(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640295
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】X線変換ターゲット
(51)【国際特許分類】
G21K 5/08 20060101AFI20200127BHJP
H01J 35/08 20060101ALI20200127BHJP
H01J 35/12 20060101ALI20200127BHJP
G21K 1/00 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
G21K5/08 C
H01J35/08 B
H01J35/12
G21K5/08 X
G21K1/00 X
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-161333(P2018-161333)
(22)【出願日】2018年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-56696(P2019-56696A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2018年8月30日
(31)【優先権主張番号】201710856486.2
(32)【優先日】2017年9月19日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503414751
【氏名又は名称】同方威視技術股▲分▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】502192546
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】劉 耀▲紅▼
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 自然
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲晋▼升
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲懐▼璧
(72)【発明者】
【氏名】張 亮
(72)【発明者】
【氏名】張 東生
【審査官】
鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−230460(JP,A)
【文献】
特表平10−502769(JP,A)
【文献】
特表2004−514120(JP,A)
【文献】
特開2005−310433(JP,A)
【文献】
特開2012−221864(JP,A)
【文献】
特開2013−122906(JP,A)
【文献】
特表2013−519191(JP,A)
【文献】
米国特許第02090636(US,A)
【文献】
米国特許第04737647(US,A)
【文献】
英国特許出願公告第01249341(GB,A)
【文献】
中国特許出願公開第104362061(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第103578895(CN,A)
【文献】
中国実用新案第203617244(CN,U)
【文献】
独国特許発明第00718031(DE,C2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 5/08
G21K 1/00
H01J 35/08
H01J 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット本体と、ターゲット本体の内部に設けられ、X線を発生するために配置される第1の面を有するターゲット部と、を含むX線変換ターゲットであって、
側壁の少なくとも一部がターゲット部の一部により構成される冷却通路をさらに含み、
前記冷却通路は、ターゲット部の前記第1の面の反対側の第2の面に位置する冷却溝を含み、
前記冷却溝は、対向して設けられた、ターゲット部の第2の面の縁に沿ってそれぞれ延在する第1のリッジ部及び第2のリッジ部と、第2の面とにより限定され、
前記冷却通路は、ターゲット部の側部に位置する環状溝を含む、
X線変換ターゲット。
【請求項2】
ターゲット部の側部に位置し、内部空間を有する冷却側部をさらに含み、
ターゲット部により発生されたX線は、冷却側部の内部空間を伝搬する、
請求項1に記載のX線変換ターゲット。
【請求項3】
前記ターゲット本体は、前記ターゲット本体の内部空間を限定するターゲット本体外側部を含み、
前記ターゲット本体外側部及び前記ターゲット部の冷却側部は、前記環状溝を限定する、
請求項2に記載のX線変換ターゲット。
【請求項4】
接続部は、ターゲット本体外側部、ターゲット部の冷却側部と共に前記環状溝を限定するように、ターゲット本体外側部及びターゲット部の冷却側部を接続し、且つ、
前記接続部は、ターゲット部の第1の端に近づく流体入口と、ターゲット部の第1の端の反対側の第2の端に近づく流体出口とを含む、
請求項3に記載のX線変換ターゲット。
【請求項5】
ターゲット本体外側部の天井面と前記第1のリッジ部、第2のリッジ部の天井面とは、同一の平面に位置している、
請求項4に記載のX線変換ターゲット。
【請求項6】
ターゲット本体外側部の天井面及び前記第1のリッジ部、第2のリッジ部の天井面に配置される蓋板をさらに含む、
請求項5に記載のX線変換ターゲット。
【請求項7】
前記ターゲット部は、銅を含む、
請求項1に記載のX線変換ターゲット。
【請求項8】
前記ターゲット部は、銅の表面に位置する金を含む、
請求項7に記載のX線変換ターゲット。
【請求項9】
ターゲット部により発生されたX線の出射通路を限定する通路支持板をさらに含む、
請求項1に記載のX線変換ターゲット。
【請求項10】
ターゲット部により発生されたX線の出射通路を限定し、且つ、ターゲット本体外側部
に連続して延在する通路支持板をさらに含む、
請求項3に記載のX線変換ターゲット。
【請求項11】
前記通路支持板の外部に配置され、通路支持板の放熱のために用いられる支持板放熱フィンをさらに含む、
請求項9又は10に記載のX線変換ターゲット。
【請求項12】
ターゲット部の側部の冷却側部と前記第1のリッジ部、第2のリッジ部とは、一体に構成されている、
請求項2に記載のX線変換ターゲット。
【請求項13】
ターゲット部の側部の冷却側部、前記第1のリッジ部、第2のリッジ部及びターゲット本体外側部は、一体に構成されている、
請求項3に記載のX線変換ターゲット。
【請求項14】
第2の面からの第1のリッジ部及び第2のリッジ部の厚さは、5mmより大きい、
請求項1に記載のX線変換ターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線変換ターゲット分野に関し、具体的には、X線変換ターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子加速器技術の進歩に伴って、より多くの分野において、加速器がいろんな用途で適用されている。例えば、加速器により加速された高エネルギー電子によって、製品を変性させ、食品分野においては、食品に照射して殺菌処理を行い、農業においては、X線を照射して育種して、生産量を増やし、有害生物を防除し、医療分野においては、医学結像および医学治療を行なう。
【0003】
照射に用いられるハイパワーの加速器は、ターゲットを急速に放熱させる必要があり、放熱が非適時であれば、ターゲットは溶融する可能性がある。また、放熱効果の良否は、変換ターゲットの寿命および加速管の作業効率に直接影響を及ぼす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一局面によれば、ターゲット本体と、ターゲット本体の内部に設けられ、X線を発生するために配置される第1の面を有するターゲット部と、を含むX線変換ターゲットであって、
側壁の少なくとも一部がターゲット部の一部により構成される冷却通路をさらに含む、X線変換ターゲットを提供している。
【0005】
一実施例において、前記冷却通路は、ターゲット部の前記第1の面の反対側の第2の面に位置する冷却溝を含み、
前記冷却溝は、対向して設けられた、ターゲット部の第2の面の縁に沿ってそれぞれ延在する第1のリッジ部及び第2のリッジ部と、第2の面とにより限定される。
【0006】
一実施例において、前記冷却通路は、ターゲット部の側部に位置する環状溝を含む。
【0007】
一実施例において、X線変換ターゲットは、ターゲット部の側部に位置し、内部空間を有する冷却側部をさらに含み、ターゲット部により発生されたX線は、冷却側部の内部空間を伝搬する。
【0008】
一実施例において、前記ターゲット本体は、前記ターゲット本体の内部空間を限定するターゲット本体外側部を含み、前記ターゲット本体外側部及び前記ターゲット部の冷却側部は、前記環状溝を限定する。
【0009】
一実施例において、接続部は、ターゲット本体外側部、ターゲット部の冷却側部と共に前記環状溝を限定するように、ターゲット本体外側部及びターゲット部の冷却側部を接続し、且つ、前記接続部は、ターゲット部の第1の端に近づく流体入口と、ターゲット部の第1の端の反対側の第2の端に近づく流体出口とを含む。
【0010】
一実施例において、ターゲット本体外側部の天井面と前記第1のリッジ部、第2のリッジ部の天井面とは、同一の平面に位置している。
【0011】
一実施例において、ターゲット本体外側部の天井面及び前記第1のリッジ部、第2のリッジ部の天井面に配置される蓋板をさらに含む。
【0012】
一実施例において、前記ターゲット部は、銅を含む。
【0013】
一実施例において、前記ターゲット部は、銅の表面に位置する金を含む。
【0014】
一実施例において、X線変換ターゲットは、ターゲット部により発生されたX線の出射通路を限定する通路支持板をさらに含む。
【0015】
一実施例において、X線変換ターゲットは、ターゲット部により発生されたX線の出射通路を限定し、且つ、ターゲット本体外側部に連続して延在する通路支持板をさらに含む。
【0016】
一実施例において、X線変換ターゲットは、前記通路支持板の外部に配置され、通路支持板の放熱のために用いられる支持板放熱フィンをさらに含む。
【0017】
一実施例において、ターゲット部の側部の冷却側部と前記第1のリッジ部、第2のリッジ部とは、一体に構成されている。
【0018】
一実施例において、ターゲット部の側部の冷却側部、前記第1のリッジ部、第2のリッジ部及びターゲット本体外側部は、一体に構成されている。
【0019】
一実施例において、第2の面からの第1のリッジ部及び第2のリッジ部の厚さは、5mmより大きい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例のX線変換ターゲットの、蓋板が除去された斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例のX線変換ターゲットの半分の、蓋板が除去された斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例のX線変換ターゲットの、通路支持板が除去された、
図1のA−A線に沿う断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例のX線変換ターゲットの、通路支持板が除去された、
図1のB−B線に沿う断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例のX線変換ターゲットの、
図1のA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、様々な変更及び置換ができるが、その具体的な実施例は図面に例示的に示され、本明細書において詳しく説明される。しかしながら、図面及び詳細な説明は、本発明を開示された具体的な形態に限定するためではなく、逆に、特許請求の範囲によって限定される本発明の主旨及び範囲内の全ての変更、均等な形態及びその置換形態を含むと理解すべきである。図面は、例示的なものであり、必ずしも実際な寸法の比に従って描かれているとは限らない。
【0022】
以下、本発明による複数の実施例ついて、図面に基づいて説明する。
【0023】
図1〜5に示すように、本発明の実施例は、ターゲット本体及びターゲット本体の内部に設けられたターゲット部5を含むX線変換ターゲットを提供する。ターゲット部5は、X線を発生するために配置された第1の面を有する。X線変換ターゲットは、側壁の少なくとも一部がターゲット部5の一部により構成された冷却通路をさらに含む。
【0024】
動作状態において、例えば、銅材料からなるターゲット部5がX線を発生し、一部の高エネルギー電子が逆衝撃電子となるように、ターゲット部5の第1の面に垂直に高エネルギー電子ビームが入射される。第1の面は、ほぼ平面の表面であってもよい。高エネルギー電子の衝撃により、ターゲット部5の温度は向上する。ターゲット部5の一部は、冷却通路の側壁を構成し、ターゲット部5が発生した熱は直接に冷却通路に伝達され、冷却通路における流体により持ち去れることで、ターゲット部5の温度が急激に向上しないようにすることができる。冷却通路における流体は、液体であってもよく、例えば、比熱が大きい水であってもよい。銅の熱伝導性は良好であるため、ターゲット部5が発生した熱は、迅速に冷却通路における冷媒に伝達できる。
【0025】
本発明の一実施例において、
図3に示すように、前記冷却通路は、ターゲット部5の前記第1の面の反対側の第2の面に位置する冷却溝1を含む。冷媒が冷却溝1を通過する際に、ターゲット部5の第2の面は、冷媒に直接に接触し、ターゲット部5の一部の熱は冷媒によって持ち去れ、ターゲット部5の第2の面の温度は低下し、ターゲット部5の第1の面と第2の面との間に温度差が形成され、ターゲット部5の熱はターゲット部5の第1の面から第2の面に迅速に伝達され、ターゲット部5の第1の面の温度が向上することが抑制される。ターゲット部は、長さが134mmであり、幅が48mmであってもよく、冷却溝1をターゲット部5の裏側に配置することで、構成をコンパクト化し、外部シールドの設計及び実装を容易にすることができる。
【0026】
一実施例において、冷却溝1は、対向して設けられた、ターゲット部5の第2の面の縁に沿ってそれぞれ延在する第1のリッジ部21及び第2のリッジ部22と、第2の面とによって限定される。
図3に示すような実施例において、冷却溝1は、逆台形の横断面形状を有する。しかしながら、冷却溝1は、矩形の横断面形状を有してもよく、あるいは、他の形状の横断面形状を有してもよい。第1のリッジ部21及び第2のリッジ部22は、対向して設けられており、
図3において、それらの天井面の第2の面からの高さ、即ち、冷却溝1の深さは、4mmであってもよく、5mmであってもよい。しかしながら、冷却溝1の深さは、5mmより大きくてもよい。一般的には、冷媒に水を用いることが多い。これは、水の比熱が大きく、且つ、安価であるためである。ターゲット部5の局所的な領域、例えば、第1の面が、高エネルギー電子ビームの衝撃により高温になると、ターゲット部5に接触する水は、局所的に気化して沸騰し、エアギャップを形成するので、放熱効果は大きく低減してしまう。冷却溝1の深さが4〜5 mmを超えると、局所的な気化によるエアギャップが放熱を遮断する問題を効果的に防止することができる。本実施例においては、銅材料からなる第1のリッジ部21及び第2のリッジ部22は、それら自身が放熱機能を有している。一実施例において、第1のリッジ部21及び第2のリッジ部22は、ターゲット部5と一体に形成することができる。
【0027】
他の実施例において、第2の面には、第3のリッジ部、第4のリッジ部などの複数のリッジ部が設けられてもよい。複数のリッジ部は、放熱素子として用いられることができ、冷媒とターゲット部5の第2の面との接触面を増加して、放熱能力を向上することができる。
【0028】
一実施例において、前記冷却通路は、ターゲット部5の側部に位置する、ターゲット部5周りの環状溝3をさらに含む。
【0029】
一実施例において、X線変換ターゲットは、ターゲット部5の側部に位置する、内部空間を有する冷却側部2をさらに含み、ターゲット部5により発生されたX線は、冷却側部2の内部空間を伝搬する。つまり、冷却側部2の延在方向は、ターゲット部5により発生されたX線の出射方向とほぼ同じであり、ターゲット部5に向かって衝撃する高エネルギー電子ビームの運動方向とは反対である(高エネルギー電子ビームの運動方向は、
図5において、矢印10で示される)。
【0030】
一実施例において、ターゲット部5の側部の冷却側部2、前記第1のリッジ部21及び第2のリッジ部22は、一体に構成されている。一体に構成されることにより、ターゲット部5が発生した熱は、ターゲット部5の低温領域に迅速に伝達できるので、有利である。
【0031】
一実施例において、前記ターゲット本体は、前記ターゲット本体の内部空間を限定するターゲット本体外側部6を含む。前記ターゲット本体外側部6及び前記ターゲット部5の冷却側部2は、前記環状溝3を限定している。つまり、ターゲット本体外側部6は、環状溝3の外部を形成し、ターゲット部5の冷却側部2は、環状溝3の内部を形成し、環状溝3は、ターゲット本体外側部6とターゲット部5の冷却側部2との間に形成されている。冷媒は、環状溝3内を流れることで、ターゲット部5の冷却側部2の熱を持ち去り、ターゲット部5の冷却側部2の温度を低減することができる。
【0032】
一実施例において、ターゲット部5の側部の冷却側部2、前記第1のリッジ部21、第2のリッジ部22及びターゲット本体外側部6は、一体に構成されている。一体に構成されることにより、ターゲット部5が発生した熱は、ターゲット部5の低温領域に迅速に伝達できるので、有利である。
【0033】
一実施例において、ターゲット本体外側部6の天井面と前記第1のリッジ部21、第2のリッジ部22の天井面とは、同一の平面に位置している。X線変換ターゲットは、さらに、ターゲット本体外側部6の天井面と前記第1のリッジ部21、第2のリッジ部22の天井面に配置される蓋板7を含んでもよい。
【0034】
本実施例において、蓋板7でターゲット本体外側部6の天井面と前記第1のリッジ部21、第2のリッジ部22の天井面を覆うと、ターゲット本体外側部6の天井面と前記第1のリッジ部21、第2のリッジ部22の天井面とが同一の平面に位置するため、第1のリッジ部21と第2のリッジ部22との間の冷却溝1及び環状溝3は、第1のリッジ部21及び第2のリッジ部22により分けられるとともに、例えば、
図3において環状溝3が左側の環状溝3部分及び右側の環状溝3部分に分けているように、第1のリッジ部21及び第2のリッジ部22は、環状溝3を2つの部分に分けることが分かる。指摘すべきことは、ここでいう「分ける」とは、冷媒がターゲット本体外側部6の天井面と前記第1のリッジ部21、第2のリッジ部22の天井面を通じて、環状溝3から冷却溝1に流れ込むことができないことをいう。
【0035】
接続部は、ターゲット本体外側部6、ターゲット部5の冷却側部2と共に前記環状溝3を限定するように、ターゲット本体外側部6とターゲット部5の冷却側部2とを接続する。この際、
図3に示すように、環状溝3は、上側の蓋板7、下側の接続部、外側のターゲット本体外側部6及び中間におけるターゲット部5の冷却側部2によって形成されている。ここでいう「上」、「下」などの位置を示す記述は、図面に対して言うものであり、各部品間の相対的な位置関係を説明するためのものである。他の状況では、例えば、ターゲット本体を反転した場合、蓋板7が下側にあり、接続部が上側にあってもよい。
【0036】
本実施例において、前記接続部は、ターゲット部5の第1の端に近づく流体入口8と、ターゲット部5の第1の端の反対側の第2の端に近づく流体出口9と、を含む。例えば、冷媒である水は、流体入口8から環状溝3に流れ込み、
図2を参照して分かるように、ターゲット本体外側部6の天井面と前記第1のリッジ部21、第2のリッジ部22の天井面とが同一の平面に位置し、蓋板7に接触するため、水は
図2の矢印方向に沿って流れ、一部の水は、冷却溝1に流れ込んで、
図2の矢印で示すように、流体出口9から流れ出し、一部の水は、環状溝3の左側に沿って流れ、環状溝3の左側を通過して流体出口9から流れ出し、他の一部の水は、環状溝3の右側に沿って流れ、環状溝3の右側を通過して流体出口9から流れ出す。本実施例において、第1のリッジ部21及び第2のリッジ部22の設置により、冷媒は、三つのストランドに分けられ、それぞれ冷却通路を流れる。そして、第1のリッジ部21及び第2のリッジ部22は、放熱フィンとして用いられてもよく、流体が複数のストランドに分けられるので、流体の速度が速くなり、冷媒の冷却効果を向上させている。本実施例において、冷媒は、ターゲット部5の第2の面又は裏面に直接接触しており、ターゲット部5の第1の面が高エネルギー電子ビームに衝撃されることにより発生する多くの熱が冷却通路における冷媒に伝達されるため、ターゲット部5の温度の急激な向上が避けられる。ターゲット部5の冷却側部2はターゲット部5と一体であってもよく、ターゲット部5の熱はターゲット部5の冷却側部2に迅速に伝達でき、且つ、冷却側部2と冷媒とが直接接触しているので、ターゲット部5をより一層冷却できる。
【0037】
本発明の他の実施例において、ターゲット部5の第2の面には、第3のリッジ部、第4のリッジ部がさらに設けられており、冷媒に接触する放熱部品をさらに提供している。第3のリッジ部又はより多くのリッジ部の天井面と第1のリッジ部21の天井面とは、同一の平面でなくてもよい。複数のリッジ部は、放熱フィンに類似するリッジ部の放熱機能を向上させることができる。
【0038】
一実施例において、第3のリッジ部又はより多くのリッジ部の天井面と第1のリッジ部21及び第2のリッジ部22の天井面とは、同一の平面に位置しており、この際、冷却溝1は、複数の冷却溝1に分けられ、複数のリッジ部は放熱効果を向上できると共に、冷却溝1の横断面の面積が小さくなる(複数のリッジ部に占有される)ので、冷媒の流量が同じである場合、冷媒の流速は速くなり、冷媒とリッジ部との接触面積がさらに増大する場合、すなわち、冷媒とターゲット部5との間接接触が増大する場合、冷却効果は大きく向上する。このとき、ターゲット部5が熱伝導材料である銅からなることが重要であり、銅は、ターゲット部5が発生した熱を迅速に裏面(第2の面)に伝達することができ、ターゲット部5の冷却側部2に伝達することもできる。
【0039】
一実施例において、ターゲット部5の表面に金が設けられている。例えば、銅ターゲット部5の表面に金層4を設けることで、複合ターゲット部5を得ることは有利である。複合ターゲット部5により、同じエネルギーの高エネルギー電子ビームによって高い収量のX線を得ることができる。例えば、ターゲット部5におけるX線を発生する部分は、例えば、厚さ1mmの金4が厚さ4mmの無酸素銅を覆ってなる複合ターゲットであってもよい。当該複合ターゲットは、大きい収量を提供することができ、長さは80mmであり、この長さは、走査磁石に合わせて長尺状のX線を発生し、異なるX線の形状の要求を満たしている。
【0040】
本実施例において、ターゲット部5の冷却側部2は内部空間を有し、高エネルギー電子ビームがターゲット部5を衝撃する際に、ターゲット部5が発生したX線は、冷却側部2の内部空間を伝搬し、一部の高エネルギー電子は逆衝撃電子を形成し、ターゲット部5から反射して離れる。
図5は、高エネルギー電子ビームがターゲット部5を衝撃する際の逆衝撃電子の分布状況を示している。
図5において、θ1は15°であり、θ2は25°であり、10°〜25°及び25°より大きい領域において、逆衝撃電子が90%を占めており、25°より大きい領域における逆衝撃電子はターゲット部5の冷却側部2によって吸収されている。ターゲット部5の冷却側部2は逆衝撃電子を吸収することで、温度が向上するが、冷却側部2が環状溝3の側壁を構成することで冷媒に直接接触しているので、環状溝3における冷媒は冷却側部2の熱を迅速に持ち去ることができ、冷却側部2の温度を効果的に制御することができる。ターゲット部5の冷却側部2の厚さは、例えば、7mm、7.5mm又は8mmなどであることができ、一部の逆衝撃電子を効果的に遮断すると共に、ターゲット部5が発生した熱を効果的に持ち去ることができる。
【0041】
本発明の一実施例において、ターゲット本体の外側部の厚さは、例えば4mmであってもよく、蓋板7の厚さは、例えば1.5mmであってもよく、蓋板7は、ステンレス鋼板であってもよい。蓋板7は、ターゲットを固定して封止するものとして機能することができる。
【0042】
本発明の一実施例において、
図5に示すように、X線変換ターゲットは、ターゲット部5が発生したX線の出射通路を限定する通路支持板13をさらに含む。通路支持板13は、ターゲット本体外側部6に連続して延在してもよい。通路支持板13は、ステンレス鋼板からなってもよい。通路支持板13は、X線の散乱を防止し、一部の逆衝撃電子が外部に散乱して人に損傷を与えることを避けることができる。逆衝撃電子の衝撃により、通路支持板13の温度は高くなり、本発明の一実施例において、X線変換ターゲットは、前記通路支持板13の外部に配置され、通路支持板13の放熱のために用いられる支持板放熱フィン14をさらに含む。一実施例において、通路支持板13及びその外部の支持板放熱フィン14のサイズは、
図5に示すような10°〜25°の領域を覆うように形成されている。支持板放熱フィン14は、銅板によって形成されている。
【0043】
実際の使用中において、高エネルギー電子ビームがターゲット部5を衝撃する際に、流体入口8から冷媒、例えば、水を注入し、流体出口9から冷媒を排出する。ターゲット部5の温度はよく制御されている。冷媒の注入量は、高エネルギー電子ビームのエネルギーに応じて決めることができる。
【0044】
本願発明のいくつかの実施例を示し、説明したが、当業者は、本願発明の原則及び主旨を逸脱しない範囲で、これらの実施例を変更することができ、本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等物によって限定されることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0045】
1 冷却溝
2 冷却側部
3 環状溝
4 金層
5 ターゲット部
6 ターゲット本体外側部
7 蓋板
8 流体入口
9 流体出口
13 通路支持板
14 支持板放熱フィン
21 第1のリッジ部
22 第2のリッジ部