(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のO/Eモジュール(2)は、それぞれが同じ対応波長のフォトダイオードを有するモジュールを少なくとも2組備えて構成されることを特徴とする請求項1記載の光サンプリングオシロスコープ。
前記高周波切替スイッチ(5)と前記サンプラ(6)との間には、光サンプリングオシロスコープの周波数特性を平坦にするためのイコライザ(10)が接続されたことを特徴とする請求項1又は2記載の光サンプリングオシロスコープ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光通信では異なる特定の波長(例えば850nm、1310nm、1550nmなど)の光信号が使用され、これら異なる波長を測定波長として光信号の波形を観測する場合、O/Eモジュールとサンプラが1対1の従来構成では、測定波長(例えば1310nm)を設定し、1つのO/Eモジュールで他の測定波長(例えば850nm、1550nm)にも対応していた。
【0006】
しかしながら、O/Eモジュールは、光電変換を行う際の効率を示す量子効率(Responsivity)が波長によって異なる性質がある。このため、従来構成のようにO/Eモジュールとサンプラが1対1の構成の場合、特定の測定波長(例えば1310nm)では感度が最適ではあるが、異なる測定波長(例えば850nm、1550nm)では必ずしも感度が最適ではないという問題があった。
【0007】
また、O/Eモジュールに内蔵されるフォトダイオードとして、光通信で使用される光信号の波長に対応したInGaAsフォトダイオードが知られている。ところが、近年では、光通信で取り扱う信号の高周波化も進んでおり、周波数が高くなるに連れてフォトダイオードの受光面も小さくなる傾向にある。
【0008】
しかしながら、光通信で使用される波長850nmでは、フォトダイオードとの光結合のためにコア径の大きいマルチモード光ファイバが用いられており、光ファイバのコア径に対してフォトダイオードの受光面が小さいため、レンズを介して光結合させる必要があり、1つのO/Eモジュールだけで光信号の異なる測定波長のそれぞれにおいて最適な感度で対応することができなかった。
【0009】
さらに、O/Eモジュールとサンプラが1対1の従来構成では、例えば製造ライン上で光信号の波形を観測して性能評価を行う場合、稼働中にO/Eモジュールに異常や故障が発生して波形の観測ができなくなっても製造ラインを簡単に停止させる訳にはいかず、稼働中にO/Eモジュールの修理や交換を行うことができなかった。
【0010】
また、主用途が光サンプリングオシロスコープの場合、波形をより正確に観測するためにはシステムの周波数特性が平坦であることが求められていた。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、測定波長に最適なO/Eモジュールを選択して光信号の波形を表示することができる光サンプリングオシロスコープ及びその感度改善方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された光サンプリングオシロスコープは、個々に対応波長が異なるフォトダイオードを有する複数のO/Eモジュール2と、
前記複数のO/Eモジュールのうち、測定波長に対応する対応波長のフォトダイオードを有する1つのO/Eモジュールと接続するように切替制御される高周波切替スイッチ5と、
前記高周波切替スイッチが接続する1つのO/Eモジュールにて光電変換された電気信号をサンプリングする1つのサンプラ6とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載された光サンプリングオシロスコープは、請求項1の光サンプリングオシロスコープにおいて、
前記複数のO/Eモジュール2は、それぞれが同じ対応波長のフォトダイオードを有するモジュールを少なくとも2組備えて構成されることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載された光サンプリングオシロスコープは、請求項1又は2の光サンプリングオシロスコープにおいて、
前記高周波切替スイッチ5と前記サンプラ6との間には、光サンプリングオシロスコープの周波数特性を平坦にするためのイコライザ10が接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、波形観測の対象となる光信号の測定波長に最適なO/Eモジュールを選択して感度の最適化を図ることができる。また、製造ライン上で光信号の波形を観測して性能評価を行う場合、稼働中にO/Eモジュールに異常や故障が発生して波形の観測ができなくなっても製造ラインを停止させることなく光信号の波形観測を継続して行え、稼働中でもO/Eモジュールの修理や交換が可能になる。さらに、システムの周波数特性を平坦にして波形をより正確に観測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。尚、各実施の形態の光サンプリングオシロスコープは、O/Eモジュール(光電変換器)とサンプリングオシロスコープを組み合わせ、入力される光信号の波形観測を行うため、光信号をO/Eモジュールにて電気信号に変換し、変換した電気信号をサンプラにてサンプリングし、サンプリング結果に基づいて光信号の波形を横軸:時間、縦軸:光電力として表示するものである。
【0018】
[第1実施の形態]
図1は第1実施の形態の光サンプリングオシロスコープ1(1A)のブロック構成図である。
図1に示すように、第1実施の形態の光サンプリングオシロスコープ1Aは、複数のO/Eモジュール2(2−1,2−2,2−3,…,2−N)、操作部3、記憶部4、高周波切替スイッチ5、サンプラ6、A/D変換部7、表示部8、制御部9を備えて概略構成される。
【0019】
複数のO/Eモジュール2(2−1,2−2,2−3,…,2−N)は、観測対象となる光信号の測定波長に応じて対応波長がそれぞれ異なるフォトダイオードを有する。
【0020】
例えば光通信で使用される波長850nm、1310nm、1550nmの何れかを測定波長に設定して光信号の波形を観測する場合、複数のO/Eモジュール2は、対応波長850nmのフォトダイオードを有するO/Eモジュール、対応波長1310nmのフォトダイオードを有するO/Eモジュール、対応波長1550nmのフォトダイオードを有するO/Eモジュールで構成される。
【0021】
複数のO/Eモジュール2(2−1,2−2,2−3,…,2−N)は、サンプリングオシロスコープ1の入力ポートに光ファイバを介して接続し、光信号を光ファイバを介して入力する構成、サンプリングオシロスコープ1の本体(筐体)に内蔵し、サンプリングオシロスコープ1の入力ポートから各O/Eモジュール2に光信号を入力する構成とすることができる。
図1では、複数のO/Eモジュール2に入力される光信号として、例えばO/Eモジュール2−1に波長850nmの光信号、O/Eモジュール2−2に波長1310nmの光信号、O/Eモジュール2−3に波長1550nmの光信号がそれぞれ入力される場合を例示している。
【0022】
尚、複数のO/Eモジュール2(2−1,2−2,2−3,…,2−N)は、フォトダイオードから発生した微弱な電流をトランス・インピーダンスで電圧に変換して出力するトランス・インピーダンス・アンプ(TIA)が個々に内蔵される場合もある。
【0023】
操作部3は、例えば表示部8の表示画面上のポインタやアイコンを操作するマウスやタッチスクリーンなどのポインティングデバイス、装置本体に設けられるキー、スイッチ、ボタンなどを含み、観測対象となる光信号の観測開始や停止の指示、観測対象となる光信号の測定波長の設定、その他波形観測に必要な各種パラメータの設定などを行う際に操作される。
【0024】
記憶部4は、操作部3にて設定された測定波長や波形観測に必要な各種パラメータ、サンプラ6によるサンプリングに基づくデータ(波形画像に展開する前のデータ)などを記憶する。
【0025】
高周波切替スイッチ5は、操作部3にて設定された測定波長に対応する対応波長(測定波長と同一波長)のフォトダイオードを有するO/Eモジュール2を選択するように制御部9によって切替制御される。
【0026】
サンプラ6は、高周波切替スイッチ5の切替制御により選択されたO/Eモジュール2から入力される電気信号を所定のトリガ信号によりサンプリング(等価時間サンプリング:ランダムサンプリング、シーケンシャルサンプリング)する。
【0027】
A/D変換部7は、サンプラ6にてサンプリングされた電気信号を、制御部9にて処理可能なディジタル信号に変換する。
【0028】
表示部8は、例えば装置本体の前面に装備された液晶表示器などで構成される。表示部8は、操作部3の設定や操作に基づく制御部9の制御により、サンプラ6によるサンプリングに基づくデータから生成される観測対象の光信号の波形画像を表示画面上に表示する。
【0029】
制御部8は、観測対象となる光信号の波形表示を行うべくシステム全体を統括制御する。すなわち、制御部8は、操作部3にて観測対象となる光信号の観測開始が指示されると、操作部3にて設定された測定波長に対応する対応波長のフォトダイオードを有するO/Eモジュール2を選択するように高周波切替スイッチ4を切替制御する。そして、制御部8は、サンプラ6によるサンプリングに基づくデータから観測対象の光信号の波形画像を生成して表示するように表示部8を表示制御する。
【0030】
ところで、主用途である光サンプリングオシロスコープの場合、波形をより正確に観測するためにはシステムの周波数特性が平坦であることが求められる。この場合、O/Eモジュールとサンプラを組み合わせたシステムに最適化したイコライザを挿入する場合がある。
【0031】
そこで、以下に説明する第2実施の形態では、O/Eモジュールとサンプラを組み合わせたシステムの周波数特性を平坦にするための構成を採用している。
【0032】
[第2実施の形態]
図2は第2実施の形態の光サンプリングオシロスコープ1(1B)のブロック構成図である。尚、
図2において、第1実施の形態の光サンプリングオシロスコープ1Aと同一の構成要素には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0033】
第2実施の形態の光サンプリングオシロスコープ1Bは、上述した第1実施の形態の光サンプリングオシロスコープ1Aの構成に加え、O/Eモジュール2とサンプラ6を組み合わせたシステムに最適化した等価機としてイコライザ10を備えて構成される。
【0034】
また、光サンプリングオシロスコープ1Bは、測定波長(O/Eモジュール2のフォトダイオードの対応波長)毎の補正値を記憶部4に記憶している。
【0035】
イコライザ10は、高周波切替スイッチ5とサンプラ6との間に接続され、システム(光サンプリングオシロスコープ1)の周波数特性を平坦にすることを目的として、主としてO/Eモジュール2の特性、特にTIAが内蔵される場合はTIAの性能、各構成要素を接続する同軸ケーブル、サンプラ6の性能を記憶部4に記憶された補正値に基づいて補正する。
【0036】
ここで、前述したように、波長感度が最適となるフォトダイオードを有するO/Eモジュール2を測定波長毎に個別選定するが、TIAが同じO/Eモジュール2に内蔵されていれば、要求されるイコライザ10の性能は近似する。よって、主たる補正対象に更に高周波切替スイッチ5を加えたイコライザ10が用意できれば、
図2に示す構成においてもシステムの周波数特性を平坦にすることが可能となり、使用するイコライザ10の数量を減らすことができ、より効率的なシステムが構築可能となる。
【0037】
また、光サンプリングオシロスコープの場合、システムの周波数特性の改善のため、イコライザが必要になるケースが多いが、
図2に示すように、1つのイコライザ10にて対応可能となり、システム構成の簡略化を図ることができる。
【0038】
[第3実施の形態]
図3は第3実施の形態の光サンプリングオシロスコープ1(1C)のブロック構成図である。尚、
図3において、第1実施の形態の光サンプリングオシロスコープ1Aと同一の構成要素には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0039】
第3実施の形態の光サンプリングオシロスコープ1Cでは、上述した第1実施の形態の光サンプリングオシロスコープ1Aの構成に加え、同じ対応波長のフォトダイオードを有するO/Eモジュール2を各対応波長毎に対に設けた構成としている。
図3の例では、O/Eモジュール2−1,2−2,2−3,…,2−Nをそれぞれ対に設けた構成としている。また、
図3では、複数のO/Eモジュール2に入力される光信号として、例えばO/Eモジュール2−1,2−1に波長850nmの光信号、O/Eモジュール2−2,2−2に波長1310nmの光信号、O/Eモジュール2−3,2−3に波長1550nmの光信号がそれぞれ入力される場合を例示している。
【0040】
また、制御部9は、測定波長に対応した対応波長のフォトダイオードを有するO/Eモジュール2を選択するように高周波切替スイッチ5を切替制御する度に、O/Eモジュール2毎の使用頻度(切替回数、使用時間)を記憶部4に記憶する。
【0041】
そして、制御部9は、新たに測定波長が設定されると、測定波長に対応した対応波長で対に設けられるO/Eモジュール2のうち、記憶部4から読み出した使用頻度の低い方を優先して高周波切替スイッチ5を切替制御する。これにより、対に設けられるO/Eモジュール2の使用の偏りを防ぎ、O/Eモジュール2の使用頻度の均一化を図ることができる。
【0042】
また、制御部9は、表示部8に光信号の波形が表示されなくなり、現在選択しているO/Eモジュール2に異常や故障が発生したと判断した場合、現在選択しているO/Eモジュール(例えば
図3の一方の2−2)と対に設けられるO/Eモジュール(例えば
図3の他方の2−2)を選択するように高周波切替スイッチ5を切替制御することもできる。これにより、例えば製造ライン上で光信号の波形を観測して性能評価を行う場合、稼働中にO/Eモジュール2に異常や故障が発生して波形の観測ができなくなっても製造ラインを停止させることなく光信号の波形観測を継続して行え、異常や故障が発生したO/Eモジュールの修理や交換を稼働中でも可能になる。
【0043】
尚、
図3の例では、コストアップを抑えて必要最小限の構成とするため、同じ対応波長のフォトダイオードを有するモジュールを2組対に備えた構成としたが、この構成に限定されるものではない。例えば同じ対応波長のフォトダイオードを有するモジュールを3組以上備えた構成とすることもできる。すなわち、複数のO/Eモジュール2(2−1,2−2,2−3,…,2−N)は、それぞれが同じ対応波長のフォトダイオードを有するモジュールを少なくとも2組備えた構成とすることができる。
【0044】
このように、本実施の形態の光サンプリングオシロスコープ1は、対応波長が異なる複数のO/Eモジュール2と1つのサンプラ6を高周波切替スイッチ5を介して接続を行う構成としている。これにより、対応が必要な波長(測定波長)に対して最適な量子効率を持つO/Eモジュール2を選定して感度の最適化を図ることができる。この場合、ユーザはO/Eモジュールを切り替える際に測定波長を設定する必要が生じるが、仮に構成が1対1の場合であっても量子効率は波長によって異なるため、ユーザは測定波長を設定する必要があり、N対1の構成であってもユーザの作業効率が落ちるといったことはない。
【0045】
また、一般的にサンプラ6の価格は高周波切替スイッチ5よりも高額である。よって、サンプラ6の使用数量を高周波切替スイッチ5で抑圧可能な本実施の形態の構成は、O/Eモジュール2とサンプラ6をN対Nで構成するよりもコストメリットが高いと言える。
【0046】
以上、本発明に係る光サンプリングオシロスコープ及びその感度改善方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。