特許第6640554号(P6640554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640554
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】高度計、電子時計およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 5/06 20060101AFI20200127BHJP
   G04G 21/00 20100101ALI20200127BHJP
【FI】
   G01C5/06
   G04G21/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-250321(P2015-250321)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-218041(P2016-218041A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-103175(P2015-103175)
(32)【優先日】2015年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一雄
(72)【発明者】
【氏名】高倉 昭
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−289632(JP,A)
【文献】 特開2002−267443(JP,A)
【文献】 特開2003−156329(JP,A)
【文献】 特開平08−285582(JP,A)
【文献】 特開2015−031516(JP,A)
【文献】 特開平08−261755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 5/06
G04G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気の圧力を検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部が検出した検出圧力値から第1の高度を算出する第1の高度算出部と、
前記圧力検出部による最新の検出圧力値に基づく最新の第1の高度から、前記最新の検出圧力値の前に検出された前の検出圧力値に基づく前の第1の高度を減算することにより算出される高度変化量および気圧変化の傾向に基づいて、大気圧の変化に影響されない第2の高度を算出する第2の高度算出部と、
高度を記録する高度記録部と、
前記高度変化量に基づいて移動しているか否かを判定する移動判定部と、
前記高度記録部が前記高度を記録していない場合かつ前記移動判定部が移動していると判定した場合に、前記第2の高度を表示高度とし、前記高度記録部が前記高度を記録していない場合、かつ前記移動判定部が移動していないと判定した場合に、前記表示高度を維持し、前記高度記録部が前記高度を記録している場合、前記第1の高度を前記表示高度とする制御部と、
前記表示高度を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする高度計。
【請求項2】
前記高度記録部による記録の開始及び停止を指示する入力を受け付ける入力部
を備えることを特徴とする請求項1に記載の高度計。
【請求項3】
前記気圧変化の傾向は、複数の気圧変化量の平均値である、
請求項1または2に記載の高度計。
【請求項4】
大気の圧力を検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部が検出した検出圧力値から第1の高度を算出する第1の高度算出部と、
前記圧力検出部による最新の検出圧力値に基づく最新の第1の高度から、前記最新の検出圧力値の前に検出された前の検出圧力値に基づく前の第1の高度を減算することにより算出される高度変化量および気圧変化の傾向に基づいて、大気圧の変化に影響されない第2の高度を算出する第2の高度算出部と、
高度を記録する高度記録部と、
前記高度変化量に基づいて移動しているか否かを判定する移動判定部と、
前記高度記録部が前記高度を記録していない場合かつ前記移動判定部が移動していると判定した場合に、前記第2の高度を表示高度とし、前記高度記録部が前記高度を記録していない場合、かつ前記移動判定部が移動していないと判定した場合に、前記表示高度を維持し、前記高度記録部が前記高度を記録している場合、前記第1の高度を前記表示高度とする制御部と、
時刻を計時する計時部と、
前記表示高度または前記時刻を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする電子時計。
【請求項5】
高度計のコンピュータに、
大気の圧力を検出する圧力検出ステップと、
前記圧力検出ステップが検出した検出圧力値から第1の高度を算出する第1の高度算出ステップと、
前記圧力検出ステップによる最新の検出圧力値に基づく最新の第1の高度から、前記最新の検出圧力値の前に検出された前の検出圧力値に基づく前の第1の高度を減算することにより算出される高度変化量および気圧変化の傾向に基づいて、大気圧の変化に影響されない第2の高度を算出する第2の高度算出部ステップと、
前記高度変化量に基づいて移動しているか否かを判定する移動判定部ステップと、
高度を記録する高度記録部が前記高度を記録していない場合かつ前記移動判定ステップにおいて移動していると判定した場合に、前記第2の高度算出ステップが算出した前記第2の高度を表示高度とし、前記高度記録部が前記高度を記録していない場合、かつ前記移動判定部が移動していないと判定した場合に、前記表示高度を維持し、前記高度記録部が前記高度を記録している場合に、前記第1の高度算出ステップが算出した前記第1の高度を前記表示高度とする制御ステップと、
前記表示高度を表示する表示ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度計、電子時計およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
気圧センサの検出値を用いて高度値を算出する技術が知られている。例えば、特許文献1には、気圧センサの検出値を用いて取得した高度の変化量を、所定の閾値と比較して移動か静止かを判定し、判定結果が移動であった場合にのみ検出した変化量に基づいて高度値を更新する技術が記載されている。これにより大気圧の変動による高度への影響をキャンセルすることができる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、勾配が緩やかな坂道の移動中は静止と判定してしまい正しい高度を表示できない場合がある。また、高度計の携帯者が静止している場合でも、低気圧や台風等の通過時は高度の変化量が閾値を超えて誤検出し高度が正しく表示できない場合がある。
【0004】
そこで、特許文献2には、移動判定を用いた高度値と大気圧から計算した基準高度との差異が、所定の閾値以上の場合は異常と判定して基準高度を表示高度にする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3854047号公報
【特許文献2】特許第3810669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、閾値を小さくすると、正常な高度を表示している場合でも基準高度に切り替わってしまい、正しい高度を表示できない場合が考えられる。逆に閾値を大きくすると、異常と判定するまでの期間が長く、異常な高度を表示し続けてしまう。このように、従来知られている技術では、勾配が緩やかな坂道の移動中や、低気圧や台風等の通過時には、正しい高度を算出することができない場合が考えられる。
【0007】
そこで、本発明は上述の事情を鑑みてなされたものであり、高度を精度良く算出することができる高度計、電子時計およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、大気の圧力を検出する圧力検出部と、前記圧力検出部が検出した検出圧力値から第1の高度を算出する第1の高度算出部と、
前記圧力検出部による最新の検出圧力値に基づく最新の第1の高度から、前記最新の検出圧力値の前に検出された前の検出圧力値に基づく前の第1の高度を減算することにより算出される高度変化量および気圧変化の傾向に基づいて、大気圧の変化に影響されない第2の高度を算出する第2の高度算出部と、高度を記録する高度記録部と、前記高度変化量に基づいて移動しているか否かを判定する移動判定部と、前記高度記録部が前記高度を記録していない場合かつ前記移動判定部が移動していると判定した場合に、前記第2の高度を表示高度とし、前記高度記録部が前記高度を記録していない場合、かつ前記移動判定部が移動していないと判定した場合に、前記表示高度を維持し、前記高度記録部が前記高度を記録している場合、前記第1の高度を前記表示高度とする制御部と、前記表示高度を表示する表示部と、を備えることを特徴とする高度計である。
【0011】
また、本発明の他の態様の高度計において、前記高度記録部による記録の開始及び停止を指示する入力を受け付ける入力部を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の態様は、大気の圧力を検出する圧力検出部と、前記圧力検出部が検出した検出圧力値から第1の高度を算出する第1の高度算出部と、前記圧力検出部による最新の検出圧力値に基づく最新の第1の高度から、前記最新の検出圧力値の前に検出された前の検出圧力値に基づく前の第1の高度を減算することにより算出される高度変化量および気圧変化の傾向に基づいて、大気圧の変化に影響されない第2の高度を算出する第2の高度算出部と、高度を記録する高度記録部と、前記高度変化量に基づいて移動しているか否かを判定する移動判定部と、前記高度記録部が前記高度を記録していない場合かつ前記移動判定部が移動していると判定した場合に、前記第2の高度を表示高度とし、前記高度記録部が前記高度を記録していない場合、かつ前記移動判定部が移動していないと判定した場合に、前記表示高度を維持し、前記高度記録部が前記高度を記録している場合、前記第1の高度を前記表示高度とする制御部と、時刻を計時する計時部と、前記表示高度または前記時刻を表示する表示部と、を備えることを特徴とする電子時計である。
【0013】
また、本発明の他の態様は、高度計のコンピュータに、大気の圧力を検出する圧力検出ステップと、前記圧力検出ステップが検出した検出圧力値から第1の高度を算出する第1の高度算出ステップと、前記圧力検出ステップによる最新の検出圧力値に基づく最新の第1の高度から、前記最新の検出圧力値の前に検出された前の検出圧力値に基づく前の第1の高度を減算することにより算出される高度変化量および気圧変化の傾向に基づいて、大気圧の変化に影響されない第2の高度を算出する第2の高度算出部ステップと、前記高度変化量に基づいて移動しているか否かを判定する移動判定部ステップと、高度を記録する高度記録部が前記高度を記録していない場合かつ前記移動判定ステップにおいて移動していると判定した場合に、前記第2の高度算出ステップが算出した前記第2の高度を表示高度とし、前記高度記録部が前記高度を記録していない場合、かつ前記移動判定部が移動していないと判定した場合に、前記表示高度を維持し、前記高度記録部が前記高度を記録している場合に、前記第1の高度算出ステップが算出した前記第1の高度を前記表示高度とする制御ステップと、前記表示高度を表示する表示ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば登山中など、高度を記録しているときには、勾配が緩やかな坂道を移動中である場合であっても、第1の高度の差異を高度の増減とみなすため、その高度差を反映した正しい高度を算出することができる。また、例えば、登山をしていない日常生活時など、高度を記録していないときには、第1の高度の差異を高度の増減とみなさないため、大気圧の変化による高度への影響をキャンセルすることができる。よって、高度を精度良く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における電子時計の構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態による高度計測部が計測する第1の高度と大気圧との関係を示すグラフである。
図3】本実施形態における電子時計が実行する高度表示処理の処理手順を示したフローチャートである。
図4】本実施形態における電子時計が表示する高度と時間との関係の一例を示したグラフである。
図5】本実施形態における電子時計が実行する高度表示処理の処理手順を示したフローチャートの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、電子機器の一例として、電子時計の例を用いて説明する。電子時計100は、高度計測機能付き電子時計である。図1は、本実施形態における電子時計100の構成を示すブロック図である。図示する例では、電子時計100は、CPU(Central Processing Unit)101(第2の高度算出部、高度記録部、制御部)と、発振回路102と、分周回路103と、キー入力手段104(入力部)と、表示部105と、電池106と、気圧計測部107(圧力検出部)と、高度計測部108(第1の高度算出部)と、RAM(Random Access Memory、ランダムアクセスメモリ)110(記憶部)と、ROM(Read Only Memory、読み出し専用メモリ)111とを備える。
【0017】
CPU101は、電子時計100が備える各部の制御を行う。また、CPU101は、気圧計測部107による最新の検出圧力値とその前の検出圧力値の夫々から高度計測部108が算出した第1の高度の差異を高度の増減とみなして第2の高度を算出する。また、CPU101は、高度をRAM110に記録する。CPU101は、高度を記録しているときには、算出した第1の高度を高度とする。また、CPU101は、気圧計測部107による最新の検出圧力値とその前の検出圧力値の夫々から高度計測部108が算出した第1の高度の差異に基づいて、移動しているか否かを判定する。そして、CPU101は、高度を記録していないときは、移動していると判定した場合にのみ第2の高度を高度とする。また、CPU101は、高度を記録していないときは、静止していると判定した場合には、現在表示部105に表示している表示高度を高度とする。
【0018】
また、CPU101は、分周回路103から入力された計測信号に基づいて現在時刻を計時する。CPU101は、高度と、計時する現在時刻とを表示部105に表示する。
【0019】
発振回路102は、所定周波数(例えば、32768Hz)の発振信号を生成して分周回路103に出力する。分周回路103は、発振回路102から入力された発振信号の周波数を分周して計測の基準となる計測信号を生成し、生成した計測信号をCPU101に出力する。キー入力手段104は、操作入力を受け付ける。例えば、キー入力手段104は、高度の記録の開始及び停止を指示する入力を受け付ける。表示部105は、液晶ディスプレイまたはセグメントディスプレイ等であり、情報を表示する。例えば、表示部105は、高度と、現在時刻とを表示する。電池106は、電子時計100が備える各部に、動作するための電力を供給する。
【0020】
気圧計測部107は、例えば気圧センサであり、大気圧(大気の圧力)を計測し、計測した大気圧を高度計測部108に出力する。高度計測部108は、気圧計測部107から入力された大気圧に基づいて第1の高度を計測(算出)し、計測した第1の高度をCPU101に出力する。気圧計測部107と高度計測部108とが、高度を計測する高度計を構成する。
【0021】
RAM110は、電子時計100の各部が用いるデータを記憶する。例えば、RAM110は、CPU101が記録する高度を記憶する。ROM111は、CPU101が実行する動作用プログラムを予め記憶している。この動作用プログラムは、CPU101の起動時に読み出される。
【0022】
次に、本実施形態における電子時計100が、高度を表示する高度表示処理について説明する。まず、高度計測部108が計測する第1の高度について説明する。図2は、本実施形態による高度計測部108が計測する第1の高度と大気圧との関係を示すグラフである。本図に示す横軸は気圧計測部107が計測する大気圧(単位はhPa)であり、縦軸は高度計測部108が計測する第1の高度(単位はm)である。
【0023】
高度計測部108は、ICAO(International Civil Aviation Organization:国際民間航空機構)にて規定されている国際標準大気に従い、気圧計測部107が計測する大気圧から第1の高度(ICAO高度)を算出する。本図に示すグラフでは、例えば高度10000mに対応する大気圧は264.36hPaである。また、例えば、高度5000mに対応する大気圧は540.20hPaである。また、例えば、高度0mに対応する大気圧は1013.25hPaである。
【0024】
CPU101は、高度を記録しているか否かに基づいて表示部105に表示する(RAM110に記録する)表示高度を決定する。ここで、高度を記録しているときは、使用者が登山中であることを想定し、高度を記録していないときは、使用者が登山をしていないことを想定している。CPU101は、キー入力手段104が高度の記録を開始する指示入力を受け付けると、高度の記録を開始する。また、CPU101は、キー入力手段104が高度の記録を停止する指示入力を受け付けると、高度の記録を停止する。
【0025】
CPU101は、高度を記録しているときには、高度計測部108が計測する最新の第1の高度を表示高度とする。すなわち、CPU101は、使用者が登山中には、高度変化量に基づいて表示高度を算出する。
【0026】
また、CPU101は、高度を記録していないときには、移動中であるか否かに基づいて、表示高度を決定する。電子時計100は、自装置の移動状態を示す静止モードと移動モードとの2つのモードを有する。CPU101は、自装置が静止状態であるか移動状態であるかを判定し、静止状態であると判定した場合に静止モードにモード設定し、移動状態であると判定した場合に移動モードにモード設定する。
【0027】
ここで、CPU101は、予め設定された静止閾値及び移動閾値と高度変化量とを比較することにより、静止状態であるか移動状態であるかを判定する。なお、移動閾値は静止閾値より大きな値である。例えば、CPU101は、高度変化量が静止閾値以下である場合には静止状態と判定し、高度変化量が移動閾値以上である場合には移動状態と判定する。また、CPU101は、高度変化量が静止閾値と移動閾値との中間範囲にある場合には、現在設定されているモードを維持する。
【0028】
CPU101は、高度を記録していないときには、現在のモードが移動モードである場合にのみ、第2の高度を表示高度とする。また、CPU101は、高度を記録していないときには、現在のモードが静止モードである場合には、現在の表示高度を維持する。すなわち、CPU101は、使用者が登山していないときは、静止状態である場合には、高度の変化がないとして現在の表示高度を維持する。よって、CPU101は、使用者が登山していないときは、移動状態である場合にのみ、高度変化量に基づいて表示高度を算出する。
【0029】
図3は、本実施形態における電子時計100が実行する高度表示処理の処理手順を示したフローチャートである。この高度表示処理は、現在の表示高度を維持または更新するための処理であり、所定時間毎(例えば5分毎)に、あるいは、任意のタイミングでキー入力手段104を介して更新指示が入力された時に所定回数(一般には1回)行われる。
【0030】
(ステップS1)CPU101は、気圧計測部107に大気圧を計測させる。気圧計測部107は、大気圧を計測し、計測した大気圧を高度計測部108に出力する。その後、ステップS2の処理に進む。
(ステップS2)CPU101は、高度計測部108が前回算出した第1の高度ALTINEWを変数ALTIOLDに代入する。その後、ステップS3の処理に進む。
【0031】
(ステップS3)高度計測部108は、気圧計測部107が計測した大気圧に基づいて、第1の高度を算出し、算出した第1の高度をCPU101に出力する。CPU101は、高度計測部108から入力された最新の第1の高度を変数ALTINEWに代入する。その後、ステップS4の処理に進む。
(ステップS4)CPU101は、最新の第1の高度ALTINEWから前回算出した第1の高度ALTIOLDを減算することにより高度変化量DIFを算出する。その後、ステップS5の処理に進む。
【0032】
(ステップS5)CPU101は、高度をRAM110に記録している(REC=ON)か否かを判定する。高度を記録してないとCPU101が判定した場合にはステップS6の処理に進む。また、高度を記録しているとCPU101が判定した場合にはステップS12の処理に進む。
【0033】
(ステップS6)CPU101は、算出した高度変化量DIFの絶対値が静止閾値以下であるか否かを判定する。高度変化量が静止閾値以下であるとCPU101が判定した場合にはステップS7の処理に進む。また、高度変化量が静止閾値より大きいとCPU101が判定した場合にはステップS9の処理に進む。
【0034】
(ステップS7)CPU101は、自装置が静止状態であると判定し、静止モードをモード設定する。その後、ステップS8の処理に進む。
(ステップS8)CPU101は、ステップS1において気圧計測部107が計測した大気圧から前回気圧計測部107が計測した大気圧を減算した気圧変化量を算出し、算出した気圧変化量をRAM110に書き込んで記憶する。例えば、RAM110にはTR1〜TR12までの12個分のメモリ領域が確保されている。CPU101は、1回目に算出した気圧変化量をTR1に書き込み、12回目に算出した気圧変化量をTR12書き込み、13回目に算出した気圧変化量をTR1に上書きする。ただし、このようなメモリシフトによる気圧変化量の保持は一例であり、少なくとも所定回数分の気圧変化量を保持し得る任意の方法を採用することができる。その後、CPU101は、静止モードであるため実際の高度変化がないと判定し、表示高度を更新することなく処理を終了する。
【0035】
(ステップS9)CPU101は、算出した高度変化量DIFの絶対値が移動閾値以上であるか否かを判定する。高度変化量が移動閾値以上であるとCPU101が判定した場合にはステップS10の処理に進む。また、高度変化量が移動閾値より小さいとCPU101が判定した場合にはステップS11の処理に進む。
【0036】
(ステップS10)CPU101は、自装置が移動状態であると判定し、移動モードをモード設定する。その後、ステップS12の処理に進む。
【0037】
(ステップS11)CPU101は、前回の高度表示処理で設定されているモード(現在設定されているモード)が静止モードであるか移動モードであるかを判定する。静止モードであるとCPU101が判定した場合にはステップS8の処理に進む。また、移動モードであるとCPU101が判定した場合にはステップS12の処理に進む。
【0038】
(ステップS12)CPU101は、現在の表示高度に対して高度変化量DIFを加算することにより表示高度を算出する。その後、ステップS13の処理に進む。
(ステップS13)CPU101は、RAM110が保持する気圧変化量の平均値であるトレンド気圧変化量を算出し、算出した表示高度からトレンド気圧変化量を減算することにより表示高度を補正する。例えば、CPU101は、TR1〜TR12の気圧変化量を全て加算し、この加算結果を気圧変化量の全個数=12で除算することによって、トレンド気圧変化量を算出する。このような処理によれば、静止モードにおける気圧変化の傾向を考慮して、表示高度を補正することができるので、一層高精度の高度計測を行うことができる。そして、CPU101は、補正した表示高度を表示部105に表示する。その後、処理を終了する。
従って、高度を記録している(REC=ON)場合、ステップS12で前回の表示高度ALTIOLDに、ステップS4で算出した高度変化量DIF=ALTINEW―ALTIOLDを加算するため、表示高度は最新の第1の高度ALTINEWが表示される。
【0039】
図4は、本実施形態における電子時計100が表示する高度と時間との関係の一例を示したグラフである。本図に示す横軸は時間であり、縦軸は高度または大気圧である。また、本図に示す線aは登山の出発点の大気圧を示し、線bは登山の出発点のICAO高度(第1の高度)を示し、線cは電子時計100が表示する表示高度を示し、線dは実際の高度を示し、線eは従来技術により計測した高度を示す。
【0040】
本図に示す例では、時刻8:00に高度の記録を開始(REC On)し、時刻16:00に高度の記録を停止(REC Off)している。すなわち、電子時計100の使用者は、時刻8:00に出発点から登山を開始し、時刻16:00に登山を終了している。時刻8:00から時刻16:00までは登山中である。なお、電子時計100は、時刻8:00までの間は高度を記録していない(REC Off)。
【0041】
例えば、時刻20:00では、出発点の大気圧は943hPaであり、出発点のICAO高度は602mであり、電子時計100の表示高度は602mであり、実際の高度は602mであり、従来技術における高度は602mである。また、時刻8:00では、出発点の大気圧は949hPaであり、出発点のICAO高度は549mであり、電子時計100の表示高度は602mであり、実際の高度は602mであり、従来技術における高度は602mである。また、時刻12:00では、出発点の大気圧は951hPaであり、出発点のICAO高度は532mであり、電子時計100の表示高度は624mであり、実際の高度は642mであり、従来技術における高度は602mである。また、時刻15:00では、出発点の大気圧は950hPaであり、出発点のICAO高度は545mであり、電子時計100の表示高度は668mであり、実際の高度は672mであり、従来技術における高度は602mである。また、時刻16:00では、出発点の大気圧は949hPaであり、出発点のICAO高度は549mであり、電子時計100の表示高度は972mであり、実際の高度は972mであり、従来技術における高度は932mである。また、時刻20:00では、出発点の大気圧は947hPaであり、出発点のICAO高度は567mであり、電子時計100の表示高度は972mであり、実際の高度は972mであり、従来技術における高度は932mである。
【0042】
使用者は、時刻8:00から時刻15:00までは勾配が緩やかな坂道の移動している。図示するように、従来技術では、時刻8:00から時刻15:00までを静止中と判定しているため、高度の変化がない。これに対し、本発明による電子時計100では、登山中(高度の記録中)には高度変化量を高度の増減とみなしているため、勾配の緩やかな坂道における高度の変化を反映することができる。よって、電子時計100では、表示高度が実際の高度に近い値になる。
【0043】
また、使用者は、時刻20:00から時刻8:00までは出発点に滞在している。図示するように、出発点のICAO高度は、大気圧の変化に応じて変化する。一方、本発明による電子時計100は、登山していない(高度を記録していない)ときには、高度変化量が静止閾値より小さい場合には、静止中と判定して表示高度を更新しない。これにより、電子時計100は、大気圧の変化をキャンセルして、高度が異常な値になることを防ぐことができる。よって、電子時計100はより精度良く高度を計測することができる。
【0044】
上述したとおり、本実施形態では、電子時計100は、大気の圧力を検出する気圧計測部107と、気圧計測部107が検出した検出圧力値から第1の高度を算出する高度計測部108と、高度を記録していないときには、気圧計測部107による最新の検出圧力値とその前の検出圧力値の夫々から高度計測部108が算出した第1の高度の差異を高度の増減とみなして算出した第2の高度を高度とし、高度を記録しているときには、高度計測部108が算出した第1の高度を高度とするCPU101と、高度を表示する表示部105と、を備える。
【0045】
これにより、電子時計100は、高度を記録しているとき、例えば登山時において、第1の高度の差異を高度の増減とみなして高度を算出するため、登山中における勾配が緩やかな坂道の高度差も反映した正しい高度を表示することができる。
【0046】
また、電子時計100のCPU101は、気圧計測部107による最新の検出圧力値とその前の検出圧力値の夫々から高度計測部108が算出した第1の高度の差異に基づいて移動しているか否かを判定する。そして、CPU101は、高度を記録していないときは、移動していると判定した場合にのみ第2の高度を高度とする。
【0047】
これにより、電子時計100は、高度を記録していないとき、例えば登山をしていない日常生活時において、静止している場合には、表示高度を更新しない(維持する)ため、大気圧の変化による高度への影響をキャンセルすることができる。
【0048】
このように、電子時計100は、高度を記録しているか否か、すなわち使用者が登山をしているか否かに基づいて表示高度を切り替えているため、精度の良い高度を表示することができる。
【0049】
なお、図3で示した上述のフローチャートは、図5に示す変形例でも実現することができる。この高度表示処理は、現在の表示高度を維持または更新するための処理であり、所定時間毎(例えば10分毎)に行われる。図3におけるステップS2、S4、S6、S9が、図5においてはステップS301、S401、S601〜S603、S901〜S902に置き換えられている以外は、図3の処理は図5と同様である。
【0050】
(ステップS1)CPU101は、気圧計測部107に大気圧を計測させる。気圧計測部107は、大気圧を計測し、計測した大気圧を高度計測部108に出力する。その後、ステップS2の処理に進む。
(ステップS201)CPU101は、過去に算出した高度ALTIOLD(i)をi=Nの古い順から代入する。例えば、ALTIOLD(N−1)をALTIOLD(N)に代入し、ALTIOLD(i―1)をALTIOLD(i)に代入する。最後に、高度計測部108が前回算出した第1の高度ALTINEWを変数ALTIOLD(1)に代入する。ここで、iは2〜N(Nは自然数)である。その後、ステップS3の処理に進む。
(ステップS3)高度計測部108は、気圧計測部107が計測した大気圧に基づいて、第1の高度を算出し、算出した第1の高度をCPU101に出力する。CPU101は、高度計測部108から入力された最新の第1の高度を変数ALTINEWに代入する。その後、ステップS401の処理に進む。
【0051】
(ステップS401)CPU101は、最新の第1の高度ALTINEWから前回算出した第1の高度ALTIOLD(1)を減算することにより高度変化量DIF1を算出する。また、CPU101は、最新の第1の高度ALTINEWから過去の時点の第1の高度ALTIOLD(N)を減算することにより高度変化量DIF2を算出する。例えばN=6の60分前の第1の高度との変化量を算出する。その後、ステップS5の処理に進む。
(ステップS5)CPU101は、高度をRAM110に記録している(REC=ON)か否かを判定する。高度を記録してないとCPU101が判定した場合にはステップS601の処理に進む。また、高度を記録しているとCPU101が判定した場合にはステップS12の処理に進む。
【0052】
(ステップS601)CPU101は、算出した高度変化量DIF1の絶対値が静止閾値以下であるか否かを判定する。高度変化量が静止閾値以下であるとCPU101が判定した場合にはステップS602の処理に進む。また、高度変化量が静止閾値より大きいとCPU101が判定した場合にはステップS901の処理に進む。
(ステップS602)CPU101は、静止カウンタをインクリメントすることで、ステップS601で静止状態と判定された回数をカウントする。次にステップS603に進む。
(ステップS603)CPU101は、静止カウンタが2であるか否かを判定する。カウンタが2である場合にはステップS7の処理に進む。また、静止カウンタが2以外の場合はステップS901の処理に進む。これにより、ステップ601の静止状態が2回連続して判定される場合に移動モードが終了しステップS7の静止モードがセットされる。
(ステップS7)CPU101は、自装置が静止状態であると判定し、静止モードをモード設定する。その後、ステップS8の処理に進む。
【0053】
(ステップS8)CPU101は、ステップS1において気圧計測部107が計測した大気圧から前回気圧計測部107が計測した大気圧を減算した気圧変化量を算出し、算出した気圧変化量をRAM110に書き込んで記憶する。例えば、RAM110にはTR1〜TR12までの12個分のメモリ領域が確保されている。CPU101は、1回目に算出した気圧変化量をTR1に書き込み、12回目に算出した気圧変化量をTR12書き込み、13回目に算出した気圧変化量をTR1に上書きする。ただし、このようなメモリシフトによる気圧変化量の保持は一例であり、少なくとも所定回数分の気圧変化量を保持し得る任意の方法を採用することができる。その後、CPU101は、静止モードであるため実際の高度変化がないと判定し、表示高度を更新することなく処理を終了する。
【0054】
(ステップS901)CPU101は、算出した高度変化量DIF1の絶対値が移動閾値1以上であるか否かを判定する。高度変化量が移動閾値1以上であるとCPU101が判定した場合にはステップS10の処理に進む。また、高度変化量が移動閾値1より小さいとCPU101が判定した場合にはステップS902の処理に進む。
(ステップS902)CPU101は、算出した高度変化量DIF2の絶対値が移動閾値2以上であるか否かを判定する。高度変化量が移動閾値2以上であるとCPU101が判定した場合にはステップS10の処理に進む。また、高度変化量が移動閾値2より小さいとCPU101が判定した場合にはステップS11の処理に進む。ここで、移動閾値2はステップS901の移動閾値1より小さい値に設定されている。
【0055】
(ステップS10)CPU101は、自装置が移動状態であると判定し、移動モードをモード設定する。その後、ステップS110の処理に進む。
(ステップS110)CPU101は、静止カウンタをリセットし、値を0とする。その後、ステップS120の処理に進む。
(ステップS11)CPU101は、前回の高度表示処理で設定されているモード(現在設定されているモード)が静止モードであるか移動モードであるかを判定する。静止モードであるとCPU101が判定した場合にはステップS8の処理に進む。また、移動モードであるとCPU101が判定した場合にはステップS120の処理に進む。
(ステップS120)CPU101は、現在の表示高度に対して高度変化量DIF1を加算することにより表示高度を算出する。その後、ステップS13の処理に進む。
(ステップS13)CPU101は、RAM110が保持する気圧変化量の平均値であるトレンド気圧変化量を算出し、算出した表示高度からトレンド気圧変化量を減算することにより表示高度を補正する。例えば、CPU101は、TR1〜TR12の気圧変化量を全て加算し、この加算結果を気圧変化量の全個数=12で除算することによって、トレンド気圧変化量を算出する。このような処理によれば、静止モードにおける気圧変化の傾向を考慮して、表示高度を補正することができるので、一層高精度の高度計測を行うことができる。そして、CPU101は、補正した表示高度を表示部105に表示する。その後、処理を終了する。
【0056】
従って、高度を記録している(REC=ON)場合、ステップS12で前回の表示高度ALTIOLDに、ステップS4で算出した高度変化量DIF1=ALTINEW―ALTIOLD(1)を加算するため、表示高度は最新の第1の高度ALTINEWが表示される。
【0057】
以上の高度表示処理により、低消費目的のため、高度計測のサンプリング間隔を長く(例えば、5分から10分に長く)設定したとしても、同等の高度判定精度を確保することができる。すなわち、例えば、サンプリング間隔を2倍(10分)とし移動閾値も2倍(5mではなく10mに設定)とすると、移動状態を誤判定する(移動と判定され難くなる)おそれが生じる。しかし、本変形例では、2つ目の移動閾値2を追加することにより、例えば、60分(N=6)の時点のサンプリング結果との比較処理(ステップS902)も可能となるので、移動判定(ステップS10)を誤判定する可能性が低くなる。
このように、電子時計100は、大気圧の変化をキャンセルして、高度が異常な値になることを防ぎつつも、移動判定の能力を確保しつつ、気圧計測周期(サンプリング間隔)を長くできることで、低消費化を実現することができる。
【0058】
なお、上述した実施形態における電子時計100が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0059】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0061】
例えば、上述した実施形態では、電子機器として電子時計100を例に説明したが、これに限らず、電子機器は、高度計や、高度計測機能を備えたスマートフォン等、他の機器であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
100・・・電子時計、101・・・CPU、102・・・発振回路、103・・・分周回路、104・・・キー入力手段、105・・・表示部、106・・・電池、107・・・気圧計測部、108・・・高度計測部、110・・・RAM、111・・・ROM
図1
図2
図3
図4
図5