特許第6640507号(P6640507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640507
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】基準電流源回路および半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/26 20060101AFI20200127BHJP
【FI】
   G05F3/26
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-187258(P2015-187258)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2017-62616(P2017-62616A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎一
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−242641(JP,A)
【文献】 特開2006−185221(JP,A)
【文献】 特開2015−132941(JP,A)
【文献】 特開2003−131749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ回路に基準電流を供給する基準電流源回路であって、
前記基準電流を生成する定電流回路と、
前記基準電流源回路の起動時に、第1起動電流を前記定電流回路に供給するとともに、第2起動電流を前記アナログ回路に供給する起動回路と、
を備え、
前記起動回路は、前記第2起動電流を、前記基準電流と同一経路を介して前記アナログ回路に供給し、
前記起動回路は、前記定電流回路の内部のひとつのノードの電圧としきい値電圧との比較結果にもとづいて、前記第2起動電流の量を切りかえることを特徴とする基準電流源回路。
【請求項2】
前記起動回路は、起動直後、前記第2起動電流を第1電流量とし、その後、前記第2起動電流を前記第1電流量より小さな第2電流量とすることを特徴とする請求項に記載の基準電流源回路。
【請求項3】
前記定電流回路は、
電源ラインおよび接地ラインの一方である第1ライン側に設けられる電流源と、
前記電源ラインおよび前記接地ラインの他方である第2ライン側に設けられるカレントミラー回路と、
を含み、
前記基準電流源回路は、前記定電流回路と接続される位相補償用のキャパシタをさらに備え、
前記起動回路は、前記キャパシタと前記定電流回路との接続ノードに前記第1起動電流を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の基準電流源回路。
【請求項4】
アナログ回路に基準電流を供給する基準電流源回路であって、
前記基準電流を生成する定電流回路と、
前記基準電流源回路の起動時に、第1起動電流を前記定電流回路に供給するとともに、第2起動電流を前記アナログ回路に供給する起動回路と、
を備え、
前記定電流回路は、
電源ラインおよび接地ラインの一方である第1ライン側に設けられる電流源と、
前記電源ラインおよび前記接地ラインの他方である第2ライン側に設けられるカレントミラー回路と、
を含み、
前記基準電流源回路は、前記定電流回路と接続される位相補償用のキャパシタをさらに備え、
前記起動回路は、前記キャパシタと前記定電流回路との接続ノードに前記第1起動電流を供給することを特徴とする基準電流源回路。
【請求項5】
前記起動回路は、前記キャパシタと前記定電流回路との接続ノードの電圧としきい値電圧との比較結果にもとづいて、前記第2起動電流の量を切りかえることを特徴とする請求項3または4に記載の基準電流源回路。
【請求項6】
前記起動回路は、
前記電源ラインと前記接地ラインの間に直列に設けられた抵抗および第1トランジスタと、
前記第1トランジスタとカレントミラーを形成するように接続される第2トランジスタと、
前記第1トランジスタとカレントミラーを形成するように接続される第3トランジスタと、
を含み、前記第2トランジスタに流れる電流を、前記第1起動電流として前記キャパシタに供給し、前記第3トランジスタに流れる電流を、前記第2起動電流として前記アナログ回路に供給することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の基準電流源回路。
【請求項7】
前記起動回路は、
前記第1トランジスタとカレントミラーを形成するように接続される第4トランジスタと、
前記第4トランジスタと直列に設けられるスイッチと、
前記キャパシタと前記定電流回路との接続ノードの電圧としきい値電圧との比較結果にもとづいて、前記スイッチのオン、オフを切りかえる制御回路と、
をさらに含み、
前記第2起動電流は、前記第3トランジスタおよび前記第4トランジスタに流れる電流の合計であることを特徴とする請求項に記載の基準電流源回路。
【請求項8】
アナログ回路に基準電流を供給する基準電流源回路であって、
前記基準電流を生成する定電流回路と、
前記基準電流源回路の起動時に、第1起動電流を前記定電流回路に供給するとともに、第2起動電流を前記アナログ回路に供給する起動回路と、
を備え、
前記起動回路は、
電源ラインと接地ラインの間に直列に設けられた抵抗および第1トランジスタと、
前記第1トランジスタとカレントミラーを形成するように接続される第2トランジスタと、
前記第1トランジスタとカレントミラーを形成するように接続される第3トランジスタと、
前記第3トランジスタに流れる電流を折り返す第1カレントミラー回路と、
前記基準電流に比例した電流を生成し、前記第1カレントミラー回路の出力に供給する第4トランジスタと、
その入力が前記第1カレントミラー回路の出力と接続される第2カレントミラー回路と、
を含み、前記第2トランジスタに流れる電流を、前記第1起動電流として前記定電流回路に供給し、前記第2カレントミラー回路の出力電流を、前記第2起動電流として前記アナログ回路に供給することを特徴とする基準電流源回路。
【請求項9】
請求項1からのいずれかに記載の基準電流源回路と、
前記基準電流源回路が生成した基準電流が供給されるアナログ回路と、
を備えることを特徴とする半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電流源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に半導体集積回路は、電源電圧等に依存しない一定の基準電流を生成する基準電流源回路を備え、この基準電流がコピーされて、半導体集積回路内のさまざまな回路ブロックにバイアス電流として分配される。
【0003】
図1は、基準電流源回路100rを備える半導体集積回路200rのブロック図である。半導体集積回路200rは、基準電流源回路100rと、基準電流源回路100rにより生成される基準電流IREFにもとづいて動作するアナログ回路202と、を備える。アナログ回路202の種類は特に限定されず、オペアンプ、差動アンプ、コンパレータ、電圧レギュレータ、VCO(Voltage Controlled Oscillator)、アナログタイマー回路などを含みうる。基準電流源回路100rは、定電流回路10rおよび起動回路20rを含む。定電流回路10rは、基準電流IREFを生成し、アナログ回路202に供給する。
【0004】
一般に定電流回路10rは、複数の安定動作点を有しており、そのひとつは電流がゼロの状態である。基準電流源回路100rの起動時において起動回路20rは、起動電流Iを発生し、定電流回路10rに供給することにより、定電流回路10rを、電流が非ゼロの通常の安定動作点に遷移させる。定電流回路10rの起動が完了すると、起動完了信号S1に応じて起動電流Iの経路が遮断される。
【0005】
また、半導体集積回路200rが、シャットダウンモード(スリープモード,省エネモードとも称する)をサポートするシステムに使用される場合がある。このようなシステムでは、非動作状態において、基準電流源回路100rを停止し、アナログ回路202への基準電流IREFの供給を停止する。具体的にはシャットダウン信号SHTDNがアサート(たとえばハイレベル)の間、定電流回路10rおよび起動回路20rの電流経路が遮断され、基準電流IREFがゼロとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−344028号公報
【特許文献2】特開2006−133869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、図1の半導体集積回路200rの起動について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。図2は、図1の半導体集積回路200rの起動時の動作波形図である。ここではシャットダウン状態からの復帰起動を説明する。
【0008】
時刻t0より前、シャットダウン信号SHTDNがアサートされており、基準電流源回路100rおよびアナログ回路202は停止している。時刻t0にシャットダウン信号SHTDNがネゲートされると、シャットダウン状態が解除され、起動しはじめる。具体的には起動回路20rにより起動電流Iが生成され、その後、時刻t1に定電流回路10rが通常の安定動作点へと移行すると、基準電流IREFが設計値に到達する。このとき起動完了信号S1がアサートされると、起動回路20rの電流経路が遮断され、起動電流Iが停止する。
【0009】
基準電流IREFが流れ始めると、アナログ回路202の内部の寄生容量や位相補償用のキャパシタが充電され、またその内部の回路素子の電圧、電流が通常動作状態のそれらに近づいていき、時刻t2にアナログ回路202の出力が設計値に到達する。
【0010】
半導体集積回路200r全体としての起動時間Tは、基準電流源回路100rの起動時間Tとアナログ回路202の起動時間Tの合計となる。
【0011】
多くのアナログ回路202は、その安定化のためにフィードバック構成を含んでおり、その起動には時間がかかる。したがって、仮に基準電流源回路100rの起動時間Tを短くできたとしても、アナログ回路202の起動時間Tが長ければ、全体の起動時間Tは、起動時間Tにより制約されることとなる。
なお、以上の考察を当業者の一般的な認識としてとらえてはならない。
【0012】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、半導体集積回路の起動時間を短縮可能な基準電流源回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様は、アナログ回路に基準電流を供給する基準電流源回路に関する。基準電流源回路は、基準電流を生成する定電流回路と、基準電流源回路の起動時に、第1起動電流を定電流回路に供給するとともに、第2起動電流をアナログ回路に供給する起動回路と、を備える。
【0014】
この態様によると、定電流回路の起動が完了する前に、定電流回路の起動と並行してアナログ回路を起動することにより、半導体集積回路の起動時間を短縮することができる。
【0015】
起動回路は、第2起動電流を、基準電流と同一経路を介してアナログ回路に供給してもよい。
【0016】
起動回路は、第2起動電流の電流量を時間とともに変化させてもよい。
定電流回路が起動して基準電流が流れ始めると、アナログ回路には、基準電流と第2起動電流の合計が供給され、アナログ回路のオープンループゲインが高くなる。したがって、第2起動電流の量を変化させることで、アナログ回路の発振を抑制できる。
【0017】
起動回路は、起動直後、第2起動電流を第1電流量とし、その後、第2起動電流を第1電流量より小さな第2電流量としてもよい。
【0018】
起動回路は、定電流回路の内部のひとつのノードの電圧としきい値電圧との比較結果にもとづいて、第2起動電流の量を切りかえてもよい。ひとつのノードは、定電流回路が生成する基準電流と相関を有する電圧が発生するノードを選べばよく、言い換えれば定電流回路の起動の進み具合を示す電圧が生ずるノードを選べばよい。
【0019】
定電流回路は、電源ラインおよび接地ラインの一方である第1ライン側に設けられる電流源と、電源ラインおよび接地ラインの他方である第2ライン側に設けられるカレントミラー回路と、を含んでもよい。基準電流源回路は、定電流回路と接続される位相補償用のキャパシタをさらに備えてもよい。起動回路は、キャパシタと定電流回路との接続ノードに第1起動電流を供給してもよい。
【0020】
起動回路が生成する第1起動電流を、定電流回路のカレントミラー回路や電流源に供給する代わりに、あるいはそれに加えて、位相補償用のキャパシタの接続ノードに供給することで、キャパシタを直接充電することができ、短時間で定電流回路を起動することが可能となる。
【0021】
起動回路は、キャパシタと定電流回路との接続ノードの電圧としきい値電圧との比較結果にもとづいて、第2起動電流の量を切りかえてもよい。
【0022】
起動回路は、電源ラインと接地ラインの間に直列に設けられた抵抗および第1トランジスタと、第1トランジスタとカレントミラーを形成するように接続される第2トランジスタと、第1トランジスタとカレントミラーを形成するように接続される第3トランジスタと、を含み、第2トランジスタに流れる電流を、第1起動電流としてキャパシタに供給し、第3トランジスタに流れる電流を、第2起動電流としてアナログ回路に供給してもよい。
【0023】
起動回路は、第1トランジスタとカレントミラーを形成するように接続される第4トランジスタと、第4トランジスタと直列に設けられるスイッチと、キャパシタと定電流回路との接続ノードの電圧としきい値電圧との比較結果にもとづいて、スイッチのオン、オフを切りかえる制御回路と、をさらに含んでもよい。第2起動電流は、第3トランジスタおよび第4トランジスタに流れる電流の合計であってもよい。
【0024】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のある態様によれば、半導体集積回路の起動時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】基準電流源回路を備える半導体集積回路のブロック図である。
図2図1の半導体集積回路の起動時の動作波形図である。
図3】第1の実施の形態に係る基準電流源回路を備える半導体集積回路のブロック図である。
図4図3の基準電流源回路の起動時の動作波形図である。
図5】第1の実施の形態に係る基準電流源回路のブロック図である。
図6】第1の実施の形態に係る基準電流源回路の回路図である。
図7図7(a)、(b)は、図6の基準電流源回路の起動時の動作波形図である。
図8図6の基準電流源回路の変形例を示す回路図である。
図9】第2の実施の形態に係る基準電流源回路を備える半導体集積回路のブロック図である。
図10図9の基準電流源回路の起動時の動作波形図である。
図11】第2の実施の形態に係る基準電流源回路の回路図である。
図12図11の基準電流源回路の変形例を示す回路図である。
図13図12の基準電流源回路の動作波形図である。
図14】第1変形例に係る基準電流源回路の回路図である。
図15】第2変形例に係る基準電流源回路の回路図である。
図16】第5変形例に係る基準電流源回路の回路図である。
図17図17(a)は、図16の基準電流源回路の動作波形図であり、図17(b)は、ピークカット用のトランジスタを省略した比較技術の動作波形図である。
図18】第6変形例に係る基準電流源回路の回路図である。
図19図18の基準電流源回路の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0028】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0029】
(第1の実施の形態)
図3は、第1の実施の形態に係る基準電流源回路100を備える半導体集積回路200のブロック図である。半導体集積回路200は、基準電流IREFを生成する基準電流源回路100と、基準電流IREFが供給されるアナログ回路202と、を備える。アナログ回路202は、基準電流IREFに比例する、ひとつあるいは複数のバイアス電流によってバイアスされ、その動作点が規定される。アナログ回路202の種類は特に限定されず、オペアンプ、差動アンプ、コンパレータ、電圧レギュレータ、VCO(Voltage Controlled Oscillator)、アナログタイマー回路、スイッチドキャパシタ回路などを含みうる。
【0030】
基準電流源回路100は、定電流回路10および起動回路20を備える。定電流回路10は、基準電流IREFを生成する。起動回路20は基準電流源回路100の起動時に、第1起動電流IS1を定電流回路10に供給するとともに、第2起動電流IS2をアナログ回路202に供給する。
【0031】
好ましくは起動回路20は、第2起動電流IS2を、基準電流IREFと同一経路を介してアナログ回路202に供給してもよい。
【0032】
半導体集積回路200は、シャットダウンモード(スリープモード,省エネモードとも称する)をサポートするシステムに使用可能である。基準電流源回路100は、シャットダウン信号SHTDNがアサートされる間、定電流回路10を停止し、基準電流IREFを停止する。
【0033】
以上が第1の実施の形態に係る基準電流源回路100の基本構成である。続いてその動作を説明する。図4は、図3の基準電流源回路100の起動時の動作波形図である。
【0034】
時刻t0より前、シャットダウン信号SHTDNがアサートされており、基準電流源回路100およびアナログ回路202は停止している。時刻t0にシャットダウン信号SHTDNがネゲートされると、シャットダウン状態が解除され、復帰起動しはじめる。具体的には起動回路20により第1起動電流Iが生成され、その後、時刻t1に定電流回路10が通常の安定動作点へと移行すると、基準電流IREFが設計値に到達する。そして起動完了信号S1にもとづいて起動回路20の電流経路が遮断され、第1起動電流IS1が停止する。
【0035】
定電流回路10の起動が完了する時刻t1より前に、アナログ回路202には時刻t0から第2起動電流IS2が供給される。アナログ回路202内部の回路素子の電圧や電流は、第2起動電流IS2によって通常動作状態におけるそれらに近づいていく。そして、時刻t3に、アナログ回路202の出力は、設計値に安定化される。時刻t1に、第2起動電流IS2も起動完了信号S1にもとづいて停止する。
【0036】
以上が基準電流源回路100の動作である。この基準電流源回路100によれば、起動開始(t0)から、定電流回路10とアナログ回路202の起動を同時に開始することにより、アナログ回路202が起動する時間を大幅に短縮することができる。
【0037】
またアナログ回路202の内部の寄生素子やキャパシタは、図1の半導体集積回路200rにおいては、基準電流IREFおよびそれにもとづくバイアス電流により充電されるが、図3の半導体集積回路200では、第2起動電流IS2によって充電される。そこで第2起動電流IS2を、基準電流IREFの設計値より大きくすることで(IS2>IREF)、キャパシタや寄生容量の充電速度が速まるため、アナログ回路202の起動時間T自体を短縮することができる。
【0038】
なお、IS2≦IREFとした場合、アナログ回路202の起動時間T図1のそれと同程度となり得るが、この場合であってもアナログ回路202は、定電流回路10の起動完了を待たずに起動し始めるため、やはり半導体集積回路200全体の起動時間Tは短縮される。
【0039】
本発明のある態様は、図2のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例を説明する。
【0040】
図5は、第1の実施の形態に係る基準電流源回路100のブロック図である。
基準電流源回路100は、定電流回路10、キャパシタC1、起動回路20および出力回路30を備える。定電流回路10は、電流源12およびカレントミラー回路18を含む。電流源12は、電源ライン102側および接地ライン104側の一方(図2では接地ライン104側)に設けられ、第1電流Iを生成する第1トランジスタ14および第2電流Iを生成する第2トランジスタ16を有する。
【0041】
カレントミラー回路18は、電源ライン102側および接地ライン104側の他方(図2では電源ライン102側)に設けられ、第1電流Iおよび第2電流Iを所定比率(ミラー比K)に安定化する。
【0042】
定電流回路10の基本構成および原理は、たとえばBehzad Razavi著の「Design of Analog CMOS Integrated Circuits」の第11章あるいはP. R. Gray著の「Analysis and Design of Analog Integrated Circuits」の第4.4章に記載されている。当業者によれば、定電流回路10には様々な構成例が存在しうることが理解され、本発明の適用は、定電流回路10に関して特定の回路形式に限定されない。
【0043】
出力回路30は、電流源12あるいはカレントミラー回路18に流れる電流I,Iに比例した基準電流IREFを生成し、図示しないアナログ回路202に供給する。たとえば出力回路30は、電流源12に流れる電流をコピーするように接続される出力トランジスタM0aを含んでもよいし、あるいはカレントミラー回路18に流れる電流をコピーするように接続される出力トランジスタM0bを含んでもよい。出力回路30の構成に関しても、本発明は特に限定されない。
【0044】
キャパシタC1は、位相補償を目的として定電流回路10と接続される。キャパシタC1は、定電流回路10の帰還を安定させることが可能な箇所に接続すればよく、定電流回路10の回路形式に応じて適切に選ぶことができる。また後述するように位相補償用のキャパシタは、複数個、設けてもよい。ゲート容量などの寄生容量が十分に大きな回路では、寄生容量を位相補償キャパシタとして代替利用できるため、回路素子としてのキャパシタC1は省略しうる。
【0045】
起動回路20は、基準電流源回路100の起動時に、キャパシタC1と定電流回路10との接続ノードN1に第1起動電流IS1を供給する。
【0046】
位相補償用のキャパシタC1が、電流IあるいはIのみによって充電される構成では、キャパシタの電圧VC1の充電時間が長くなるため、起動に時間がかかる。図3の基準電流源回路100では、第1起動電流IS1を位相補償用のキャパシタC1と電流源12との接続ノードN1に供給することにより、第1起動電流IS1によってキャパシタC1を直接充電することができ、短時間で定電流回路10を起動することが可能となる。
【0047】
図3において、天地を反転してもよく、すなわち定電流回路10が、電源ライン102側に、カレントミラー回路18が接地ライン104側に設けてもよい。
【0048】
また起動回路20がソースする第2起動電流IS2は、出力トランジスタM0aの電流IREFaに加算される。あるいは起動回路20が第2起動電流IS2’をシンクするようにし、出力トランジスタM0bの電流IREFbに加算してもよい。
【0049】
以下、基準電流源回路100の構成について、さらに詳細な回路図を参照して説明する。
【0050】
図6は、第1の実施の形態に係る基準電流源回路100aの回路図である。電流源12aは、第1トランジスタM1〜第3トランジスタM3および第1抵抗R1を含む。第1トランジスタM1および第2トランジスタM2はNPN型バイポーラトランジスタであり、図2の第1トランジスタ14および第2トランジスタ16に相当する。第1トランジスタM1のコレクタとベースは結線される。第2トランジスタM2のベースは第1トランジスタM1のベースと接続され、そのエミッタは接地ライン104と接続される。
【0051】
第1抵抗R1は、第1トランジスタM1のエミッタと接地ライン104の間に挿入される。第1トランジスタM1、第2トランジスタM2および第1抵抗R1はいわゆる逆ワイドラーカレントミラー(逆ワイドラー電流源)である。
【0052】
なお第1抵抗R1は、第2トランジスタM2のエミッタと接地ライン104の間に挿入されてもよい。この場合、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2および第1抵抗R1はいわゆるワイドラーカレントミラーである。第1トランジスタM1および第2トランジスタM2には、それらのサイズ比および第1抵抗R1の抵抗値に応じた電流I,Iが流れる。
【0053】
第3トランジスタM3はNチャンネルMOSFETであり、そのゲートは、第2トランジスタM2のコレクタと接続され、そのソースは接地ライン104と接続される。第3トランジスタM3には第3電流Iが流れる。
【0054】
カレントミラー回路18aは、第4トランジスタM4〜第6トランジスタM6を含む。第4トランジスタM4〜第6トランジスタM6は、PチャンネルMOSFETであり、それらのソースは電源ライン102と接続され、それらのゲートは共通に接続される。また第6トランジスタM6のゲートとドレインは接続される。
【0055】
カレントミラー回路18aは、第1電流Iおよび第2電流Iそれぞれを第3電流Iに比例した電流に安定化する。トランジスタM4、M5、M6のサイズ比をK:K:Kとすると、第1電流I、第2電流Iはそれぞれ、帰還により、
=I×K/K
=I×K/K
を満たすように安定化され、したがってI:IはK:Kに安定化される。
【0056】
なお第4トランジスタM4〜第6トランジスタM6は、PNP型バイポーラトランジスタで構成してもよい。
【0057】
キャパシタC1は、第3トランジスタM3のゲートと接地ライン104の間に設けられる。つまり図3の基準電流源回路100aにおいては、第3トランジスタM3のゲート(第2トランジスタM2のコレクタ)が、図2の接続ノードN1に相当する。
【0058】
起動回路20aは、主として第7トランジスタM7、2個の第8トランジスタM8a、M8bおよび第2抵抗R2を含む。第7トランジスタM7および第2抵抗R2は、電源ライン102と接地ライン104の間に直列に設けられる。第8トランジスタM8a、M8bは、第7トランジスタM7とともにカレントミラー22を形成するように接続される。第3抵抗R3は、第7トランジスタM7のゲートとドレインの間に設けられる。
【0059】
起動回路20aは、起動時において、第8トランジスタM8aに流れる電流を、第1起動電流IS1としてキャパシタC1に供給する。また第8トランジスタM8bに流れる電流を、第2起動電流IS2としてアナログ回路202に供給する。
【0060】
第7トランジスタM7のゲートソース間しきい値電圧をVGS(TH)とすると、基準電流源回路100aの起動時において第7トランジスタM7および第2抵抗R2を含む経路には、電流IM7が流れる。
M7=(VDD−VGS(TH))/R2
このとき第8トランジスタM8a,M8bには、電流IM7に比例した電流IS1,IS2が流れる。
【0061】
起動回路20aはさらに、第9トランジスタM9および遮断回路24を含む。第9トランジスタM9は、第1電流I、第2電流Iに比例した電流IM9が流れるように、電流源12と接続される。具体的には第9トランジスタM9はNPN型バイポーラトランジスタであり、そのエミッタは接地ライン104と接続され、そのベースは第1トランジスタM1および第2トランジスタM2のベースと接続される。
【0062】
遮断回路24は、第9トランジスタM9に流れる電流IM9が増加すると、第7トランジスタM7をオフする。たとえば遮断回路24は、PチャンネルMOSFETの第10トランジスタM10および第11トランジスタM11を含みうる。第10トランジスタM10は、第9トランジスタM9と電源ライン102の間に設けられ、その制御端子(ゲート)とその一端(ドレイン)が接続される。第11トランジスタM11の制御端子(ゲート)は第10トランジスタM10のゲートと接続され、その一端(ドレイン)が第7トランジスタM7の制御端子(ゲート)と接続され、その他端(ソース)が電源ライン102と接続される。
【0063】
出力回路30aは、出力トランジスタM0aを含む。出力トランジスタM0aは、第1電流I〜第3電流Iに比例する基準電流IREFが流れるように、カレントミラー回路18aと接続される。具体的には出力トランジスタM0aは、カレントミラー回路18aと同型のトランジスタ、つまりPチャンネルMOSFETであり、そのソースが、第4トランジスタM4〜第6トランジスタM6のソースと同様に電源ライン102と接続され、そのゲートが、第4トランジスタM4〜第6トランジスタM6のゲートと接続される。
【0064】
出力回路30aは、NチャンネルMOSFETの出力トランジスタM0bを含んでもよい。出力トランジスタM0bは、第3電流Iに比例した電流IREFが流れるように、第3トランジスタM3とともにカレントミラーを形成するように接続されてもよい。
【0065】
図7(a)、(b)は、図6の基準電流源回路100aの起動時の動作波形図(シミュレーション結果)である。図7(a)は基準電流IREFを、図7(b)は、キャパシタC1の電圧VC1を示す。また図7(a)、(b)それぞれの波形(i) は、図6の基準電流源回路100aの動作を示している。また比較のために、第1起動電流IS1’を、図6に一点鎖線で示す経路で第6トランジスタM6からシンクした場合の波形(ii)を示す。
【0066】
基準電流源回路100aの利点を明確とするために、初めに波形(ii)を参照する。時刻t=10μsに電源が投入される。第1起動電流IS1’が第6トランジスタM6に流れると、それに比例した電流Iが第5トランジスタM5に流れ、キャパシタC1が充電される。電流I2はきわめて微小であるため、キャパシタC1の電圧VC1は遅い速度で緩やかに上昇し、充電時間75μsの経過後に、ゲート電圧VC1がトランジスタM16のゲートソース間しきい値電圧VGS(TH)を超え、0.9V付近の安定点に到達する。そして図7(a)に示すように時刻t=87μsにおいて、基準電流IREFが設計値である450nAに達する。したがって基準電流源回路100rの起動時間は、77μsとなる。
【0067】
続いて波形(i)を参照し、図6の基準電流源回路100aの動作を説明する。時刻t=10μsに電源が投入されると、第7トランジスタM7および抵抗R2を含む経路に電流IM7が流れはじめ、第8トランジスタM8によってコピーされた第1起動電流IS1が直接、キャパシタC1に供給される。その結果、図7(b)に示すように電圧VC1は3.6μsという非常に短い時間で0.9V付近の安定点まで上昇する。そして図7(a)に示すように時刻t=13.9μsにおいて、基準電流IREFが設計値である450nAに達する。したがって基準電流源回路100の起動時間は、3.9μsとなる。
【0068】
基準電流IREFが設計値に到達すると、第9トランジスタM9の電流IM9が大きくなり、第11トランジスタM11の電流IM11が増加する。これにより第2抵抗R2の電圧降下が増大し、第7トランジスタM7のゲート電圧が上昇し、第7トランジスタM7がターンオフし、起動電流Iが停止する。このように図6の基準電流源回路100aの起動時間は非常に短い。
【0069】
図6において、トランジスタM1,M2,M9を、NチャンネルMOSFETで構成してもよい。あるいはトランジスタM4〜M6を、PNP型バイポーラトランジスタで構成してもよい。
【0070】
図8は、図6の基準電流源回路100aの変形例を示す回路図である。図8の基準電流源回路100bは、図6の基準電流源回路100aに加えて、シャットダウン回路40をさらに備える。シャットダウン回路40は、シャットダウン信号SHTDNを受け、シャットダウン信号SHTDNがアサート(ハイレベル)されるシャットダウン状態の間、基準電流源回路100の少なくともひとつの電流経路を遮断する。
【0071】
たとえばシャットダウン回路40は、トランジスタM101〜M106およびインバータ42を含む。インバータ42は、シャットダウン信号SHTDNを反転する。トランジスタM101は、第2トランジスタM2と並列に接続され、ゲートにシャットダウン信号SHTDNが入力され、シャットダウン状態においてオンとなる。トランジスタM102は、第3電流Iの経路上に設けられ、ゲートに反転シャットダウン信号#SHTDNが入力され、シャットダウン状態においてオフとなる。トランジスタM103は、トランジスタM4,M5のゲートソース間に設けられ、ゲートに反転シャットダウン信号#SHTDNが入力され、シャットダウン状態においてオンとなる。トランジスタM104は、第1トランジスタM1のコレクタと接地ライン104の間に設けられ、ゲートにシャットダウン信号SHTDNが入力され、シャットダウン状態においてオンとなる。トランジスタM105は電流IM7およびIM8の経路上に設けられ、ゲートに反転シャットダウン信号#SHTDNが入力され、シャットダウン状態においてオフとなる。トランジスタM106は、トランジスタM10,M11のゲートソース間に設けられ、ゲートに反転シャットダウン信号#SHTDNが入力され、シャットダウン状態においてオンとなる。
【0072】
この変形例によれば、電源電圧VDDの投入後において、シャットダウン信号SHTDNに応じて、基準電流源回路100bの動作、非動作を切り替えることが可能となる。したがって基準電流源回路100bを用いた半導体集積回路のスタンバイ状態(あるいはシャットダウン状態)においては、シャットダウン信号SHTDNをアサートすることで、基準電流源回路100bを停止し、基準電流IREFの供給先の回路を停止し、消費電流を低減できる。
【0073】
そして、シャットダウン信号SHTDNがネゲートされ、シャットダウン状態から通常の動作状態に復帰する際には、起動回路20bによって位相補償用のキャパシタC1を急速に充電することができ、短時間で基準電流源回路100bを動作状態に復帰させることができる。また第2起動電流IS2がアナログ回路202に供給され、アナログ回路202の起動時間も短縮できる。
【0074】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態により解決しようとする課題を説明する。アナログ回路202がオペアンプなどのフィードバックループを有する回路である場合、発振しないように配慮する必要がある。アナログ回路202のループゲインは、バイアス電流すなわち元となる基準電流IREFに応じており、過度に大きなバイアス電流は、アナログ回路202の発振を引き起こしうる。図4を参照すると、アナログ回路202に、基準電流IREFおよび第2起動電流IS2が同時に供給される期間(ハッチングを付す)が存在しており、この期間においてアナログ回路202が発振する虞がある。
【0075】
この問題を解決するひとつのアプローチは、大きなバイアス電流を想定して位相補償を行うことであるが、これは、アナログ回路202の応答性を低下させるため、採用しにくいアプリケーションもある。第2の実施の形態に係る基準電流源回路100はかかる問題を解決する。
【0076】
図9は、第2の実施の形態に係る基準電流源回路100sを備える半導体集積回路200sのブロック図である。この実施の形態において、起動回路20sは、第2起動電流IS2の電流量を時間とともに変化させる。第2起動電流IS2の電流量は、多段階で切り替え可能であってもよいし、連続的に制御可能であってもよい。
【0077】
起動回路20sは、アナログ回路202に供給される電流IREF+IS2が、アナログ回路202の発振を引き起こさないように、たとえば所定のしきい値IMAXを超えないように、電流IS2の電流量を変化させる。すなわち、定電流回路10の起動開始直後の基準電流IREFが小さい期間では、第2起動電流IS2を大きくし、定電流回路10が起動が進み、基準電流IREFが大きな期間では、第2起動電流IS2を減少させる。
【0078】
一例として、起動回路20sは、起動直後、第2起動電流IS2を第1電流量Iとし、その後、第2起動電流IS2を第1電流量Iより小さな第2電流量Iとしてもよい。
【0079】
起動回路20sは、定電流回路10の内部のひとつのノードの電圧(図9の信号V)を参照し、その電圧Vと所定のしきい値電圧VTHとの比較結果にもとづいて、第2起動電流IS2の量を切りかえてもよい。
【0080】
図5に示すように、定電流回路10に位相補償用のキャパシタC1が接続される場合、キャパシタC1が接続されるノードN1の電圧にもとづいて、第2起動電流IS2を制御してもよい。なおひとつのノードは、図5のノードN1には限定されず、定電流回路10が生成する基準電流IREFと相関を有する電圧(V)が発生するノードを選べばよく、言い換えれば定電流回路10の起動の進み具合を示す電圧が生ずるノードを選べばよい。
【0081】
以上が第2の実施の形態に係る基準電流源回路100sの基本構成である。続いてその動作を説明する。図10は、図9の基準電流源回路100sの起動時の動作波形図である。
【0082】
時刻t0より前、シャットダウン信号SHTDNがアサートされており、基準電流源回路100sおよびアナログ回路202は停止している。時刻t0にシャットダウン信号SHTDNがネゲートされると、シャットダウン状態が解除され、復帰起動しはじめる。
【0083】
具体的には起動回路20sにより第1起動電流Iが生成され、定電流回路10に供給される。これと並行して、アナログ回路202には、相対的に大きな電流量Iの第2起動電流IS2が供給される。
【0084】
定電流回路10の内部ノードの電圧Vは、時間とともに上昇する。時刻t1に、電圧Vがしきい値電圧VTHを超えると、第2起動電流IS2が電流量Iに減少する。
【0085】
そして定電流回路10の起動が進むと、時刻t2に基準電流IREFが流れ初め、やがて設計値に到達する。そして起動完了信号S1にもとづいて起動回路20の電流経路が遮断され、第1起動電流IS1および第2起動電流IS2が停止する。
【0086】
以上が基準電流源回路100sの動作である。この基準電流源回路100sによれば、基準電流源回路100からアナログ回路202に供給される電流、すなわち基準電流IREFと第2起動電流IS2が、発振しきい値IMAXに到達するのを抑制することで、アナログ回路202の発振を防止できる。
【0087】
図11は、第2の実施の形態に係る基準電流源回路100tの回路図である。なお説明の簡潔化のため、シャットダウン回路40については符号を省略し、説明を省略する。定電流回路106は、トランジスタM1,M2は、NPN型バイポーラトランジスタであり、その他は図6の定電流回路10aと同様である。
【0088】
起動回路20tは、図6の起動回路20aに加えて、トランジスタM8cおよび電流制御回路28を備える。トランジスタM8cは、トランジスタM7と同型であり、カレントミラーを形成している。電流制御回路28は、トランジスタM8cの経路上に設けられたスイッチSWcと、スイッチSWcの制御回路29を含む。
【0089】
制御回路29は、定電流回路10cのノードN1の電圧Vを監視し、所定のしきい値電圧VTHより低いときスイッチSWcをオンとし、しきい値電圧VTHを超えると、スイッチSWcをオフする。NチャンネルMOSFETであるトランジスタM29は、ゲート電圧VをMOSFETのしきい値電圧VGS(TH)と比較する電圧コンパレータとして使用される。V>VGS(TH)となると、トランジスタM29のドレインはローレベルとなり、インバータINVによってハイレベルの電圧がスイッチ(トランジスタ)SWcのゲートに入力され、スイッチSWcがターンオフする。
【0090】
つまり第2起動電流IS2は、V<VTHのとき、トランジスタM8bとM8cそれぞれに流れる電流の合計であり、V>VTHのとき、トランジスタM8bに流れる電流となる。図11の基準電流源回路100tによれば、図10のように、第2起動電流IS2を二段階で切り替えることができる。
【0091】
図12は、図11の基準電流源回路100tの変形例を示す回路図である。起動回路20uは、図11の起動回路20tに加えて、トランジスタM8dおよびスイッチSWdを備える。電流制御回路28uは、ノードN1の電圧Vにもとづいて、スイッチSWc,SWdを制御する。電流制御回路28uは、図11の制御回路29を2系統備えている。制御回路29c,29dそれぞれのしきい値電圧VTHは、トランジスタM29のサイズに応じて、あるいはトランジスタM30のサイズに応じて異ならせることができる。
【0092】
図13は、図12の基準電流源回路100tの動作波形図である。
起動直後は、スイッチSWc、SWdはいずれもオンであり、したがって第2起動電流IS2は、トランジスタM8b,M8c,M8dの電流の合計に相当する電流量Iである。定電流回路10uの内部ノードの電圧Vは、時間とともに上昇する。時刻t4に、電圧Vが制御回路29cのしきい値電圧VTH1を超えると、スイッチSWcがオフとなり、第2起動電流IS2は電流量Iに減少する。さら電圧Vが上昇し、続く時刻t1に電圧Vが制御回路29dのしきい値電圧VTH2を超えると、スイッチSWdがオフとなり、第2起動電流IS2は電流量Iに減少する。
【0093】
そして定電流回路10の起動が進むと、時刻t2に基準電流IREFが流れ初め、やがて設計値に到達する。そして起動完了信号S1にもとづいて起動回路20の電流経路が遮断され、第1起動電流IS1および第2起動電流IS2が停止する。
【0094】
以上が基準電流源回路100uの動作である。この基準電流源回路100uによれば、第2起動電流IS2を三段階で変化させることができる。当業者によれば、起動回路20uの構成を修正することで、第2起動電流IS2を四段階以上で切りかえ可能であることが理解される。
【0095】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0096】
(第1変形例)
図14は、第1変形例に係る基準電流源回路100cの回路図である。この変形例では、電流源12cが電源ライン102側に配置され、カレントミラー回路18cが接地ライン104側に配置されている。
【0097】
電流源12cは、トランジスタM1,M1,M2,M2および抵抗Raを含むセルフバイアスカスコード型の第1カレントミラー13と、第4抵抗R4を備える。第1カレントミラー13と第4抵抗R4の組み合わせは、ワイドラーカレントミラー(ワイドラー電流源)を、カスコード型に変更した回路と把握できる。トランジスタM1,M1は、図5の第1トランジスタ14に相当し、トランジスタM2,M2は、図5の第2トランジスタ16に相当する。電流源12cは、トランジスタM1,M2のサイズの比および抵抗Raに応じた第1電流Iおよび第2電流Iを生成する。
【0098】
カレントミラー回路18cは、セルフバイアスカスコード型の第2カレントミラー19を含む。第2カレントミラー19は、トランジスタM3,M3,M4,M4および抵抗Rbを含み、第1カレントミラー13と天地対称に構成される。
【0099】
出力回路30cは、出力トランジスタM0,M0、カレントミラー32を含む。出力トランジスタM0,M0は、カレントミラー回路18cと接続され、第1電流I,第2電流Iに比例する電流Iを生成する。カレントミラー32は、電流Iを折り返し、アナログ回路202に基準電流IREFを供給する。
【0100】
定電流回路10cには、位相補償のために4個のキャパシタC11〜C14が接続される。起動回路20cは、キャパシタC11〜C14のうち、出力トランジスタM0のゲートに接続されるキャパシタC11に起動電流IS1を供給する。
【0101】
起動回路20cの基本構成は、図8の起動回路20bと同様であり、主として第7トランジスタM7、第8トランジスタM8、第2抵抗R2、第3抵抗R3を備える。トランジスタM8aに流れる電流は、第1起動電流IS1として、キャパシタC11と定電流回路10cの接続ノードN1に供給される。第9トランジスタM9および遮断回路24については、図8と同様である。
【0102】
図14の起動回路20cは、第12トランジスタM12および第3カレントミラー26をさらに備える。第12トランジスタM12は第7トランジスタM7、第8トランジスタM8とともにカレントミラー22を形成するように接続される。第3カレントミラー26は、第12トランジスタM12の電流IM12を折り返して第3起動電流IS3を生成し、第1カレントミラー13に供給する(シンク)。
【0103】
(第2変形例)
図15は、第2変形例に係る基準電流源回路100dの回路図である。この変形例では、電流源12dが接地ライン104側に配置され、カレントミラー回路18dが電源ライン102側に配置されている。
【0104】
電流源12dは、NチャンネルMOSFETの第1トランジスタM1,第2トランジスタM2および第5抵抗R5を含む。この電流源12dは、永田カレントミラーとして知られる。電流源12dは、第1トランジスタM1と第2トランジスタM2のサイズ比および第5抵抗R5の抵抗値に応じた電流I,Iを生成する。
【0105】
カレントミラー回路18dは第13トランジスタM13および第14トランジスタM14を含む。出力回路30dは、カレントミラー回路18dに接続され、第1電流I、第2電流Iに比例した基準電流IREFを生成する出力トランジスタM0を含む。起動回路20dの構成は、図14の起動回路20cと同様である。
【0106】
位相補償用のキャパシタC21は、第1トランジスタM1のゲートと接続される。起動回路20dは、キャパシタC21に第1起動電流IS1を供給し、第3起動電流IS3を、カレントミラー回路18dに供給する(シンク)。
【0107】
(第3変形例)
図6の基準電流源回路100aにおいて、電流源12aを電源ライン102側に、カレントミラー回路18aを接地ライン104側に配置してもよい。この場合、PチャンネルSMOSFETをNチャンネルMOSFETに、NPN型バイポーラトランジスタをPNP型バイポーラトランジスタに置換すればよい。またあわせて起動回路20aの天地を反転してもよい。
【0108】
図14の基準電流源回路100cにおいて、電流源12cを接地ライン104側に、カレントミラー回路18cを電源ライン102側に配置してもよい。この場合、PチャンネルSMOSFETをNチャンネルMOSFETに、NチャンネルMOSFETをPチャンネルMOSFETに置換すればよい。またあわせて起動回路20cの天地を反転してもよい。
【0109】
図15の基準電流源回路100dにおいて、電流源12dを電源ライン102側に、カレントミラー回路18dを接地ライン104側に配置してもよい。この場合、PチャンネルSMOSFETをNチャンネルMOSFETに、NチャンネルMOSFETをPチャンネルMOSFETに置換すればよい。またあわせて起動回路20dの天地を反転してもよい。
【0110】
(第4変形例)
これまで説明した回路では、第2起動電流IS2を基準電流IREFと同一経路でアナログ回路202に供給することとしたが本発明はそれには限定されない。第2起動電流IS2は、アナログ回路202の内部ノードのうち、起動のボトルネックとなり得るノードに供給されてもよい。たとえばアナログ回路202は、位相補償用の大きなキャパシタを含む場合、このキャパシタを起動開始時刻t0から第2起動電流IS2によって充電しておき、定電流回路10の起動完了後に、基準電流IREFによってアナログ回路202のその他の回路素子のバイアスを開始してもよい。
【0111】
(第5変形例)
図16は、第5変形例に係る基準電流源回路100vの回路図である。図8の基準電流源回路100bでは、図4に示すようにアナログ回路202に供給される電流IREF+IS2にピークが生じ、発振しきい値を超えるおそれがある。図16の基準電流源回路100vでは、電流IREF+IS2のピークを抑制するための変形を説明する。
【0112】
基準電流源回路100vは、図8の基準電流源回路100bと比べて、起動回路20vの構成が異なる。起動回路20vは、図8の起動回路20bに加えて、第1カレントミラー回路34、第2カレントミラー回路36およびピークカット用のトランジスタM15を有する。トランジスタM8bの電流IM8bは、第1カレントミラー回路34によって折り返される。ピークカット用のトランジスタM15は、カレントミラー回路18bと同型、すなわちPチャンネルMOSFETであり、トランジスタM6に対してカレントミラー回路を形成するように接続される。トランジスタM15は、基準電流IREFに比例する電流IM15を生成する。
【0113】
第2カレントミラー回路36の入力は、第1カレントミラー回路34の出力と接続される。また第1カレントミラー回路34の出力には、トランジスタM15が接続される。第2カレントミラー回路36の入力電流Iは、第1カレントミラー回路34の出力電流Iと、トランジスタM15の電流Iの差分となる。
=I−I
は、トランジスタM8bの電流IM8bに比例しており、トランジスタM15の電流Iは、基準電流IREFに比例する。第2カレントミラー回路36は、電流Iをコピーし、第2起動電流IS2を生成する。第2起動電流IS2は、基準電流IREFの設計値と等しい。
【0114】
以上が基準電流源回路100vの構成である。図17(a)は、図16の基準電流源回路100vの動作波形図であり、図17(b)は、トランジスタM15を省略した比較技術の動作波形図である。この比較技術は、図8の基準電流源回路100bと等価である。はじめに図17(b)を参照し、比較技術について説明する。時刻t=10μsに電源が投入され、450nAの第2起動電流IS2がアナログ回路202に供給される。
【0115】
時刻t=53μsあたりから、基準電流IREFが設計値(450nA)に向かって上昇しはじめる。基準電流IREFが設計値付近まで上昇すると、トランジスタM9に電流が流れ、第2起動電流IS2がゼロとなる。基準電流IREFが増加する区間において、アナログ回路202に供給される電流IREF+IS2はピークを持つこととなり、アナログ回路202の動作が不安定となり得る。
【0116】
続いて図17(a)を参照し、図16の基準電流源回路100vの動作を説明する。基準電流IREFが流れ始めると、それに比例した電流IがトランジスタM15に流れる。電流Iが増加すると、第2カレントミラー回路36の入力電流Iが減少し、第2起動電流IS2が減少する。つまり、基準電流IREFの増加にともない、第2起動電流IS2が減少し、それらの合計IREF+IS2が一定に保たれる。
【0117】
図16の基準電流源回路100vによれば、起動から定常状態にわたり、アナログ回路202に供給される電流IREF+IS2を設計値(450nA)に保つことができる。
【0118】
(第6変形例)
図18は、第6変形例に係る基準電流源回路100wの回路図である。基準電流源回路100wは、図15の定電流回路10dと、図16の定電流回路10vの組み合わせと把握することができる。図18において第1カレントミラー回路34はバイポーラトランジスタであってもよい。
【0119】
図19は、図18の基準電流源回路100wの動作波形図である。基準電流IREFと第2起動電流IS2の設計値は、等しく5.2μAである。時刻t=10μsに回路が起動する。起動回路20vの動作は、図16のそれと同様である。図18の基準電流源回路100wによれば、アナログ回路202に供給される電流IREF+IS2のピークを抑制しつつ、アナログ回路202を短時間で起動することができる。
【0120】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0121】
100…基準電流源回路、102…電源ライン、104…接地ライン、200…半導体集積回路、202…アナログ回路、10…定電流回路、12…電流源、13…第1カレントミラー、14…第1トランジスタ、16…第2トランジスタ、18…カレントミラー回路、19…第2カレントミラー、20…起動回路、22…カレントミラー、24…遮断回路、26…第3カレントミラー、28…電流制御回路、30…出力回路、32…カレントミラー、40…シャットダウン回路、C1…キャパシタ、M0…出力トランジスタ、M1…第1トランジスタ、M2…第2トランジスタ、M3…第3トランジスタ、M4…第4トランジスタ、M5…第5トランジスタ、M6…第6トランジスタ、M7…第7トランジスタ、M8…第8トランジスタ、M9…第9トランジスタ、M10…第10トランジスタ、M11…第11トランジスタ、M12…第12トランジスタ、M13…第13トランジスタ、R1…第1抵抗、R2…第2抵抗、R3…第3抵抗、R4…第4抵抗、R5…第5抵抗。
図1
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