特許第6640462号(P6640462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640462
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】カバー材
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/00 20060101AFI20200127BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   D03D1/00 Z
   E04G21/02 104
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-71920(P2015-71920)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191170(P2016-191170A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川島 健治
【審査官】 堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−204405(JP,A)
【文献】 特開2006−037284(JP,A)
【文献】 特開2012−016388(JP,A)
【文献】 特開2007−169836(JP,A)
【文献】 特開平03−036367(JP,A)
【文献】 特開2014−088652(JP,A)
【文献】 特開2005−350879(JP,A)
【文献】 特開2004−238757(JP,A)
【文献】 特開2005−232645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00−27/18
E04G21/00−21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸及び緯糸にマルチフィラメント糸を用いた織布からなるカバー材であって、前記織布のカバーファクターが1800以上であり、25.4mm角あたりの経糸及び緯糸の総単糸本数が6000〜40000本であり、前記織布の通気度が10cc/cm・s以下であり、前記織布の飽和保水量が50g/m以上であり、前記マルチフィラメント糸がポリアミド、ポリエステルから選択されることを特徴とするカバー材。
【請求項2】
前記マルチフィラメント糸の総繊度が、145〜1200dtexであることを特徴とする請求項1に記載のカバー材。
【請求項3】
前記織布の剛軟度が4〜20cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカバー材。
【請求項4】
コンクリートの養生に用いられる請求項1〜3のいずれか1項に記載のカバー材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー材に関し、さらに詳しくは、基礎コンクリート、消波/根固ブロック、藻場造成ブロック等に係る打設されたコンクリートの養生に用いられるカバー材に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリートの工事においては、コンクリートの打設後の一定期間、気候条件である寒暖差、乾燥、日射、風等からコンクリートの表面の乾燥を防ぎ、また温度を適切な状態に保つ、いわえる養生がきわめて重要である。そのため養生の際には、保水性、保温性を有するカバー材を用いることで、コンクリート強度の増大、ひび割れ等の減少を可能となる。
【0003】
従来、カバー材として、湿らせたスポンジマットやアルミ顔料の含有された樹脂をコーティングした織布等が用いられていた。スポンジマットは、夏季の暑中期等には散水養生を行い、スポンジマットを湿らすことで、適切な温度範囲に保つことができるが、冬季の寒中期等では冷たい外気がスポンジマットを通りコンクリート表面温度を下げてしまい、ひび等の原因となる問題があった。また、アルミ顔料の含有された樹脂をコーティングした織布では、保水性を有せず、日射の強い時期においては、コンクリート表面が乾燥し、スポンジマット同様にひび等が発生する問題があった。
そのため、気候条件の影響で生じるひび等を解決するため、気候条件によるカバー材の使い分けが必要であった。しかし、使い分けをすることで保管等の管理および維持に費用がかかるものであった。
【0004】
近年では、このような問題を受け、気候条件に影響されずコンクリートの養生を行えるようにするため、保水性および保温性を満たしたカバー材が開発されてきた。
例えば、特許文献1には、水を吸収することによって膨潤する湿潤材を含む保湿シートと、断熱材からなる保温シートとを積層状態で一体化したコンクリート養生シートが開示されている。保湿シートと保温シートを有することにより、保水効果が持続し、外気温度の影響もある程度低減できる。しかしながら、構成として独立した保湿シートと保温シートを積層させているため、生産性に劣り、さらには柔軟性に乏しく、施工性も劣っていた。特に凹凸の有する養生対象物に対する施工は困難であった。
【0005】
また、特許文献2には、断熱部材を防水性シートで被包する断熱用マットと、この断熱用マットの片面に設けられた湿潤用マットとを積層されたコンクリート養生用マットが開示されている。断熱用マットと湿潤用マットとを有しているので、保水効果が持続し、外気温度の影響もある程度低減できると考えられるが、これもまた生産性、施工性が劣る。さらに、夏季の猛暑日が長期間継続するような異常気象や、施工の際にシート同士の重なり合わせる部分で生じる隙間の影響等でコンクリート表面が乾燥してしまうと、散水養生したとしても、断熱部材を被包する防水性シートが、水を遮ってしまい、施工状態でのコンクリート表面の散水が困難となり、コンクリート表面の保水を維持することができなくなるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−196396号公報
【特許文献2】特開平6−285832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の問題を解決するものであり、基礎コンクリートの養生はもちろんのこと、消波/根固ブロック、藻場造成ブロック等に係る打設されたコンクリートの養生に好ましく用いられ、施工性に優れ、さらに気候条件に係らずコンクリート強度の増大、ひび割れ等の減少を可能にするため、保温性および保水性の優れたカバー材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、目的を達成するために鋭意検討した結果なされたもので、マルチフィラメント糸を用いて緻密な織布を採用し、特定のカバーファクターおよび単糸本数を有することによって、シートの施工性、保水性、保温性を全て兼ね揃えることを見出した。
すなわち、経糸及び緯糸にマルチフィラメント糸を用いた織布からなるカバー材であって、前記織布のカバーファクターが1800以上であり、25.4mm角あたりの経糸及び緯糸の総単糸本数が6000〜40000本であり、前記織布の通気度が10cc/cm・s以下であり、前記織布の飽和保水量が50g/m以上であり、前記マルチフィラメント糸がポリアミド、ポリエステルから選択されることを特徴とするカバー材である。
前記マルチフィラメント糸の総繊度が、145〜1200dtexであることが好ましい。
前記織布の剛軟度が4〜20cmであることが好ましい。
前記カバー材が、コンクリートの養生に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、基礎コンクリート、消波/根固ブロック、藻場造成ブロック等に係る打設されたコンクリートの養生に用いられ、施工性の優れ、さらに気候条件に係らずコンクリート強度の増大、ひび割れ等の減少を可能にするため、保温性、保水性の優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のカバー材は、経糸及び緯糸にマルチフィラメント糸を用いた織布からなるカバー材であって、前記織布は、カバーファクターが1800以上であり、25.4mm角あたりの経糸及び緯糸の総単糸本数が6000〜40000本である。
【0011】
前記カバー材は、特定のカバーファクターと特定の25.4mm角あたりの経糸及び緯糸の総単糸本数を有する織布を採用することで、優れた保水性と保温性の両立を可能とすると同時に、前記織布にマルチフィラメントを採用していることで、モノフィラメント糸やフラットヤーンよりも柔軟性を有しているため、基礎コンクリート等の平板状コンクリート構造体に対して、平面状に施工する場合でも、消波/根固ブロック、藻場造成ブロック等のブロック状コンクリート構造体に対して、包み込むように施工する場合でも施工性が優れたものとなる。
【0012】
前記カバー材を構成する織布としては、例えば;平織、綾織、朱子織等の三原組織;変化組織;経二重織、緯二重織等の片二重組織;経ビロードなどが挙げられる。なかでも、柔軟性が良好で、生産性に優れる点から平織にしたものが好ましく採用される。
また、織布を構成する層数は特に限定するものではなく、単層構造であっても2層以上の多層構造であってもよい。なかでも、生産性に優れ、安価である点で単層構造が好んで用いられる。
【0013】
前記織布を構成するマルチフィラメント糸について、使用される繊維の種類は特に限定されるものではない。例えばポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の合成繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維等、いずれの繊維種も採用可能である。なかでも強度や耐候性が良好であるという点でポリアミド、ポリエステル等の合成繊維が好ましい。
【0014】
前記マルチフィラメント糸の総繊度は、145〜1200dtexが好ましい。145dtex以上であれば、カバー材にハリコシが得られ、施工性が向上する。また、施工時等の物理的応力による破れ等の発生を軽減できる。さらに、充分な強度が得られ、製織性が良好となり生産効率が向上するばかりか、摩擦による毛羽の発生を軽減できる。また、1200detx以下であれば、充分な柔軟性が得られ、施工性も向上する。
【0015】
前記マルチフィラメント糸の単糸繊度は、1.9dtex〜12dtexであることが好ましい。1.9dtex以上であれば、摩擦による毛羽の発生を軽減できる。さらに、カバー材にハリコシが得られ、施工性も向上する。また、12dtex以下であれば、水分を単糸同士の間に充分に保持でき、保水性が向上する。さらに、充分な柔軟性が得られ、施工性も向上する。
【0016】
前記マルチフィラメント糸の撚り数は、1000T/m以下であることが好ましい。さらに好ましくは500T/m以下である。1000T/m以下であれば、水分を保持できるような単糸の隙間を充分に確保でき、保水性が向上する。さらに充分な強度得られ、カバー材の裂け等を軽減できる。
【0017】
前記マルチフィラメント糸は、本発明の目的を阻害しない範囲内であれば、用途に応じてアルミニウム、酸化チタン等の金属及び/または酸化金属、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐侯剤、滑剤、顔料、充填剤、その他の添加剤を含有させることができる。その目的と用途に応じて1種または2種以上を適宜選択すればよい。なかでも、金属または/及び酸化金属を含有させることで、夏季の日射熱を反射でき、コンクリートの表面が高温となることをより確実に防ぐことができ、冬季では打設されたコンクリートから放出される遠赤外線を内側で反射させ、カバー材内部の保温性を向上することができる。また、顔料を含有させることで、意匠性を付与することができる。
【0018】
前記織布に用いられる経糸及び緯糸の総繊度比は1:3.5〜3.5:1であることが好ましい。特に好ましくは1:2〜2:1であり、経糸と緯糸の繊度差が小さい程、カバー材の表面がフラットとなり、経糸及び緯糸の交差部で生じる空隙を小さくすることができ、外気の通過を抑制し、保温性が向上する。
【0019】
また、前記織布で用いられる経糸の主となるマルチフィラメント糸は、総繊度のバラつきが、平均値xに対して±10%のものが好ましい。隣同士の繊度差が小さい程、糸同士の凹凸によりできる隙間を小さくすることができ、保温性を向上することができる。異なる総繊度の糸を混ぜて使用する場合は、その平均繊度を経糸総繊度とする。緯糸の総繊度についても経糸と同様である。
【0020】
場合によっては、織布の強度、意匠性の観点から、挿し糸を挿入してもよい。なお、前記挿し糸は前述したマルチフィラメント糸に含まれない。
【0021】
前記織布のカバーファクターは、1800以上であることが肝要であり、より好ましくは2000以上であり、特に好ましくは2200〜3500である。カバーファクターが1800未満では、織布の緻密性が失われ糸間の空隙が大きくなり、外気がカバー材を通過しまうことで、保温性が不充分となり、冬期における強い冷風などによるコンクリート表面の急激な温度低下を防止できず、クラック発生やコンクリート強度が不充分となるおそれがある。また、3500以下であれば、充分な柔軟性が得られ、施工性が向上する。さらに、生産性が向上し、コスト面で優位となる。ここで示すカバーファクターは、次の式1で定義(算出)される。
[式1]
カバーファクター= A × D 1/2 + B × D 1/2
A : 織布の経糸密度(本/2.54cm)
B : 織布の緯糸密度(本/2.54cm)
: 経糸の総繊度(dtex)
: 緯糸の総繊度(dtex)
【0022】
前記織布における2.54cm角あたりの経糸及び緯糸の総単糸本数は、6000〜40000本であることが肝要である。好ましくは8000〜20000本である。6000本未満であると、単糸同士の間に保たれる水分量が不足し、カバー材の乾燥が早く、夏期等の気温が高い時期にコンクリート表面の湿潤状態を長時間保つことができない。また、湿潤状態を保つために散水養生を行っても、頻繁な散水を行う必要があり、効率が悪く現実的でない。また、40000本を超えると、保水性は良いものの、施工時にコンクリート等との摩擦により、カバー材表面に毛羽の発生が生じる可能性が高い。さらに、柔軟性に乏しく、基礎コンクリートの平面状コンクリート養生時や消波/根固ブロック、藻場造成ブロック等のブロック状コンクリート構造体に対する養生時における施工性が不充分となる。
【0023】
前記織布の目付重量としては、150〜300g/mであることが好ましい。150g/m以上であれば、充分な強度が得られ、300g/m以下であれば、軽量であり、運搬や展開が容易となり、施工性が向上する。
【0024】
前記織布の厚さとしては、0.1〜5.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0mmである。0.1mm以上であれば、カバー材にハリコシが得られ、施工性が向上する。さらに、外気を遮る断熱層の役割を示し、保水性も向上する。また、5.0mm以下であれば、充分な柔軟性が得られ、施工性が向上する。さらには、ロール状での保管も容易となり、作業性も向上する。
【0025】
前記織布の剛軟度は4〜20cmであることが好ましく、より好ましくは6〜12cmである。4cm以上であれば、カバー材にハリコシが得られ、施工性が向上する。さらに、養生対象物への纏わりつきが少なく、施工時にカバー材を摺動する際や、養生後にカバー材を外す際の養生対象物との引っ掛かりを抑制できるため、カバー材の裂け等を軽減できる。また、20cm以下であれば、凹凸のある養生対象物やブロック状コンクリート構造体等にもカバー材が追従でき、施工性が向上する。なお。剛軟度は、後述する実施例に記載の方法によって測定される値である。
【0026】
前記織布は、通気度が10cc/cm・s以下であり、好ましくは1cc/cm・s以下である。通気度が10cc/cm・s以下であれば、外気の通過を抑制でき、より優れた保温性を発揮できる。なお、通気度は、後述する実施例に記載のとおり、JIS L1096 A法(フラジール法)に準じて測定される値である。

【0027】
前記織布は、引裂強度が60N以上であることが好ましく、より好ましくは100N以上である。引裂強度が60N以上であれば、施工時の物理的応力による破れ等の発生を軽減できる。なお、引裂強度は、後述する実施例に記載のとおり、JIS L1096 A法(シングルタング法)に準じて測定される値である。
【0028】
前記織布は、飽和保水量が50g/m以上であることが好ましく、より好ましくは100g/m以上である。飽和保水量が50g/m以上であれば、長時間コンクリート表面の湿潤状態を保つことができ、より優れた保水性を発揮できる。なお、飽和保水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定される値である。
【0029】
本発明のカバー材は、建築現場で打設された基礎コンクリート等の平板状コンクリート構造体に対して、平面状に用いられたり、消波/根固ブロック、藻場造成ブロック等のブロック状コンクリート構造体に対して、包み込むように用いられるが、柔軟性を有し、施工性が優れる点でブロック状コンクリート構造体に対する養生材として好ましく使用される。
【0030】
ブロック状コンクリート構造体に対する包み込む養生方法としては、単純に養生対象物の周囲にカバー材を巻きつけるようにして被い、カバー材の端部を養生対象物の下部に押し込む方法がある。また、施工効率を向上させるため、カバー材を、養生対象物の形状に合わせて縫製、接着等を行い、円柱、円錐、直方体、多角錐等に形成することもできる。
【0031】
また、本発明のカバー材の目的を阻害しない範囲内であれば、用途に応じて吸水処理、難燃処理、耐候処理、防汚処理等を行ってもよい。吸水処理は水分の保水性を高めるのに好適である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例と比較例における諸物性は、以下の測定方法により測定した。
【0033】
[評価方法]
1.目付重量(g/m
JIS L1096.8.3(単位面積当たりの質量)に準じて測定を行った。
2.厚さ(mm)
JIS L1096.8.4(厚さ)に準じて測定を行った。
3.密度(本/25.4mm)
JIS L1096.8.6(密度)に準じて測定を行った。
4.カバーファクター
各カバー材において次の式1で定義(算出)を行った。
[式1]
カバーファクター= A × D 1/2 + B × D 1/2
A : 織布の経糸密度(本/2.54cm)
B : 織布の緯糸密度(本/2.54cm)
: 経糸の総繊度(dtex)
: 緯糸の総繊度(dtex)
5.飽和保水量(g/m
JIS L1096.8.10(含水率)に準じて、試料を水槽に1分間浸漬し、その後水槽から2つのピンセット用いてカバー材の1辺に係る2つ隅を摘み上げ、取り出し30秒吊り下げのまま静置させたカバー材にて、測定を行った。
6.通気度(cc/cm・秒)
JIS L1096 A法(フラジール法)に準じて測定した。
7.剛軟度(cm)
経方向、緯方向のそれぞれに対し、JIS L 1096.8.21(カンチレバー法)に準じて測定した。
8.引裂強度(N)
経方向、緯方向のそれぞれに対し、JIS L1096 A法(シングルタング法)に準じて測定した。
9.保水性(乾き難さ)
20cm×20cmの各カバー材と、これが平置きで入るバットを用意し、共に乾燥した状態で、バット1枚にカバー材1枚を平置きし、この乾燥重量を測定した。なお、この時用いたバットとカバー材は試験終了まで各々セットとして扱った。
次に、カバー材の保水処理として、水の入った水槽に各カバー材を12時間浸漬した後、2つのピンセット用いてカバー材の1辺に係る2つ隅を摘み上げ、取り出し1分間吊り下げのまま静置し、水切りを行った。
次に、保水処理後の各カバー材をもとのバットに平置きで戻し、保水処理後の各カバー材とバットの保水重量を測定した。
そして、30℃×60%RHの環境下で静置させ、保水重量と乾燥重量の差の保水量を算出し、ほぼ濡れ感がなくなる、保水量10g/m以下となるまでの保水時間を計測し、下記の様な基準にて保水性を評価した。
○:保水時間が2時間以上
△:保水時間が30分以上、2時間未満
×:保水時間が30分未満
10.保温性
直径18cm、高さ20cmのスチール缶に80℃の熱湯を4L入れ、これをスチール缶に合わせた袋状にした各カバー材で包装し、5℃×40%RHの環境下で静置した。
このとき、水温が20℃に達するまでの時間を測定し、下記基準にて保温性を判断した。
○:10時間以上
△:6時間以上10時間未満
×:6時間未満
11.ブロック状コンクリート構造体に対する施工性
25tシェーク型消波ブロックに対して、直径6m、高さ5mの円錐状に縫製したカバー材を施工し、その施工性を評価した。
○:角部に対する追従性、及び、カバー材のハリコシが良好であり、ブロック状コンクリート構造体を容易に被うことができる。
△:角部に対する追従性、及び、カバー材のハリコシがやや良好であり、ブロック状コンクリート構造体を被うことはできる。
×:角部に対する追従性、及び、カバー材のハリコシが不良であり、ブロック状コンクリート構造体を被うことは困難である。
【0034】
以下に、実施例、比較例を示す。
【0035】
[実施例1]
経糸にポリエステル糸470dtex/144f(NAN YA PLASTICS CORPORATION製(以下、NAN YA製)、緯糸にポリエステル糸470dtex/144f(NAN YA製)を用いて、平織(密度:経54本/インチ,緯53本/インチ)、カバーファクターが2320、総単糸本数が15408本の織物を作成した。なお、ここでポリエステル糸470dtex/144fの経緯糸はZ方向に150T/mの撚糸加工したものを用いた。
【0036】
[実施例2]
経糸にポリエステル糸470dtex/144f(NAN YA製)、緯糸にポリエステル糸470dtex/144f(NAN YA製)を用いて、平織(密度:経46本/インチ,緯42本/インチ)、カバーファクターが1908、総単糸本数が12672本の織物を作成した。なお、ここでポリエステル糸470dtex/144fの経緯糸はZ方向に150T/mの撚糸加工したものを用いた。
【0037】
[実施例3]
経糸にポリエステル糸330dtex/48f(NAN YA製)、緯糸にポリエステル糸330dtex/48f(NAN YA製)を用いて、平織(密度:経65本/インチ,緯61本/インチ)、カバーファクターが2289、総単糸本数が6048本の織物を作成した。なお、ここでポリエステル糸330dtex/48fの経緯糸はZ方向に250T/mの撚糸加工したものを用いた。
【0038】
[実施例4]
経糸にポリエステル糸550dtex/288f(NAN YA製)、緯糸にポリエステル糸550dtex/288f(NAN YA製)を用いて、平織(密度:経65本/インチ,緯65本/インチ)、カバーファクターが3049、総単糸本数が37440本の織物を作成した。なお、ここでポリエステル糸550dtex/288fの経緯糸はポリエステル糸225dtex/144fの2本をZ方向に50T/mの撚りで合撚し双使いで用いた。
【0039】
[実施例5]
経糸にナイロン66糸470dtex/144f(NAN YA製)を、緯糸にナイロン66糸470dtex/144f(NAN YA製)を用いて、平織(密度:経46本/インチ,緯42本/インチ)、カバーファクターが1908、総単糸本数が12672本の織物を作成した。なお、ここでナイロン66糸470dtex/144fの経緯糸はZ方向に200T/mの撚糸加工したものを用いた。
【0040】
[実施例6]
経糸にポリエステル糸330dtex/48f(NAN YA製)、緯糸にポリエステル糸330dtex/48f(NAN YA製)を用いて、綾織(密度:経83本/インチ,緯51本/インチ)、カバーファクターが2434、総単糸本数が6432本の織物を作成した。なお、ここでポリエステル糸330dtex/48fの経緯糸はZ方向に450T/mの撚糸加工したものを用いた。
【0041】
[実施例7]
経糸にポリエステル糸330dtex/48f(NAN YA製)、緯糸にポリエステル糸330dtex/48f(NAN YA製)を用いて、二重綾織(密度:経98本/インチ,緯72本/インチ)、カバーファクターが3088、総単糸本数が8160本の織物を作成した。なお、ここでポリエステル糸330dtex/48fの経緯糸はZ方向に450T/mの撚糸加工したものを用いた。
【0042】
[実施例8]
経糸にポリエステル糸167dtex/36f(NAN YA製)、緯糸にポリエステル糸275dtex/24f(NAN YA製)を用いて、朱子織(密度:経122本/インチ,緯76本/インチ)、カバーファクターが2837、総単糸本数が6216本の織物を作成した。なお、ここでポリエステル糸167dtex/36fの経糸およびポリエステル糸275dtex/24fの緯糸はZ方向に350T/mの撚糸加工したものを用いた。
【0043】
[実施例9]
経糸にポリエステル糸1100dtex/192f(NAN YA製)、緯糸にポリエステル糸1100dtex/192f(NAN YA製)を用いて、平織(密度:経33本/インチ,緯24本/インチ)、カバーファクターが1890、総単糸本数が10944本の織物を作成した。なお、ここでポリエステル糸1100dtex/192fの経緯糸はZ方向に80T/mの撚糸加工したものを用いた。
【0044】
[比較例1]
経糸にポリエステル糸330dtex/96f(NAN YA製)、緯糸にポリエステル糸470dtex/96f(NAN YA製)を用いて、平織(密度:経46本/インチ,緯42本/インチ)、カバーファクターが1599、総単糸本数が8448本の織物を作成した。なお、ここでポリエステル糸330dtex/96fの経緯糸はZ方向に250T/mの撚糸加工したものを用いた。
【0045】
[比較例2]
経糸にポリエステル糸330dtex/48f(NAN YA製)、緯糸にポリエステル糸330dtex/48f(NAN YA製)を用いて、平織(密度:経55本/インチ,緯50本/インチ)、カバーファクターが1907、総単糸本数が5040本の織物を作成した。なお、ここでポリエステル糸330dtex/48fの経緯糸はZ方向に250T/mの撚糸加工したものを用いた。
【0046】
[比較例3]
経糸にポリエステルモノフィラ糸330dtex(ユニプラス製)、緯糸にポリエステル糸330dtex/48f(ユニプラス製)を用いて、平織(密度:経62本/インチ,緯62本/インチ)、カバーファクターが2253、総単糸本数が3038本の織物を作成した。なお、ここでポリエステル糸330dtex/48fの緯糸はZ方向に150T/mの撚糸加工したものを用いた。
【0047】
【表1】