特許第6640156号(P6640156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6640156位置ベースナビゲーションおよび拡張現実アプリケーション用のアンカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640156
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】位置ベースナビゲーションおよび拡張現実アプリケーション用のアンカー
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/06 20060101AFI20200127BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20200127BHJP
   G06K 1/12 20060101ALI20200127BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   G06K19/06 140
   G06K19/06 037
   G01C21/26 P
   G06K1/12 H
   G08G1/005
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-161669(P2017-161669)
(22)【出願日】2017年8月24日
(62)【分割の表示】特願2015-515618(P2015-515618)の分割
【原出願日】2013年6月2日
(65)【公開番号】特開2018-10662(P2018-10662A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2017年8月24日
【審判番号】不服2018-15326(P2018-15326/J1)
【審判請求日】2018年11月19日
(31)【優先権主張番号】61/656,029
(32)【優先日】2012年6月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514305541
【氏名又は名称】ソドー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】アロン、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】アロン、イリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ハダッド、ヤリーフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤディン、ヨアフ
【合議体】
【審判長】 田中 秀人
【審判官】 松平 英
【審判官】 山崎 慎一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−284412号公報
【文献】 特開2011−186613号公報
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を符号化する方法であって、
1つのデジタル値を特定するステップと、
1つのシンボルを形成するステップと、
を有し、
前記1つのシンボルは、前記特定された1つのデジタル値を、前記1つのシンボルの1つの画像の中で赤、緑、青、シアン、マゼンタ、および黄色の色要素として識別されるべき、異なるそれぞれの色からなる、1組の色要素に符号化し、
ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の赤、緑および青の輝度特性を示
赤色要素では、赤の輝度が青および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
緑色要素では、緑の輝度が赤および青の輝度より2倍を超えて大きい;
青色要素では、青の輝度が赤および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
シアン色要素では、青と緑の輝度が共に赤の輝度より2倍を超えて大きい;
マゼンタ要素では、赤と青の輝度が共に緑の輝度より2倍を超えて大きい;そして
黄色要素では、赤と緑の輝度が共に青の輝度より2倍を超えて大きい;
ここにおいて前記色要素はポリゴンタイルを有し、そして前記シンボルは1つの共通頂点で会合する複数の前記ポリゴンタイルからなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
情報を符号化する方法であって、
1つのデジタル値を特定するステップと、
1つのシンボルを形成するステップと、
を有し、
前記1つのシンボルは、前記特定された1つのデジタル値を、前記1つのシンボルの1つの画像の中で赤、緑、青、シアン、マゼンタ、および黄色の色要素として識別されるべき、異なるそれぞれの色からなる、1組の色要素に符号化し、
ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の関係を満たす赤、緑および青の輝度特性を示す:
それぞれの色c=赤、緑、青に対し
【数13】
ここにおいてHおよびLは色cを含むと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であり、一方HおよびLは色cを含まないと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であ
ここにおいて前記色要素はポリゴンタイルを有し、そして前記シンボルは1つの共通頂点で会合する複数の前記ポリゴンタイルからなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
接触可能媒体であって、請求項1または2に記載の方法に従うシンボルが前記媒体上に提供される、ことを特徴とする接触可能媒体。
【請求項4】
接触可能媒体であって、1つのシンボルが前記媒体の上に提供され、
ここにおいて前記シンボルはポリゴンタイルのモザイク配列からなり、
前記ポリゴンタイルのモザイク配列は、複数の共通頂点で会合し、そしてそれぞれの共通頂点における特定されたそれぞれのデジタル値を符号化するために選択された異なるそれぞれの色を持ち、
ここにおいて任意の所与の共通頂点を取り巻く前記色は互いに異なり、
ここにおいて前記シンボルは、前記複数の共通頂点により符号化される複数の前記それぞれのデジタル値を組み合わせることにより拡張デジタル値を符号化し、
ここにおいて前記それぞれのデジタル値は、前記ポリゴンタイルの色の3原色要素を示すそれぞれ2進法値からなる3ビット符号をそれぞれの色に割り当てるステップと、そして前記ポリゴンタイルの前記色に割り当てられた前記3ビット符号を組み合わせて前記それぞれのデジタル値を得るステップと、によりそれぞれの共通頂点において符号化され、
ここにおいて前記ポリゴンタイルの色は、前記2進法値のいずれもが前記シンボル内の任意の所与の共通頂点で会合する全てのポリゴンタイルに亘って一定であることがなく、そして前記シンボル内の前記ポリゴンタイルのいずれもが黒または白でなく、そして前記シンボル内の全ての前記共通頂点が、前記拡張デジタル値に組み合わされるそれぞれのデジタル値を符号化する、ように選択され、
前記1つのシンボルが前記媒体上に印刷される、
ことを特徴とする、接触可能媒体。
【請求項5】
前記ポリゴンタイルの前記色は赤、緑、青、シアン、マゼンタおよび黄色から構成され、そしてそれぞれ3ビット符号(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1),(0,1,1),(1,0,1)および(1,1,0)を持つ色グループから選択される、ことを特徴とする請求項に記載の媒体。
【請求項6】
前記シンボルは複数の前記ポリゴンタイル以外の追加のレジストレーションマークを持たずに提供される、ことを特徴とする請求項のいずれかに記載の媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に機械読み込み可能シンボルの符号化および復号化のための方法、システム、およびソフトウェアに関し、詳細にはこのようなシンボルを位置ベース情報の提供に使用する方法に関するものである。
【0002】
(関連出願の参照)
本出願は2012年6月6日出願の米国暫定出願61/656,029(特許文献1)の恩恵を主張し、それはここに参照として採り入れられる。
【背景技術】
【0003】
画像センサまたは他のタイプの光学センサを使用して情報をコンピュータ読み取り可能な形式で符号化するための広範囲な方法および標準が既存技術で知られている。この種の基準の中で最も知られているのはバーコードであり、それには伝統的なストライプの1次元配列およびQRコード(登録商標)のような2次元バーコードを含む。
【0004】
他のタイプの画像ベースのコンピュータ読み取り可能符号化スキームおよびシンボルが特許文献で提案されてきた。これらスキームのいくつかは、従来型のバーコードで提供される単色シンボルではなく、色情報を使用している。代表的事例は米国特許7,936,901(特許文献2),米国特許5,869,828(特許文献3)および米国特許7,020,327(特許文献4)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国暫定出願61/656,029
【特許文献2】米国特許7,936,901
【特許文献3】米国特許5,869,828
【特許文献4】米国特許7,020,327
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、コンピュータ読み取り可能シンボルの改良タイプを提供し、またそのようなシンボルの使用方法を提供する。
従って本発明の1実施形態によれば、情報を符号化する方法であって、1つのデジタル値を特定するステップと、1つの共通の頂点で会合し、そしてその特定された1つのデジタル値を符号化するために選択された異なるそれぞれの色を持つ複数のポリゴンタイルからなる1つのシンボルを提供するステップと、を有する方法が提供される。
【0007】
ある実施形態ではシンボルは、それぞれの頂点で会合する前記ポリゴンタイルの色に依存して複数のそれぞれのデジタル値を符号化する、複数の頂点を有する、1つのモザイク配列からなる。シンボルは、複数の頂点により符号化される複数のそれぞれのデジタル値を組み合わせることにより生成される、拡張デジタル値を符号化する。
【0008】
一般的に、シンボルを提供するステップは、1つのデジタルコードをそれぞれの色に割り当てるステップと、そして特定されたデジタル値になるようにデジタルコードを組み合わせるステップとを有する。開示された実施形態では、デジタルコードはポリゴンタイルの色の赤、緑および青成分を示す3桁のコードである。3桁のコードはそれぞれ赤、緑、および青を示す二進法の値を含む、3ビットコードでもよく、ここでポリゴンタイルの色は赤、緑、青、シアン、マゼンタおよび黄色から構成され、そしてそれぞれ3ビット符号(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1),(0,1,1),(1,0,1)および(1,1,0)を持つ色グループから選択される。
【0009】
シンボルは固有のレジストレーションマークを持たずに提供される。
【0010】
本発明の1実施形態によれば、その上に提供される1つのシンボルを有する、上記の方法に従う接触可能媒体がまた提供される。シンボルはその媒体上に印刷されてもよい。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
本発明の1実施形態によれば、さらに情報を符号化する方法であって、1つのデジタル値を特定するステップと、シンボルの1つの画像の中で赤、緑、青、シアン、マゼンタ、および黄色の色要素として識別されるべき、異なるそれぞれの色を持つ、1組の色要素に、前記特定された1つのデジタル値を符号化する1つのシンボルを形成するステップと、を有する方法が提供される。シンボルは、色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の赤、緑および青の輝度特性を示す:
赤色要素では、赤の輝度が青および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
緑色要素では、緑の輝度が赤および青の輝度より2倍を超えて大きい;
青色要素では、青の輝度が赤および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
シアン色要素では、青と緑の輝度が共に赤の輝度より2倍を超えて大きい;
マゼンタ要素では、赤と青の輝度が共に緑の輝度より2倍を超えて大きい;そして
黄色要素では、赤と緑の輝度が共に青の輝度より2倍を超えて大きい。
【0018】
さらにあるいは、シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の関係を満たす赤、緑および青の輝度特性を示す:
それぞれの色c=赤、緑、青に対し
【数13】
ここにおいてHおよびLは色cを含むと期待される色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であり、一方HおよびLは色cを含まないと期待される色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値である。
【0019】
本発明の1実施形態によれば、追加として接触可能媒体であって、上記のいずれかに記載の方法に従って接触可能媒体上に提供されるシンボルを有する、ことを特徴とする接触可能媒体が提供される。
本発明は添付の図面を伴った以下の実施形態の詳細な記述により十分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の1実施形態にもとづく、ナビゲーションおよび拡張現実表示のためのシステムの概略絵画図である。
図2】本発明の1実施形態にもとづく、図1のシステム内の携帯型計算機器の概略図である。
図3】本発明の1実施形態にもとづく、ナビゲーションおよび拡張現実表示のための方法を概略示すフローチャートである。
図4】本発明の1実施形態にもとづく、複数の色のコンピュータ読み取り可能シンボルの概略図である。
図5】本発明の1実施形態にもとづく、複数の色のコンピュータ読み取り可能シンボルの概略図である。
図6】本発明の1実施形態にもとづく、複数の色のコンピュータ読み取り可能シンボルの概略図である。
図7】本発明の1実施形態にもとづく、複数の色のコンピュータ読み取り可能シンボルの概略図である。
図8】本発明の1実施形態にもとづく、複数の色のシンボルを復号する方法を概略示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(概要)
スマートフォン、タブレットなどのGPS機能付き携帯型計算機器および専用ナビゲーション機器を使用した屋外ナビゲーションは、一般に広く受け入れられた。しかし囲まれた環境(屋内施設および建て込んだ市街地の両方を含む)では、GPSナビゲーションはうまく作動せず、そしてユーザの要求も異なっている。ユーザは所望の目的地を徒歩で見つけるための詳細な指示を必要とするだけでなく、ユーザの要求は屋外GPSベースナビゲーションに比べて一般的により複雑で動的である。例えば、ユーザは特定の商品または活動の位置決めを望むかもしれないし、ナビゲーションそれ自体が3次元環境にあり、多くの場合異なる階またはレベルにあり、1つの階またはレベルから別の階またはレベルに移動するための種々の選択肢を含むかもしれない。このようにナビゲーション選択は、身体的移動の限界と能力と共にユーザの目的と好みに密接に依存する。
【0022】
同時に、ナビゲーション用の最適な指示と経路発見を屋内施設の中で提供することは、一般的にその施設の構造的および機能的組織の詳細で深い知識を必要とする。この種の知識の集積は一般的に、そのような知識を持つその施設の運営者の参加を必要とする。運営者はより良いそしてより効率的なユーザ体験を提供し、一方で施設内の運営者およびテナントの利益を向上させるために、ユーザのナビゲーション要求を充足させる強い動機を有している。この種の焦点の定まったナビゲーション指示を提供することは、ユーザが施設内の商品およびサービスを購入し、将来再び来訪する可能性を増加させる。
【0023】
しかし囲まれた環境においてナビゲーション指示をユーザに伝える現在の方法は、この仕事によく適合していない。従来は、ナビゲーション指示は地図により、そして一般的な方向サインおよび施設リストにより提供され、一方で販促的内容は広告サインやディスプレイに表示される。この種の通信はユーザ体験を向上させるよりはむしろ、ユーザを認知過負荷および混乱の状態に至らしめ、その中で多くの情報内容が失われる。
【0024】
この問題の1つの解決法は、ユーザが情報を受け取りたいポイントを、これらポイントに画像センサ(殆どの携帯型計算機器に組み込まれているカメラなど)を使用して読み取り可能なシンボルを提供することにより、ユーザが選択できるようにすることである。しかしQRコード(登録商標)などの現存するタイプのシンボルは、大きく印刷された場合を除き、ユーザが発見するのは困難であり、その画像を獲得しそして復号するためには、一般に携帯型計算機器をそのシンボルに近寄って掲げる必要がある。
【0025】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、既存の画像ベース符号化スキームの限界を超越する、新規のコンピュータ読み取り可能シンボルおよびそのようなシンボルを使用する方法を提供する。それぞれのシンボルは1つの共通頂点で会合し、特定されたデジタル値を符号化するために選択された異なるそれぞれの色を有する、複数のポリゴンタイル(多角形)からなる。大きなデジタル値を符号化するために、ポリゴンタイル複数の頂点を有するモザイク状に配列され、ここにおいてそれぞれの頂点はその頂点で会合するポリゴンタイルの色に基づいてそれぞれのデジタル値を符号化する。シンボルはその後、複数の頂点により符号化されたそれぞれのデジタル値を組み合わせることにより生成された、拡張デジタル値を符号化する。開示された実施形態では、シンボルで使用される色は新規のやり方で選択され、それにより携帯型計算機器は、照明条件に拘わらず信頼性と明確性を持って復号可能になる。
【0026】
一般的にシンボルは紙、プラスチック、または任意の他の印刷可能基板などの接触可能媒体上に印刷され、その後それは壁または案内標識などの所望の場所に吊り下げられ、または固定されてもよい。あるいはこれらシンボルは電子表示板に掲載されてもよい。色彩豊かなシンボルは容易にユーザにより発見され、認識される。同時に、シンボルの画像は、携帯型計算機器に組み込まれたカメラの類および、以下に記載されるように、獲得されるシンボルの寸法に影響を受けないアルゴリズムを使用して、大きな範囲の距離を超えて信頼性を持って獲得されそして復号可能である。
【0027】
従って開示されたシンボルは、囲まれた環境におけるナビゲーションをサポートし、位置ベースの拡張現実情報の表示を携帯型計算機器のスクリーン上に呼び出すのに特に有用である。このようなシンボルは、位置ベース情報を提供するのに適したシステムと結合された場合、そのような環境でのユーザ体験を促進し、そして既存解決法の上記の欠点を克服するのに使用可能である。本明細書に記載される特定の実施形態はこの種の用途に焦点が当てられているが、本発明の原理に従って制作されたシンボルは、他の目的のための画像獲得および計算機器に対し符号化情報を提供するのにも同様に使用可能である。
【0028】
(システムの記載)
図1は本発明の1実施形態にもとづく、ナビゲーションおよび拡張現実表示のためのシステム20の概略図である。システム20のオペレーションは本事例では、建て込んだ市街地環境またはショッピングセンターのような囲まれた環境22内で描かれている。この環境は事例の説明のためだけに示され、制限する目的ではない。本発明の原理は屋内、屋外に関わらず、ユーザがアクセス可能な実質的に任意の環境で実行可能である。
【0029】
環境22に関する情報を探しているユーザ24は、壁に貼られたシンボル28を見つけ、そしてそのシンボルを含む画像を獲得するために彼のスマートフォン26(または他の携帯型計算機器)のカメラを向ける。この種の用途の文脈で使用されるシンボルは本明細書ではまた「アンカー」と呼ばれる。シンボル28は異なる色のポリゴンタイル−この事例では四角形−のモザイク状パターンからなる。このようなパターンは以下で図を参照して詳述される。図1には簡略化のため単一のユーザと単一のアンカーしか示されていないが、環境22の運営者または他の管理者は、ユーザが環境内に配分された種々の異なる位置の全てで位置ベース情報にアクセスできるように、一般的に環境内のこれらの位置に複数のアンカーを貼る。ユーザによる環境内での信頼できるナビゲーションのため、任意の所与の位置において、ユーザに明確に視認できる少なくとも1つのアンカーが存在することが一般的に望ましい。
【0030】
スマートフォン26のプロセッサは、シンボル28により符号化されたデジタル値を復号するため、獲得された画像を処理し、その後デジタル値を特定するメッセージをサーバ34に送る。以下に説明するようにメッセージは、ユーザプロファイルおよび検索要求とともに、信号強度またはスマートフォンシステムに利用可能な他の位置決め情報から得られたスマートフォンの概略位置に関するデータも含んでよい。この通信ではスマートフォン26は、以下に記載するように適合するアプリケーションの制御の下、クライアント機器として機能する。図示する実施形態では、既存技術で既知のように、スマートフォン26はネットワーク32に接続する無線アクセスポイント30経由でサーバ34と通信する。またはあるいは、スマートフォン26とサーバ34はセルラーネットワーク経由で、または既存技術で既知の他の適合するタイプの通信リンク経由で通信してもよい。サーバ34は一般的に、プロセッサ、メモリおよび通信インタフェースを備え、適合するソフトウェアで駆動されてスマートフォン26のようなクライアント機器と通信し、適切な形式での位置ベース方法を提供する、汎用コンピュータを有する。
【0031】
ある代替的な実施形態では、スマートフォンまたは他の携帯型計算機器は、関連アンカーデータを事前にキャッシングし、特定のアンカーが検知された時にデータを後から引き出すことにより、オフラインで作動してもよい。このような選択肢は例えば、非常に限定された(有るとしても)データネットワークアクセスを有するかもしれない旅行者にとって有用である。
【0032】
図2は本発明の1実施形態にもとづく、図1のシステム内のスマートフォン26の概略図である。スマートフォンはカメラ45を有し、それは既存技術で既知のようにメモリ48と通信インタフェース49を持つプロセッサ46と繋がっている。スマートフォン26のユーザインタフェースは一般的に接触感知ディスプレイを介して実現されるが、さらにあるいは、スマートフォンはポインティング装置および/またはキーパッドなどの他のタイプのユーザインタフェース要素を有してもよい。プロセッサ46は適合するソフトウェアの制御の下で、本明細書に記載される機能を果たす。このソフトウェアは電子形式で例えばネットワーク上でスマートフォン26にダウンロードされてもよい。さらにあるいは、ソフトウェアは電子、光学または磁気メモリのような接触可能非一過性媒体に記憶されてもよい。
【0033】
スマートフォン26は本発明の実施形態において使用可能な携帯型計算機器の1つの代表的事例にすぎず、適切なカメラ、プロセッサ、ディスプレイ、通信インタフェースを有する他の種類の機器も本明細書に記載される機能を実行するために同等に使用できる。このような機器の事例には、タブレットおよび他の携帯型コンピュータ、またグーグル(登録商標)グラスのような頭部搭載型機器および専用ナビゲーション機器を含む。
【0034】
スマートフォン26は上述のようにシンボル28(図1)を含むシーンの画像を獲得し処理し、そしてそのシンボルにより符号化されたデジタル値を含むメッセージを、通常他の上記の情報と共に、サーバ34に送信する。それに応答してサーバ34はシンボルの位置に関する情報をスマートフォンに返信する。スマートフォンは通常この情報をディスプレイ40上に、通常シンボル28を含むシーンの画像の上に重ねて表示する。このように図2の事例では、ユーザ24がラグをショッピングする興味を示したと仮定して、プロセッサ46は矢印42をディスプレイ40上に重ね、そしてまた所望の目的地への方向を示すテキストの説明文44または他の図形情報を加えてもよい。
【0035】
コンピュータが生成した図形要素が実際の環境の画像の上に、その環境の実際の物理的要素を真似たように重ねられるこの種の表示は、一般的に拡張現実表示と呼ばれる。矢印42と説明文44はディスプレイ40上に表示されるであろう拡張現実要素の類の単純な事例にすぎない。拡張現実要素のタイプおよび、その環境に貼られたシンボル28の位置に対応する拡張現実要素の位置は、視覚的キューや販促コンテンツの豊富な選択肢を提供するため、システム20の運営者により選択されそしてプログラムされる。視覚的キューや販促コンテンツはアニメーション要素を含むこともあり、また音響が加えられることもあり、環境22内の異なるユーザの個人的な嗜好および目的により変化しうる。
【0036】
図3は本発明の1実施形態にもとづく、ナビゲーションおよび拡張現実表示のための方法を概略示すフローチャートである。方法は利便性と明確化のためシステム20(図1)の要素とスマートフォン26を参照して記載されている。しかし本方法の原理は、必要な変更を加えて、任意の適合する応用環境において、任意の所望の携帯型計算機器を使用して適用可能である。
【0037】
準備ステップとして、プロファイル定義ステップ50において、スマートフォン26がユーザ24に関するプロファイル情報を受け取りそして記憶する。ユーザは個人プロファイルおよび嗜好を含むプロファイル情報を、スマートフォン上で走るクライアントソフトウェアアプリケーションからの問い合わせに応答して能動的に入力してもよい。あるいはさらに、プロファイル情報はユーザ行動や他の情報源に基づいて自動的に組み立てられてもよい。アプリケーションそれ自体はユーザが初めてその環境に入った時にユーザに対してスマートフォン26へのダウンロードをオファーされてもよい。さらにあるいは、アプリケーションはスマートフォンに事前にインストールされていてもよい。
【0038】
ユーザ開始ステップ52において、環境22内でユーザ24はクライアントアプリケーションを開き、そして通常1つの目的物を選択する。目的物はレストランまたは店の名前のような特定の目的地であってよく、またはそれはあるタイプの施設、またはラグの購入または直近のトイレを探すなどの行動であってもよい。その後画像獲得ステップ54において、ユーザ24はアンカー(シンボル28)を視覚的に探し、そして位置を突き止めると、アンカーを含むシーンの画像を獲得するためにスマートフォン26を向ける。
【0039】
処理ステップ56において、スマートフォン26内のプロセッサ46はクライアントアプリケーションの制御の下、シンボル28により符号化されたデジタル値(アンカーIDとも呼ばれる)を取り出すために獲得された画像を処理する。一般的に環境22内のそれぞれのアンカーは異なり、そして1つのユニークなIDを符号化する。プロセッサはその後、アンカーID,クライアントの目的物、およびユーザプロファイルからの関連情報を示してサーバ34に問い合わせを送信する。選択肢としてまたは追加的に、関連するユーザプロファイルがサーバ34に事前に記憶されていてもよい。
【0040】
サーバ34は環境22に関する記憶された情報を使用してその問い合わせを処理する。この情報は通常、施設やサービスの位置および全てのアンカーの位置を示す環境の詳細地図を含む。サーバはこの情報を、ユーザ問い合わせにより提供されたように、ユーザの位置、目的物、および嗜好と組み合わせ、そして応答を生成する。通常この応答はユーザを彼の目的を満足させる位置に向かわせるため、1つまたはそれ以上の図形要素および場合によりテキストおよび/または音響要素をも含む。応答はまたユーザのプロファイルおよび位置に適合された販促情報を含んでもよい。
【0041】
応答送信ステップ58において、サーバ34はこの応答をスマートフォン26に送信する。ディスプレイステップ60において、プロセッサ46はクライアントアプリケーションの制御の下、応答の図形的およびテキスト要素をディスプレイ40に与える。通常少なくとも図形的要素が、画像内のアンカーの実際の位置の上に重ねられた、あるいは結び付けられた、ディスプレイ上の位置において、拡張現実要素としてディスプレイ上に示される画像内に現れる。(選択肢としてまたは追加として、スマートフォン26はサインの生成および表示の遅れを減少させるため、直近のアンカーの全てまたはいくつかを事前にキャッシングしてもよい。)
【0042】
プロセッサ46は当該アンカーがスマートフォン26により獲得された画像の中で視認できる限りはディスプレイ40上にその情報を表示し続ける。ユーザが環境22を通過して動くにつれて、ディスプレイ40上の情報の位置は獲得された画像内の実際のアンカーの位置に沿って変化する。最初のアンカーが視認できない位置にユーザが進むと、ユーザはもう1つのアンカーを含む画像を獲得してもよく、そしてディスプレイ40上の情報はユーザが所望の目的地に到達するまでそれに従って更新される。
【0043】
(シンボルのデザイン)
図4および図5は、本発明の1実施形態にもとづく、複数の色のコンピュータ読み取り可能シンボル70と80の概略図である。シンボル70と80は共に1つの共通の頂点で会合する複数のポリゴンタイルを有する。シンボル70の場合には、ポリゴンタイルは四角形72であり、頂点74で会合し、一方シンボル80では、ポリゴンタイルは三角形82であり、頂点84で会合する。あるいは他の種のポリゴンタイル(5,6またはそれ以上の辺を有する)、必ずしも全て同じである必要はないが、も1つの頂点で会合するように配置できる。実質的に任意のタイプのポリゴンタイルもそしてはめ込みパターンも使用可能である。復号の容易さと信頼性のため1つの所定の頂点に会合するポリゴンタイルの全てが異なる色であることが望ましい(しかし必須ではない)。N個の色およびN個のポリゴンタイルが会合する1つの頂点を使用して、頂点はN!/(N−N)!個の異なる形態をとることができ、従ってN!/(N−N)!個の異なるデジタル値を符号化するのに使用可能である。
【0044】
図6,7は本発明のさらなる実施形態にもとづく、複数の色のコンピュータ読み取り可能シンボル90,100の概略図である。これらの実施形態ではそれぞれのシンボル内に複数の頂点を有する複数のポリゴンタイルタイルをモザイク状に配列することが、符号化可能なデジタル値の範囲を広げ、識別の頑健性を増大させるために使用される。(「モザイク状に配列する」という用語は本発明の明細書および請求項においては、形状間に重複または隙間がないようにはめ込むためにある領域を幾何学的形状ではめ込むことを言う。)例えば、シンボル90は6角形のタイル92,94を有し、そして6つの共通頂点96,98を有し、それぞれの頂点は3つの隣接するタイルを有する。シンボル100は3x3の格子内に配列された四角形のタイル102を有し、4つの共通頂点104を定義する。
【0045】
シンボル90、100のそれぞれの複数の頂点96,104は、それぞれのデジタル値を符号化し、そしてこれらの値は、例えば頂点の個別の値を連結することにより、組み合わされて拡張デジタル値を生成する。タイル102の中の6色の異なる配列を持つシンボル100内の頂点は、従って126,360個の異なる値を符号化するのに使用できる。さらに、頂点104の3つの頂点の周りの色の位置および配置が既知であると、4番目の頂点の周りの3つの色の位置と配置が一意に決定される。もし4番目の頂点が期待される位置と色の分布を満たさない場合、画像を処理している携帯型計算機器はそのシンボルを拒絶し、そしてこのようにしてシンボル値の偽の間違った読み取りを防止する。
【0046】
シンボル90,100のようなモザイク状にはめ込まれる複数の頂点のシンボルは、図1に示されたナビゲーション用途の類のようなほとんどの用途および環境にとって十分な数の異なるデジタル値を符号化しなければならない。大きな数のタイルを含むシンボルは大きな値を符号化するのに使用されてもよい。非対称のモザイク状はめ込みもまた使用されてもよい。GPSまたはセルラー信号強度により提供される概略位置、およびセル番号などの補助的情報が、異なる位置に展開された同一の値を持つシンボル間の差別化を図るのに使用できる。
【0047】
上記に記載されたシンボルにより示された、色ベースの、頂点を中心とする種の符号化(特に、既知のQRコード(登録商標)のような画像ベースの符号化スキームと比較して)の主要な利点は、復号がスケールに対してほぼ不変であることである。言い換えれば、携帯型計算機器により獲得された画像内のシンボルの相対的寸法、そして従って機器とシンボルの距離は、寸法の大きな範囲に亘って、復号にほとんどまたは全くインパクトを与えない。
【0048】
例えば候補頂点により符号化されたデジタル値を読むために、プロセッサ46は候補頂点の位置を選択し、その後、それぞれのポリゴンタイル内の頂点から一定の距離離れた頂点周辺のサンプリングポイントにおいて色を計算する。これらサンプリングポイントは、本明細書ではプローブまたはプローブ位置と呼ばれるが、通常ポリゴンタイルの色末端の間の角二等分線に沿って位置決めされる。プローブの数とプローブの間の角度は、したがって従前の図に示されるように、それぞれの頂点の周りのポリゴンタイルのタイプと数により決定される。(サンプリングポイントがその周りに設定される候補頂点の位置は、頂点で会合する色末端を位置決めし、そして色末端の交点にその位置を設定することにより、または他の適合する基準により、またはランダムでも発見可能である。ポリゴンタイルが一定の偏移ベクトルDより小さくなければ、このような偏移でのポリゴンタイルの色探知は寸法に関係なく同じ色を得る。
【0049】
この種の頂点を中心とした符号化は回転に対しても頑健である。回転が最小頂角の半分より小さい(例えば四角形によるモザイク状にはめ込みでは45°未満)限りは、色探査方向を角二等分線に沿って調整する必要はない。ほとんどのスマートフォンおよび他の携帯型計算機器で利用可能な重力センサ(加速度計など)により提供される情報は、カメラ自身の回転に無関係に色探査角度の曖昧性解消と修正に使用可能である。頂点自体はレジストレーションマークとして機能し、それによりアンカーに追加のレジストレーションマークを追加する必要がない。
【0050】
(色スキーム)
本発明の実施形態によるシンボル内の頂点周りのポリゴンタイルの色付けのためには、画像センサにより識別可能な任意の色の組が使用可能である。しかし本願発明者らは、色スキームの一定の色ファミリーが、広く使用可能な画像センサを使用した高信頼性、効率的な色識別をサポートする点で有利であることを発見した。この種の色スキームは上記の頂点ベースの符号化方法に対してシンボルを生成するのに適用可能である。この色スキームは、この特定の符号化法だけでなく、他の色ベース符号化技術においても有用である。
【0051】
本発明の1実施形態では、原色の「赤(R)」、「緑(G)」および「青(B)」、およびそれらのそれぞれの補色「マゼンタ(M)」、「シアン(C)」および「黄(Y)」を使用して、色の数はN=6に設定される。この色の組はいくつかの利点を有する:
・原色、またそれ以上にいくつかのこれら原色に接続するインタフェースは自然環境では比較的珍しい。この特徴はヒトおよびコンピュータによるアンカーの識別に有利であり、そして頑健な復号に役立つ。
・RGBはカメラにより生成されるデジタル画像のネイティブ色空間である。補色はM=G+B,C=R+B,Y=R+Gとして容易に計算できる。
・N=6は上述のように四角形、六角形および三角形のモザイク状はめ込みには十分である。
【0052】
この実施形態では、色の3次元2進法表示を使用する。
1.R=(1,0,0)
2.G=(0,1,0)
3.B=(0,0,1)
4.C=(0,1,1)
5.M=(1,0,1)
6.Y=(1,1,0)
それぞれの3つの次元は原色チャネル(PCC)を表わす。
【0053】
本実施形態では、任意の所与の共通頂点を取り囲む色は、すべて互いに異なり、そしてそれぞれのPCCの2進法表示が変化していなければならない、即ち、取り巻く色の全てが同じRGBビット値を有する頂点は許されない。例えば、R,G,Bの色の3つのタイルの頂点は基準に適合する、なぜならば全てのタイルに対しどの2進法PCCも不変ではないからである。反対にC、G、B色の3つのタイルは基準に適合しない、なぜならば、赤の2進法PCCが全てのタイルにおいてゼロであるからである。6色のモザイク状はめ込みでは、この制限は六角形のモザイク状はめ込みにのみ適用される、なぜならば、異なる色の三角形または四角形のタイルの頂点の周りの任意の配置はその制限を満たすからである。
【0054】
シンボルの四角形のモザイク状はめ込みは、その外形が、シンボルの画像化に使用されるセンサ要素のモザイク状はめ込みに適合し、そして公共の閉鎖環境においてアンカーを張り付けるのに使用可能な空間に適合する傾向があるため、有利である。四角形タイルはアンカーがある角度で獲得された場合、それは正面からよりよく起こるが、に起こる水平方向短縮を補償するために、容易に水平方向に伸長可能である。
【0055】
図8は本発明の1実施形態にもとづく、シンボル100のような上記の設計の複数の色シンボルを復号する方法を概略示すフローチャートである。色探査ステップ110において、プロセッサ46は、あるシンボルの画像内の所与の1つの頂点位置を示すそれぞれの画像軸ベクトル
【数1】
に対し、N個の色−プローブ値Vp(p=1,...,N)を取り出す。これらの値はプローブ座標
【数2】
における画像色強度
【数3】
に対応する。偏移ベクトル
【数4】
は全て同じ長さ
【数5】
を有するが、アンカー形状に対応して異なる方向を向いている。特異的に、四角形のモザイク状はめ込みでは、
【数6】
であり、ここにD=Round[d/√2]の自然数である。
【0056】
一般的に隣り合う偏移ベクトル間の角度は2π/Nである。以前触れたように、偏移ベクトルのこの角度分布はπ/Nまでの画像回転に関する頑健性を意味する。三角形のモザイク状はめ込みでは、
【数7】
であり、ここにφ=(2p−1)π/N、p=1,...,6。六角形のモザイク状はめ込みでは、6個のベクトルは図6の頂点96と頂点98により示されるように、頂点の2つの可能なタイプに対応する偶数と奇数のpの2組に分けられる。
【0057】
長さパラメータDは検知可能な最小のアンカー画像寸法を定義する。(D=1または2ピクセルのような)非常に小さな値は非常に局所的なプローブの組に対応し、それは原則的に(Dのオーダーの)小さな数のピクセルにより獲得されるアンカーを捕捉できる。アンカー識別は大きなDの値と共により頑健になるが、通常3以上の任意の値のDに対してよく機能する。大きなシンボルでもまだ小さなDの値で頑健に識別できる、なぜならば、頂点はアンカーの寸法に関係なく、局所的に定義されるからである。したがって1選択のDの使用は、小さなおよび大きなアンカーの検知に十分である。
【0058】
次の段階はそれぞれのプローブをN色の1つとして分類することである。図8はこの目的のための頑健な方法を示し、それはある種の局所白バランスをネイティブRGB空間において実行し、潜在的に低信頼性の候補頂点を自動的に拒否する1組の要件を課する。具体的には、PCC評価ステップ112において、プロセッサ46は最初に、それぞれのプローブにおける3原色(RGB)チャネル(PCC)のそれぞれに対する最高輝度値Imax=max({I(ν)})および最低輝度Imin=min({I(ν)})を発見する。暗闇閾値評価ステップ114において、第一の要件、任意の所与のPCCの最高輝度を有するプローブが絶対暗闇閾値Δminより大きい、即ち、Imax>Δminが評価される。比率閾値評価ステップ116において、第二の要件、所与のPCCの最低輝度を有するプローブが、この色の対応する最高輝度よりも有意に小さくなければならない、即ち、Imin/Imax<ρminが評価される。色プローブ値がこれらの要件を満たさない場合、プロセッサ46は不合格ステップ122において、候補頂点を不合格にする。
【0059】
最後に、PCC割り当てステップ118において、それぞれのPCCにおける極値の間の領域Rc=Imax−Iminに基づいてプロセッサ46はPCC二進法値Vp,cを相対的閾値τminおよびτmaxに基づいてそれぞれのプローブに割り当てる、ここに0<τmin、τmax<1、τmin+τmax<=1。具体的には:
【数8】
そしてこの条件を満たさない場合Vp,cは定義されない。この段階でVp,cのどれかが未定義の場合、1つの頂点に対するテストは不合格となり、処理の流れはステップ122で終了する。
【0060】
候補頂点が成功裏にステップ114−118をパスした場合、プロセッサ46は1つの特定の色を2進法PCC表示での三重項(Vp,r,Vp,g,Vp,b)の形式でそれぞれのプローブに割り当てる。しかし上記に定義された6色スキームを超えて、二進法三重項(Vp,r,Vp,g,Vp,b)は2つの追加的な許容されない構成を持つことができる:K=(0,0,0)およびW=(1,1,1)。プロセッサ46は二進法PCC三重項のいずれもがKまたはWでなく、そして候補頂点の周りのプローブで同じ色値を持つものが2つとないことを、色チェックステップ120でチェックする。この後者の条件はプローブ間の対比較によりチェックされる。
【0061】
これら最終の条件が満たされた場合、頂点識別ステップ124において、プロセッサ46は、色頂点条件を満たすピクセルのクラスタの中心に対応する点を1つの頂点として識別する。プロセッサは個々のポリゴンタイルの色値を組み合わせることにより、例えば各プローブの3ビット2進法PCC値を3桁2進法数値に変換し、その後N個のプローブを連結して単一2進法数値にすることにより、頂点IDを割り当てる。複数の頂点アンカー全体に対するIDは頂点の個々のIDを連結することにより発見されてもよい。
【0062】
頂点の頑健な検知は色の選択により強く影響される可能性がある。アンカーは獲得された画像の小さな部分のみを占有するため、それらの照明は、カメラに使用される露出と利得に影響する画像全体の照明とは通常大きく異なる可能性がある。実際、発明者らは、所定のアンカータイルに対するPCC値の読み出し値が、このタイルにとって最適であろう使用される露出と利得に関して通常3倍だけ変化することを発見した。例えば画像のほとんどが太陽光をフルに浴びているがアンカーは影の中に位置する場合、そのアンカーのPCC値は、アンカーも太陽光をフルに浴びている場合の画像に比較してずっと低くなる。逆に画像のほとんどが影の中にあるがアンカーがたまたま強く照明される場合には、そのアンカーのPCC値はずっと高くなるであろう。
【0063】
考慮すべきさらなる制限は、実際の物体(着色顔料を含む)の反射色は色分解に関して物理的制限があることである。結果として、獲得された「原色」のRGB画像はまた「誤った」チャネルにおいて必然的に無視できない貢献をする。例えば、公知のウェブオフセット出版用仕様(SWOP)に準拠した校正済みプリンタ上に「原色の緑」をインク密度CMYK=(100%、0,100%、0)で生成する繊細な試みでは、獲得された画像の色値がRGB=(0,166,80)で与えられ、「誤った」赤のチャネルが80の無視できない値を持つ結果となる。シンボルの頂点の喪失または誤識別につながるこの種の状況を避けるため、本発明の実施形態は、色検知のための上記のパラメータと、実際にアンカーを生成するのに使用される機器の色再生産能力と、の共同最適化のためのスキームを提供している。
【0064】
この種のスキームをサポートするため、色セットを点数付けする方法が導入される。その方法は1つの色セットを、獲得された画像内の色セットアンカータイルの実際のRGB値に従って点数をつける。(sRGB色空間はIEC仕様61966−2−1:1999により定義され、そしてカラー画像センサやカメラの校正に広く使用されている。)その後アンカーシンボル用の色セットは点数を最高にするように選択される。
【0065】
RGBCMY色の所与のセットの点数を計算するため、それぞれ、色セットの2進法表現が1である色cの最高および最低観察値であるHおよびLが取られる。同様にHおよびLは色セットの2進法表現が0である色cのそれぞれ最高および最低観察値である。言い換えれば、HおよびLは色cを含むと期待される色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であり、一方HおよびLは色cを含まないと期待される色要素の中での色cの最高および最低観察値である。c=赤の場合、赤、黄、マゼンタの色要素はこの赤色を含むと期待され、一方緑、青、シアンの色要素は赤色を含まないと期待される。
【0066】
例えば校正されたSWOPプリンタでの繊細な色生成スキームは:
・RはCMYKインク密度(0,100%、100%、0)により生成される。
・GはCMYKインク密度(100%、0,100%、0)により生成される。
・BはCMYKインク密度(100%、100%、0,0)により生成される。
・CはCMYKインク密度(100%、0,0,0)により生成される。
・MはCMYKインク密度(0,100%、0,0)により生成される。
・YはCMYKインク密度(0,0,100%、0)により生成される。
【0067】
sRGB仕様に従って校正されたカメラでは、観察される色値は下記になろう:
・獲得されたR−(237,28,36)
・獲得されたG−(0,166,80)
・獲得されたB−(46,48,146)
・獲得されたC−(0,173,239)
・獲得されたM−(236,0,140)
・獲得されたY−(255,242,0)
【0068】
これらの測定値は以下の各色の最高および最低値を導く:
・HRed=46 2進法表示でred=0のアンカー色G,B,Cの中での赤の最高値
・LRed=0 2進法表示でred=0のアンカー色G,B,Cの中での赤の最低値
・HGreen=48 2進法表示でgreen=0のアンカー色R,B,Mの中での緑の最高値
・LGreen=0 2進法表示でgreen=0のアンカー色R,B,Mの中での緑の最低値
・HBlue=80 2進法表示でblue=0のアンカー色R,G,Yの中での青の最高値
・LBlue=0 2進法表示でblue=0のアンカー色R,G,Yの中での青の最低値
・HRed=255 2進法表示でred=1のアンカー色R,M,Yの中での赤の最高値
・LRed=236 2進法表示でred=1のアンカー色R,M,Yの中での赤の最低値
・HGreen=242 2進法表示でgreen=1のアンカー色G,C,Yの中での緑の最高値
・LGreen=166 2進法表示でgreen=1のアンカー色G,C,Yの中での緑の最低値
・HBlue=239 2進法表示でblue=1のアンカー色B,C,Mの中での青の最高値
・LBlue=140 2進法表示でblue=1のアンカー色B,C,Mの中での青の最低値
【0069】
共通頂点の検知において誤検知を減少させるため、それぞれの暗闇閾値Δminが出来る限り大きく選択される。暗闇閾値Δminを増加させる限界は、照明条件に起因してΔminがLより大きくなる場合に、暗闇閾値がある頂点の検知を阻害する点、において到達される。従って暗闇閾値Δminを最大にすることは大きな値のLを選択することと等価である。同様に最小利得比ρminは出来るだけ小さくなければならないが、これは大きな値の1/(H+δ)を選択することに等価である。(定数δはH=0における特異点を防止するために導入される。)上記2つの観察を組み合わせて、照明の変化に対する頑健さを助長する1つの点数にすることは、以下の式を最大化することに相当する:
【数9】
δを最大値である255(1色8ビット表現を仮定して)に設定することにより、便利にも点数が0−1の範囲に制約される。
【0070】
相対的閾値τminおよびτmaxの厳密な選択は誤検知された頂点に遭遇する機会を有意に減少させ、従って頂点検知の信頼度を向上させる。最も厳密な相対的閾値τminおよびτmaxはそれらの下限がそれぞれ(H−L)/(L−L)および(H−L)/(H−H)により与えられることを実現することにより発見できる。τmin+τmax<=1であるため、これらの要件は便利なことに組み合わされて次の式を最大化することとなる:
【数10】
2つの点数は組み合わされて単一の最適化点数になる:
【数11】
アンカー色生成に使用されるそれぞれの手段に対して上記点数の最適化プロセスが実行され、それによりアンカー生成色のベストな組を得る。
【0071】
上記の繊細なアンカー色生成スキームに対して、最適化点数は計算すらできない、なぜならば:
τBluemin=(HBlue−LBlue)/(LBlue−LBlue)=0.57
τBluemax=(HBlue−LBlue)/(HBlue−HBlue)=0.62
の計算時に、範囲合計規則τmin+τmax<=1が破られていることが判るからである。
【0072】
以下の表IおよびIIは、τmin+τmaxを最小にし、そして従ってsRGBセンサに対する点数Sを最大にする、2つの異なるタイプの印刷インクに対するアンカー色生成スキームの最適化の結果である:
【表1】
【表2】
【0073】
従って、上記の事例に示されるように、基板への使用のためのシアン、マゼンタおよび黄色の顔料比率の選択において、上述の点数付け基準を使用することにより、シンボルの色要素(この事例ではポリゴンタイル)がシンボルの画像の中で赤、緑、青、シアン、マゼンタまたは黄色の色要素として明確に識別可能な、シンボルが得られる。1つの理由は、sRGB色空間で計測した場合、赤、緑、青の色要素は、他のRGB原色の輝度の2倍を超える赤、緑、青の輝度をそれぞれ持つ。同様にシアン色要素に対しては、青と緑の輝度は赤の輝度より共に2倍を超え;マゼンタ色要素に対しては、赤と青の輝度は緑の輝度より共に2倍を超え;そして黄色要素に対しては、赤と緑の輝度は青の輝度より共に2倍を超える。結果として、相対的閾値τminとτmaxの低い値が異なる色を頑強にそして高信頼度で分離するために使用できる。
【0074】
上記の点数付け基準を使用することによるもう1つの有利な結果は、結果として得られる色の全ての輝度が特定の低い値または特定の高い値の周りのいずれかにクラスタされ、その中間にはクラスタされないことである。例えば、表1の青のsRGB値は全て61±1の領域または151±2の領域の中にある。既存技術で既知の色スキームはこの種の性質を示さない。上記で定義された信頼性点数を使用して色セットは一般的に、信頼性点数Sreliabilityの要素:
【数12】
が任意のPCCc(赤、緑または青)に対して0.8より大きいように定義できる。
【0075】
以前述べたように、上記の色スキームは、特に色つきポリゴンタイルを使用した頂点ベースの符号化法を参照して本明細書で記載されるが、同種のスキームが他の色ベース符号化スキームで使用される他の種の色要素の生成に使用可能である。
【0076】
色点数を評価するためにsRGB色空間を使用することにより、アンカーの生成に使用される顔料の選択が、普通のスマートフォンや他の携帯型計算機器で使用される色フィルタアレイ(CFA)および画像センサの既知のスペクトル特性に関して最適化できる。異なるベンダーが異なるCFAを使用するが、約500nmでの緑フィルタと青フィルタの反応曲線の交点(即ち、緑フィルタの減衰が青フィルタの減衰と同じになる波長)と、約580nmでの緑フィルタと赤フィルタの反応曲線の交点(緑フィルタの減衰が赤フィルタの減衰と同じになる波長)とが、全ての主要ベンダー間でほとんど同一である、ことを本願発明者らは発見した。これらのスペクトル交点は照明の変化に感応しない。
【0077】
500nmと580nmの2つの安定的交点は、それらのスペクトル反射率に従って6色の1つの組を定義する:
【表3】
【0078】
特性が上記の式で特定される特性に出来るだけ近い顔料の組み合わせを選択することにより、アンカーの画像におけるR,GおよびB値の間の差異を最大にするアンカー色が得られる。具体的には、それぞれのPCC R,GおよびBに対し、Cは赤−緑および赤−青からの最大差異に関して最適化され;Cは緑−赤および緑−青からの最大差異に関して最適化され;Cは青−赤および青−緑からの最大差異に関して最適化され;「シアン」Cは緑−赤および青−赤からの最大差異に関して最適化され;「マゼンタ」Cは赤−緑および青−緑からの最大差異に関して最適化され;「黄色」Cは赤−青および緑−青からの最大差異に関して最適化される。センサの感応性に対する通常の波長領域が390nm<λ<680nm(遠赤外カットオフに起因して)に限定されるため、アンカー色組のスペクトル特性もまたこの領域に限定される。
【0079】
アンカーの生成においては、アンカーが正反射の影響を最小にするランバート反射(艶消し面)を示すことが望ましい。あるいは、照明が乏しい条件では、アンカーは高指数微小ガラスビーズで出来た光反射型クリア皮膜のような回帰反射型皮膜で覆われてもよい。カメラのフラッシュにより生成された光のような光ビームがアンカー表面から衝突すると、その皮膜は皮膜の下にあるアンカー色を反射する。
【0080】
以前述べたように、上記の色の選択は以前述べた複数のポリゴンタイルのシンボルの類のみならず、他のタイプの色ベースコンピュータ読み取り可能シンボルにも適当である。上記の実施形態は事例として引用され、本発明は本明細書で特に示されそして記載されたものに限定されないことを理解されたい。むしろ、本発明の範囲は本明細書を読んだ当業者が想起する、従来技術で開示されていない、ここに記載された種々の特徴の組み合わせおよびサブ組み合わせの両方、およびそれらの変化形および修正形を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8