特許第6640103号(P6640103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6640103排気可能でフレキシブルな漏れテストチャンバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640103
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】排気可能でフレキシブルな漏れテストチャンバ
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/32 20060101AFI20200127BHJP
【FI】
   G01M3/32 Z
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-557261(P2016-557261)
(86)(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公表番号】特表2017-508164(P2017-508164A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2015055181
(87)【国際公開番号】WO2015140042
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2018年2月28日
(31)【優先権主張番号】102014205027.8
(32)【優先日】2014年3月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500469855
【氏名又は名称】インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】ファン トリースト,ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】デッカー,ジルヴィオ
【審査官】 川瀬 正巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−185752(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00741288(EP,A1)
【文献】 特表2001−508536(JP,A)
【文献】 特開2006−329650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストピースの漏れテスト用の排気可能なフレキシブルテストチャンバ(10)であって、
前記テストチャンバ(10)が、テストチャンバ容積(36)を囲む壁部(12)を有し、
前記壁部(12)の少なくとも一部は、壁部材料から成る2つの層(18、20)で構成され、その少なくとも前記テストチャンバ容積(36)に対向する層(20)は、フィルムから形成され、前記2つの層(18、20)の間に、前記テストチャンバ(10)を囲む大気と比較して過度の圧力が生成されるように適応され、
前記壁部(12)全体は、互いに適合して配置される2つの部分壁部(14、16)で形成され、
前記2つの部分壁部(14、16)の内の、一方の部分壁部(16)は、固い構造であり、前記テストチャンバ(10)の底部に形成され、
前記2つの部分壁部(14、16)の内の、他方の部分壁部(14)は、前記テストチャンバ(10)の上部に形成され、
前記テストチャンバ容積(36)から離れて対向する前記層(18)は、固い構造であり、
前記テストチャンバ容積(36)に対向する層(20)は、前記テストチャンバ(10)の開状態において、前記テストピースに向かって永続的に凸状に膨らみ、
前記2つの部分壁部(14、16)は、それぞれ、境界領域においてリングとして形成された固いフレーム(22、24)により保持され、
前記フレーム(22、24)は、前記テストチャンバ(10)の閉状態において、第1の内側リングシール(38)及び第2の外側リングシール(40)を介して、互いに気密に接続され、
前記2つの層(18、20)の間には、前記テストチャンバ(10)を囲む大気と比較して、80−120mbarの範囲の過度の圧力が及んでいることを特徴とする、排気可能なフレキシブルテストチャンバ(10)。

【請求項2】
前記2つの層(18、20)の間には、ガス、液体、フォームまたはゲルが収容されることを特徴とする、請求項1に記載の排気可能なフレキシブルテストチャンバ(10)。
【請求項3】
前記2つの層(18、20)の間の圧力を測定するための圧力測定計器(30)が設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の排気可能なフレキシブルテストチャンバ(10)。
【請求項4】
前記壁部(12)は、前記テストチャンバ容積(36)に対向する側に、ガス案内材料から成る層を備えることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の排気可能なフレキシブルテストチャンバ(10)。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のテストチャンバ(10)内に配置されたテストピースの漏れテストの方法であって、前記2つの層(18、20)の間の過度の圧力は、前記テストチャンバ(10)が閉じられる前に生成されることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記壁部(12)の耐密性は、前記2つの層(18、20)の間の圧力を監視することによって確認されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
テストピースが前記テストチャンバ(10)内にあるか否かの確認は、前記テストチャンバ(10)が閉じられているときの前記2つの層(18、20)の間の圧力を監視することによって実行されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストピースの漏れテスト用の排気可能なフレキシブルテストチャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなテストチャンバは、例えば、の例として、フレキシブルフィルムで形成された壁部を備えるフィルムチャンバが考えられるである。このようなテストチャンバは、欧州特許出願公開第0741288(A1)号明細書に記載されている。そのテストピースは、例えばの例として、耐密性をテストしなければならない食品パッケージである可能性があるが考えられる。テストピースは、開いたテストチャンバ内に置かれる。次いで、テストチャンバは、閉じられて排気され、この場合、前記フレキシブルな壁部(フィルム壁部)がテストチャンバにくっつく。ここで、「真空」という用語は、絶対真空として理解すべきではなくいが、一般的には、テストチャンバを囲む大気の圧力よりも低い圧力として理解すべきである。フレキシブルなテストチャンバ壁部は、テストチャンバ内の圧力が、一旦、そのテストチャンバを囲む大気の圧力よりも低くなると、そのテストピースにくっつく。したがって、「排気する」という用語も、加圧の発生として理解すべきであり、絶対真空の生成として理解する必要はない。
【0003】
フレキシブルなテストチャンバが閉じられた場合、フレキシブルな壁部材料の弾力性または柔軟性により、一定量のガスが、そのテストチャンバ内に封入されるという点で問題が生じる。フレキシブルな壁部材料は、空気抵抗により膨らみ、およびその閉じるプロセス中に、追加的なガス容積を捕えるため、そのチャンバを素早く閉じれば閉じるほど、より大きなガス容積が密閉される。したがって、テストチャンバの排気の持続期間は長くなる。捕えたガス容積も排気しなければならないため、チャンバが素早く閉じられる場合の速度の利得は、捕えたガス容積も排気しなければならないため、チャンバの排気中の対応する速度の損失につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、改良されたテストチャンバを提供すること、および漏れテストのための改良された方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるテストチャンバは、独立項1によって定義されている。本発明による方法は、請求項11の特徴によって定義されている。
【0006】
閉じられた状態でテストチャンバ容積を囲んでいる、本発明によるテストチャンバの壁部は、少なくとも1つの領域において、壁部材料から成る2つの層で形成されている。そのため、それら2つの層は、二重層壁部、すなわち、二重壁を形成している。少なくとも、テストチャンバ容積に対向している層と、該容積中に収容されているテストピースは、フレキシブルな材料、例えば、フィルム材料で形成されている。本発明によれば、2つの層によって囲まれた中間容積では、テストチャンバを囲む大気と比較して過度の圧力を発生させることができか、または、その過度の圧力が既に事前に及んでいる可能性があるばせることができる。その過度の圧力は、好ましくは、周りの大気と比較して、約100mbarの範囲内にある。したがって、過度の圧力は、周りの大気と比較して、約80〜120mbarの範囲内であってもよい。2つの壁部層の間の中間容積には、ガス、液体、フォームまたはゲルが存在してもよい。過度の圧力により、テストチャンバ容積に対向しているフレキシブルな材料から成る層は、チャンバの開状態において、テストピースの方に凸状に膨らむ。
【0007】
テストチャンバが閉じられると、2つの層間の過度の圧力は、空気抵抗に対抗し、フレキシブルな層は、追加的なガス容積をまったく捕えない。テストピースの方への凸状の膨らみにより、フレキシブルな層は、テストピースに押し付けられて変形させられる。その結果、テストチャンバが閉じられた後に排気すべきテストチャンバ容積が低減される。
【0008】
少なくとも、テストピースおよびテストチャンバ容積に対向している層は、フレキシブルな材料で形成されていることが特に重要である。テストチャンバ容積から離れて対向する第2の層は、固くてもよく、または、フレキシブルな材料で形成してもよい。テストチャンバの壁部は、全面的にまたは部分的にフレキシブルな材料、例えば、フィルム材料で形成することができる。テストチャンバの壁部が、単一のピースとして連続的に形成されて、テストピースの周りに配置されていてもよいることもあり得る。代替的に、その壁部は、互いに適切に配置されるように適応された2つの部分壁部で形成してもよい。壁部の境界領域は、固いフレームによって保持することができる。互いに折り重ねるように適応された壁部は、ヒンジによって案内することができ、または、互いに接続してもよい。
【0009】
テストピースがテストチャンバ内に配置された後、およびそのテストチャンバが閉じられる前に、約100mbarの範囲内の過度の圧力が、2つの層の間の中間容積中に及ぶかまたは生じていなければならない。この目的のこれを達成するために、中間容積は、過度の圧力を発生させるポンプと接続することができる。さらに、例えば、2つの層の間に、約120mbarを超える圧力を阻止するための圧力リリーフ弁を利用することがあり得る考えられる。
【0010】
テストピースと壁部との間のガスフローを可能にするために、テストピースとテストチャンバとの間には、ガス案内材料、例えば、不織布で作製されたガス案内マットを挿入すべきである。ガス案内材料は、テストチャンバ壁部の内側全体に沿って延在させることができる。
【0011】
フレキシブルな壁部は、固いフレームでクランプすることができる。好ましくは、各々が、例えば、円形リングフレームでクランプされている、2つのフレキシブルチャンバ壁部がは、互いに折り重ねられていることが好ましい。2つのフレームの間には、ガスシールを設けなければならない。クランプ要素は、フレームを互いに押し付けてもよい。少なくとも1つの領域において、2つのフレームの間にヒンジを設けてもよい。
【0012】
好ましくは、2つの層の間の中間容積には、2つの層の間の圧力を測定するための圧力センサを設けることができる。測定した圧力は、中間容積の圧力が、約100mbarの所望の範囲内にあるか否かをモニタするのに役に立つ。
【0013】
さらに、2つの層の耐密性は、2つの層の間の圧力をモニタすることによって監視することができる。2つの層の一方に欠陥がある場合、2つの層の間の圧力は低下する。
【0014】
さらに、テストピースがテストチャンバ内にあるか否かの確認は、テストチャンバが閉じられている場合に、2つの層の間の圧力をモニタすることによって実行することができる。二重層壁部を有するチャンバが閉じられた場合、凸状の膨らみがテストピースまたは反対側の壁部に押し付けられるため、2つの層の間の圧力が変化する。テストピースがテストチャンバ内にある場合、この圧力の変化は、テストピースがない場合よりも大きい。したがって、起こりうるテストピースの間違った導入を、早い段階で認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下、本発明の例示的な実施形態を、図面を参照して説明する。
図1】チャンバが閉じられている場合の開状態における、例示的な実施形態の概略断面図を示す図である。
図2】チャンバの閉状態における図1の断面図である。
図3】チャンバが排気される前のチャンバの閉状態における、例示的な実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
テストチャンバ10は、2つの部分壁部14、16で構成されている壁部12を備えている。部分壁部16は、テストチャンバ10の底部であり、部分壁部14は、テストチャンバ10のカバーである。部分壁部16は固く、例えば、金属で形成されている。部分壁部14は、フレキシブルフィルムから成る2つの層18、20で構成されている。上から見て分かるように、部分壁部14、16は、円形構造から成り、それぞれの境界領域においてリングとして形成された固いフレーム22、24によって保持されている。他の形状の部分壁部14、16も考えられ、この場合、部分壁部14、16は、上から見て分かるように、少なくとも1つの直線状側部を備えている。上方リング22は、2つのフィルム層18、20を、それらの外側境界領域において一緒に密封保持している。したがって、気密に閉じられた中間容積26が、2つの層18、20の間に画成される。中間容積26内には、約80〜90mbarの圧力が及んでおり、その圧力は、図1の矢印によって示されている方向で、上方部分壁部14が閉じられた場合に受ける空気抵抗に対抗する。過度の圧力により、2つのフィルム層18、20は、外側に凸状に膨らむ。下方のフィルム層20は、テストチャンバ10が閉じられていない場合に、テストピース28に向かって凸状に膨らむ。リングフレーム22には、中間容積26を気密に密封するために、図示されていないシールが設けられている。
【0017】
圧力センサ30は、2つの層18、20の間の中間容積26内に配置され、中間容積26の圧力を測定する圧力測定計器Pに接続されている。中間容積26内の圧力を監視することにより、フィルム層18、20またはフレーム22、すなわち、上方部分壁部14の漏れを検出することができる。その圧力はさらに、テストピース28がテストチャンバ10内にあるか否かを示すことができ、およびこのテストピースの容積を示すことができる。テストピース28の容積が大きくなればなるほど、図2に図示されているようなテストチャンバの閉じた状態において、圧力測定計器Pによって測定された中間容積26の圧力は大きくなる。
【0018】
圧力は、中間容積26が満たされた場合に、圧力測定計器Pを利用して、所望の値に正確に調整することができる。好ましくは、上方部分壁部14には、それを用いて中間容積26を満たすことができるポンプまたは圧縮ガス源を接続するための、図示されていないバルブ接続部が設けられている。代替的に、中間容積26が液体、フォームまたはゲルで満たされていてもよいることもあり得る。上方部分壁部14の図示されていない圧力リリーフ弁は、過剰な圧力が、2つの層18、20の間に生成されるのを防ぐことができる。
【0019】
テストピース28と2つの部分壁部14、16のそれぞれ一方との間には、図2に示すテストチャンバ10の閉状態におけるテストチャンバ10の排気中に、テストチャンバ容積36からガスを逃がす、不織布材料または織布材料等の各ガス案内テキスタイルファブリック32、34が挿入されている。以下、テキスタイルファブリックは膜とも呼ぶ。
【0020】
2つのリングフレーム22、24は、第1の内側リングシール38および第2の外側リングシール40を介して互いに気密に接続されている。閉状態において、2つのリングフレーム22、24は、図示されていないクランプ装置によって互いに押し付けられている。
【0021】
テストピース28が、下方部分壁部16に載っているガス案内膜34上に配置された後、図1に図示されているように、第2のガス案内膜32が、テストピースを覆って配置される。次に、テストチャンバ10閉じるために、上方部分壁部14が、テストピース28および下方部分壁部16に向かって矢印下方向に下げられる。
【0022】
テストチャンバが閉じられると、カバー、すなわち、上方部分壁部14は、中間容積26中の過度の圧力が、カバーが下げられたときに受ける空気抵抗に対抗するため、より素早く動くことができ、およびフレキシブルフィルムのが変形するのを防止する。テストピース28に向けての下方層20の凸状の膨らみにより、テストチャンバ10の閉状態における2つの部分壁部14、16の間のテストチャンバ容積は、そのテストチャンバが排気される前に既に低減されている。したがって、排気すべき残っている残留容積は、より小さくなっている。その結果、本発明によるテストチャンバは、テストチャンバを、より素早く閉じて排気すること、したがって、し、これにより素早く動作を実行することを可能にする。
図1
図2
図3