本明細書において記載される様々な投与の経路により、本明細書において記載されるTGF-βリガンド捕捉体または組成物が、治療される対象となる罹患した組織、臓器、または個々の細胞の近傍における領域に送達されることが可能となることも容易に解するであろう。「近傍における」には、対象に投与されるTGF-βリガンド捕捉体または組成物の少なくとも一部分が、それらの意図される標的に達しかつそれらの治療効果を発揮するような、罹患した組織、臓器、または個々の細胞と十分近くに接近しているまたは十分な連絡をしている、対象における任意の組織または体液が含まれ得る。
【0071】
薬学的組成物
様々な態様において、本発明は、本明細書において記載されるTGF-βリガンド捕捉体を含む薬学的組成物を提供する。様々な態様において、薬学的組成物は、調節放出、持続放出、もしくは制御放出、またはそれらの組み合わせに対して製剤化される。様々な態様において、薬学的組成物は、経口の、吸入による、経鼻の、舌下の、頬側の、皮下の、皮内の、筋肉内の、静脈内の、腹腔内の、または非経口の投与のために製剤化される。
【0072】
様々な態様において、薬学的組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。賦形剤の例には、デンプン、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化物質、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、保存料、抗酸化物質、可塑剤、ゲル化剤、増粘剤、硬化剤、凝結剤、懸濁化剤、界面活性剤、保湿剤、担体、安定剤、およびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0073】
様々な態様において、薬学的組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される担体をさらに含む。薬学的に許容される担体は、当技術分野において周知であり、生理学的緩衝生理食塩水などの水溶液、またはグリコール、グリセロール、植物油(例えば、オリーブ油)、もしくは注入可能な有機エステルなど、他の溶媒もしくはビヒクルを含む。薬学的に許容される担体を用いて、本発明の組成物を、インビトロで細胞にまたはインビボで対象に投与することができる。薬学的に許容される担体は、例えば組成物を安定化するようにまたは作用物質の吸収を増加させるように作用する生理学的に許容される化合物を含有し得る。生理学的に許容される化合物には、例えば、グルコース、スクロース、もしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化物質、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定剤もしくは賦形剤が含まれ得る。他の生理学的に許容される化合物には、湿潤剤、乳化剤、分散剤、または保存料が含まれ、それらは、微生物の増殖または作用を阻止するのにとくに有用である。様々な保存料が周知であり、例えばフェノールおよびアスコルビン酸を含む。当業者であれば、生理学的に許容される化合物を含めた薬学的に許容される担体の選定は、例えばポリペプチドの投与の経路に依存することを知っているであろう。例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどの生理学的に許容される化合物は、対象に投与される薬学的組成物の吸収の速度を長引かせる遅延剤としてとくに有用である。担体、安定剤、またはアジュバントのさらなる例は、参照により本明細書に組み入れられる、Martin, Remington's Pharm. Sci., 15th Ed. (Mack Publ. Co., Easton, 1975)に見出され得る。担体の他の例には、ナノ粒子ベースの担体(例えば、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)ポリマー、グルタミン酸、PEG、デキストラン)およびナノ担体(例えば、ナノシェル、リポソーム、ナノリポソーム)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0074】
治療方法
様々な態様において、本発明は、対象における肺高血圧症(PH)を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法を提供する。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与し、それによって対象におけるPHを治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる工程を含む。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する前に、薬学的に許容される担体とTGF-βリガンド捕捉体とを混合する工程をさらに含み得る。肺動脈高血圧症は、TGF-βリガンド捕捉体を用いた治療にとくに適している可能性がある肺高血圧症のタイプである。したがって、いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与し、それによって、肺動脈高血圧症の以下の下位カテゴリーのいずれかを含めた、対象における肺動脈高血圧症を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる工程を含む。肺動脈高血圧症は、他の病状に続発して生じ得る、または原発性もしくは特発性の肺動脈高血圧症として生じ得る。とくに興味深いことに、ある特定のタイプの家族性肺動脈高血圧症は、骨形成タンパク質受容体II型(BMPRII)の発現または機能の減少と関連しており、それがTGF-βによる過度のシグナル伝達をもたらすと考えられる。
【0075】
肺高血圧症は5つの主要なタイプのものであり得、ゆえに一連の検査を実施して、肺動脈高血圧症を、静脈性、低酸素性、血栓塞栓性、または混合型の種類と区別する。これらには、一般的に、肺機能検査;HIV、自己免疫疾患、および肝疾患を除外するための血液検査;心電図検査(ECG);動脈血ガス測定;胸部のX線(間質性肺疾患が疑われる場合には、高分解能CTスキャンが続く);ならびに慢性血栓塞栓性肺高血圧症を除外するための換気血流スキャンまたはV/Qスキャンが含まれる。PAHの診断は、肺高血圧症の存在を要件とする。肺動脈高血圧症は心エコー検査に基づいて推定されるが、心臓の右側を通したSwan-Ganzカテーテルによる圧力測定は、診断のための最も明確な査定を提供する。
【0076】
当業者であれば、肺高血圧症の改善をモニターすることに十分精通しており、例えば臨床的改善は、「6分間歩行検査」、すなわち患者が6分間で歩行し得る距離によってしばしば測定される。この測定における安定性および改善は、より良好な生存率と相関する。肺高血圧症を有する患者の進行を追跡するために、血中BNPレベルも現在用いられている。症状の改善は、動脈圧をアッセイすることによってもモニターされ得る。例えば、海抜0メートルの高さで生活している人での正常な肺動脈圧は、安静時に8〜20mmHg(1066〜2666Pa)の平均値を有する。安静時に平均肺動脈圧が25mmHg(3300Pa)を超える場合、肺高血圧症が存在している。平均肺動脈圧(mPAP)は、心エコー検査報告に関してしばしば報告される収縮期肺動脈圧(sPAP)と混同されるべきではない。40mmHgの収縮期圧は、典型的に、25mmHgを上回る平均圧を暗示する。おおよそ、mPAP=0.61・sPAP+2。
【0077】
様々な態様において、本発明は、対象における肺血管再構築を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法を提供する。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与し、それによって対象における肺血管再構築を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる工程を含む。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する前に、薬学的に許容される担体とTGF-βリガンド捕捉体とを混合する工程をさらに含み得る。
【0078】
様々な態様において、本発明は、対象の心臓における血管再構築を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法を提供する。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する前に、薬学的に許容される担体とTGF-βリガンド捕捉体とを混合する工程をさらに含み得る。ある特定の態様において、本発明の方法は、僧帽弁変性、または例えば僧帽弁逸脱を減少させる。有益な効果は、心エコー検査によってモニターされ得る。
【0079】
様々な態様において、本発明は、対象における肺線維症を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法を提供する。ある特定の態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与し、それによって対象における肺線維症を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる工程を含む。様々な態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する前に、薬学的に許容される担体とTGF-βリガンド捕捉体とを混合する工程をさらに含み得る。
【0080】
様々な態様において、本発明は、対象における右心室肥大を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法を提供する。様々な態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与し、それによって対象における右心室肥大を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる工程を含む。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する前に、薬学的に許容される担体とTGF-βリガンド捕捉体とを混合する工程をさらに含み得る。
【0081】
様々な態様において、本発明は、対象における過度のTGF-βシグナル伝達に関連した肺疾患を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法を提供する。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与し、それによって対象における該疾患を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる工程を含む。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する前に、薬学的に許容される担体とTGF-βリガンド捕捉体とを混合する工程をさらに含み得る。
【0082】
様々な態様において、TGF-βは、TGF-β1、TGF-β3、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0083】
様々な態様において、本発明は、対象における過度のGDF15シグナル伝達に関連した肺疾患を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法を提供する。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与し、それによって対象における該疾患を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる工程を含む。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する前に、薬学的に許容される担体とTGF-βリガンド捕捉体とを混合する工程をさらに含み得る。
【0084】
様々な態様において、本発明は、対象における過度のPAI-1シグナル伝達に関連した肺疾患を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法を提供する。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与し、それによって対象における該疾患を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる工程を含む。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する前に、薬学的に許容される担体とTGF-βリガンド捕捉体とを混合する工程をさらに含み得る。
【0085】
様々な態様において、本発明は、対象における右心室収縮期圧を低下させる方法を提供する。いくつかの態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与し、それによって対象における右心室収縮期圧を低下させる工程を含む。ある特定の態様において、該方法は、治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する前に、薬学的に許容される担体とTGF-βリガンド捕捉体とを混合する工程をさらに含み得る。
【0086】
様々な態様において、上記で記載される例における対象は哺乳類である。いくつかの態様において、対象は、ヒト、サル、類人猿、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、マウス、またはラットである。様々な態様において、TGF-βは、TGF-β1、TGF-β3、またはそれらの組み合わせである。
【0087】
様々な態様において、対象に投与されるTGF-βリガンド捕捉体の量は、体重1kgあたり0.05mg〜50mg、および任意で体重1kgあたり1.0mg〜10mgまたは体重1kgあたり0.3mg〜3.0mgである。様々な態様において、TGF-βリガンド捕捉体は、1週間につき1〜7回、あるいは1週間に1回、または2、3、もしくは4週間ごとに1回、対象に投与される。様々な態様において、TGF-βリガンド捕捉体は、1〜5日間、1〜5週間、1〜5ヶ月間、または1〜5年間、対象に投与される。TGF-βリガンド捕捉体は、皮下、静脈内、または筋肉内の投与を含むがそれらに限定されない、タンパク質治療学に用いられる任意の経路によって投与され得る。
【0088】
上記で示されるように、様々な態様において、TGF-βリガンド捕捉体は、経口的に、吸入により、経鼻的に、舌下に、頬側に、皮下に、皮内に、筋肉内に、静脈内に、腹腔内に、または非経口的に対象に投与される。様々な態様において、TGF-βリガンド捕捉体は、対象が、肺高血圧症、肺血管再構築、肺線維症、右心室肥大、過度のTGF-βシグナル伝達に関連した肺疾患、過度のGDF15シグナル伝達に関連した肺疾患、および過度のPAI-1シグナル伝達に関連した肺疾患を含むがそれらに限定されない疾患状態を発症する前、発症中、または発症した後に投与される。
【0089】
様々な態様において、TGF-βリガンド捕捉体は薬学的組成物の一部である。様々な態様において、薬学的組成物は、調節放出、持続放出、もしくは制御放出、またはそれらの組み合わせに対して製剤化される。様々な態様において、薬学的組成物は、経口の、吸入による、経鼻の、舌下の、頬側、皮下の、皮内の、筋肉内の、静脈内の、腹腔内の、または非経口の投与のために製剤化される。
【0090】
様々な態様において、薬学的組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。賦形剤の例には、デンプン、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化物質、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、保存料、抗酸化物質、可塑剤、ゲル化剤、増粘剤、硬化剤、凝結剤、懸濁化剤、界面活性剤、保湿剤、担体、安定剤、およびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0091】
いくつかの態様において、本発明は、以下の番号付けされた項のいずれかにおいて規定され得る。
[項1]
対象における肺高血圧症(PH)を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法であって、以下の工程を含む、方法:
治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する工程であって、それによって対象におけるPHを治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる、工程。
[項2]
PHが過度のTGF-βシグナル伝達によって仲介される、項1に記載の方法。
[項3]
対象がヒトである、項1〜2のいずれかに記載の方法。
[項4]
TGF-βリガンド捕捉体が、1)TGF受容体のTGF-βリガンド結合ドメインおよび2)免疫グロブリンのFcドメインを含む、項1〜3のいずれかに記載の方法。
[項5]
TGF-βリガンド捕捉体が、TGF受容体のTGF-βリガンド結合ドメインとFcドメインとの間にリンカーをさらに含む、項4に記載の方法。
[項6]
TGF-βリガンド捕捉体が、可溶性の組換えTGF-βII型受容体Fc融合タンパク質(TGFBRII-Fc)である、項1〜5のいずれかに記載の方法。
[項7]
TGFBRII-Fcが、SEQ ID NO: 1に記載の配列またはその変種からなる、項1〜6のいずれかに記載の方法。
[項8]
TGFBRII-Fcが、SEQ ID NO: 1に記載の配列またはその変種を含む、項1〜6のいずれかに記載の方法。
[項9]
TGFBRII-Fcが、SEQ ID NO: 1に記載の配列の1つまたは複数の生物学的に活性な部分を含む、項1〜6のいずれかに記載の方法。
[項10]
TGFBRII-Fcが、SEQ ID NO: 2に記載のヌクレオチド配列またはその縮重型変種を含む核酸によってコードされる、項1〜6のいずれかに記載の方法。
[項11]
対象に投与されるTGF-βリガンド捕捉体の量が、体重1kgあたり0.1〜10mgである、項1〜10のいずれかに記載の方法。
[項12]
TGF-βリガンド捕捉体が、1ヶ月につき1〜7回対象に投与される、項1〜11のいずれかに記載の方法。
[項13]
TGF-βリガンド捕捉体が、1〜5日間、1〜5週間、1〜5ヶ月間、または1〜5年間対象に投与される、項1〜12のいずれかに記載の方法。
[項14]
TGF-βリガンド捕捉体が、経口的に、吸入により、経鼻的に、舌下に、頬側に、皮下に、皮内に、筋肉内に、静脈内に、腹腔内に、または非経口的に対象に投与される、項1〜13のいずれかに記載の方法。
[項15]
TGF-βリガンド捕捉体が、対象がPHを発症する前、発症中、または発症した後に投与される、項1〜14のいずれかに記載の方法。
[項16]
治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する前に、薬学的に許容される担体とTGF-βリガンド捕捉体とを混合する工程をさらに含む、項1〜15のいずれかに記載の方法。
[項17]
TGF-βリガンド捕捉体が薬学的組成物の一部である、項1〜16のいずれかに記載の方法。
[項18]
薬学的組成物が、調節放出、持続放出、もしくは制御放出、またはそれらの組み合わせに対して製剤化される、項17に記載の方法。
[項19]
薬学的組成物が、経口の、吸入による、経鼻の、舌下の、頬側の、皮下の、皮内の、筋肉内の、静脈内の、腹腔内の、または非経口の投与のために製剤化される、項17に記載の方法。
[項20]
薬学的組成物が、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、項17に記載の方法。
[項21]
薬学的組成物が、少なくとも1種の薬学的に許容される担体をさらに含む、項17に記載の方法。
[項22]
対象における肺血管再構築を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法であって、以下の工程を含む、方法:
治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する工程であって、それによって対象における肺血管再構築を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる、工程。
[項23]
対象における肺線維症を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法であって、以下の工程を含む、方法:
治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する工程であって、それによって対象における肺線維症を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる、工程。
[項24]
項4〜10のいずれかに記載のTGF-βリガンド捕捉体を用いる、項23に記載の方法。
[項25]
対象における右心室肥大を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法であって、以下の工程を含む、方法:
治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する工程であって、それによって対象における右心室肥大を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる、工程。
[項26]
項4〜10のいずれかに記載のTGF-βリガンド捕捉体を用いる、項25に記載の方法。
[項27]
対象における過度のTGF-βシグナル伝達に関連した肺疾患を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法であって、以下の工程を含む、方法:
治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する工程であって、それによって対象における該疾患を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる、工程。
[項28]
項4〜10のいずれかに記載のTGF-βリガンド捕捉体を用いる、項27に記載の方法。
[項29]
TGF-βが、TGF-β1、TGF-β3、またはそれらの組み合わせである、項1〜28のいずれかに記載の方法。
[項30]
対象における過度のGDF15シグナル伝達に関連した肺疾患を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法であって、以下の工程を含む、方法:
治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する工程であって、それによって対象における該疾患を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる、工程。
[項31]
項4〜10のいずれかに記載のTGF-βリガンド捕捉体を用いる、項30に記載の方法。
[項32]
対象における過度のPAI-1シグナル伝達に関連した肺疾患を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる方法であって、以下の工程を含む、方法:
治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する工程であって、それによって対象における該疾患を治療する、阻止する、またはその進行速度を低下させる、工程。
[項33]
項4〜10のいずれかに記載のTGF-βリガンド捕捉体を用いる、項32に記載の方法。
[項34]
対象における右心室収縮期圧を低下させる方法であって、以下の工程を含む、方法:
治療有効量のTGF-βリガンド捕捉体を対象に投与する工程であって、それによって対象における右心室収縮期圧を低下させる、工程。
[項35]
項4〜10のいずれかに記載のTGF-βリガンド捕捉体を用いる、項34に記載の方法。
【実施例】
【0092】
以下の実施例は、主張される発明をよりよく例証するために提供されており、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。具体的な材料が言及されている限りにおいて、それは単なる例証のためのものであって、本発明を限定することを意図されない。当業者であれば、発明能力の鍛錬なしでかつ本発明の範囲から外れることなく、同等の手段または反応物を開発し得る。
【0093】
実施例1:さらなる背景および結果の簡単な概要
上記で示されるように、トランスフォーミング増殖因子-(TGF-β)リガンドは、発生における重要な過程を調整し、かつ疾患における線維症および組織再構築を調節する。過度のTGF-βシグナル伝達は、動物モデルにおける実験的PHを改善し得るTGFβI型受容体(ALK5)キナーゼ阻害剤の能力に部分的に基づき、肺高血圧症(PH)の動脈再構築に関わっている。しかしながら、ALK5阻害剤の臨床展開は、心血管毒性によって制限されている。本明細書において開示される実験および結果は、可溶性の組換えTGFβII型受容体Fc融合タンパク質(TGFBRII-Fc)が、ラットのモノクロタリン(MCT)誘導性PHにおいてTGFβシグナル伝達を阻害することを実証している。MCTの後に予防的に投与された場合、TGFBRII-Fc処理は、右心室収縮期圧、右心室肥大を低下させ、かつ肺血管再構築を減少させた。MCTラットの肺におけるTGFβ転写標的PAI-1のmRNAレベルの上昇は、TGFβシグナル伝達の減少と一致して、TGFBRII-Fcによって是正された。MCTの2.5週間後に投与された場合、TGFβRII-Fcは、5週目における生存率の改善への傾向とともに、確立されたPHを部分的に救済した。留意すべきことに、いかなる用量においても、TGFBRII-Fcによる処理に関連して心構造異常または弁異常は見出されなかった。まとめると、本明細書において開示されるデータは、TGFβリガンド捕捉体が、TGFβ仲介による肺血管再構築およびPHを是正するための有効でかつ許容される程度に安全なストラテジーであり得るという結論を裏付ける。
【0094】
実施例2
(表1)非限定的な例示TGFβリガンド結合ドメイン
【0095】
実施例3
(表2)非限定的な例示リンカー
【0096】
上記のリンカーおよび結合ドメインのそれぞれをコードする核酸配列もまた企図される。
【0097】
実施例4
材料および方法
PAHのラットモデル
雄のSprague-Dawleyラット(6〜8週齢、重量150〜170g)をCharles River Laboratoryから購入した。すべてのプロトコールおよび外科的手順は、現場の(local)動物実験委員会によって承認された。動物は、12時間の明暗サイクルで24℃にて飼育された。食料および水は自由に入手可能であった。PAHを誘導するために、ラットは、モノクロタリン(MCT、40mg/kg)の単回皮下注射を受けた。本調査に含まれたラットの死亡数および総数が、表3に要約されている。
【0098】
(表3)
【0099】
薬物処理
予防プロトコール−PAH誘導後24時間の時点で、ラットをTGFBRII-Fc(5または15mg/kg、1週間につき2回)またはビヒクルの群に無作為に分けた。ラットを21日間処理した。14日目に、心室機能およびRV再構築を心エコー検査によって調べた。21日目に、ラットを血行力学および右心室肥大測定に供した。
【0100】
救済プロトコール−別のコホートにおいて、TGFBRII-FcがPAHの進行を逆行させ得る能力を調べた。18日目に、ラットにMCTを注射し、かつTGFBRII-Fc(15mg/kg、1週間につき3回)またはビヒクルについて無作為化した。血行力学および右心室肥大(RVH)を35日目に調べた。
【0101】
LVおよびRV機能についての心エコー検査による査定
PAH誘導後14日目に、ラットを1.5%イソフルランで麻酔し、かつ仰臥位に保った。VisualSonics小動物用超音波高解像度(high-frequency)プローブを用いて、肺血流加速、右心室の機能および肥大、ならびに左心室機能を検出した。TGFBRII-Fc処理が何らかの明らかな逆流または病変を誘導するかどうかを判定するための、僧帽弁および三尖弁を横断するドップラー。
【0102】
血行力学およびRVH測定
特定の時点において、ラットをペントバルビタールで麻酔し、かつ気管を通して挿管した。以前に記載されているように、ラットを齧歯類用人工呼吸器を用いて機械的に換気し、かつ右心室(RV)尖部を通した液体充填カテーテルを用いて血行力学査定を行った(Megalou, A. J., Glava, C., Vilaeti, A. D., Oikonomidis, D. L., Baltogiannis, G. G., Papalois, A., Vlahos, A. P., and Kolettis, T. M. (2012) Pulm Circ 2, 461-469)。肺にPBSを灌流し、かつRNAおよびタンパク質の抽出のために1つの右肺葉を切除しかつ瞬間凍結した。肺動脈内へ、その後気管内へ、1分間、肺に1%パラホルムアルデヒド(PFA)をさらに灌流した。左肺葉をパラフィンに包埋した。RVHの程度を査定するために、心臓を取り出し、RV自由壁を左心室+中隔(LV+S)から解離し、かつ別個に計量した。RVHの程度を、RV/(LV+S)比から判定した。
【0103】
血管再構築の定量
肺血管再構築の程度を判定するために、肺組織切片をα平滑筋アクチンおよびフォン・ヴィレブランド因子で染色した。遠位細葉内血管の筋性化(直径10〜50μm)を定量し、かつ非筋性、部分的筋性、および完全筋性の血管のパーセンテージを算出した。
【0104】
すべての完全に筋性化された細葉内血管(直径10〜50μm)について内壁厚を算出した。指数=(外径−内径)/外径×100として、壁厚指数を算出した。
【0105】
発現試験
以前に記載されているように、凍結した肺サンプルをホモジナイズし、かつTRIZOL試薬を用いて全RNA抽出を実施した(Long, L., Crosby, A., Yang, X., Southwood, M., Upton, P. D., Kim, D. K., and Morrell, N. W. (2009) Circulation 119, 566-576)。記載されているように、逆転写および定量的PCRを実施した(Long, L., Crosby, A., Yang, X., Southwood, M., Upton, P. D., Kim, D. K., and Morrell, N. W. (2009) Circulation 119, 566-576)。β-アクチンに対して、特異的遺伝子の比を算出し、かつ倍率変化として表現した。ラット特異的な配列が、表4に要約されている。
【0106】
(表4)
【0107】
試薬
モノクロタリンを、Oakwood Products, Inc.から購入した。組換えヒトBMP4、TGFβ1、TGFβ2、およびGDF15をR&D Systemsから入手した。リン酸化Smad3に特異的な一次抗体をAbcamから購入し、一方でリン酸化Smad2、リン酸化Smad1/5、および全Smad3に対する他の一次抗体をCell Signalingから入手した。
【0108】
統計解析
血行力学およびRVH測定、ならびに肺血管再構築の定量についてのすべての解析を盲検様式で実施した。データを平均±SEMとして提示し、かつt検定を用いて群間で比較した。P<0.05を統計的に有意であると見なした。
【0109】
僧帽弁の血管再構築
図9A〜9Bは、TGFBRII-Fc処理に応答した、僧帽弁の再構築、変性、または異常が無いことを実証する心臓組織切片を示している。
図9A 対照。
図9B TGFBRII-Fc処理。
【0110】
上記で記載される様々な方法および技法は、本出願を行うためのいくつかのやり方を提供している。当然のことながら、本明細書において記載される任意の特定の態様に従って、記載されるすべての目標または利点が必ずしも達成され得るわけではないことが理解されるべきである。ゆえに、例えば、当業者であれば、本明細書において教示されるまたは示唆される他方の目標または利点を必ずしも達成することなく、本明細書において教示される一方の利点または利点の群を達成するまたは最大限に利用する様式で、方法が実施され得ることを認識するであろう。多様な代替策が本明細書において言及されている。いくつかの好ましい態様は、1つの、別の、またはいくつかの特質を特異的に含み、一方で他のものは、1つの、別の、またはいくつかの特質を特異的に除外し、一方でさらに他のものは、1つの、別の、またはいくつかの有利な特質を含むことによって特定の特質を和らげることが理解されるべきである。
【0111】
さらに、当業者であれば、種々の態様から様々な特質の適用性を認識するであろう。同様に、上記で論じられる様々な要素、特質、および工程、ならびにそのような要素、特質、または工程それぞれに対する他の公知の同等物が、本技術分野における当業者によって様々な組み合わせで採用されて、本明細書において記載される原理に従った方法を実施し得る。様々な要素、特質、および工程の中でも、多様な態様において、一部が特異的に含まれかつ他のものは特異的に除外される。
【0112】
本出願は、ある特定の態様および例の文脈で開示されているものの、本出願の態様は、具体的に開示される態様を超えて、他の代替的な態様および/または使用、ならびにその改変型および同等物にわたることが当業者によって理解されるであろう。
【0113】
いくつかの態様において、本出願の特定の態様を記載する文脈において(とりわけ、以下の特許請求の範囲のある特定のものの文脈において)用いられる「一つの(a)」および「一つの(an)」および「その(the)」という用語、ならびに類似の言及は、単数形および複数形の両方を網羅すると解釈され得る。本明細書における値の域の記述は、該域内に入るそれぞれ別個の値を個々に指すことの簡便法として働くことを意図されるにすぎない。本明細書において別様に示されない限り、それぞれ個々の値は、あたかもそれが本明細書において個々に記述されているかのように、本明細書に組み入れられる。本明細書において記載されるすべての方法は、本明細書において別様に示されない限りまたは文脈によって別様に明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書におけるある特定の態様に対して提供される任意のおよびすべての例または例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、本出願をよりよく照らし出すことを意図されるにすぎず、別様に主張される本出願の範囲に限定を課すわけではない。本明細書におけるいかなる言葉も、本出願の実践に必須の主張されていない任意の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0114】
本出願を行うための本発明者らに公知の最良の様態を含めた、本出願の好ましい態様が本明細書において記載されている。そうした好ましい態様に対する変動は、前述の記載を読めば当業者に明白になるであろう。当業者であればそのような変動を必要に応じて採用し得、かつ本出願は、本明細書において具体的に記載される以外のやり方で実践され得ることが企図される。したがって、適用法令によって認められるように、本出願の多くの態様は、本明細書に添付された特許請求の範囲に記述される対象物のすべての改変型および同等物を含む。さらに、その考え得るすべての変動における上記で記載される要素の任意の組み合わせは、本明細書において別様に示されない限りまたは文脈によって別様に明らかに矛盾しない限り、本出願によって包含される。
【0115】
本明細書において参照される、すべての特許、特許出願、特許出願の刊行物、ならびに論文、書籍、明細書、刊行物、文書、物、および/または同類のものなどの他の資料は、すべての目的のために本明細書においてこの参照によりそれらの全体が本明細書によって組み入れられ、ただし、同一物に付随する任意の出願審査経過、本文書との一貫性がないもしくは矛盾する同一物のいずれか、または本文書に現在もしくは後で付随する特許請求の範囲の最も広い範囲に関して限定的影響を有し得る同一物のいずれかを除く。例として、組み入れられた資料のいずれかに付随する用語の記載、定義、および/または使用と本文書に付随するものとの間に何らかの不一致または矛盾が存在することがあれば、本文書における用語の記載、定義、および/または使用が優先するものとする。
【0116】
本明細書において開示される本出願の態様は、該本出願の態様の原理の例証であることが理解されるべきである。採用され得る他の改変型は、本出願の範囲内にあり得る。ゆえに、例としてしかしながら限定的なものではなく、本出願の態様の代替的構成を、本明細書における教示に従って利用することができる。したがって、本出願の態様は、示されかつ記載されるものに精確に限定されるわけではない。
【0117】
本発明の様々な態様は、上記で詳細な説明において記載されている。これらの記載は上記の態様を直接記載しているものの、当業者であれば、本明細書において示されかつ記載される特異的な態様への改変および/または変動を着想し得ることが理解される。この記載の権限内に入る任意のそのような改変または変動は、同様にその中に含まれることが意図される。具体的に付記されない限り、本明細書および特許請求の範囲における単語および語句が、適用可能な技術分野における当業者にとって普通のかつ慣れ親しんだ意味を与えられることは本発明者らの意図である。
【0118】
本出願を提出するこの時点において本出願者に公知の本発明の様々な態様についての前述の記載が提示されており、かつ例証および説明を目的とすることが意図される。本記載は、網羅的であることを意図されるわけでも、開示される精確な形態に本発明を限定するわけでもなく、上記の教示に照らして、多くの改変および変動が可能である。記載される態様は、本発明の原理およびその実践的適用を説明するのに役立ち、かつ他の当業者が、様々な態様においておよび様々な改変を有して、企図される特定の使用に適したものとして本発明を利用するのを可能にするのに役立つ。したがって、本発明は、本発明を行うために開示される特定の態様に限定されないことが意図される。
【0119】
本発明の特定の態様が示されかつ記載されているものの、本明細書における教示に基づき、本発明およびそのより広い局面から外れることなく変化および改変がなされ得、したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲の内にあるものとして、そのようなすべての変化および改変をそれらの範囲内に包含し得る。全般的に、本明細書において用いられる用語は、概して、「開かれた」用語であることが意図される(例えば、「含む(including)」という用語は、「含むが、限定されるわけではない」として解釈されるべきであり、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(include)」という用語は、「含むが、限定されるわけではない」として解釈されるべきである、など)ことは、当業者によって理解されるであろう。