特許第6640678号(P6640678)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640678
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】エレベーターの釣合おもり枠
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/00 20060101AFI20200127BHJP
【FI】
   B66B11/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-163403(P2016-163403)
(22)【出願日】2016年8月24日
(65)【公開番号】特開2018-30675(P2018-30675A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2018年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄司 尚史
(72)【発明者】
【氏名】石井 英明
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−054471(JP,U)
【文献】 特開2004−189366(JP,A)
【文献】 特開昭52−027147(JP,A)
【文献】 実開昭58−007766(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たて枠上部と、たて枠下部とが分離可能なエレベーターの釣合おもり枠において、
前記エレベーターの釣合おもり枠に積載されるおもりは、端部が突出して形成されており、
前記たて枠上部及び前記たて枠下部は、前記おもりの端部を遊嵌し、
前記たて枠上部の内周側は、凹部形状を有しており、
前記たて枠下部の外周側は、凸部形状を有しており、
前記たて枠上部の凹部形状は、前記たて枠下部の凸部形状とスライド可能に係合し、前記たて枠上部を軸方向にガイドし、
前記たて枠上部と前記たて枠下部とが係合する部分には固定穴が形成され、
前記固定穴を連結ボルトで固定することで前記たて枠上部及び前記たて枠下部を固定し、
前記連結ボルトと別でストッパボルトを設け、該ストッパボルト用の穴は、前記連結ボルト用の前記固定穴よりも大きく形成されており、前記連結ボルトが前記たて枠下部及び前記おもりを支えている間は、前記ストッパボルト用の穴は消耗せず、前記連結ボルトが緩んで前記たて枠下部及び前記おもりが脱落しそうになった場合には前記ストッパボルトが荷重を支えるようになっている、
ことを特徴とするエレベーターの釣合おもり枠。
【請求項2】
前記エレベーターの釣合おもり枠は、
前記おもりを固定するためのおもり用ボルトを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベーターの釣合おもり枠。
【請求項3】
前記エレベーターの釣合おもり枠は、
前記おもりを貫通し、前記たて枠上部が軸方向のスライド移動をした際の前記エレベーターの釣合おもり枠の垂直方向の長さに適合する連結棒を備え、
前記たて枠上部及び前記たて枠下部は、
前記連結棒を前記たて枠上部及び前記たて枠下部に固定させるための連結金具を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベーターの釣合おもり枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの釣合おもり枠に関し、特にエレベーターの釣合おもり枠のたて枠を上たて枠と下たて枠とに分離可能なエレベーターの釣合おもり枠に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エレベーターの釣合おもり枠のたて枠を上たて枠と、下たて枠とに分離した状態で据付現場に運搬可能なエレベーターの釣合おもり枠が開示されている。具体的には、上たて枠と下たて枠とを連結するつなぎ板と、上たて枠又は下たて枠のうちの何れか一方に固定されるブロックとを備えるエレベーターの釣合おもり枠が開示されている。このエレベーターの釣合おもり枠によれば、ブロックにより予め調整された位置で上たて枠と、下たて枠とを接続させることができる。これにより高精度な組み立て作業を容易に行うことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−331877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで通常、エレベーターの釣合おもり枠のたて枠の高さは建物の計画段階で決定される。一方で昇降路の寸法は、計画通りに確保されない場合がある。よってこの場合、エレベーターの釣合おもり枠のたて枠の高さを実際の昇降路の寸法に合わせて再度作製し直す必要が生じるという問題があった。
【0005】
特許文献1に記載のエレベーターの釣合おもり枠においても同様の課題がある。すなわちたて枠の高さ寸法をブロックにより予め高精度に調整していたとしても、実際の昇降路の寸法が当初予定していた寸法とは異なる場合、たて枠を再度調整して作製し直す必要が生じるという問題があった。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、実際の昇降路に適した寸法のたて枠を容易に作製し得るエレベーターの釣合おもり枠を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、たて枠上部と、たて枠下部とが分離可能なエレベーターの釣合おもり枠において、エレベーターの釣合おもり枠に積載されるおもりは、端部が突出して形成されており、たて枠上部及びたて枠下部は、おもりの端部を遊嵌し、たて枠上部の内周側は、凹部形状を有しており、たて枠下部の外周側は、凸部形状を有しており、たて枠上部の凹部形状は、たて枠下部の凸部形状とスライド可能に係合し、たて枠上部を軸方向にガイドし、たて枠上部とたて枠下部とが係合する部分には固定穴が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実際の昇降路に適した寸法のたて枠を容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】エレベーターの釣合おもり枠の正面図である。
図2】エレベーターの釣合おもり枠の側面図である。
図3図1のA−A線に沿う断面図である。
図4】他のエレベーターの釣合おもり枠の正面図である。
図5】他のエレベーターの釣合おもり枠の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)本実施の形態
図1は、エレベーターの釣合おもり枠1の全体構成を示す。エレベーターの釣合おもり枠1は、上枠2と、たて枠上部3と、たて枠下部4と、下枠5と、中間つなぎ6と、連結ボルト7とガイド装置9とから構成される。
【0011】
エレベーターの釣合おもり枠1は、このエレベーターの釣合おもり枠1内に着脱可能な複数枚のおもり8を積載し、図示しないエレベーターの釣合おもり枠用ガイドレールに沿って上下に移動する部材である。たて枠上部3及びたて枠下部4には、スライド機構10が設けられている。そして、据付時には、たて枠上部3を図1に示す矢印Xの方向にスライドさせ、たて枠上部3とたて枠下部4とを連結ボルト7で固定することにより実際の昇降路寸法に合わせてエレベーターの釣合おもり枠1を構成する。
【0012】
中間つなぎ6は、たて枠上部3及びたて枠下部4が撓まないように固定する耐震用の部材である。ガイド装置9は、エレベーターの釣合おもり枠1の両脇にある図示しないガイドレールを掴みながらガイドレールに沿ってエレベーターの釣合おもり枠1を上下動させるための装置である。おもり用ボルト11は、エレベーターの釣合おもり枠1内に積載したおもり8が外れないように固定するための耐震用の部材である。
【0013】
図2は、エレベーターの釣合おもり枠1の側面図を示す。図2に示すように、たて枠上部3及びたて枠下部4の係合部分には、スライド用の固定穴20が形成されている。そして、たて枠上部3をスライドさせ、位置を決定した後、スライド用の固定穴20を連結ボルト7で固定することでたて枠上部3及びたて枠下部4を固定する。
【0014】
図3は、図1のA−A線に沿う断面図を示す。スライド機構10は、たて枠上部3を図1に示す矢印X方向(軸方向)にスライド可能にガイドするように形成されており、例えば、たて枠上部3の内周面は、凹部形状が形成している。そして、たて枠下部4の外周面は、凸部形状を形成しており、たて枠上部3の凹部形状とたて枠下部4の凸部形状とが係合してたて枠上部3を軸方向にスライド可能にガイドするように形成されている。
【0015】
このようなスライド機構10を設けることによって、例えば昇降路寸法が大きい場合は、たて枠上部3をスライドさせることでエレベーターの釣合おもり枠1の縦方向の長さを大きくすることができる。これにより、エレベーターの釣合おもり枠1のおもり8の積載量を増やすことが可能となり、比重の軽い低コストのおもり8を積載することが可能となる。また、エレベーターの釣合おもり枠1の縦方向の長さを伸ばした場合は、ガイド装置9の上下間隔も大きくすることができ、これにより図示しないエレベーターの釣合おもり枠用ガイドレールのブラケットの間隔を大きくすることが可能となる。
【0016】
また、昇降路寸法が小さい場合は、たて枠上部3をスライドさせることでエレベーターの釣合おもり枠1を縦方向で縮めて使用することで、従来のようにエレベーターの釣合おもり枠1を再製作することなく使用することが可能となる。
【0017】
また、エレベーターの釣合おもり枠1に積載されるおもり8は、図3に示すように、幅方向の端部が突出して形成されている。そして、たて枠上部3及びたて枠下部4は、おもり8の端部を遊嵌するように形成されている。
【0018】
なお、たて枠上部3は、あらかじめ、製作工場でたて枠下部4を覆うように上から被せて作成される。そして、エレベーターの釣合おもり枠1は据付現場まで運搬され、図3に示すように、たて枠上部3をスライドさせることによってたて枠上部3とたて枠下部4との位置調整を行ってから連結ボルト7で固定し、エレベーターの釣合おもり枠1は完成される。
【0019】
(2)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態のエレベーターの釣合おもり枠1では、たて枠上部3及びたて枠下部4にスライド機構10を形成するようにしたので、実際の昇降路に適したエレベーターの釣合おもり枠1の高さを構成することができる。
【0020】
(3)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、たて枠下部4及びおもり8の脱落を防止する機構を設けない場合について述べたが、本発明はこれに限らず、たて枠下部4及びおもり8の脱落を防止する機構を設けてもよい。図4は、他の実施の形態におけるエレベーターの釣合おもり枠30の全体構成を示す。エレベーターの釣合おもり枠30は、おもり用ボルト11の代わりに、連結棒31及び連結金具32が追加されている点で、エレベーターの釣合おもり枠1と異なる。連結棒31は、エレベーターの釣合おもり枠30の垂直方向の長さに適合する長さで、おもり8に貫通することでおもり8をエレベーターの釣合おもり枠30に固定させている。連結金具32は、エレベーターの釣合おもり枠30に連結棒31を固定するための部材で、エレベーターの釣合おもり枠30に溶接形成されている。連結棒31は、エレベーターの釣合おもり枠30の垂直方向の伸縮に伴い伸び縮みするようにしてもよい。
【0021】
図5は、エレベーターの釣合おもり枠30の側面図を示す。図5に示すように、たて枠上部3及びたて枠下部4に連結金具32が取り付けられている。そして、この連結金具32が連結棒31の両端を固定することで、たて枠上部3とたて枠下部4とが固定され、たて枠下部4の落下を防止することができる。
【0022】
以上のように他の実施の形態によれば、エレベーターの釣合おもり枠30に連結棒31及び連結金具32を取り付けるようにしたので、実際の昇降路に適したエレベーターの釣合おもり枠30の高さを構成させることができるとともに、おもり8及びたて枠下部4の落下を防ぐことができる。
【0023】
また、エレベーターの釣合おもり枠1及び30には連結ボルト7と別でストッパボルトを設けるようにしてもよい。具体的には、ストッパボルト用の穴は、連結ボルト7用の穴(スライド用の固定穴20)よりも大きく形成される。これにより、連結ボルト7がたて枠下部4及びおもり8を支えている間は、ストッパボルト用の穴は、消耗しない。そして、連結ボルト7に異常が発生してボルトが緩んで、たて枠下部4及びおもり8が脱落しそうになった場合には、ストッパボルトが荷重を支えることができる。
【符号の説明】
【0024】
1、30……エレベーターの釣合おもり枠、2……上枠、3……たて枠上部、4……たて枠下部、5……下枠、6……中間つなぎ、7……連結ボルト、8……おもり、9……ガイド装置、10……スライド機構、11……おもり用ボルト、20……スライド用の固定穴、31……連結棒、32……連結金具。

図1
図2
図3
図4
図5