特許第6640107号(P6640107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホイフト ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許6640107-容器の検査 図000002
  • 特許6640107-容器の検査 図000003
  • 特許6640107-容器の検査 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640107
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】容器の検査
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20200127BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   G01N21/88 K
   G01N21/64 Z
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-560733(P2016-560733)
(86)(22)【出願日】2015年4月17日
(65)【公表番号】特表2017-511482(P2017-511482A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】EP2015058418
(87)【国際公開番号】WO2015158907
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2018年4月4日
(31)【優先権主張番号】102014005650.3
(32)【優先日】2014年4月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500083972
【氏名又は名称】ホイフト ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホイフト,ベルンハルト
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公告第01182413(GB,A)
【文献】 特開昭52−135788(JP,A)
【文献】 特開2013−019894(JP,A)
【文献】 特開2003−194721(JP,A)
【文献】 特開平09−043146(JP,A)
【文献】 特開平02−281131(JP,A)
【文献】 特表平03−503450(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0015362(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0116723(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01324029(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01N 21/62−21/74
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空容器の混入物を検査するための装置であって、
励起放射を生成するための放射源(1)、前記励起放射は容器の内壁に向けられ、検出される混入物が発光放射を発するように混入物を励起する、
前記混入物によって発せられる発光放射を検出するための少なくとも一つのデバイス(5)
検出された前記発光放射を分析するためのデバイス、及び
前記励起放射を透過させ、前記容器の開口から出る発光放射を前記検出デバイス(5)に向けるダイクロイックミラー(3)を含み、且つ
前記励起放射が、前記容器の開口を通じて前記容器の内部に向けられること、
容器の内部空間全体が照明されるように前記放射源(1)が構成されていること、さらに
前記放射源(1)が、パルスモードで作動する放射源であるか、又は、前記検出デバイス(5)がシャッターカメラであること
を特徴とする、装置。
【請求項2】
前記放射源(1)が、電磁波放射源、好ましくは、可視光線、UV−A、UV−B、UV−C又はX線、もしくはそれらの組み合わせの放射源である、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
空容器の混入物を検査するための方法であって、
放射源(1)からの励起放射で前記容器の内壁を照射するステップ、ここで、前記励起放射は容器の開口を通じて前記容器の内部に向けられ、当該励起放射は検出される混入物が発光放射を発するように混入物を励起する、
検出デバイス(5)を用いて前記混入物によって発せられる発光放射を検出するステップ、ここで、前記励起放射を透過させ、前記容器の開口から出る発光放射を前記検出デバイス(5)に向けるダイクロイックミラー(3)が使用される、及び、
分析デバイスで、検出された前記発光放射を分析するステップ、
を含み、且つ
容器の内部空間全体が前記放射源(1)によって照明されることを特徴とし、さらに
前記放射源(1)が、パルスモードで操作されるか、又は、前記検出デバイス(5)がシャッターカメラであることを特徴とする、
方法。
【請求項4】
前記放射源(1)が、電磁波放射源、好ましくは、可視光線、UV−A、UV−B、UV−C又はX線、もしくはそれらの組み合わせの放射源である、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
用いられる前記放射源が、少なくともある割合のUV−C放射を含み、そのため、菌、胞子及び細菌である有機混入物が検出され、同時に無害化される、
請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
混入物のある容器が、予め設定された限界値を超える発光放射が検出される場合にのみ除外される、
請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
混入物の蛍光及びリン光の両方が分析される、
請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空容器の混入物を検査するための方法及び装置に関し、励起放射を生成するための放射源−当該励起放射は空容器の内壁に向けられ、検出される混入物が発光放射を発するように混入物を励起する−と、混入物によって発せられる発光放射を検出するための少なくとも一つのデバイスと、検出される発光放射を分析するためのデバイスとを有する。
【0002】
本発明は特に、一時間あたり90,000本までの高速度で容器が輸送される、自動充填システムにおける使用が意図されている。そのようなボトル充填システムの処理能力へのあらゆるネガティブな影響を回避するために、容器をモニターするための検査デバイスもまた、高速で容器を検査するようにデザインされねばならない。
【0003】
自動充填システムでは、空容器は、充填される前に、考えられる混入物や外来物について試験される。従来、これは、可視光線の光源とCCDカメラとを含む検査装置に容器を通すことによっていた。これは実際に、混入物の信頼性ある検出が確実に行われるように、容器を通して光を照らし、様々な視角からそれらを検査することによっている。このような検査デバイスは例えばEP 0 415 154 A1から公知である。
【0004】
従来の検査デバイスについて、ある種の混入物、特に、カビ菌、脂、炭化水素類、虫の幼虫、微生物やプラスチックのような有機混入物は、このような検査デバイスでは検出が非常に難しいかほとんど不可能であることが示されている。
【0005】
さらに、特に有機物である混入物には、発光現象を示す、つまり、外部源からのエネルギーの作用によって励起状態にシフトし、次いで発光放射を発することによって基底状態に戻ることができるものがあることが知られている。様々なタイプの発光が、励起が終了した後の発光の長さに従って分類されている。蛍光は、励起の直接的な帰結、励起に随伴する現象として生じる、非常に短い残光を意味する。リン光という文言は、励起が終了した後1msよりも長く持続する、より長い残光をいう。
【0006】
一般的に励起は、ここでは、UVライトを用いた照射によって行われる。UVライトは従来は容器の検査に使用されていなかった。なぜなら容器(特にガラス)はUV光線の透過性が非常に低いか、透過性を有しないからである。
【0007】
WO 2008/092537 A1から、サンプルの材料の光学特性を評価するための装置が公知であり、そこではUVライトが採用されている。少なくとも一つのUV検出器を備え、それによってサンプルの蛍光又は発光が測定されうる。サンプルの照明は容器の壁を通して外部から行われるため、容器壁は用いられる光線を透過しなければならない。
【0008】
DE 10 2010 043 131 B1から、電磁波放射の手段によって容器の内容物の性質を非接触で検査するための装置が公知である。容器は例えば穀物サイロや発酵タンク、あるいは同様の容器でありえ、装置は、容器の中にある内容物のプロセスの進行をモニターするための非接触検査を実行するために用いられる。放射の浸透深さは比較的低いため、容器の内部で渦流を作り出すように容器の中に媒体を流すデバイスが備えられる。このケースにおける渦流を生じさせる媒体は、電磁波放射に対して透過性を有するので、渦流の内部で、容器の内容物の性質を決定するための非接触測定が実行されうる。
【0009】
本発明の目的は、検査デバイスにおける容器の滞在時間を顕著に増やすことなく、容器のための検査装置の信頼性を増すことである。
【0010】
この目的は、空容器の内壁が放射源の手段によって照明され、容器の内壁に付着した混入物によって生成される発光放射が適したデバイスで検出され、次いで分析されるという事実による発明に従って、達成される。容器に一般的に使用される材料は励起放射に対する透過性が低いので、内壁の照明は、空容器の開口、例えば飲み口を通して行われる。
【0011】
放射源は好ましくは電磁波放射源、例えば、可視域の光、UV−A、UV−B、UV−C又はX線放射源、又はそれらの組み合わせである。
【0012】
UV−Cの放射は殺菌作用を有することが知られている。すなわち、UV−C放射を用いることによって、細菌や胞子あるいは菌による軽い有機物混入は検出されるだけでなく同時に破壊されうるという事実を、付加的かつ有利に利用することができる。それによって、このような混入物を含む容器が充填デバイスから排除される必要がなくなる。
【0013】
放射源は、パルスモードで操作されることができ、容器が放射源の前にある時にのみ、光線パルスが発出されるように制御されうる。励起放射に対する一般的な容器材料の透過性の低さによって、容器そのものがシールドとして機能する。それゆえ、非常に少ない放射でも、いくらかあれば、外部に届く。また、検査装置をさらにシールドすることは、デザインにおいて非常にシンプルでありえるし、あるいは、完全に省略されていてもよい。パルス操作は、検出デバイスの動きに伴うぼやけを低減する結果をもたらすという、さらなる利点を有する。
【0014】
放射源はまた、連続操作において採用される、連続的な放射源であってもよい。蛍光管又は蛍光ランプが例えば、特に好ましい。
【0015】
飲料工業で典型的に使用される容器の容器壁は励起放射に対して透過性がなく、それゆえ、励起放射又は放射源そのものが、容器の内壁を照射できるように容器開口を通じて容器の内部に向けられ、入れられなければならない。
【0016】
放射源は好ましくは容器の外部に設置され、励起放射は、例えば1又は複数のミラーを通じて、容器の内部に開口を通じて向けられる。
【0017】
さらなる実施形態において、開口を通じて容器の中に装置のヘッドが導入されるためのデバイスが備えられうる。装置のヘッドには、例えば光学導波管が備えられてもよく、それを通じて容器中に励起放射が向けられてもよい。あるいは、装置のヘッドが放射源そのものを含んでもよい。装置のヘッドはまた、反射光線を検出するための検出デバイスを含んでもよい。
【0018】
混入物によって発せられる発光放射は、容器の開口を通じて容器の外部にガイドされてもよく、例えば、ミラーを用いた検出デバイスに向けられる。このような設計は、特にシンプルに構成されるという利点を有する。なぜなら、発光放射を検出するために一つのデバイスのみが必要とされるからである。
【0019】
ミラーは、ダイクロイックミラーであることも好ましく、ダイクロイックミラーは容器中に向けられた入射光を透過し、容器の開口から出る励起放射よりも長波長の発光放射を反射して、その発光放射を検出デバイスに向ける。
【0020】
一方、容器から反射されて戻ってくる励起放射の一部はダイクロイックミラーによって屈折されることがなく、すなわち、検出デバイスに当たらない。放射フィルターが、UV光線や、一般的に望まない波長の放射を選択的にブロックするために、検出デバイスの前に付加的に任意に備えられてもよい。
【0021】
好ましい実施態様において、混入物によって発せられる発光放射は、容器壁を通じて容器の外部にガイドされ、容器の周りに配置された1又は複数の検出デバイスによって集められる。容器の構造が理由で容器の内壁の直接的な照明が開口を通じてできない場合に、この実施態様は適している。当然、このためには、容器の壁が、少なくとも予測される発光放射の少なくとも一部に対して透過性であることが必要条件である。従来のガラス容器は、この必要条件を満たしている。
【0022】
採用される検出デバイスの配置及び数のいずれもが、この実施態様において任意に選択されうる。容器の内壁全体について混入物が検査されることを確実にするために、容器の内壁全体の画僧が得られることのみが、重要である。
【0023】
放射源が容器口を通じて容器の中に入れられ、そのために容器口を通る発光放射の光路がブロックされる実施形態においても、容器壁を通じて容器の内部から外へと発光放射を導くことが好ましい。
【0024】
発光放射を検出するためのデバイスは好ましくはCCDカメラである。動きに伴うぶれを回避する、又は低減するために、高シャッタースピードのシャッターカメラが採用されうる。放射源が連続操作で働いている場合には特にこれが好ましい。放射強度を増すように、励起放射がレンズを用いて開口にフォーカスされてもよい。
【0025】
本発明はまた、空容器の混入物を検査するための方法に関する。その方法は、放射源で容器の内壁を照射する、検出デバイスを用いて、存在する何らかの混入物によって発せられる発光放射を検出する、及び、検出された発光放射を分析デバイスで分析する、というステップを含む方法である。
【0026】
もし、強力なUV放射源、例えばUV−C放射源が本発明の方法に用いられるならば、その放射は、混入物が検出されるように用いられるだけでなく、同時に、病原体、細菌、菌又は胞子のような混入物が放射によって破壊されうるという利点がある。
【0027】
混入物の検出において、感度の高さは、例えば、病原体の混入のような弱いが広範囲のコンタミネーションと、より粗い混入物とを区別することを可能にする。薄い病原体の層は、UV−C放射の照射によって破壊されることができ、その結果、そのような容器を充填プロセスから排除する必要がなくなる。一方、もし、より大きな混入物が容器中に見つかったら、この容器は再度洗浄されねばならない。
【0028】
さらに好ましい実施形態によれば、混入物のある容器は、検出された発光放射が予め設定された限界値を超えた場合にのみ、排除される。混入物を同定し特性を検出するために、発光放射に基づく容器の画像が電子的な画像分析機に送られる。画像分析機は例えば、光で着色された領域や色の違いを検出する。分析は例えば、貯蔵されたデータやパターンとの比較によって行われうる。逸脱の場合や限界値を超えた場合、電子的な分析機は不良の合図を返し、次いで、それが適切な場合には対応する容器が排除される。
【0029】
本発明は、蛍光及びリン光を発する混入物の両方を検出するのに適している。
【0030】
本発明はさらに、あらゆる材料でできた容器を検査するために採用されうる。特に有利には、本発明は、励起放射を不透過であるが発光放射を透過する材料からなる容器のために採用されうる。すなわち本発明は特に、ガラス、又は、PETのような透明のプラスチックでできた容器での使用のために好適である。
【0031】
続く図面を参照して、本発明の方法及び装置がより詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、空容器を検査するための第一の装置を図示する。
図2図2は、空容器を検査するための第二の装置を図示する。
図3図3は、図2の装置の上面図である。
【0033】
図1に示される装置は、電磁波放射源1を含み、その放射は、レンズ2を用いてボトルの開口の領域にフォーカスされる。ここでは放射は、レンズ2とボトルの口との間に設置されたダイクロイックミラー3を通過する。ダイクロイックミラー3は、励起放射を通すが、予測されるより長い波長の発光放射は反射するように構成される。
【0034】
ボトルに混入物がない場合には、励起放射の一部が反射してボトルの口から戻り、CCDカメラ5の方に屈折されることなく、ダイクロイックミラー3を通過する。
【0035】
しかしながら、発光性の混入物がボトルの中に存在していれば、すなわち、混入物が励起放射に対して発光現象として作用するならば、混入物によって発せられる発光放射の一部が口を通してボトルから出て、ダイクロイックミラー3に当たる。ダイクロイックミラー3は、このより長波長の発光放射をCCDカメラ5に反射し、そこで、放射が検出される。
【0036】
さらに、フィルター4が、励起放射の一部がCCDカメラに到達することを回避するために、又は、ある波長範囲のもののみを選択的に通過させるために、備えられうる。
【0037】
図1に図示された実施形態は特に、容器の内部空間全体が容器の開口を通じて照明されうるような容器、すなわち、長くてゆるく拡幅するボトルネックを有するボトルや、大きな開口の容器を検査するために適している。
【0038】
容器の構造ゆえに開口を通して内壁を照明することができない容器の場合は、図2に示された改変されたセットアップが適している。しかしながら、容器壁は発光放射に対して透過性である材料からなることが必要である。
【0039】
図2の装置では、放射源は同じように試験される容器の上方に位置している。励起放射は容器の開口を通じて容器の内部に向けられる。図2に示されるように、入射光が試験される容器の内側壁や底部で反射し、それゆえ、この装置で、容器の内部空間全体が照明される。
【0040】
もし、図2の装置において容器中に発光性の混入物があれば、励起放射の結果、この混入物は再び発光放射を発する。上述のように発光放射の波長は励起波長よりも長いので、もし容器が発光放射の波長域に対して透過性の材料からなっていれば、発光放射は容器壁を通じて直接容器から出ることができる。この発光放射を検出するために、例えば容器の外側に備え付けられたCCDカメラのような検出デバイスが備えられる。検出デバイスの配置が、図3の上面図に示されている。この配置において、2つのCCDカメラのセットは、それぞれペアで互いに逆の位置に配置されている。しかしながら、検出デバイスの数や配置は任意に選択されることができ、容器の完全な画像が確実に獲得されるように備えられればよい。また、試験される容器の下又は上に検出デバイスを備え付けることも可能である。
【0041】
もし、容器の材料が励起放射を透過しないのであれば、励起放射をブロックするためのさらなるフィルターはこの実施態様において必要ない。図2の実施形態は特に、例えばUV放射によってガラス容器を試験するために有利である。ガラス容器は一般的にはUV放射をほとんど透過しない。一方、混入物によって発せられる発光放射は大部分が可視領域であるより長い波長を有し、問題なく容器壁を通過することができる。
図1
図2
図3