特許第6640394号(P6640394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6640394ロールプレス装置の軸受冷却機構および軸受冷却方法並びにロールプレス装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6640394
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】ロールプレス装置の軸受冷却機構および軸受冷却方法並びにロールプレス装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 37/00 20060101AFI20200127BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20200127BHJP
   B30B 15/34 20060101ALN20200127BHJP
   B30B 15/00 20060101ALN20200127BHJP
【FI】
   F16C37/00 B
   F16N7/38 C
   !B30B15/34 Z
   !B30B15/00 F
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-31537(P2019-31537)
(22)【出願日】2019年2月25日
【審査請求日】2019年2月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松澤 輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 将徳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】田崎 大介
(72)【発明者】
【氏名】安達 要輔
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−084802(JP,U)
【文献】 特開2011−181348(JP,A)
【文献】 特開2009−150559(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/179280(WO,A1)
【文献】 特開平3−113198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 37/00
F16N 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受として転がり軸受を用いた二次電池用電極材のロールプレス装置の軸受冷却機構であって、
前記転がり軸受の潤滑剤として潤滑油が用いられ、
前記潤滑油の循環ラインを前記ロールプレス装置の前記転がり軸受毎に設け、前記転がり軸受毎に設けられたそれぞれの前記潤滑油の循環ラインは、前記潤滑油を冷却する温度管理部を備えた潤滑油貯蔵庫と、前記潤滑油貯蔵庫から前記転がり軸受へ潤滑油を供給する潤滑油供給路と、前記転がり軸受から前記潤滑油貯蔵庫へ潤滑油を回収する潤滑油回収路と、前記潤滑油供給路上に設けた潤滑油供給装置と、前記潤滑油回収路上に設置された温度センサを備え、それぞれの前記温度センサで計測された潤滑油温度に基づきそれぞれの前記温度管理部で潤滑油を冷却してそれぞれ温度管理し、それぞれの前記潤滑油供給装置で所定量の潤滑油をそれぞれの前記転がり軸受へ継続して供給することを特徴とするロールプレス装置の軸受冷却機構。
【請求項2】
請求項1に記載のロールプレス装置の軸受冷却機構において、
前記温度管理部は、前記潤滑油貯蔵庫内の潤滑油に浸漬されたチラーであることを特徴とするロールプレス装置の軸受冷却機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロールプレス装置の軸受冷却機構において、
前記ロールプレス装置は常温プレス加工を行うロールプレス装置であり、
前記温度管理部は前記潤滑油を常温から所定範囲内の温度に保持するように前記潤滑油の冷却を制御することを特徴とするロールプレス装置の軸受冷却機構。
【請求項4】
請求項1に記載のロールプレス装置の軸受冷却機構において、
それぞれの前記温度センサで計測された潤滑油温度を入力する管理装置を備え、
それぞれの前記温度管理部は、前記管理装置からの制御信号に基づきそれぞれの前記潤滑油貯蔵庫内の潤滑油の冷却を制御することを特徴とするロールプレス装置の軸受冷却機構。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のロールプレス装置の軸受冷却機構において、
前記転がり軸受毎に設けられたそれぞれの前記潤滑油の循環ラインは、前記潤滑油回収路上に潤滑油回収装置をそれぞれ備え、
それぞれの前記潤滑油回収装置は、前記潤滑油回収路を介してそれぞれの前記潤滑油貯蔵庫に前記潤滑油を所定の回収量で継続して回収することを特徴とするロールプレス装置の軸受冷却機構。
【請求項6】
軸受として転がり軸受を用いたロールプレス装置の軸受冷却機構であって、
前記転がり軸受の潤滑剤として潤滑油が用いられ、
前記潤滑油の循環ライン上に前記潤滑油を冷却する温度管理部を備えた潤滑油貯蔵庫を備え、
前記潤滑油貯蔵庫と前記転がり軸受を収容する軸受箱に形成された給油口を接続する潤滑油供給路と、
前記軸受箱に形成された排油口と前記潤滑油貯蔵庫を接続する潤滑油回収路と、
前記潤滑油回収路に設置された温度センサを備え、
前記温度管理部は、前記潤滑油貯蔵庫に設置され、前記温度センサで計測された潤滑油温度に基づき前記潤滑油貯蔵庫内の潤滑油の冷却を制御するものであり、
前記潤滑油供給路上に潤滑油供給装置を備え、前記潤滑油供給装置は、前記潤滑油供給路を介して前記軸受箱に形成された前記給油口に前記潤滑油を所定の供給量で継続して供給し、
前記潤滑油回収路上に潤滑油回収装置を備え、前記潤滑油回収装置は、前記潤滑油回収路を介して前記潤滑油貯蔵庫に前記潤滑油を所定の回収量で継続して回収し、
前記潤滑油回収装置による前記回収量を前記潤滑油供給装置による前記供給量よりも多くなるように調整したことを特徴とするロールプレス装置の軸受冷却機構。
【請求項7】
軸受として転がり軸受を用いたロールプレス装置の軸受冷却機構であって、
前記転がり軸受の潤滑剤として潤滑油が用いられ、
前記潤滑油の循環ライン上に前記潤滑油を冷却する温度管理部を備えた潤滑油貯蔵庫を備え、
前記潤滑油貯蔵庫と前記転がり軸受を収容する軸受箱に形成された給油口を接続する潤滑油供給路と、
前記軸受箱に形成された排油口と前記潤滑油貯蔵庫を接続する潤滑油回収路と、
前記潤滑油回収路に設置された温度センサと、
前記温度センサで計測された潤滑油温度を入力する管理装置を備え、
前記温度管理部は、前記潤滑油貯蔵庫に設置され、前記管理装置からの制御信号に基づき前記潤滑油貯蔵庫内の潤滑油の冷却を制御するものであり、
前記潤滑油供給路上に潤滑油供給装置を備え、前記潤滑油供給装置は、前記潤滑油供給路を介して前記軸受箱に形成された前記給油口に前記潤滑油を所定の供給量で継続して供給し、
前記潤滑油回収路上に潤滑油回収装置を備え、前記潤滑油回収装置は、前記潤滑油回収路を介して前記潤滑油貯蔵庫に前記潤滑油を所定の回収量で継続して回収し、
前記潤滑油回収装置による前記回収量を前記潤滑油供給装置による前記供給量よりも多くなるように調整したことを特徴とするロールプレス装置の軸受冷却機構。
【請求項8】
軸受として転がり軸受を用いた二次電池用電極材のロールプレス装置の軸受冷却方法であって、
前記転がり軸受の潤滑剤として潤滑油が用いられ、
前記転がり軸受毎に潤滑油の循環ラインを備え、それぞれの前記潤滑油の循環ライン上に前記潤滑油を冷却する温度管理部を備えた潤滑油貯蔵庫を備え、
前記転がり軸受を潤滑及び冷却後の潤滑油の温度を取得する潤滑油温度取得ステップと、
前記潤滑油温度取得ステップで取得した前記潤滑油の温度に基づいて、前記潤滑油貯蔵庫内の前記潤滑油の温度が所定の範囲内に保持されるように、前記温度管理部における冷却を制御する潤滑油冷却ステップと、
前記潤滑油冷却ステップで温度を調整した前記潤滑油を前記転がり軸受に所定の供給量で継続して供給する潤滑油供給ステップを含み、
前記潤滑油温度取得ステップ、前記潤滑油冷却ステップ及び前記潤滑油供給ステップにおいて前記転がり軸受毎にそれぞれ前記潤滑油の温度を取得し、それぞれ前記温度管理部における冷却を制御してそれぞれ温度管理し、それぞれ前記潤滑油を所定の供給量で継続して供給することを特徴とするロールプレス装置の軸受冷却方法。
【請求項9】
請求項に記載のロールプレス装置の軸受冷却方法において、
前記潤滑油供給ステップにおける供給量よりも多い回収に調整して潤滑油を前記転がり軸受から継続して回収することを特徴とするロールプレス装置の軸受冷却方法。
【請求項10】
軸受として転がり軸受を用いたロールプレス装置の軸受冷却方法であって、
前記転がり軸受の潤滑剤として潤滑油が用いられ、
前記潤滑油の循環ライン上に前記潤滑油を冷却する温度管理部を備えた潤滑油貯蔵庫を備え、
前記転がり軸受を潤滑及び冷却後の潤滑油の温度を取得する潤滑油温度取得ステップと、
前記潤滑油温度取得ステップで取得した前記潤滑油の温度に基づいて、前記潤滑油貯蔵庫内の前記潤滑油の温度が所定の範囲内に保持されるように、前記温度管理部における冷却を制御する潤滑油冷却ステップと、
前記潤滑油冷却ステップで温度を調整した前記潤滑油を前記転がり軸受に所定の供給量で継続して供給する潤滑油供給ステップを含み、
前記潤滑油供給ステップにおける供給量よりも多い回収に調整して潤滑油を前記転がり軸受から継続して回収することを特徴とするロールプレス装置の軸受冷却方法。
【請求項11】
転がり軸受を収容した軸受箱に両端部が支持された上下一対のロールを有するロールプレス装置であって、
前記各転がり軸受は請求項1〜の何れか一項に記載のロールプレス装置の軸受冷却機構を用いて潤滑及び冷却されるようにしたロールプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロールプレス装置の軸受冷却機構および軸受冷却方法並びにロールプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電極材料の生産を向上させるために、ロールプレス装置の高速化・連続化が望まれている。しかし、高速化・連続化を図ると、長時間の連続運転時に軸受部の機械摩擦により発生した熱がロールに伝わることでロール両端部が熱変形するサーマルクラウンが発生する。サーマルクラウンによるロールの変形量は小さいが、薄膜材を対象としているロールプレス装置においては、サーマルクラウンは、成形後の材料の板厚分布が不均一となる原因となり影響が大きい。このため、軸受部の冷却をいかに低コストで高効率に行うかが課題となっている。
【0003】
二次電池用電極材料のロールプレス装置におけるロール軸受の冷却構造として、特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1には、高速、長時間運転をしても軸受部の機械的摩擦熱により生じるロールの熱変形を防止して、加工精度の高い二次電池用電極材の連続圧縮加工を可能にするため、加圧ロールの軸受を収納保持する軸受箱に熱媒体を流通させてロール軸受の熱を奪う冷却構造が記載されている。なお、二次電池用電極材料のロールプレス装置では、転がり軸受の潤滑として、封入もしくは定期的に追加入れ換えされたグリースで潤滑を行うグリース潤滑方式が主として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−181348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電極材料の生産を向上させるために、ロールプレス装置のさらなる高速化及び連続化が望まれている。さらなる高速化・連続化を図る上では、ロール軸受部の冷却をより効果的に行うことが望まれる。
【0006】
特許文献1に記載の冷却構造では、軸受箱を冷却するものであり、軸受部の発熱部を間接的に冷却する構造である。発熱部を間接的に冷却する構造となっているため、ロールプレス装置のさらなる高速化及び連続化を図ると、間接冷却では間に合わず、軸受部および軸受箱の温度を効果的に管理することが難しくなることが予想される。
【0007】
本発明の目的は、ロールプレス装置のさらなる高速化及び連続化を可能とするロールプレス装置の軸受冷却機構および軸受冷却方法並びにロールプレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するために、本発明は、特許請求の範囲に記載の構成を採用するものである。例えば、本発明は、軸受として転がり軸受を用いたロールプレス装置の軸受冷却機構であって、転がり軸受の潤滑剤として潤滑油を用い、潤滑油の循環ライン上に潤滑油の温度を冷却する温度管理部を備えた潤滑油貯蔵庫を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、潤滑油に冷却機能を積極的に持たせて発熱部である転がり軸受(軸受部)を直接冷却するようにしているので、ロールプレス装置の軸受部及び軸受箱の温度を効果的に管理することができ、その結果として、ロールプレス装置のさらなる高速化及び連続化が可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のロールプレス装置の軸受冷却機構の概念を示す図。
図2】本発明の実施例の軸受冷却機構を備えたロールプレス装置の全体構成を示す図。
図3】本発明の他の実施例の軸受冷却機構を備えたロールプレス装置の全体構成を示す図。
図4】軸受冷却の有無の比較を示す図であり、軸受温度と経過時間の関係を示す図。
図5】本発明の実施例の軸受冷却機構における軸受箱内部の流路を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明する。
図1は本発明のロールプレス装置の軸受冷却機構の概念を示す図である。
【0012】
ロールプレス機1は、上下に対向配置された一対の加圧ロール(上ロール10,下ロール11)と、それらのロール軸20,21を支持する転がり軸受(ロール軸受部)30a〜30dと、その転がり軸受を保持する軸受箱40a〜40dと、軸受箱40a〜40dを保持するロールハウジング(図示省略)を備える。ロール軸両端に配置された軸受箱40a〜40dとロールハウジングとの間には、加圧ロール間の間隙調整と加圧調整を行うための例えば油圧シリンダーなどの加圧機構(図示省略)が設けられている。加圧ロール(上ロール10,下ロール11)間において二次電池用電極材3がプレス加工される。
【0013】
転がり軸受30a〜30dの潤滑には、通常、グリース潤滑方式が採用されているが、本実施例では、油循環潤滑方式を採用している。潤滑油としては、例えば、一般作動油(タービン油:ISO VG 32など)が用いられる。
【0014】
潤滑油は潤滑油貯蔵庫80に収容されており、潤滑油供給路50を介して軸受箱40a内の転がり軸受30aに供給される。潤滑油供給路50上には、ポンプまたは制御弁などからなる潤滑油供給装置51が設けられ、所定量の潤滑油(例えば、8リットル/分程度)を継続して転がり軸受30aに供給する。転がり軸受30aを潤滑かつ冷却した後の潤滑油は潤滑油回収路60を介して潤滑油貯蔵庫80に回収される。潤滑油回収路60上には、ポンプまたは制御弁などからなる潤滑油回収装置61が設けられている。なお、潤滑油供給路50上および/または潤滑油回収路60上には、流量計や圧力計などが設置されており(図示省略)、これらの計器を定期的に目視確認し、潤滑油の供給量、排油量、圧力が所定範囲の値になっているか確認できるようにしている。
【0015】
潤滑油供給路50は、図5に示す給油口52に接続される。給油口52は軸受箱40に形成され、給油口52から供給された潤滑油は転がり軸受30に直接供給される。一方、潤滑油回収路60は図5に示す排油口62に接続されている。本実施例では、軸受箱40に排油口62が二つ形成され、二つの排油口62から排油された潤滑油が一つの潤滑油回収路60に合流する。
【0016】
本実施例では、排油量(排出量)は、給油量(供給量)よりも、少し多くなるようにしている。例えば、潤滑油供給装置51、潤滑油回収装置61のポンプ回転数および/または制御弁開度を制御して、排油量(排出量)>給油量(供給量)とする。排油量(排出量)と給油量(供給量)の関係は、制御以外に、給油口52又は潤滑油供給路50、排油口62又は潤滑油回収路60の径や数を調整することにより調整することも可能である。
【0017】
このように、給油口52に加えて排油口62を軸受箱40に形成し、排油量(排出量)>給油量(供給量)とすることにより、軸受部からの油の漏れが抑制可能である。一般的な油循環潤滑方式では、軸受に給油した潤滑油が軸受部から漏れ出し、漏れ出た潤滑油をオイルパンなどで回収し、その潤滑油を集めて循環させている。これでは、プレス加工される電極材への潤滑油の付着の恐れが大きい。本実施例では、そのような潤滑油の付着の恐れを極めて小さくすることができる。なお、プレス加工される電極材への潤滑油の付着の恐れを略なくすように、ロール側と軸受箱との間を分離するようにシール部材などを設けることが望ましい。また、本実施例では、潤滑油の漏れが生じ難い構成であるが、循環する潤滑油の量を確保するために、定期的に(例えば、生産開始時)に潤滑油貯蔵庫80における潤滑油量を確認し、必要に応じて補充するようにする。
【0018】
そして、本実施例では、軸受箱40を介して転がり軸受30に供給する潤滑油の温度を所定の温度に維持するため、次の構成を有する。
軸受箱内の転がり軸受冷却後の潤滑油の温度を計測する温度センサ70が潤滑油回収路60上に設けられている。本実施例では、潤滑油回収装置61の下流側に温度センサ70が設けられている。温度センサ70の計測情報は、管理装置100と潤滑油貯蔵庫80内に設けられた温度管理部81に送信される。
【0019】
温度管理部81は、本実施例ではチラーが用いられている。チラーを構成する冷却部が潤滑油に浸漬されており、温度センサ70の計測情報(軸受箱内の転がり軸受冷却後の潤滑油温度情報)を温度管理部81に直接取り込み、計測情報に基づきチラーを構成する圧縮機の回転数をインバータ制御して、潤滑油の油温を例えば常温(23度)±1度に温度管理するようにしている。温度センサ70の計測情報は管理装置100にも送信されており、管理装置100から制御指令を温度管理部81に送信し、管理装置100からの制御指令に基づき温度管理部81による潤滑油の冷却を制御するようにしても良い。例えば4つの軸受箱40a〜40d(転がり軸受30a〜30d)毎の潤滑油の温度の変化状況を監視して管理装置100から制御指令により特定の軸受箱40a〜40d(特定の転がり軸受30a〜30d)に潤滑油を供給する潤滑油貯蔵庫80の潤滑油の冷却を温度管理部81による温度制御とは異ならせて制御することもできる。管理装置は入力部、CPU、メモリ、出力部を備える。
【0020】
本実施例では、転がり軸受30に潤滑油を供給して発熱部である転がり軸受を直接冷却するようにしており、さらに、軸受箱内の転がり軸受冷却後の潤滑油温度情報に基づき温度管理部81で制御することにより潤滑油貯蔵庫80内の潤滑油の温度を所定の温度に維持するようにしている。すなわち、本実施例では、潤滑油の冷却を制御して潤滑油に冷却機能を積極的に持たせて発熱部である軸受部を直接冷却するようにしているので、ロールプレス装置の軸受部及び軸受箱の温度を効果的に管理することができる。また、本実施例では、転がり軸受で発生する熱を効果的に奪うことができ、軸受部及び軸受箱の蓄熱量を所定値以内に抑え、軸受部及び軸受箱の温度を所定の温度範囲内に保持・抑制することが可能となる。その結果として、軸受部及び軸受箱からロールへ伝導される熱量を減らし、ロールの熱変形を減らす。これにより、高精度な二次電池用電極材の圧縮加工が、ロールプレス機の高速回転、長時間運転の下でも可能になる。なお、本実施例では、潤滑油の油温を例えば常温(23度)±1度に温度管理するようにしている。本実施例では、二次電池用電極材3を常温でプレス加工するようにしているので、潤滑油の温度を冷却しすぎると、ロールの熱変形に悪い影響を与える可能性がある。このようなことから、常温を基準として潤滑油の温度を管理するのが望ましい。
【0021】
図4に、本実施例による油循環潤滑方式による軸受冷却(軸受内部に一定流量の潤滑油を供給して軸受冷却)した場合と軸受冷却しない場合の軸受温度の変化について示す。縦軸は軸受温度、横軸は経過時間(t0〜t1)を示す。
図4に示すように、軸受冷却なしの場合には、軸受温度はT1→T2に大幅に温度上昇し、本実施例の軸受冷却ありの場合には、軸受温度T3→T4に若干の温度上昇となる。時刻t0における温度T1≒T3とすると、軸受冷却をすることにより、t0からt1の時間(Δt)において、温度ΔTの温度抑制効果がある。
【0022】
次に図2を用いて本発明の実施例を説明する。図2は、本発明の実施例の軸受冷却機構を備えたロールプレス装置の全体構成を示す図である。本実施例では、各軸受部に潤滑油を供給する潤滑油貯蔵庫80が1つのケースを示す。
【0023】
一つの潤滑油貯蔵庫80から潤滑油供給路50a〜50dを介して軸受箱40a〜40d内の転がり軸受30a〜30dに供給される。潤滑油供給路50a〜50d上には、それぞれ潤滑油供給装置51a〜51dが設けられ、所定量の潤滑油を継続して転がり軸受30a〜30dのそれぞれに供給する。転がり軸受30a〜30dを潤滑かつ冷却した後の潤滑油は潤滑油回収路60a〜60dを介して潤滑油貯蔵庫80に回収される。潤滑油回収路60a〜60d上には、それぞれ潤滑油回収装置61a〜61dが設けられている。
【0024】
軸受箱内の転がり軸受冷却後の潤滑油の温度を計測する温度センサ70a〜70dが潤滑油回収路60a〜60d上に設けられている。本実施例では、潤滑油回収装置61a〜61dの下流側に温度センサ70a〜70dが設けられている。温度センサ70a〜70dの計測情報は、管理装置100と潤滑油貯蔵庫80内に設けられた温度管理部81に送信される。温度管理部81は、温度センサ70a〜70dの計測情報を直接取り込み、計測情報の平均値に基づきチラーを構成する圧縮機の回転数をインバータ制御して、潤滑油の油温を例えば常温(23度)±1度に温度管理するようにしている。温度センサ70a〜70dの計測情報は管理装置100にも送信されており、管理装置100から制御指令を温度管理部81に送信し、管理装置100からの制御指令に基づき温度管理部81による潤滑油の冷却を制御するようにしても良い。本実施例では比較的大きな潤滑油貯蔵庫80を準備することができる場合に適する。
【0025】
本実施例では、図1に示す実施例と同様に、既存の潤滑油に軸受部を冷却する冷却媒体としての機能を持たせ、それぞれの軸受部(転がり軸受30a〜30d)にそれぞれ温度管理された潤滑油を冷却専用の供給路を設けることなく同一の潤滑油供給路50a〜50dを介して供給し、また、冷却専用の回収路を設けることなく同一の潤滑油回収路60a〜60dを介して回収することにより、全ての軸受部及び軸受箱の蓄熱量を所定範囲内に保持することができ、軸受部及び軸受箱の温度を所定温度に保持することができる。これにより、高精度な二次電池用電極材の圧縮加工が、ロールプレス機の高速回転、長時間運転の下でも可能になる。
【0026】
なお、本実施例では、一つの潤滑油貯蔵庫80を4つの転がり軸受30a〜30dの冷却に用いるようにしているが、例えば、二つの潤滑油貯蔵庫を設け、それぞれの潤滑油貯蔵庫を二つの転がり軸受の冷却に用いるようにしても良い。例えば、上ロール10側の左右の転がり軸受30aと30c、下ロール11側の左右の転がり軸受30bと30dの組み合わせで一つの潤滑油貯蔵庫を用いるようにしたり、右側の上下の転がり軸受30aと30b、左側の上下の転がり軸受30cと30dの組み合わせで一つの潤滑油貯蔵庫を用いるようにしたりしても良い。
【0027】
次に図3を用いて本発明の実施例を説明する。図3は、本発明の実施例の軸受冷却機構を備えたロールプレス装置の全体構成を示す図である。本実施例では、軸受ごとに潤滑油貯蔵庫があるケースを示す。すなわち、転がり軸受30a〜30d毎に潤滑油貯蔵庫80a〜80dが設けられ、それぞれの潤滑油貯蔵庫80a〜80dに温度管理部81a〜81dが設けられている。これらの点以外は、図2と同様である。
【0028】
本実施例では、潤滑油貯蔵庫80a〜80d内の潤滑油の温度管理が図2の実施例と比べて容易となる。また、潤滑油貯蔵庫80a〜80dの潤滑油収容量を小さくすることができ、低コスト化することが可能である。潤滑油貯蔵庫80a〜80dの潤滑油の収容量は例えば20リットル程度である。
【0029】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加,削除,置換をすることが可能である。
【0030】
例えば、上述の実施例では、軸受箱内の転がり軸受冷却後の潤滑油の温度を計測して計測情報に基づき温度管理部を制御しているが、軸受箱に温度センサを設置してその計測情報に基づき温度管理部を制御するようにしても良い。但し、この場合、軸受箱が発熱部による熱を蓄熱した状態の情報であるため、軸受箱の計測温度と軸受部及び軸受箱の温度を所定の温度に維持するのに必要な潤滑油の温度との関係を予め求めておき、軸受箱の計測温度に基づき温度管理部での目標温度を設定する。この場合、管理装置100による温度管理部の制御となる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・ロールプレス機、3・・・二次電池用電極材、10・・・上ロール、11・・・下ロール、20,21・・・ロール軸、30,30a〜30d・・・転がり軸受(軸受部)、40,40a〜40d・・・軸受箱、50,50a〜50d・・・潤滑油供給路、51,51a〜51d・・・潤滑油供給装置、52・・・給油口、60,60a〜60d・・・潤滑油回収路、61,61a〜61d・・・潤滑油回収装置、62・・・排油口、70,70a〜70d・・・温度センサ、80,80a〜80d・・・潤滑油貯蔵庫、81,81a〜81d・・・温度管理部、100・・・管理装置。
【要約】
【課題】
ロールプレス装置のさらなる高速化及び連続化を可能とするロールプレス装置の軸受冷却機構および軸受冷却方法並びにロールプレス装置を提供する。
【解決手段】
軸受として転がり軸受を用いたロールプレス装置の軸受冷却機構であって、転がり軸受の潤滑剤として潤滑油を用い、潤滑油の循環ライン上に潤滑油の温度を冷却する温度管理部を備えた潤滑油貯蔵庫を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5