(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
家電、自動車、建築等の各産業分野では、防塵、防水等を目的として、種々の部材(又は箇所)をシールするために各種工業用シール材が使用されている。
【0003】
そのような工業用シール材としては、例えば、下記のものが例示できる:
シリコーン系シール材、ウレタン系シール材、ブチルゴム系シール材、ポリサルファイド系シール材等の反応固化型シール材;天然ゴム、合成ゴム等からなる成形パッキン;並びにスチレン系ホットメルト型シール材、ブチル系ホットメルト型シール材等の熱可塑性ホットメルト型シール材。
【0004】
近年、各産業分野において、生産現場の効率化から部材組立工程の自動化が進められており、アプリケーターなどを用いたシール材の自動塗布による効率化が要求されている。かかる自動塗布の態様としては、シール対象となる部位にアプリケーターなどを用いてシール材を直接塗付する態様、金型成形物としてのシール材を得るために金型にシール材を直接注入する態様等が挙げられる。
【0005】
しかしながら、上記シール材には、下記のような問題がある。
【0006】
例えば、反応固化型シール材は、アプリケーターなどにより自動塗布することはできるが、休暇やライントラブルによるライン停止又は中断の際にアプリケーター内でシール材の反応固化が進むため、ライン再開時にアプリケーターなどの内部洗浄が必要となり完全な自動化には適さない。また、反応固化であるため、塗工環境の温度又は湿度により反応の進行が一定ではないことから、実際の使用には熟練度が求められる。
【0007】
また、反応固化型シール材を金型などに流し込み、形状を組立部材に適合する形状に成形する場合には、反応固化により成形物を得るまでに時間がかかるため自動化には適さないと考えられる上、離型性にも改善の余地がある。
【0008】
これに対して、熱可塑性ホットメルト型シール材は、易剥離性が高く、圧縮永久歪みが小さいシール材として報告されている(特許文献1及び2参照)。
【0009】
特許文献1には、重量平均分子量が25万以上の、SEEPS(スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体)100質量部に対して、水酸基価が20〜200(mgKOH/g)であるテルペンフェノール樹脂5〜500質量部と、炭化水素系可塑剤350〜2000質量部とを含有したホットメルト組成物が開示されている。また、所定のホットメルト組成物は、ポリオレフィン基材に対するシール性及び解体性に優れることが記載されている。
【0010】
特許文献2には、(A)スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部当たり、(B)耐熱性ポリマー:1〜200重量部、プロセスオイル、液状ゴム及びこれらの変性物から選択された(C)液状軟化剤:5〜100重量部及び(D)粘着付与剤:5〜250重量部を含んで成る樹脂組成物であって、気泡を更に含む樹脂組成物が開示されている。また、所定の樹脂組成物は、易剥離性が高いにもかかわらず、シール性及び耐熱性に優れ、ブ
リードアウトが実質的になく、圧縮永久歪み等が改良され、シール材、接着剤等に適することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1、2に記載のホットメルト組成物及び樹脂組成物を熱可塑性ホットメルト型シール材として用いる場合には、下記のような問題点があることが指摘されている。
【0013】
例えば、特許文献1のホットメルト組成物は、流動性を担保するために多量の液状軟化剤(オイルなど)を含むことにより、液状軟化剤の戻り(ブリードアウト)が生じる問題がある。
【0014】
また、液状軟化剤の含有量を少なくすると、ホットメルト組成物の溶融粘度が高くなり塗工適性に劣るという問題がある。このため、ホットメルトアプリケーターを使用する場合には塗工温度を通常温度よりも高くする必要があり、熱劣化によってホットメルト組成物の性状が変化し、不快な臭気を発生し、使用者の安全性が低下するという問題がある。更に、金型に流し込んで組立部材へ適合した形状に形成する場合にも、溶融粘度が高すぎることによって、成形不良が生じ易くなる問題がある。
【0015】
特許文献2の樹脂組成物は、液状軟化剤の含有量が特許文献1のホットメルト組成物と比較して少ないため、ブリードアウトは発生し難くなるが、樹脂組成物の溶融粘度が高くなり塗工適性に劣るという問題がある。このため、特許文献1の場合と同様、ホットメルトアプリケーターを使用する場合には塗工温度を通常温度よりも高くする必要があり、熱劣化によってホットメルト組成物の性状が変化し、不快な臭気を発生し、使用者の安全性が低下するという問題がある。また、金型に流し込んで組立部材へ適合した形状に形成する場合にも、溶融粘度が高すぎることによって、成形不良が生じ易くなる問題がある。
【0016】
更に、特許文献2の樹脂組成物は、気泡を含むことで樹脂組成物のシール性を確保しているが、気泡を含んでいるために汎用の(通常の)ホットメルトアプリケーターでは塗工できず、専用のホットメルトアプリケーターが必要となる。
【0017】
このように、現在のところ、汎用のホットメルトアプリケーターで自動塗布が可能な程度に溶融粘度が低く、且つ金型成形性及び離型性が高いにもかかわらず、シール性に優れ、しかも液状軟化剤のブリードアウトが抑制されているホットメルト組成物は未だ開発されていない。
【0018】
よって、本発明は、汎用のホットメルトアプリケーターで自動塗布が可能な程度に溶融粘度が低く、且つ金型成形性及び離型性が高いにもかかわらず、シール性に優れ、しかも液状軟化剤のブリードアウトが抑制されているホットメルト組成物及びそれを用いたシール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のスチレン系熱可塑性エラストマーの水素添加物を含むホットメルト組成物によれば上記目的を達成できることを見
出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明は、下記のホットメルト組成物及びシール材に関する。
1.スチレン系ブロック共重合体(A)と液状軟化剤(B)とを含有するホットメルト組成物であって、
(1)前記スチレン系ブロック共重合体(A)は、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体及びスチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレン(SIBS)共重合体からなる群から選択される少なくとも一種のスチレン系熱可塑性エラストマーの水素添加物であり、
(2)前記スチレン系ブロック共重合体(A)100質量部に対する前記液状軟化剤(B)の含有量が150〜450質量部であり、
(3)前記ホットメルト組成物は、140℃における溶融粘度(η1)と180℃における溶融粘度(η2)との粘度比(η1/η2)が2〜15であり、且つ180℃における溶融粘度が2000mPa・s以下である、
ことを特徴とするホットメルト組成物。
2.前記スチレン系ブロック共重合体(A)は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)共重合体、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEEPS)共重合体及びスチレン−ブチレン−ブタジエン−スチレン(SBBS)共重合体からなる群から選択される少なくとも一種である、上記項1に記載のホットメルト組成物。
3.前記スチレン系ブロック共重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が20000〜100000である、上記項1又は2に記載のホットメルト組成物。
4.23℃環境下で3時間養生後に実質的にオイルブリードが認められない、上記項1〜3のいずれかに記載のホットメルト組成物。
5.上記項1〜4のいずれかに記載のホットメルト組成物からなるシール材。
6.工業用シール材として各種組立部材の接合部に使用される、上記項5に記載のシール材。
【発明の効果】
【0021】
本発明のホットメルト組成物は、汎用のホットメルトアプリケーターで自動塗布が可能な程度に溶融粘度が低く、且つ金型成形性及び離型性が高いにもかかわらず、シール性(密封性)に優れ、しかも液状軟化剤のブリードアウトが抑制されている。そのため、本発明のホットメルト組成物は、各種組立部材の接合部に使用される工業用シール材として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のホットメルト組成物は、スチレン系ブロック共重合体(A)と液状軟化剤(B)とを含有するホットメルト組成物であって、
(1)前記スチレン系ブロック共重合体(A)は、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体及びスチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレン(SIBS)共重合体からなる群から選択される少なくとも一種のスチレン系熱可塑性エラストマーの水素添加物であり、
(2)前記スチレン系ブロック共重合体(A)100質量部に対する前記液状軟化剤(B)の含有量が150〜450質量部であり、
(3)前記ホットメルト組成物は、140℃における溶融粘度(η1)と180℃における溶融粘度(η2)との粘度比(η1/η2)が2〜15であり、且つ180℃における溶融粘度が2000mPa・s以下である、
ことを特徴とする。
【0023】
上記特徴を有する本発明のホットメルト組成物は、汎用のホットメルトアプリケーター
で自動塗布が可能な程度に溶融粘度が低く、且つ金型成形性及び離型性が高いにもかかわらず、シール性(密封性)に優れ、しかも液状軟化剤のブリードアウトが抑制されている。そのため、本発明のホットメルト組成物は、各種組立部材の接合部に使用される工業用シール材として有用である。
【0024】
以下、本発明のホットメルト組成物を構成する各成分について説明する。
【0025】
スチレン系ブロック共重合体(A)
本発明で用いるスチレン系ブロック共重合体(A)は、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体及びスチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレン(SIBS)共重合体からなる群から選択される少なくとも一種のスチレン系熱可塑性エラストマーの水素添加物である。
【0026】
上記水素添加の態様は完全水素添加(完全水添)又は部分水素添加(部分水添)のいずれであってもよく、具体的には、水素添加物としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)共重合体、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEEPS)共重合体及びスチレン−ブチレン−ブタジエン−スチレン(SBBS)共重合体からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。本発明では、これらの水素添加物の中でも、スチレン系ブロック共重合体(A)としてSEBS、SEPS及びSEEPSからなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0027】
詳細には、上記SEBSは、SBSの完全水添物である。上記SEPSは、SISの完全水添物である。SEEPSは、SIBSの完全水添物である。また、SBBSは、SBSの部分水添物である。
【0028】
スチレン系ブロック共重合体(A)のスチレン含有量としては、各スチレン系ブロック共重合体(水素添加物)100質量%において10〜40質量%が好ましく、20〜35質量%がより好ましい。スチレン含有量が40質量%以下であると、ホットメルト組成物がより柔らかくなり、より良好なシール性を発現することができ、10質量%以上であると、適度な柔軟性を維持することができ、より良好なシール性を発現することができる。
【0029】
SEBS共重合体としては、市販されている製品を用いることができる。市販品としては、例えば、クレイトンポリマー社製G1726、クレイトンポリマー社製G1650等が挙げられる。
【0030】
SEPS共重合体としては、市販されている製品を用いることができる。市販品としては、例えば、クラレ社製SEPTON2063、クラレ社製SEPTON2005等が挙げられる。
【0031】
SEEPS共重合体としては、市販されている製品を用いることができる。市販品としては、例えば、クラレ社製SEPTON4033、クラレ社製SEPTON4055等が挙げられる。
【0032】
スチレン系ブロック共重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が20000〜200000の範囲に含まれることが望ましい。20000以上であると後述する液状軟化剤(B)のブリードアウトを抑制し易く、200000以下であると良好な金型射出性を保つことができる。
【0033】
本明細書中における「重量平均分子量」は、スチレン校正基準を使用してゲルクロマト
グラフィーによって測定したスチレン系ブロック共重合体の物理的特性値である。詳細には重量平均分子量は以下の方法により測定される値である。すなわち、スチレン系ブロック共重合体(A)をそれぞれテトラヒドロキシフラン(THF)へ溶解し、予めTHFを使用して平衡化されたAPC(日本ウォーターズ社製)を用いて測定した。
【0034】
液状軟化剤(B)
本発明のホットメルト組成物は、液状軟化剤(B)を含む。
【0035】
液状軟化剤(B)としては特に限定されず、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、流動パラフィン、炭化水素系合成油等が挙げられる。これらの液状軟化剤の中でも、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、流動パラフィン、及び炭化水素系合成油が好ましく、パラフィン系プロセスオイル、流動パラフィン、及び炭化水素系合成油がより好ましい。
【0036】
パラフィン系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、出光興産社製PW−32、出光興産社製ダイアナフレシアS32、出光興産社製PS−32等が挙げられる。
【0037】
ナフテン系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、出光興産社製ダイアナフレシアN28、出光興産社製ダイアナフレシアU46、出光興産社製ダイアナプロセスオイルNR等が挙げられる。
【0038】
流動パラフィンとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、MORESCO社製P−100、Sonneborn社製Kaydol等が挙げられる。
【0039】
炭化水素系合成油としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、三井化学社製ルーカントHC−10、三井化学社製ルーカントHC−20等が挙げられる。
【0040】
上記液状軟化剤(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
本発明のホットメルト組成物中の液状軟化剤(B)の含有量は、スチレン系ブロック共重合体(A)100質量部に対して150〜450質量部が好ましく、200〜350質量部がより好ましい。液状軟化剤(B)の含有量が150質量部以上であると、ホットメルト組成物の溶融粘度がより一層低下し、ホットメルト組成物の金型射出性がより一層向上する。液状軟化剤(B)の含有量が450質量部以下であると、液状軟化剤(B)のブリードアウトをより一層抑制し易い。
【0042】
任意成分である添加剤
本発明のホットメルト組成物は、本発明の目的を本質的に妨げない範囲で任意の添加剤を含有していてもよい。任意の添加剤としては、粘着付与樹脂、ワックス、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0043】
粘着付与樹脂としては、天然ロジン、変性ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの三次元ポリマー、天然テルペンのコポリマーの水素化誘導体、テルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体;C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂等の石油樹脂、また、それら石油樹脂に水素を添加した部分水添石油樹脂、完全水添
石油樹脂等が挙げられる。
【0044】
なお、C5系石油樹脂は石油のC5留分を原料とした石油樹脂であり、C9系石油樹脂は石油のC9留分を原料とした石油樹脂であり、C5C9系石油樹脂は石油のC5留分とC9留分とを原料とした石油樹脂である。C5留分としては、シクロペンタジエン、イソプレン、ペンタン等が挙げられる。C9留分としては、スチレン、ビニルトルエン、インデン等が挙げられる。C5系石油樹脂、C5C9系石油樹脂としては、C5留分の一種であるシクロペンタジエンに由来するジシクロペンタジエン(DCPD)を骨格中に含むものが好ましい。
【0045】
粘着付与樹脂としては、ホットメルト組成物の臭気抑制、熱安定性等に優れている点で、石油樹脂、部分水添石油樹脂、及び完全水添石油樹脂が好ましく、部分水添石油樹脂、及び完全水添石油樹脂がより好ましい。粘着付与樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
ワックスとしては特に限定されず、例えば、シュラックワックス、蜜ろう等の動物系ワックス;カルナバワックス、はぜろう等の植物系ワックス;パラフィンワックス、マクロクリスタリンワックス等の鉱物系ワックス;フィッシャートロプシュワックス、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)系ワックスを含むポリオレフィン系ワックス等の合成ワックス等が挙げられる。なかでも、ホットメルト組成物の熱安定性の低下をより一層抑制することができ、臭気の発生をより一層低減させることができる点で、ポリオレフィン系ワックスが好ましい。ワックスは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
ワックスとしては、市販品を用いることができる。ポリオレフィン系ワックスの市販品としては、例えば、Honeywell社製A−C7、INNOSPEC社製VISCOWAX122、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)系ワックスの市販品としては、Honeywell社製A−C400、INNOSPEC社製VISCOWAX334が挙げられる。
【0048】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキ
シベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;サリチル酸エステル系紫外線吸収剤;シアノアクリレート系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
本発明のホットメルト組成物中の上記任意の添加剤の含有量の合計は、上記スチレン系ブロック共重合体(A)100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。上記任意の添加剤の含有量の合計を上記範囲とすることにより、本発明のホットメルト組成物は、添加剤の含有による所望の効果の発現に加えて、より一層優れた金型射出性及び離型性、液状軟化剤の耐ブリードアウト性、シール性を発揮し易くなり、且つ、より一層優れた熱安定性及び塗工適性を発揮し易くなる。なお、本発明のホットメルト組成物は、好適な態様では上記任意の添加剤のうち粘着付与樹脂は含まないことが好ましく、含む場合にはスチレン系ブロック共重合体(A)100質量部に対して10質量部以下の含有量とすることが好ましい。
【0051】
本発明のホットメルト組成物の物性
本発明のホットメルト組成物は、140℃における溶融粘度(η1)と180℃における溶融粘度(η2)との粘度比(η1/η2)が2〜15である。
【0052】
η1/η2が2以上であることにより、液状軟化剤のブリードアウトを抑制し易くなり、η1/η2が15以下であることにより、良好な金型射出性を保ち易くなる。η1/η2は、2〜15であればよいが、特に3〜7が好ましい。
【0053】
本明細書において、「溶融粘度」は、一定の温度で加熱溶融状態となったホットメルト組成物の粘度である。また、140℃における溶融粘度(η1)と180℃における溶融粘度(η2)との比(η1/η2)は、以下の測定方法により測定される値である。すなわち、ホットメルト組成物を加熱溶融し、140℃及び180℃における溶融状態の粘度をブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.21)を用いて測定し、それぞれη1及びη2とし、140℃及び180℃における溶融粘度の比(η1/η2)を算出することにより測定される値である。
【0054】
本発明のホットメルト組成物は、180℃における溶融粘度(η2)が2000mPa・s以下である。η2が2000mPa・sを超えると、本発明のホットメルト組成物のホットメルトアプリケーターを使用した塗布適性が低下する。η2は、1500mPa・s以下が好ましく、1000mPa・s以下がより好ましい。η2を上記範囲とすることにより、本発明のホットメルト組成物がより一層塗布適性に優れ、且つ、η1/η2の値を、2〜15の範囲により容易に調整することができる。
【0055】
上記140℃における溶融粘度(η1)は、25000mPa・s以下が好ましく、10000mPa・s以下がより好ましい。η1を上記範囲とすることにより、本発明のホットメルト組成物がより一層塗工適性に優れ、且つ、η1/η2の値を、2〜15により容易に調整することができる。
【0056】
溶融状態のホットメルト組成物の塗工方法としては、特に制限されず、組立部材の溝にロボット(汎用のホットメルトアプリケーター)を用いたビード塗布や金型に注入してシール材を形成する方法などが挙げられる。特に金型に注入する工法は、複雑なシール部材を形成するために好適である。なお、本発明において金型に注入する態様には、金型成形後に離型して成形体としてのシール材を取り出すことを前提とし態様に加えて、組立部材の所望のシール部位に金型状の蓋を設置し、当該蓋に設けられた注入口からホットメルト組成物を注入して所望部位にシール材を形成した後で当該蓋を除去する、離型を前提としない態様の両方が挙げられる。
【0057】
本発明のホットメルト組成物を溶融状態で塗工する場合は、塗工温度は120〜180℃程度が好ましく、140〜160℃程度がより好ましい。塗布温度が180℃以下であると、ホットメルト組成物の熱劣化を抑制しつつ、汎用のホットメルトアプリケーターによる塗付適性を確保し易い。塗布温度が120℃以上であると、金型成形性及び離型性を良好に保つことができる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例の記載に限定されない。
【0059】
実施例及び比較例で用いた原料は以下のとおりである。
≪スチレン系ブロック共重合体(A)≫
・スチレン系ブロック共重合体(A1):
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体 クレイトンポリマー社製「G1726」(スチレン含有量30質量%、Mw31300)
・スチレン系ブロック共重合体(A2):
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体 クレイトンポリマー社製「G1652」(スチレン含有量30質量%、Mw62600)
・スチレン系ブロック共重合体(A3):
スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)共重合体 クラレ社製「SEPTON2063」(スチレン含有量13質量%、Mw178400)
・スチレン系ブロック共重合体(A4):
スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEEPS)共重合体 クラレ社製「SEPTON4033」(スチレン含有量30質量%、Mw77100)
・スチレン系ブロック共重合体(A5;比較品):
スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体 クレイトンポリマー社製「D1161」(スチレン含有量15質量%、Mw201500)
・スチレン系ブロック共重合体(A6;比較品):
スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体 旭化成社製「アサプレンT−438」(スチレン含有量35質量%、Mw57200)
・スチレン系ブロック共重合体(A7):
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体「旭化成社製 タフテックH1517」(スチレン含有量43質量%、Mw76300)
・スチレン系ブロック共重合体(A8):
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体「旭化成社製 タフテックH1043」(スチレン含有量67質量%、Mw47500)
【0060】
≪液状可塑剤(B)≫
・パラフィン系プロセスオイル(B1):出光興産社製「PW−32」
・ナフテン系プロセスオイル(B2):出光興産社製「N−90」
【0061】
≪酸化防止剤:≫
・フェノール系酸化防止剤 BASF社製「IRGANOX1010」
【0062】
実施例1〜7及び比較例1〜6
上述した原料を、それぞれ表1に示した配合量で、加熱装置を備えた攪拌混練機中に投入した。145℃で90分間加熱しながら混練することにより、ホットメルト組成物を製造した。
【0063】
各ホットメルト組成物について、以下の測定条件により特性を評価した。
(溶融粘度)
ホットメルト組成物を加熱溶融し、140℃及び180℃における溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.21)を用いて測定し、それぞれη1及びη2とした。また、測定結果に基づいて、140℃及び180℃における溶融粘度の比η1/η2を算出した。なお、η1/η2の値が2に近いほど、金型射出性に優れていると評価できる。
【0064】
(自動塗布性)
ホットメルト組成物を180℃に調温されたNordson社製ホットメルトアプリケーター「アルタブルーA4メルター」にノズル径1mm又はノズル径12/1000mmを用いて、ノズルからホットメルトを塗出し、ビード状に塗工した。
【0065】
塗工されたビード状のホットメルトの外観を目視で観察し、脈動の状態を以下の評価基準に従って評価した。なお、評価が△以上であれば実使用において問題ないと評価できる。
◎:脈動なし
○:極まれに脈動が観察される
△:わずかに脈動が観察される
×:常に脈動が観察される、又は塗工不可。
【0066】
(金型射出性)
ホットメルト組成物を180℃の塗工温度で、45mm四方の溝を有する金型に側面に作られた注入口から、1.5mm径のノズルを用いて、金型に注入し、以下の評価基準に従って評価した。なお、評価が△以上であれば実使用において問題ないと評価できる。
◎:0.7秒以下で注入完了
○:1秒以下で注入完了
△:1〜1.5秒で注入完了
×:2秒以上で注入完了。
【0067】
(金型離型性)
ホットメルト組成物を180℃の塗工温度で、45mm四方の溝を有する金型に側面に作られた注入口から、1.5mm径のノズルを用いて、2秒以上塗布することによって金型に注入した。
【0068】
注入したホットメルト組成物が硬化した後、金型の蓋を外し、ホットメルトシール部材を金型から取り除いた際の金型離型性を評価した。
【0069】
金型離型性の評価基準は下記の通りである。なお、○又は△であれば実使用において問題ないと評価できる。
○:ホットメルトシール部材が金型に残っていない
△:ホットメルトシール部材が金型にわずかに残る
×:ホットメルトシール部材が金型に残り、ちぎれてしまう。
【0070】
(密封性)
上記金型射出性で作成したホットメルト組成物の成形物をガラス板上に置き、30分養生した後、ホットメルト組成物で囲われた空間に水を流し込み、30分養生した。結果は以下の評価基準に従って、評価した。
○:水がホットメルト組成物に囲われた空間から流出しなかった。
△:水がホットメルト組成物に囲われた空間から流出しなかったが、ホットメルト組成物
とガラス板の隙間に僅かながら水の浸入が見られた。
×:水がホットメルト組成物に囲われた空間から流出した。
【0071】
(液状軟化剤の耐ブリードアウト性)
上記金型射出性で作成したホットメルト組成物の成形物を上質紙上に置き、23℃環境下にて3時間養生した。結果は以下の評価基準に従って、目視にて評価した。
◎:ブリードアウトした液状軟化剤による滲みがない。
○:ブリードアウトした液状軟化剤による滲みが僅かながらある。
△:ホットメルト組成物の成形物の形状以下の範囲にブリードアウトした液状軟化剤による滲みがある。
×:ホットメルト組成物の成形物の形状以上の範囲にブリードアウトした液状軟化剤による滲みがある。
【0072】
結果を表1に示す。
【0073】
【表1】