【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様によるベッド構造等のマットレス構造は、
上側マットレスと、
上側マットレスの下に配置されている下側マットレスと、
上側マットレスと下側マットレスとの間に配置されて上側マットレスを部分的に支持している支持層と、を備え、
下側マットレスの少なくとも1つの側部が、下側マットレスの反対側の側部に対して移動可能であり、このため、下側マットレスが、より硬さの低い拡張状態に拡張可能であるとともに、より硬さの高い収縮状態に圧縮可能であり、
支持層が、下側マットレスの少なくとも1つの移動可能側部の上に重ねられていることによって上側マットレスの下側において少なくとも1つの区画部を形成しており、下側マットレスが収縮状態にあるときには区画部が少なくとも部分的に空であり、下側マットレスが拡張状態にあるときには区画部が少なくとも部分的に埋まっている。
【0011】
マットレス構造はベッド構造であってもよいが、他の種類のシート構造や家具構造であってもよい。特に、マットレス構造は、ベッドマットレスやクッション等の、使用者の体重を受容するマットレスを含んでいる。このようなマットレスは、あらゆる種類の車両のシート、布張りされた家具およびベッド構造等において用いることができる。
【0012】
支持層は、下側マットレスが載置されているベッドフレーム等に接続されていてもよい。しかしながら、支持層は、下側マットレスの底部またはベッドの底部等に接続された側方支持部に接続されていてもよい。さらに、支持層は、上側マットレスと下側マットレスとの間に配置されたフレームに接続されていてもよい。このフレームは、例えば上側マットレスの下側の外周を囲むフレームである。この場合、支持層は上側マットレスまたは下側マットレスと一体をなす部分であってもよい。
【0013】
追加のマットレスやパッド層が設けられていてもよい。さらに、マットレス構造の全体が共有のカバー布に包まれていてもよい。
好適には、支持層は弾性を有しておらず、板材、格子または棒材等の剛性構造を形成していてもよい。また、柔軟性/可撓性を有し、好適には弾性を有していない要素、例えば、布、可撓性バンド、コード等によって形成されていてもよい。しかしながら、支持層は、柔軟性/可撓性を有している弾性要素、例えば、弾性材料からなる布、バンド、コード等によって形成されていてもよい。
【0014】
支持層は下側マットレスの移動可能な端部の上に重なるように配置され、下側マットレスが収縮状態に圧縮されたときに形成される空間の上の上側層を支持できる拡張範囲を有している。支持層は上側マットレスを部分的のみに支持していてもよい。つまり、支持層は、上側マットレスの下面の全体を覆って支持していなくてもよい。上側マットレスの下面のより大きい部分が支持層に支持されておらず、上側マットレスのこの部分は代わりに下側マットレスに直接的に支持されている。このため、支持層は上側マットレスの限られた一部分、もしくは複数の異なる部位が支持される場合は限られた複数の部分のみを支持する。その結果、各支持層の水平寸法は、下側マットレスが収縮する方向に直交する方向に対応する1つの方向においては上側マットレスの水平寸法と同じもしくは略同じであるが、下側マットレスが収縮する方向に対応する別の方向においては、支持層の水平寸法は上側マットレスの水平寸法よりも大幅に小さい。好適には、後者の方向における支持層の水平方向の拡張範囲は、上側マットレスの対応する寸法の5〜40%であり、より好適には10〜30%である。
【0015】
下側マットレスの収縮は好適にはマットレスの長さ方向に発生するが、代替的または追加的に、幅方向に発生してもよい。
上側マットレスが支持層に支持されていない位置においては、上側マットレスは下側マットレスに支持されている。下側マットレスの硬さが低下すると、すなわち、下側マットレスが拡張すると、上側マットレスが下側マットレスに沈み込みやすくなり、ベッド/シートの柔軟性が上がる。下側マットレスの硬さが増加すると、すなわち、下側マットレスが収縮すると、下側マットレスへの上側マットレスの沈み込みに対する抵抗が増加し、マットレス構造がより硬くなる。
【0016】
支持層が、下側マットレスの少なくとも1つの移動可能側部の上に重ねられていることによって上側マットレスの下側において少なくとも1つの区画部を形成しているため、移動可能側部が区画部に対して自由に出入り可能となっている。このため、下側マットレスが収縮状態にあるときには区画部が少なくとも部分的に空であり、下側マットレスが拡張状態にあるときには区画部が少なくとも部分的に埋まっている。
【0017】
睡眠、腰掛けおよび休息における感覚、および何を快適と感じるかは個人によって大きく異なる。さらに、使用者は、例えばうつ伏せ、すなわち腹臥位等の寝転がった姿勢や、横向きに寝転がった姿勢においては、他の睡眠姿勢、例えば仰向け、すなわち仰臥位である場合よりもより柔らかいマットレスの方が快適であると感じることが多い。本発明は、使用者の希望に応じて、さらには横になる姿勢の選択等に応じてマットレスの特性を変化させる、効率的でありながら比較的単純かつコスト効率の高い方法を提供する。これによって睡眠および休息における感覚が大きく向上され、休息および睡眠の質が向上することがわかっている。睡眠および休息が向上することによって使用者の健康状態が向上し、生活の質が全体的に向上される。
【0018】
本発明以前においては、特性が調節可能であるマットレスおよびシート/ベッドは、複雑かつ重量が大きく、コストが高く、さらに使用が困難かつ煩雑であった。これに対し、本発明による特性が調節可能であるベッド構造等のマットレス構造は、重量が非常に小さく、比較的単純であり、製造のコスト効率が高く、使用者が容易に操作できる。さらに、このマットレス構造は、自動製造または半自動製造に非常に適している。
【0019】
さらに、本発明のマットレス構造においては、上側マットレスの下で下側マットレスが収縮するため、マットレス構造の外側寸法は固定されている。また下側マットレスの収縮を使用者から容易に隠すことができる。したがって、硬さの設定に関わらず、マットレス構造の全体的な寸法および外観が変化しない。
【0020】
下側マットレスの拡張範囲をこのように変化させることによって、マットレス構造の硬さの程度を幅広い範囲にわたって設定可能であることがわかった。また、硬さは非常に正確かつ予測可能な方法にて調節できる。
【0021】
マットレス構造において上側マットレスが支持層の上に重ねられている部分は常に同じ硬さである。しかしながら、好適には、支持層はマットレス構造において低程度から中程度のみを受容するよう意図された部分、例えばマットレス構造の足側端部等に配置される。一般的に、この部分においては硬さの調節が不要である。さらに、ベッドにおいてマットレス構造のこの部分に人が座ることが多く、支持層によって安定性が増加することによって座る際の快適性が向上する。代替的または追加的に、ベッド構造の長い側部に沿って支持層を配置してもよい。この場合も、これらの外側の端部は通常の場合睡眠時に使用されることがないため、睡眠時の快適性が損なわれることがない。反対に、マットレス構造の側部に座る際の快適性が向上され、かつ、ベッドから誤って転落する危険性が低下するため、端部において安定性が高いことは有利である場合が多い。マットレス構造の長い側部の一方または両方に沿って支持層を配置することは、マットレス構造をソファやソファベッド等において用いる際にも効果的である。さらに、支持層が若干の弾性を有する材料から形成される場合は、支持層自体がある程度の伸縮性をもたらす。
【0022】
好適には、下側マットレスの、マットレスの少なくとも長さ方向における拡張範囲は可変である。さらに、好適には、下側マットレスの少なくとも足側端部に配置されている側部は、下側マットレスの頭側端部に配置されている側部に対して移動可能である。この場合、好適には、下側マットレスの頭側端部に配置された側部が固定されており、より好適には、上側マットレスの側部に対応する位置において固定されている。
【0023】
また、好適には、拡張状態にある下側マットレスの外側寸法が、上側マットレスの外側寸法と同等である。このため、下側マットレスを最大限に使用することができ、同時に、マットレスの水平寸法は上側マットレスの大きさのみによって決定される。
【0024】
下側マットレスは、拡張状態と収縮状態との間において少なくとも1つ、好適には複数の中間状態をさらに有している。好適な実施形態においては、下側マットレスは、拡張状態と収縮状態との間の任意の中間状態に設定されるように連続的に調節可能である。
【0025】
上側マットレスは、いかなる種類のマットレスであってよく、弾性発泡要素および弾性ゴム等を含む膨張可能要素等を有していてもよい。しかしながら、好適には、上側マットレスは複数のコイルスプリングを有し、このコイルスプリングは、ポケットスプリングマットレスを形成するようにカバー材の各ポケット内に個別に配置されていることが好ましい。上側マットレスはいかなる厚さを有していてもよい。いくつかの実施形態においては、上側マットレスは比較的薄く、例えば数センチの厚さを有している。しかしながら、他の実施形態においては、上側マットレスは比較的厚く、例えば10cmを超える厚さを有している。いくつかの実施形態においては、下側マットレスの厚さは上側マットレスの厚さと略同じである。しかしながら、他の実施形態においては、上側マットレスの厚さは下側マットレスの厚さよりも薄い、もしくは非常に薄い。
【0026】
下側マットレスもいかなる種類のマットレスであってもよい。下側マットレスは上側マットレスと同じ種類であってもよいし、別の種類であってもよい。
好適には、下側マットレスは、複数のコイルスプリングがポケット内に配置されているポケットスプリングマットレスである。より好適には、ポケットスプリングマットレスは横並びに互いに接続されている平行なストリングを複数有している。各ストリングは複数の連続するケーシングを有し、各ケーシングはコイルスプリングを有している。マットレスは、ストリングに平行な方向およびストリングに直交する方向の少なくとも一方に拡張して拡張状態に移行する。このような種類のマットレスはそれ自体において周知である。本発明に関連して好適に使用できるマットレスの種類の例は、本願と出願人を同じくする特許文献9に記載されている。同文献はポケットスプリングマットレスに関する。このポケットスプリングマットレスにおいては、ポケットを形成するカバー材に複数の伸張開口部が形成されていることによって、ストリングが互いから離れることが可能となっている。同文献は、参照することによってその内容が本明細書に組み込まれる。本発明に関連して好適に使用できる他のマットレスの種類の例は、本願と出願人を同じくする米国特許第7048263号明細書に記載されている。同文献はポケットスプリングマットレスに関する。このポケットスプリングマットレスにおいては、各ストリング内の隣り合うスプリング/ポケットの間に隔離距離が形成されていることによって、ストリングの方向にマットレスが拡張及び収縮できるように構成されている。同文献は、参照することによってその内容が本明細書に組み込まれる。本発明に関連して好適に使用できる他のマットレスの種類の例は、本願と出願人を同じくする米国特許出願公開第2007/124865号明細書に記載されている。同文献はポケットスプリングマットレスに関する。このポケットスプリングマットレスにおいては、各ストリング内の隣り合うスプリング/ポケットの間に隔離距離が形成され、各隔離部にスリット開口部が設けられている。このため、ストリングの方向にマットレスが拡張及び収縮する能力が向上されている。同文献は、参照することによってその内容が本明細書に組み込まれる。
【0027】
好適には、下側マットレスは、下側マットレスの移動可能側部から反対側の側部まで延びる少なくとも1つの弾性要素をさらに有し、この少なくとも1つの弾性要素は、下側マットレスを収縮状態にさせる収縮力をもたらすように構成されている。このため、外力が加えられていない状態の下側マットレスは収縮状態にある。これによって、マットレスの動作が単純化されている。さらに、拡張状態と収縮状態との間における中間状態のすべてにおいて、下側マットレス内においてスプリングが均一に分散された状態が確実に維持される。弾性要素は、弾性材料からなるバンド、ひもまたはコード等であってもよい。好適には、下側マットレスの上または内部に複数の弾性要素が分散して配置される。さらに、好適には、各弾性要素は、分散された複数の接続点において下側マットレスに接続されている。ポケットスプリングマットレスの場合には、各弾性要素が複数のポケットに接続されることが好ましく、さらには、接触しているポケットのすべてに接続されていることが好ましい。
【0028】
弾性要素は下側マットレスの上面に配置されていてもよいし、下側マットレスの下面に配置されていてもよいし、下側マットレスの1つまたは複数の側部に配置されていてもよいし、下側マットレス内に組み込まれていてもよいし、これらの組み合わせであってもよい。ポケットスプリングマットレスにおいては、少なくともいくつかの弾性要素が、ポケットに入ったスプリングの隣り合う列/ストリングの間を延びていてもよい。
【0029】
上記の弾性要素は下側マットレスの上に配置されるか、下側マットレス内に組み込まれており、マットレスを収縮状態にさせる収縮をもたらすために使用される。このため、このようなマットレスの動作においては、例えば押圧構造または引張構造によって、マットレスを拡張して拡張状態、または収縮状態と拡張状態との間の中間状態に移行させる反作用力がもたらされる。この反作用力を取り除くと、下側マットレスが自動的に収縮して、静止状態もしくは初期状態である収縮状態に復帰する。
【0030】
しかしながら、この代わりに、ばね等の伸縮性要素を配置することによって下側マットレスを自動的に拡張状態にさせてもよい。この場合、反作用力は下側マットレスをより収縮した状態に移行させるために加えられ、反作用力が取り除かれると下側マットレスが拡張された静止状態または初期状態に復帰する。
【0031】
好適には、マットレス構造は、少なくとも1つの移動可能側部に接続されて下側マットレスを拡張状態に移行させる引張力または押圧力をもたらす引張構造または押圧構造を有している。上記の弾性要素等によって下側マットレスの収縮状態への移行が自動で行われる場合を除いて、同じもしくは別の押圧構造または引張構造を、下側マットレスを収縮状態に移行させるために用いてもよい。引張構造または押圧構造は、下側マットレスの側部または内部に接続された1つまたは複数のロープまたはひも等であってもよい。このような構造は非常にコスト効率が高く、手動操作に特に適している。ロープ/ひもは、係止構造によって好適な引っ張り位置に係止されていてもよいし、まとめて縛られていてもよいし、他の方法によって固定されていてもよい。ロープ/ひもは、電気モーター等によって操作されてもよい。さらに、下側マットレスの移動可能側部は剛性の引張要素または押圧要素に接続されていてもよい。引張要素および押圧要素は、電気モーター等によって自動で移動させてもよいし、ねじ構造等を用いて手動で移動させてもよい。例えば、主ねじもしくは送りねじを用いてもよい。取っ手、輪または他の種類のハンドルを手動で回転させてねじを回転させることによって、剛性の引張要素を移動させてもよい。
【0032】
好適には、マットレス構造は下側マットレスを少なくとも部分的に収容するように構成されているフレームをさらに備えている。支持層はフレームに接続されている。フレームは上側マットレスの一部もしくは全体を収容するように構成されていてもよい。好適には、フレームは比較的剛性であり、例えば木材、プラスチックまたは金属からなる。
【0033】
本発明の別の態様におけるポケットスプリングマットレスは、横並びに互いに接続されている複数の平行なストリングを有しているポケットスプリングマットレスであって、各ストリングが複数の連続するケーシングを有しており、各ケーシングがコイルスプリングを有しており、マットレスが、マットレスの2つの互いに反対側の側部の間を延びている少なくとも1つの弾性要素をさらに備えており、少なくとも1つの弾性要素が、互いに反対側の側部を互いに近づかせる収縮力をもたらすように構成されている。
【0034】
本発明のこの別の態様によって、本発明の第1態様と同様の目的および効果が達成される。
好適には、ポケットスプリングマットレスは複数の平行な弾性要素を有しており、弾性要素は互いから離れて配置されてポケットスプリングマットレスの長さまたは幅の全体にわたって分散されている。
【0035】
本発明のさらに別の態様による、マットレス構造の硬さを調節する方法は、
上側マットレスを提供する工程と、
上側マットレスの下に配置される下側マットレスを提供する工程であって、下側マットレスの少なくとも1つの側部が、下側マットレスの反対側の側部に対して移動可能であり、このため、下側マットレスが、より硬さの低い拡張状態に拡張可能であるとともに、より硬さの高い収縮状態に圧縮可能である工程と、
上側マットレスと下側マットレスとの間に配置されているとともに下側マットレスの少なくとも1つの移動可能側部の上に重なることによって上側マットレスを部分的に支持している支持層を提供する工程と、
少なくとも1つの移動可能側部を動かすことによってマットレスの硬さを調節する工程と、からなる。
【0036】
本発明のこの別の態様によって、本発明の第1態様と同様の目的および効果が達成される。
本発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明の上記態様および他の態様について以下に詳述する。