特許第6640624号(P6640624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640624
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20200127BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20200127BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   C08F290/06
   C08F299/06
   C08G18/67 080
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-58852(P2016-58852)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-171771(P2017-171771A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】大西 敏之
(72)【発明者】
【氏名】門脇 利治
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2008/108358(JP,A1)
【文献】 特開2010−083959(JP,A)
【文献】 特開2013−132785(JP,A)
【文献】 特開2009−197053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00
C08F 299/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無水酢酸/ピリジン(15g/85g)に溶解させ、90℃で1.5時間反応させ、少量の水を加えてさらに10分間反応させた後に室温まで冷却し、指示薬としてフェノールフタレインを加え、1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し求めた水酸基価が190mgKOH/g以上220mgKOH/g以下である、3価以上の脂肪族多価アルコール化合物の(メタ)アクリル酸付加物と、
(B)(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートと、
(C)有機イソシアネート化合物との反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
(A)水酸基価が190mgKOH/g以上220mgKOH/g以下である、3価以上の脂肪族多価アルコール化合物の(メタ)アクリル酸付加物の3価以上の脂肪族多価アルコール化合物が、3価以上6価以下の脂肪族多価アルコールであることを特徴とする、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
(A)水酸基価が190mgKOH/g以上220mgKOH/g以下である、3価以上の脂肪族多価アルコール化合物の(メタ)アクリル酸付加物の3価以上の脂肪族多価アルコール化合物がペンタエリスリトールであることを特徴とする、請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
(C)有機イソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びノルボルネンジイソシアネートからなる群より選択された1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
(D)1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートをさらに含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項6】
前記(A)成分と(B)成分との割合((A)/(B))が、質量比で、95/5〜50/50であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項7】
水酸基価から計算される(A)成分と(B)成分の水酸基の合計のモル数(a+b)と(C)成分のイソシアネート基のモル数(c)とのモル比((a+b)/c)が、0.5以上、1未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬度、擦傷性、成形性に優れた硬化膜が得られる、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属、プラスチック、及び木材などの種々の基材に対しては、基材表面を保護する目的で、塗料組成物を使用した保護膜を形成する方法が用いられている。特にプラスチック基材は、軽量であり、耐衝撃性及び成形性に優れているが、表面硬度が低く、傷付きやすいため、そのまま使用すると、経時的に外観が損なわれるという問題が生じる。このため、プラスチック表面は、表面硬度を向上することが求められている。
【0003】
この課題を解決する方法として、プラスチック表面を塗料組成物で塗装する方法(ハードコート処理)が用いられており、塗料組成物としては、シリコン系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物等の熱硬化型樹脂組成物が用いられてきたが、硬化に要する時間が長く、熱に弱いプラスチックフィルム基材には適用できないという問題があった。
【0004】
近年、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、速硬化性を有し、低エネルギーや、低温でも硬化が可能であることから、プラスチックフィルム基材のハードコート処理剤として使用されている。
【0005】
このような活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として、分子中に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有する放射線硬化型多官能(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとを反応させた多官能ウレタンアクリレートを含有する放射線型硬化型樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、水酸基価が140mgKOH/g以上である(メタ)アクリル酸付加物と多価イソシアネート化合物及びエチレン性不飽和基を有する化合物の活性エネルギー線硬化型組成物も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−113648号公報
【特許文献2】特開2015−021089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1において、放射線硬化型樹脂組成物の具体例として記載されているペンタエリスリトールトリアクリレートとイソホロンジイソシアネートとを付加させた多官能ウレタンアクリレート(段落[0026])は、硬化収縮が大きいため、求める擦傷性を得る膜厚では硬化後のカールが大きすぎてフィルムが反るという成形性の問題がある。
【0009】
また、特許文献2において、活性エネルギー線硬化型組成物の具体例として記載されている水酸基価173mgKOH/gのペンタエリスリトールのアクリル酸エステルとイソホロンジイソシアネートとを付加させたウレタンアクリレート(段落[0091])とポリプロピレングリコールジアクリレート(段落[0052])との混合物は、耐擦傷性が不足するといった問題がある。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、硬度、擦傷性、成形性のバランスに優れた硬化膜が得られる、活性エネルギー線硬化型組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型組成物は、(A)無水酢酸/ピリジン(15g/85g)に溶解させ、90℃で1.5時間反応させ、少量の水を加えてさらに10分間反応させた後に室温まで冷却し、指示薬としてフェノールフタレインを加え、1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し求めた水酸基価が190mgKOH/g以上220mgKOH/g以下である、3価以上の脂肪族多価アルコール化合物の(メタ)アクリル酸付加物と、(B)(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートと、(C)有機イソシアネート化合物との反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートを含有するものである。
【0012】
上記(A)水酸基価が190mgKOH/g以上220mgKOH/g以下である、3価以上の脂肪族多価アルコール化合物の(メタ)アクリル酸付加物の3価以上の脂肪族多価アルコール化合物は、3価以上6価以下の脂肪族多価アルコールであるものとすることができ、より好ましくは、ペンタエリスリトールとすることができる。
【0013】
(C)有機イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びノルボルネンジイソシアネートからなる群より選択された1種又は2種以上であるものとすることができる。
【0014】
上記活性エネルギー線硬化型組成物は、(D)1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートをさらに含有するものとすることができる。
【0015】
上記(A)成分と(B)成分との割合((A)/(B))は、質量比で、95/5〜50/50であるものとすることができる。
【0016】
水酸基価から計算される(A)成分と(B)成分の水酸基の合計のモル数(a+b)と(C)のイソシアネート基のモル数(c)とのモル比((a+b)/c)が0.5以上、1未満とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物によれば、高硬度、高耐擦傷性であり、成形性に優れた硬化膜を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、(A)水酸基価が160mgKOH/g以上220mgKOH/g以下である、3価以上の脂肪族多価アルコール化合物の(メタ)アクリル酸付加物と、(B)(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートと、(C)有機イソシアネート化合物との反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートを含有するものである。
【0020】
上記(A)水酸基価が160mgKOH/g以上220mgKOH/g以下である、3価以上の脂肪族多価アルコール化合物の(メタ)アクリル酸付加物(以下、(メタ)アクリル酸付加物ということもある。)は、所定の3価以上の脂肪族多価アルコール(以下、脂肪族多価アルコールということもある。)に(メタ)アクリル酸をエステル化反応により付加することで得ることができる。
【0021】
上記脂肪族多価アルコールは、3価以上のアルコール化合物であれば特に限定されないが、3価以上6価以下の脂肪族多価アルコールであることが好ましく、4価の脂肪族多価アルコールであることがより好ましい。3価以上であることにより硬化物の硬度を向上させ易く、6価以下であることにより硬化物のカールの発生を小さくする、すなわち成形性を向上させることができる。
【0022】
上記脂肪族多価アルコールとして具体的には、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、トリペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、グリセリン、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖、ショ糖のアルキレンオキサイド等の糖誘導体及び糖誘導体のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。上記アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしての例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドを挙げることができ、これらの中の1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
これらの中でも、硬化物の硬度向上の観点から、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、トリペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物がより好ましく、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールがさらに好ましい。
【0024】
また、上記脂肪族多価アルコールは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよいが、1種単独で使用することが好ましい。
【0025】
上記(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を使用するものであるが、アクリル酸のみを使用することが好ましい。
【0026】
上記(メタ)アクリル酸付加物の製造には、(メタ)アクリル酸以外に、(メタ)アクリル酸ハライド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸エステル化合物等を使用することもできる。
【0027】
上記(メタ)アクリル酸付加物の水酸基価は160mgKOH/g以上であることが好ましく、170mgKOH/g以上であることがより好ましく、220mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g以下であることがより好ましい。水酸基価が160mgKOH/g以上であり、220mgKOH/g以下である化合物を使用した場合、硬度、擦傷性、成形性に優れる硬化膜が得られ易い。
【0028】
ここで、本明細書において、水酸基価とは、試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム(mg)数であり、JIS K 0070−1992に準じて測定されるものである。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸付加物は、水酸基を有しない(メタ)アクリル酸付加物を含んでいてもよいが、水酸基を1つ有する(メタ)アクリル酸付加物を含むことが好ましく、更に、水酸基を2つ有する(メタ)アクリル酸付加物を含むことがより好ましい。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸付加物は、公知のエステル化反応により製造することができるが、触媒や安定剤を使用することが好ましい。触媒としては、酸触媒を好適に挙げることができる。また、安定剤としては、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の公知の重合禁止剤を好適に挙げることができる。また、安定剤、特に重合禁止剤として、酸素を用いることも好ましい。例えば、酸素含有雰囲気中において、上記脂肪族多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応を行うことにより、不必要な(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止することができる。また、上記(メタ)アクリル酸付加物の製造法としては、例えば液−液抽出(分液)を行うことにより精製する方法を含むことが好ましい。上記製造法により、水酸基価が160mgKOH/g以上220mgKOH/g以下である上記(メタ)アクリル酸付加物を容易に製造することができる。
【0031】
次に、(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートは、下記の式で表される。
【0032】
【化1】
【0033】
上記(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートは、2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートと(メタ)アクリル酸の脱水エステル化反応により製造することができる。この際、反応生成物は(メタ)アクリル酸の1〜3置換体の混合物として得られ、一般に、1置換体は精製過程で除去され、2置換体である(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートと、3置換体である2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレートとの混合物として流通している。このような混合物の市販品としては、東亞合成株式会社製「アロニックスM−215」が挙げられる。
【0034】
(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートと2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレートとの混合比((2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート/2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート)は、特に限定されないが、質量比で、100/0〜30/70であることが好ましく、100/0〜35/65であることがより好ましく、100/0〜40/60であることがさらに好ましい。
【0035】
2−アクリロイルオキシエチルイソシアヌレートは、下記の式で表される。
【0036】
【化2】
【0037】
(B)成分である(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートは、(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートと2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレートとの混合物を使用してもよい。混合物を使用した場合、反応生成物はウレタン(メタ)アクリレートとともに未反応の2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレートを含有する可能性があるが、これをそのまま本発明の硬化型組成物として使用することができる。
【0038】
上記(C)有機イソシアネート化合物としては、種々の化合物が使用可能であり、特に限定されないが、具体例としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートを挙げることができる。
【0039】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0040】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0041】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0042】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0043】
また、これらの有機イソシアネート化合物の2量体又は3量体や、ビュレット化イソシアネート等の変性体も挙げることができる。
【0044】
これらの有機イソシアネート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。組成物から得られる硬化物がより高硬度、低カール性となることから、上記脂肪族ポリイソシアネート及び脂環族ポリイソシアネートからなる群より選択された1種又は2種以上であることがより好ましい。中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートがさらに好ましい。
【0045】
本発明の(A)成分と(B)成分の質量比((A)/(B))は、特に限定されないが、95/5〜50/50であることが好ましい。
【0046】
さらに、水酸基価から計算される(A)成分と(B)成分の水酸基の合計のモル数(a+b)と(C)成分のイソシアネート基のモル数(c)とのモル比((a+b)/c)は、特に限定されないが0.5以上1未満であることが好ましい。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、(D)1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(以下、単に多官能(メタ)アクリレートということがある。)をさらに含有することができる。上記多官能(メタ)アクリレートを含有することにより、硬化膜の硬度をより高くすることができる。
【0048】
上記多官能(メタ)アクリレートの含有量(2種以上併用する場合は合計量)は、特に限定されないが、ウレタン(メタ)アクリレートとの合計量100質量部中、0〜90質量部であることが好ましく、0〜80質量部であることがより好ましく、0〜70質量部であることがさらに好ましい。
【0049】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、具体例としてはトリメチロールプロパンのアクリル酸エステル、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル、ペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンのアクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル、トリペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、トリペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル、2−アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、グリセリンのアクリル酸エステル、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル、ショ糖のアクリル酸エステル、ショ糖のアルキレンオキサイド等の糖誘導体及び糖誘導体のアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル等が挙げられる。これらは、単独で用いることもでき、2種以上を併用することもできる。
【0050】
上記アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドを挙げることができ、これらの中の1種又は2種以上を用いることができる。
【0051】
これらの中でも硬化物の硬度向上の観点から、ペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル、トリペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、トリペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル、2−アクリロイルオキシエチルイソシアヌレートがより好ましく、ジペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、2−アクリロイルオキシエチルイソシアヌレートがさらに好ましい。
【0052】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートは、公知の方法で合成することが可能であり、特に限定されないが、例えば、所定量の(A)、(B)、(C)、及びハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤の存在下、約70〜80℃で遊離イソシアネートが無くなるまで加温しながら攪拌することで合成可能である。この時、反応を促進させるために、ジブチルチンジラウレート等のスズ系触媒を添加することもできる。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、必要に応じて、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶剤及び/又はモノマー類を含有するものとすることができる。モノマー類としては、例えば、ペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル、トリペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、トリペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のアクリル酸エステル、2−アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
活性エネルギー線硬化型組成物における上記ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、特に限定されないが、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0055】
本発明の硬化型組成物には、活性エネルギー線による重合開始剤を必要に応じ含有することができる。ここでいう活性エネルギー線による重合開始剤は、光重合開始剤と紫外線等の活性エネルギー線による重合開始剤との双方を含むものとする。
【0056】
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アントラセン、α−クロロメチルナフタレン等の芳香族化合物、ジフェニルスルフィド、チオカーバメイト等のイオウ化合物を使用することができる。
【0057】
可視光以外の紫外線などの活性エネルギー線による重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等を挙げることができる。
【0058】
活性エネルギー線による重合開始剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 商品名:イルガキュア184,369,651,500,819,907,784,2959,1000,1300,1700,1800,1850、ダロキュア1116,1173、BASF社製 商品名:ルシリンTPO、UCB社製 商品名:ユベクリルP36、フラテツリ・ランベルティ社製 商品名:エザキュアーKIP150,KIP100F,KT37,KT55,KTO46,TZT,KIP75LT、日本化薬社製 商品名:カヤキュアDETX等を挙げることができる。
【0059】
また必要に応じて、活性エネルギー線開始剤にラジカル重合開始剤を併用することもできる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物を使用することができる。
【0060】
これら重合開始剤の含有量はその種類等によって異なるが、目安としてはウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの合計量100質量部に対して、1〜8質量部であることが好ましい。含有量が1質量部以上であることにより、活性エネルギー線感度が十分得られ、8質量部以下であることにより塗膜深部まで活性エネルギー線が十分に届き、塗膜深部の硬化性が十分に得られる。
【0061】
なお、本発明における活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線などを挙げることができ、エネルギー線源としては、高圧水銀灯カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が挙げられる。
【0062】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物には、上記有機溶剤又はモノマー類、各種開始剤以外に、塗料、コーティング剤等に通常含まれる各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加することができる。添加剤の例としては、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤等が挙げられる。
【0063】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、塗料、コーティング剤等として使用される。塗工又はコーティングの対象物(被塗物)には、携帯電話、腕時計、コンパクトディスク、オーディオ機器、OA機器等の電気・電子機器; タッチパネル、ブラウン管の反射防止板等の電子部品; 冷蔵庫、掃除機、電子レンジ等の家電製品; メーターパネル、ダッシュボード等の自動車の内装品; プレコートメタル鋼板; 自動車のボディ、バンパー、スポイラー、ドアノブ、ハンドル、ヘッドランプ、オートバイのガソリンタンク、メッキ・蒸着又はスパッタリングが施されたアルミホイール、ドアミラー等の自動車部品; カーポートの屋根、採光屋根; ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ABS樹脂等のプラスチック成形品、光ディスク記録媒体用の保護層、サングラスや矯正用メガネレンズといった各種光学レンズの保護層; 階段、床、机、椅子、タンス、その他の家具等の木工製品; 布、紙等が例示される。
【0064】
塗工方法は常法に従えばよく、特に限定されないが、例えばエアスプレー法、静電塗装法、ロールコーター法、フローコーター法、スピンコート法等が挙げられる。
【0065】
塗工又はコーティングによって得られる被膜の厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であることが好ましい。被膜の厚さが1μm以上であることにより被膜としての機能を十分に有し、100μm以下であることにより、被膜の厚さが厚くなり過ぎず、塗工対象物の物性が発揮されやすい。
【実施例】
【0066】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において含有量等は、特にことわらない限り質量基準とする。
【0067】
[合成例1]
温度計、撹拌機、水冷コンデンサーを備えた4つ口フラスコに、アクリル酸1,151部(16.0モル)、ペンタエリスリトール(広栄化学工業株式会社)604部(4.44モル)、パラトルエンスルホン酸43.9部、ハイドロキノンモノメチルエーテル2.1部、トルエン552部を混合し、空気を吹き込みながら反応温度約100℃を維持できるように減圧下の条件で、ペンタエリスリトール中の全水酸基の58%がエステル化されるまで反応させた。反応は縮合水を除去しながら行い、発生した縮合水は179部であった。反応終了後に、トルエン353部を追加した。このトルエンを追加した反応液の酸分に対して1.1倍モル量に相当する20質量%水酸化ナトリウム水溶液を撹拌下に添加して中和処理を実施し、過剰なアクリル酸及びパラトルエンスルホン酸を除去した。有機層を分離し、撹拌下で有機層100部に対して水10部を添加し水洗処理を行った。有機層を分離し、減圧下に加熱してトルエンを留去した。得られたアクリル酸エステルは837部であり、水酸基価は190mgKOH/gであった。
【0068】
[合成例2]
温度計、撹拌機、水冷コンデンサーを備えた4つ口フラスコに、アクリル酸1,151部(16.0モル)、ペンタエリスリトール(広栄化学工業株式会社)604部(4.44モル)、パラトルエンスルホン酸43.9部、ハイドロキノンモノメチルエーテル2.1部、トルエン552部を混合し、空気を吹き込みながら反応温度約100℃を維持できるように減圧下の条件で、ペンタエリスリトール中の全水酸基の58%がエステル化されるまで反応させた。反応は縮合水を除去しながら行い、発生した縮合水は179部であった。反応終了後に、トルエン353部を追加した。このトルエンを追加した反応液の酸分に対して1.4倍モル量に相当する20質量%水酸化ナトリウム水溶液を撹拌下に添加して中和処理を実施し、過剰なアクリル酸及びパラトルエンスルホン酸を除去した。有機層を分離し、撹拌下で有機層100部に対して水10部を添加し水洗処理を行った。有機層を分離し、減圧下に加熱してトルエンを留去した。得られたアクリル酸エステルは837部であり、水酸基価は165mgKOH/gであった。
【0069】
[合成例3]
温度計、撹拌機、水冷コンデンサーを備えた4つ口フラスコに、アクリル酸1,151部(16.0モル)、ペンタエリスリトール(広栄化学工業株式会社)604部(4.44モル)、パラトルエンスルホン酸43.9部、ハイドロキノンモノメチルエーテル2.1部、トルエン552部を混合し、空気を吹き込みながら反応温度約100℃を維持できるように減圧下の条件で、ペンタエリスリトール中の全水酸基の80%がエステル化されるまで反応させた。反応は縮合水を除去しながら行い、発生した縮合水は256部であった。反応終了後に、トルエン353部を追加した。このトルエンを追加した反応液の酸分に対して1.4倍モル量に相当する20質量%水酸化ナトリウム水溶液を撹拌下に添加して中和処理を実施し、過剰なアクリル酸及びパラトルエンスルホン酸を除去した。有機層を分離し、撹拌下で有機層100部に対して水10部を添加し水洗処理を行った。有機層を分離し、減圧下に加熱してトルエンを留去した。得られたアクリル酸エステルは1082部であり、水酸基価は120mgKOH/gであった。
【0070】
なお、上記各合成例において、水酸基価は、無水酢酸/ピリジン(15g/85g)にサンプルを溶解させ、90℃で1.5時間反応させ、少量の水を加えてさらに10分間反応させた後に室温まで冷却した。指示薬としてフェノールフタレインを加え、1mol/L水酸化カリウム(KOH)エタノール溶液で滴定して求めた。
【0071】
上記合成例により得られたペンタエリスリトールのアクリル酸エステルを用いて、下記の通りウレタンアクリレートを製造した。下記ウレタンアクリレート製造時に粘度が高い場合は、適宜酢酸ブチル溶液にて減粘した。
【0072】
[合成例4]
フラスコにヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成ケミカルズ株式会社)168g(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.44g、上記合成例1で得られた水酸基価190mgKOH/gのペンタエリスリトールのアクリル酸エステル532g(1.8モル)と(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート/2−アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート混合物(質量比=56/44混合物、東亞合成株式会社製「アロニックスM−215」)187g(0.4モル)を仕込み、70〜80℃にて遊離イソシアネート量が0.1%以下になるまで反応させ、ウレタンアクリレートA(U−A)を得た。
【0073】
[合成例5]
フラスコにイソホロンジイソシアネート(エボニックジャパン株式会社)222g(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.44g、上記合成例1で得られた水酸基価190mgKOH/gのペンタエリスリトールのアクリル酸エステル532g(1.8モル)と(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート/2−アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート混合物(質量比=56/44混合物、東亞合成株式会社製「アロニックスM−215」)187g(0.4モル)を仕込み、70〜80℃にて遊離イソシアネート量が0.1%以下になるまで反応させ、ウレタンアクリレートB(U−B)を得た。
【0074】
比較合成例A
フラスコにノルボルネンジイソシアネート(三井化学株式会社)206g(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.44g、上記合成例2で得られた水酸基価163mgKOH/gのペンタエリスリトールのアクリル酸エステル532g(1.8モル)と(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート/2−アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート混合物(質量比=56/44混合物、東亞合成株式会社製「アロニックスM−215」)187g(0.4モル)を仕込み、70〜80℃にて遊離イソシアネート量が0.1%以下になるまで反応させ、ウレタンアクリレートC(U−C)を得た。
【0075】
[合成例7]
フラスコにイソホロンジイソシアネート(エボニックジャパン株式会社)222g(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.44g、上記合成例1で得られた水酸基価190mgKOH/gのペンタエリスリトールのアクリル酸エステル325g(1.1モル)と(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート/2−アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート混合物(質量比=56/44混合物、東亞合成株式会社製「アロニックスM−215」)514g(1.1モル)を仕込み、70〜80℃にて遊離イソシアネート量が0.1%以下になるまで反応させ、ウレタンアクリレートD(U−D)を得た。
【0076】
[比較合成例1]
フラスコにイソホロンジイソシアネート(エボニックジャパン株式会社)222g(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.44g、上記合成例3で得られた水酸基価120mgKOH/gのペンタエリスリトールのアクリル酸エステル1028g(2.2モル)を仕込み、70〜80℃にて遊離イソシアネート量が0.1%以下になるまで反応させ、ウレタンアクリレートE(U−E)を得た。
【0077】
[比較合成例2]
フラスコにイソホロンジイソシアネート(エボニックジャパン株式会社)222g(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.44g、上記合成例3で得られた水酸基価120mgKOH/gのペンタエリスリトールのアクリル酸エステル514g(1.1モル)と(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート/2−アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート混合物(質量比=56/44混合物、東亞合成株式会社製「アロニックスM−215」)514g(1.1モル)を仕込み、70〜80℃にて遊離イソシアネート量が0.1%以下になるまで反応させ、ウレタンアクリレートF(U−F)を得た。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に記載の各成分の数値は含有量を示し、その単位は「モル」である。
【0080】
〈硬化型組成物の調製及び評価〉
表2に示す割合で配合された、上記合成例で得られたウレタンアクリレート(U−A〜F)と、多官能(メタ)アクリレート化合物又はその他(メタ)アクリレートの合計量各100質量部に対して、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 イルガキュア184)を3質量部それぞれ配合し、溶解した。これをポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡株式会社製PET、型番:コスモシャインA4300)上に膜厚が約7μmになるように塗布し、高圧水銀ランプ80W/cmを用いて、積算照度600mJ/cm2にて、窒素雰囲気下にて照射し硬化させた。
【0081】
得られた各硬化物につき、以下の方法で、鉛筆硬度、耐擦傷性、カール性を調べた。結果を下記表2に示す。
【0082】
〔鉛筆硬度〕
JIS K5400に準じ、鉛筆引っかき試験機で荷重750gかけて引っかき、傷の付かない最も硬い鉛筆の硬さとした。
【0083】
〔耐擦傷性〕
上記で得られたフィルムをJIS K5701−1に準じ、摩擦試験機(大平理化工業株式会社)を用い、スチールウール#0000を1kg荷重で100往復させた。試験前後の試験用フィルムのヘーズ値をヘーズメーター(日本電色工業株式会社製「NDH4000」)を用いて測定し、両値の差で評価した。数値は低いものほど耐擦傷性が良いことを示す。
【0084】
〔カール性〕
試験用フィルムを10cm×10cmの大きさに切り出したものを水平面上に置き、1隅を固定して、水平面からの3隅の浮き(mm)をそれぞれ測定し、その平均値で評価した。数値が低いものほど成形性が良いことを示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表2に記載の各成分の含有量の単位は質量部である。
【0087】
表2より本発明のウレタン(メタ)アクリレートを含有する硬化型組成物を用いた実施例1〜4と、水酸基価が160mgKOHより小さいペンタエリスリトールのアクリル酸付加物を使用し、(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートを使用していない比較例1を比較すると、本発明によれば、成形性を維持ないし改善しつつ、耐擦傷性を改善することができ、硬度、耐擦傷性、成形性のバランスに優れる硬化膜が得られることが認められた。また、実施例1〜4と、水酸基価が160mgKOHより小さいペンタエリスリトールのアクリル酸付加物と(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートを使用した比較例2を比較すると、本発明により得られた硬化膜は、成形性を維持しつつ、耐擦傷性を改善することができ、硬度、耐擦傷性、成形性のバランスに優れることが認められた。
【0088】
さらに、実施例1〜4以外にも、水酸基価が160mgKOH/g以上220mgKOH/g以下である、3価以上の脂肪族多価アルコール化合物の(メタ)アクリル酸付加物と、(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートと、イソシアネートを使用したウレタン(メタ)アクリレートを含有する硬化型組成物について実験し、実施例と同様の鉛筆、耐擦傷性、成形性が得られることを確認している。
【0089】
〈不可能・非実際的事情〉
本発明が含有するウレタン(メタ)アクリレートは、(A)水酸基価が160mgKOH/g以上220mgKOH/g以下である、3価以上の脂肪族多価アルコール化合物の(メタ)アクリル酸付加物と、(B)(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートと、(C)有機イソシアネート化合物との反応生成物であり、その構造は複雑であるため、一般式で表すことは困難である。さらに、構造が特定されなければ、それに応じて定まるその物質の特性も容易には特定できない。また、異なる複数のモノマーを反応させるにあたり、それらの配合比、反応条件が異なれば、得られる反応生成物の特性も大きく異なる。すなわち、本発明が含有するウレタン(メタ)アクリレートを、その構造又は特性により直接特定することは不可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、硬度、擦傷性及び成形性に優れた硬化物を得ることができる為、耐擦傷性を要求される分野での塗料あるいはコーティング剤として適している。具他的には、携帯電話、腕時計、コンパクトディスク、オーディオ機器、OA機器などの電気電子機器;タッチパネルなどの電子部材;冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、薄型テレビなどの家電製品;メーターパネル、ダッシュボードなどの自動車の内装;自動車部品などに塗工して使用することができる。