特許第6640163号(P6640163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カンタツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6640163-撮像レンズ 図000008
  • 特許6640163-撮像レンズ 図000009
  • 特許6640163-撮像レンズ 図000010
  • 特許6640163-撮像レンズ 図000011
  • 特許6640163-撮像レンズ 図000012
  • 特許6640163-撮像レンズ 図000013
  • 特許6640163-撮像レンズ 図000014
  • 特許6640163-撮像レンズ 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640163
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】撮像レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20200127BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   G02B13/00
   G02B13/18
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-189361(P2017-189361)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-66571(P2019-66571A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年8月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391014055
【氏名又は名称】カンタツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関根 幸男
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 健一
(72)【発明者】
【氏名】新田 耕二
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0109692(US,A1)
【文献】 特開2016−090777(JP,A)
【文献】 特開2016−206392(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0357080(US,A1)
【文献】 特開2014−115431(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0338609(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側に向かって順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、第3レンズと、光軸近傍で物体側に凹面を向けた正の屈折力を有する第4レンズと、第5レンズと、光軸近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第6レンズから構成され、前記第2レンズは光軸近傍で物体側に凸面を向けた形状に形成され、以下の条件式(1)、(2)、(3)、(4)、および(9)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
(1)0.85<νd1/(νd2+νd3)<1.95
(2)0.15<νd5/νd6<0.55
(3)1.5<f4/f<4.0
(4)0.1<T3/T4<0.5
(9)1.0<T4/T5<6.3
ただし、
νd1:第1レンズのd線に対するアッベ数
νd2:第2レンズのd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズのd線に対するアッベ数
νd5:第5レンズのd線に対するアッベ数
νd6:第6レンズのd線に対するアッベ数
f4:第4レンズの焦点距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
T3:第3レンズの像側の面から第4レンズの物体側の面までの光軸上の距離
T4:第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離
T5:第5レンズの像側の面から第6レンズの物体側の面までの光軸上の距離
【請求項2】
物体側から像側に向かって順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、第3レンズと、光軸近傍で物体側に凹面を向けた正の屈折力を有する第4レンズと、第5レンズと、光軸近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第6レンズから構成され、前記第5レンズは光軸近傍で物体側に凸面を向けた形状に形成されるとともに、以下の条件式(3)、(4)、および(9)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
(3)1.5<f4/f<4.0
(4)0.1<T3/T4<0.5
(9)1.0<T4/T5<6.3
ただし、
f4:第4レンズの焦点距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
T3:第3レンズの像側の面から第4レンズの物体側の面までの光軸上の距離
T4:第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離
T5:第5レンズの像側の面から第6レンズの物体側の面までの光軸上の距離
【請求項3】
以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
(5)1.3<f34/f<5.1
ただし、
f34:第3レンズと第4レンズの合成焦点距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【請求項4】
以下の条件式(6)を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
(6)0.10<f1/f4<0.55
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離
f4:第4レンズの焦点距離
【請求項5】
以下の条件式(7)を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
(7)0.45<(D3/|f3|)×1000<8.00
ただし、
D3:第3レンズの光軸上の厚み
f3:第3レンズの焦点距離
【請求項6】
以下の条件式(8)を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
(8)5<(T4/TTL)×100<20
ただし、
T4:第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離
TTL:光学全長
【請求項7】
以下の条件式(10)を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
(10)5.4<|f3|/f
ただし、
f3:第3レンズの焦点距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【請求項8】
以下の条件式(11)を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
(11)1.4<|f5|/f<32.0
ただし、
f5:第5レンズの焦点距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【請求項9】
以下の条件式(12)を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
(12)−2.4<f6/f<−0.4
ただし、
f6:第6レンズの焦点距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【請求項10】
以下の条件式(13)を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
(13)Fno≦2.05
ただし、
Fno:Fナンバー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に使用されるCCDセンサやC-MOSセンサの固体撮像素子上に被写体の像を結像させる撮像レンズに係り、特に、小型化、高性能化が進むスマートフォンや携帯電話機、およびPDA(Personal Digital Assistant)やゲーム機、PC、ロボットなどの情報機器等、さらにはカメラ機能が付加された家電製品、および監視用カメラや自動車等に搭載される撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家電製品や情報端末機器、自動車や公共交通機関にカメラ機能が搭載されることが一般的となった。また、カメラ機能を融合させた商品の需要はますます高まる状況にあり、様々な商品開発が進んでいる。
【0003】
このような機器に搭載される撮像レンズは、小型でありながらも高い解像性能が求められる。例えば、以下の特許文献1、特許文献2には6枚で構成された撮像レンズが開示されている。
【0004】
特許文献1には、物体側から順に、正の屈折力を有し、物体側に凸面を向けた第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、物体側に凸面を向けた第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズと、負の屈折力を有する第5レンズと、負の屈折力を有する第6レンズとを備えた撮像レンズが開示されている。
【0005】
特許文献2には、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、負の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズと、負の屈折力を有する第5レンズと、負の屈折力を有する第6レンズとを備えた撮像レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−114803号公報
【特許文献2】特許第6085060号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、および特許文献2に記載のレンズ構成で、広角化と低背化、および低Fナンバー化を図ろうとした場合、周辺部における収差補正が非常に困難であり、良好な光学性能を得ることはできない。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、広角化と低背化、および低Fナンバー化の要求をバランスよく満足しながらも、諸収差が良好に補正された高い解像力を備える撮像レンズを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明において使用する用語に関し、レンズの面の凸面、凹面、平面とは光軸近傍(近傍)における形状を指すものと定義し、屈折力とは、近軸における屈折力を指すものと定義し、極点とは接平面が光軸と垂直に交わる光軸上以外における非球面上の点として定義する。さらに、光学全長は、最も物体側に位置する光学素子の物体側の面から撮像面までの光軸上の距離として定義し、撮像レンズと撮像面との間に配置されるIRカットフィルタやカバーガラス等の厚みは、空気換算するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による撮像レンズは、固体撮像素子上に被写体の像を結像させる撮像レンズであって、物体側から像側に向かって順に、第1レンズと、第2レンズと、第3レンズと、光軸近傍で物体側に凹面を向けた第4レンズと、第5レンズと、光軸近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第6レンズから構成される。
【0011】
上記構成の撮像レンズは、第1レンズは、屈折力を強めることで、広角化と低背化を図る。第2レンズは、第1レンズで発生する球面収差と色収差を良好に補正する。第3レンズは、コマ収差、非点収差、歪曲収差を良好に補正する。第4レンズは、光軸近傍で物体側に凹面を向けた形状にすることで、第4レンズへの光線入射角を適切に抑制し、色収差や非点収差を良好に補正する。第5レンズは、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正する。第6レンズは、光軸近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有することで、低背化を維持しながらバックフォーカスを確保する。また、色収差、歪曲収差、非点収差、像面湾曲を良好に補正する。
【0012】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第2レンズの物体側の面は、光軸近傍で物体側に凸面を向けていることが望ましい。
【0013】
第2レンズの物体側の面を光軸近傍で物体側に凸面とすることで、球面収差と非点収差を良好に補正できる。
【0014】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第5レンズの物体側の面は、光軸近傍で物体側に凸面を向けていることが望ましい。
【0015】
第5レンズの物体側の面を光軸近傍で物体側に凸面とすることで、非点収差と像面湾曲を良好に補正できる。
【0016】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
(1)0.85<νd1/(νd2+νd3)<1.95
ただし、νd1は第1レンズのd線に対するアッベ数、νd2は第2レンズのd線に対するアッベ数、νd3は第3レンズのd線に対するアッベ数である。
【0017】
条件式(1)は、第1レンズ、第2レンズ、および第3レンズそれぞれの、d線に対するアッベ数の関係について規定するものであり、良好な収差補正を図るための条件である。条件式(1)を満足することで、色収差を良好に補正できる。
【0018】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
(2)0.15<νd5/νd6<0.55
ただし、νd5は第5レンズのd線に対するアッベ数、νd6は第6レンズのd線に対するアッベ数である。
【0019】
条件式(2)は、第5レンズと第6レンズそれぞれの、d線に対するアッベ数の関係について規定するものであり、良好な収差補正を図るための条件である。条件式(2)を満足することで、色収差を良好に補正できる。
【0020】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第4レンズの屈折力は、正であることが望ましく、さらには以下の条件式(3)を満足することがより望ましい。
(3)1.5<f4/f<4.0
ただし、f4は第4レンズの焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0021】
第4レンズを正の屈折力にすることで、低背化をより容易なものとする。また、条件式(3)は、第4レンズの屈折力を規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(3)の上限値を下回ることで、第4レンズの正の屈折力が適切なものとなり、低背化が可能となる。一方、条件式(3)の下限値を上回ることで、球面収差やコマ収差を良好に補正できる。
【0022】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4)0.1<T3/T4<0.5
ただし、T3は第3レンズの像側の面から第4レンズの物体側の面までの光軸上の距離、T4は第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離である。
【0023】
条件式(4)は、第3レンズと第4レンズとの間隔、および第4レンズと第5レンズとの間隔の比について規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(4)を満足することにより、第3レンズと第4レンズとの間隔、および第4レンズと第5レンズとの間隔の差が大きくなることを抑制し、低背化が図られる。また、条件式(4)の範囲を満足することで、第4レンズは最適な位置に配置され、当該レンズによる諸収差補正機能をより効果的なものとする。
【0024】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第3レンズと第4レンズの合成屈折力は、正であることが望ましく、さらには以下の条件式(5)を満足することがより望ましい。
(5)1.3<f34/f<5.1
ただし、f34は第3レンズと第4レンズの合成焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0025】
第3レンズと第4レンズの合成屈折力を正にすることで、低背化をより容易なものとする。また、条件式(5)は、第3レンズと第4レンズの合成屈折力を規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(5)の上限値を下回ることで、第3レンズと第4レンズの正の合成屈折力が適切なものとなり、低背化が可能となる。一方、条件式(5)の下限値を上回ることで、非点収差と歪曲収差を良好に補正できる。
【0026】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
(6)0.10<f1/f4<0.55
ただし、f1は第1レンズの焦点距離、f4は第4レンズの焦点距離である。
【0027】
条件式(6)は、第1レンズの焦点距離と第4レンズの焦点距離の比について規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(6)の上限値を下回ることで、第4レンズの焦点距離が短くなり過ぎることを防ぎ、主点位置を物体側に移動させることができる。その結果、低背化が可能となる。また、像面湾曲や歪曲収差を良好に補正できる。一方、条件式(6)の下限値を上回ることで、第1レンズの焦点距離が短くなり過ぎることを防ぎ、球面収差やコマ収差を良好に補正できる。
【0028】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
(7)0.45<(D3/|f3|)×1000<8.00
ただし、D3は第3レンズの光軸上の厚み、f3は第3レンズの焦点距離である。
【0029】
条件式(7)は、第3レンズの光軸上の厚みを適切な範囲に規定するものであり、第3レンズの成型性を良好に保ちつつ、低背化を図るための条件である。条件式(7)の上限値を下回ることで、第3レンズの光軸上の厚さが厚くなり過ぎることを防ぎ、第3レンズの物体側、および像側の空気間隔の確保を容易にする。その結果、低背化を維持できる。一方、条件式(7)の下限値を上回ることで、第3レンズの光軸上の厚みが薄くなり過ぎることを防ぎ、レンズの成型性を良好にする。
【0030】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8)5<(T4/TTL)×100<20
ただし、T4は第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離、TTLは光学全長である。
【0031】
条件式(8)は、第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離を規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(8)の範囲を満足することで、光学全長を短くしながらコマ収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正できる。
【0032】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
(9)1.0<T4/T5<6.3
ただし、T4は第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離、T5は第5レンズの像側の面から第6レンズの物体側の面までの光軸上の距離である。
【0033】
条件式(9)は、第4レンズと第5レンズとの間隔、および第5レンズと第6レンズとの間隔の比について規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(9)を満足することにより、第4レンズと第5レンズとの間隔、および第5レンズと第6レンズとの間隔の差が大きくなることを抑制し、低背化が図られる。また、条件式(9)の範囲を満足することで、第5レンズは最適な位置に配置され、当該レンズによる諸収差補正機能をより効果的なものとする。
【0034】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
(10)5.4<|f3|/f
ただし、f3は第3レンズの焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0035】
条件式(10)は、第3レンズの屈折力を規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(10)の下限値を上回ることで、光学全長を短くしつつ、コマ収差と非点収差を良好に補正できる。
【0036】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(11)を満足することが望ましい。
(11)1.4<|f5|/f<32.0
ただし、f5は第5レンズの焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0037】
条件式(11)は、第5レンズの屈折力を規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(11)の範囲を満足することで、光学全長を短くしつつ、色収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正できる。
【0038】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(12)を満足することが望ましい。
(12)−2.4<f6/f<−0.4
ただし、f6は第6レンズの焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0039】
条件式(12)は、第6レンズの屈折力を規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(12)の上限値を下回ることで、第6レンズの負の屈折力が適切なものとなり、低背化が可能となる。一方、条件式(12)の下限値を上回ることで、色収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正できる。
【0040】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(13)を満足することが望ましい。
(13)Fno≦2.05
ただし、FnoはFナンバーである。
【0041】
条件式(13)は、Fナンバーを規定するものであり、条件式(13)の上限値以下にすることにより、携帯モバイルやデジタルカメラ、監視用カメラ、車載用カメラ等に搭載した際、近年撮像レンズに要求される明るさを十分確保することが可能となる。
【0042】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第2レンズは、光軸近傍でメニスカス形状であることが望ましい。
【0043】
第2レンズを光軸近傍でメニスカス形状にすることで、色収差、球面収差、コマ収差、像面湾曲を良好に補正できる。
【0044】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第4レンズは、光軸近傍でメニスカス形状であることが望ましい。
【0045】
第4レンズを光軸近傍でメニスカス形状にすることで、色収差、球面収差、歪曲収差を良好に補正できる。
【0046】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、前記第6レンズの像側の面は、光軸上以外の位置に極点を有する非球面が形成されていることが望ましい。
【0047】
第6レンズの像側の面に、光軸上以外の位置に極点を形成することにより、像面湾曲や歪曲収差を良好に補正できる。
【0048】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(14)を満足することが望ましい。
(14)−41.0<(1−N5)/(r10×f)×1000<0.8
ただし、N5は第5レンズのd線における屈折率、r10は第5レンズの像側の面の近軸曲率半径、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0049】
条件式(14)は、第5レンズの像側の面の屈折力を適切な範囲に規定するものであり、良好な収差補正と製造誤差に対する感度の低減を図るための条件である。条件式(14)を満足することで、第5レンズの像側の面の屈折力が適切なものとなり、第5レンズで発生する球面収差を抑制する効果と、製造誤差に対する感度を低減させる効果が得られる。
【0050】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの屈折力は、正であることが望ましく、さらには以下の条件式(15)を満足することがより望ましい。
(15)0.35<f1/f<1.35
ただし、f1は第1レンズの焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0051】
第1レンズの屈折力を正にすることで、低背化をより容易なものとする。また、条件式(15)は、第1レンズの屈折力を規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(15)の上限値を下回ることで、第1レンズの正の屈折力が適切なものとなり、低背化が可能となる。一方、条件式(15)の下限値を上回ることで、球面収差やコマ収差を良好に補正できる。
【0052】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第2レンズの屈折力は、負であることが望ましく、さらには以下の条件式(16)を満足することがより望ましい。
(16)−4.7<f2/f<−0.8
ただし、f2は第2レンズの焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0053】
第2レンズの屈折力を負にすることで、球面収差と色収差を良好に補正する。また、条件式(16)は、第2レンズの屈折力を規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(16)の上限値を下回ることで、第2レンズの負の屈折力が適切なものとなり、低背化が可能となる。一方、条件式(16)の下限値を上回ることで、色収差と球面収差を良好に補正できる。
【0054】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズと第2レンズの合成屈折力は、正であることが望ましく、さらには以下の条件式(17)を満足することがより望ましい。
(17)0.5<f12/f<1.7
ただし、f12は第1レンズと第2レンズの合成焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0055】
第1レンズと第2レンズの合成屈折力を正にすることで、低背化をより容易なものとする。また、条件式(17)は、第1レンズと第2レンズの合成屈折力を規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(17)の上限値を下回ることで、第1レンズと第2レンズの正の合成屈折力が適切なものとなり、低背化が可能となる。一方、条件式(17)の下限値を上回ることで、球面収差やコマ収差を良好に補正できる。
【0056】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第2レンズと第3レンズと第4レンズの合成屈折力は、負であることが望ましく、さらには以下の条件式(18)を満足することがより望ましい。
(18)f234/f<−2.65
ただし、f234は第2レンズと第3レンズと第4レンズの合成焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0057】
第2レンズと第3レンズと第4レンズの合成屈折力を負にすることで、色収差を良好に補正する。また、条件式(18)は、第2レンズと第3レンズと第4レンズの合成屈折力を規定するものであり、低背化と良好な収差補正を図るための条件である。条件式(18)の上限値を下回ることで、第2レンズと第3レンズと第4レンズの負の合成屈折力が適切なものとなり、低背化が可能となる。また、球面収差や非点収差を良好に補正できる。
【発明の効果】
【0058】
本発明により、広角化、低背化、低Fナンバー化の要求をバランスよく満足しながらも、諸収差が良好に補正された解像力の高い撮像レンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明の実施例1の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施例1の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図3】本発明の実施例2の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図4】本発明の実施例2の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図5】本発明の実施例3の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図6】本発明の実施例3の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図7】本発明の実施例4の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図8】本発明の実施例4の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0061】
図1図3図5、および図7はそれぞれ、本発明の実施形態の実施例1から4に係る撮像レンズの概略構成図を示している。
【0062】
図1に示すように、本実施形態の撮像レンズは、物体側から像側に向かって順に、第1レンズL1と、第2レンズL2と、第3レンズL3と、光軸Xの近傍で物体側に凹面を向けた第4レンズL4と、第5レンズL5と、光軸Xの近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第6レンズL6から構成される。
【0063】
また、第6レンズL6と撮像面IMG(すなわち、撮像素子の撮像面)との間には赤外線カットフィルタやカバーガラス等のフィルタIRが配置されている。なお、このフィルタIRは省略することが可能である。
【0064】
開口絞りSTは、第1レンズL1の前方に配置することで、諸収差の補正を容易にするとともに、高像高の光線が撮像素子に入射する際の角度の制御を容易にしている。
【0065】
第1レンズL1は、正の屈折力を有するレンズであり、正の屈折力を有することで低背化を図っている。第1レンズL1の形状は、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状にしているため、球面収差と歪曲収差の良好な補正が図られている。
【0066】
第2レンズL2は、負の屈折力を有するレンズであり、第1レンズL1で発生する球面収差と色収差を良好に補正している。第2レンズL2の形状は、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状にしているため、色収差、球面収差、非点収差、コマ収差、像面湾曲の良好な補正が図られている。
【0067】
第3レンズL3は、正の屈折力を有するレンズであり、低背化を維持しながらコマ収差、非点収差、歪曲収差を良好に補正している。第3レンズL3の形状は、光軸Xの近傍で物体側、および像側が凸面の両凸形状にしているため、物体側、および像側の面の正の屈折力によって、低背化を図ることができる。また、両面を凸面にすることで強い曲率になることを抑え、製造誤差に対する感度を低減させる効果が得られる。なお、第3レンズL3の屈折力は、図3図5、および図7に示す実施例2、実施例3、および実施例4のように、負であってもよい。この場合、色収差をより良好に補正することができる。また、第3レンズL3の形状は、図3図5、および図7に示す実施例2、実施例3、および実施例4のように、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状でもよい。この場合、非点収差、像面湾曲、歪曲収差をより良好に補正することができる。
【0068】
第4レンズL4は、正の屈折力を有するレンズであり、低背化を維持しながら球面収差や色収差を良好に補正している。第4レンズL4の形状は、光軸Xの近傍で物体側に凹面を向けたメニスカス形状にしているため、第4レンズL4への光線入射角を適切に抑制し、色収差、球面収差、歪曲収差、非点収差の良好な補正が図られている。
【0069】
第5レンズL5は、正の屈折力を有するレンズであり、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正している。第5レンズL5の形状は、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状にしているため、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が図られている。なお、第5レンズL5の屈折力は、図7に示す実施例4のように、負であってもよい。この場合、色収差をより良好に補正することができる。また、第5レンズL5の形状は、図3に示す実施例2
のように、光軸Xの近傍で物体側、および像側が凸面の両凸形状でもよい。この場合、物体側、および像側の面の正の屈折力によって、低背化をより容易なものとする。また、両面を凸面にすることで強い曲率になることを抑え、製造誤差に対する感度を低減させる効果が得られる。
【0070】
第6レンズL6は、負の屈折力を有するレンズであり、低背化を維持しながらバックフォーカスを確保している。第6レンズL6の形状は、光軸Xの近傍で像側に凹面を向けたメニスカス形状にしているため、低背化とバックフォーカスの確保の両立が図れている。また、色収差、歪曲収差、非点収差、像面湾曲の良好な補正が図られている。さらに、第6レンズL6の像側の面に、光軸X上以外の位置に極点を形成しているため、像面湾曲や歪曲収差をより良好に補正している。
【0071】
本実施の形態に係る撮像レンズは、すべてのレンズが単レンズで構成されている。接合レンズを含まない構成は、非球面を多用することができるため、諸収差の良好な補正を容易にする。また、接合に係る工数が不要のため、低コストで製作することが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態に係る撮像レンズは、すべてのレンズにプラスチック材料を採用することで製造を容易にし、低コストでの大量生産を可能にしている。さらに、すべてのレンズの両面に適切な非球面を形成しており、諸収差をより良好に補正している。
【0073】
なお、採用するレンズ材料はプラスチック材料に限定されるものではない。ガラス材料を採用することで、さらなる高性能化を目指すことも可能である。また、すべてのレンズ面を非球面で形成することが望ましいが、要求される性能によっては、製造が容易な球面を採用してもよい。
【0074】
本実施形態における撮像レンズは、以下の条件式(1)から(18)を満足することにより、好ましい効果を奏するものである。
(1)0.85<νd1/(νd2+νd3)<1.95
(2)0.15<νd5/νd6<0.55
(3)1.5<f4/f<4.0
(4)0.1<T3/T4<0.5
(5)1.3<f34/f<5.1
(6)0.10<f1/f4<0.55
(7)0.45<(D3/|f3|)×1000<8.00
(8)5<(T4/TTL)×100<20
(9)1.0<T4/T5<6.3
(10)5.4<|f3|/f
(11)1.4<|f5|/f<32.0
(12)−2.4<f6/f<−0.4
(13)Fno≦2.05
(14)−41.0<(1−N5)/(r10×f)×1000<0.8
(15)0.35<f1/f<1.35
(16)−4.7<f2/f<−0.8
(17)0.5<f12/f<1.7
(18)f234/f<−2.65
ただし、
νd1:第1レンズL1のd線に対するアッベ数
νd2:第2レンズL2のd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズL3のd線に対するアッベ数
νd5:第5レンズL5のd線に対するアッベ数
νd6:第6レンズL6のd線に対するアッベ数
D3:第3レンズL3の光軸X上の厚み
T3:第3レンズL3の像側の面から第4レンズL4の物体側の面までの光軸X上の距離
T4:第4レンズL4の像側の面から第5レンズL5の物体側の面までの光軸X上の距離
T5:第5レンズL5の像側の面から第6レンズL6の物体側の面までの光軸X上の距離
N5:第5レンズL5のd線における屈折率
TTL:光学全長
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f1:第1レンズL1の焦点距離
f2:第2レンズL2の焦点距離
f3:第3レンズL3の焦点距離
f4:第4レンズL4の焦点距離
f5:第5レンズL5の焦点距離
f6:第6レンズL6の焦点距離
f12:第1レンズL1と第2レンズL2の合成焦点距離
f34:第3レンズL3と第4レンズL4の合成焦点距離
f234:第2レンズL2と第3レンズL3と第4レンズL4の合成焦点距離
r10:第5レンズL5の像側の面の近軸曲率半径
Fno:Fナンバー
なお、上記の各条件式をすべて満足する必要はなく、それぞれの条件式を単独に満たすことで、各条件式に対応した作用効果を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態における撮像レンズは、以下の条件式(1a)から(18a)を満足することにより、より好ましい効果を奏するものである。
(1a)1.10<νd1/(νd2+νd3)<1.65
(2a)0.27<νd5/νd6<0.46
(3a)2.0<f4/f<3.6
(4a)0.2<T3/T4<0.4
(5a)2.0<f34/f<4.2
(6a)0.17<f1/f4<0.43
(7a)0.75<(D3/|f3|)×1000<6.40
(8a)7<(T4/TTL)×100<17
(9a)1.35<T4/T5<5.20
(10a)8.1<|f3|/f
(11a)2.1<|f5|/f<27.0
(12a)−2.0<f6/f<−0.6
(13a)Fno≦1.95
(14a)−34.0<(1−N5)/(r10×f)×1000<0.7
(15a)0.53<f1/f<1.10
(16a)−3.9<f2/f<−1.2
(17a)0.8<f12/f<1.40
(18a)f234/f<−4.00
ただし、各条件式の符号は前の段落での説明と同様である。
【0076】
本実施形態において、レンズ面の非球面に採用する非球面形状は、光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、近軸曲率半径をR、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16、A18、A20としたとき数式1により表わされる。
【0077】
【数1】
【0078】
次に、本実施形態に係る撮像レンズの実施例を示す。各実施例において、fは撮像レンズ全系の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角を、ihは最大像高を、TTLは光学全長をそれぞれ示す。また、iは物体側から数えた面番号、rは曲率半径、dは光軸上のレンズ面間の距離(面間隔)、Ndはd線(基準波長)の屈折率、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面に関しては、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示す。
【0079】
(実施例1)
【0080】
基本的なレンズデータを以下の表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例1の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)から(18)を満たしている。
【0083】
図2は実施例1の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。球面収差図は、F線(486nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面Sにおけるd線の収差量(実線)、タンジェンシャル像面Tにおけるd線の収差量(破線)をそれぞれ示している(図4図6図8においても同じ)。
【0084】
(実施例2)
【0085】
基本的なレンズデータを以下の表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
実施例2の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)から(18)を満たしている。
【0088】
図4は実施例2の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0089】
(実施例3)
【0090】
基本的なレンズデータを以下の表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
実施例3の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)から(18)を満たしている。
【0093】
図6は実施例3の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0094】
(実施例4)
【0095】
基本的なレンズデータを以下の表4に示す。
【0096】
【表4】
【0097】
実施例4の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)から(18)を満たしている。
【0098】
図8は実施例4の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0099】
表5に実施例1から実施例4に係る条件式(1)から(18)の値を示す。
【0100】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る撮像レンズを、カメラ機能を備える製品へ適用した場合、当該カメラの広角化、低背化、および低Fナンバー化への寄与とともに、高性能化を図ることができる。
【符号の説明】
【0102】
ST 開口絞り
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
ih 最大像高
IR フィルタ
IMG 撮像面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8