【実施例】
【0030】
図1に示すように、2系統対応の車両用ブレーキ液圧制御装置10は、ブレーキレバー11の操作に応じて作動液を加圧し液圧を発生する第1マスタシリンダ12と、前輪ブレーキキャリパ14側から逃がされた作動液を一時的に貯留する第1リザーバ13と、第1マスタシリンダ12と前輪ブレーキキャリパ14の間に設けられる組付部品であり常開型電磁弁である第1入口制御弁15及び組付部品であり常閉型電磁弁である第1出口制御弁16と、第1リザーバ13に貯留された作動液を吸入して第1マスタシリンダ12側に戻す組付部品である第1ポンプ17と、ブレーキペダル21の操作に応じて作動液を加圧し液圧を発生する第2マスタシリンダ22と、後輪ブレーキキャリパ24側から逃がされた作動液を一時的に貯留する第2リザーバ23と、第2マスタシリンダ22と後輪ブレーキキャリパ24の間に設けられる組付部品であり常開型電磁弁である第2入口制御弁25及び組付部品であり常閉型電磁弁である第2出口制御弁26と、第2リザーバ23に貯留された作動液を吸入して第2マスタシリンダ22側に戻す組付部品である第2ポンプ27と、第1・第2ポンプ17、27を駆動するモータ29と、このモータ29の駆動制御及び第1・第2入口制御弁15、25と第1・第2出口制御弁16、26の開閉制御をなす制御装置30と、第1の基体40に設けられブレーキ液を流す第1系統のブレーキ液路A1、B1、C1、D1、E1、及び第2系統のA2、B2、C2、D2、E2とを備えている。
【0031】
ここで、ブレーキ液路A1は、入口ポート12Pから第1入口制御弁15に至る液路であり、ブレーキ液路B1は、第1入口制御弁15から出口ポート14Pに至る液路である。また、ブレーキ液路C1は、ブレーキ液路B1から第1リザーバ13に至る液路であり、ブレーキ液路D1は、第1リザーバ13から第1ポンプ17に至る液路である。さらに、ブレーキ液路E1は、第1ポンプ17からブレーキ液路A1に至る液路である。ブレーキ液路A2、B2、C2、D2、E2については、説明が重複するため、説明を省略する。
【0032】
第1・第2ポンプ17、27の吸入側に各々吸入弁31が設けられ、吐出側に各々吐出弁32が設けられている。
また、基体40は、第1マスタシリンダ12から延びる液路(ブレーキ配管)が接続される入口ポート12Pと、第2マスタシリンダ22から延びる液路(ブレーキ配管)が接続される入口ポート22Pと、前輪ブレーキキャリパ14へ延びる液路(ブレーキ配管)が接続される出口ポート14Pと、後輪ブレーキキャリパ24へ延びる液路(ブレーキ配管)が接続される出口ポート24Pとを備えている。
【0033】
次に、車両用ブレーキ液圧制御装置10の動作を説明する。なお、ブレーキレバー11から前輪ブレーキキャリパ14までの第1系統と、ブレーキペダル21から後輪ブレーキキャリパ24までの第2系統とは、動作が同じであるため、第1系統のみを説明する。
【0034】
・ABS非作動状態:前輪がロックする心配がないときは、制御装置30で、第1ポンプ17を停止し、第1入口制御弁15を開き、第1出口制御弁16を閉じる。この状態で、ブレーキレバー11が制動側に操作されると、第1マスタシリンダ12で液圧が高められ、この液圧が第1入口制御弁15を介して前輪ブレーキキャリパ14に伝えられる。
【0035】
・ABS(減圧モード):前輪がロックしそうになると、制御装置30は、第1入口制御弁15を閉じ、第1出口制御弁16を開く。前輪ブレーキキャリパ14内の液圧は、第1出口制御弁16を介して第1リザーバ13へ逃がされる。これで前輪ブレーキキャリパ14のブレーキ液圧が減圧される。
【0036】
・ABS(保持モード):制御装置30は、第1入口制御弁15と第1出口制御弁16を共に閉じる。これによって、前輪ブレーキキャリパ14のブレーキ液圧が一定に保持される。
【0037】
・ABS(増圧モード):ブレーキ液圧を増圧する際は、制御装置30は、第1入口制御弁15を開け、第1出口制御弁16を閉じる。これによって、マスタシリンダ12で発生された液圧が、前輪ブレーキキャリパ14に伝えられる。これで前輪ブレーキキャリパ14のブレーキ液圧が増圧される。
【0038】
2系統対応の車両用ブレーキ液圧制御装置10の主たる構成要素である第1の基体40の構成を
図2に基づいて説明する。
図2(a)は第1の基体40の正面図、
図2(b)は第1の基体40の平面図、
図2(c)は第1の基体40の側面図、
図2(d)は第1の基体40の底面図、
図2(e)は第1の基体40の背面図である。
【0039】
図2に示すように、第1の基体40は、略直方体のブロックであって、第1面41、第2面42、第3面43、第4面44、第5面45、第6面46を有する6面体である。第1面41と第6面46が平行(略平行を含む。以下同じ)で、第2面42と第5面45が平行で、第3面43と第4面44が平行である。
【0040】
図2(a)に示すように、第1面41には、
図1で説明した第1入口制御弁15と第1出口制御弁16とからなる組付部品が、が取付けられる電磁弁取付孔48、48が形成され、第2入口制御弁25と第2出口制御弁26からなる組付部品が取付けられる電磁弁取付孔49、49が形成される。電磁弁取付孔48と電磁弁取付孔49は、第1の基体40の中心を通る基準線50に対して線対称の位置に配置されている。
対角線上に第1加工基準51、51が設定される。
さらに、第1面41の4隅には、クランプ部52が設けられている。
【0041】
図2(b)に示すように、一面としての第2面42には、
図1で説明した入口ポート12Pと出口ポート14Pに対応するブレーキ配管取付孔54、54が形成され、入口ポート22Pと出口ポート24Pに対応するブレーキ配管取付孔55、55が形成される。
一面としての第2面42の中心を通る基準線50の一方に、第1系統のブレーキ配管取付孔54、54が配置され、基準線50の他方に、第2系統のブレーキ配管取付孔55、55が配置される。
第2面42には、基準線50上に凹部57が形成される。
【0042】
図2(c)に示すように、第3面43には、ポンプ(
図1、符号17)からなる組付部品が取付けられるポンプ取付孔58が形成される。なお、右側面図は省略したが、第4面44にポンプ(
図1、符号27)からなる組付部品が取付けられるポンプ取付孔が形成される。
【0043】
図2(d)に示すように、第5面45には、
図1で説明したリザーバ13からなる組付部品が取付けられるリザーバ取付孔61と、リザーバ23からなる組付部品が取付けられるリザーバ取付孔62とが、基準線50に線対称となるように設けられている。
【0044】
図2(e)に示すように、第6面46には、
図1で説明したモータ29が取付けられるモータ取付孔63が設けられている。第1の基体40にあっては、モータ取付孔63の中心が基準線50に合致している。
【0045】
第6面46には、4隅にクランプ部65が設けられている。そして、第6面46には、対角線上に、第2加工基準66、66が設けられている。
【0046】
以上の構成からなる第1の基体40に施す加工方法を、
図3、
図4に基づいて説明する。
図3に基づいて、基体40に、凹部44Bの形成と3つの面の機械加工とを説明する。
図3(b)が平面図であり、
図3(a)が
図3(b)のa矢視図であり、
図3(c)が
図3(b)のc矢視図である。
【0047】
図3(c)に示すように、定盤67などに第1の基体40を載せる。そして、クランプ部65にクランプ金具68を掛けることで第1の基体40をクランプする。
図3(b)に示すように、第1の基体40はクランプ金具68でクランプされる。第2加工基準66を基準にして、クランプ金具68と刃物が干渉しない3つの面(第1の基体40の第2面42、第5面45及び第6面46)を機械加工する。このときに、
図3(a)にて、凹部57を形成する。
【0048】
第2面42、第5面45、第6面46及び凹部57の加工が終わったら、クランプ金具68を緩める又は外し、第1の基体40を90°水平回転し、上下反転する。
図4(b)のように、凹部57の位置が変更された。
図4(c)にて、クランプ金具68で第1の基体40をクランプするが、このときにクランプ部52、52と凹部57をクランプする。揺動タイプのクランプ金具68は、クランプの際に上下方向に移動する。凹部57が高さ方向に余裕があるため、揺動タイプのクランプ金具68の使用が可能となる。
【0049】
クランプ後に、クランプ金具68と刃物が干渉しない残り3つの面(第1の基体40の第1面41、第3面43及び第4面44)を機械加工する。
【0050】
次に、1系統対応の車両用ブレーキ液圧制御装置110の主たる構成要素である第2の基体140の構成を
図5に基づいて説明する。
図5に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置110は、ブレーキレバー111の操作に応じて作動液を加圧し液圧を発生するマスタシリンダ112と、前輪ブレーキキャリパ114側から逃がされた作動液を一時的に貯留するリザーバ113と、マスタシリンダ112と前輪ブレーキキャリパ114の間に設けられる常開型電磁弁である入口制御弁115及び常閉型電磁弁である出口制御弁116と、リザーバ113に貯留された作動液を吸入してマスタシリンダ112側に戻すポンプ117と、ポンプ117を駆動するモータ129と、このモータ129の駆動制御及び入口制御弁115及び出口制御弁116の開閉制御をなす制御装置130と、第2の基体140に設けられブレーキ液を流すブレーキ液路A1、B1、C1、D1、E1とを備えている。
【0051】
ここで、ブレーキ液路A1は、入口ポート112Pから入口制御弁115に至る液路であり、ブレーキ液路B1は、入口制御弁115から出口ポート114Pに至る液路である。また、ブレーキ液路C1は、ブレーキ液路B1からリザーバ113に至る液路であり、ブレーキ液路D1は、リザーバ113からポンプ117に至る液路である。さらに、ブレーキ液路E1は、ポンプ117からブレーキ液路A1に至る液路である。
【0052】
次に、車両用ブレーキ液圧制御装置110の動作を説明する。
・ABS非作動状態:前輪がロックする心配がないときは、制御装置130で、ポンプ117は停止し、入口制御弁115を開き、出口制御弁116を閉じる。この状態で、ブレーキレバー111が制動側に操作されると、マスタシリンダ112で液圧が高められ、この液圧が入口制御弁115を介して前輪ブレーキキャリバ114に伝えられる。
【0053】
・ABS(減圧モード):前輪がロックしそうになると、制御装置130は、入口制御弁115を閉じ、出口制御弁116を開く。前輪ブレーキキャリバ114内の液圧は、出口制御弁116を介してリザーバ113へ逃がされる。これで前輪ブレーキキャリバ114のブレーキ液圧が減圧される。
【0054】
・ABS(保持モード):制御装置130は、入口制御弁115と出口制御弁116を共に閉じる。これによって、前輪ブレーキキャリバ114のブレーキ液圧が一定に保持される。
【0055】
・ABS(増圧モード):ブレーキ液圧を増圧する際は、制御装置130は、入口制御弁115を開け、出口制御弁116を閉じる。これによって、マスタシリンダ112で発生された液圧が、前輪ブレーキキャリバ114に伝えられる。これで前輪ブレーキキャリバ114のブレーキ圧が増圧される。
【0056】
図6(a)は第2の基体140の正面図、
図6(b)は第2の基体140の平面図、
図6(c)は第2の基体140の側面図、
図6(d)は第2の基体140の底面図、
図6(e)は第2の基体140の背面図である。
【0057】
図6に示すように、第2の基体140は、略直方体のブロックであって、第1面141、第2面142、第3面143、第4面144、第5面145、第6面146を有する6面体である。第1面141と第6面146が平行(略平行を含む。以下同じ)で、第2面142と第5面145が平行で、第3面143と第4面144が平行である。
【0058】
図6(a)に示すように、第1面141には、
図5で説明した入口制御弁115と出口制御弁116とからなる組付部品が、が取付けられる電磁弁取付孔148、148が形成される。電磁弁取付孔148、148は、第2の基体140の中心を通る基準線150に対して一方の側に配置されている。第1面141には、
図5で説明したモータ129が取付けられるモータ取付孔163が設けられている。
【0059】
第2の基体140では、モータ取付孔163を電磁弁取付孔148、148と同一面上に形成することで、空いているスペースをより効率的に利用でき、車両用ブレーキ液圧制御装置110の更なる小型化につながる。加えて、電磁弁115、116およびモータ129を同じハウジング内に収容することができ、モータ129単品での防水の必要がなくなり、生産コストを抑えることができる。
【0060】
対角線上に第1加工基準151、151が設定される。
さらに、第1面141の4隅のうち3つに、クランプ部152が、設けられている。
【0061】
図6(b)に示すように、一面としての第2面142には、
図5で説明した入口ポート112Pと出口ポート114Pに対応するブレーキ配管取付孔154、154が形成される。
一面としての第2面142の中心を通る基準線150の一方に、第1系統のブレーキ配管取付孔154、154が配置される。第2面142には、基準線150上に凹部157が形成される。
【0062】
図6(c)に示すように、第3面143には、ポンプ(
図5、符号117)からなる組付部品が取付けられるポンプ取付孔158が形成される。
【0063】
図6(d)に示すように、第5面145には、
図5で説明したリザーバ113からなる組付部品が取付けられるリザーバ取付孔161が、基準線150の一方に配置される。
【0064】
図6(e)に示すように、第6面146には、4隅にクランプ部165が設けられている。そして、第6面146には、対角線上に、第2加工基準166、166が設けられている。
【0065】
以上の構成からなる第2の基体140に施す加工方法を、
図7、
図8に基づいて説明する。
図7(b)は平面図であり、
図7(a)は
図7(b)のa矢視図であり、
図7(c)は
図7(b)のc矢視図である。
【0066】
図7(c)に示すように、定盤167などに第2の基体140を載せる。そして、クランプ部165にクランプ金具168を掛けることで第2の基体140をクランプする。
図7(b)に示すように、第2の基体140はクランプ金具168でクランプされる。第2加工基準166を基準にして、クランプ金具168と刃物が干渉しない3つの面(第2の基体140の第2面142、第5面145及び第6面146)を機械加工する。このときに、
図7(a)にて、凹部157を形成する。
【0067】
第2面142、第5面145、第6面146及び凹部157の加工が終わったら、クランプ金具168を緩める又は外し、第2の基体140を90°水平回転し、上下反転する。
図8(b)のように、凹部157の位置が変更された。
図8(c)にて、クランプ金具168で第2の基体140をクランプするが、このときにクランプ部152と凹部157をクランプする。揺動タイプのクランプ金具168は、クランプの際に上下方向に移動する。凹部157が高さ方向に余裕があるため、揺動タイプのクランプ金具168の使用が可能となる。
【0068】
クランプ後に、クランプ金具168と刃物が干渉しない残り3つの面(第2の基体140の第1面141、第3面143及び第4面144)を機械加工する。
【0069】
以上に述べた第1の基体40と第2の基体140とは、共に略直方体状のブロックであって、ブロック同士は略同一の長さ寸法を有する。そして、第1の基体40に設ける第1系統のブレーキ流路および組付部品取付孔は、第2の基体140と同じ位置に配置されている。結果、機械加工が共通化でき、加工工数及び加工コストの低減が図れる。
【0070】
図9(a)、(b)に第1の基体40の斜視図(透視図)を示し、
図9(c)、(d)に第2の基体140の斜視図(透視図)を示す。
第1の基体40と第2の基体140とを組み合わせて、基体40、140の組物170と呼ぶ。
【0071】
図9(a)に示す第1の基体40の縦寸法a1、b1、c1と、
図6(c)に示す第2の基体140の縦寸法a2、b2、c2とは、a1=a2、b1=b2、c1=c2となるように共通する。、
【0072】
そして、
図9(a)に示すように、第1の基体40において、中心位置(ここでは横寸法b1の中心)を通る基準線50の一方側に、第1系統のブレーキ流路A1〜E1が形成され、基準線50の他方側に第2系統のブレーキ流路A2〜E2が形成されている。
【0073】
また、
図9(c)に示すように、第2の基体140において、基準線150の一方側に第1系統のブレーキ流路A1〜E1が形成されている。
第1の基体40と第2の基体140において、第1系統のブレーキ流路A1〜E1が共通の位置に設けられている。
【0074】
第1の基体40と第2の基体140において、電磁弁を取付ける電磁弁取付孔48、148やポンプを収納しつつ取付けるポンプ取付孔58、158やリザーバを収納するリザーバ取付孔61、161などは、第1の基体40と第2の基体140において、共通の位置に設けられている。
【0075】
上述したように、第1基体40と第2の基体140において、第1ブレーキ流路A1〜E1及び組付部品取付孔が共通の位置に設けられていることから、第1系統について製造ライン(加工ラインや組付ラインなど)を共通化することができ、設備コスト及び製造コストを抑えることができる。
【0076】
図9(a)において、第1の基体40は、モータ29を取付けるためのモータ取付孔63が基準線50を通る位置に中心がくるように形成される。併せて、
図9(d)に示すように、第2の基体140は、基準線150の他方側にモータ取付孔163が形成される。
こうすることにより、第2の基体140について、基準線150の他方側にモータ取付孔163を形成することで、空いたスペースを利用してモータ129を配置することができるようになり、車両用ブレーキ液圧制御装置110の小型化につながる。
【0077】
また、
図9(d)に示すように、第2の基体140におけるモータ取付孔163は、電磁弁取付孔148と同一面上に形成されている。モータ取付孔163を、電磁弁取付孔148と同一面上に形成することで、空きいているスペースをより効率的に利用でき、車両用ブレーキ液圧制御装置110の更なる小型化につながる。また、モータを電磁弁と共にハウジング内に収容することができ、モータ単体での防水の必要がなくなり、生産コストを抑えることができる。
【0078】
組付部品は、電磁弁、ポンプ及びリザーバとすることにより、少なくとも第1系統については、電磁弁、ポンプ及びリザーバを共通化することができる。
【0079】
図9(a)、(b)に示すように、第1の基体40では、第1系統のブレーキ流路A1〜E1及び組付部品取付孔とが、基準線50に対して線対称になるようにした。このことにより、第1系統と第2系統のブレーキ流路A1〜E1、A2〜E2及び組付部品取付孔をバランス良く配置することができると共にブレーキ流路A1〜E1、A2〜E2の構成を簡素化でき、車両用ブレーキ液圧制御装置10の更なる小型化につながる。