特許第6640688号(P6640688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6640688
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】無線通信装置および無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/34 20060101AFI20200127BHJP
   H03F 3/217 20060101ALI20200127BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20200127BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   H03F3/34 210
   H03F3/217
   H03F3/24
   H04B1/04 R
   H04B1/04 D
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-180773(P2016-180773)
(22)【出願日】2016年9月15日
(65)【公開番号】特開2018-46460(P2018-46460A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】王 トウ
【審査官】 及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−124308(JP,A)
【文献】 特開2016−092734(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0139103(US,A1)
【文献】 特開2008−104235(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/021178(WO,A1)
【文献】 特開2016−058773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00−3/72
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を発生する信号発生部と、
インバータを構成する第1および第2トランジスタを有し、前記信号発生部からの信号から直流成分が除去されて得られた第1信号を前記第1トランジスタに供給し、前記信号発生部からの信号から直流成分が除去されて得られた第2信号を前記第2トランジスタに供給し、前記第1トランジスタから出力された第1電流と、前記第2トランジスタから出力された第2電流とに基づいて、出力信号を生成する電力増幅器と、
前記出力信号の高周波成分を除去するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路を通過した前記出力信号を利用して、前記出力信号の直流成分を検出する検出回路と、
前記信号発生部からの信号から直流成分が除去されて得られた前記第1信号に第1バイアス電圧を印加し、前記信号発生部からの信号から直流成分が除去されて得られた前記第2信号に第2バイアス電圧を印加するバイアス印加部であって、前記検出回路により検出された前記直流成分に基づいて前記第1および第2バイアス電圧を制御し、前記第1バイアス電圧を制御することで前記第1信号のデューティ比を調整し、前記第2バイアス電圧を制御することで前記第2信号のデューティ比を調整するバイアス印加部と
を備え
前記電力増幅器は、前記第1バイアス電圧が印加された前記第1信号を前記第1トランジスタに供給し、前記第2バイアス電圧が印加された前記第2信号を前記第2トランジスタに供給する、無線通信装置。
【請求項2】
前記出力信号をアンテナに供給するマッチング回路をさらに備え、
前記検出回路は、前記マッチング回路および前記フィルタ回路を通過した前記出力信号から前記直流成分を検出する、
請求項に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記出力信号をアンテナに供給するマッチング回路をさらに備え、
前記マッチング回路は、第1電力増幅器から出力された前記出力信号を前記アンテナに供給し、
前記検出回路は、前記第1電力増幅器と異なる第2電力増幅器から出力されて前記フィルタ回路を通過した前記出力信号から前記直流成分を検出する、
請求項に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記バイアス印加部は、
前記第1信号が正弦波である第1ノードで前記第1信号に前記第1バイアス電圧を印加することで、前記第1信号の平均値を変化させ、
前記第2信号が正弦波である第2ノードで前記第2信号に前記第2バイアス電圧を印加することで、前記第2信号の平均値を変化させ、
前記第1信号は、前記第1ノードから前記第1トランジスタに伝播する間に、前記正弦波から、前記第1バイアス電圧に応じたデューティ比を有する矩形波に変化し、
前記第2信号は、前記第2ノードから前記第2トランジスタに伝播する間に、前記正弦波から、前記第2バイアス電圧に応じたデューティ比を有する矩形波に変化する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記信号発生部からの信号から直流成分を除去する第1コンデンサと、
前記信号発生部からの信号から直流成分を除去する第2コンデンサとをさらに備え、
前記バイアス印加部は、
前記信号発生部からの信号から前記第1コンデンサにより直流成分が除去されて得られた前記第1信号に、前記第1バイアス電圧を、抵抗を介して前記第1ノードで印加し、
前記信号発生部からの信号から前記第2コンデンサにより直流成分が除去されて得られた前記第2信号に、前記第2バイアス電圧を、抵抗を介して前記第2ノードで印加し、
前記電力増幅器は、
前記信号発生部からの信号から前記第1コンデンサにより直流成分が除去されて得られた前記第1信号を、前記第1ノードを介して前記第1トランジスタに供給し、
前記信号発生部からの信号から前記第2コンデンサにより直流成分が除去されて得られた前記第2信号が、前記第2ノードを介して前記第2トランジスタに供給する、
請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記検出回路は、
前記フィルタ回路を通過した前記出力信号である第1電圧と第2電圧とを比較し、
前記第1電圧が前記第2電圧よりも大きい場合には第1値を示し、前記第1電圧が前記第2電圧よりも小さい場合には第2値を示す信号を、前記出力信号の前記直流成分の検出結果として出力する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
信号発生部から信号を発生し、
インバータを構成する第1および第2トランジスタを有する電力増幅器において、前記信号発生部からの信号から直流成分が除去されて得られた第1信号を前記第1トランジスタに供給し、前記信号発生部からの信号から直流成分が除去されて得られた第2信号を前記第2トランジスタに供給し、前記第1トランジスタから出力された第1電流と、前記第2トランジスタから出力された第2電流とに基づいて、出力信号を生成し、
前記出力信号の高周波成分をフィルタ回路により除去し、
検出回路が、前記フィルタ回路を通過した前記出力信号を利用して、前記出力信号の直流成分を検出し、
前記信号発生部からの信号から直流成分が除去されて得られた前記第1信号に第1バイアス電圧を印加し、前記信号発生部からの信号から直流成分が除去されて得られた前記第2信号に第2バイアス電圧を印加するバイアス印加部が、前記検出回路により検出された前記直流成分に基づいて前記第1および第2バイアス電圧を制御し、前記第1バイアス電圧を制御することで前記第1信号のデューティ比を調整し、前記第2バイアス電圧を制御することで前記第2信号のデューティ比を調整する
ことを含み、
前記電力増幅器は、前記第1バイアス電圧が印加された前記第1信号を前記第1トランジスタに供給し、前記第2バイアス電圧が印加された前記第2信号を前記第2トランジスタに供給する、無線通信方法。
【請求項8】
さらに、前記第1および第2バイアス電圧に基づいて生成された前記出力信号を、前記電力増幅器からアンテナに供給することを含む、請求項7に記載の無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線通信装置および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置の電力増幅器をインバータにより構成する場合、インバータ内のpMOSに供給する信号のデューティ比と、インバータ内のnMOSに供給する信号のデューティ比とをそろえることが望ましい。理由は、これらの信号のデューティ比がそろっていないと、電力増幅器から出力される出力信号の波形の対称性が悪くなり、出力信号に含まれる偶数次の高調波成分が増加するからである。そのため、デューティ比の制御により出力信号の波形を所望の波形に調整することが求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. Fritzin et al. “Design and Analysis of a Class-D Stage With Harmonic Suppression” IEEE Transactions on Circuits and Systems, Vol. 59, No. 6, June 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信の出力信号の波形を所望の波形に調整可能な無線通信装置および無線通信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態によれば、無線通信装置は、信号を発生する信号発生部を備える。前記装置はさらに、インバータを構成する第1および第2トランジスタを有し、前記信号発生部からの信号から得られた第1信号を前記第1トランジスタに供給し、前記信号発生部からの信号から得られた第2信号を前記第2トランジスタに供給し、前記第1トランジスタから出力された第1電流と、前記第2トランジスタから出力された第2電流とに基づいて、出力信号を生成する電力増幅器を備える。前記装置はさらに、前記出力信号の高周波成分を除去するフィルタ回路を備える。前記装置はさらに、前記フィルタ回路を通過した前記出力信号の直流成分に基づいて、前記第1および第2信号にそれぞれ第1および第2バイアス電圧を印加するバイアス印加部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の無線通信装置の構成を示す回路図である。
図2】第1実施形態の無線通信装置の動作を説明するための波形図である。
図3】第1実施形態の無線通信装置の動作を説明するための別の波形図である。
図4】第1実施形態の検出回路の構成例を示す回路図である。
図5】第1実施形態の検出回路の動作を説明するための波形図である。
図6】第1実施形態の無線通信装置の性能について説明するためのグラフである。
図7】第1実施形態の無線通信装置の性能について説明するためのグラフである。
図8】第2実施形態の無線通信装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の無線通信装置の構成を示す回路図である。
【0009】
図1の無線通信装置は、信号発生部1と、インバータ2と、バイアス印加部3と、マッチング回路4と、アンテナ5と、フィルタ回路6と、検出回路7とを備えている。バイアス印加部3は、第1可変抵抗3a、第2可変抵抗3b、および第3可変抵抗3cを有している。フィルタ回路6は、電気抵抗6aおよびコンデンサ6bを有している。
【0010】
図1の無線通信装置はさらに、第1コンデンサ11と、第2コンデンサ12と、第1インバータ13と、第2インバータ14と、互いに並列に接続された複数の電力増幅器15とを備えている。各電力増幅器15は、第3インバータ15a、第4インバータ15b、第1トランジスタ15c、および第2トランジスタ15dを有している。
【0011】
本実施形態の無線通信装置は、例えばBluetooth(登録商標)規格に準拠した無線送信を行う。図1は、本実施形態の無線送信の説明に関連する構成要素を示しており、本実施形態の説明に関連しない既知の構成要素については図示を省略している。なお、アンテナ5は、本実施形態の無線通信装置の外部の構成要素であっても構わない。
【0012】
信号発生部1は、信号を発生する回路であり、例えばシンセサイザやDCO(Digitally Controlled Oscillator)である。図1では、この信号が符号Vで示されている。本実施形態の信号発生部1は、信号Vとして正弦波を発生するが、信号Vが下流に伝播するにつれて、信号Vの波形はインバータ2、13、14等の影響で矩形波に近付いていく。
【0013】
信号発生部1から発生した信号Vは、インバータ2を通過した後、ノードKで、第1コンデンサ11に供給される第1信号と、第2コンデンサ12に供給される第2信号とに分かれる。第1および第2コンデンサ11、12はそれぞれ、第1および第2信号の直流成分(DC成分)を除去する。
【0014】
第1コンデンサ11を通過した第1信号は、第1および第3インバータ13、15aを通過した後、第1トランジスタ15cのゲート端子に供給される。また、第2コンデンサ12を通過した第2信号は、第2および第4インバータ14、15bを通過した後、第2トランジスタ15dのゲート端子に供給される。第1および第2トランジスタ15c、15dは、それぞれpMOSとnMOSであり、インバータを構成している。第1トランジスタ15cと第2トランジスタ15dは、電源配線(VDD配線)とグランド配線(GND配線)との間で直列に接続されている。
【0015】
なお、図1に示す複数の電力増幅器15は、各電力増幅器15を取り囲む枠線の位置で互いに並列に接続されている。すなわち、これらの電力増幅器15に信号を入力する配線は、第3インバータ13と電力増幅器15との間のノードや、第4インバータ14と電力増幅器15との間のノードで分岐している。また、これらの電力増幅器15から信号を出力する配線は、電力増幅器15とマッチング回路4との間のノードで合流している。
【0016】
ここで、バイアス印加部3は、第1コンデンサ11と第1インバータ13との間のノードKで、第1信号に第1バイアス電圧を印加する。図1では、第1バイアス電圧が印加された直後の第1信号が符号V2Pで示され、第1インバータ13を通過後の第1信号が符号V3Pで示され、第3インバータ15aを通過後の第1信号が符号V4Pで示されている。
【0017】
同様に、バイアス印加部3は、第2コンデンサ12と第2インバータ14との間のノードKで、第2信号に第2バイアス電圧を印加する。図1では、第2バイアス電圧が印加された直後の第2信号が符号V2Nで示され、第2インバータ14を通過後の第2信号が符号V3Nで示され、第4インバータ15bを通過後の第2信号が符号V4Nで示されている。
【0018】
本実施形態のバイアス印加部3は、VDD配線とGND配線との間に直列に接続された第1から第3可変抵抗3a〜3cを有している。バイアス印加部3は、第1から第3可変抵抗3a〜3cの抵抗値を変化させることで、第1および第2バイアス電圧の値を独立に制御することができる。そして、バイアス印加部3は、第1バイアス電圧を制御することで第1信号のデューティ比を調整することができ、第2バイアス電圧を制御することで第2信号のデューティ比を調整することができる。
【0019】
なお、本実施形態のバイアス印加部3は、第1から第3可変抵抗3a〜3cにより構成されているが、第1および第2信号のデューティ比を調整可能であればその他の構成を有していてもよい。
【0020】
第1トランジスタ15cに第1信号V4Pが供給されると、第1トランジスタ15cから第1電流I1Pが出力される。また、第2トランジスタ15dに第2信号V4Nが供給されると、第2トランジスタ15dから第2電流I1Nが出力される。その結果、第1トランジスタ15cと第2トランジスタ15dとの間のノードKからマッチング回路5に出力信号Vが出力される。第1および第2電流I1P、I1Nはそれぞれ、第1および第2トランジスタ15c、15dのドレイン電流に相当する。出力信号Vは、ノードKの電圧に相当し、第1電流I1Pと第2電流I1Nとに基づいて各電力増幅器15内で生成され、ノードKからマッチング回路5に出力される。
【0021】
マッチング回路4は、電力増幅器15とアンテナ5との間にインピーダンスマッチング用に設けられている。電力増幅器15から出力された出力信号Vは、マッチング回路4を通過してアンテナ5に供給され、アンテナ5から外部に送信されることになる。
【0022】
マッチング回路4を通過した出力信号Vは、フィルタ回路6を介して検出回路7にも供給される。フィルタ回路6は、電気抵抗6aとコンデンサ6bにより構成されたローパスフィルタであり、出力信号Vの高周波成分を除去する。高周波成分が除去された出力信号Vは、検出回路7用の検出信号VDETとして出力される。なお、フィルタ回路6は、出力信号Vの高周波成分を除去可能であれば、その他の構成を有していてもよい。
【0023】
検出回路7は、電力増幅器15から出力された出力信号Vの直流成分を検出する回路であり、具体的には、出力信号Vの直流成分を検出信号VDETを利用して検出する。本実施形態のフィルタ回路6は、出力信号Vのおおむね全ての交流成分を除去するため、検出信号VDETはほぼ出力信号Vの直流成分に相当する。よって、検出回路7は、検出信号VDETの値から出力信号Vの直流成分の値を検出することができる。
【0024】
検出回路7は、出力信号Vの直流成分の検出結果に対応する制御信号VOUTをバイアス印加部3に出力する。そして、バイアス印加部3は、制御信号VOUTに基づいて第1および第2バイアス電圧を制御し、これにより第1および第2信号のデューティ比を調整する。その結果、出力信号Vの波形が変化し、この出力信号Vがマッチング回路4、アンテナ5、フィルタ回路6、および検出回路7に供給される。
【0025】
このように、本実施形態の無線通信装置は、出力信号Vの直流成分を検出回路7により検出し、検出回路7の検出結果に基づいて出力信号Vの波形を変化させる。これにより、出力信号Vの波形を所望の波形に調整することができる。具体的には、本実施形態の無線通信装置は、出力信号Vの直流成分の値をVDD/2に近づけ、出力信号Vの波形の対称性を向上させるように動作する。ここで、VDDは、GND配線の電位を0としたときのVDD配線の電位を表す。以下、本実施形態の無線通信装置の動作について詳細に説明する。
【0026】
図2は、第1実施形態の無線通信装置の動作を説明するための波形図である。
【0027】
図2(a)は、デューティ比を調整される前の第1信号V4Pと、デューティ比を調整された後の第1信号V4Pの一例を示している。デューティ比が調整される前の第1信号V4Pでは、デューティ比が50%に設定されている(図2(a)左)。一方、デューティ比が調整された後の第1信号V4Pでは、デューティ比が50%から変化し、第1信号V4Pがハイの期間が第1信号V4Pがローの期間よりも長くなっている(図2(b)右)。
【0028】
図2(b)は、デューティ比を調整される前の第2信号V4Nと、デューティ比を調整された後の第2信号V4Nの一例を示している。デューティ比が調整される前の第2信号V4Nでは、デューティ比が50%に設定されている(図2(b)左)。一方、デューティ比が調整された後の第2信号V4Nでは、デューティ比が50%から変化し、第2信号V4Nがハイの期間が第2信号V4Nがローの期間よりも短くなっている(図2(b)右)。
【0029】
なお、第2信号V4Nのハイ期間とロー期間はそれぞれ、第1信号V4Pのロー期間とハイ期間と同じ長さになるように調整されている。別言すると、第2信号V4Nのデューティ比が、第1信号V4Pのデューティ比とそろうように調整されている。
【0030】
図2(c)は、デューティ比を調整される前の第1電流I1Pと、デューティ比を調整された後の第1電流I1Pの一例を示している。第1信号V4P図2(a)のように変化することで、第1電流I1Pのパルス幅が短くなっている。
【0031】
図2(d)は、デューティ比を調整される前の第2電流I1Nと、デューティ比を調整された後の第2電流I1Nの一例を示している。第2信号V4N図2(b)のように変化することで、第2電流I1Nのパルス幅が短くなっている。
【0032】
図2(e)は、デューティ比を調整される前の出力信号Vと、デューティ比を調整された後の出力信号Vの一例を示している。デューティ比が調整される前には、出力信号Vは矩形波の波形を有している。よって、出力信号Vの各パルスは長方形の波形を有している。一方、デューティ比が調整された後には、第1および第2電流I1P、I1Nのパルス幅が短くなることで、出力信号Vの各パルスの波形が長方形から台形に変化している。
【0033】
その結果、ノードKにおける電圧(出力信号V)と電流(第1電流I1Pと第2電流I1Nとの和)との重なり部分が少なくなる。これにより、本実施形態における無線通信のエネルギー効率が向上される。
【0034】
なお、アンテナ5に出力される信号に含まれる高調波成分を抑えるためには、出力信号Vの波形を対称にすることが望ましい。これは、上述のように、第2信号V4Nのハイ期間とロー期間をそれぞれ、第1信号V4Pのロー期間とハイ期間と同じ長さに設定することで実現可能である。
【0035】
図3は、第1実施形態の無線通信装置の動作を説明するための別の波形図である。図3は、バイアス印加部3によるバイアスの印加とデューティ比の調整との関係を示したものである。
【0036】
図3(a)は、信号発生部1から発生した信号Vの一例を示している。この信号Vは、電圧0と電圧VDDとの間で変動する正弦波である。以下、この信号Vから生じる第1電圧や第1電流について説明する。
【0037】
図3(b)は、第1バイアス電圧が印加された直後の第1信号V2Pを示している。第1信号V2Pの振動方向は、インバータ2の作用により、信号Vの振動方向と反転している。また、第1信号V2Pの平均値は、第1バイアス電圧の影響により、第1インバータ13の閾値VTHよりもVだけ高くなっている。さらに、図3(b)は、第1信号V2Pの値が閾値VTHよりも低い期間Tと、第1信号V2Pの値が閾値VTHよりも高い期間Tとを示している。
【0038】
図3(c)は、第1インバータ13を通過後の第1信号V3Pを示している。第1信号V3Pの波形は、上述の閾値VTHの影響により、ハイ期間Tがロー期間Tよりも短い矩形波となる。なお、正確には、第1信号は下流に伝播するにつれて徐々に正弦波から矩形波に変化していくが、ここでは作図の便宜上、第1信号V2Pを正弦波で示し、第1信号V3Pを矩形波で示している。
【0039】
図3(d)は、第3インバータ15aを通過後の第1信号V4Pを示している。第3インバータ15aの作用により、第1信号V4Pの波形は、ロー期間Tがハイ期間Tよりも短い矩形波となる。
【0040】
図3(e)は、第1トランジスタ15cから出力された第1電流I1Pを示している。第1信号V4Pのロー期間Tの影響により、第1電流I1Pのパルス幅はTになる。
【0041】
このように、第1信号V4Pのデューティ比は第1バイアス電圧に応じて変化し、これにより第1電流I1Pのパルス幅が変化する。これは、第1電流I1Pでも同様である。すなわち、第2信号V4Nのデューティ比は第2バイアス電圧に応じて変化し、これにより第2電流I1Nのパルス幅が変化する。その結果、図2(e)に示すように、出力信号Vの波形を正弦波に近付けることができる。
【0042】
次に、本実施形態の検出回路7の構成や動作について説明する。
【0043】
図4は、第1実施形態の検出回路7の構成例を示す回路図である。図4に示す検出回路7は、第1可変抵抗7aと、第2可変抵抗7bと、比較器7cとを有している。
【0044】
第1および第2可変抵抗7a、7bは、VDD配線とGND配線との間に直列に接続されており、電圧VDD/2を出力するために使用される。比較器7cは、フィルタ回路6から検出信号VDETが入力される第1入力端子と、電圧VDD/2が入力される第2入力端子とを有している。
【0045】
そして、比較器7cは、VDETとVDD/2との比較結果を示す制御信号VOUTを出力端子から出力する。制御信号VOUTは例えば、VDETがVDD/2以上のときにハイとなり、VDETがVDD/2未満のときにローとなる2値信号である。
【0046】
バイアス印加部3は、制御信号VOUTがハイのときには、出力信号Vの直流成分を減少させるように第1および第2バイアス電圧を調整する。一方、バイアス印加部3は、制御信号VOUTがローのときには、出力信号Vの直流成分を増加させるように第1および第2バイアス電圧を調整する。その結果、出力信号Vの直流成分の値はVDD/2に近付いていく。
【0047】
図5は、第1実施形態の検出回路7の動作を説明するための波形図である。
【0048】
図5(a)左は、出力信号Vの一例を示している。この出力信号Vの波形は、正弦波に近く、ほぼ上下対称である。よって、この場合の検出信号VDETの値は、ほぼVDD/2となる(図5(a)右)。
【0049】
図5(b)左は、出力信号Vの別の一例を示している。この出力信号Vの波形は、正弦波から遠く、上下非対称である。よって、この場合の検出信号VDETの値は、VDD/2からずれる(図5(b)右)。
【0050】
このような上下非対称な出力信号Vは、第1信号V4Pのデューティ比と第2信号V4Nのデューティ比がそろっていない場合に発生し、偶数次の高調波成分を多く含んでいる。そこで、本実施形態の検出回路7は、このような非対称性を検出信号VDETを利用して検出し、その検出結果を示す制御信号VOUTをバイアス印加部3に出力する。これにより、出力信号Vの波形の対称性を向上させ、出力信号Vに含まれる偶数次の高調波成分を減少させることができる。
【0051】
図6は、第1実施形態の無線通信装置の性能について説明するためのグラフである。
【0052】
曲線C1は、本実施形態の電力増幅器15において、図2のようにデューティ比を調整した場合の消費電流を示す。曲線C2は、本実施形態の電力増幅器15において、図2のようにデューティ比を調整しなかった場合の消費電流を示す。曲線C3は、本実施形態の電力増幅器15をnMOS型の電力増幅器に置き換えた場合において、図2のようにデューティ比を調整した場合の消費電流を示す。これらは、シミュレーションにより得られた結果を示している。図6の横軸は、出力信号Vのパワーを表す。
【0053】
曲線C1、C2の比較から、本実施形態のデューティ比調整は消費電流を低減させる効果があることが分かる。さらに、曲線C1、C3の比較から、本実施形態のデューティ比調整は本実施形態の電力増幅器15に適していることが分かる。
【0054】
図7も、第1実施形態の無線通信装置の性能について説明するためのグラフである。
【0055】
図7(a)の横軸は、第1信号V4Pのパルス幅(下側パルス幅)を表す。なお、第2信号V4Nのパルス幅(上側パルス幅)は固定とする。また、図7(a)の縦軸は、出力信号Vに含まれる2次高調波のパワーと、VDET−VDD/2の値とを示している。符号W、W、Wは3種類のパルス幅を示している。図7(a)は、下側パルス幅がWのときに、2次高調波成分が減少し、VDETがVDD/2に近付くことを示している。
【0056】
図7(b)は、下側パルス幅がW、W、Wのときの出力信号Vを示している。図7(b)によれば、下側パルス幅がWのときの出力信号Vの波形は、上下対称形に近いことが分かる。
【0057】
以上のように、本実施形態のバイアス印加部3は、出力信号Vの直流成分に基づいて第1および第2信号にバイアスを印加する。よって、本実施形態によれば、第1および第2信号のデューティ比をバイアスにより調整し、出力信号Vの波形を所望の波形に調整することが可能となる。本実施形態によれば、出力信号Vの波形の対称性を向上させ、アンテナ5に出力される偶数次の高調波成分を減少させることが可能となる。
【0058】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の無線通信装置の構成を示す回路図である。
【0059】
図8の無線通信装置は、図1に示す構成要素に加えて、第1コンデンサ21と、第2コンデンサ22と、第1インバータ23と、第2インバータ24と、電力増幅器25とを備えている。電力増幅器25は、第3インバータ25a、第4インバータ25b、第1トランジスタ25c、および第2トランジスタ25dを有している。第1コンデンサ21、第2コンデンサ22、第1インバータ23、第2インバータ24、電力増幅器25はそれぞれ、第1コンデンサ11、第2コンデンサ12、第1インバータ13、第2インバータ14、電力増幅器15と同じ構成や機能を有している。
【0060】
図8の無線通信装置は、図1の無線通信装置の無線送信機能と直流成分検出機能とを分離した構成を有しており、具体的には、無線送信用の第1回路10と、直流成分検出用の第2回路20とを備えている。第2回路20は、第1回路10のレプリカに相当する。
【0061】
第1回路10は、第1コンデンサ11と、第2コンデンサ12と、第1インバータ13と、第2インバータ14と、第1電力増幅器の例である複数の電力増幅器15と、マッチング回路4と、アンテナ5とを備えている。これらの構成要素の構成や機能は、第1実施形態の場合と同様である。
【0062】
第2回路20は、第1コンデンサ21と、第2コンデンサ22と、第1インバータ23と、第2インバータ24と、第2電力増幅器の例である電力増幅器25と、フィルタ回路6と、検出回路7とを備えている。
【0063】
信号発生部1は、信号V、Vを発生する。信号Vと信号Vは、同じ波形の信号である。信号発生部1から発生した信号Vは、インバータ2を通過した後、ノードKで、第1コンデンサ21に供給される第1信号と、第2コンデンサ22に供給される第2信号とに分かれる。
【0064】
第1コンデンサ21を通過した第1信号は、第1および第3インバータ23、25aを通過した後、第1トランジスタ25cのゲート端子に供給される。また、第2コンデンサ22を通過した第2信号は、第2および第4インバータ24、25bを通過した後、第2トランジスタ25dのゲート端子に供給される。第1および第2トランジスタ25c、25dは、それぞれpMOSとnMOSであり、インバータを構成している。
【0065】
ここで、バイアス印加部3は、第1コンデンサ21と第1インバータ23との間のノードKで、第1信号に第1バイアス電圧を印加する。第1バイアス電圧は、ノードKに供給されるものと同じものである。図8では、第1バイアス電圧が印加された直後の第1信号が符号V7Pで示され、第1インバータ23を通過後の第1信号が符号V8Pで示され、第3インバータ25aを通過後の第1信号が符号V9Pで示されている。
【0066】
同様に、バイアス印加部3は、第2コンデンサ22と第2インバータ24との間のノードKで、第2信号に第2バイアス電圧を印加する。第2バイアス電圧は、ノードKに供給されるものと同じものである。図8では、第2バイアス電圧が印加された直後の第2信号が符号V7Nで示され、第2インバータ24を通過後の第2信号が符号V8Nで示され、第4インバータ25bを通過後の第2信号が符号V9Nで示されている。
【0067】
第1トランジスタ25cに第1信号V9Pが供給されると、第1トランジスタ25cから第1電流I2Pが出力される。また、第2トランジスタ25dに第2信号V9Nが供給されると、第2トランジスタ25dから第2電流I2Nが出力される。その結果、第1トランジスタ25cと第2トランジスタ25dとの間のノードKからフィルタ回路6に出力信号V10が出力される。第1および第2電流I2P、I2Nはそれぞれ、第1および第2トランジスタ25c、25dのドレイン電流に相当する。出力信号V10は、ノードKの電圧に相当し、第1電流I2Pと第2電流I2Nとに基づいて電力増幅器25内で生成され、ノードKからフィルタ回路6に出力される。
【0068】
電力増幅器25から出力された出力信号V10は、フィルタ回路6を介して検出回路7に供給される。フィルタ回路6は、電気抵抗6aとコンデンサ6bにより構成されたローパスフィルタであり、出力信号V10の高周波成分を除去する。高周波成分が除去された出力信号V10は、検出回路7用の検出信号VDETとして出力される。
【0069】
検出回路7は、電力増幅器25から出力された出力信号V10の直流成分を検出する回路であり、具体的には、出力信号V10の直流成分を検出信号VDETを利用して検出する。本実施形態のフィルタ回路6は、出力信号V10のおおむね全ての交流成分を除去するため、検出信号VDETはほぼ出力信号V10の直流成分に相当する。よって、検出回路7は、検出信号VDETの値から出力信号V10の直流成分の値を検出することができる。
【0070】
検出回路7は、出力信号V10の直流成分の検出結果に対応する制御信号VOUTをバイアス印加部3に出力する。そして、バイアス印加部3は、制御信号VOUTに基づいて第1および第2バイアス電圧を制御し、これにより第1および第2回路10、20内の第1および第2信号のデューティ比を調整する。その結果、第1回路10内の出力信号Vの波形が変化し、この出力信号Vがマッチング回路4およびアンテナ5に供給される。さらには、第2回路20内の出力信号V10の波形が変化し、この出力信号V10がフィルタ回路6および検出回路7に供給される。
【0071】
このように、本実施形態の無線通信装置は、出力信号V10の直流成分を検出回路7により検出し、検出回路7の検出結果に基づいて出力信号V、V10の波形を変化させる。これにより、出力信号V、V10の波形を所望の波形に調整することができる。具体的には、本実施形態の無線通信装置は、出力信号V、V10の直流成分の値をVDD/2に近づけ、出力信号V、V10の波形の対称性を向上させるように動作する。
【0072】
本実施形態によれば、第1および第2回路10、20内の第1および第2信号のデューティ比をバイアスにより調整し、出力信号V、V10の波形を所望の波形に調整することが可能となる。
【0073】
本実施形態の構成は、例えば無線通信装置の無線送信機能と直流成分検出機能とを分離したい場合に好適である。一方、第1実施形態の構成は、例えば無線通信装置を少ない部品で構成したい場合に好適である。
【0074】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0075】
1:信号発生部、2:インバータ、3:バイアス印加部、
3a:第1可変抵抗、3b:第2可変抵抗、3c:第3可変抵抗、
4:マッチング回路、5:アンテナ、6:フィルタ回路、
6a:電気抵抗、6b:コンデンサ、7:検出回路、
7a:第1可変抵抗、7b:第2可変抵抗、7c:比較器、
10:第1回路、11:第1コンデンサ、12:第2コンデンサ、
13:第1インバータ、14:第2インバータ、15:電力増幅器、
15a:第3インバータ、15b:第4インバータ、
15c:第1トランジスタ、15d:第2トランジスタ、
20:第2回路、21:第1コンデンサ、22:第2コンデンサ、
23:第1インバータ、24:第2インバータ、25:電力増幅器、
25a:第3インバータ、25b:第4インバータ、
25c:第1トランジスタ、25d:第2トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8