(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
  以下では、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。同じ符号を付された構成に対しては、重複する説明を省略する。本実施形態では、電子的な価値(電子的バリュー)として仮想通貨(以下、本実施形態において発行する仮想通貨を「仮想コイン」と記載する)を用いる例について説明する。ここで、本実施形態において仮想通貨とは、電子的に価値を持つものとして流通する情報をいい、特定の国家による裏付けがなく、法定通貨としての強制通用力をもたないものをいう。仮想通貨においては、複数のシステムが、分散的に電子的価値の所有者等を管理している。なお、本発明は1つのシステムで所有者等を集中管理するポイントシステムにも適用できる。ポイントシステムでは、電子的バリューは購入等の特典として付与されるポ
イントである。
 
【0019】
  図1は、本発明の実施形態にかかる仮想通貨管理システム1と他のシステムとの関係を示す図である。仮想通貨管理システム1、電子商取引システム2、顧客端末3は、第1の通貨(以下では日本円とする)を法定通貨とする国や地域(例えば日本)に存在し、第1の通貨を金銭的価値の決済等に用いる。電子商取引システム4、顧客端末5は、第2の通貨(以下ではUSドルとする)を法定通貨とする国や地域(例えばアメリカ合衆国)に存在し、第2の通貨を金銭的決済等に用いる。仮想通貨管理システム1と電子商取引システム2,4とは、例えばインターネットのようなネットワークを介して通信し、電子商取引システム2,4と、顧客端末3,5とも、それぞれネットワークを介して通信する。
 
【0020】
  電子商取引システム2,4のそれぞれは、複数の販売店が販売する商品またはサービスを顧客端末3,5に対して提示し、さらに顧客端末3,5からそれらについての注文を受け付ける。顧客端末3,5は、具体的には、顧客となるユーザが操作するコンピュータである。
 
【0021】
  仮想通貨管理システム1は、通貨による金銭的価値(例えば日本円)と仮想コインとを交換し、仮想コインの発行を管理するシステムである。
図2は、仮想通貨管理システム1のハードウェア構成の一例を示す図であり、仮想通貨管理システム
1が一つのサーバコンピュータにより構成される場合の例である。仮想通貨管理システム1は、プロセッサ11、記憶部12、通信部13、入出力部14を含む。仮想通貨管理システム1は複数のサーバコンピュータにより実現されてもよい。
 
【0022】
  プロセッサ11は、記憶部12に格納されているプログラムに従って動作する。またプロセッサ11は通信部13、入出力部14を制御する。なお、上記プログラムは、インターネット等を介して提供されるものであってもよいし、フラッシュメモリやDVD−ROM等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであってもよい。
 
【0023】
  記憶部12は、RAMおよびフラッシュメモリ等のメモリ素子とハードディスクドライブのような外部記憶装置とによって構成されている。記憶部12は、上記プログラムを格納する。また、記憶部12は、各部から入力される情報や演算結果を格納する。
 
【0024】
  通信部13は、他の装置と通信する機能を実現するものであり、例えば有線LANの集積回路などにより構成されている。通信部13は、プロセッサ11の制御に基づいて、他の装置から受信した情報をプロセッサ11や記憶部12に入力し、他の装置に情報を送信する。
 
【0025】
  入出力部14は、表示出力デバイスをコントロールするビデオコントローラや、入力デバイスからのデータを取得するコントローラなどにより構成される。入力デバイスとしては、キーボード、マウス、タッチパネルなどがある。入出力部14は、プロセッサ11の制御に基づいて、表示出力デバイスに表示データを出力し、入力デバイスをユーザが操作することにより入力されるデータを取得する。表示出力デバイスは例えば外部に接続されるディスプレイ装置である。
 
【0026】
  電子商取引システム2,4に含まれるサーバコンピュータは、仮想通貨管理システム1と同様に、プロセッサ11、記憶部12、通信部13、入出力部14を含む。
 
【0027】
  以下では、仮想通貨管理システム1、電子商取引システム2,4、顧客端末3,5により行われる仮想コインの発行に関する処理について説明する。
図3は、仮想コインの発行に関するフローを説明するシーケンス図である。
 
【0028】
  はじめに第1の通貨に関するフローについて説明する。電子商取引システム2を用いて顧客が顧客端末3を用いて所望の商品を購入する場合に、顧客端末3は、日本円による商品等の購入の指示を送信するデータ(購入指示)を電子商取引システム2へ送信する。すると、電子商取引システム2は、その購入の注文を受け付け、その注文に対して顧客に提供する特典の日本円における金銭的価値を決定する。ここで、実際には、購入指示が送信される前に、顧客端末3と電子商取引システム2との間で購入手続指示、支払方法表示、支払方法指示、確認表示、といったデータがやり取りされている。これらのデータの詳細については後述する。また、特典における金銭的価値は、商品等の購入に対する支払金額に対して所定の割合(例えば1%)をかけることにより算出される。例えば、顧客端末3を操作する顧客が10000円の商品を購入した場合、特典としての金銭的価値は100円と決定される。
 
【0029】
  特典が決定されると、電子商取引システム2は、仮想コイン発行依頼を仮想通貨管理システム1へ送信する。この仮想コイン発行依頼は、その算出された金銭的価値に対応する仮想コインを発行することを依頼するデータである。仮想通貨管理システム1は第1交換レートに基づいてその算出された金銭的価値に対応する仮想コインの所有者として顧客端末3を操作する顧客を設定する。より具体的には、仮想通貨管理システム1の仮想コイン所有情報を更新することにより仮想コインの所有者を設定する。ここで、仮想通貨管理システム1は、予めマイニングにより、所有者を設定する仮想コインを準備している。
 
【0030】
  仮想コイン所有情報は、仮想通貨管理システム1の記憶部12に格納される。
図10は、仮想コイン所有情報の一例を示す図である。仮想コイン所有情報には、顧客を識別する情報(顧客ID)に関連付けて、その顧客が所有する仮想コインの残高と、その顧客が所有する仮想コインを識別する情報(仮想コインID)とが格納される。仮想通貨管理システム1は、ある量の仮想コインの所有者を顧客へ提供する場合には、その顧客の顧客IDに関連付けられた仮想コインの残高をその提供される量だけ増加させ、またその提供される仮想コインの仮想コインIDを顧客IDと関連付けて記憶させる。なお、仮想コイン所有情報は、仮想コインIDと顧客IDとを紐づけるだけの情報であってもよいし、他のシステムや端末などにより管理されてもよい。
 
【0031】
  仮想コインの所有者を設定することにより、仮想通貨管理システム1は市中(顧客)に仮想コインを発行し市中にその仮想コインを流通させる。この仮想コインは、予めマイニングにより生成されてよい。第1交換レートは、第1の通貨と仮想コインとを交換する場合の交換レートであり、状況に応じて変動する。また仮想通貨管理システム1は発行された仮想コインのデータを顧客端末3へ送信する。仮想コインのデータは、電子商取引システム2を介して顧客端末3へ送信されてよい。
 
【0032】
  次に、第2の通貨に関するフローについて説明する。第2の通貨の場合、顧客端末5が購入に関する行動をする前に、電子商取引システム4が仮想コイン発行依頼を仮想通貨管理システム1へ送信する。この仮想コイン発行依頼は、電子商取引システム4から仮想通貨管理システム1に対して、USドルに対応する仮想コインの発行を依頼するデータである。第2の通貨の場合、電子商取引システム4は、あらかじめ電子商取引システム4が所有するUSドルに応じた仮想コインの発行を仮想通貨管理システム1へ依頼する。仮想通貨管理システム1は第2交換レートに基づいてそのUSドルの金銭的価値に対応する仮想コインを発行し、その発行された仮想コインを電子商取引システム4へ送信する。電子商取引システム4は、発行され送信された仮想コインをプールする。第2交換レートは、第2の通貨と仮想コインとを交換する場合の交換レートであり、状況に応じて変動する。
 
【0033】
  そして、顧客端末5が、USドルによる商品等の購入の指示を送信するデータ(購入指示)を送信すると、電子商取引システム4はプールされた仮想コインのうち、その購入に応じた特典に相当する仮想コインを顧客端末5を操作する顧客へ受け渡す。より具体的には電子商取引システム4は仮想コインの所有者として顧客端末5を操作する顧客を設定する。購入指示が送信される前に、顧客端末5と電子商取引システム4との間で購入手続指示、支払方法表示、支払方法指示、確認表示、といったデータがやり取りされるのは日本円におけるフローと同様である。特典における金銭的価値は、商品等の購入に対する支払金額に対して所定の割合(例えば1%)をかけることにより算出される。例えば、顧客端末5を操作する顧客が100ドルの商品を購入した場合、特典としての金銭的価値は1ドルと決定され、電子商取引システム4は、決定された金銭的価値と、プールしている仮想コインについて設定されているUSドルに対する内部交換レートとから顧客に渡す仮想コインの量を決定し、その量の仮想コインを顧客へ提供する。
 
【0034】
  なお、通貨の種類の数が3以上である場合、第1の通貨と異なる通貨について第2の通貨と同様の処理が行われてよい。特に言及のない場合は以下でも同様である。
 
【0035】
  以下では、第1の通貨に関して、仮想通貨管理システム1、電子商取引システム2、顧客端末3により行われる、仮想コインを用いた支払いに関する処理の流れについて説明する。
図4は、仮想コインを用いた支払いに関するフローを説明するシーケンス図である。
 
【0036】
  はじめに、顧客は顧客端末3を操作して購入する商品をカートに格納し、そのカートに格納された商品やサービスについて購入の手続きを進める旨のボタンを押下する。すると、顧客端末3はその商品やサービスについて購入の手続きを進める指示である購入手続指示を電子商取引システム2へ送信する。電子商取引システム2は、仮想通貨管理システム1へ仮想通貨と日本円との第1交換レートを継続的に問い合わせつつ、指示された商品やサービスに対する支払の方法を指定させるデータ(支払方法表示)を顧客端末3へ送信する。支払方法表示においては、電子商取引システム2は別途リアルタイムで第1交換レートを送信する。利用可能な仮想コインを表示させる場合には、電子商取引システム2はその顧客についての仮想コイン所有情報から仮想コインの残高を仮想通貨管理システム1などから取得し、その残高と交換レートとに基づいて利用可能な仮想コインの金銭的な価値を繰り返し算出し、その金銭的な価値(例えば日本円に換算した金額)のデータを繰り返し顧客端末3へ送信する。
 
【0037】
  図11は支払方法表示の画面の一例を示す図である。例えば、顧客端末3は、第1交換レートおよび顧客の保有する仮想コインを第1の通貨に換算した額を受信すると、支払方法表示の画面に表示される第1交換レート81、および利用可能な仮想コインの金銭的な価値(日本円の換算額82)をリアルタイムで繰り返し更新する。なお、第1交換レート81および換算額82のうち一方のみが表示されてもよい。
 
【0038】
  顧客端末3が支払方法を指定するデータ(支払方法指示)を送信すると、電子商取引システム2は、注文する商品等およびその支払方法等を確認する画面を表示させるデータ(確認表示)を顧客端末3へ送信する。確認表示においても、電子商取引システム2はリアルタイムで第1交換レートと顧客の保有する仮想コインの評価額とを送信し、顧客端末3は画面に表示される第1交換レート、または支払いに用いられる仮想コインの金銭的な価値をリアルタイムで更新する。
 
【0039】
  確認表示の画面に対してユーザが操作すると、顧客端末3は購入指示と支払いに用いる仮想コインとを送信する。電子商取引システム2は、購入指示および仮想コインを受信すると、仮想通貨管理システム1へ貨幣提供依頼を送信する。貨幣提供依頼は、仮想コインを仮想通貨管理システムに還流させ、その仮想コインに対応する金銭的価値の通貨を提供することを仮想通貨管理システム1に依頼するデータである。仮想通貨管理システム1は、貨幣提供依頼を受信すると、仮想コインに相当する日本円を電子商取引システム2へ支払う旨の情報(支払情報)を電子商取引システム2へ送信する。電子商取引システム2は、支払情報を受信すると、商品の注文に関する決済処理を実行する。
 
【0040】
  もちろん、支払は仮想コインと他の支払方法(クレジットカードなど)との組み合わせであってよい。
図4の例では特典としての仮想コインが発行されないが、さらに仮想コインが発行されてもよい。
 
【0041】
  第2の通貨については、顧客が仮想コインを支払いに用いる場合には、電子商取引システム4は、内部交換レートに応じた金銭的価値として支払を受け付け、仮想コインをプールする。電子商取引システム4にプールされる仮想コインの量が適正範囲を超えた場合に、電子商取引システム4が仮想通貨管理システム1へ貨幣提供依頼を送信し、第2交換レートに基づいて仮想コインの一部をUSドルに交換し、第2交換レートに基づいて内部交換レートを更新する。なお、この処理は、仮想コインの量が適正範囲を超えた場合だけでなく、予め定められたスケジュールに従って実行されてもよい。例えば、毎週または毎日決まった時間にこの処理が実行されてもよい。
 
【0042】
  電子商取引システム2における購入に関する処理についてさらに詳細に説明する。
図5は、電子商取引システム2の処理の一例を示すフロー図である。
図5は顧客端末3から注文に関する購入手続指示を受信し、その後に注文の受付が実行され、必要に応じて仮想コインが提供されるまでの処理を示している。
図5に示される処理は、電子商取引システム2に含まれるプロセッサ11が記憶部12に格納されるプログラムを実行し、通信部13などを制御することにより実行される。なお、仮想コインを発行する場合も、仮想コインを利用して支払いをする場合も、
図5に示される処理が実行される。
 
【0043】
  はじめに、電子商取引システム2に含まれるプロセッサ11は、通信部13が受信した、カート内の商品に対する購入手続指示を取得する(ステップS201)。そして、プロセッサ11は、支払方法を指定させる画面を表示させるデータ(支払方法表示)を通信部13に顧客端末3へ向けて送信させ、交換レート更新処理の実行を開始する(ステップS202)。交換レート更新処理は、仮想通貨管理システム1に第1交換レートを定期的、継続的に問合せることで取得された最新の第1交換レートを、顧客端末3へ送信し、顧客端末3の画面に表示させる処理である。プロセッサ11は、交換レート更新処理は、購入指示を受信するまで並列で実行する。
 
【0044】
  そして、プロセッサ11は、顧客端末3から通信部13が受信した、支払方法指示を取得する(ステップS203)。そして、プロセッサ11は、注文する商品等およびその支払方法等を確認する画面を表示させるデータ(確認表示)を通信部13に顧客端末3へむけて送信させる(ステップS204)。なお、この段階でも最新の第1交換レートに基づいて、顧客端末3の画面に表示される情報(仮想コインによる支払額と他の決済手段による支払額)がリアルタイムで更新される。
 
【0045】
  プロセッサ11は、通信部13が顧客端末3から受信した、購入指示を取得する(ステップS205)。購入指示は、確認表示に示される注文の商品や支払方法を顧客端末3を操作する顧客が確認したことを示し、またそれに従う注文を電子商取引システム4に受け付けさせる指示を示す。
 
【0046】
  購入指示を取得すると、プロセッサ11は、購入指示とともに支払いに使用する仮想コインのデータを受け取ったか否か確認する(ステップS206)。仮想コインのデータを受け取った場合には(ステップS206のY)、プロセッサ11は、通信部13に貨幣提供依頼を仮想通貨管理システム1へ送信し、支払情報を取得することにより、その仮想コインを第1の通貨と交換し(ステップS207)、ステップS208の処理へ移る。また仮想コインのデータを受け取っていない場合には(ステップS206のN)、ステップS207をスキップする。
 
【0047】
  ステップS208では、プロセッサ11は、確認表示に含まれる支払方法などに基づいて、決済処理および注文を受け付ける処理を実行し、その注文について顧客端末3を操作する顧客へ提供する特典を決定する(ステップS208)。
 
【0048】
  そして、特典として顧客へ仮想コインを提供することが決定された場合には(ステップS209のY)、プロセッサ11は、通信部13に、仮想通貨管理システム1へ仮想コイン発行依頼を送信させ、仮想通貨管理システム1から通信部13を介して特典の金銭的な額に相当する仮想コインのデータを取得し、顧客端末3へ取得された仮想コインのデータを渡す(ステップS210)。特典として顧客へ仮想コインを提供しないことが決定された場合には(ステップS209のN)、ステップS210はスキップされる。
 
【0049】
  次に、本発明の実施形態にかかる仮想通貨管理システム1が実現する機能や処理について説明する。
図6は、仮想通貨管理システム1が実現する機能を示すブロック図である。仮想通貨管理システム1は機能的に、第1交換部51、第1引当金管理部52、第1金銭評価部53、第2交換部55、第2引当金管理部56、第2金銭評価部57、発行部59、レート管理部61を含む。また、レート管理部61は、機能的に換算部62、総評価部63、レート算出部64を含む。これらの機能は、仮想通貨管理システム1に含まれるプロセッサ11が、記憶部12に格納されたプログラムを実行し通信部13等を制御することにより実現される。
 
【0050】
  第1交換部51は、主にプロセッサ11が記憶部12に格納されるプログラムを実行し、通信部13を制御することにより実現される。第1交換部51は、顧客への特典に相当し電子商取引システム2から提供される第1の通貨に対して、その第1の通貨の量(以下では「通貨量」と記載する)および第1交換レートに応じた量(以下では「記録量」と記載する)の仮想コインを提供する。また、第1交換部51は、顧客に対して、顧客が交換対象とする仮想コインの記録量および第1交換レートに応じた通貨量の第1の通貨を提供する。
 
【0051】
  第1引当金管理部52は、主にプロセッサ11が記憶部12に格納されるプログラムを実行することにより実現される。第1交換部51が通貨量の第1の通貨に対して記録量の仮想コインを提供した場合に、第1引当金管理部52は、その通貨量を第1の引当金額に加算する。第1交換部51が記録量の仮想コインに対して通貨量の第1の通貨を提供した場合に、第1引当金管理部52は、その通貨量を第1の引当金額から減算する。第1の引当金額は、現在流通する仮想コインを第1の通貨と交換するための引当金の金額である。
 
【0052】
  第2交換部55は、主にプロセッサ11が記憶部12に格納されるプログラムを実行し、通信部13を制御することにより実現される。第2交換部55は、電子商取引システム4から提供される第2の通貨に対して、その第2の通貨の通貨量および第2交換レートに応じた記録量の仮想コインを提供する。また、第2交換部55は、仮想コインに対して、その仮想コインの記録量および第2交換レートに応じた通貨量の第2の通貨を提供する。
 
【0053】
  第2引当金管理部56は、主にプロセッサ11が記憶部12に格納されるプログラムを実行することにより実現される。第2交換部55が通貨量の第1の通貨に対して記録量の仮想コインを提供した場合に、第2引当金管理部56は、その通貨量を第2の引当金額に加算する。第2交換部55が記録量の仮想コインに対して通貨量の第1の通貨を提供した場合に、第2引当金管理部56は、その通貨量を第2の引当金額から減算する。第2の引当金額は、現在流通する仮想コインを第2の通貨と交換するための引当金の金額である。
 
【0054】
  ここで、仮想通貨管理システム1が取り扱う通貨の種類の数が3以上であってもよい。この場合は、nが3以上の整数であり、kが3以上n以下の整数であるとして、第2交換部55と同様の処理により、第kの通貨と仮想コインとを交換する第k交換部と、第2引当金管理部56と同様の処理により第kの通貨に関する第kの引当金額を管理する第k引当金管理部とが存在してよい。
 
【0055】
  第1金銭評価部53および第2金銭評価部57は、主にプロセッサ11が記憶部12に格納されるプログラムを実行することにより実現される。第1金銭評価部53は、第1の通貨に関して発行されて現在流通する仮想コインについて評価された第1の通貨における第1の金銭評価額を取得する。第2金銭評価部57は、第2の通貨に関して発行されて現在流通する仮想コインについて評価された第2の通貨における第1の金銭評価額を取得する。
 
【0056】
  発行部59は、マイニングにより、仮想通貨管理システム1から顧客などに提供するための仮想コインを予め取得し、取得された仮想コインを仮想通貨管理システム1内にプールする。
 
【0057】
  本実施形態では、第1の金銭評価額は第1の引当金額と同じであり、第2の金銭評価額は第2の引当金額と同じである。第1金銭評価部53は、レート管理部61の処理を開始する際に、第1の金銭評価額として第1の引当金額を取得する。第2金銭評価部57は、レート管理部61の処理を開始する際に、第2の金銭評価額として第2の引当金額を取得する。ここで、仮想通貨管理システム1が取り扱う通貨の種類の数がnである場合には、第kの通貨について同様の処理をする第k金銭評価部が存在してもよい。
 
【0058】
  換算部62は、主にプロセッサ11が記憶部12に格納されるプログラムを実行することにより実現される。換算部62は、第1の通貨と第2の通貨との間の為替レートに基づいて第2の金銭評価額(第2の引当金額)を第1の通貨に換算する。ここで、仮想通貨管理システム1が取り扱う通貨の種類の数がnである場合には、換算部62は、第1の通貨と第kの通貨との間の為替レートに基づいて第kの金銭評価額(第kの引当金額)を第1の通貨に換算してもよい。
 
【0059】
  総評価部63は、主にプロセッサ11が記憶部12に格納されるプログラムを実行することにより実現される。総評価部63は、第1の金銭評価額と換算された第2の金銭評価額とに基づいて総評価額を算出する。ここで、仮想通貨管理システム1が取り扱う通貨の種類の数がnである場合には、第1の金銭評価額と換算された第2の金銭評価額、換算された第kの金銭評価額の和を総評価額として算出してもよい。
 
【0060】
  レート算出部64は、主にプロセッサ11が記憶部12に格納されるプログラムを実行することにより実現される。レート算出部64は、現在流通する仮想コインの総量で総評価額を除することにより、第1の通貨と仮想コインとの第1交換レートを算出する。またレート算出部64は、算出された第1交換レートと、第1の通貨と第2の通貨との為替レートとに基づいて、第2交換レートを算出する。
 
【0061】
  図7は、仮想コイン発行依頼に対する仮想通貨管理システム1の処理の一例を示すフロー図である。
図7は、第1の通貨を仮想コインに交換する場合の第1交換部51および第1引当金管理部52の処理であるが、第2の通貨についても第2交換部55および第2引当金管理部56は同様の処理を行い、第k交換部、第k引当金管理部も同様である。
 
【0062】
  はじめに、第1交換部51は、仮想コイン発行依頼から、交換の対象となる第1の通貨の通貨量を取得する(ステップS111)。次に、第1交換部51は、後述するレート算出部64で算出された、第1交換レートを取得する(ステップS112)。第1交換レートは、前述のように、第1の通貨と仮想コインとの交換レートである。
 
【0063】
  第1交換部51は、取得された通貨量と取得された第1交換レートとから、提供する仮想コインの記録量を算出する(ステップS113)。より具体的には、第1交換レートが記録量1の仮想コインと交換する第1の通貨の通貨量である場合には、第1交換部51は、取得された通貨量を第1交換レートで割ることにより提供する仮想コインの記録量を算出する。
 
【0064】
  記録量が算出されると、第1交換部51は、交換の対象となる第1の通貨の決済を処理し、記録量の仮想コインを発行し、発行された仮想コインを電子商取引システム2に向けて送信する(ステップS114)。そして、第1引当金管理部52は、取得された通貨量を第1の引当金額に加算する(ステップS115)。なお、第1交換部51は、通貨量から手数料を引いた額に相当する仮想コインを発行してよい。その場合、第1引当金管理部52は通貨量から手数料を引いた値を第1の引当金額に加算してよい。
 
【0065】
  図8は、貨幣提供依頼に対する仮想通貨管理システム1の処理の一例を示すフロー図である。
図8は、仮想コインを第1の通貨に交換する場合の第1交換部51および第1引当金管理部52の処理であるが、第2の通貨についても第2交換部55および第2引当金管理部56は同様の処理を行い、第k交換部、第k引当金管理部も同様である。
 
【0066】
  はじめに、第1交換部51は、貨幣提供依頼から、交換の対象となる仮想コインの記録量を取得する(ステップS131)。次に、第1交換部51は、後述するレート算出部64で算出された、第1交換レートを取得する(ステップS132)。
 
【0067】
  第1交換部51は、取得された記録量と取得された第1交換レートとから、提供する第1の通貨の通貨量を算出する(ステップS133)。より具体的には、第1交換レートが記録量1の仮想コインと交換する第1の通貨の通貨量である場合には、第1交換部51は、取得された記録量に第1交換レートをかけることにより提供する第1の通貨の通貨量を算出する。
 
【0068】
  通貨量が算出されると、第1交換部51は、交換の対象となる仮想コインの所有者を仮想通貨管理システム1にすることにより、仮想コインを還流させ、算出された通貨量の第1の通貨を提供する処理を実行する(ステップS134)。第1交換部51は、具体的には、仮想通貨管理システム1から電子商取引システム2への支払いの債務を計上する処理を実行し、仮想通貨管理システム1はリアルタイムまたは決められた日時に、送金の処理を実行する。そして、第1引当金管理部52は、取得された通貨量を第1の引当金額に加算する(ステップS115)。なお、第1交換部51は、通貨量から手数料を引いた第1の通貨を提供してもよい。
 
【0069】
  図7,8の例では、交換レートが逆数であってもよい。この場合は、ステップS113,S213において、掛け算と割り算とが交換される。
 
【0070】
  次に、第1交換レートや第2交換レートを算出する処理について説明する。
図9は、交換レートを算出する処理の一例を示すフロー図である。
 
【0071】
  はじめに、第1金銭評価部53は、第1の金銭評価額として、現時点の第1の引当金額を取得する(ステップS151)。第2金銭評価部57は、第2の金銭評価額として、現時点の第2の引当金額を取得する(ステップS152)。第1の引当金額は、第1の通貨における金額であり、第2の引当金額は、第2の通貨における金額である。換算部62は、現在の為替レートを管理または公開する外部のシステムから、第1の通貨と第2の通貨との為替レートを取得する(ステップS153)。
 
【0072】
  換算部62は、取得された第2の引当金額と、為替レートとに基づいて、第2の通貨における第2の引当金額を第1の通貨に換算する(ステップS154)。そして、総評価部63は、第1の引当金額と換算された第2の引当金額との和(総評価額)を、発行された仮想コインの総量で割った値を算出する(ステップS155)。そして、総評価部63は、算出された値を第1の通貨と仮想コインとの第1交換レートとして記憶部12に記憶させる(ステップS156)。
 
【0073】
  ステップS154およびステップS155の処理を以下に数式で表す。
 
【0075】
  ここで、RC1は第1の通貨と仮想コインとの交換レートであり、A1は第1の通貨における第1の引当金額、A2は第2の通貨における第2の引当金額、TCは発行された仮想コインの総量である。E
12は第1の通貨と第2の通貨との為替レートであり、第2の通貨の額にE
12をかけることで第1の通貨に換算できるものとする。
 
【0076】
  仮想コインとの交換が可能な通貨の種類の数が3以上(通貨の種類の数をnとし、3≦k≦nとする)の場合には、換算部62は、第1の通貨と第kの通貨との間の為替レートを取得し、その為替レートと、第kの引当金額とに基づいて第kの引当金額を第1の通貨に換算する。また総評価部63は、第1の引当金額から第nの引当金額までの和(総評価額)を、発行された仮想コインの総量で割った値を第1交換レートとして算出する。
 
【0077】
  ここで、計算の順序は上記のものに限られない。例えば、仮想コインの総量をステップS155における総評価額で割ることで交換レートと算出してもよい。また、総評価部63において、以下の式に示されるように、第1の引当金額を発行された仮想コインの総量で割った値と、第2の引当金額を発行された仮想コインの総量で割った値を第1の通貨に換算した値との和を、交換レートとして算出してもよい。
 
【0079】
  第1交換レートが算出されると、総評価部63は、さらに、算出された値(第1交換レート)と為替レートとから、第2の通貨と仮想コインとの第2交換レートを算出し、第2交換レートを記憶部12に記憶させる(ステップS157)。為替レートE12を用いて第1交換レートから第2交換レートを算出する式は以下のとおりである。
 
【0081】
  RC2は第2交換レートである。通貨の種類の数が3以上の場合も同様の式で交換レートが算出される。また、為替レートの定義によっては、為替レートに関連する式において、割り算と掛け算とが交換されてよい。
 
【0082】
  ここで、第2の通貨や第kの通貨(kは3以上n以下)のそれぞれについての交換レートを、第1の通貨と同様の手法で算出することもできる。第jの通貨(iは1以上n以下の整数)における交換レートRCiを求める一般化された計算式を以下に示す。
 
【0084】
  Ajは第jの通貨(jは1以上n以下の整数)における第jの引当金額、E
ijは第iの通貨と第jの通貨との為替レートであり、第jの通貨の額にE
ijをかけることで第iの通貨に換算できるものとし、E
iiは1であるとする。
 
【0085】
  本実施形態では、これまでに仮想コインと引き換えられた貨幣による引当金に基づいて貨幣と仮想コインとの交換レートが定まる。一般的な仮想通貨では需要と供給だけで交換レートが決まっているためその時の需給により交換レートが大きく変動するが、本実施形態では為替レートが変動しない場合には交換レートは変動しないため、交換レートの変動がかなり抑えられる。
 
【0086】
  また、交換レートの算定に為替レートを合理的に用いているため、仮想コインと1つの通貨との交換のみを許すといった制約は不要である。また、為替市場と異なり、複数の通貨のそれぞれに独立した交換所を設け、為替相場との不整合を第三者による交換の取引で調整するといった仕組みも不要である。したがって、本実施形態の仮想コインでは、国際的な利用をより容易に実現している。これらにより、本実施形態は、交換レートの乱高下の防止と、国際的な利用とを両立させた電子的な価値を提供している。
 
【0087】
  ただし、本実施形態では、商取引におけるいわゆるポイントのように、ユーザが商品を購入した場合に、その購入額に応じて定められた割合の仮想コインをユーザに提供する例を説明したが、他の場合にユーザに仮想コインを提供することもできる。例えば、従来のポイントと同額に相当する仮想コインをポイントと並行して別途提供することもできるし、法定通貨と交換するかたちで仮想コインを販売することもできる。あるいは、所定のキャンペーンの条件を満たす場合に無償で仮想コインをユーザに提供してもよい。あるいは、例えば、第三者が運営する仮想通貨取引所などに提供し、仮想通貨取引所においてユーザ間で取引できるようにしてもよい。
 
【0088】
  また、上述の例において仮想通貨管理システム1の記憶部12に格納される仮想コイン所有情報は、いわゆる分散型のパブリックブロックチェーンにおける分散台帳としてその所有者や流通が管理されるものとして発行することもできるし、プライベートブロックチェーンによって管理されることもできる。あるいは、ブロックチェーンによる分散台帳ではなく、中央集権的な管理サーバにおいて流通を管理してもよい。また、本実施形態では、電子商取引システム2における売買に応じて仮想コインが転送される例を説明したが、個人間で転送できるようにしても良い。この場合、1単位あたりの仮想コインの金銭的価値がユーザ間での自由な需要供給のバランスによって変動すると考えられるが、電子商取引システム2における売買において仮想コインを利用する際の仮想コインの価値は上述のように定まるため、市場における仮想コインの金銭的価値が本実施形態において算出される金銭的価値の近傍に収束することが期待できる。
 
 
  電子的バリュー管理システムは、第1の通貨に関して発行されて現在流通する電子的バリューについて評価された前記第1の通貨における第1の金銭評価額を取得し、第2の通貨に関して発行されて現在流通する電子的バリューについて評価された前記第2の通貨における第2の金銭評価額を取得し、前記第1の金銭評価額と、前記第2の金銭評価額と、前記第1の通貨と前記第2の通貨との間の為替レートと、現在流通する前記電子的バリューの総量とに基づいて前記第1の通貨と前記電子的バリューとの交換レートを算出する。