特許第6640104号(P6640104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6640104マットレス構造およびマットレス構造の硬さを調節する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640104
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】マットレス構造およびマットレス構造の硬さを調節する方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/20 20060101AFI20200127BHJP
   A47C 23/04 20060101ALN20200127BHJP
【FI】
   A47C27/20
   !A47C23/04
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-558361(P2016-558361)
(86)(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公表番号】特表2017-508547(P2017-508547A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】EP2015056603
(87)【国際公開番号】WO2015144836
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2018年1月5日
(31)【優先権主張番号】14161718.3
(32)【優先日】2014年3月26日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】BR102015001231-4
(32)【優先日】2015年1月19日
(33)【優先権主張国】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】515200180
【氏名又は名称】スタースプリングス アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】Starsprings AB
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ダーリン、ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ヘーゲル、ベンクト
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03739409(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第03738272(DE,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第02750584(FR,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02042058(EP,A2)
【文献】 特開昭55−021932(JP,A)
【文献】 実開昭64−021660(JP,U)
【文献】 特表平10−509367(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/054798(WO,A1)
【文献】 国際公開第2002/076265(WO,A1)
【文献】 特表2011−512191(JP,A)
【文献】 特開2001−145545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C27/00−27/22
A47C23/00−23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド構造等のマットレス構造であって、
上側マットレスと、
前記上側マットレスの下に配置されている下側マットレスと、
前記上側マットレスと下側マットレスとの間に配置されて上側マットレスを部分的に支持している支持層と、を備え、
前記下側マットレスの、該マットレスの長さ方向または幅方向あるいはその両方の方向における拡張範囲が可変であり、それによって、前記下側マットレスの少なくとも1つの側部が、下側マットレスの反対側の側部に対して前記長さ方向または幅方向あるいはその両方の方向において移動可能であり、このため、下側マットレスが、より硬さの低い拡張状態に拡張可能であるとともに、より硬さの高い収縮状態に圧縮可能であり、
前記支持層が、前記下側マットレスの少なくとも1つの移動可能側部の上に重ねられていることによって前記上側マットレスの下側において少なくとも1つの区画部を形成しており、前記下側マットレスが収縮状態にあるときには前記区画部が少なくとも部分的に空であり、前記下側マットレスが拡張状態にあるときには前記区画部が少なくとも部分的に埋まっている、マットレス構造。
【請求項2】
前記下側マットレスの、該マットレスの長さ方向における拡張範囲が可変である、請求項1に記載のマットレス構造。
【請求項3】
前記下側マットレスの少なくとも足側端部に配置されている側部が、前記下側マットレスの頭側端部に配置されている側部に対して移動可能である、請求項1または2に記載のマットレス構造。
【請求項4】
前記下側マットレスの頭側端部に配置されている側部が固定されている、請求項3に記載のマットレス構造。
【請求項5】
拡張状態にある前記下側マットレスの外側寸法が、前記上側マットレスの外側寸法と同等である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のマットレス構造。
【請求項6】
前記下側マットレスが、前記拡張状態と収縮状態との間において少なくとも1つの中間状態をさらに有している、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のマットレス構造。
【請求項7】
前記下側マットレスが、ポケット内に配置されている複数のコイルスプリングを有しているポケットスプリングマットレスである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のマットレス構造。
【請求項8】
前記ポケットスプリングマットレスが、横並びに互いに接続されている複数の平行なストリングを有しており、各ストリングが複数の連続するケーシングを有しており、各ケーシングがコイルスプリングを有しており、前記マットレスの拡張状態への拡張が、前記ストリングと平行な方向および該ストリングと直交する方向の少なくとも一方において起こる、請求項7に記載のマットレス構造。
【請求項9】
前記下側マットレスが、該下側マットレスの移動可能側部から反対側の側部まで延びている少なくとも1つの弾性要素を有しており、該少なくとも1つの弾性要素が、前記下側マットレスを収縮状態にさせる収縮力をもたらすように構成されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のマットレス構造。
【請求項10】
前記下側マットレスを拡張状態にさせる引張力または押圧力をもたらすために前記少なくとも1つの移動可能側部に接続されている引張構造または押圧構造をさらに備えている、請求項8に記載のマットレス構造。
【請求項11】
前記下側マットレスを少なくとも部分的に収容するように構成されているフレームをさらに備えており、前記支持層が前記フレームに接続されている、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のマットレス構造。
【請求項12】
マットレス構造の硬さを調節する方法であって、
上側マットレスを提供する工程と、
前記上側マットレスの下に配置される下側マットレスを提供する工程であって、前記下側マットレスの、該マットレスの長さ方向または幅方向あるいはその両方の方向における拡張範囲が可変であり、前記下側マットレスの少なくとも1つの側部が、下側マットレスの反対側の側部に対して移動可能であり、このため、下側マットレスが、より硬さの低い拡張状態に拡張可能であるとともに、より硬さの高い収縮状態に圧縮可能である工程と、
前記上側マットレスと下側マットレスとの間に配置されるとともに前記下側マットレスの少なくとも1つの移動可能側部の上に重ねられることによって上側マットレスを部分的に支持する支持層を提供する工程であって、前記上側マットレスの下側において少なくとも1つの区画部を形成しており、前記下側マットレスが収縮状態にあるときには前記区画部が少なくとも部分的に空であり、前記下側マットレスが拡張状態にあるときには前記区画部が少なくとも部分的に埋まっている工程と、
前記少なくとも1つの移動可能側部を動かすことによって前記マットレスの硬さを調節する工程と、からなる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬さの調節が可能なベッド構造等のマットレス構造に関する。さらに、本発明は、このようなマットレス構造において使用可能なポケットスプリングマットレス、およびこのようなマットレス構造を調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベッド構造や他のシートまたは家具構造等のマットレス構造は、使用者の体重または体重の一部を受ける支持部を備えており、ベッドは使用者の体重を装置の表面の一部に分散させる。ベッドが使用者の体重をどのように分散させるかに応じて、そのベッドが柔らかく感じられるか硬く感じられるかが決まる。ベッドの硬さは、ばね定数等の、弾性要素の特性に左右される。さらに、弾性部材がベッドに装着されている状態、例えば締め付けや事前張力の程度によっても左右される。このため、一般的に、ベッドの硬さは装置の製造時に設定される。
【0003】
しかしながら、希望する硬さや必要とする硬さは人によって異なる。さらに、体の部位によって硬さを変える必要がある場合もある。
硬さが変更可能であるベッド構造が知られている。弾性部材を様々な程度に変形させることによってベッドの硬さを調節できる。変形部材は、弾性部材自体によってもたらされる弾性部材の変形とは独立して弾性部材を変形できる。つまり、ベッドの硬さが、使用者の希望に応じて使用開始時に調節可能である。また、装置の硬さは、弾性構造の弾性特性に起こり得る経時変化分を差し引いて設定可能である。このような解決方法は、特許文献1および特許文献2等に開示されている。
【0004】
さらに、高さが変更可能である支持板上にコイルスプリングを置くことによってマットレスの硬さを変更する構成が知られている。支持板の高さは、支持板の下に配置され、偏心回転軸線を有する回転要素によって調節される。回転要素を回転させることによって板の高さ位置が変化する。このような硬さ調節手段は、例えば特許文献3および特許文献4に記載されている。高さが変更可能である支持板を使用する類似の構成としては、直線運動電動機、ジャッキまたは他の種類の昇降機構である移動部材によって支持板の高さを調節する構成が知られている。このような硬さ調節手段は、例えば特許文献1および5〜8に記載されている。
【0005】
しかしながら、このような硬さが変更可能な既存のベッド構造は、比較的複雑かつ重量が大きく、製造コストが高いという共通の欠点を有している。さらに、このようなベッド構造は使用が比較的困難かつ煩雑である場合が多い。またさらに、このようなベッド構造においては、ある程度の調節は可能であるとはいえ、使用者の希望する程度には調節できないことが多い。
【0006】
別の方法が、本願と出願人を同じくする特許文献9に記載されている。この方法においては、ベッドの幅が変更可能であり、ベッドフレームの拡張/収縮に応じてマットレスが拡張/収縮するように構成されている。しかしながら、この方法は、ベッドの大きさが大幅に変化してしまうという著しい難点を有している。
【0007】
このため、上記の問題を改善できる、硬さが調節可能なマットレス構造、より詳細にはベッド構造が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第2245967号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/120270号
【特許文献3】米国特許第3340548号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0258772号明細書
【特許文献5】オーストラリア国特許第551300号明細書
【特許文献6】米国特許第4222137号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開2006/0253994号明細書
【特許文献8】国際公開第99/65366号
【特許文献9】米国特許第8176589号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は上記した問題を少なくとも部分的に解決できる改良されたマットレス構造を提供することにある。
上記目的および以下に記載される他の目的は、添付の特許請求の範囲によるマットレス構造、ポケットスプリングマットレスおよびマットレス構造を調節する方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様によるベッド構造等のマットレス構造は、
上側マットレスと、
上側マットレスの下に配置されている下側マットレスと、
上側マットレスと下側マットレスとの間に配置されて上側マットレスを部分的に支持している支持層と、を備え、
下側マットレスの少なくとも1つの側部が、下側マットレスの反対側の側部に対して移動可能であり、このため、下側マットレスが、より硬さの低い拡張状態に拡張可能であるとともに、より硬さの高い収縮状態に圧縮可能であり、
支持層が、下側マットレスの少なくとも1つの移動可能側部の上に重ねられていることによって上側マットレスの下側において少なくとも1つの区画部を形成しており、下側マットレスが収縮状態にあるときには区画部が少なくとも部分的に空であり、下側マットレスが拡張状態にあるときには区画部が少なくとも部分的に埋まっている。
【0011】
マットレス構造はベッド構造であってもよいが、他の種類のシート構造や家具構造であってもよい。特に、マットレス構造は、ベッドマットレスやクッション等の、使用者の体重を受容するマットレスを含んでいる。このようなマットレスは、あらゆる種類の車両のシート、布張りされた家具およびベッド構造等において用いることができる。
【0012】
支持層は、下側マットレスが載置されているベッドフレーム等に接続されていてもよい。しかしながら、支持層は、下側マットレスの底部またはベッドの底部等に接続された側方支持部に接続されていてもよい。さらに、支持層は、上側マットレスと下側マットレスとの間に配置されたフレームに接続されていてもよい。このフレームは、例えば上側マットレスの下側の外周を囲むフレームである。この場合、支持層は上側マットレスまたは下側マットレスと一体をなす部分であってもよい。
【0013】
追加のマットレスやパッド層が設けられていてもよい。さらに、マットレス構造の全体が共有のカバー布に包まれていてもよい。
好適には、支持層は弾性を有しておらず、板材、格子または棒材等の剛性構造を形成していてもよい。また、柔軟性/可撓性を有し、好適には弾性を有していない要素、例えば、布、可撓性バンド、コード等によって形成されていてもよい。しかしながら、支持層は、柔軟性/可撓性を有している弾性要素、例えば、弾性材料からなる布、バンド、コード等によって形成されていてもよい。
【0014】
支持層は下側マットレスの移動可能な端部の上に重なるように配置され、下側マットレスが収縮状態に圧縮されたときに形成される空間の上の上側層を支持できる拡張範囲を有している。支持層は上側マットレスを部分的のみに支持していてもよい。つまり、支持層は、上側マットレスの下面の全体を覆って支持していなくてもよい。上側マットレスの下面のより大きい部分が支持層に支持されておらず、上側マットレスのこの部分は代わりに下側マットレスに直接的に支持されている。このため、支持層は上側マットレスの限られた一部分、もしくは複数の異なる部位が支持される場合は限られた複数の部分のみを支持する。その結果、各支持層の水平寸法は、下側マットレスが収縮する方向に直交する方向に対応する1つの方向においては上側マットレスの水平寸法と同じもしくは略同じであるが、下側マットレスが収縮する方向に対応する別の方向においては、支持層の水平寸法は上側マットレスの水平寸法よりも大幅に小さい。好適には、後者の方向における支持層の水平方向の拡張範囲は、上側マットレスの対応する寸法の5〜40%であり、より好適には10〜30%である。
【0015】
下側マットレスの収縮は好適にはマットレスの長さ方向に発生するが、代替的または追加的に、幅方向に発生してもよい。
上側マットレスが支持層に支持されていない位置においては、上側マットレスは下側マットレスに支持されている。下側マットレスの硬さが低下すると、すなわち、下側マットレスが拡張すると、上側マットレスが下側マットレスに沈み込みやすくなり、ベッド/シートの柔軟性が上がる。下側マットレスの硬さが増加すると、すなわち、下側マットレスが収縮すると、下側マットレスへの上側マットレスの沈み込みに対する抵抗が増加し、マットレス構造がより硬くなる。
【0016】
支持層が、下側マットレスの少なくとも1つの移動可能側部の上に重ねられていることによって上側マットレスの下側において少なくとも1つの区画部を形成しているため、移動可能側部が区画部に対して自由に出入り可能となっている。このため、下側マットレスが収縮状態にあるときには区画部が少なくとも部分的に空であり、下側マットレスが拡張状態にあるときには区画部が少なくとも部分的に埋まっている。
【0017】
睡眠、腰掛けおよび休息における感覚、および何を快適と感じるかは個人によって大きく異なる。さらに、使用者は、例えばうつ伏せ、すなわち腹臥位等の寝転がった姿勢や、横向きに寝転がった姿勢においては、他の睡眠姿勢、例えば仰向け、すなわち仰臥位である場合よりもより柔らかいマットレスの方が快適であると感じることが多い。本発明は、使用者の希望に応じて、さらには横になる姿勢の選択等に応じてマットレスの特性を変化させる、効率的でありながら比較的単純かつコスト効率の高い方法を提供する。これによって睡眠および休息における感覚が大きく向上され、休息および睡眠の質が向上することがわかっている。睡眠および休息が向上することによって使用者の健康状態が向上し、生活の質が全体的に向上される。
【0018】
本発明以前においては、特性が調節可能であるマットレスおよびシート/ベッドは、複雑かつ重量が大きく、コストが高く、さらに使用が困難かつ煩雑であった。これに対し、本発明による特性が調節可能であるベッド構造等のマットレス構造は、重量が非常に小さく、比較的単純であり、製造のコスト効率が高く、使用者が容易に操作できる。さらに、このマットレス構造は、自動製造または半自動製造に非常に適している。
【0019】
さらに、本発明のマットレス構造においては、上側マットレスの下で下側マットレスが収縮するため、マットレス構造の外側寸法は固定されている。また下側マットレスの収縮を使用者から容易に隠すことができる。したがって、硬さの設定に関わらず、マットレス構造の全体的な寸法および外観が変化しない。
【0020】
下側マットレスの拡張範囲をこのように変化させることによって、マットレス構造の硬さの程度を幅広い範囲にわたって設定可能であることがわかった。また、硬さは非常に正確かつ予測可能な方法にて調節できる。
【0021】
マットレス構造において上側マットレスが支持層の上に重ねられている部分は常に同じ硬さである。しかしながら、好適には、支持層はマットレス構造において低程度から中程度のみを受容するよう意図された部分、例えばマットレス構造の足側端部等に配置される。一般的に、この部分においては硬さの調節が不要である。さらに、ベッドにおいてマットレス構造のこの部分に人が座ることが多く、支持層によって安定性が増加することによって座る際の快適性が向上する。代替的または追加的に、ベッド構造の長い側部に沿って支持層を配置してもよい。この場合も、これらの外側の端部は通常の場合睡眠時に使用されることがないため、睡眠時の快適性が損なわれることがない。反対に、マットレス構造の側部に座る際の快適性が向上され、かつ、ベッドから誤って転落する危険性が低下するため、端部において安定性が高いことは有利である場合が多い。マットレス構造の長い側部の一方または両方に沿って支持層を配置することは、マットレス構造をソファやソファベッド等において用いる際にも効果的である。さらに、支持層が若干の弾性を有する材料から形成される場合は、支持層自体がある程度の伸縮性をもたらす。
【0022】
好適には、下側マットレスの、マットレスの少なくとも長さ方向における拡張範囲は可変である。さらに、好適には、下側マットレスの少なくとも足側端部に配置されている側部は、下側マットレスの頭側端部に配置されている側部に対して移動可能である。この場合、好適には、下側マットレスの頭側端部に配置された側部が固定されており、より好適には、上側マットレスの側部に対応する位置において固定されている。
【0023】
また、好適には、拡張状態にある下側マットレスの外側寸法が、上側マットレスの外側寸法と同等である。このため、下側マットレスを最大限に使用することができ、同時に、マットレスの水平寸法は上側マットレスの大きさのみによって決定される。
【0024】
下側マットレスは、拡張状態と収縮状態との間において少なくとも1つ、好適には複数の中間状態をさらに有している。好適な実施形態においては、下側マットレスは、拡張状態と収縮状態との間の任意の中間状態に設定されるように連続的に調節可能である。
【0025】
上側マットレスは、いかなる種類のマットレスであってよく、弾性発泡要素および弾性ゴム等を含む膨張可能要素等を有していてもよい。しかしながら、好適には、上側マットレスは複数のコイルスプリングを有し、このコイルスプリングは、ポケットスプリングマットレスを形成するようにカバー材の各ポケット内に個別に配置されていることが好ましい。上側マットレスはいかなる厚さを有していてもよい。いくつかの実施形態においては、上側マットレスは比較的薄く、例えば数センチの厚さを有している。しかしながら、他の実施形態においては、上側マットレスは比較的厚く、例えば10cmを超える厚さを有している。いくつかの実施形態においては、下側マットレスの厚さは上側マットレスの厚さと略同じである。しかしながら、他の実施形態においては、上側マットレスの厚さは下側マットレスの厚さよりも薄い、もしくは非常に薄い。
【0026】
下側マットレスもいかなる種類のマットレスであってもよい。下側マットレスは上側マットレスと同じ種類であってもよいし、別の種類であってもよい。
好適には、下側マットレスは、複数のコイルスプリングがポケット内に配置されているポケットスプリングマットレスである。より好適には、ポケットスプリングマットレスは横並びに互いに接続されている平行なストリングを複数有している。各ストリングは複数の連続するケーシングを有し、各ケーシングはコイルスプリングを有している。マットレスは、ストリングに平行な方向およびストリングに直交する方向の少なくとも一方に拡張して拡張状態に移行する。このような種類のマットレスはそれ自体において周知である。本発明に関連して好適に使用できるマットレスの種類の例は、本願と出願人を同じくする特許文献9に記載されている。同文献はポケットスプリングマットレスに関する。このポケットスプリングマットレスにおいては、ポケットを形成するカバー材に複数の伸張開口部が形成されていることによって、ストリングが互いから離れることが可能となっている。同文献は、参照することによってその内容が本明細書に組み込まれる。本発明に関連して好適に使用できる他のマットレスの種類の例は、本願と出願人を同じくする米国特許第7048263号明細書に記載されている。同文献はポケットスプリングマットレスに関する。このポケットスプリングマットレスにおいては、各ストリング内の隣り合うスプリング/ポケットの間に隔離距離が形成されていることによって、ストリングの方向にマットレスが拡張及び収縮できるように構成されている。同文献は、参照することによってその内容が本明細書に組み込まれる。本発明に関連して好適に使用できる他のマットレスの種類の例は、本願と出願人を同じくする米国特許出願公開第2007/124865号明細書に記載されている。同文献はポケットスプリングマットレスに関する。このポケットスプリングマットレスにおいては、各ストリング内の隣り合うスプリング/ポケットの間に隔離距離が形成され、各隔離部にスリット開口部が設けられている。このため、ストリングの方向にマットレスが拡張及び収縮する能力が向上されている。同文献は、参照することによってその内容が本明細書に組み込まれる。
【0027】
好適には、下側マットレスは、下側マットレスの移動可能側部から反対側の側部まで延びる少なくとも1つの弾性要素をさらに有し、この少なくとも1つの弾性要素は、下側マットレスを収縮状態にさせる収縮力をもたらすように構成されている。このため、外力が加えられていない状態の下側マットレスは収縮状態にある。これによって、マットレスの動作が単純化されている。さらに、拡張状態と収縮状態との間における中間状態のすべてにおいて、下側マットレス内においてスプリングが均一に分散された状態が確実に維持される。弾性要素は、弾性材料からなるバンド、ひもまたはコード等であってもよい。好適には、下側マットレスの上または内部に複数の弾性要素が分散して配置される。さらに、好適には、各弾性要素は、分散された複数の接続点において下側マットレスに接続されている。ポケットスプリングマットレスの場合には、各弾性要素が複数のポケットに接続されることが好ましく、さらには、接触しているポケットのすべてに接続されていることが好ましい。
【0028】
弾性要素は下側マットレスの上面に配置されていてもよいし、下側マットレスの下面に配置されていてもよいし、下側マットレスの1つまたは複数の側部に配置されていてもよいし、下側マットレス内に組み込まれていてもよいし、これらの組み合わせであってもよい。ポケットスプリングマットレスにおいては、少なくともいくつかの弾性要素が、ポケットに入ったスプリングの隣り合う列/ストリングの間を延びていてもよい。
【0029】
上記の弾性要素は下側マットレスの上に配置されるか、下側マットレス内に組み込まれており、マットレスを収縮状態にさせる収縮をもたらすために使用される。このため、このようなマットレスの動作においては、例えば押圧構造または引張構造によって、マットレスを拡張して拡張状態、または収縮状態と拡張状態との間の中間状態に移行させる反作用力がもたらされる。この反作用力を取り除くと、下側マットレスが自動的に収縮して、静止状態もしくは初期状態である収縮状態に復帰する。
【0030】
しかしながら、この代わりに、ばね等の伸縮性要素を配置することによって下側マットレスを自動的に拡張状態にさせてもよい。この場合、反作用力は下側マットレスをより収縮した状態に移行させるために加えられ、反作用力が取り除かれると下側マットレスが拡張された静止状態または初期状態に復帰する。
【0031】
好適には、マットレス構造は、少なくとも1つの移動可能側部に接続されて下側マットレスを拡張状態に移行させる引張力または押圧力をもたらす引張構造または押圧構造を有している。上記の弾性要素等によって下側マットレスの収縮状態への移行が自動で行われる場合を除いて、同じもしくは別の押圧構造または引張構造を、下側マットレスを収縮状態に移行させるために用いてもよい。引張構造または押圧構造は、下側マットレスの側部または内部に接続された1つまたは複数のロープまたはひも等であってもよい。このような構造は非常にコスト効率が高く、手動操作に特に適している。ロープ/ひもは、係止構造によって好適な引っ張り位置に係止されていてもよいし、まとめて縛られていてもよいし、他の方法によって固定されていてもよい。ロープ/ひもは、電気モーター等によって操作されてもよい。さらに、下側マットレスの移動可能側部は剛性の引張要素または押圧要素に接続されていてもよい。引張要素および押圧要素は、電気モーター等によって自動で移動させてもよいし、ねじ構造等を用いて手動で移動させてもよい。例えば、主ねじもしくは送りねじを用いてもよい。取っ手、輪または他の種類のハンドルを手動で回転させてねじを回転させることによって、剛性の引張要素を移動させてもよい。
【0032】
好適には、マットレス構造は下側マットレスを少なくとも部分的に収容するように構成されているフレームをさらに備えている。支持層はフレームに接続されている。フレームは上側マットレスの一部もしくは全体を収容するように構成されていてもよい。好適には、フレームは比較的剛性であり、例えば木材、プラスチックまたは金属からなる。
【0033】
本発明の別の態様におけるポケットスプリングマットレスは、横並びに互いに接続されている複数の平行なストリングを有しているポケットスプリングマットレスであって、各ストリングが複数の連続するケーシングを有しており、各ケーシングがコイルスプリングを有しており、マットレスが、マットレスの2つの互いに反対側の側部の間を延びている少なくとも1つの弾性要素をさらに備えており、少なくとも1つの弾性要素が、互いに反対側の側部を互いに近づかせる収縮力をもたらすように構成されている。
【0034】
本発明のこの別の態様によって、本発明の第1態様と同様の目的および効果が達成される。
好適には、ポケットスプリングマットレスは複数の平行な弾性要素を有しており、弾性要素は互いから離れて配置されてポケットスプリングマットレスの長さまたは幅の全体にわたって分散されている。
【0035】
本発明のさらに別の態様による、マットレス構造の硬さを調節する方法は、
上側マットレスを提供する工程と、
上側マットレスの下に配置される下側マットレスを提供する工程であって、下側マットレスの少なくとも1つの側部が、下側マットレスの反対側の側部に対して移動可能であり、このため、下側マットレスが、より硬さの低い拡張状態に拡張可能であるとともに、より硬さの高い収縮状態に圧縮可能である工程と、
上側マットレスと下側マットレスとの間に配置されているとともに下側マットレスの少なくとも1つの移動可能側部の上に重なることによって上側マットレスを部分的に支持している支持層を提供する工程と、
少なくとも1つの移動可能側部を動かすことによってマットレスの硬さを調節する工程と、からなる。
【0036】
本発明のこの別の態様によって、本発明の第1態様と同様の目的および効果が達成される。
本発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明の上記態様および他の態様について以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1a】本発明の一実施形態によるベッド構造を示す概略斜視図であって、部分的に断面が示されているベッド構造の図。
図1b】下側マットレスが拡張状態にあるベッド構造の概略断面図。
図1c】下側マットレスが収縮状態にあるベッド構造の概略断面図。
図2】本発明の別の実施形態によるベッド構造を示す概略分解斜視図。
図3】本発明の別の実施形態によるベッド構造を示す概略分解斜視図。
図4】本発明のさらに別の実施形態によるベッド構造を示す概略分解斜視図。
図5a】一実施形態による下側マットレスの斜視側面図。
図5b図5aに示された下側マットレスの上面図。
図6】別の実施形態による下側マットレスの斜視側面図。
図7a】別の実施形態による下側マットレスの拡張状態を示す斜視側面図。
図7b図7aに示された下側マットレスの収縮状態を示す側面図。
図7c図7aに示された下側マットレスの拡張状態を示す側面図。
図8a】下側マットレスを収縮状態に収縮させる、または下側マットレスを拡張状態に拡張させる弾性要素等を有している下側マットレスの様々な実施形態の一例を示す図。
図8b】下側マットレスを収縮状態に収縮させる、または下側マットレスを拡張状態に拡張させる弾性要素等を有している下側マットレスの様々な実施形態の一例を示す図。
図8c】下側マットレスを収縮状態に収縮させる、または下側マットレスを拡張状態に拡張させる弾性要素等を有している下側マットレスの様々な実施形態の一例を示す図。
図8d】下側マットレスを収縮状態に収縮させる、または下側マットレスを拡張状態に拡張させる弾性要素等を有している下側マットレスの様々な実施形態の一例を示す図。
図8e】下側マットレスを収縮状態に収縮させる、または下側マットレスを拡張状態に拡張させる弾性要素等を有している下側マットレスの様々な実施形態の一例を示す図。
図8f】下側マットレスを収縮状態に収縮させる、または下側マットレスを拡張状態に拡張させる弾性要素等を有している下側マットレスの様々な実施形態の一例を示す図。
図9a】マットレス構造の様々な部位に支持層が配置されている様々な実施形態の一例を示す図。
図9b】マットレス構造の様々な部位に支持層が配置されている様々な実施形態の一例を示す図。
図9c】マットレス構造の様々な部位に支持層が配置されている様々な実施形態の一例を示す図。
図9d】マットレス構造の様々な部位に支持層が配置されている様々な実施形態の一例を示す図。
図9e】マットレス構造の様々な部位に支持層が配置されている様々な実施形態の一例を示す図。
図10a】下側マットレスを拡張状態にさせる引張構造の様々な実施形態の一例を示す図。
図10b】下側マットレスを拡張状態にさせる引張構造の様々な実施形態の一例を示す図。
図10c】下側マットレスを拡張状態にさせる引張構造の様々な実施形態の一例を示す図。
図10d】下側マットレスを拡張状態にさせる引張構造の様々な実施形態の一例を示す図。
図11】本発明の一実施形態による、追加層を有するベッド構造を示す概略分解斜視図。
図12】本発明のさらに別の実施形態によるベッド構造を示す概略分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の記載において、本発明はベッド構造として実施されている。しかしながら、同様の趣旨および機能が、ベッドマットレス、あらゆる種類の車両のシート等のクッション、布張りされた家具等の、マットレスを備えたあらゆる種類のマットレス構造に適用できることは当業者に理解される。したがって、以下の記載においてベッドまたはベッド構造が参照される際には、他の種類のマットレス構造、より詳細には他の種類の家具構造についても同様の内容が適用される。
【0039】
図1aは、本発明の第1実施形態による、硬さが調節可能なベッド構造の概略図である。ベッド構造はカバー2に囲まれているが、中央の切欠部においてはベッド構造の内部が示されている。ベッド構造は上側マットレス3、下側マットレス4およびフレーム5を有している。上側マットレスと下側マットレスとの間には追加のパッド層7等が設けられていてもよい。
【0040】
図1bおよび1cの断面図には支持層6がさらに示されている。支持層6は、ベッド構造の一端、例えば足側端部において上側マットレスを部分的に支持している。支持層は、下側マットレスが載置されているベッドフレーム等に接続されていてもよい。
【0041】
しかしながら、詳細は後述するが、支持層は、下側マットレスの底部またはベッドの底部等に接続された側方支持部に接続されていてもよい。さらに、支持層は、下側マットレスと上側マットレスとの間に配置されたフレームに接続されていてもよい。このフレームは、例えば上側マットレスの下側の外周を囲むフレームである。この場合、支持層は上側マットレスまたは下側マットレスと一体をなす部分であってもよい。
【0042】
好適には、支持層6は弾性を有しておらず、板材、格子または棒材等の剛性構造を形成している。また、柔軟性/可撓性を有し、好適には弾性を有していない要素、例えば、布、可撓性バンド、コード等によって形成されていてもよい。図1の実施形態においては板状の構造が使用されている。しかしながら、弾性要素を用いて支持層を形成してもよい。
【0043】
支持層は下側マットレスの移動可能な端部の上に重なるように配置され、下側マットレスが収縮状態に圧縮されたときに形成される空間の上の上側層を支持できる拡張範囲を有している。支持層は、上側マットレスの幅寸法に等しい、もしくは略等しい幅寸法を有しており、上側マットレスの長さ寸法よりも大幅に短い長さ寸法を有している。
【0044】
下側マットレス4は、支持層6の下に配置された移動可能端部41を有し、反対側の端部42は、上側マットレス3の対応する端部に固定され、この端部に整合している。
支持層は、上側マットレスの下側に位置して下側マットレスの移動可能側部41を受容する区画部を形成している。下側マットレスはこの区画部内において自由に移動できる。したがって、より硬さの低い拡張状態においては、この区画部は図1bに示すように下側マットレスによって埋められている。一方、より硬さの高い収縮状態においては、図1cに示すように、この区画部は少なくとも部分的に空である。
【0045】
支持層は様々な方法において配置することができる。以下に例を記載する。
図2の分解図に示す一実施形態においては、ベッドフレーム5は、下側マットレス4の少なくとも一端においては、下側マットレス4の側面を覆って延びるように配置されている。好適には、この一端はベッド構造の足側端部である。支持層は、釘、ねじ、接着剤または他の好適な締結要素によってベッドフレームに接続されており、固定された支持部として上側マットレス3の対応部分を支持している。さらに、支持層によって上側マットレスの下に形成されている区画部に下側マットレスが出入りできるようになっている。
【0046】
図3に示す別の実施形態においては、支持層が、側壁またはロッド等の支持側部61に装着されているか、支持側部61と一体に形成されている。支持側部61は、下側マットレスの下に配置されたフレーム5’に接続されている。
【0047】
図4に示す別の実施形態においては、支持層が、図2に示す実施形態と同様の方法にてベッドフレームに装着されている。この実施形態においては、支持層6’は、柔軟性/可撓性を有し、好適には弾性を有していない要素、可撓性バンド、コード等によって形成されている。あるいは、可撓性を有する布等が用いられていてもよい。
【0048】
さらに、支持層は、上側マットレス3と下側マットレス4との間にその全体が配置されている支持構造に接続されていてもよい。このような実施形態を図12に示す。この実施形態においては、上側マットレスの外周に配置された剛性の支持フレーム62に支持層が接続されている。上記の例と同様に、支持層は剛性の板であってもよいが、可撓性を有する布や可撓性を有するストラップ等であってもよい。
【0049】
上側マットレスは、膨張可能要素、弾性発泡要素、弾性ゴム要素等のいかなる種類のマットレスであってもよい。しかしながら、好適には、上側マットレスは複数のコイルスプリングを有し、このコイルスプリングは、ポケットスプリングマットレスを形成するようにカバー材の各ポケット内に個別に配置されたコイルスプリングであることが好ましい。下側マットレスもいかなる種類のマットレスであってもよい。下側マットレスは上側マットレスと同じ種類であってもよいし、別の種類であってもよい。
【0050】
好適には、下側マットレスは、ポケット内に配置された複数のコイルスプリングを有しているポケットスプリングマットレスである。より好適には、ポケットスプリングマットレスは横並びに互いに接続されている平行なストリングを複数有している。各ストリングは複数の連続するケーシングを有し、各ケーシングはコイルスプリングを有している。マットレスは、ストリングに平行な方向およびストリングに直交する方向の少なくとも一方に拡張して拡張状態に移行する。好適には、各ストリングは連続するカバー材によって形成され、隣り合うポケットは、横方向の隔離接合部によって互いから隔離されている。これらの隔離接合部および長手方向接合部は、いかなる種類の接着接合、溶接、ホチキス留め、縫合またはこれらの組み合わせによって形成することができる。好適な実施形態においては溶接が行われる。本発明においては様々な大きさのコイルスプリングを用いることができ、基本的に、大小問わず所望の大きさのスプリングが使用可能である。しかしながら、好適には、コイルスプリングの直径は2〜10cmであり、より好適には4〜8cm、例えば6cmである。さらに、好適には、コイルスプリングは螺旋状のコイルワイヤから形成される。好適には、スプリングの巻回の数は少なくとも3であり、10よりも少ない。さらに、スプリングは、太さが0.5〜3.0mmである螺旋状ワイヤから形成されていることが好ましく、より好適には、ワイヤの太さは1.25〜2.50mmである。好適には、スプリングは若干糸巻き状に形成されており、上部および下部において巻回が小さくなっている。このような種類のマットレスはそれ自体において周知である。
【0051】
下側マットレスとして好適に使用できるマットレス種類の例は、同一出願人による特許文献9に記載されており、その内容は参照することによって本明細書に組み込まれる。このようなマットレスを図5aおよび5bに示す。このポケットスプリングマットレスは、ストリング52に配置されたポケット51を有している。各ポケット内にはコイルスプリングが配置されている。各ストリングは連続するカバー材によって形成されている。ポケットは隔離接合部53によって形成されており、隔離接合部53は例えば溶接によって形成されている。ストリングは横並びに平行に配置されて、接続部55によって互いに接続されている。接続部は、接着によって形成されていてもよいが、溶接や面ファスナー等によって形成されていてもよい。さらに、ポケットは、網状の表面構造をもたらす複数の伸張開口部54を有していてもよい。これによって、ストリングが互いから離れることができる。
【0052】
下側マットレスとして好適に使用できる別のマットレス種類の例は、同一出願人による米国特許第7048263号明細書に記載されており、その内容は参照することによって本明細書に組み込まれる。このようなマットレスを図6に示す。このマットレスは、コイルスプリングがポケット51内に配置されて、互いに平行に接続されているストリング52を形成している上記の例と同様の全体構造を有している。しかしながら、この実施形態においては、各ストリング内に配置されたポケット/スプリング間の離間距離がより大きい。このような構成は、間隔をあけて配置された2つの隔離接合部53’、または幅の広い隔離接合部等によってもたらされる。このようにして、各ストリング内において隣り合うスプリング/ポケット間の離間距離が確保され、ストリングの方向にマットレスが拡張および収縮できるようになっている。
【0053】
下側マットレスとして好適に使用できるさらに別のマットレス種類の例は、同一出願人による米国特許出願公開第2007/124865号明細書に記載されており、その内容は参照することによって本明細書に組み込まれる。このようなマットレスを図7に示す。このマットレスは、コイルスプリングがポケット51内に配置されて、互いに平行に接続されているストリング52を形成している上記の例と同様の全体構造を有している。さらに、この実施形態においては、2つの隔離接合部53’等が間隔をあけて配置されることによって、各ストリング内に配置されたポケット/スプリング間の離間距離がより大きくなっている。ストリングの可撓性をより高くするために、スリット開口部56がポケットの間、および隔離接合部53’の間に配置されている。スリット開口部は、開放端を有さずに、カバー材に囲まれていることが好ましい。図7bはこのマットレスの収縮状態を示し、図7cはこのマットレスの拡張状態を示す。
【0054】
好適には、下側マットレスは、下側マットレスの移動可能側部から反対側の側部まで延びる少なくとも1つの弾性要素をさらに有し、この少なくとも1つの弾性要素は、下側マットレスを収縮状態にさせる収縮力をもたらすように構成されている。このため、外力が加えられていない状態の下側マットレスは収縮状態にある。これによってマットレスの作用が簡略化され、拡張状態と収縮状態との間における中間状態のすべてにおいて下側マットレス内においてスプリングが均一に分散された状態が確実に維持される。弾性要素は、弾性材料からなるバンド、ひもまたはコード等であってもよい。好適には、下側マットレスの上または内部に複数の弾性要素が分散して配置される。さらに、好適には、各弾性要素は、分散された複数の接続点において下側マットレスに接続されている。ポケットスプリングマットレスの場合には、各弾性要素が複数のポケットに接続されることが好ましく、さらには、接触しているポケットのすべてに接続されていることが好ましい。このような弾性要素は、図5〜7に関連して前述したポケットスプリングマットレス種類のいかなる種類と組み合わせてもよい。
【0055】
図8に、このような弾性要素57を構成する代替方法を示す。
図8aに、下側マットレスの上部および下部に弾性要素57が配置されているポケットスプリングマットレスを示す。この例においては、下側マットレスの上部および下部の両方に弾性要素が配置されているが、弾性要素は、上部または下部の一方のみに配置されていてもよい。さらに、この例においては、弾性要素はストリングと整合して配置されている。しかしながら、代替的または追加的に、ストリングの方向に直交するように弾性要素を配置してもよい。さらに、この例においては各ストリングに沿って弾性要素が配置されているが、弾性要素の数はこれより少なくてもよい。好適には、弾性要素は複数の箇所においてストリングに接続されており、例えば、接触しているすべてのポケットに接続されている。
【0056】
代替的または追加的に、弾性要素57はマットレスの側部に配置され、かつ、ストリングの間に配置される。このような実施形態を図8bに示す。この実施形態においては、各対のストリングの間に弾性要素が配置されている。しかしながら、弾性要素の数はこれよりも少なくてもよい。このような実施形態を図8cに示す。
【0057】
図8a〜cに示す実施形態においては、マットレスのストリングに対して平行に弾性要素57が配置されている。しかしながら、前述したように、マットレスの拡張および収縮は、ストリングの方向に直交する方向に発生してもよい。このようなマットレスにおいては、ストリングの方向に直交する向きに弾性要素を配置してもよい。このような実施形態を図8dに示す。
【0058】
図8a〜8dを参照して説明した上記実施形態においては、弾性要素によって、マットレスを収縮状態に収縮させる力がもたらされるように構成されている。しかしながら、弾性要素によって、マットレスを拡張状態に拡張させる力がもたらされるように構成してもよい。このような実施形態を図8eに示す。この実施形態において、弾性要素57’は、ラテックスまたはポリエーテル等の、弾性を有する圧縮可能な材料から形成され、マットレスが収縮した時にスプリングの間において圧縮されるように構成されている。これによって、マットレスに対する収縮力が取り除かれたときにマットレスを拡張させる力が弾性要素によってもたらされている。図8eに示す例においては、弾性を有する圧縮可能材料が、マットレスの同一のストリング/列内において隣り合うスプリングの間に配置されている。しかしながら、代替的または追加的に、弾性を有する圧縮可能材料は、ストリング/列と一列に配置されるのではなく、互いに隣接するストリング/列において隣り合うスプリングの間、すなわち隣り合うストリング/列の間に配置されてもよい。
【0059】
さらに、マットレスの拡張状態および/または収縮状態は、別の種類の要素によってもたらされてもよい。例えば、図8fに示すように、膨張可能なチューブ57”やクッション等をスプリングの間に配置してもよい。チューブ57”を膨張させることによってマットレスが拡張状態に拡張され、チューブを収縮させて空気を抜くことによってマットレスが収縮状態に収縮される。このため、この空気駆動原理および上記膨張可能要素を用いることによって、外力が低下したときにマットレスが収縮状態および/または拡張状態に戻ることができる。しかしながら、マットレスを収縮状態から拡張状態もしくはこの逆に移行させる他の構成をこの構成によって置き換え、この構成を状態移行の唯一の手段として用いてもよい。
【0060】
図8fに示す例においては、膨張可能要素がマットレスのストリング/列と直交する方向に延び、同一のストリング/列内において隣り合うスプリングの間に配置されている。しかしながら、代替的または追加的に、膨張可能要素はストリング/列に平行な方向に延び、互いに隣接するストリングにおいて隣り合うスプリングの間、すなわち隣り合うストリング/列の間に配置されてもよい。
【0061】
上記の実施形態において、支持層はベッド構造の足側端部に配置されている。一般的に、この部分においては硬さの調節が不要である。さらに、ベッドにおいてマットレス構造のこの部分に人が座ることが多く、支持層によって安定性が増加するため、座る際の快適性が向上する。
【0062】
しかしながら、代替的または追加的に、ベッド構造の長い側部に沿って支持層を配置してもよい。この場合も、これらの外側の端部は通常の場合睡眠時に使用されることがないため、睡眠時の快適性が損なわれることがない。反対に、マットレス構造の側部に座る際の快適性が向上され、かつ、ベッドから誤って転落する危険性が低下するため、端部において安定性が高いことは有利である場合が多い。マットレス構造の長い側部の一方または両方に沿って支持層を配置することは、マットレス構造をソファやソファベッド等において用いる際にも効果的である。
【0063】
図9a〜9eは、支持層の様々な配置例を示す概略図である。図9aにおいては、上記の実施例と同様に、支持層6はベッド構造の足側端部に配置されている。図9bにおいては、支持層6はベッド構造の足側端部および頭側端部の両方に配置されているため、下側マットレスが両端において移動可能となっている。図9cにおいては、支持層6はベッド構造の長い側部の両方に配置されているため、下側マットレスが幅方向に拡張および収縮できるようになっている。図9dにおいては、図9bおよび図9cの実施形態が組み合わされることによって、下側マットレスが幅方向および長さ方向の両方に拡張および収縮できるようになっている。最後に、図9eの実施形態においては、支持層6がベッド構造の長い側部の一方のみに配置されているため、下側マットレスの反対側の端部が固定できるようになっている。
【0064】
好適には、マットレス構造は、下側マットレスの少なくとも1つの移動可能側部に接続されて下側マットレスを拡張状態に移行させる引張力または押圧力をもたらす引張構造または押圧構造を有している。引張構造は、下側マットレスの側部または内部に接続された1つまたは複数のロープまたはひも等であってもよい。このような構造は非常にコスト効率が高く、手動操作に特に適している。ロープ/ひもは、係止構造によって好適な引っ張り位置に係止されていてもよいし、まとめて縛られていてもよいし、他の方法によって固定されていてもよい。ロープ/ひもは電気モーター等によって操作されてもよい。さらに、下側マットレスの移動可能側部は剛性の引張要素または押圧要素に接続されていてもよい。引張要素および押圧要素は、電気モーター等によって自動で移動させてもよいし、ねじ構造等を用いて手動で移動させてもよい。例えば、主ねじもしくは送りねじを用いてもよい。取っ手、輪または他の種類のハンドルを手動で回転させてねじを回転させることによって、剛性の引張要素または押圧要素を移動させてもよい。
【0065】
このような引張構造のいくつかの実施形態を以下に記載する。
図10aに、例えばロープやひも等の可撓性要素、またはロッド等の剛性要素である操作要素8を示す。操作要素8は、支持層6の下に配置された下側マットレス4の移動可能側部41に装着されている。操作要素8は下側マットレスの内部または下側を延びて、反対側から操作できる。操作要素8を引っ張ることによってマットレスが収縮され、操作要素を適宜の方法にて固定することによって、マットレスが所望の中間状態または収縮状態に係止される。マットレスの移動可能側部は、マットレスを拡張状態に戻すように機能するばね等の伸縮性要素(図示しない)に接続されている。代替的または追加的に、操作要素8は比較的剛性であり、移動可能側部を遠ざけるように押して拡張状態に移動させるように代替的または追加的に用いてもよい。この場合、マットレスは下側マットレスを収縮状態に収縮させるように機能する上記の弾性要素を有していてもよい。
【0066】
図10bに類似の構成を示す。この構成においても、操作要素8’は下側マットレスの移動可能側部41に接続されているが、異なる側に移動されており、操作要素を内側に引くことによってマットレスが収縮し、操作要素を引くことによってマットレスが拡張される。
【0067】
図10cに、下側マットレス4の移動可能端部41から両方向に延びるロープまたはひも等の操作要素8”を有する構成を示す。この操作要素8”は両方の端部側から操作可能である。このような構成は、図10aの実施形態のように収縮状態に移行させるように移動可能端部を引くことと、拡張状態に復帰させるように移動可能端部を反対側から引くこととの両方に用いることができる。このような構成においては、下側マットレスを収縮または拡張している静止状態に移行させるために機能する弾性要素または伸縮性要素を必要としない場合もある。
【0068】
図10dに、自動式構成を示す。この構成においては、移動可能端部41は剛性の側部要素8aに接続されており、側部要素8aは移動アーム8cを介して、電気モーターや電気ポンプ8b等の電気式移動構造に接続されている。
【0069】
上側マットレス3、下側マットレス4およびフレーム5に加えて、追加のマットレスまたはパッド層がさらに設けられていてもよい。このような例の概略図を図11に示す。この例は上面パッド7bを有し、上側マットレスと下側マットレスとの間に中間マットレスまたはパッド層7aが設けられ、下側マットレスの周囲にパッドまたはマットレス側部7cが配置されている。当然ながら、パッドまたはマットレス層の数はこれよりも少なくても多くてもよい。
【0070】
本発明は、上記の好適な実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内において様々な変更や変形を実施できる。例えば、上側マットレスおよび下側マットレスはいずれもポケットスプリングマットレス以外の種類のマットレスであってよく、発泡材料、ゴム、コイルスプリング、膨張可能要素等によって形成された弾性要素であってもよい。さらに、下側マットレスは様々な方向に収縮および拡張可能であってよく、支持層は様々な方法によって所定の位置に保持することができる。また、マットレス構造の硬さは、手動で調節してもよいし、電気的補助を用いて調節してもよい。このような自明の変更例は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明に含まれるものとする。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図8f
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図10a
図10b
図10c
図10d
図11
図12