特許第6640177号(P6640177)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アナログ・ディヴァイシス・グローバル・アンリミテッド・カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許6640177-絶縁型DC/DCコンバータ 図000002
  • 特許6640177-絶縁型DC/DCコンバータ 図000003
  • 特許6640177-絶縁型DC/DCコンバータ 図000004
  • 特許6640177-絶縁型DC/DCコンバータ 図000005
  • 特許6640177-絶縁型DC/DCコンバータ 図000006
  • 特許6640177-絶縁型DC/DCコンバータ 図000007
  • 特許6640177-絶縁型DC/DCコンバータ 図000008
  • 特許6640177-絶縁型DC/DCコンバータ 図000009
  • 特許6640177-絶縁型DC/DCコンバータ 図000010
  • 特許6640177-絶縁型DC/DCコンバータ 図000011
  • 特許6640177-絶縁型DC/DCコンバータ 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640177
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】絶縁型DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/70 20160101AFI20200127BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   H02J50/70
   H02M3/28
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-241580(P2017-241580)
(22)【出願日】2017年12月18日
(65)【公開番号】特開2018-102119(P2018-102119A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2018年7月9日
(31)【優先権主張番号】15/383,480
(32)【優先日】2016年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517338467
【氏名又は名称】アナログ・ディヴァイシス・グローバル・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ティエンティン・ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】バオシン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ユエ・ジュオ
【審査官】 辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−040923(JP,A)
【文献】 特開平07−163152(JP,A)
【文献】 特開2010−263683(JP,A)
【文献】 特開2016−077073(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/101905(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
H02M 3/00− 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC/DCコンバータであって、
第1および第2の端子を有する一次巻線と、
絶縁バリアによって前記一次巻線から分離された二次巻線と、
フルブリッジドライバと、
前記フルブリッジドライバと前記一次巻線の前記第1の端子との間に結合された第1のコンデンサと、
前記フルブリッジドライバと前記一次巻線の前記第2の端子との間に結合された第2のコンデンサと、
を備え
前記二次巻線の一端子と、前記DC/DCコンバータの出力電圧に比例した電圧との間に結合されたバイアス抵抗器をさらに備える、DC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記一次巻線および二次巻線が同一基板上に集積されている、請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサは実質的に同じ容量値を有する、請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記フルブリッジドライバは、複数のスイッチを有するHブリッジ回路であり、
前記第1のコンデンサは、前記複数のスイッチのうちの第1のスイッチおよび第2のスイッチの共通ノードと、前記一次巻線の前記第1の端子との間に結合され、
前記第2のコンデンサは、前記複数のスイッチのうちの第3のスイッチおよび第4のスイッチの共通ノードと、前記一次巻線の前記第2の端子との間に結合されている、請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記フルブリッジドライバはスイッチを備え、前記DC/DCコンバータは前記スイッチと並列の並列コンデンサをさらに備える、請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記フルブリッジドライバに結合され、前記フルブリッジドライバのオフ状態から前記フルブリッジドライバのオン状態への遷移の間、アクティブになるように構成された電流注入回路をさらに備える、請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項7】
前記二次巻線に結合されたフルブリッジ整流器と、前記二次巻線の第1の端子と第2の端子との間に結合された並列コンデンサとをさらに備える、請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項8】
一次巻線と、二次巻線と、フルブリッジドライバとを備えるDC/DCコンバータを動作させる方法であって、前記二次巻線は、絶縁バリアによって前記一次巻線から分離され、前記方法は、
前記一次巻線の第1の端子に結合された第1のコンデンサ、前記一次巻線、および前記一次巻線の第2の端子に結合された第2のコンデンサを通る直列電流経路を通って、前記フルブリッジドライバからの信号を駆動することを含み、
前記二次巻線の一端子を前記DC/DCコンバータの出力電圧に比例した電圧とバイアス抵抗器で結合することをさらに含む、方法。
【請求項9】
前記一次巻線および二次巻線が同一基板上に集積されている、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサは実質的に同じ容量値を有する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記フルブリッジドライバは、複数のスイッチを有するHブリッジ回路であり、
前記フルブリッジドライバの第1の電圧ノードは、前記複数のスイッチのうちの第1のスイッチおよび第2のスイッチの共通ノードであり、
前記フルブリッジドライバの第2の電圧ノードは、前記複数のスイッチのうちの第3のスイッチおよび第4のスイッチの共通ノードである、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記フルブリッジドライバはスイッチを備え、前記DC/DCコンバータは前記スイッチと並列の並列コンデンサをさらに備える、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記フルブリッジドライバのオフ状態から前記フルブリッジドライバのオン状態への遷移の間、前記一次巻線を通過する電流の量を変更するために、前記フルブリッジドライバに結合された電流注入回路を作動させることをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記二次巻線に結合されたフルブリッジ整流器と、前記二次巻線の第1の端子と第2の端子との間に結合された並列コンデンサとをさらに備える、請求項に記載の方法。
【請求項15】
共振型DC/DCコンバータであって、
半導体基板上に集積された一次巻線と二次巻線とを有するトランスであって、前記二次巻線は絶縁バリアによって前記一次巻線から分離されている、トランスと、
直列コンデンサで前記一次巻線に容量結合されたフルブリッジドライバと、
前記共振型DC/DCコンバータの出力と前記フルブリッジドライバの入力との間に結合されたフィードバックループと、
を備え
前記二次巻線の一端子と、前記共振型DC/DCコンバータの出力電圧に比例した電圧との間に結合されたバイアス抵抗器をさらに備える、共振型DC/DCコンバータ。
【請求項16】
前記直列コンデンサは第1の直列コンデンサであり、前記フルブリッジドライバは第2の直列コンデンサで前記一次巻線に容量結合されており、前記第2の直列コンデンサは前記第1の直列コンデンサと実質的に同じ容量値を有する、請求項15に記載の共振型DC/DCコンバータ。
【請求項17】
前記フルブリッジドライバは、複数のスイッチを有するHブリッジ回路であり、
前記第1の直列コンデンサは、前記複数のスイッチのうちの第1のスイッチおよび第2のスイッチの共通ノードと、前記一次巻線の第1の端子との間に結合され、
前記第2の直列コンデンサは、前記複数のスイッチのうちの第3のスイッチおよび第4のスイッチの共通ノードと、前記一次巻線の第2の端子との間に結合されている、請求項16に記載の共振型DC/DCコンバータ。
【請求項18】
前記フィードバックループは、前記共振型DC/DCコンバータの出力信号を表すパルス幅変調信号を生成するように構成されたパルス幅変調信号発生器を備える、請求項17に記載の共振型DC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、絶縁型DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
回路部品間のガルバニック絶縁と、絶縁バリアを横切るデータおよび電力の伝送は、安全性および/またはデータの完全性に関する考慮事項のために提供されることが多い。いくつかの絶縁型DC/DCコンバータには、トランスの一次巻線を駆動して、絶縁バリアを横切りトランスの二次巻線に電力を伝えるドライバが含まれている。整流器は、トランスの二次巻線における受取電圧を出力DC電圧に変換する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書では、絶縁型DC/DCコンバータおよびその動作方法について説明する。DC/DCコンバータは、トランスの一次巻線を駆動して、絶縁バリアを横切りトランスの二次巻線に電力を伝えるドライバを含む。いくつかの実施形態では、対称な直列コンデンサの対が、ドライバと、オンチップトランスを有する共振型DC/Cコンバータの一次巻線との間に設けられて、動作中に一次巻線上の同相電圧の変動を減速する。これは、ひいては、同相電圧の時間変動率に関連する放射線放出を抑制することができ、また、DC/DCコンバータの電磁干渉(EMI)性能を改善することができる。
【0004】
いくつかの実施形態では、DC/DCコンバータが提供される。DC/DCコンバータは、第1および第2の端子を有する一次巻線と、絶縁バリアによって一次巻線から分離された二次巻線と、フルブリッジドライバと、フルブリッジドライバと一次巻線の第1の端子との間に結合された第1のコンデンサと、フルブリッジドライバと一次巻線の第2の端子との間に結合された第2のコンデンサとを備える。
【0005】
いくつかの実施形態では、DC/DCコンバータを動作させる方法が提供される。DC/DCコンバータは、一次巻線、二次巻線、およびフルブリッジドライバを備える。二次巻線は、絶縁バリアによって一次巻線から分離される。この方法は、一次巻線の第1の端子に結合された第1のコンデンサ、一次巻線、および一次巻線の第2の端子に結合された第2のコンデンサを通る直列電流経路を通って、フルブリッジドライバからの信号を駆動することを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、共振型DC/DCコンバータが提供される。DC/DCコンバータは、半導体基板上に集積された一次巻線および二次巻線を有するトランスを備える。二次巻線は、絶縁バリアによって一次巻線から分離される。DC/DCコンバータは、直列コンデンサで一次巻線に容量結合されたフルブリッジドライバをさらに備える。共振型DC/DCコンバータは、DC/DCコンバータの出力とフルブリッジドライバの入力との間に結合されたフィードバックループをさらに備える。
【0007】
本出願の様々な態様および実施形態が以下の図面を参照して説明される。これらの図は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。複数の図に現れる項目は、それらが現れる全ての図において同じ参照番号によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の態様に係る例示的な絶縁型DC/DCコンバータの高レベルブロック図である。
図2A図2Aは、本開示のいくつかの態様に係る、図1のDC/DCコンバータの一実装形態を表す例示的な絶縁型DC/DCコンバータの概略回路図である。
図2B図2Bは、本開示のいくつかの態様に係る、図1のDC/DCコンバータの一実装形態を表す代替の例示的な絶縁型DC/DCコンバータの概略回路図である。
図3図3は、本開示のいくつかの態様に係る、さらに代替の例示的な絶縁型DC/DCコンバータの概略回路図であって、図2BのDC/DCコンバータと比較して付加的なLC回路を含んでいる。
図4図4は、本開示のいくつかの態様に係る例示的な絶縁型DC/DCコンバータの概略回路図である。
図5図5は、本開示のいくつかの態様に係る例示的な絶縁型DC/DCコンバータの概略回路図である。
図6図6は、本開示のいくつかの態様に係る、本明細書で説明するタイプのDC/DCコンバータで使用する例示的な駆動制御信号ユニットの概略回路図である。
図7図7は、本開示のいくつかの態様に係る、本明細書で説明するタイプのDC/DCコンバータの動作中に生成され得る様々な信号の概略的なタイミング図である。
図8図8は、本開示のいくつかの態様に係る、本明細書で説明するタイプのDC/DCコンバータで使用される例示的なゲートドライバ回路の概略回路図である。
図9図9は、本開示のいくつかの態様に係る例示的な絶縁型DC/DCコンバータ900の概略回路図である。
図10図10は、いくつかの実施形態に係る、携帯電子デバイス設定における装置の例示的なアプリケーションを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本出願の態様は、絶縁された回路の第1の側から絶縁バリアを横切って絶縁された回路の第2の側に直流(DC)信号を転送する絶縁回路を提供する。これらの絶縁回路は、第1の側の第1のDC信号、例えば電力信号を第2の側の第2のDC信号に変換するDC/DCコンバータを表す。本明細書でそれぞれ一次側および二次側とも称される、絶縁回路の第1の側と第2の側との間のガルバニック絶縁は、安全な回路動作および/またはデータの完全性を提供する。本出願の一態様によれば、絶縁回路は、絶縁バリアをブリッジするトランスを含み、トランスは一次側に1つの巻線を有し、二次側に別の巻線を有する。一次側は、一次側のトランスの巻線に信号を駆動する回路を含み、かつ、駆動回路と一次側のトランス巻線との間に電気的に結合された1つ以上のコンデンサを含む。一次側の駆動回路とトランス巻線との間にコンデンサを配置すると、少なくともいくつかの実施形態において、絶縁バリアを横切る望ましくない電流の流れを減少させる。
【0010】
共振型DC/DCコンバータは、コンバータの一次側に共振駆動回路を含むコンバータである。共振型DC/DCコンバータでは、入力DC電圧が一次側のドライバ回路に供給されて、供給される1つ以上の制御信号に従い特定の周波数の交流信号(AC信号)でトランスの一次巻線を駆動する。コンバータの二次側のトランスの二次巻線は、一次巻線に電磁結合され、一次巻線から伝えられたAC信号を受け取る。二次側の整流回路は、受け取ったAC信号をDC出力電圧に変換する。
【0011】
本発明者らは、2つの巻線間の相対的な電圧差が変化するとき、例えば一次巻線がドライバによって高い周波数で駆動されるとき、DC/DCコンバータにおける一次巻線と二次巻線との間の寄生容量により時変漏洩電流を生じることがあることを認識した。絶縁バリアを横切る漏洩電流は望ましくない。DC/DCコンバータの内部または近傍の導体を横切って、例えば回路部品を収容する回路基板内の様々な電気的グラウンド面を横切って、漏洩電流が流れると、高周波放射が発生して放出され、他の電子部品との干渉を引き起こす可能性がある。このような放射は、DC/DCコンバータが自動車または医療用途に使用されるときに特に望ましくない場合がある。
【0012】
本出願の態様は、絶縁型DC/DCコンバータにおける改善された電磁干渉性能を提供する。絶縁型DC/DCコンバータは、ドライバ回路に結合された一次巻線を備えたトランスを含む。対称な直列結合コンデンサがドライバ回路をトランスの一次巻線に接続する。このような構成は、少なくともいくつかの実施形態では、絶縁バリアを横切る漏洩電流からの放射を低減する。
【0013】
図1は、本開示の態様に係る例示的な絶縁型DC/DCコンバータ100の高レベルブロック図である。DC/DCコンバータ100は、ドライバ10および結合コンデンサ20を有する一次側1を備える。DC/DCコンバータ100は、一次巻線31を含むトランス一次側30を有するトランス40をさらに備える。DC/DCコンバータは、二次巻線51を含むトランス二次側50と整流器70とを有する二次側2をさらに備える。
【0014】
DC/DCコンバータ100において、DC電圧VDDおよび1つ以上の制御信号12がドライバ10に供給されて、結合コンデンサブロック20を介してトランス40の一次側30の一次巻線31を駆動する。一次巻線31は、絶縁バリア42を横切って二次巻線51に電磁的に結合され、絶縁バリア42は、誘電体から形成され得る。二次巻線51は整流器70に結合され、二次巻線51で受け取った信号を出力DC電圧VOUTPUTに変換する。
【0015】
いくつかの実施形態では、ドライバ10は、制御信号12に応答してDC電圧VDDを変調して、一次巻線31を特定の周波数の交流で駆動する。ドライバ10は、任意の適切な形態をとることができ、いくつかの実施形態では共振回路である。実施例を図2A、2Bおよび3〜5に示す。
【0016】
本発明者らは、同相電流がコンバータの絶縁バリアを横切る場合、DC/DCコンバータにおいて入力−出力双極子放出が発生する可能性があることを認識した。説明の目的で同相電流ICMを図1に示すが、以下でさらに詳細に説明するように、図示された回路構成により、このような電流の発生を制限、または完全に防止することができる。同相電流ICMの大きさは、(1)式のように計算し得る。
ICM=CISO・d(VPRI−VSEC)/dt (1)
【0017】
ここで、CISOは、一次巻線31と二次巻線51との間の寄生容量であり、VPRIおよびVSECは、それぞれトランス一次側30およびトランス二次側50の共通電圧である。いくつかの実施形態では、VPRIは、一次巻線31の2つの端子P1、P2における電圧の平均値によって表され、VSECは、二次巻線51の2つの端子S1、S2における電圧の平均値によって表される。同相電流は、例えば、装置内の電気的グラウンド面間のギャップを横切って電流を流すことによって、入力−出力双極子放射を発生させる可能性がある。
【0018】
本発明者らは、DC/DCコンバータの動作中のVPRIの変動速度を低減することにより、同相電流ICMによる双極子放出を低減し、それにより装置の電磁干渉性能を改善できることを理解した。いくつかの実施形態では、結合コンデンサ20は、一次巻線31とドライバ10との間に1つ以上の直列コンデンサを含むことができる。直列コンデンサは、そして、少なくとも一部の実施形態では、ドライバ10が、制御信号12に応答して、ある周波数で一連の電圧パルスを供給するように構成されているときに、一次巻線の2つの端子P1、P2における電圧の変動速度を遅らせることができる。いくつかの実施形態では、ドライバ10におけるゼロ電圧スイッチングなどのソフトスイッチング技術を使用して、一次巻線の2つの端子P1、P2における電圧の変動を低減することができる。
【0019】
一次巻線31および二次巻線51は、絶縁バリア42を横切って電力を伝えるように、互いに電磁的に結合された任意の適切な導体コイルであってもよい。好ましい実施形態によれば、図1の絶縁型DC/DCコンバータ100の一次巻線31および二次巻線51は、同一の半導体基板(図示せず)に集積して、パッケージングスペースを節約し、かつ、結合効率を改善することができる。いくつかの実施形態では、一次巻線31および二次巻線51は、同じ半導体基板上に製造されたオンチップトランス42の一部であってもよい。一実施例では、一次巻線31および二次巻線51は、両方の巻線のコアに磁気活性材料を有しずに、同じ半導体基板の1つ以上の面に配置されたスパイラル金属導体(以下、「空心トランス」とも称する)を備えることができる。別の実施例では、オンチップトランスの一次巻線および二次巻線の両方のコアに高透磁率材料を設けて(以下、「磁心トランス」とも称される)、同じ寸法の巻線を有する空心トランスと比較して巻線の自己インダクタンスおよび相互インダクタンス値を増加させるか、または同じインダクタンス値の空心トランスと比較してトランスの占有面積を小さくすることができる。一実施例では、磁気コアトランスは、CoZrTaを備えるが、任意の適切な磁性材料をコアに使用することができることを理解されたい。
【0020】
図2Aは、図1のDC/DCの1つの非限定的な実装形態を表す例示的な絶縁型DC/DCコンバータ200Aの概略回路図である。DC/DCコンバータ200Aは、4つのスイッチQ1、Q2、Q3、およびQ4を含むフルブリッジドライバ210と、直列コンデンサCS1を含む結合コンデンサブロック220Aと、第1の端子P1および第2の端子P2を有する一次巻線231と、インダクタ233と、絶縁バリア242を横切って一次巻線231から絶縁された二次巻線251と、整流器270とを備える。
【0021】
本開示のいくつかの態様によれば、直列コンデンサCS1は、フルブリッジドライバ210の電圧ノードN1を第1の端子P1と容量結合する。いくつかの実施形態では、直列コンデンサCS1は、フルブリッジドライバ210を一次巻線231の第1の端子P1と接続し、フルブリッジドライバの電圧ノードN1から直列コンデンサCS1を介して一次巻線 231を横切り、フルブリッジドライバの電圧ノードN2に至る直列電流経路を形成する。
【0022】
いくつかの実施形態では、DC/DCコンバータ200Aの動作中、フルブリッジドライバ210内のスイッチは、外部制御信号(図示せず)によって順次に開閉するよう制御されて、ある周波数のAC電流が、フルブリッジドライバの電圧ノードN1から直列結合コンデンサCS1を介して一次巻線231の第1の端子P1に流れるようにする。一次巻線231を通って流れるAC電流は、二次巻線251の2つの端子S1とS2との間に対応する電圧信号を生成する。その電圧信号は、整流器270において整流され、DC出力電圧VOUTPUTを供給する。
【0023】
いくつかの実施形態では、直列コンデンサCS1およびインダクタ233を備えて共振LCタンク回路が形成され、DC/DCコンバータ200Aは共振コンバータとなる。インダクタ233は、共振LCタンク回路を形成するための任意の適切なインダクタとすることができ、いくつかの実施形態では、インダクタ233は一次巻線231の漏洩インダクタンスであってもよい。図2Aには示されていないが、いくつかの実施形態では、共振LCタンク回路は、付加的なコンデンサおよび/またはインダクタンスを備えることができる。
【0024】
図2Bは、図1のDC/DCコンバータの代替の実装形態を表す代替の例示的な絶縁型DC/DCコンバータ200Bの概略回路図である。DC/DCコンバータ200Bは、図2AのDC/DCコンバータ200Aのいくつかの構成要素を共有するが、結合コンデンサブロック220Bは、直列コンデンサCS1と第2の直列コンデンサCS2の両方を含む点で異なる。いくつかの実施形態では、これらのコンデンサは同じ値(対称)を有することができる。一次巻線231およびインダクタ233は、結合コンデンサCS1とCS2との間に直列に配置される。
【0025】
DC/DCコンバータ200Bの実施例では、直列コンデンサCS1は、フルブリッジドライバ210の電圧ノードN1を第1の端子P1と容量結合し、一方、直列コンデンサCS2は、フルブリッジドライバ210の電圧ノードN2を一次巻線231の第2の端子P2に容量結合している。いくつかの実施形態では、フルブリッジドライバ210の電圧ノードN1から直列コンデンサCS1を介して一次巻線231の端子P1およびP2を横切り、直列コンデンサCS2を通ってフルブリッジドライバの電圧ノードN2に至る直列電流経路が形成される。
【0026】
いくつかの実施形態では、DC/DCコンバータ200Bの動作中、フルブリッジドライバ210内のスイッチは、外部制御信号(図示せず)によって順次に開閉するよう制御されて、ある周波数のAC電流が、フルブリッジドライバの電圧ノードN1から直列結合コンデンサCS1を介して一次巻線231の第1の端子P1に流れるようにする。一次巻線231を横切って流れた後、AC電流は第2の端子P2を出て、直列コンデンサCS2を通ってフルブリッジドライバの電圧ノードN2に流れる。一次巻線231を通って流れるAC電流は、二次巻線251の2つの端子S1とS2との間に対応する電圧信号を生成する。その電圧信号は、整流器270において整流され、DC出力電圧VOUTPUTを供給する。
【0027】
電流の振幅および方向が電圧ノードN1から一次巻線231を通って電圧ノードN2に至る電流経路に沿って遷移中に、直列コンデンサCS1およびCS2により、一次巻線の2つの端子P1およびP2の電圧は実質的に対称になることができ、少なくともいくつかの実施形態では対称になる。したがって、一次巻線における同相電圧変動が低減され、ひいては双極子放射が低減され、電磁干渉(EMI)性能が改善され得る。
【0028】
図3は、本開示のいくつかの態様に係る例示的な絶縁型DC/DCコンバータ300の概略回路図である。DC/DCコンバータ300は、図2BのDC/DCコンバータ200Bのいくつかの構成要素を含むが、一次巻線331に並列のインダクタ332と、インダクタ333と、並列コンデンサCCL1およびCCL2とをさらに含む点で異なる。
【0029】
図示のように、並列コンデンサCCL1は、フルブリッジドライバ210のスイッチQ4と並列に接続され、CCL1が電圧ノードN1とグラウンドとの間に接続される。並列コンデンサCCL2は、フルブリッジドライバ210のスイッチQ2と並列に接続され、CCL2が電圧ノードN2とグラウンドとの間に接続される。いくつかの実施形態では、DC/DCコンバータ300は、インダクタ332、333と直列コンデンサCS1およびCS2とを有する共振LCタンク回路を備えることができる。図3には示されていないが、いくつかの実施形態では、共振LCタンク回路は、付加のコンデンサおよび/またはインダクタンスを備えてもよい。インダクタ333は、共振LCタンク回路を形成するための任意の適切なインダクタとすることができ、いくつかの実施形態では、インダクタ333は一次巻線331の漏洩インダクタンスであってもよい。インダクタ332は、共振LCタンク回路を形成するための任意の適切なインダクタとすることができ、いくつかの実施形態では、インダクタ332は一次巻線331の磁化インダクタンスであってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、フルブリッジドライバ210は、VDDとグラウンドとの間のHブリッジであり、DC/DCコンバータ300は、共振コンバータである。スイッチQ1、Q2、Q3およびQ4は、制御信号(図示せず)によって駆動され、順次に開閉して、一次巻線331を通る交流電流を駆動する。交流電流の周波数は、共振LCタンク回路の共振周波数に少なくとも部分的に基づいている。
【0031】
いくつかの態様によれば、DC/DCコンバータ300を動作させるとき、動作シーケンスの第1のフェーズ中、Hブリッジドライバ210のスイッチQ1およびQ4は開状態であり、Q2およびQ3は閉状態のままである。電流は、VDDから電圧ノードN1、直列コンデンサCS1を通り、一次巻線の端子P1およびP2を横切り、直列コンデンサCS2を介して電圧ノードN2に戻りグラウンドに流れる。シーケンスの第2のフェーズ中、Hブリッジドライバ210において、全てのスイッチQ1〜Q4がオフである。この第2のフェーズは、スイッチがオンしていない非重複期間とも称される。インダクタ332における残留電流は、並列コンデンサCCL1およびCCL2を通ってグラウンドに流れる。並列コンデンサCCL1およびCCL2は、第1の期間の終わりにターンオフされるときのスイッチQ2およびQ3と、第3の期間の始めにターンオンされるときのスイッチQ1およびQ4のソフトスイッチングを可能にし、その結果、電流がオン状態とオフ状態との間で遷移するときに、任意の所与のスイッチングがほぼゼロの電圧を有するようになる。このようなゼロ電圧スイッチングは、コンバータ効率を改善し、ドライバ内部および一次巻線331の端子における電圧変動を緩慢にするのに効果的である。第3のフェーズの最後で、ドライバは再び第2のフェーズと同様に構成され、全てのスイッチがオフになる。その上、フェーズシーケンスは、第1のフェーズから第2のフェーズ、第3のフェーズ、そして第2のフェーズに戻ることを繰り返すことができる。このシーケンスは何度でも繰り返すことができる。
【0032】
ゼロ電圧スイッチングが図3のDC/DCコンバータ300に関して説明されているが、ゼロ電流スイッチングのような他のソフトスイッチング方式を付加的または代替的に使用することができる。CCL1およびCCL2は、図3において両方ともグラウンドに接続されているように示されているが、必要に応じて、かつ代替的に、CCL1およびCCL2の一方または両方は、スイッチQ1およびQ3の一方と並列に接続され、電圧ノードN1/N2とVDDとの間にそれぞれ接続されてもよい。いくつかの実施形態では、4つの並列コンデンサが設けられ、それぞれがHブリッジドライバ210の4つのスイッチQ1、Q2、Q3、およびQ4のそれぞれと並列に結合される。
【0033】
本発明者らは、製造公差および/または環境効果などの要因が、フルブリッジまたはHブリッジ駆動回路210内のスイッチ間のバラツキをもたらし得ることを理解した。4つのスイッチQ1〜Q4の各々からの寄生容量の差は、動作の異なるフェーズの間の一次トランス巻線内の非対称な電圧および/または電流につながり、それは、2つの端子における同相電圧の増加に寄与し、かつ、絶縁バリア242を横切る同相電流の増加による電磁干渉を増大させることにつながる。いくつかの態様によれば、並列コンデンサCCL1およびCCL2の値は、4つのスイッチQ1〜Q4の各々の寄生容量よりも著しく大きくなるように選択することができる。スイッチ間の寄生容量の不一致が、選択された並列CCL1およびCCL2の値に比べて非常に小さくなると、寄生不整合による電磁干渉が抑制され得る。並列コンデンサの値は、寄生容量の2倍の値、または5倍、10倍、20倍、少なくとも10倍大きく、または2倍から50倍の間、または、そのような範囲内の任意の値ないしは範囲とすることができる。1つの非限定的な例では、寄生容量は80pFの値を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、CCL1およびCCL2などの並列コンデンサは、ドライバ回路210と同じ基板上に配置された内部コンデンサとして提供されてもよい。しかしながら、任意の適切な製造およびパッケージング方法を使用することができる。
【0035】
好ましい実施形態では、図3に示す一対の直列コンデンサCS1およびCS2は、実質的に同じサイズないしは容量値である。以下でさらに説明するように、2つの直列コンデンサCS1およびCS2の容量値の間のそのような対称性は、一次巻線331における同相電圧変動を抑制することを助けることができる。上記シーケンスの第1フェーズの最後おいて、スイッチQ1〜Q4は、第1の非重複期間の開始時に全てオフにされ、端子P1およびP2における電圧値VP1およびVP2は、それぞれコンデンサCCL1およびCCL2を介して接地される。CS1、一次巻線331および共振インダクタ332を横切り、CS2を通って流れ、CCL2を介してグラウンドに流出する残留電流が電圧ノードN1から生じる。第1のフェーズから第2のフェーズに移行する、このターンオフ時の間、VP1およびVP2のどのような変化も、それぞれ直列コンデンサCS1およびCS2の静電容量を乗算した、一次巻線331およびインダクタ332における残留電流の変化に比例する。同様に、上記シーケンスの第3のフェーズの最後と別の非重複期間との間の遷移において、4つのスイッチQ1〜Q4の全てがオフにされ、CS2、一次巻線331および共振インダクタ332を横切り、CS1を通って流れ、コンデンサCCL1を介してグラウンドに流出する残留電流が電圧ノードN2から生じる。この第2のターンオフ時の間に、端子P1およびP2における電圧値VP1およびVP2は、それぞれコンデンサCCL1およびCCL2を介して接地され、一方、VP1およびVP2のどのような変化も、それぞれ直列コンデンサCS1およびCS2の静電容量を乗算した、一次巻線331およびインダクタ332における残留電流の変化に比例する。CS1=CS2、かつ、上述の2つの非重複期間において一次巻線331およびインダクタ332の残留電流が同じ振幅であるが反対方向である場合、1つの非重複期間におけるVP1およびVP2の変化は、後続の非重複期間の変化に伴って相殺される。その結果、このような完全に対称なDC/DC共振コンバータの一次巻線における同相電圧の平均値の変動が抑制され、電磁干渉(EMI)性能が改善される。一次巻線における同相電圧の変動の抑制ついて、スイッチがオフされたときのターンオフ時に関し上記の例で説明されているが、実質的に等しい容量値を有する一対の直列コンデンサCS1およびCS2は、ドライバの1つ以上のスイッチが非重複期間からオンにされるターンオン時の間に同相電圧の変動を抑制するのに役立つことも理解されるべきである。
【0036】
いくつかの実施形態では、直列コンデンサCS1およびCS2は、ドライバ回路210および一次巻線331に対して外部コンデンサとして提供され、それらは、分離された基板上にあってもよく、駆動回路210および巻線331がパッケージングされたパッケージの外側でさえもよいことを意味する。しかしながら、他の構成も可能である。1つの非限定的な実施例では、直列コンデンサCS1およびCS2のそれぞれは1nFの値を有するが、他の値も可能である。
【0037】
図4は、本開示のいくつかの態様に係る例示的な絶縁型DC/DCコンバータ400の概略回路図である。DC/DCコンバータ400は、図3のDC/DCコンバータ300のいくつかの構成要素を含むが、2つのスイッチQ1aux、Q2auxを備えたプリチャージ回路414を付加的に含む点で異なる。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、プリチャージ回路414がフルブリッジドライバ210に結合され、スイッチQ1auxがVDDと電圧ノードN1との間に接続され、スイッチQ2auxが電圧ノードN2とグラウンドとの間に接続される。プリチャージ回路414は、DC/DCコンバータ400が最初にターンオンにされるとき、およびCS1、CS2、インダクタ333、332を含むLCタンク共振器回路がまだ励起されていないときに起動することができる。起動されると、プリチャージ回路414は、VDDから、Q1aux、電圧ノードN1、コンデンサCS2、一次巻線331、コンデンサCS1、電圧ノードN2、およびスイッチQ2auxを通るグラウンドまでの電流注入経路を生成する。一実施形態では、制御信号412を使用してプリチャージ回路414を起動し、スイッチQ1aux、Q2auxをオンにしてLCタンク共振器回路に電流を注入し、共振器を「キックスタート」して、振動を達成するための共振器の時間を短縮することができる。プリチャージ回路は、フルブリッジドライバ210が最初にオンにされている間、同相電流を低減するために使用されてもよい。同じ機能を達成するために、代替的にプリチャージ回路の他の形態を実現することができる。
【0039】
図5は、本開示のいくつかの態様に係る例示的な絶縁型DC/DCコンバータ500の概略回路図である。DC/DCコンバータ500は、図4のDC/DCコンバータ400のいくつかの構成要素を含むが、2つの端子S1、S2を有する二次巻線551と、4つのダイオードD1〜D4を有するダイオードブリッジ、並列コンデンサCCL3を備えた整流器570と、補償誤差増幅器572と、パルス幅変調(PWM)比較器574と、エンコーダ523と、デコーダ524と、フィードバックトランス541と、発振器522と、Qフリップフロップ518と、駆動制御信号ユニット516とを付加的に含む点で異なる。DC/DCコンバータ500は、複数の抵抗器576、577、578、およびコンデンサ579をさらに備える。
【0040】
いくつかの実施形態では、DC/DCコンバータ500の二次側で、フルダイオードブリッジD1〜D4は、二次巻線551の端子S1、S2で受け取った電圧を整流し、受け取った電圧を出力DC電圧VOUTに変換する。一実施例では、ダイオードD1〜D4は、ショットキダイオードであってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、二次巻線の2つの端子S1、S2と並列に並列コンデンサCCL3が設けられる。並列コンデンサCCL3は、端子S1、S2の電圧変動を緩和し、絶縁バリアを横切る同相電流を抑制してEMI性能を向上させるのに役立つ。
【0042】
いくつかの実施形態では、誤差増幅器572、VOUTを表すフィードバック(FB)信号を変調するように構成されたPWM比較器574を備えたフィードバックループが形成される。一実施例では、フィードバック信号は増幅器572に結合され、PWM比較器574で200KHzの鋸波信号と比較する前に基準信号VREFと比較される。PWM比較器574の出力PWM信号は、トランス541を横切ってフィードバック信号として一次側に伝えられる。エンコーダ523およびデコーダ524は、発振器522によって生成された高周波発振器信号をQフリップフロップ518で変調するために、伝えられたフィードバック信号を送る前に、任意の数の符号化および復号化機能を実行することができる。変調された信号は、プリチャージ回路414およびフルブリッジドライバ210内のスイッチを制御するための制御信号512を生成するために、駆動制御信号ユニット516に送られる。いくつかの実施形態では、発振器周波数は、10MHz、15MHz、20MHz、24MHz、30MHz、40MHz、5〜15MHz、15〜30MHz、またはこれらの範囲内の任意の値または範囲であってもよい。
【0043】
DC/DCコンバータ500は、放射を抑制し、電磁干渉性能を向上させることができる。いくつかの実施形態では、CISPR22クラスB規格で定義されるEMI性能は、少なくとも5dB、10dB、15dB、5〜15dBのマージン、またはその範囲内の任意の値または範囲で前記規格を超えることができる。いくつかの実施形態では、EN55022クラスB規格で定義されるEMI性能は、少なくとも5dB、10dB、15dB、20dB、5〜15dBのマージン、またはその範囲内の任意の値または範囲で前記規格を超えることができる。いくつかの実施形態では、本開示の態様に従って実現されるDC/DCコンバータの電力変換効率は、少なくとも30%、40%、または30〜40%、または40〜50%の値を有することができる。
【0044】
図6は、本開示のいくつかの態様に係る、本明細書で説明するタイプのDC/DCコンバータで使用する例示的な制御回路600の概略回路図である。制御回路600は、図5に示した駆動制御信号ユニット516および発振器522の例示的な実装形態を備える。図6の例示的な回路図において、制御回路600は、バッファ601、602、発振器604、比較器606、Qフリップフロップ608、610、遅延回路612、有効無効論理614を備える。駆動制御信号ユニット516は、出力アンドゲート622、624および626をさらに備える。
【0045】
本開示のいくつかの態様によれば、制御回路600は、図5に示したDC/DCコンバータ500におけるプリチャージ回路414およびフルブリッジドライバ210におけるスイッチの開閉を制御して、図3〜5に関して上述したようにプリチャージ回路の電流注入を提供するなどドライバの様々なフェーズを実現するために、ゲート622、624および626の出力に複数の電圧波形を生成するように構成される。制御回路600において、発振器604および比較器606は、高周波ゲート駆動信号618を生成するように構成されている。ゲート駆動信号618は、10MHz、15MHz、20MHz、24MHz、30MHz、34MHz、40MHz、5〜15MHz、15〜40MHz、またはこれらの範囲内の任意の値または範囲であってもよい。ゲート駆動信号618は、非重複時間を生成するために、遅延回路612によって変調され、有効無効論理614およびQフリップフロップ608、610は、ゲート622の出力に制御信号DRV_SIG2、ゲート624の出力に制御信号DRV_SIG1、およびゲート626の出力に制御信号DRV_SIG1_AUXを供給する。発振器および比較器は、DC/DCコンバータの動作中、高周波発振信号を供給するために連続的に動作することができる。代替的に、かつ必要に応じて、LC共振タンク回路がオフであり送信していないとき、発振器および比較器をオフにして電力を節約し、効率を高めることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、DRV_SIG1およびDRV_SIG2は、それぞれ、図5に示す駆動制御信号ユニットの出力における制御信号512であり、図2A、2Bおよび3〜5に示されるようなDC/DCコンバータのいずれかのフルブリッジドライバ内のスイッチ対Q2/Q3およびQ1/Q4のゲートの開閉を駆動するように構成されている。いくつかの実施形態では、DRV_SIG1およびDRV_SIG2は、図3に関連して上述したように、共振型DC/DCコンバータの動作の第1のフェーズ中にスイッチ対Q2/Q3を開閉することを可能にするパルスシーケンスを含むことができる。DRV_SIG1およびDRV_SIG2は、図3に関連して上述したように、共振型DC/DCコンバータの動作の第3のフェーズ中にスイッチ対Q1/Q4を開閉することを可能にするパルスシーケンスを含むこともができる。遅延回路612の出力は、制御信号REF_RTBBMに基づいて、第1のフェーズおよび第3のフェーズにおけるスイッチペアオープンの間のブレーク・ビフォワ・メーク(BBM)時間を生成および変調することができる。したがって、ブレーク・ビフォワ・メーク時間は、図3に関して上述したように、第2のフェーズに対応する非重複時間と称することもできる。任意の適切な非重複時間期を選択して、図2A図2B、および図3〜5のいずれかのフルブリッジドライバ210のようなフルブリッジドライバにおけるスイッチがソフトスイッチングを行って変換効率を高め、同相電流の放出を低減するように制御することができる。1つの非限定的な実施例では、非重複期間は6.4ナノ秒(ns)である。別の実施例においては、非重複期間は4.8nsである。非重複時間の代替値、例えば3および10ns前の任意の時間、または他の任意の適切な時間値が可能である。
【0047】
制御信号DRV_SIG1_AUXは、図4および図5に示すプリチャージ回路414などのプリチャージ回路を駆動するように構成することができる。いくつかの実施形態では、DRV_SIG1_AUXは、プリチャージ回路内のトランジスタを起動して、一次巻線を備える共振LC回路を始動させるために、電流を注入するように構成することができる。
【0048】
図7は、本開示のいくつかの態様に係る、本明細書で説明するタイプのDC/DCコンバータの構成要素によって生成され得る様々な信号の概略タイミング図である。より具体的には、タイミング図700は、DC/DCコンバータ500および制御回路600の様々な構成要素の出力における時間の関数としての信号波形間の時間的関係を示す。タイミング図700は、それぞれ、例示的な信号波形である、図6の電圧PWMを表すPWM、図6の抵抗器RTにおける電圧を表すCT_RT、図6の抵抗器RT BBMにおける電圧を表すCT_RTBBM、図6の有効無効論理614の出力を表すENA_INT、フリップフロップ608および610の出力を表すDRV_PULおよびDRV_PUL_DIVと、出力駆動信号DRV_SIG_AUX、DRV_SIG1およびDRV_SIG2を含んでいる。
【0049】
タイミング図700は、パルス幅変調信号PWMのオン状態への遷移が、時刻t1で開始するCT_RTでの発振信号と同期することができることを示している。いくつかの実施形態では、PWMは、図5に示すように、DC/DCコンバータ500の出力における信号FBによって変調されたPWM比較器574からのフィードバックPWM信号であってもよい。いくつかの実施形態では、DRV_SIG_AUX、DRV_SIG1およびDRV_SIG2のような駆動制御信号は、ある遅延時間(t1とt2との間)が経過して、図6の比較器606および発振器604が整定し安定するまで供給され得ない。いくつかの実施形態では、パルス出力の遅延は、図6に示される有効無効論理614の出力ENA_INTに基づいている。1つの非限定的な実施例では、発振器604は、時刻t2におけるゲート駆動制御信号の開始に先立って、CT_RTの4サイクルの間に整定することが許される。
【0050】
いくつかの実施形態では、フリップフロップ608から出力される駆動パルスDRV_PULは、CT_RTBBMに基づいて非重複時間またはブレーク・ビフォワ・メーク時間(t3とt4との間)で変調されてもよい。DRV_SIG2は、t5とt9の間の駆動期間の開始時にフルブリッジドライバ210のスイッチQ2とQ3の対を周期的にオンにするように構成される。DRV_SIG1は、t7とt10の間の駆動期間の開始時にフルブリッジドライバ210のスイッチQ1とQ4の対を周期的にオンにするように構成される。一対のスイッチQ2およびQ3がオン状態に維持されている期間(t5とt6との間)は、図3に関連して上述した動作シーケンスの第1のフェーズであってもよく、一方、一対のスイッチQ1およびQ4がオン状態の間に維持されている期間(t7とt8との間)は、動作シーケンスの第3のフェーズであってもよい。しかしながら、例えば、第1のフェーズの間にスイッチ対Q1およびQ4をオンにするなど、第1および第3のフェーズのための他の構成を使用することもできる。t6とt7、およびt8とt9との間の非重複時間は、動作シーケンスの第2のフェーズを表すことができ、t3とt4の間の非重複時間またはブレーク・ビフォア・メーク時間によって制御される。
【0051】
DRV_SIG_AUXは、プリチャージ回路414内のスイッチを起動するように構成されている。これは、時刻t2におけるゲート駆動制御信号の出力の開始直前であって、DRV_SIG1およびDRV_SIG2に従ってフルブリッジドライバ内のスイッチをオンにして一次トランス巻線を備える共振回路に電流を注入する前の期間t11とt12との間に行われる。
【0052】
時刻t14において、ドライバ信号DRV_SIG2の1つの立ち下がりエッジは、ドライバ制御信号シーケンスの無効信号を表す。時刻t14は、信号PWMの立ち下がりエッジt13と異なり、無効信号をドライバ制御信号シーケンスの出力と同期させることができる。駆動制御信号DRV_SIG1およびDRV_SIG2に対して3つ未満のドライバ期間が示されているが、DC/DCコンバータの絶縁バリアを横切って電力を送信するために、t2とt14の間に任意の適切な回数の繰り返しを設けることができる。
【0053】
図8は、本開示のいくつかの態様に係る、本明細書で説明するタイプのDC/DCコンバータで使用される例示的なゲートドライバ回路800の概略回路図である。
【0054】
本開示のいくつかの態様によれば、例示的なゲートドライバ回路800は、2つの反転増幅器804、806を備える対称ゲートドライバと、8つのトランジスタT9〜T16を備える第1のトランジスタ段808と、NMOSトランジスタT1、T2、一対のPMOSトランジスタT3、T4、および4つのトランジスタT5〜T8を備える第2のトランジスタ段810であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、対称ゲートドライバ800の出力ノードOUTA/OUTBは、図6および図7による信号DRV_SIG2に応答して、スイッチQ1およびQ4の垂直対をほぼ同時にオンおよびオフするように構成される。また、対称ゲートドライバ800の出力ノードOUTA/OUTBは、図6および図7による信号DRV_SIG1に応答して、スイッチQ2およびQ3の垂直対をほぼ同時にオンまたはオフするように構成することもできる。いくつかの実施形態では、スイッチQ1およびQ4の垂直対、およびスイッチQ2およびQ3の対をそれぞれオンおよびオフにするように構成された、2つの対称ゲートドライバを設けることができる。対称ゲートドライバ構成は、2つのトランス端子における電圧波形が対称となり、双極子放射を引き起こす同相電圧を抑制するように、対における両方のスイッチをオン/オフする間の遅延を低減するのに役立つ。
【0056】
図9は、本開示のいくつかの態様に係る例示的な絶縁型DC/DCコンバータ900の概略回路図である。DC/DCコンバータ900は、図1のDC/DCコンバータ100および図5のDC/DCコンバータ500のいくつかの構成要素を含むが、一対のバイアス抵抗器RBias1、RBias2および2つの電圧ノードVOA、VOBを付加的に含む。
【0057】
図9に示す実施例において、バイアス抵抗器RBias1およびRBias2は、それぞれ二次巻線S1/S2の一端子と電圧VOA/VOBとの間に結合されている。いくつかの実施形態では、両方の電圧VOA、VOBは、VOAおよび/またはVOBに近い値で、2つの端子S1、S2の電圧を安定させるためのDC/DCコンバータの出力電圧VOUTを表す。一実施形態では、RBias抵抗器は同じ値であり、VOA、VOB電圧値はVOUTのおよそ半分の値に設定される。バイアス抵抗器を介して二次巻線の端子S1およびS2を出力電圧の半分でシャントすることにより、フルブリッジドライバのオフ状態からフルブリッジドライバのオン状態へ遷移中、二次巻線の2つの端子S1およびS2間の出力電圧の急激な変動を低減でき、一次巻線と二次巻線との間の絶縁バリアを横切る同相電流によるEMIが改善される。
【0058】
本明細書に記載された絶縁型DC/DCコンバータは、様々な用途に使用することができる。例えば、自動車、民生機器、産業および医療用途には、全て本明細書に記載の技術を利用することができる。
【0059】
図10は、いくつかの実施形態に係る、携帯電子デバイス設定における装置の例示的な用途を示す概略図である。絶縁型DC/DCコンバータ1000は、携帯電子デバイス1001に使用され、低EMIの絶縁バリアを横切って電力を伝えることができる。したがって、DC/DCコンバータ1000に近接している携帯電子デバイス1001内のセンサ、アンテナおよび電気信号伝送ラインは、DC/DCコンバータ1000から放出されるEMIの影響を受けない。携帯電子デバイス1001は、スマートフォン、携帯情報端末(pda)、タブレット、または他の携帯デバイスであってもよい。他のこのような装置も、本明細書に記載のタイプのDC/DCコンバータを使用することができる。
【0060】
図10は、本出願の態様を組み込んだ携帯電子デバイスの例を示しているが、他の使用も可能である。例えば、1つ以上の絶縁型DC/DCコンバータデバイスを自動車または医療機器に使用することができる。本出願の様々な実施形態は、高効率、低EMIのDC/DC電力変換を提供するために実現されてもよい。
【0061】
「およそ」および「約」という用語は、いくつかの実施形態では目標値の±20%以内、いくつかの実施形態では目標値の±10%以内、いくつかの実施形態では目標値の±5%以内、またはいくつかの実施形態では目標値の±2%以内である。「およそ」および「約」という用語は、目標値を含むことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 一次側
2 二次側
10 ドライバ
20 結合コンデンサ
30 トランス一次側
40 トランス
50 トランス二次側
70 整流器
100 DC/DCコンバータ
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10