特許第6640129号(P6640129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6640129通信装置、通信方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640129
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/12 20090101AFI20200127BHJP
   H04W 4/00 20180101ALI20200127BHJP
   H04W 28/04 20090101ALI20200127BHJP
   H04L 12/803 20130101ALI20200127BHJP
【FI】
   H04W28/12
   H04W4/00 111
   H04W28/04 110
   H04L12/803
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-9572(P2017-9572)
(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公開番号】特開2018-121117(P2018-121117A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年1月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度総務省「第5世代移動通信システム実現に向けた研究開発〜複数移動通信網の最適利用を実現する制御基盤技術に関する研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴
(72)【発明者】
【氏名】本間 寛明
【審査官】 吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−135145(JP,A)
【文献】 特開2007−053653(JP,A)
【文献】 特開2008−306383(JP,A)
【文献】 特開2014−123811(JP,A)
【文献】 特開2008−306321(JP,A)
【文献】 特開2013−051605(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0286865(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
H04L 12/803
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線を使用して通信を行う複数の通信部と、
前記複数の通信部のそれぞれに対応して設けられるパケット送受部と、
複数の前記パケット送受部を同時に使用して通信相手との通信を行う通信制御部と、
前記通信相手との通信に同時に使用される前記複数のパケット送受部がそれぞれに前記通信相手から受信する確認応答信号の受信間隔のうち最も長い受信間隔に基づいて、前記複数のパケット送受部のパケット送信タイミングを指示する送信タイミング指示部と、を備える通信装置であって、
前記パケット送受部はセルフクロッキング機能を有し、
前記パケット送受部は、自己の確認応答信号の受信タイミングに同期してセルフクロッキング送信タイミング信号を発生し、
前記通信装置は、
前記パケット送受部からセルフクロッキング送信タイミング信号を取得する送信タイミング取得部をさらに備え、
前記送信タイミング指示部は、前記通信相手との通信に同時に使用される前記複数のパケット送受部がそれぞれに発生した前記セルフクロッキング送信タイミング信号に基づいて、前記複数のパケット送受部毎にセルフクロッキング送信タイミング信号の間隔を測定し、当該測定の結果に基づいて最も長いセルフクロッキング送信タイミング信号の間隔に前記複数のパケット送受部のパケット送信タイミングを合わせる、
通信装置。
【請求項2】
前記受信間隔に基づいて、前記通信相手との通信に、何れの一の前記パケット送受部を使用するか、又は、何れの複数の前記パケット送受部を使用するかを選択する通信経路選択部をさらに備える、
請求項に記載の通信装置。
【請求項3】
通信回線を使用して通信を行う複数の通信部と、前記複数の通信部のそれぞれに対応して設けられるパケット送受部と、複数の前記パケット送受部を同時に使用して通信相手との通信を行う通信制御部と、を備える通信装置の通信方法であり、
前記通信相手との通信に同時に使用される前記複数のパケット送受部がそれぞれに前記通信相手から受信する確認応答信号の受信間隔のうち最も長い受信間隔に基づいて、前記複数のパケット送受部のパケット送信タイミングを指示する送信タイミング指示ステップ、を含む通信方法であって、
前記パケット送受部はセルフクロッキング機能を有し、
前記パケット送受部は、自己の確認応答信号の受信タイミングに同期してセルフクロッキング送信タイミング信号を発生し、
前記通信装置は、
前記パケット送受部からセルフクロッキング送信タイミング信号を取得する送信タイミング取得部をさらに備え、
前記送信タイミング指示ステップは、前記通信相手との通信に同時に使用される前記複数のパケット送受部がそれぞれに発生した前記セルフクロッキング送信タイミング信号に基づいて、前記複数のパケット送受部毎にセルフクロッキング送信タイミング信号の間隔を測定し、当該測定の結果に基づいて最も長いセルフクロッキング送信タイミング信号の間隔に前記複数のパケット送受部のパケット送信タイミングを合わせる、
通信方法。
【請求項4】
通信回線を使用して通信を行う複数の通信部と、前記複数の通信部のそれぞれに対応して設けられるパケット送受部と、複数の前記パケット送受部を同時に使用して通信相手との通信を行う通信制御部と、を備える通信装置のコンピュータに、
前記通信相手との通信に同時に使用される前記複数のパケット送受部がそれぞれに前記通信相手から受信する確認応答信号の受信間隔のうち最も長い受信間隔に基づいて、前記複数のパケット送受部のパケット送信タイミングを指示する送信タイミング指示機能、を実現させるためのコンピュータプログラムであり、
前記パケット送受部はセルフクロッキング機能を有し、
前記パケット送受部は、自己の確認応答信号の受信タイミングに同期してセルフクロッキング送信タイミング信号を発生し、
前記通信装置は、
前記パケット送受部からセルフクロッキング送信タイミング信号を取得する送信タイミング取得部をさらに備え、
前記送信タイミング指示機能は、前記通信相手との通信に同時に使用される前記複数のパケット送受部がそれぞれに発生した前記セルフクロッキング送信タイミング信号に基づいて、前記複数のパケット送受部毎にセルフクロッキング送信タイミング信号の間隔を測定し、当該測定の結果に基づいて最も長いセルフクロッキング送信タイミング信号の間隔に前記複数のパケット送受部のパケット送信タイミングを合わせる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線通信システムを同時に使用して無線通信を行なう技術が、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−207731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の無線通信システムを同時に使用して通信相手との無線通信を行なう場合、各無線通信システムの通信経路の伝送遅延時間が異なると、通信相手に到達するパケットの順序逆転が発生することによりパケットの順序の回復のための手間が必要となって、通信効率が低下する可能性があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、複数の通信経路を同時に使用して通信相手との通信を行うときの通信効率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、通信回線を使用して通信を行う複数の通信部と、前記複数の通信部のそれぞれに対応して設けられるパケット送受部と、複数の前記パケット送受部を同時に使用して通信相手との通信を行う通信制御部と、前記通信相手との通信に同時に使用される前記複数のパケット送受部がそれぞれに前記通信相手から受信する確認応答信号の受信間隔のうち最も長い受信間隔に基づいて、前記複数のパケット送受部のパケット送信タイミングを指示する送信タイミング指示部と、を備える通信装置であって、前記パケット送受部はセルフクロッキング機能を有し、前記パケット送受部は、自己の確認応答信号の受信タイミングに同期してセルフクロッキング送信タイミング信号を発生し、前記通信装置は、前記パケット送受部からセルフクロッキング送信タイミング信号を取得する送信タイミング取得部をさらに備え、前記送信タイミング指示部は、前記通信相手との通信に同時に使用される前記複数のパケット送受部がそれぞれに発生した前記セルフクロッキング送信タイミング信号に基づいて、前記複数のパケット送受部毎にセルフクロッキング送信タイミング信号の間隔を測定し、当該測定の結果に基づいて最も長いセルフクロッキング送信タイミング信号の間隔に前記複数のパケット送受部のパケット送信タイミングを合わせる、通信装置である。
)本発明の一態様は、上記の通信装置において、前記受信間隔に基づいて、前記通信相手との通信に、何れの一の前記パケット送受部を使用するか、又は、何れの複数の前記パケット送受部を使用するかを選択する通信経路選択部をさらに備える、通信装置である。
【0007】
)本発明の一態様は、通信回線を使用して通信を行う複数の通信部と、前記複数の通信部のそれぞれに対応して設けられるパケット送受部と、複数の前記パケット送受部を同時に使用して通信相手との通信を行う通信制御部と、を備える通信装置の通信方法であり、前記通信相手との通信に同時に使用される前記複数のパケット送受部がそれぞれに前記通信相手から受信する確認応答信号の受信間隔のうち最も長い受信間隔に基づいて、前記複数のパケット送受部のパケット送信タイミングを指示する送信タイミング指示ステップ、を含む通信方法であって、前記パケット送受部はセルフクロッキング機能を有し、前記パケット送受部は、自己の確認応答信号の受信タイミングに同期してセルフクロッキング送信タイミング信号を発生し、前記通信装置は、前記パケット送受部からセルフクロッキング送信タイミング信号を取得する送信タイミング取得部をさらに備え、前記送信タイミング指示ステップは、前記通信相手との通信に同時に使用される前記複数のパケット送受部がそれぞれに発生した前記セルフクロッキング送信タイミング信号に基づいて、前記複数のパケット送受部毎にセルフクロッキング送信タイミング信号の間隔を測定し、当該測定の結果に基づいて最も長いセルフクロッキング送信タイミング信号の間隔に前記複数のパケット送受部のパケット送信タイミングを合わせる、通信方法である。
【0008】
)本発明の一態様は、通信回線を使用して通信を行う複数の通信部と、前記複数の通信部のそれぞれに対応して設けられるパケット送受部と、複数の前記パケット送受部を同時に使用して通信相手との通信を行う通信制御部と、を備える通信装置のコンピュータに、前記通信相手との通信に同時に使用される前記複数のパケット送受部がそれぞれに前記通信相手から受信する確認応答信号の受信間隔のうち最も長い受信間隔に基づいて、前記複数のパケット送受部のパケット送信タイミングを指示する送信タイミング指示機能、を実現させるためのコンピュータプログラムであり、前記パケット送受部はセルフクロッキング機能を有し、前記パケット送受部は、自己の確認応答信号の受信タイミングに同期してセルフクロッキング送信タイミング信号を発生し、前記通信装置は、前記パケット送受部からセルフクロッキング送信タイミング信号を取得する送信タイミング取得部をさらに備え、前記送信タイミング指示機能は、前記通信相手との通信に同時に使用される前記複数のパケット送受部がそれぞれに発生した前記セルフクロッキング送信タイミング信号に基づいて、前記複数のパケット送受部毎にセルフクロッキング送信タイミング信号の間隔を測定し、当該測定の結果に基づいて最も長いセルフクロッキング送信タイミング信号の間隔に前記複数のパケット送受部のパケット送信タイミングを合わせる、コンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の通信経路を同時に使用して通信相手との通信を行うときの通信効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る通信装置10の概略構成を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る通信方法の手順を示すフローチャートである。
図3】一実施形態に係る通信方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る通信装置10の概略構成を示すブロック図である。図1において、通信装置10は、アプリケーション部11と、マルチパストランスミッションコントロールプロトコル(MultiPath Transmission Control Protocol:MPTCP)部12と、トランスミッションコントロールプロトコル(Transmission Control Protocol:TCP)・インターネットプロトコル(Internet Protocol:IP)部13−1,13−2と、無線通信部14−1,14−2と、送信タイミング取得部15と、送信タイミング指示部16と、通信経路選択部17と、を備える。TCP・IP部13−1は、送信制御部20と、送信部22と、受信部23とを備える。送信制御部20はセルフクロッキング部21を備える。TCP・IP部13−2は、TCP・IP部13−1と同じ構成である。
【0012】
以下の説明において、TCP・IP部13−1,13−2を特に区別しないときは、TCP・IP部13と称する。無線通信部14−1,14−2を特に区別しないときは、無線通信部14と称する。
【0013】
なお、本実施形態に係る通信装置10は、2つの無線通信部14を備えるが、3つ以上の無線通信部14を備えてもよい。TCP・IP部13は、複数の無線通信部14のそれぞれに対応して設けられる。TCP・IP部13−1は、無線通信部14−1に対応して設けられている。TCP・IP部13−2は、無線通信部14−2に対応して設けられている。本実施形態において、TCP・IP部13はパケット送受部に対応する。
【0014】
アプリケーション部11は、通信装置10に備わるアプリケーションであって少なくとも通信を行うアプリケーションの機能を有する。例えば、アプリケーション部11は、写真データ、動画データ又はファイルデータなどを通信によりサーバ等にアップロードする機能を有する。
【0015】
MPTCP部12は、複数のTCPコネクションを同時に使用して通信相手との通信を行う。本実施形態において、MPTCP部12は通信制御部に対応する。
【0016】
TCP・IP部13は、TCP処理とIP処理とを実行する。なお、図1中には、TCP処理とIP処理とのうち本実施形態に係る処理を実行する部分のみを示している。
【0017】
送信部22は、パケットPsを送信する。パケットPsは、TCP及びIPに基づいたパケットである。送信制御部20は、パケットPsの送信を制御する。送信制御部20は、パケット送信制御信号Eを送信部22に出力する。パケット送信制御信号Eは、送信部22に対して、パケットPsの送信を指示する信号である。送信部22は、パケット送信制御信号Eに従って、パケットPsを無線通信部14に送信する。TCP・IP部13−1の送信部22は、無線通信部14−1にパケットPsを送信する。無線通信部14−1は、TCP・IP部13−1の送信部22から受信したパケットPsを、無線通信回線を介して送信する。TCP・IP部13−2の送信部22は、無線通信部14−2にパケットPsを送信する。無線通信部14−2は、TCP・IP部13−2の送信部22から受信したパケットPsを、無線通信回線を介して送信する。
【0018】
受信部23は、無線通信部14からパケットPrを受信する。パケットPrは、TCP及びIPに基づいたパケットである。無線通信部14−1は、無線通信回線を介して受信したパケットPrを、TCP・IP部13−1の受信部23に送信する。無線通信部14−2は、無線通信回線を介して受信したパケットPrを、TCP・IP部13−2の受信部23に送信する。受信部23は、無線通信部14から受信したパケットPrのうち、確認応答信号のパケット(ACKパケット)の受信タイミングを示すACK受信タイミング信号Fを送信制御部20に出力する。
【0019】
セルフクロッキング部21は、TCPのセルフクロッキング機能を有する。セルフクロッキング部21は、ACK受信タイミング信号Fに同期して、セルフクロッキング送信タイミング信号を発生する。TCP・IP部13−1のセルフクロッキング部21は、セルフクロッキング送信タイミング信号A1を発生する。TCP・IP部13−1のセルフクロッキング部21は、セルフクロッキング送信タイミング信号A1を送信タイミング取得部15に出力する。TCP・IP部13−2のセルフクロッキング部21は、セルフクロッキング送信タイミング信号A2を発生する。TCP・IP部13−2のセルフクロッキング部21は、セルフクロッキング送信タイミング信号A2を送信タイミング取得部15に出力する。
【0020】
送信タイミング取得部15は、TCP・IP部13−1のセルフクロッキング部21からセルフクロッキング送信タイミング信号A1を受信する。送信タイミング取得部15は、TCP・IP部13−2のセルフクロッキング部21からセルフクロッキング送信タイミング信号A2を受信する。送信タイミング取得部15は、セルフクロッキング送信タイミング信号A1の受信間隔を測定する。送信タイミング取得部15は、セルフクロッキング送信タイミング信号A2の受信間隔を測定する。送信タイミング取得部15は、セルフクロッキング送信タイミング信号A1の受信間隔と、セルフクロッキング送信タイミング信号A2の受信間隔とを示す受信間隔信号Bを、送信タイミング指示部16及び通信経路選択部17に出力する。
【0021】
送信タイミング指示部16は、受信間隔信号Bを使用して、セルフクロッキング送信タイミング信号A1の受信間隔と、セルフクロッキング送信タイミング信号A2の受信間隔とを比較し、長い方の受信間隔を判断する。送信タイミング指示部16は、セルフクロッキング送信タイミング信号A1の受信間隔と、セルフクロッキング送信タイミング信号A2の受信間隔とのうち長い方の受信間隔に基づいて、パケット送信タイミング信号Cを生成する。
【0022】
パケット送信タイミング信号Cは、パケットPsの送信タイミングを示す信号である。例えば、パケット送信タイミング信号Cは、パケットPsの送信開始時間と、パケットPsの送信間隔とを示す信号である。パケット送信タイミング信号Cが示すパケットPsの送信タイミングは、セルフクロッキング送信タイミング信号A1の受信間隔と、セルフクロッキング送信タイミング信号A2の受信間隔とのうち長い方の受信間隔に合わせる。つまり、パケットPsの送信間隔が、セルフクロッキング送信タイミング信号A1の受信間隔と、セルフクロッキング送信タイミング信号A2の受信間隔とのうち長い方の受信間隔に合うようにする。
【0023】
送信タイミング指示部16は、TCP・IP部13−1,13−2の両方に、同じパケット送信タイミング信号Cを出力する。TCP・IP部13の送信制御部20は、パケット送信タイミング信号Cが示すパケットPsの送信タイミングに従って、パケット送信制御信号Eを発生して送信部22に出力する。これにより、TCP・IP部13−1及び無線通信部14−1、並びに、TCP・IP部13−2及び無線通信部14−2において、パケットPsは、セルフクロッキング送信タイミング信号A1,A2の受信間隔のうち長い方の受信間隔に合った送信間隔で送信部22から無線通信部14に送信され、その後、無線通信部14から無線通信回線を介して送信される。
【0024】
無線通信部14は、無線通信回線を介して、パケットPsを送信する。無線通信部14は、無線通信回線を介して、パケットPrを受信する。無線通信部14が利用する無線通信回線は、携帯電話網等の移動通信網の無線通信回線であってもよく、又は、無線LAN(Local Area Network)の無線通信回線であってもよい。無線通信部14−1と無線通信部14−2とは、異なる無線通信回線を利用する。無線通信部14−1が利用する無線通信回線と、無線通信部14−2が利用する無線通信回線とは、同じ無線通信網の異なる無線通信回線であってもよく、又は、異なる無線通信網の無線通信回線であってもよい。
【0025】
通信経路選択部17は、受信間隔信号Bを使用して、何れの一のTCP・IP部13を使用するか、又は、何れの複数のTCP・IP部13を使用するか、を選択する。本実施形態では、通信経路選択部17は、受信間隔信号Bを使用して、TCP・IP部13−1,13−2のうち何れの一のTCP・IP部13を使用するか、又は、TCP・IP部13−1,13−2の両方を使用するか、を選択する。
【0026】
このTCP・IP部選択方法を説明する。
上記したパケット送信タイミング信号Cによれば、パケットPsは、セルフクロッキング送信タイミング信号A1,A2の受信間隔のうち長い方の受信間隔に合った送信間隔で送信される。したがって、セルフクロッキング送信タイミング信号の受信間隔が短い方のTCP・IP部13では、パケットPsの送信タイミングは、セルフクロッキング送信タイミング信号の送信タイミングよりも遅くなり、その分、パケットPsの送信が待たされることになる。このため、TCP・IP部13−1,13−2のうち何れの一のTCP・IP部13を使用する方が、通信速度が速いか、又は、TCP・IP部13−1,13−2の両方を使用する方が、通信速度が速いかを判断する。
【0027】
通信経路選択部17は、受信間隔信号Bに基づいて、TCP・IP部13−1のみを使用するときの通信速度V1と、TCP・IP部13−2のみを使用するときの通信速度V2と、TCP・IP部13−1,13−2の両方を使用するときの通信速度V12とのうち、何れの通信速度が最も速いかを判断する。通信経路選択部17は、通信速度が最も早いと判断された一のTCP・IP部13又はTCP・IP部13−1,13−2の両方を選択する。
【0028】
通信経路選択部17は、TCP・IP部13の選択結果を示すTCP・IP部選択結果信号Dを、MPTCP部12及び送信タイミング指示部16に出力する。MPTCP部12は、TCP・IP部選択結果信号Dが示す選択結果のTCP・IP部13を、通信相手との通信に使用する。
【0029】
送信タイミング指示部16は、TCP・IP部選択結果信号Dが示す選択結果が、TCP・IP部13−1,13−2の両方である場合には、パケット送信タイミング信号CをTCP・IP部13−1,13−2の両方に出力する。一方、送信タイミング指示部16は、TCP・IP部選択結果信号Dが示す選択結果が、一のTCP・IP部13である場合には、パケット送信タイミング信号Cを出力しない。したがって、TCP・IP部選択結果信号Dが示す選択結果が、一のTCP・IP部13である場合には、パケット送信タイミング信号Cは、TCP・IP部13−1にもTCP・IP部13−2にも、出力されない。
【0030】
TCP・IP部13の送信制御部20は、送信タイミング指示部16からパケット送信タイミング信号Cを受信した場合には、パケット送信タイミング信号Cに従って、パケット送信制御信号Eを発生する。一方、TCP・IP部13の送信制御部20は、送信タイミング指示部16からパケット送信タイミング信号Cを受信しない場合には、従来のTCP処理によりパケット送信制御信号Eを発生する。
【0031】
通信装置10は、例えば、スマートフォンやタブレット型のコンピュータ(タブレットPC)等の携帯通信端末装置であってもよく、又は、据置き型の通信端末装置(例えば、据置き型のパーソナルコンピュータやサーバコンピュータ等)であってもよい。
【0032】
図1に示される通信装置10の各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、又は、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等により構成され、各部の機能を実現するためのコンピュータプログラムをCPUが実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0033】
次に図2を参照して、本実施形態に係る通信方法の手順を説明する。図2は、本実施形態に係る通信方法の手順を示すフローチャートである。
【0034】
通信装置10において、MPTCP部12は、アプリケーション部11からの指示に応じて通信相手との通信を開始する。MPTCP部12は、通信開始時には、複数のTCP・IP部13及び無線通信部14を使用して、通信相手との通信を行う。本実施形態では、MPTCP部12は、TCP・IP部13−1及び無線通信部14−1、並びに、TCP・IP部13−2及び無線通信部14−2を使用して、通信相手との通信を行う。TCP・IP部13−1及び無線通信部14−1の通信経路と、TCP・IP部13−2及び無線通信部14−2の通信経路とは、異なる通信経路である。
【0035】
(ステップS1)送信タイミング取得部15は、TCP・IP部13−1からセルフクロッキング送信タイミング信号A1を取得する。送信タイミング取得部15は、TCP・IP部13−2からセルフクロッキング送信タイミング信号A2を取得する。送信タイミング取得部15は、セルフクロッキング送信タイミング信号A1の受信間隔と、セルフクロッキング送信タイミング信号A2の受信間隔とを示す受信間隔信号Bを、送信タイミング指示部16及び通信経路選択部17に出力する。
【0036】
(ステップS2)通信経路選択部17は、受信間隔信号Bを使用して、TCP・IP部13−1,13−2のうち何れの一のTCP・IP部13(一の通信経路)を使用するか、又は、TCP・IP部13−1,13−2の両方(複数の通信経路)を使用するか、を選択する。通信経路選択部17は、TCP・IP部13の選択結果を示すTCP・IP部選択結果信号Dを、MPTCP部12及び送信タイミング指示部16に出力する。
【0037】
(ステップS3)ステップS2において、TCP・IP部13−1,13−2の両方(複数の通信経路)が選択された場合にはステップS4に進み、そうではない場合には図2の処理を終了する。
【0038】
(ステップS4)送信タイミング指示部16は、受信間隔信号Bに基づいて、セルフクロッキング送信タイミング信号A1の受信間隔と、セルフクロッキング送信タイミング信号A2の受信間隔とのうち長い方の受信間隔に基づいて、パケット送信タイミング信号Cを生成する。パケット送信タイミング信号Cは、パケットPsの送信タイミングを、セルフクロッキング送信タイミング信号A1の受信間隔と、セルフクロッキング送信タイミング信号A2の受信間隔とのうち長い方の受信間隔に合わせる信号である。送信タイミング指示部16は、TCP・IP部13−1,13−2の両方に、同じパケット送信タイミング信号Cを出力する。これにより、TCP・IP部13−1及び無線通信部14−1、並びに、TCP・IP部13−2及び無線通信部14−2において、パケットPsは、セルフクロッキング送信タイミング信号A1,A2の受信間隔のうち長い方の受信間隔に合った送信間隔で送信部22から無線通信部14に送信され、その後、無線通信部14から無線通信回線を介して送信される。
【0039】
なお、図2の処理は、所定の開始条件を満足した場合に、再度、実行されてもよい。例えば、図2の処理は、所定の周期で繰り返し実行されてもよい。又は、図2の処理は、無線通信部14の無線通信回線の状態が変化した場合に、再度、実行されてもよい。無線通信回線の状態が変化した場合として、例えば、回線品質が変化した場合、回線の再接続が発生した場合、などが挙げられる。
【0040】
図3は、本実施形態に係る通信方法の説明図である。図3において、通信装置10−1は送信側の通信装置である。通信装置10−2は、通信装置10−1の通信相手であって受信側の通信装置である。図3の実施例では、通信装置10−1,10−2には、図1の通信装置10を適用する。なお、受信側の通信装置10−2は、従来のMPTCP処理、TCP処理、及びIP処理を行う通信装置であってもよい。
【0041】
通信装置10−1において、アプリケーション部(app)11は、パケット列としてシーケンス番号が1番から10番までの10個のパケットを、MPTCP部12に出力する。MPTCP部12は、TCP・IP部選択結果信号Dに従って、TCP・IP部13−1,13−2の両方を使用して、通信相手の通信装置10−2との通信を行う。MPTCP部12は、シーケンス番号が1番、3番、5番、7番、及び9番の5個のパケットを、TCP・IP部13−1に割り振る。MPTCP部12は、シーケンス番号が2番、4番、6番、8番、及び10番の5個のパケットを、TCP・IP部13−2に割り振る。図3中、パケットPは送信前の送信待機中のパケットを表し、パケットPsは送信されたパケットを表す。
【0042】
図3の例では、TCP・IP部13−1の通信経路101の方が、TCP・IP部13−2の通信経路102よりも、パケットの伝送速度が遅い。このため、セルフクロッキング送信タイミング信号A1の受信間隔の方が、セルフクロッキング送信タイミング信号A2の受信間隔よりも長い。これにより、通信装置10−1のパケット送信タイミング信号Cは、パケットPsの送信タイミングを、セルフクロッキング送信タイミング信号A1の受信間隔に合わせる信号となる。
【0043】
通信装置10−1のTCP・IP部13−1,13−2は、パケット送信タイミング信号Cに従って、パケットPsを送信する。これにより、通信装置10−1において、TCP・IP部13−1から送信されるパケットPsと、TCP・IP部13−2から送信されるパケットPsとは、TCP・IP部13−1の通信経路101のパケットの伝送速度に合わせて送信される。
【0044】
通信装置10−1から通信経路101を介して送信されたパケット列「シーケンス番号が1番、3番、5番のパケットPs」と、通信装置10−1から通信経路102を介して送信されたパケット列「シーケンス番号が2番、4番、6番のパケットPs」とは、通信経路101のパケットの伝送速度で同期して、通信装置10−2に到達する。これにより、通信経路101と通信経路102とはパケットの伝送速度が異なるが、通信装置10−2は、パケットPsのシーケンス番号に沿って順次、パケットPsを受信できるので、パケットの順序逆転の発生による通信効率の低下を防止し、通信効率の向上を図ることができる。
【0045】
なお、通信装置10−1は、TCP・IP部13−2の通信経路102の空き時間Qに、通信装置10−2への再送パケットを送信してもよい。TCP・IP部13−2の通信経路102は、TCP・IP部13−1の通信経路101よりもパケットの伝送速度が速いので、通信経路102に対して通信経路101のパケットの伝送速度に合わせてパケットPsを送信すると、空き時間Qが発生する。空き時間Qに再送パケットを送信することにより、通信効率の向上を図ることができる。
【0046】
上述した実施形態によれば、複数の通信経路を同時に使用して通信相手との通信を行うときの通信効率の向上を図ることができる。
【0047】
本実施形態によれば、通信相手から受信する各通信経路の確認応答信号の受信間隔に基づいてパケット送信制御を行うので、各通信経路のパケットの伝送速度の変動に合わせたパケット送信制御を行う必要がない。これにより、各通信経路のパケットの伝送速度の変動に合わせてパケット送信制御を行う場合に比して、パケット送信制御の簡易化が可能である。このことは、マルチホップ無線ネットワークのように、すべての無線区間の品質(パケットの伝送速度)をリアルタイムに観測することが難しい通信ネットワークに対しても好ましい。
【0048】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、通信装置10は複数の無線通信回線を同時に使用して通信相手との通信を行うが、通信装置10が利用する通信回線は有線通信回線であってもよい。例えば、通信装置10は、複数の有線通信回線を同時に使用して通信相手との通信を行ってもよい。又は、通信装置10は、一又は複数の無線通信回線と一又は複数の有線通信回線とを同時に使用して通信相手との通信を行ってもよい。
【0050】
また、通信装置10が3つ以上の通信回線を同時に使用して通信相手との通信を行う場合、送信タイミング指示部16は、通信相手から各通信回線を介してそれぞれに受信される確認応答信号の受信間隔のうち比較的長い方の受信間隔に基づいて、複数のTCP・IP部13のパケット送信タイミングを指示してもよい。例えば、最も長い受信間隔に基づいてもよく、又は、中間の長さ以上の何れかの受信間隔に基づいてもよい。但し、パケットの順序逆転の発生をできる限り抑止するためには、最も長い受信間隔に基づくことが好ましい。
【0051】
なお、上述した実施形態の変形例として、送信タイミング指示部16は、セルフクロッキング送信タイミング信号A1,A2のうち受信間隔が長い方のセルフクロッキング送信タイミング信号に同期して、パケット送信タイミング信号Cを発生して該同じパケット送信タイミング信号CをTCP・IP部13−1,13−2の両方に出力してもよい。この変形例では、TCP・IP部13の送信制御部20は、パケット送信タイミング信号Cに同期して、パケット送信制御信号Eを発生して送信部22に出力する。これにより、TCP・IP部13−1及び無線通信部14−1、並びに、TCP・IP部13−2及び無線通信部14−2において、パケットPsは、セルフクロッキング送信タイミング信号A1,A2のうち受信間隔が長い方のセルフクロッキング送信タイミング信号に同期して送信部22から無線通信部14に送信され、その後、無線通信部14から無線通信回線を介して送信される。
【0052】
また、上述した通信装置10の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0053】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0054】
10…通信装置、11…アプリケーション部、12…MPTCP部、13−1,13−2…TCP・IP部、14−1,14−2…無線通信部、15…送信タイミング取得部、16…送信タイミング指示部、17…通信経路選択部、20…送信制御部、22…送信部、23…受信部、21…セルフクロッキング部
図1
図2
図3