(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
顔料、顔料分散用樹脂、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、レオロジーコントロール剤、水を含有する溶剤を含有する水性フレキソ印刷インキ組成物であって、水性フレキソ印刷インキ組成物中の顔料の顔料濃度が5〜60質量%であり、レオロジーコントロール剤が、ウレタン会合型及び/又はアルカリ膨潤会合型レオロジーコントロール剤及び重量平均分子量が10万〜300万のアルカリ可溶型のポリマー及び/又はポリエチレングリコールのレオロジーコントロール剤とからなるものであることを特徴とする水性フレキソ印刷インキ組成物。
顔料分散用樹脂が(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の水性フレキソ印刷インキ組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、ディスペンシングシステム等の生産システムに適用して得られるフレキソ印刷インキ組成物において、水性フレキソ印刷インキ組成物作成時にピグメントショックを発生させず、且つ水性フレキソ印刷インキ組成物を水希釈して印刷するときに水希釈率を高くしても粘度低下が少なく、得られる印刷物の光沢や濃度も良好である水性フレキソ印刷インキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の高顔料濃度水性フレキソ印刷インキ組成物と、特定のワニス組成物及び/又は希釈溶剤とを、特定の割合で混合して得られる、顔料、アルカリ可溶型水溶性樹脂を含有する顔料分散用樹脂、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、会合型のレオロジーコントロール剤及び重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤とからなるレオロジーコントロール剤、水を含有する溶剤からなる水性フレキソ印刷インキ組成物を使用することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を解決するに至った。
すなわち、本発明は、
1.顔料、顔料分散用樹脂、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、レオロジーコントロール剤、水を含有する溶剤を含有する水性フレキソ印刷インキ組成物であって、水性フレキソ印刷インキ組成物中の顔料の顔料濃度が5〜60質量%であり、レオロジーコントロール剤が、会合型のレオロジーコントロール剤及び重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤とからなるものであることを特徴とする水性フレキソ印刷インキ組成物。
2.顔料分散用樹脂がアルカリ可溶型水溶性樹脂を含有することを特徴とする1記載の水性フレキソ印刷インキ組成物。
3.顔料分散用樹脂が(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを含有することを特徴とする1又は2に記載の水性フレキソ印刷インキ組成物。
4.会合型のレオロジーコントロール剤が、ウレタン会合型及び/又はアルカリ膨潤会合型のレオロジーコントロール剤であり、高分子型のレオロジーコントロール剤が、アルカリ可溶型のポリマー及び/又はポリエチレングリコールのレオロジーコントロール剤であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の水性フレキソ印刷インキ組成物。
5.1〜4のいずれかに記載の水性フレキソ印刷インキ組成物は、下記ア〜ウをア/イ=100/0〜20/80、(ア+イ)/ウ=100/0〜60/40の割合となるように混合して得られるもので、水性フレキソ印刷インキ組成物中にレオロジーコントロール剤として、会合型のレオロジーコントロール剤及び重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤を含有することを特徴とする水性フレキソ印刷インキ組成物。
ア.顔料、顔料分散用樹脂、レオロジーコントロール剤として会合型のレオロジーコントロール剤及び/又は重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤、水を含有する溶剤からなる顔料濃度が15〜60質量%である高顔料濃度水性フレキソ印刷インキ組成物。
イ.スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、レオロジーコントロール剤として会合型のレオロジーコントロール剤及び/又は重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤、水を含有するワニス組成物。
ウ.希釈溶剤。
6.ワニス組成物が、体質顔料、無機系微粒子及び粘着性樹脂から選ばれる少なくとも1種の添加剤を更に含有することを特徴とする5に記載の水性フレキソ印刷インキ組成物。
7.1〜6のいずれかに記載の水性フレキソ印刷インキ組成物を使用して、フレキソ印刷することを特徴とする印刷方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物について詳細に説明する。
(顔料)
本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物に使用される顔料としては、従来から水性フレキソ印刷インキで使用されているものを使用できる。具体的には、無機顔料として、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミニウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料を挙げることができる。また、有機顔料として、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。上記顔料は、1種でも2種以上でも用いことができる。
上記顔料の水性フレキソ印刷インキ組成物中での濃度は5〜60質量%であり、通常有機顔料の場合は、6〜35質量%、無機顔料の場合は、30〜60質量%である。
【0008】
(顔料分散用樹脂)
本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物で使用する顔料分散用樹脂としては、アルカリ可溶型水溶性樹脂であり、さらに、(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを併用して使用することが好ましい。
【0009】
(アルカリ可溶型水溶性樹脂)
アルカリ可溶型水溶性樹脂としては、通常の水性フレキソ印刷インキ組成物で使用される不飽和二重結合を有するモノマーを重合させて得られる樹脂や、官能基同士の反応によって得られる樹脂などであればとくに制限なく使用できる。
具体的には、アクリル酸あるいはメタクリル酸とそのアルキルエステル、あるいはスチレン等を主なモノマー成分として共重合した水溶性アクリル系樹脂、水溶性スチレン−アクリル系樹脂、水溶性スチレン−マレイン酸系樹脂、水溶性スチレン−アクリル−マレイン酸系樹脂、水溶性ポリウレタン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂などの各種バインダー樹脂が好適な例として例示できる。
これらのアルカリ可溶型水溶性樹脂は、通常、塩基性化合物の存在下で水中に溶解させて水溶性樹脂ワニスとして使用する。上記アルカリ可溶型水溶性樹脂を水中に溶解するために使用する塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、有機アミン、アルカリ金属水酸化物等を挙げられる。具体的には、上記有機アミンとしては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等を挙げることができる。上記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。その中でも乾燥性を向上させるために、常温あるいはわずかの加温で容易に揮発するものが望ましい。
顔料に対するアルカリ可溶型水溶性樹脂の使用量は、顔料100質量部に対して10〜
30質量部で、好ましくは12〜28質量部である。
【0010】
(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー
(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーとしては、2以上のブロックを含み、それぞれのブロックは、ポリエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドで構成される。
(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーとしては、公知の方法で合成することができる。例えば、ポリエチレンオキサイドポリマーがプロピレンオキサイドと反応し、ポリ(プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを形成でき、別の方法として、ポリプロピレンオキサイドポリマーがエチレンオキサイドと反応し、ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド)ブロックポリマーを形成することができる。
【0011】
なお、本発明で使用できるポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド)ブロックポリマーは、重量平均分子量が5,000〜100,000の範囲のもので、市販されている具体例としては、ADEKA製のアデカプルロニックシリーズ等が挙げられる。
また、ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド)ブロックポリマーは、水を含有する溶剤の安定性の面から、HLB値が8〜20であることが好ましい。
ここで、HLB値とは、界面活性剤の分野で利用されている、分子の親水性部分と親油性部分とのバランス(hydrophile-lipophile balance)を表すものであり、上記HLB値は、下記に示すグリフィン式(一定の油に対する乳化効率の測定から求めた実験値と親水部の重量分率に基づく式)を適用して求める事ができる。
〔グリフィン式〕HLB=(100/5)×親水基重量/(親水基重量+疎水性重量)
顔料に対しての(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーの使用量は、顔料100質量部に対して0〜10質量部、好ましくは0.5〜8質量部である。
顔料に対してのアルカリ可溶型水溶性樹脂+(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーの合計使用量は、顔料100質量部に対して10〜30質量部であることが好ましい。
【0012】
(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン)
本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物で使用するスチレン−アクリル系樹脂エマルジョンとしては、公知の方法で製造される酸価10〜100mgKOH/gのスチレン−アクリル系樹脂エマルジョンが使用できる。このようなスチレン−アクリル系樹脂エマルジョンのうち、水溶性アクリル系樹脂を高分子乳化剤として用いて、スチレン系モノマー、必要に応じて(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを共重合して得られる常温で造膜するものが好適に使用できる。
スチレン−アクリル系樹脂エマルジョンの使用量は、水性フレキソ印刷インキ組成物中に、固形分で5〜40質量部である。
【0013】
(レオロジーコントロール剤)
本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物で使用するレオロジーコントロール剤は、会合型のレオロジーコントロール剤、重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤で、特に会合型のレオロジーコントロール剤と重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤とを併用して使用することが好ましい。
会合型のレオロジーコントロール剤としては、アクリル膨潤会合型レオロジーコントロール剤及び/又はウレタン会合型レオロジーコントロール剤で、具体例としては、RM−5、TT−615、TT−935、RM−8、RM−825、RM−1020、SCT−275、RM−2020、RM−SW、RM−2020NPR、RM−R、RM−12W、DR−1、DR−72、DR−300、RM−7、RM−50000、RM−60000、RM−845、RM−995(ローム・アンド・ハース社製)、アデカノールVF、UH−462、UH−752、UH−140S、UH−420、UH−438、UH−472、UH−450、UH−540、UH−550、UH−541VF、UH−526、UH−530(ADEKA社製)、コグニス3220、RheovisPE1332、PU1190、PU1191、PU1214、PU1215、PU1250、PU1251、PU1256、PU1270、PU1280、PU1291、PU1331(BASF社製)、RHEOLATE266、288、244、255、278(RHEOX社製)、SNシックナーA−803、A−804、A−807、A−812、A−814(サンノプコ社製)等が例示できる。なかでも、ウレタン変性エーテル会合型レオロジーコントロール剤が好適に使用できる。
また、高分子型のレオロジーコントロール剤としては、重量平均分子量が10万〜300万の範囲のアルカリ可溶型のポリマー及び/又はポリエチレングリコールのレオロジーコントロール剤、具体的には、プライマルASE−60、TT−615、ASE−75、ASE−108、RM−5、ASE−95NP(ローム・アンド・ハース社製)、アルコックスR−1000、R−400、R−150、E−60、E−45、E−30、E−300、E−240、E−160、E−100、E−75(明星化学社製)、RheovisAS1125、AS1130、AS1188、AS1956(BASF社製)、アロンA−20L、A−7100、A−10H、A−7255、A−7185、A−7195、A−7075、A−7055、B−300K、B−500(東亜合成社製)等が例示できる。
【0014】
レオロジーコントロール剤(会合型のレオロジーコントロール剤+重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤)の使用量Aは、フレキソ印刷用インキ組成物中に固形分で0質量部<A≦2質量部、好ましくは、0.05質量部≦A≦2質量部である。尚、会合型のレオロジーコントロール剤の使用量A1は、フレキソ印刷用インキ組成物中に固形分で0質量部<A1≦1質量部、重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤の使用量A2は、フレキソ印刷用インキ組成物中に固形分で0質量部<A2≦1質量部であることが好ましい。
【0015】
(水を含有する溶剤)
本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物で使用する溶剤としては、水と本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物の性能低下をきたさない範囲で、水溶性有機溶剤を使用する。
水溶性有機溶剤としては、アルコールおよび多価アルコール系溶剤で、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジピロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン等を添加することができる。
【0016】
(添加剤)
本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物には、必要に応じて各種添加剤を使用することができる。
具体的には、乾燥性を向上させるために、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク等の体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子及び粘着性樹脂(アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂)、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために苛性ソーダ等の塩基性化合物、塗膜耐性を付与するためにワックス、造膜エマルジョン等の各種添加剤を挙げることができる。
【0017】
(造膜エマルジョン)
本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物において添加することができる造膜エマルジョンとしては、ガラス転移温度が10℃以下で造膜する樹脂エマルジョンが好ましい。このような樹脂エマルジョンとしては、アクリル系樹脂エマルジョン、水溶性スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、水溶性スチレン−マレイン酸系樹脂エマルジョン、水溶性スチレン−アクリル−マレイン酸樹脂系樹脂エマルジョンが挙げられ、中でも、水溶性アクリル系樹脂を高分子乳化剤として用いて、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル等を共重合して得られたものが好適に使用できる。
【0018】
次に、本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物及び印刷物の製造方法について説明する。
本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物を従来法で製造する方法としては、顔料と、顔料分散用樹脂と、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョンと、レオロジーコントロール剤と、水を含有する溶剤とを混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、パールミル、サンドミル、ボールミル、アトライター、ロールミル等を利用して練肉し、さらに、所定の材料の残り、及び必要に応じて添加剤を混合する。
次いで、印刷時に希釈が必要な場合は、さらに水を含有する溶剤を加え水性フレキソ印刷インキ組成物を得る。この水性フレキソ印刷インキ組成物を用いた印刷物の製造方法としては、段ボールやカートン等の紙器に、上記水性フレキソ印刷インキ組成物を用いてフレキソ印刷機で印刷する方法が例示できる。
【0019】
次に、印刷インキの調色充填装置(ディスペンシングシステム)を用いて水性フレキソ印刷インキ組成物を得る方法及び印刷物の製造方法について説明する。
(ア.顔料濃度が15〜60質量%である高顔料濃度水性フレキソ印刷インキ組成物)
顔料、顔料分散用樹脂としてアルカリ可溶型水溶性樹脂、レオロジーコントロール剤として会合型のレオロジーコントロール剤及び/又は重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤、水を含有する溶剤、必要に応じてスチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、顔料分散用樹脂として(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、パールミル、サンドミル、ボールミル、アトライター、ロールミル等を使用して練肉し、さらに、所定の材料の残り及び必要に応じて添加剤を混合し、顔料濃度が15〜60質量%である高顔料濃度水性フレキソ印刷インキ組成物を得る。
中でも高顔料濃度水性フレキソ印刷インキ組成物中には、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、顔料分散用樹脂として(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを必須成分として含有させることが好ましい。
また、高顔料濃度水性フレキソ印刷インキ組成物中の会合型のレオロジーコントロール剤、重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤は、固形分で各々、0質量部以上1質量部以下である(但し、会合型のレオロジーコントロール剤、重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤の少なくとも一方は、高顔料濃度水性フレキソ印刷インキ組成物中に含まれている。ただし、いずれか一方のレオロジーコントロール剤が含有されないときには、そのレオロジーコントロール剤は下記のワニス組成物中に含有される必要がある)。
【0020】
(イ.ワニス組成物)
スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、レオロジーコントロール剤として会合型のレオロジーコントロール剤及び/又は重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤、水を含有する溶剤、及び必要に応じて顔料分散用樹脂及び各種添加剤を混合した後、撹拌装置で撹拌しワニス組成物を得る。ワニス組成物には、顔料分散用樹脂としてアルカリ可溶型水溶性樹脂を必須成分として含有させることが好ましい。
また、ワニス組成物中の会合型のレオロジーコントロール剤、重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤は、固形分で各々、0質量部以上1質量部以下である(但し、会合型のレオロジーコントロール剤、重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤の少なくとも一方は、ワニス組成物中に含まれている)。
さらに、各種添加剤は、要求される性能を付与するため、乾燥性を向上させる炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク等の体質顔料、防滑性を付与する無機系微粒子及び粘着性樹脂(アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂)、レベリング性を向上させるレベリング剤、消泡性を付与する消泡剤、再溶解性を付与する苛性ソーダ等の塩基性化合物、塗膜耐性を付与するワックス等を含有させることができる。
(ウ.希釈溶剤)
希釈溶剤としては、水だけでもよいが、水温和性溶剤を必要に応じて混合させたものを使用することもできる。
【0021】
上記ア.高顔料濃度水性フレキソ印刷インキ組成物、上記イ.ワニス組成物及び上記ウ.希釈溶剤を調色充填装置(ディスペンシングシステム)を用いて、予めコンピュータに記憶された配合比:ア〜ウをア/イ=100/0〜20/80、(ア+イ)/ウ=100/0〜60/40の割合となるように混合し、本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物を得る。
尚、水性フレキソ印刷インキ組成物は、レオロジーコントロール剤として、会合型のレオロジーコントロール剤及び重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤の両方を含有するように配合する。
得られた水性フレキソ印刷インキ組成物を用いて、段ボールやカートン等の紙器に、上記フレキソ印刷インキ組成物を用いてフレキソ印刷機で印刷する。
尚、上記調色充填装置(ディスペンシングシステム)は、16〜20色分のインキタンクとその各々に接続したポンプと注入用ノズル、計量器、撹拌機、及びコンピュータが装備されており、予め、コンピュータに記憶された配合比で、インキの生産、調色作業が可能である。
【実施例】
【0022】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。また、表中の各材料の分量の数字についても「質量部」である。
【0023】
(高顔料濃度水性フレキソ印刷インキ組成物(A)〜(F))
顔料(フタロシアニンブルー、C.I.ピグメントブルー15:3)、アルカリ可溶型水溶性樹脂(ジョンクリルHPD−671、ジョンソンポリマー社製、固形分25%)、ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー(ポリ(EO/PO)ブロックポリマー、HLB値14、Mw16000)、ジブチルグリコール、水の混合物をビーズミルで混練後、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン(ジョンクリル7610、ジョンソンポリマー社製、固形分52%)、会合型のレオロジーコントロール剤(SNシックナー 623N、固形分30%)、高分子型のレオロジーコントロール剤(チクゾールK502、固形分21%)、消泡剤(SN デフォーマー 777 #C、サンノプコ社製)を表1の割合となるように加え混合して、高顔料濃度水性フレキソ印刷インキ組成物(A)〜(F)を得た。
【0024】
【表1】
【0025】
(ワニス組成物(A)〜(I))
アルカリ可溶型水溶性樹脂(ジョンクリルHPD−671、ジョンソンポリマー社製、固形分25%)、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン(ジョンクリル7610、ジョンソンポリマー社製、固形分52%)、会合型のレオロジーコントロール剤(SNシックナー 623N、固形分30%)、高分子型のレオロジーコントロール剤(チクゾールK502、固形分21%)、ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー(ポリ(EO/PO)ブロックポリマー、HLB値14、Mw16000)、体質顔料(一次粒子径0.1μmの重炭酸カルシウムを75%含有しているスラリー)、シリカ(富士デビソン(株)社製、平均粒子径5μm)、造膜エマルジョン(ジョンクリル390、ジョンソンポリマー社製、ガラス転移温度2℃、固形分46%)、水を表2の割合となるように加え混合して、ワニス組成物(A)〜(I)を得た。
【0026】
【表2】
【0027】
(実施例1〜6、比較例1〜3のフレキソ印刷用インキ組成物)
高顔料濃度水性フレキソ印刷インキ組成物(A)〜(F)とワニス組成物(A)〜(I)と水を表3の割合となるように配合して、実施例1〜6、比較例1〜3のフレキソ印刷用インキ組成物を調製した。
【0028】
(性能評価)
<ピグメントショック>
実施例1〜6、比較例1〜3のフレキソ印刷用インキ組成物を調製して10分間静置後、100メッシュの網でこして残渣を目視で評価した。
評価
〇:残渣が無いもの
×:残渣が有るもの
【0029】
<色調変化>
実施例1〜6、比較例1〜3のフレキソ印刷用インキ組成物について、調製直後の各フレキソ印刷用インキ組成物と、各フレキソ印刷用インキ組成物を密閉したサンプル瓶に入れて40℃7日間保存した各フレキソ印刷用インキ組成物を、へら引きにてKライナー(王子製紙(株)製、K)に同時展色し、色調変化を目視で比較し評価した。
評価
〇:保存前後において色調変化が無いもの
×:保存前後において色調変化が有るもの
【0030】
<粘度評価>
実施例1〜6、比較例1〜3のフレキソ印刷インキ組成物の23℃の粘度を4号ザーンカップを測定した。
評価
〇:7.5秒以上であるもの
×:7.5秒未満であるもの
【0031】
<経時粘度変化>
実施例1〜6、比較例1〜3のフレキソ印刷インキ組成物を密閉したサンプル瓶に入れ、40℃7日間保存した後のインキ流動性を目視で評価した。
評価
〇:フローが有るもの
×:フローが無いもの
【0032】
<耐性>
実施例1、実施例4〜6のフレキソ印刷インキ組成物を、0.15mmのメアバーを用いてKライナー(王子製紙(株)製、K)に展色した各印刷物を、を2.5cm×25cmに切断してテストピースとし、学振型耐摩擦試験機((株)大宋科学精器製作所製)を使用して、当て紙(コピー用紙)を印刷物の印刷面に当てて、500gの荷重で100回ずつ摩擦して耐性を評価した。
評価
○:コピー用紙の汚染が汚染用グレースケール5〜4のもの
△:コピー用紙の汚染が汚染用グレースケール3のもの
×:コピー用紙の汚染が汚染用グレースケール2〜1のもの
【0033】
<乾燥性>
実施例1、実施例4〜6のフレキソ印刷インキ組成物を、0.15mmのメアバーを用いてKライナー(王子製紙(株)製、K)に展色した各印刷物の乾燥性を指触して評価した。
評価
〇:実施例1より速いもの
×:実施例1と同等なもの
【0034】
<滑り角度>
実施例1、実施例4〜6のフレキソ印刷インキ組成物を、0.15mmのメアバーを用いてKライナー(王子製紙(株)製)に展色し、得られた各印刷物の滑り角度を、東洋精機(株)製滑り角度試験機により測定した。
【0035】
【表3】
【0036】
上記表3に示す結果によると、本発明に沿った例である実施例1〜6によると、各評価項目において優れた結果が得られた。特に造膜エマルジョンを含有する実施例6のフレキソ印刷インキ組成物は、耐性の点において優れていた。
これに対して、会合型のレオロジーコントロール剤及び重量平均分子量が10万〜300万の高分子型のレオロジーコントロール剤を共に含有しない比較例1のフレキソ印刷インキ組成物によると、ピグメントショックを発生し、かつ粘度評価も良好ではなかった。高分子型のレオロジーコントロール剤を含有するが会合型のレオロジーコントロール剤を含有しない比較例2のフレキソ印刷インキ組成物によると、ピグメントショックを発生し、保存前後において色調変化があった。さらに高分子型のレオロジーコントロール剤を含有せず、会合型のレオロジーコントロール剤を含有する比較例3のフレキソ印刷インキ組成物によると、ピグメントショックを発生し、かつ粘度評価や経時粘度変化も良好ではなかった。
よって、本発明によると、高分子型のレオロジーコントロール剤と会合型のレオロジーコントロール剤をそれぞれ単独で含有した場合よりも、ピグメントショックが発生せず、
さらに色調変化や粘度変化、経時粘度変化に関する性質も良好であった。