(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記出力部材の突出限界位置における前記第1当接部と前記突条間の距離は、前記圧縮ばねの密着高さよりも大きく、前記出力部材の没入限界位置における前記第2当接部と前記突条間の距離は、前記圧縮ばねの密着高さよりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の作動装置。
前記出力部材の突出限界位置における前記第1当接部と前記突条間の距離と、前記出力部材の没入限界位置における前記第2当接部と前記突条間の距離は、一方が他方よりも大きいことを特徴とする請求項3又は4に記載の作動装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気錠の施錠と解錠を行うアクチュエータとして、モータの回転力を出力部材の直線的な作動力に変換して利用する作動装置が用いられることがある。この種の作動装置として、特許文献1には、
図11に示すものが提案されている。
【0003】
即ち、
図11は特許文献1において提案された作動装置の部分縦断面図であり、図示の作動装置101においては、枠板102に固設されたモータ103の出力軸103aに、円柱状のばね案内部材104が同心的に固設されている。そして、ばね案内部材104の外周には螺旋状のばね105が可動に嵌め込まれて保持されており、このばね105は、ばね案内部材104に対して互いに軸線回りに回動可能であり、長さ方向に摺動可能である。
【0004】
又、ばね案内部材104の長手方向両端には、ばね案内部材104の胴部104aに巻装されたばね105の抜け出しを阻止するためのフランジ板106がそれぞれ固定されており、ばね案内部材104の長手方向中央部には、ばね105のピッチ間隙を遊動可能な突起107が突設されている。
【0005】
そして、ばね105の両端は、平行を成すようにしてばね案内部材104の胴部104aより径方向外方(
図11の下方)に向けて延出する突出端105aを構成しており、これらの突出端105aは、枠板102に枢軸108によって揺動可能に軸支された被動部材109の係合孔109aに可動に係合している。
【0006】
以上のように構成された作動装置101において、図示のようにばね105がばね案内部材104上の左方位置にある状態からモータ103の出力軸103aが矢印a方向に回転すると、同方向に回転するばね案内部材104の突起107に対して可動に係合しているばね105がばね案内部材104の胴部104aで案内されつつ矢印b方向に向かって直線的に変位する。すると、被動部材109の係合孔109aに突出端105aが係合するばね105は、被動部材109を枢軸108を中心として図示矢印c方向に揺動させる。
【0007】
斯かる作動装置101によれば、被動部材109に対して付与される作動力は、ばね105の両突出端105aを介して弾性的に伝達されるため、他の緩衝機構やクラッチ類の付設が不要となる。又、被動部材109がロックして負荷が急激に増加した場合であっても、モータ103は空転するだけであるために該モータ103の焼損が防がれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1において提案された
図11に示す作動装置101においては、ばね105とばね案内部材104との間及びばね案内部材104に突設された突起107とばね105との間に摺動抵抗がそれぞれ生じるという問題がある。又、被動部材109をばね105の突出端105aによって駆動する構成を採用しているため、ばね105の弾性変形によって駆動力が吸収され、モータ103の回転を被動部材109のスライド移動に変換する効率が悪いという問題もある。
【0010】
更に、モータ103の出力軸103aとずれた位置に配置された被動部材109を駆動する構成を採用しているため、ばね105に倒れ力が発生し、ばね105とばね案内部材104との間の摺動抵抗が大きくなり、摩耗による耐久性の低下を招くという問題がある。
【0011】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、モータの回転力を出力部材のスライド移動に変換する効率と耐久性の向上を図ることができる作動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
ハウジングと、
該ハウジングに収容された正逆転可能なモータと、
該モータの出力軸の回転に連動して回転する軸部材と、
該軸部材に回転不能且つ摺動可能に巻装された螺旋状の圧縮ばねと、
前記ハウジングに回転不能且つ摺動可能に収容され、前記モータの出力軸の回転によって該出力軸に沿った方向に進退動する出力部材と、
を備えた作動装置であって、
前記軸部材と前記圧縮ばねが貫通する円孔を前記出力部材に形成するとともに、該円孔の内周面に、前記圧縮ばねのピッチ間隙を遊動して前記出力部材が前記ハウジングから最大距離突出する突出限界位置と前記ハウジング内に最大距離没入する没入限界位置とにおいて前記圧縮ばねとの噛み合いが外れる略ねじ状の突条を突設したことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記圧縮ばねには、両端が閉じられていない螺旋状の胴部と、該胴部の両端から径方向内側に突出する腕部が形成され、
前記軸部材には、前記圧縮ばねの腕部のそれぞれを前記モータの出力軸に沿った方向に移動可能に収容する溝と、前記圧縮ばねを軸方向に移動可能に巻装するばね装着部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記出力部材の突出限界位置で前記突条と協働して前記圧縮ばねが自然長よりも圧縮された状態で該圧縮ばねの前記胴部の一端を保持する第1当接部と、
前記出力部材の没入限界位置で前記突条と協働して前記圧縮ばねが自然長よりも圧縮された状態で該圧縮ばねの前記胴部の他端を保持する第2当接部と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記出力部材の突出限界位置における前記第1当接部と前記突条間の距離は、前記圧縮ばねの密着高さよりも大きく、前記出力部材の没入限界位置における前記第2当接部と前記突条間の距離は、前記圧縮ばねの密着高さよりも大きいことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の発明において、前記出力部材の突出限界位置における前記第1当接部と前記突条間の距離と、前記出力部材の没入限界位置における前記第2当接部と前記突条間の距離は、一方が他方よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、前記モータの出力軸の回転は、減速機構を介して前記軸部材に伝達されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、圧縮ばねと該圧縮ばねが貫通する出力部材の円孔を、モータの回転に連動する軸部材と同軸に配置したため、圧縮ばねに倒れが発生することがなく、モータの回転を出力部材の移動に変換する効率が高められる。又、余計な摩擦力が発生しないため、作動装置の耐久性が高められる。
【0019】
そして、モータの正転/逆転駆動によって出力部材が突出/没入方向の限界位置まで到達すると、出力部材の突条が圧縮ばねの螺旋状の胴部の端部から外れて、そのままモータが駆動し続けても、出力部材に対してモータと軸部材及び圧縮ばねが空転するため、モータの負荷が出力部材に掛からず、出力部材の破損やモータの焼損が防がれて当該作動装置の耐久性が高められる。又、モータの回転制御を厳密に行わなくて済むため、制御装置を簡素化することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、圧縮ばねの腕部は、径方向内側に突出して軸部材の溝内に配置されるため、圧縮ばねに製造過程でバリや寸法誤差が発生しても、該圧縮ばねの腕部が軸部材や出力部材等と干渉することがなく、当該作動装置の作動安定性が高められる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、出力部材の突条が圧縮ばねの螺旋状の胴部から外れる位置(出力部材の突出限界位置又は没入限界位置)において、圧縮ばねが自然長よりも圧縮された状態で突条に軸方向から付勢するように圧接されるため、モータの逆転駆動によって圧縮ばねが軸部材と共に逆転した際には、突条が螺旋状の圧縮ばねと噛み合うため、モータが逆転駆動される場合の作動装置の動作がスムーズに行われる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、出力部材が突出方向に移動した状態において、該出力部材に対して突出/没入させる方向に外力が加わった場合や、出力部材が突出/没入方向に移動する途中に障害物がある場合において、圧縮ばねの密着高さまでは出力部材が突出/没入方向に移動又は留まることができる。このため、出力部材が動けないような場合であっても、突条が圧縮ばねの端部に達するまで移動すると、圧縮ばねの螺旋部分がなくなり、突条と圧縮ばねとの噛み合いは外れているため、モータの回転がロックしてしまうことがなく、モータの破損が免れる。又、モータ停止後においても、出力部材には圧縮ばねによる付勢力(ばね力)が加わり続けるため、障害物が除去されると同時に出力部材を圧縮ばねの付勢力によって突出/没入状態に復帰させることができる。
【0023】
出力部材から出力される荷重は、圧縮ばねの圧縮量に依存し、最大でも圧縮ばねの密着高さまでの圧縮量に応じたばね荷重となるため、モータの出力に関わらず、安定した出力荷重を得ることができ、出力荷重も容易に計算することができ、モータの選定に制限を受けることがない。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、出力部材の突出時と没入時に必要となる荷重が異なる場合等に、出力部材の突出駆動時の出力荷重と没入駆動時の出力荷重を容易に変更することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、モータの出力軸の回転を減速機構を介して軸部材に伝達することによって、出力部材に大きなストロークを確保したり、大きな駆動力を得ることができる。ここで、軸部材は、モータの回転軸と同軸であっても、モータの回転軸に対してオフセットしていても良く、減速機構を用いることによって当該作動装置のレイアウトの自由度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0028】
<作動装置の構成>
図1は本発明に係る作動装置の平断面図、
図2は同作動装置要部の分解斜視図、
図3は同作動装置の出力部材の破断斜視図、
図4(a)〜(c)は同作動装置の圧縮ばねの軸部材への装着状態を示す横断面図である。
【0029】
本発明に係る作動装置1は、
図1に示すように、ハウジング2と、該ハウジング2に収容された正逆転可能なモータ3と、該モータ3の出力軸3aの回転に連動して回転する軸部材4と、該軸部材4に回転不能且つ摺動可能に巻装された螺旋状の圧縮ばね5と、ハウジング2に回転不能且つ摺動可能に収容された出力部材6を備えている。
【0030】
上記軸部材4は、
図2に示すように、略円柱状の大小異径の連結部4Aとばね装着部4Bが軸方向に一体に形成されており、これらの連結部4Aとばね装着部4Bの軸中心部には円孔4aが軸方向に沿って貫設されている。そして、この円孔4aにモータ3の出力軸3aを
図1に示すように嵌着させることによって、軸部材4がモータ3の出力軸3aに連結されて両者が一体に回転する。
【0031】
又、軸部材4のばね装着部4Bの外周の一部は面取りされており、この面取りされた箇所には、円孔4aに連通する溝4bが軸方向に沿って形成されている。ここで、軸部材4の連結部4Aとばね装着部4Bとの境界には、圧縮ばね5の一端を受けることができる第1当接部7が形成されており、ばね装着部4Bの端部(先端部)外周に形成された溝4c(
図2参照)には、圧縮ばね5の他端を受けることができるCリング状の第2当接部8が嵌着されている。
【0032】
而して、前記圧縮ばね5には、
図2に示すように、両端が閉じられていない螺旋状の胴部5aと、該胴部5aの両端から径方向内側に突出する腕部5bが形成されており、該圧縮ばね5は、その胴部5aが軸部材4のばね装着部4Bに通されることによって該ばね装着部4Bに軸方向(
図1の左右方向)に移動可能に巻装される。そして、
図4に示すように、圧縮ばね5の軸方向両端に形成された腕部5bが軸部材4のばね装着部4Bに形成された溝4bに差し込まれて係合することによって、圧縮ばね5は、軸部材4と共に一体に回転するとともに、溝4bに沿って軸部材4のばね装着部4Bの外周に沿って軸方向(モータ3の出力軸3aに沿った方向)に移動することができる。ここで、
図4(a)に示すように、圧縮ばね5の各腕部5b(
図4には一方のみ図示)の先端部は、軸部材4の軸中心部に貫設された円孔4aに差し込まれているが、
図4(b),(c)に示すように、軸部材4が矢印方向に回転したために該軸部材4の溝4bが圧縮ばね5の腕部5bに係合すると、圧縮ばね5は、軸部材4と共に同方向に回転する。このとき、
図4(a)〜(c)に示す何れの状態においても、圧縮ばね5の腕部5bの先端は、軸部材4の軸中心部を貫通する円孔4aに収容されているために軸部材4との干渉が避けられる。
【0033】
前記出力部材6の内部には、軸部材4とこれに装着された圧縮ばね5に直交する方向の壁6Aが一体に形成されており、この壁6Aの中心部には、
図2に示すように、円孔6aが形成されている。そして、この円孔6aには、
図1に示すように、軸部材4とこれに装着された圧縮ばね5が貫通している。ここで、
図3に詳細に示すように、出力部材6の壁6Aに形成された円孔6aの内周面には、圧縮ばね5の胴部5aに噛み合ってピッチ間隙を遊動する略ねじ状の突条6bが一体に突設されている。尚、壁6Aは出力部材6と一体的に形成されていれば、別部材として出力部材6に組み付けても良い。
【0034】
<作動装置の作用>
次に、以上のように構成された作動装置1の作用を
図5(a)〜(d)、
図6及び
図7に基づいて以下に説明する。
【0035】
図5(a)〜(d)は本発明に係る作動装置の各動作を示す平断面図、
図6は没入限界位置にある出力部材に外力が作用した状態を示す作動装置の平断面図、
図7は突出限界位置にある出力部材に外力が作用した状態を示す作動装置の平断面図である。
【0036】
モータ3が起動されて出力軸3aが回転駆動されると、この出力軸3aと共に軸部材4とこれに装着された圧縮ばね5が一体的に回転するが、圧縮ばね5の胴部5aには出力部材6の突条6bが噛み合っているため、該圧縮ばね5が軸部材4のねじ装着部4Bに沿って軸方向に移動する。尚、この圧縮ばね5の軸方向の移動は、該圧縮ばね5の軸方向両端の腕部5bが軸部材4のばね装着部4Bに形成された軸方向に長い溝4bに沿って摺動可能であるために許容される。ここで、圧縮ばね5の腕部5bは、径方向内側に突出して軸部材4の溝4b内に配置されるため、圧縮ばね5の腕部5bの先端に製造過程でバリや寸法誤差が発生しても、圧縮ばね5の腕部5bが軸部材4や出力部材6等と干渉することがなく、当該作動装置1の作動が安定的になされる。
【0037】
而して、上述のように圧縮ばね5が軸部材4のねじ装着部4Bに沿って軸方向に移動すると、該圧縮ばね5の胴部5aの長手方向両端は、出力部材6の突条6bと第1当接部7又は第2当接部8によって受けられ、その付勢力(ばね力)の出力部材6への作用方向が変化するために出力部材6が軸方向(モータ3の出力軸3aに沿った方向)に進退動してハウジング2に対して突出/没入する。
【0038】
ここで、
図5(a)は出力部材6がハウジング2内に最大距離没入する没入限界位置にある状態を示すが、このとき、圧縮ばね5は、軸部材4上を図の左限位置まで移動し、その胴部5aの軸方向両端が第2当接部8と出力部材6の突条6bによって受けられている。この状態においては、突条6bは、圧縮ばね5の螺旋状の胴部5aの端部から飛び出して圧縮ばね5との噛み合いが外れており、圧縮ばね5は、圧縮状態にあって、その長さL
1は自然長L
0よりも短く(L
1<L
0)、出力部材6には次式で示されるばね力f
1が矢印方向(図の右向き)に作用する。
【0039】
f
1=k(L
0−L
1) … (1)
ここに、kは圧縮ばね5のばね定数
このため、出力部材6は、
図5(a)に示すように没入限界位置で停止している。このように出力部材6が没入限界位置にあるときには、没入方向へモータ3が継続的に駆動されていても、前述のように出力部材6の突条6bと圧縮ばね5との噛み合いが外れているため、モータ3と軸部材4及び圧縮ばね5は空転する。このため、モータ3への通電が断たれた後の慣性による回転が生じても、モータ3の負荷が出力部材6に掛からず、出力部材6の破損やモータ3の焼損が防がれて当該作動装置1の耐久性が高められる。又、モータ3の回転制御を厳密に行わなくて済むため、制御装置を簡素化することができる。
【0040】
出力部材6が
図5(a)に示す没入限界位置にある状態から、モータ3が逆転駆動されて出力軸3aが逆回転すると、没入限界位置において圧縮ばね5は、式(1)にて表される大きさのばね荷重f
1で出力部材6の突条6bを押圧しているため、該圧縮ばね5の螺旋部分に出力部材6の突条6bがスムーズに噛み合うことができる。このため、モータ3が逆転駆動される場合の作動装置1の次の動作がスムーズに行われる。
【0041】
而して、上述のように出力部材6の突条6bが圧縮ばね5の胴部5aに噛み合った状態でモータ3の出力軸3aが逆回転すると、
図5(b)に示すように、圧縮ばね5は、軸部材4のばね装着部4Bに沿って右方へと移動する。すると、圧縮ばね5は、その胴部5aの両端が出力部材6の突条6bと第1当接部7によって受けられて圧縮される。そして、突条6bと胴部5aの螺旋部分の係合により、胴部5aが左右に送られることによって、圧縮された圧縮ばね5の圧縮量に応じて、出力部材6には図の左方(突出方向)のばね力が作用し、このばね力によって出力部材6はハウジング2からの突出動作を開始する。
【0042】
而して、
図5(c)に示すように圧縮ばね5が出力部材6の突条6bとの噛み合いが外れる位置まで移動すると、該圧縮ばね5は、その胴部5aの軸方向両端が突条6bと第1当接部7によって受けられた圧縮状態となり、その長さL
2が自然長L
0よりも短くなるため(L
2<L
0)、出力部材6には次式で示されるばね力f
2が矢印方向(図の左向き)に作用する。
【0043】
f
2=k(L
0−L
2) … (2)
このため、出力部材6は、
図5(c)に示すようにハウジングから最大距離突出する突出限界位置へと移動する。このように出力部材6が突出限界位置にあるときには、前述のように出力部材6の突条6bと圧縮ばね5との噛み合いが外れているため、モータ3と軸部材4及び圧縮ばね5が空転する。このため、通電が断たれた後のモータ3の慣性力による回転の負荷が出力部材6に掛からず、出力部材6の破損やモータ3の焼損が防がれて当該作動装置1の耐久性が高められる。又、モータ3の回転制御を厳密に行わなくて済むため、制御装置を簡素化することができる。
【0044】
そして、出力部材6が
図5(c)に示す突出限界位置にある状態から、モータ3が再び逆転駆動されて出力軸3aが逆回転すると、突出限界位置において圧縮ばね5は、式(2)にて表される大きさのばね荷重f
2で出力部材6の突条6bを押圧しているため、該圧縮ばね5の螺旋部分と出力部材6の突条6bとはスムーズに噛み合うことができる。このように出力部材6の突条6bが圧縮ばね5に噛み合った状態でモータ3の出力軸3aが逆回転すると、
図5(d)に示すように、圧縮ばね5は、軸部材4のばね装着部4Bに沿って左方へと移動する。
【0045】
すると、圧縮ばね5は、出力部材6の突条6bと第2当接部8によって受けられて圧縮状態される。そして、突条6bと胴部5aの螺旋部分の係合により、胴部5aが左方に送られることによって、圧縮された圧縮ばね5の圧縮量に応じて、出力部材6には図の右方(没入方向)のばね力が作用し、このばね力によって出力部材6はハウジング2への没入動作を開始し、最終的に出力部材5は
図5(a)に示す没入限界位置へと移動する。
【0046】
而して、本発明に係る作動装置1においては、圧縮ばね5と該圧縮ばね5が貫通する出力部材6の円孔6aを、モータ3の回転に連動する軸部材4と同軸に配置したため、圧縮ばね5に倒れが発生することがなく、モータ3の回転を出力部材6の移動に変換する効率が高められる。又、余計な摩擦力が発生しないため、作動装置1の耐久性が高められるという効果が得られる。
【0047】
尚、
図5(a)に示す出力部材6の没入限界位置における第2当接部8と突条6b間の距離(圧縮ばね5の圧縮長さ)L
1と、
図5(c)に示す出力部材6の突出限界位置における第1当接部7と突条6b間の距離(圧縮ばね5の圧縮長さ)L
2を異なる値に設定し(L
1≠L
2)、一方を他方よりも大きくすれば、出力部材6の突出時と没入時に必要となる荷重が異なる場合等に、出力部材6の突出駆動時の出力荷重と、没入駆動時の出力荷重を容易に変更することができる。
【0048】
ところで、出力部材6が
図5(a)に示す没入限界位置にある状態から突出方向(図の左向き)の外力が出力部材6に作用すると、出力部材6は、
図6に示すように、圧縮ばね5をその密着高さL
3まで圧縮するまでハウジング2から突出する。ここで、
図5(a)に示すように出力部材6が没入限界位置にある状態での第2当接部8と突条6b間の距離(圧縮ばね5の圧縮長さ)L
1は、圧縮ばね5の密着高さL
3よりも大きく設定されている(L
1>L
3)。
【0049】
又、出力部材6が
図5(c)に示す突出限界位置にある状態から没入方向(図の右向き)の外力が出力部材6に作用すると、出力部材6は、
図7に示すように、圧縮ばね5をその密着高さL
3まで圧縮するまでハウジング2内に没入する。ここで、
図5(c)に示すように出力部材6が突出限界位置にある状態での第1当接部7と突条6b間の距離(圧縮ばね5の圧縮長さ)L
2は、圧縮ばね5の密着高さL
3よりも大きく設定されている(L
2>L
3)。
【0050】
従って、出力部材6が突出方向又は没入方向に移動した状態において、出力部材6に対して突出/没入させる方向に外力が加わった場合や、出力部材6が突出/没入方向に移動する途中に障害物がある場合において、圧縮ばね5の密着高さL
3までは出力部材6が突出/没入方向に移動又は留まることができる。このため、出力部材6が動けないような場合であっても、モータ3が空転してその回転がロックしてしまうことがなく、モータ3の破損が免れる。又、そのような場合であっても、出力部材6には圧縮ばね5による付勢力(ばね力)が加わり続けるため、障害物が除去されると同時に出力部材6を圧縮ばねの付勢力によって突出/没入状態に復帰させることができる。
【0051】
ところで、出力部材6から出力される荷重は、圧縮ばね5の圧縮量に依存し、最大でも圧縮ばね5の密着高さL
3までの圧縮量に応じたばね荷重となるため、モータ3の出力に関わらず、安定した出力荷重を得ることができ、出力荷重も容易に計算することができ、モータ3の選定に制限を受けることがない。尚、本実施の形態に係る作動装置1は、例えばホテル用電気錠の錠装置に出力部材6を連結して錠機構を作動させるアクチュエータとして使用することができる。
【0052】
<作動装置の適用例>
次に、本発明の別実施形態に係る作動装置の引き出し等の錠機構を作動させる電気錠への適用例を
図8〜
図10に基づいて以下に説明する。
【0053】
図8は電気錠に用いられる作動装置の施錠状態における動作を示す平断面図、
図9は同作動装置の解錠状態における動作を示す平断面図、
図10は
図8のA−A線断面図であって、(a)は施錠状態、(b)は解錠状態、(c)は半開き状態をそれぞれ示す図であり、これらの図においては
図1〜
図4において示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0054】
本適用例において電気錠のアクチュエータとして使用される作動装置1は、
図10に示すように、可動部材20の内側に設けられており、ロック部材9を上下動させて
図10(a)に示すように該ロック部材9を固定部材30の内周に形成された凹部30aに没入させることによって、可動部材20の移動を阻止する施錠状態とすることができる。又、この施錠状態からロック部材9を下動させて
図10(b)に示すように該ロック部材9を固定部材30の凹部30aから退避させることによって、可動部材20を引き出すことができる解錠状態とすることができる。尚、
図10(c)は
図10(b)に示す解錠状態から可動部材20を引き出している途中の状態(半開き状態)を示す。
【0055】
而して、電気錠のアクチュエータとして使用される作動装置1の構成の詳細を
図8及び
図9に示すが、この作動装置1は、ハウジング2と、該ハウジング2に収容された正逆転可能なモータ3と、ハウジング2に回転可能に支持された軸部材4と、該軸部材4に回転不能且つ摺動可能に巻装された螺旋状の圧縮ばね5と、ハウジング2に回転不能且つ摺動可能に収容された出力部材6を備えている。そして、
図10に示すように、出力部材6にはロック部材9が連結されており、両者は一体に移動する。
【0056】
上記軸部材4には、溝4bが軸方向に沿って形成されており、その外周には、圧縮ばね5が巻装されている。この圧縮ばね5は、その軸方向両端に内側に向かって突出する不図示の腕部が軸部材4の溝4bに挿入されることによって、軸部材4と一体に回転可能、且つ、軸部材4の軸方向(
図8及び
図9の上下方向)に沿って摺動可能に保持されている。
【0057】
又、前記出力部材6には、軸部材4とこれに装着された圧縮ばね5が挿通する円孔6aが形成されており、この円孔6aの内周には、圧縮ばね5に噛み合う突条6bが一体に突設されている。尚、ハウジング2の軸部材4と圧縮ばね5及び出力部材6を収容する空間を構成する下の壁は、
図8に示すように、施錠状態において出力部材6が上限位置へと移動した際に、圧縮ばね5の下端を出力部材6の突条6bとの間で受ける第1当接部7を構成し、上の壁は、
図9に示すように、解錠状態において出力部材6が下限位置へと移動した際に、圧縮ばね5の上端を出力部材6の突条6bとの間で受ける第2当接部8を構成している。
【0058】
而して、本例においては、モータ3の出力軸3aと軸部材4とはオフセットして互いに平行に配置されており、モータ3の出力軸3aの回転は、減速機構10を介して軸部材4に伝達されるよう構成されている。ここで、減速機構10は、モータ3の出力軸3aの端部に結着された小径のピニオン11と、軸部材4の端部に結着された大径のホイールギア12とを噛合させることによって構成されている。
【0059】
以上のように構成された作動装置1において、モータ3が例えば正転駆動されて出力軸3aが正回転すると、その回転は、減速機構10を構成するピニオン11とホイールギア12を経て減速されて軸部材4へと伝達される。すると、軸部材4と共に圧縮ばね5が回転し、圧縮ばね5が出力部材6の突条6bとの噛み合いによるねじ作用によって軸部材4に沿って下動する。そして、圧縮ばね5が
図8に示すように下限まで移動した状態では、圧縮ばね5は、その両端が出力部材6の突条6bとハウジング2の第1当接部7との間で圧縮されるとともに、出力部材6の突条6bとの噛み合いが外れる。
【0060】
上記状態においては、圧縮ばね5は、ばね力によって出力部材6を押し上げて
図8に示すように上限位置まで移動させるため、この出力部材6に連結されたロック部材9も
図10(a)に示すように上限まで移動して固定部材30の凹部30a内に没入する。このため、電気錠は、可動部材20を引き出すことができない施錠状態となる。
【0061】
次に、
図8及び
図10(a)に示す施錠状態からモータ3を逆転駆動すると、該モータ3の出力軸3aが逆回転し、その回転は、減速機構10を構成するピニオン11とホイールギア12を経て減速されて軸部材4へと伝達される。すると、軸部材4と共に圧縮ばね5が逆回転し、圧縮ばね5が出力部材6の突条6bとの噛み合いによるねじ作用によって軸部材4に沿って上動する。そして、圧縮ばね5が
図9に示すように上限まで移動した状態では、圧縮ばね5は、その両端が出力部材6の突条6bとハウジング2の第2当接部8との間で圧縮されるとともに、出力部材6の突条6bとの噛み合いが外れる。
【0062】
上記状態においては、圧縮ばね5は、ばね力によって出力部材6を押し下げて
図9に示すように下限位置まで移動させるため、この出力部材6に連結されたロック部材9も
図10(b)に示すように下限まで移動して固定部材30の凹部30aから抜け出る。このため、電気錠は、可動部材20を引き出すことができる解錠状態となる。
【0063】
図10(c)は、可動部材20を引き出している途中の状態(半開き状態)を示しており、このとき、モータ3が例えば正転駆動されて出力軸3aが正回転すると、その回転は、減速機構10を構成するピニオン11とホイールギア12を経て減速されて軸部材4へと伝達される。すると、軸部材4と共に圧縮ばね5が回転し、圧縮ばね5が出力部材6の突条6bとの噛み合いによるねじ作用によって軸部材4に沿って下動する。そして、圧縮ばね5が下限まで移動した状態では、圧縮ばね5は、その両端が出力部材6の突条6bとハウジング2の第1当接部7との間で圧縮されるとともに、出力部材6の突条6bとの噛み合いが外れる点は
図10(a)に示した施錠状態と同様である。しかしながら、この位置ではロック部材9が固定部材30の凹部30aに没入することができないで固定部材30と当接して途中位置で留まっており、圧縮ばね5は、その両端が出力部材6の突条6bとハウジング2の第1当接部7との間で密着高さに近い状態まで圧縮される。
【0064】
このように、出力部材6が動けないような場合であっても、モータ3が空転してその回転がロックしてしまうことがなく、モータ3の破損が免れる。又、そのような場合であっても、出力部材6に圧縮ばね5による付勢力(ばね力)が加わり続けるため、可動部材20を押し込めば障害物が除去されると同時に圧縮ばね5の付勢力によってロック部材9を固定部材30の凹部30aに突出させ、
図10(a)に示す施錠状態に復帰させることができる。
【0065】
半開きで施錠できない状態においても、モータ3の作動後に可動部材20を押し込めば施錠することができる事例を説明したが、同様に、
図10(a)の施錠状態においてロック部材9と凹部30aとが圧接しており、解錠できないような状態であっても、モータ3を作動させると、
図8に示す状態で、圧縮ばね3のみが移動して、円孔6aと第2当接部8との間で圧縮ばね5が密着高さに近い状態で圧縮され、出力部材6には圧縮ばね5による付勢力(ばね力)が加わり続けるため、可動部材20を押し込み、障害物であるロック部材9と固定部材30の凹部30a間の圧接力が除去されると同時に圧縮ばね5の付勢力によってロック部材9を固定部材30の凹部30aから脱出させ、
図10(b)に示す解錠状態に復帰させることができるため、使用者にとって利便性の高い作動装置を提供することができる。
【0066】
而して、本例に示したように、モータ3の出力軸3aの回転を減速機構10を介して軸部材4に伝達する構成を採用することによって、出力部材6に大きなストロークを確保したり、大きな駆動力を得ることができる。又、減速機構10を用いることによって当該作動装置1のレイアウトの自由度を高めることができるという効果も得られる。
【0067】
尚、何れの実施形態における作動装置も、例えばホテル用電気錠等の錠装置に出力部材6を連結して錠機構を作動させるアクチュエータとして使用することができる。又、減速機構を採用することによって、スペース的に制約のある引き出し等の錠機構にも採用することができる。
【0068】
更に、本例では、本発明に係る作動装置を電気錠のアクチュエータとして使用した場合について説明したが、本発明に係る作動装置は、電気錠以外の任意の機器のアクチュエータとして利用可能であることは勿論である。