(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
旋回の最大出力が小さくなるようにする制御が開始された場合、前記第2表示部に表示される旋回の最大出力が小さくされていることを示す情報は、前記温度検出部が検出した温度が高温であることで、旋回の最大出力が小さくされていることを示すメッセージである、
請求項1又は2に記載のショベル。
旋回の最大出力が小さくなるようにする制御が開始された場合、前記第2表示部に表示される旋回の最大出力が小さくされていることを示す情報は、前記温度検出部が検出した温度が低温であることで、前記温度検出部が検出した温度を上昇させる暖機を実行していることを示すメッセージである、
請求項1又は2に記載のショベル。
前記第1表示部は、前記温度検出部が検出した温度が適温である状態と、前記温度検出部が検出した温度が前記適温より高い温度である高温状態と、前記温度検出部が検出した温度が前記適温より低い温度である低温状態とを区別可能に表示し、
前記制御装置は、前記高温状態及び前記低温状態のときに、旋回の最大出力が小さくなるように制御するように構成されている、
請求項1乃至4の何れかに記載のショベル。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド式ショベルを示す側面図である。ハイブリッド式ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの1例である掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
【0010】
図2は、本発明の実施例に係るハイブリッド式ショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。
図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細実線でそれぞれ示されている。
【0011】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
【0012】
メインポンプ14は、ショベルにおける油圧駆動系の構成要素であり、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0013】
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う油圧制御装置である。油圧アクチュエータとしての右側走行用油圧モータ1R、左側走行用油圧モータ1L、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
【0014】
電動発電機12には、電動発電機制御部としてのインバータ18を介して、蓄電器としてのキャパシタを含む蓄電系120が接続される。また、蓄電系120には、電動発電機制御部としてのインバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。旋回用電動機21と、インバータ20と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回変速機24とで負荷駆動系が構成される。
【0015】
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。
【0016】
圧力センサ29は、操作装置26の操作内容を圧力の形で検出するセンサであり、検出値をコントローラ30に対して出力する。また、エンジンセンサ29Aは、エンジン11の吸気温度、エンジン回転数等のエンジン11に関するデータを検出するセンサであり、検出値をコントローラ30に対して出力する。
【0017】
温度検出部としての温度センサS1〜S6は、例えばサーミスタで構成され、各検出値をコントローラ30に対して出力する。具体的には、温度センサS1は、電動発電機12の温度(電動発電機温度)を検出する。また、温度センサS2は、インバータ18の温度(第1インバータ温度)を検出する。また、温度センサS3は、旋回用電動機21の温度(旋回用電動機温度)を検出する。また、温度センサS4は、インバータ20の温度(第2インバータ温度)を検出する。また、温度センサS5は、蓄電系120に含まれる昇降圧コンバータ100の温度(コンバータ温度)を検出する。また、温度センサS6は、蓄電系120に含まれるキャパシタ19の温度(キャパシタ温度)を検出する。例えば、電動発電機12及び旋回用電動機21の温度を測定する温度センサS1、S3では、発熱源であるステータ部にサーミスタが取り付けられる。また、キャパシタ19の温度を測定する温度センサS6では、発熱源であるキャパシタセルの電極にサーミスタが取り付けられる。なお、インバータ18、インバータ20、昇降圧コンバータ100の温度を測定する温度センサS2、S4、S5では、IPM等の発熱源にサーミスタを直接的に取り付けずに、各装置の筐体内の雰囲気温度を検出するようにサーミスタが取り付けられてもよい。
【0018】
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う制御装置である。本実施例では、コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、内部メモリに格納されたプログラムをCPUに実行させることにより各種機能を実現する。
【0019】
例えば、コントローラ30は、圧力センサ29、エンジンセンサ29A、温度センサS1〜S6等からの検出値を受けて各種演算を実行し、エンジン11、メインポンプ14、インバータ18、20、出力部50、冷却系70、蓄電系120等に各種指令を出力する。
【0020】
出力部50は、ショベルの操作者に対して各種情報を出力するための装置である。本実施例では、出力部50は、キャビン10内に設置される液晶ディスプレイ及びスピーカを含み、ショベルの運転状態を操作者に知らせる。
【0021】
冷却系70は、冷却回路内で冷却液を循環させて少なくとも1つの電気機器と蓄電器とを含む複数の冷却対象を冷却するシステムである。本実施例では、冷却系70は、電動発電機12、変速機13、インバータ18、キャパシタ19、インバータ20、旋回用電動機21、コントローラ30、及び昇降圧コンバータ100を冷却する。
【0022】
図3は蓄電系120の構成を示すブロック図である。蓄電系120は、第1の蓄電器としてのキャパシタ19と、昇降圧コンバータ100と、バスライン(第2の蓄電器)としてのDCバス110とを含む。なお、第1の蓄電器は、電力を充放電可能な装置であり、例えば、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池等を含む。
【0023】
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。なお、DCバス110の電圧は、DCバス電圧検出部111によって検出される。DCバス110は、インバータ18及び20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。また、昇降圧コンバータ100にも、昇降圧コンバータ100の温度を検出するための温度検出部としての温度センサS5が設けられている。なお、温度センサS5及び温度センサS6は、例えばサーミスタで構成され、各検出値をコントローラ30に対して出力する。また、キャパシタ19の温度は、キャパシタ19の冷却に用いられる冷却水の温度を検出することで間接的に検出されてもよい。また、キャパシタ19の温度に影響する冷却水以外の他の熱媒体の温度を検出することで間接的に検出されてもよい。
【0024】
なお、温度センサS5、温度センサS6、DCバス電圧検出部111、キャパシタ電圧検出部112、キャパシタ電流検出部113は、検出値をコントローラ30に対して出力する。
【0025】
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。この場合、圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
【0026】
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(アシスト運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。
【0027】
この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電流値に基づいて行われる。
【0028】
以上のような構成において、アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18を介して蓄電系120のDCバス110に供給された後、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給され、或いは、インバータ20を介して旋回用電動機21に供給され得る。また、旋回用電動機21が回生運転して生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給された後、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給され、或いは、インバータ18を介して電動発電機12に供給され得る。また、キャパシタ19に蓄積された電力は、昇降圧コンバータ100及びDCバス110を介して電動発電機12及び旋回用電動機21の少なくとも一方に供給され得る。
【0029】
図4は、蓄電系120の回路図である。昇降圧コンバータ100は、リアクトル101、昇圧用IGBT102A、降圧用IGBT102B、キャパシタ19を接続するための電源接続端子104、インバータ18、20を接続するための一対の出力端子106、及び、一対の出力端子106に並列に挿入される平滑用のコンデンサ107を備える。昇降圧コンバータ100の一対の出力端子106とインバータ18、20との間は、DCバス110によって接続される。
【0030】
リアクトル101の一端は昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの中間点に接続され、他端は電源接続端子104に接続される。リアクトル101は、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴って生じる誘導起電力をDCバス110に供給するために設けられている。
【0031】
昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、コントローラ30により、ゲート端子にPWM電圧が印加されることによって駆動される。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bには、整流素子であるダイオード102a及び102bが並列接続される。
【0032】
キャパシタ19は、昇降圧コンバータ100を介してDCバス110との間で電力の授受が行えるように、充放電可能な蓄電器であればよい。なお、
図4には、蓄電器としてキャパシタ19を示すが、キャパシタ19の代わりに、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池、リチウムイオンキャパシタ、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源が蓄電器として用いられてもよい。
【0033】
電源接続端子104及び出力端子106は、キャパシタ19及びインバータ18、20が接続可能な端子であればよい。一対の電源接続端子104の間には、キャパシタ電圧を検出するキャパシタ電圧検出部112が接続される。一対の出力端子106の間には、DCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部111が接続される。
【0034】
キャパシタ電圧検出部112は、キャパシタ19の電圧値(vbat_det)を検出する。DCバス電圧検出部111は、DCバス110の電圧(以下、DCバス電圧:vdc_det)を検出する。平滑用のコンデンサ107は、出力端子106の正極端子と負極端子との間に挿入され、DCバス電圧を平滑化するための蓄電素子である。この平滑用のコンデンサ107によって、DCバス110の電圧は予め定められた電圧に維持されている。キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19に流れる電流の値を検出する検出手段であり、電流検出用の抵抗器を含む。すなわち、キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19に流れる電流値(ibat_det)を検出する。
【0035】
次に、
図5を参照し、コントローラ30の概略について説明する。本実施例では、コントローラ30は制御モード切替部30Fを有する。制御モード切替部30Fは、温度検出部としての温度センサS1〜S6のそれぞれの出力に基づいてショベルの制御モードを切り替える。例えば、制御モード切替部30Fは、電動発電機温度、第1インバータ温度、旋回用電動機温度、第2インバータ温度、昇降圧コンバータ温度、及びキャパシタ温度を監視し、これらの温度のうちの少なくとも1つが所定の温度を上回った場合にショベルの制御モードを切り替える。例えば、制御モード切替部30Fは、旋回用電動機21の動きを制限しない通常旋回モードを、旋回用電動機21の出力を制限する旋回制限モードに切り替える。或いは、制御モード切替部30Fは、冷却系70を構成する冷却液ポンプの作動を停止させる冷却液ポンプ停止モードを、冷却液ポンプを作動させる冷却液ポンプ作動モードに切り替える。
【0036】
また、制御モード切替部30Fは、制御モードを切り替えた後で、電動発電機温度、第1インバータ温度、旋回用電動機温度、第2インバータ温度、昇降圧コンバータ温度、及びキャパシタ温度の全てが所定の温度以下となった場合にショベルの制御モードを元に戻してもよい。例えば、制御モード切替部30Fは、旋回制限モードを通常旋回モードに切り替えてもよい。或いは、制御モード切替部30Fは、冷却液ポンプ作動モードを冷却液ポンプ停止モードに切り替えてもよい。
【0037】
図6は、コントローラ30が旋回用電動機21の駆動制御を行う際に用いられる機能要素を示す。なお、本実施例では、コントローラ30は、主に、旋回制御部30A及び旋回制限制御部30Bを有する。
【0038】
旋回制御部30Aは、速度指令生成部31、減算器32、PI制御部33、トルク制限部34、減算器35、PI制御部36、電流変換部37、旋回動作検出部38、及びPWM信号生成部40を有する。
【0039】
速度指令生成部31は、圧力センサ29から入力される電気信号に基づいて速度指令値を生成する。また、速度指令生成部31は、旋回制限制御部30Bから入力される速度指令リミット値を用いて速度指令値を速度指令リミット値以下に制限する。具体的には、生成した速度指令値が速度指令リミット値以上であれば速度指令リミット値を速度指令値として採用し、生成した速度指令値が速度指令リミット値未満であればその速度指令値をそのまま採用する。そして、速度指令生成部31は、採用した速度指令値を減算器32に対して出力する。
【0040】
減算器32は、速度指令値と旋回速度の現在値との偏差をPI制御部33に対して出力する。旋回速度の現在値は、例えば旋回動作検出部38が算出する値である。なお、旋回動作検出部38は、旋回用電動機21の回転位置の変化に基づいて旋回速度値を算出し、減算器32に出力する。また、旋回用電動機21の回転位置の変化は、レゾルバ22によって検出される。
【0041】
PI制御部33は、減算器32から入力される偏差に基づいてPI制御を実行する。具体的には、PI制御部33は、旋回速度の現在値が速度指令値に近づくようにトルク電流指令値を生成する。そして、PI制御部33は、生成したトルク電流指令値をトルク制限部34に対して出力する。
【0042】
トルク制限部34は、旋回制限制御部30Bから入力されるトルクリミット値を用いて、PI制御部33から入力されるトルク電流指令値をトルクリミット値以下に制限する。具体的には、トルク電流指令値がトルクリミット値以上であればトルクリミット値をトルク電流指令値として採用し、トルク電流指令値がトルクリミット値未満であればそのトルク電流指令値をそのまま採用する。そして、トルク制限部34は、採用したトルク電流指令値を減算器35に対して出力する。
【0043】
減算器35は、トルク電流指令値とトルク電流の現在値との偏差をPI制御部36に対して出力する。トルク電流の現在値は、例えば電流変換部37が算出する値である。なお、電流変換部37は、旋回用電動機21を流れるモータ駆動電流の値を検出し、検出したモータ駆動電流の値をトルク電流指令値と比較可能な値に変換して減算器35に出力する。
【0044】
PI制御部36は、減算器35から入力される偏差に基づいてPI制御を実行する。具体的には、PI制御部36は、トルク電流の現在値がトルク電流指令値に近づくようにインバータ20を駆動するための駆動指令値を生成する。そして、PI制御部36は、生成した駆動指令値をPWM信号生成部40に対して出力する。
【0045】
PWM信号生成部40は、PI制御部36から入力される駆動指令値に基づいて、インバータ20のトランジスタをスイッチング制御するためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号をインバータ20に対して出力する。
【0046】
旋回制限制御部30Bは、制御モード切替部30Fの一例であり、主に、旋回出力制御部41及び通知部42を有する。
【0047】
旋回出力制御部41は、旋回用電動機21に関連する構成要素(以下、「旋回関連構成要素」とする。)の温度に応じて旋回用電動機21の出力を制御する機能要素である。本実施例では、旋回関連構成要素は、電動発電機12、インバータ18、旋回用電動機21、インバータ20、昇降圧コンバータ100、及びキャパシタ19等の高電圧部品を含む。また、旋回関連構成要素の温度は、電動発電機12に関する温度、蓄電系120に関する温度、及び旋回用電動機21に関する温度を含む。また、電動発電機12に関する温度は、電動発電機12の温度及びインバータ18の温度を含み、蓄電系120に関する温度は、キャパシタ19の温度及び昇降圧コンバータ100の温度を含み、旋回用電動機21に関する温度は、旋回用電動機21の温度及びインバータ20の温度を含む。
【0048】
また、旋回出力制御部41は、温度センサS1〜S6のそれぞれの検出値に基づいて導き出される旋回出力制限値を用いて旋回用電動機21の出力を制御する。旋回出力制限値は、旋回用電動機21の出力を制限するために用いる値であり、例えば、速度指令生成部31に対する速度指令リミット値、速度指令生成部31に対する最大速度リミット値、トルク制限部34に対するトルクリミット値、インバータ20に対する出力リミット値の形をとり得る。なお、旋回出力制限値は、値が大きいほど旋回出力制限が緩く、値が小さいほど旋回出力制限が厳しいことを意味する。
【0049】
また、本実施例では、旋回出力制御部41は、旋回中に旋回出力制限値を更新することはない。操作フィーリングが悪化するのを防止するためである。具体的には、旋回出力制御部41は、旋回加速直前の旋回停止時における旋回出力制限値を用いて旋回用電動機21の出力を制御し、旋回中はその旋回出力制限値を維持する。
【0050】
図7は、旋回出力制御部41による旋回用電動機21の出力制御の内容を説明する概念図である。具体的には、旋回出力制御部41は、温度センサS1が検出する電動発電機12の温度(電動発電機温度)から第1旋回出力制限値を導き出し、温度センサS2が検出するインバータ18の温度(第1インバータ温度)から第2旋回出力制限値を導き出す。また、旋回出力制御部41は、温度センサS3が検出する旋回用電動機21の温度(旋回用電動機温度)から第3旋回出力制限値を導き出し、温度センサS4が検出するインバータ20の温度(第2インバータ温度)から第4旋回出力制限値を導き出す。また、旋回出力制御部41は、温度センサS5が検出する昇降圧コンバータ100の温度(昇降圧コンバータ温度)から第5旋回出力制限値を導き出し、温度センサS6が検出するキャパシタ19の温度(キャパシタ温度)から第6旋回出力制限値を導き出す。なお、旋回出力制御部41は、キャパシタ温度から第6旋回出力制限値を導き出す代わりに、キャパシタ19の冷却に用いられる冷却水の温度から第6旋回出力制限値を導き出してもよい。この場合、以下の「キャパシタ温度」は「冷却水温度」で読み替えられる。
【0051】
そして、旋回出力制御部41は、第1〜第6旋回出力制限値のうちの最小値を最終旋回出力制限値として導き出す。
【0052】
その後、旋回出力制御部41は、最終旋回出力制限値に対応する出力リミット値をインバータ20に対して出力する。出力リミット値は、例えば、電力[kW]、電流[A]、電圧[V]等に関する値である。なお、旋回出力制御部41は、出力リミット値に加えて或いはその代わりに、最終旋回出力制限値に対応する速度指令リミット値を速度指令生成部31に対して出力してもよく、最終旋回出力制限値に対応するトルクリミット値をトルク制限部34に対して出力してもよく、最終旋回出力制限値に対応する最大速度リミット値を速度指令生成部31に対して出力してもよい。速度指令リミット値は、主に、速度指令値を制限し、PI制御部33で生成されるトルク電流指令値を制限するために用いられ、トルクリミット値は、主に、旋回加速度の最大値を制限するために用いられ、最大速度リミット値は、主に、旋回速度の最大値を制限するために用いられる。
【0053】
また、旋回出力制御部41は、最終旋回出力制限値を小さくして旋回用電動機21の出力を制限した場合には、メインポンプ14の出力を同時に制限してもよい。旋回機構2の動きが制限されるのに合わせてアタッチメントの動きを制限することで、旋回機構2の動きだけが鈍くなるといった操作フィーリングの悪化を防止するためである。
【0054】
図8は、温度センサS1〜S6のそれぞれの検出値と第1〜第6旋回出力制限値との関係を表す対応マップである。具体的には、
図8(A)の対応マップは、電動発電機温度と第1旋回出力制限値との関係を表し、
図8(B)の対応マップは、第1インバータ温度と第2旋回出力制限値との関係を表す。また、
図8(C)の対応マップは、旋回用電動機温度と第3旋回出力制限値との関係を表し、
図8(D)の対応マップは、第2インバータ温度と第4旋回出力制限値との関係を表す。また、
図8(E)の対応マップは、昇降圧コンバータ温度と第5旋回出力制限値との関係を表し、
図8(F)の対応マップは、キャパシタ温度と第6旋回出力制限値との関係を表す。
図8(A)〜
図8(F)に示す対応マップは、例えばコントローラ30の内部メモリに格納されている。旋回出力制御部41は、
図8(A)〜
図8(F)に示す対応マップを参照し、電動発電機温度、第1インバータ温度、旋回用電動機温度、第2インバータ温度、昇降圧コンバータ温度、及びキャパシタ温度のそれぞれに対応する第1〜第6旋回出力制限値を導き出す。
【0055】
具体的には、旋回出力制御部41は、
図8(A)に示すように、電動発電機温度が所定の高温側制限開始温度tr1以下であれば、第1旋回出力制限値として最大値Pmaxを導き出す。なお、高温側制限開始温度tr1は、電動発電機12の過熱に起因する旋回出力制限の要否を判定するための閾値である。また、最大値Pmaxである最終旋回出力制限値を用いた旋回用電動機21の制御モードは通常旋回モードに相当し、最大値Pmax未満の最終旋回出力制限値を用いた旋回用電動機21の制御モードは旋回制限モードに相当する。
【0056】
また、旋回出力制御部41は、電動発電機温度が高温側制限開始温度tr1を超えて徐々に上昇すると、第1旋回出力制限値として導き出す値を最大値Pmaxから徐々に低下させる。電動発電機12が過熱された状態で旋回用電動機21を最大出力で動作させないようにするためである。そして、旋回出力制御部41は、電動発電機温度が所定の停止温度ts1に達した場合に第1旋回出力制限値として最小値Pmin(例えば値ゼロである。)を導き出す。なお、停止温度ts1は、旋回用電動機21の停止の要否を判定するための閾値であり、このまま電動発電機12を作動させ続けて電動発電機温度をさらに上昇させると電動発電機12の故障を引き起こすおそれがある温度である。
【0057】
なお、第1旋回出力制限値を徐々に低下させるのは、旋回用電動機21の動きが急変しないようにするためである。また、旋回用電動機21の動きが急変するのを防止するにはより広い温度範囲にわたって第1旋回出力制限値を徐々に低下させることが有効である。しかし、過度に広い温度範囲にわたって第1旋回出力制限値を徐々に低下させる構成、例えば高温側制限開始温度tr1を過度に低めに設定した構成では、電動発電機温度が比較的低いにもかかわらず旋回用電動機21の動きが制限されてしまう。そのため、高温側制限開始温度tr1は、ショベルの操作性と電動発電機12の過熱予防性のバランスを考慮して適切に設定されるのが望ましい。
【0058】
また、第1旋回出力制限値として最小値Pminを導き出した場合、旋回出力制御部41は、第2〜第6旋回出力制限値の大きさにかかわらず、最終旋回出力制限値として最小値Pminを導き出す。最小値Pminは、最終旋回出力制限値が取り得る最小値のためである。この場合、旋回出力制御部41は、インバータ20に対してオフ指令を出力してインバータ20の出力を停止させ、且つ、メカニカルブレーキ23に対してブレーキ指令を出力してメカニカルブレーキ23による制動力を発生させる。その結果、旋回用電動機21は、旋回中であるか否かにかかわらず、インバータ20からの電流供給が強制的に遮断され、且つ、メカニカルブレーキ23によって強制的に制動させられる。
【0059】
また、旋回出力制御部41は、
図8(B)〜
図8(F)に示すように、第1インバータ温度、旋回用電動機温度、第2インバータ温度、昇降圧コンバータ温度、及びキャパシタ温度に関しても、第1旋回出力制限値と同様に、第2〜第6旋回出力制限値を導き出す。
【0060】
第2〜第6旋回出力制限値の推移は、高温側制限開始温度tr2〜tr6がそれぞれ高温側制限開始温度tr1とは異なり、また、停止温度ts2〜ts6がそれぞれ停止温度ts1とは異なるという点で第1旋回出力制限値の推移と相違する。また、各温度が高温側制限開始温度tr2〜tr6から停止温度ts2〜ts6まで上昇する際の第2〜第6旋回出力制限値の低下率(傾き)が異なるという点で第1旋回出力制限値の推移と相違する。旋回関連構成要素毎に温まり方及び冷め方が異なるためである。しかし、各温度が高温側制限開始温度tr2〜tr6以下であれば第2〜第6旋回出力制限値が最大値Pmaxとなる点、及び、各温度が停止温度ts2〜ts6に達した場合に第2〜第6旋回出力制限値が最小値Pmin(値ゼロ)となる点で第1旋回出力制限値の推移と同じである。また、各温度が高温側制限開始温度tr2〜tr6から停止温度ts2〜ts6まで上昇する際に第2〜第6旋回出力制限値が徐々に低下する点で第1旋回出力制限値の推移と同じである。なお、本実施例では、6つの旋回出力制限値のうちで第2インバータ温度に関する第4旋回出力制限値の低下率(傾き)が最も小さくなるように各種対応マップが予め登録されている。そのため、本実施例では、コントローラ30は、インバータ20の温度変化に応じた旋回用電動機21の動きの変化を、他の旋回関連構成要素の温度変化に応じた旋回用電動機21の動きの変化よりも緩やかにできる。
【0061】
次に、
図9を参照し、電動発電機温度が高温側制限開始温度tr1と停止温度ts1との間で上下に変動する際の第1旋回出力制限値の推移について説明する。なお、
図9(A)は、第1旋回出力制限値と電動発電機温度の関係を示す図であり、縦軸に第1旋回出力制限値を配し、横軸に電動発電機温度を配する。また、
図9(A)中の黒丸は、時刻D0〜D4のそれぞれにおける電動発電機温度と第1旋回出力制限値との対応関係を示す。また、
図9(B)は、第1旋回出力制限値の時間的推移を示す図であり、縦軸に第1旋回出力制限値を配し、横軸に時間軸を配する。また、
図9(C)は、電動発電機温度の時間的推移を示す図であり、縦軸に電動発電機温度を配し、横軸に時間軸を配する。なお、
図9(B)の時間軸と
図9(C)の時間軸は共通である。また、
図9は、電動発電機温度が変動する際の第1旋回出力制限値の推移について説明するが、第1インバータ温度、旋回用電動機温度、第2インバータ温度、昇降圧コンバータ温度、及びキャパシタ温度のそれぞれが変動する際の第2〜第6旋回出力制限値の推移についても同様の説明が適用され得る。
【0062】
具体的には、
図9は、時刻D0において電動発電機温度がt0であり、第1旋回出力制限値が最大値Pmaxであることを示す。
【0063】
また、
図9は、電動発電機温度が時間の経過と共に上昇すると、第1旋回出力制限値が
図9(A)及び
図9(B)の実線で示すように、最大値Pmaxのまま推移することを示す。
【0064】
また、
図9は、時刻D1において電動発電機温度が高温側制限開始温度tr1を超えて上昇を続けると、第1旋回出力制限値が最大値Pmaxから徐々に低下し、時刻D2において電動発電機温度が温度t2に達すると、値P2(<Pmax)に至ることを示す。
【0065】
また、
図9は、電動発電機温度が時刻D2において下降に転じ、時刻D3における温度t3まで下降する際に、第1旋回出力制限値が、
図9(A)の実線に沿うことなく、
図9(A)の破線に沿って推移することを示す。具体的には、
図9は、第1旋回出力制限値が、値P3(>P2)まで増加することなく、値P2のままに維持されることを示す。
【0066】
また、
図9は、電動発電機温度が温度t3を下回ってさらに下降し続ける場合、時刻D34において電動発電機温度が高温側制限開始温度tr1に至るまで、第1旋回出力制限値が値P2を維持することを示す。また、
図9は、時刻D34において電動発電機温度が高温側制限開始温度tr1を下回ると、第1旋回出力制限値が最大値Pmaxに復帰することを示す。また、
図9は、時刻D4に至るまで電動発電機温度が高温側制限開始温度tr1を下回って温度t4まで下降し続けても、第1旋回出力制限値が最大値Pmaxのままで維持されることを示す。
【0067】
また、
図9は、電動発電機温度が時刻D3において温度t3まで下降した後で再び上昇に転じた場合(
図9(C)の一点鎖線参照。)にも、第1旋回出力制限値が、
図9(A)の実線に沿うことなく、
図9(A)の破線に沿って推移することを示す。具体的には、
図9は、第1旋回出力制限値が、値P3(>P2)まで増加することなく、値P2のままに維持されることを示す。
【0068】
また、
図9は、電動発電機温度がさらに上昇し続ける場合、時刻D34aにおいて電動発電機温度が温度t2に至るまで、第1旋回出力制限値が値P2を維持することを示す。また、
図9は、電動発電機温度が温度t2を超えてさらに上昇し続ける場合、第1旋回出力制限値が、再び
図9(A)の実線に沿って推移し、時刻D4aにおいて電動発電機温度が温度t4aに達すると、第1旋回出力制限値が値P4(<P2)に至ることを示す(
図9(B)の一点鎖線参照。)。
【0069】
このように、旋回出力制御部41は、高温側制限開始温度tr1を上回って上昇する電動発電機温度が高温側制限開始温度tr1と停止温度ts1との間で下降に転じた場合には、その反転時の第1旋回出力制限値が維持されるようにする。電動発電機温度の下降反転に即応して旋回出力制限値を増大させると電動発電機温度の上昇反転を引き起こすおそれがあるためである。具体的には、旋回出力制御部41は、電動発電機温度が高温側制限開始温度tr1を下回るか、或いは、反転時の温度t2を上回るまでは、その反転時の第1旋回出力制限値が維持されるようにする。その結果、旋回出力制御部41は、第1旋回出力制限値のハンチングに起因して旋回用電動機21の動きが不安定になるのを防止できる。また、旋回出力制御部41は、操作者の意図に反して上部旋回体3の加速度が大きくなるのを防止できる。
【0070】
ここで再び
図6を参照し、旋回制限制御部30Bの通知部42について説明する。通知部42は、旋回関連構成要素に関する情報を操作者に通知する機能要素である。本実施例では、通知部42は、所定の条件が満たされた場合に出力部50に通知指令を出力し、旋回関連構成要素に関する情報を出力部50から出力させる。
【0071】
具体的には、通知部42は、旋回関連構成要素の温度に応じて出力部50から出力させる内容を決定する。本実施例では、通知部42は、温度センサS1〜S6のそれぞれの検出値に応じてキャビン10内に設置された液晶ディスプレイに表示させる表示内容を決定する。また、通知部42は、キャビン10内に設置されたスピーカからアラームを音声出力させる。
【0072】
図10A〜
図10Cは、通知部42の制御内容を説明する図である。具体的には、
図10Aは、出力部50を構成する液晶ディスプレイ51の表示画面51Vの一例を示す図である。また、
図10Bは、キャパシタ温度と第6旋回出力制限値の関係を示す対応マップであり、
図8(F)に対応する。また、
図10Cは、表示画面51V上に表示される高電圧部品温度表示領域51aの表示内容を説明する図である。
【0073】
図10Aに示すように、液晶ディスプレイ51の表示画面51Vは、主に、高電圧部品温度表示領域51a、エンジン作動時間表示領域51b、冷却水温表示領域51c、燃料残量表示領域51d、作動油温表示領域51e、アラーム表示領域51fを含む。
【0074】
高電圧部品温度表示領域51aは高電圧部品の温度状態を画像表示する領域であり、エンジン作動時間表示領域51bはエンジン11の累積作動時間を画像表示する領域である。また、冷却水温表示領域51cは現在のエンジン冷却水の温度状態を画像表示する領域であり、燃料残量表示領域51dは燃料タンクに貯蔵されている燃料の残量状態を画像表示する領域である。また、作動油温表示領域51eは作動油タンク内の作動油の温度状態を画像表示する領域であり、アラーム表示領域51fは警告メッセージ等の各種情報を表示する領域である。
【0075】
通知部42は、温度センサS1〜S6のそれぞれの検出値に応じて表示画面51V上に表示される高電圧部品温度表示領域51aの表示内容を決定する。高電圧部品温度表示領域51aは、
図10Aに示すように、5つのセグメントを含むバーグラフで構成される。
【0076】
例えば、通知部42は、キャパシタ温度が低温側制限開始温度tc6(
図10B参照。)を下回る場合、5つのセグメントのうちの左端のセグメントを点灯表示させる(
図10Cの第1列55a参照。)。低温側制限開始温度tc6は、キャパシタ19の暖機不足に起因する旋回出力制限の要否を判定するための閾値である。このとき、キャパシタ19は暖機不足の状態にあり、旋回出力制御部41は最大値Pmax未満の最終旋回出力制限値を用いて旋回用電動機21の動きを制御する。
【0077】
具体的には、旋回出力制御部41は、キャパシタ温度が低温側制限開始温度tc6未満であれば、キャパシタ温度が低い程、第6旋回出力制限値として導き出す値を最大値Pmaxから徐々に低下させる。キャパシタ19が暖機不足の状態のままで旋回用電動機21を最大出力で動作させないようにするためである。また、通知部42は、スピーカからアラームを出力させることなく、液晶ディスプレイ51の表示画面51Vにおけるアラーム表示領域51fにメッセージ「キャパシタ暖機中(アイドリング中)/出力制限中(機械作動中)」を表示させる。なお、電動発電機温度、第1インバータ温度、旋回用電動機温度、第2インバータ温度、及び昇降圧コンバータ温度については、低温側制限開始温度が設定されることはない。電動発電機12、インバータ18、旋回用電動機21、インバータ20、及び昇降圧コンバータ100は、温度が低い場合であっても適切に動作するためであり、むしろ温度が低い程良好に動作するためである。
【0078】
また、通知部42は、キャパシタ温度が低温側制限開始温度tc6以上であり、且つ高電圧部品である旋回関連構成要素の全ての温度が所定の3セグメント点灯温度未満の場合、5つのセグメントのうちの左側の2つのセグメントを点灯表示させる(
図10Cの第2列55b参照。)。3セグメント点灯温度は、高電圧部品温度表示領域51aにおける5つのセグメントのうちの左側の3つのセグメントを点灯表示させるか否かを判定するための閾値であり、例えば、キャパシタ温度に関する3セグメント点灯温度tm6(
図10B参照。)を含む。旋回関連構成要素の全ての温度が3セグメント点灯温度未満の場合、旋回関連構成要素の全ては適温の状態にあり、旋回出力制御部41は、最大値Pmaxである最終旋回出力制限値を用いて、すなわち旋回出力を制限することなく、旋回用電動機21の動きを制御する。また、通知部42は、スピーカからアラームを出力させることなく、アラーム表示領域51fにメッセージを表示させることもない。
【0079】
また、通知部42は、高電圧部品である旋回関連構成要素の何れかの温度が3セグメント点灯温度以上で且つ4セグメント点灯温度未満の場合、5つのセグメントのうちの左側の3つのセグメントを点灯表示させる(
図10Cの第3列55c参照。)。4セグメント点灯温度は、高電圧部品温度表示領域51aにおける5つのセグメントのうちの左側の4つのセグメントを点灯表示させるか否かを判定するための閾値であり、例えば、キャパシタ温度に関する4セグメント点灯温度th6(
図10B参照。)を含む。例えば、キャパシタ温度が3セグメント点灯温度tm6以上で且つ4セグメント点灯温度th6未満の場合、左側の3つのセグメントを点灯表示させる。このとき、旋回関連構成要素の全ては依然として適温の状態にあり、旋回出力制御部41は、最大値Pmaxである最終旋回出力制限値を用いて、すなわち旋回出力を制限することなく、旋回用電動機21の動きを制御する。また、通知部42は、スピーカからアラームを出力させることなく、アラーム表示領域51fにメッセージを表示させることもない。
【0080】
また、通知部42は、高電圧部品である旋回関連構成要素の何れかの温度が4セグメント点灯温度以上で且つ所定の出力制限予告温度未満の場合、5つのセグメントのうちの左側の4つのセグメントを点灯表示させる(
図10Cの第4列55d参照。)。出力制限予告温度は、旋回出力制限が行われるおそれがあるか否かを判定するための閾値であり、例えば、キャパシタ温度に関する出力制限予告温度tw6(
図10B参照。)を含む。例えば、キャパシタ温度が4セグメント点灯温度th6以上で且つ出力制限予告温度tw6未満の場合、左側の4つのセグメントを点灯表示させる。このとき、旋回関連構成要素の全ては依然として適温の状態にあり、旋回出力制御部41は、最大値Pmaxである最終旋回出力制限値を用いて、すなわち旋回出力を制限することなく、旋回用電動機21の動きを制御する。また、通知部42は、スピーカからアラームを出力させることなく、アラーム表示領域51fにメッセージを表示させることもない。
【0081】
また、通知部42は、高電圧部品である旋回関連構成要素の何れかの温度が出力制限予告温度以上で且つ所定の高温側制限開始温度未満の場合、5つのセグメントのうちの左側の4つのセグメントを点灯表示させた状態で、旋回出力制限が行われるおそれがある旨を操作者に通知する。例えば、キャパシタ温度が出力制限予告温度tw6以上で且つ高温側制限開始温度tr6(
図10B参照。)未満の場合、左側の4つのセグメントを点灯表示させた状態で、スピーカからアラームを出力させ、アラーム表示領域51fにメッセージ「出力制限予告」を表示させる。キャパシタ19の温度がさらに上昇した場合に旋回出力制限が行われるおそれがあることを操作者に通知するためである。このとき、旋回関連構成要素の全ては依然として適温の状態にあるが、キャパシタ19は過熱傾向、すなわちこれ以上温度が上昇した場合には過熱状態となり得る。なお、旋回出力制御部41は、依然として、最大値Pmaxである最終旋回出力制限値を用いて、すなわち旋回出力を制限することなく、旋回用電動機21の動きを制御する。
【0082】
また、通知部42は、高電圧部品である旋回関連構成要素の何れかの温度が所定の高温側制限開始温度以上で且つ所定の停止温度未満の場合、5つのセグメントの全てを点灯表示させる(
図10Cの第5列55e参照。)。例えば、キャパシタ温度が高温側制限開始温度tr6以上で且つ停止温度ts6(
図10B参照。)未満の場合、5つのセグメントを全て点灯表示させる。このとき、キャパシタ19は過熱状態にあり、旋回出力制御部41は最大値Pmax未満の最終旋回出力制限値を用いて旋回用電動機21の動きを制御する。また、通知部42は、スピーカからアラームを出力させ、アラーム表示領域51fにメッセージ「出力制限中」を表示させる。
【0083】
また、通知部42は、高電圧部品である旋回関連構成要素の何れかの温度が所定の停止温度以上の場合、5つのセグメントの全てを点灯表示させた状態で、旋回関連構成要素が故障するおそれがある旨を操作者に通知する(
図10Cの第6列55f参照。)。例えば、キャパシタ温度が所定の停止温度ts6以上の場合、5つのセグメントを全て点灯表示させた状態で、スピーカからアラームを出力させ、アラーム表示領域51fにメッセージ「ハイブリッド系統オーバーヒート」を表示させる。このとき、キャパシタ19はオーバーヒート状態にあり、旋回出力制御部41は最小値Pminの最終旋回出力制限値を用いて旋回用電動機21の動きを停止させる。
【0084】
上述の構成により、コントローラ30は、旋回関連構成要素の温度が所定の高温側制限開始温度に達した場合に、電動発電機12が発電した電力及びキャパシタ19が蓄積している電力の少なくとも一方によって駆動される旋回用電動機21の出力を制限する。その結果、コントローラ30は、電動発電機12からの電力と蓄電系120からの電力とを利用する旋回用電動機21に関連する旋回関連構成要素の過熱を適切に防止できる。
【0085】
また、コントローラ30は、旋回関連構成要素のそれぞれの温度と旋回出力制限値との関係を表す対応マップを参照し、温度センサS1〜S6のそれぞれの検出値から第1〜第6旋回出力制限値を導き出す。そして、それら6つの旋回出力制限値のうちの最小値(最も厳しい値)を最終旋回出力制限値として導き出し、その最終旋回出力制限値を用いて旋回用電動機21の出力を制御する。その結果、コントローラ30は、旋回関連構成要素の何れかの温度が所定の高温側制限開始温度に達した場合に旋回用電動機21の出力を制限して旋回関連構成要素の過熱を適切に防止できる。例えば、コントローラ30は、ラジエータが目詰まりを起こしその冷却能力が低下した結果、キャパシタ温度が上昇して高温側制限開始温度tr6に達した場合に、旋回用電動機21の出力を制限してキャパシタ19の過熱を適切に防止できる。
【0086】
また、コントローラ30は、旋回関連構成要素の何れかの温度が所定の出力制限予告温度に達した場合、旋回用電動機21の出力を制限することなく、旋回出力制限が行われるおそれがある旨を操作者に通知する。その結果、コントローラ30は、旋回用電動機21の出力を制限する前の段階で、旋回出力制限が行われるおそれがある旨を操作者に通知できる。
【0087】
また、コントローラ30は、旋回関連構成要素の何れかの温度が所定の高温側制限開始温度に達した場合、旋回用電動機21の出力を制限した上で、旋回出力制限中であることを操作者に通知する。その結果、コントローラ30は、旋回関連構成要素の温度上昇に起因して旋回出力制限が行われていることを操作者に確実に通知できる。
【0088】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0089】
例えば、上述の実施例では、対応マップは、旋回関連構成要素の温度が高温側制限開始温度から停止温度まで上昇する際に旋回出力制限値が一定の低下率で線形的に低下する傾向を示す。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、対応マップは、旋回関連構成要素の温度が高温側制限開始温度から停止温度まで上昇する際に旋回出力制限値が複数段階の低下率で段階的に且つ線形的に低下する傾向を示すものであってもよい。或いは、対応マップは、旋回関連構成要素の温度が高温側制限開始温度から停止温度まで上昇する際に旋回出力制限値が非線形的に低下する傾向を示すものであってもよく、旋回出力制限値が複数ステップで階段状に低下する傾向を示すものであってもよい。
【0090】
図11は冷却系70の構成例を示す図である。冷却系70は、主に、冷却液ポンプ71と、ラジエータ72と、冷却液タンク73と、冷却管74とを含む。
【0091】
冷却液ポンプ71は、冷却液タンク73に蓄えられた冷却液を吸い込んで吐出し、冷却管74で構成される冷却回路内で冷却液を循環させる。本実施例では、冷却液ポンプ71は、ラジエータ72によって冷却された冷却液を吐出する。その後、冷却液は、コントローラ30、キャパシタ19、インバータ18、インバータ20、昇降圧コンバータ100、旋回用電動機21、電動発電機12、及び変速機13の各機器に隣接するように配置された冷却管74内を通って流れ、各機器を冷却した後でラジエータ72に戻る。なお、本実施例では冷却液は水とLLC(ロングライフクーラント)の混合液である。
【0092】
また、本実施例では、冷却管74は、インバータ18、インバータ20、及び昇降圧コンバータ100のそれぞれに隣接する部分では3つのルートに分かれて並列に配置され、その他の部分では直列に配置される。但し、冷却管74は、並列接続、直列接続を含め、任意の接続方法で配管されてもよい。
【0093】
また、本実施例では、1つの冷却回路を用いる構成が採用されるが複数の冷却回路を用いる構成が採用されてもよい。その場合、各冷却回路に対して1つの冷却液ポンプを用いる構成が採用されてもよく、複数の冷却回路に対して1つの冷却液ポンプを用いる構成が採用されてもよい。また、冷却液ポンプが吐出する冷却液の流れ方向を切り替える切替弁が用いられてもよく、冷却液の流量を調整する流量制御弁が用いられてもよい。
【0094】
また、本実施例では、冷却液ポンプ71は、コントローラ30(制御モード切替部30F)からの制御信号(作動信号・停止信号)に応じて作動・停止が制御される。また、本実施例では、冷却液ポンプ71は、所定回転で回転する固定容量型ポンプであるが、コントローラ30からの制御信号(速度信号)に応じて回転数(単位時間当たり吐出量)が変更されてもよい。また、冷却液ポンプ71は、可変容量型ポンプであってもよい。なお、作動信号に応じて開始される冷却液ポンプ71の制御モードは冷却液ポンプ作動モードに相当し、停止信号に応じて開始される冷却液ポンプ71の制御モードは冷却液ポンプ停止モードに相当する。
【0095】
次に、
図12を参照し、冷却液ポンプ71の作動条件について説明する。コントローラ30は、エンジン吸気温度が所定温度Teより高い場合、エンジン11の始動が行われた場合、冷却液ポンプ停止後経過時間が所定時間t1に達した場合、第1インバータ温度及び第2インバータ温度を含むインバータ温度の何れかが所定温度TIHより高い場合、コンバータ温度が所定温度TCHより高い場合、電動発電機温度が所定温度TAHより高い場合、旋回用電動機温度が所定温度TSHより高い場合、或いは、キャパシタ温度が所定温度TBHより高い場合に、冷却液ポンプ71を作動させる。
【0096】
具体的には、コントローラ30は、エンジンセンサ29Aが検出するエンジン吸気温度が所定温度Teより高い場合に冷却液ポンプ71を作動させる。外気温度が高いのでキャパシタ19を暖機する必要がなく冷却液ポンプ71の作動を停止させる必要がないと判断できるためである。なお、キャパシタ19の暖機は、キャパシタ温度が所定温度未満の場合にコントローラ30が実行する処理であり、コントローラ30は、キャパシタ19の充放電に伴うキャパシタ19の内部抵抗による自己発熱によってキャパシタ19の温度を上昇させる。キャパシタ温度が低い場合の高い内部抵抗に起因してキャパシタ19の充放電の際にキャパシタ電圧が許容電圧範囲を逸脱してキャパシタ19の劣化又は破損が発生してしまうのを防止するためである。また、コントローラ30は、キャパシタ19の暖機を行う場合には、冷却液ポンプ71の他の停止条件(後述)を満たす限りにおいて、キャパシタ19の暖機を促進するために冷却液ポンプ71の作動を停止させる。なお、コントローラ30は、エンジン吸気温度の代わりに外気温度に基づいて冷却液ポンプ71を作動させるか否かを判定してもよい。
【0097】
また、コントローラ30は、エンジンセンサ29Aが検出するエンジン回転数に基づいてエンジン11の始動が行われたか否かを判定し、エンジン11の始動が行われたと判定した場合に、エンジン停止中に停止していた冷却液ポンプ71を作動させる。エンジン11の一時的な停止に起因して冷却液ポンプ71の停止継続時間が過度に長くなることで冷却対象の温度が過度に上昇した状態を早期に解消するためである。なお、コントローラ30は、イグニッションスイッチの出力等に基づいてエンジン11の始動が行われたか否かを判定してもよく、電動発電機12の回転数によってエンジン11の始動が行われたか否かを判定してもよい。また、エンジン11の停止時間が所定時間以上であると判断できる場合、コントローラ30は、エンジン11の始動時における冷却液ポンプ71の作動を省略してもよい。冷却対象の温度が十分に下がっていると判断できるためである。
【0098】
また、コントローラ30は、冷却液ポンプ71に対して停止信号を出力してからの経過時間である冷却液ポンプ停止後経過時間を監視し、冷却液ポンプ停止後経過時間が所定時間t1に達した場合に冷却液ポンプ71を作動させる。冷却液ポンプ71の停止継続時間が過度に長くなることで冷却対象の温度が過度に上昇してしまうのを防止するためである。
【0099】
また、コントローラ30は、温度センサS2が検出する第1インバータ温度が所定温度TIHより高い場合、或いは、温度センサS4が検出する第2インバータ温度が所定温度TIHより高い場合に冷却液ポンプ71を作動させる。インバータ18及びインバータ20の過熱を防止するためである。また、コントローラ30は、温度センサS5が検出するコンバータ温度が所定温度TCHより高い場合に冷却液ポンプ71を作動させる。昇降圧コンバータ100の過熱を防止するためである。また、コントローラ30は、温度センサS1が検出する電動発電機温度が所定温度TAHより高い場合に冷却液ポンプ71を作動させる。電動発電機12の過熱を防止するためである。また、コントローラ30は、温度センサS3が検出する旋回用電動機温度が所定温度TSHより高い場合に冷却液ポンプ71を作動させる。旋回用電動機21の過熱を防止するためである。また、コントローラ30は、温度センサS6が検出するキャパシタ温度が所定温度TBHより高い場合に冷却液ポンプ71を作動させる。キャパシタ19の過熱を防止するためである。
【0100】
次に、
図13を参照し、冷却液ポンプ71の停止条件について説明する。コントローラ30は、エンジン吸気温度が所定温度Te以下であること、エンジン始動後経過時間が所定時間t2以上であること、冷却液ポンプ作動後経過時間が所定時間t2以上であること、インバータ温度が所定温度TIL以下であること、コンバータ温度が所定温度TCL以下であること、電動発電機温度が所定温度TAL以下であること、旋回用電動機温度が所定温度TSL以下であること、及び、キャパシタ温度が所定温度TBL以下であることの全ての条件が満たされた場合に、冷却液ポンプ71を停止させる。
【0101】
エンジン吸気温度が所定温度Te以下であることの条件は、外気温度が低い場合にはキャパシタ19の暖機が必要となり冷却液ポンプ71を停止させるほうがキャパシタ19の暖機にとって効率的であると判断できることに基づく。
【0102】
また、エンジン始動後経過時間が所定時間t2以上であることの条件は、冷却液ポンプ71の間欠運転(後述)による効果が適切に実現されるようにするためのものである。具体的には、エンジン11の始動が行われると冷却液ポンプ71が作動するので、エンジン始動後の経過時間が所定時間t2に達したことは、冷却液ポンプ71が所定時間t2にわたって作動したことを意味する。そして、所定時間t2は、冷却液ポンプ71の間欠運転(後述)による効果を実現するのに十分な時間に設定される。冷却液ポンプ作動後経過時間が所定時間t2以上であることの条件についても同様である。
【0103】
インバータ温度が所定温度TIL以下であること、コンバータ温度が所定温度TCL以下であること、電動発電機温度が所定温度TAL以下であること、旋回用電動機温度が所定温度TSL以下であること、及び、キャパシタ温度が所定温度TBL以下であることの条件は、冷却系70の冷却対象である各機器の過熱を防止しながら無駄な冷却液ポンプ71の作動を抑制するためのものである。
【0104】
次に、
図14を参照し、インバータ18の温度の測定方法について説明する。なお、
図14は、冷却系70の冷却対象の一つであるインバータ18の内部の概略図である。また、
図14の粗いハッチングで示す領域は、インバータ18の筐体の内部を表し、細かいハッチングで示す領域は、冷却系70を構成する冷却管74の内部を表す。また、
図14の矢印AR1は、冷却管74内の冷却液の流れを表す。なお、インバータ18の温度の測定方法は、インバータ20及び昇降圧コンバータ100のそれぞれの温度の測定にも適用され得る。
【0105】
図14に示すように、インバータ18は、発熱源である複数(
図14では2つ)のインテリジェントパワーモジュールであるIPM60a、60bと、基板61とを含む。また、基板61には、インバータ18の筐体内の雰囲気温度を検出するための温度センサS2が設置される。また、冷却管74は、IPM60a、60bと接触するように配置され、温度センサS2は、IPM60a、60bと接触しないように配置される。
【0106】
そのため、IPM60a、60bの熱は、熱伝導によって冷却管74に伝わり、冷却管74内で冷却液が流れると、冷却管74に伝わった熱は冷却液と共に外部に放出される。その結果、IPM60a、60b、冷却管74の温度は比較的急激に下降する。そして、冷却管74の温度がインバータ18の筐体内の空気の温度よりも低くなると、筐体内の空気が冷却され、さらに冷却された空気の対流によって基板61及び温度センサS2の熱が冷却管74に伝わる。そのため、温度センサS2が検出する雰囲気温度は、IPM60a、60b、冷却管74の温度の変化に対して遅れをもって変化し、比較的緩やかに下降する。このように、冷却管74内で冷却液が流れると、IPM60a、60bは、温度センサS2が検出する雰囲気温度よりも低い状態となる。
【0107】
一方、冷却管74内の冷却液の流れが止まると、冷却管74に伝わった熱が外部に放出されなくなる。その結果、IPM60a、60b、冷却管74の温度は比較的急激に上昇する。そして、冷却管74の温度がインバータ18の筐体内の空気の温度よりも高くなると、筐体内の空気が加熱され、その加熱された空気の対流によってIPM60a、60b、冷却管74の熱が温度センサS2に伝わる。そのため、温度センサS2が検出する雰囲気温度は、IPM60a、60b、冷却管74の温度の変化に対して遅れをもって変化し、比較的緩やかに上昇する。このように、冷却管74内の冷却液の流れが止まると、IPM60a、60bの温度は、温度センサS2が検出する雰囲気温度よりも高い状態となる。
【0108】
上述の現象から、冷却液の流れを生じさせる時間と冷却液の流れを止める時間を適切に設定することで、発熱源の温度と雰囲気温度との乖離を制御できることが分かる。そして、発熱源の温度と雰囲気温度との乖離を制御できれば、複数の発熱源のそれぞれの温度を直接測定しなくとも、雰囲気温度から複数の発熱源のそれぞれの温度を推定できる。
【0109】
そこで、コントローラ30は、冷却液ポンプ71の作動と停止を繰り返すことによって発熱源の温度と雰囲気温度との乖離を制御する。なお、以下では、冷却液ポンプ71の作動と停止を繰り返すことを冷却液ポンプ71の間欠運転と称する。
【0110】
次に、
図15を参照し、冷却液ポンプ71の間欠運転による効果の一例について説明する。なお、
図15は、インバータ18の筐体内の雰囲気温度と発熱源であるIPM60aの温度(IPM温度)の時間的推移を示す図である。
図15において、実線の推移線はIPM温度の時間的推移を表し、点線の推移線は雰囲気温度の時間的推移を表す。また、図中の黒丸は、冷却液ポンプ71の作動を開始させたときのIPM温度を表し、図中の白丸は、冷却液ポンプ71の作動を停止させたときのIPM温度を表す。なお、本実施例では、IPM60aにとって熱的に最も厳しい条件となるように、操作者はインバータ18を継続的に動作させている。そのため、ショベルが実際に使用されるときのように操作者がインバータ18を断続的に動作させた場合には、冷却液ポンプ71の間欠運転の内容が同じであれば、IMP温度の上昇傾向は図示のものよりも小さいものとなる。また、雰囲気温度に対するIPM温度の高温側への乖離もより小さいものとなる。これは、その最も厳しい条件において雰囲気温度からIPM温度の高温異常を検知できるようにすれば、その他の条件ではIPM温度の高温異常を検知し損ねるおそれがないことを意味する。
【0111】
図15に示すように、コントローラ30は、所定の停止継続時間t1(上述の所定時間t1に相当)にわたる冷却液ポンプ71の停止と所定の作動継続時間t2(上述の所定時間t2に相当)にわたる冷却液ポンプ71の作動とを交互に繰り返す。なお、本実施例では、停止継続時間t1は作動継続時間t2よりも長い。
【0112】
具体的には、コントローラ30は、冷却液ポンプ71に対して作動信号を出力して冷却液ポンプ71の作動を開始させる。そして、冷却液ポンプ71を作動させてから作動継続時間t2が経過した時点で冷却液ポンプ71に対して停止信号を出力して冷却液ポンプ71の作動を停止させる。そして、冷却液ポンプ71を停止させてから停止継続時間t1が経過した時点で冷却液ポンプ71に対して作動信号を出力して冷却液ポンプ71の作動を再開させる。その後、コントローラ30は、同様の条件で冷却液ポンプ71の作動と停止を繰り返す。
【0113】
その結果、IPM温度は、冷却液ポンプ71の停止による比較的急激な上昇と、冷却液ポンプ71の作動による比較的急激な下降とを繰り返しながらも、より長期的には上昇傾向を示す。なお、上述のように、
図15の時間的推移はインバータ18が継続的に動作する場合のものであるため、インバータ18が断続的に動作する場合の時間的推移とは異なる。具体的には、インバータ18が断続的に動作する場合には、インバータ18が停止している時間が長くなるほど、IPM温度の上昇傾向は抑制され、さらには下降傾向に転じる。
【0114】
一方、上述のタイミングで冷却液ポンプ71の作動と停止が繰り返された場合、雰囲気温度は、より長期的に見た場合のIPM温度の上昇傾向に沿って上昇する。そして、時刻d1を超えた当たりで、雰囲気温度に対するIPM温度の高温側への乖離度(冷却液ポンプ71の作動開始時のIPM温度と雰囲気温度との差DH)、及び、雰囲気温度に対するIPM温度の低温側への乖離度(冷却液ポンプ71の作動停止時のIPM温度と雰囲気温度との差DL)はほぼ一定となる。これは、冷却液ポンプ71の作動継続時間と停止継続時間を適切に設定することによって、より長期的に見た場合のIPM温度の上昇傾向と雰囲気温度の上昇傾向とを合わせられることを意味する。
【0115】
この関係から、コントローラ30は、雰囲気温度が所定の上限温度に達した場合に、IPM温度が許容最大温度に達したと判断でき、インバータ18の過熱を防止するための適切な処理を実行させることができる。すなわち、コントローラ30は、雰囲気温度に基づいてインバータ18の温度管理を実行できる。
【0116】
例えば、コントローラ30は、温度センサS2の検出値が所定の上限値に達した場合に、冷却液ポンプ71を継続的に作動させる。また、コントローラ30は、旋回用電動機21の動きを制限する等、ショベルの動きを制限してもよく、冷却液ポンプ71の単位時間当たり吐出量を増大させてもよい。
【0117】
なお、上述の実施例では、コントローラ30は、停止継続時間t1が経過した時点で冷却液ポンプ71の作動を再開させるが、停止継続時間t1が経過する前であっても上述の他の作動条件が満たされた場合には冷却液ポンプ71の作動を再開させる。但し、この制御は、IPM温度の上昇傾向を抑制する効果があるため、雰囲気温度に基づくインバータ18の温度管理に悪影響を与えることはない。
【0118】
以上の構成により、コントローラ30は、冷却回路内で冷却液を循環させて少なくとも1つの電気機器と蓄電器とを含む複数の冷却対象を冷却する冷却系を制御する。そして、複数の冷却対象のそれぞれの温度の何れかが所定の対応する閾値に達した場合に冷却液ポンプ71の作動を開始させて冷却液の循環を開始させる。そのため、コントローラ30は、所定の作動条件が満たされるまでは冷却液ポンプ71の作動を停止させることができる。その結果、コントローラ30は、冷却液ポンプ71の作動が必要と判断するまでは冷却液ポンプ71を停止させておくことができ、冷却系をより効率的に制御できる。また、コントローラ30は、蓄電器の暖機を行う場合に冷却液ポンプ71を停止させることで蓄電器の暖機を促進できる。
【0119】
また、コントローラ30は、複数の冷却対象のそれぞれの温度が所定の対応する閾値を下回った場合に冷却液ポンプ71の作動を停止させて冷却液の循環を停止させる。そのため、コントローラ30は、所定の停止条件が満たされた場合に冷却液ポンプ71の作動を停止させることができる。その結果、コントローラ30は、冷却液ポンプ71の作動を無駄に継続させることなく、冷却系をより効率的に制御できる。
【0120】
また、コントローラ30は、所定の停止継続時間t1にわたる冷却系70の停止による冷却液の循環停止と所定の作動継続時間t2(<t1)にわたる冷却系70の作動による冷却液の循環とを繰り返す。具体的には、コントローラ30は、停止継続時間t1にわたる冷却液ポンプ71の停止と作動継続時間t2にわたる冷却液ポンプ71の作動との繰り返しである冷却液ポンプ71の間欠運転を実行する。そのため、IPM60a、60b等の複数の発熱源を含むインバータ18等の電気機器の温度管理を、複数の発熱源のそれぞれの温度ではなく、電気機器の筐体内の雰囲気温度に基づいて実行できる。具体的には、コントローラ30は、複数の発熱源のそれぞれに温度センサを取り付けることなく、筐体内に設置された1つの温度センサの検出値に基づいて温度管理を実行できる。そのため、電気機器の温度管理に必要な温度センサの数を減らすことができる。
【0121】
また、コントローラ30は、雰囲気温度が所定温度に達した場合に、電気機器の動きを制限し或いは停止させてもよい。具体的には、コントローラ30は、インバータ18の筐体内の雰囲気温度が所定温度に達した場合に旋回用電動機21の動きを制限し或いは停止させることによってインバータ18の動きを制限し或いは停止させてもよい。その結果、コントローラ30は、インバータ18の過熱を防止できる。
【0122】
また、コントローラ30は、複数の冷却対象のそれぞれの温度にかからわず、エンジン始動時に所定時間にわたって冷却液ポンプ71を作動させて冷却液を循環させる。そのため、エンジン11の一時的な停止に起因して冷却液ポンプ71の停止継続時間が過度に長くなることで冷却対象の温度が過度に上昇した状態を早期に解消できる。また、エンジン11が一時的に停止された場合であっても、インバータ18等の電気機器の温度管理を、IPM等の複数の発熱源のそれぞれの温度ではなく、筐体内の雰囲気温度に基づいて実施できる。具体的には、エンジン11が一時的に停止された場合であっても、冷却液ポンプ停止後経過時間が所定時間t1に達した場合に冷却液ポンプ71を作動させることで、温度センサが検出する雰囲気温度と温度センサが検出しない発熱源の温度との差が過度に大きくなるのを防止できる。その結果、冷却液ポンプ71の間欠運転の有効性を維持できる。
【0123】
また、コントローラ30は、冷却液ポンプ71の作動を停止させて冷却液の循環を停止させた後で所定時間が経過した場合に、冷却液ポンプ71の作動を再開させて冷却液の循環を開始させる。そのため、冷却液ポンプ71の停止継続時間が過度に長くなることで冷却対象の温度が過度に上昇してしまうのを防止できる。また、冷却液ポンプ71を停止させた場合であっても、インバータ18等の電気機器の温度管理を、IPM等の複数の発熱源のそれぞれの温度ではなく、筐体内の雰囲気温度に基づいて実施できる。具体的には、冷却液ポンプ71を停止させた場合であっても、冷却液ポンプ停止後経過時間が所定時間t1に達した場合に冷却液ポンプ71を作動させることで、温度センサが検出する雰囲気温度と温度センサが検出しない発熱源の温度との差が過度に大きくなるのを防止できる。その結果、上述同様、冷却液ポンプ71の間欠運転の有効性を維持できる。また、キャパシタ19の暖機の際に冷却液ポンプ71を一時的に停止させたとしても冷却液ポンプ71の間欠運転による効果に影響を与えることはない。
【0124】
また、コントローラ30は、冷却液ポンプ71の作動を開始させて冷却液の循環を開始させた後で所定時間が経過した場合に、冷却液ポンプ71の作動を停止させて冷却液の循環を停止させる。そのため、冷却液ポンプ71の間欠運転の有効性を維持しながらも、冷却液ポンプ71の作動を無駄に継続させることなく、冷却系をより効率的に制御できる。
【0125】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0126】
例えば、上述の冷却回路では、キャパシタ19は、冷却管74が3つのルートに分岐する前のコントローラ30の下流に配置されるが、コントローラ30の上流に配置されてもよく、旋回用電動機21の上流で且つ分岐したルートが合流した後の部分に配置されてもよい。基本的に、インバータ18、キャパシタ19、インバータ20等の電気機器は、電動発電機12、旋回用電動機21等の電動機器の冷却前に冷却されればよい。そのため、電気機器、電動機器の順で冷却されるのであれば、各電気機器の冷却順は任意であり、各電動機器の冷却順も任意である。但し、本発明は、電動機器の後に電気機器を冷却する構成を排除することはない。したがって、キャパシタ19は、旋回用電動機21、電動発電機12、又は変速機13の下流に配置されてもよい。なお、コントローラ30及び変速機13の少なくとも一方の冷却は省略されてもよい。
【0127】
また、上述の実施例では、キャパシタ温度は、キャパシタセルの電極に取り付けられたサーミスタで構成される温度センサS6によって検出されるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、キャパシタ温度は、キャパシタ19の冷却に用いられる冷却水の温度を検出することで間接的に検出されてもよい。
【0128】
また、本願は、2014年3月6日に出願した日本国特許出願2014−044239号及び2014年3月12日に出願した日本国特許出願2014−049501号に基づく優先権を主張するものであり、これらの日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。