(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の無線通信装置の構成を示す回路図である。
【0009】
図1の無線通信装置は、信号発生部1と、インバータ2と、バイアス印加部3と、マッチング回路4と、アンテナ5と、フィルタ回路6と、検出回路7とを備えている。バイアス印加部3は、第1可変抵抗3a、第2可変抵抗3b、および第3可変抵抗3cを有している。フィルタ回路6は、電気抵抗6aおよびコンデンサ6bを有している。
【0010】
図1の無線通信装置はさらに、第1コンデンサ11と、第2コンデンサ12と、第1インバータ13と、第2インバータ14と、互いに並列に接続された複数の電力増幅器15とを備えている。各電力増幅器15は、第3インバータ15a、第4インバータ15b、第1トランジスタ15c、および第2トランジスタ15dを有している。
【0011】
本実施形態の無線通信装置は、例えばBluetooth(登録商標)規格に準拠した無線送信を行う。
図1は、本実施形態の無線送信の説明に関連する構成要素を示しており、本実施形態の説明に関連しない既知の構成要素については図示を省略している。なお、アンテナ5は、本実施形態の無線通信装置の外部の構成要素であっても構わない。
【0012】
信号発生部1は、信号を発生する回路であり、例えばシンセサイザやDCO(Digitally Controlled Oscillator)である。
図1では、この信号が符号V
1で示されている。本実施形態の信号発生部1は、信号V
1として正弦波を発生するが、信号V
1が下流に伝播するにつれて、信号V
1の波形はインバータ2、13、14等の影響で矩形波に近付いていく。
【0013】
信号発生部1から発生した信号V
1は、インバータ2を通過した後、ノードK
1で、第1コンデンサ11に供給される第1信号と、第2コンデンサ12に供給される第2信号とに分かれる。第1および第2コンデンサ11、12はそれぞれ、第1および第2信号の直流成分(DC成分)を除去する。
【0014】
第1コンデンサ11を通過した第1信号は、第1および第3インバータ13、15aを通過した後、第1トランジスタ15cのゲート端子に供給される。また、第2コンデンサ12を通過した第2信号は、第2および第4インバータ14、15bを通過した後、第2トランジスタ15dのゲート端子に供給される。第1および第2トランジスタ15c、15dは、それぞれpMOSとnMOSであり、インバータを構成している。第1トランジスタ15cと第2トランジスタ15dは、電源配線(VDD配線)とグランド配線(GND配線)との間で直列に接続されている。
【0015】
なお、
図1に示す複数の電力増幅器15は、各電力増幅器15を取り囲む枠線の位置で互いに並列に接続されている。すなわち、これらの電力増幅器15に信号を入力する配線は、第3インバータ13と電力増幅器15との間のノードや、第4インバータ14と電力増幅器15との間のノードで分岐している。また、これらの電力増幅器15から信号を出力する配線は、電力増幅器15とマッチング回路4との間のノードで合流している。
【0016】
ここで、バイアス印加部3は、第1コンデンサ11と第1インバータ13との間のノードK
2で、第1信号に第1バイアス電圧を印加する。
図1では、第1バイアス電圧が印加された直後の第1信号が符号V
2Pで示され、第1インバータ13を通過後の第1信号が符号V
3Pで示され、第3インバータ15aを通過後の第1信号が符号V
4Pで示されている。
【0017】
同様に、バイアス印加部3は、第2コンデンサ12と第2インバータ14との間のノードK
3で、第2信号に第2バイアス電圧を印加する。
図1では、第2バイアス電圧が印加された直後の第2信号が符号V
2Nで示され、第2インバータ14を通過後の第2信号が符号V
3Nで示され、第4インバータ15bを通過後の第2信号が符号V
4Nで示されている。
【0018】
本実施形態のバイアス印加部3は、VDD配線とGND配線との間に直列に接続された第1から第3可変抵抗3a〜3cを有している。バイアス印加部3は、第1から第3可変抵抗3a〜3cの抵抗値を変化させることで、第1および第2バイアス電圧の値を独立に制御することができる。そして、バイアス印加部3は、第1バイアス電圧を制御することで第1信号のデューティ比を調整することができ、第2バイアス電圧を制御することで第2信号のデューティ比を調整することができる。
【0019】
なお、本実施形態のバイアス印加部3は、第1から第3可変抵抗3a〜3cにより構成されているが、第1および第2信号のデューティ比を調整可能であればその他の構成を有していてもよい。
【0020】
第1トランジスタ15cに第1信号V
4Pが供給されると、第1トランジスタ15cから第1電流I
1Pが出力される。また、第2トランジスタ15dに第2信号V
4Nが供給されると、第2トランジスタ15dから第2電流I
1Nが出力される。その結果、第1トランジスタ15cと第2トランジスタ15dとの間のノードK
4からマッチング回路5に出力信号V
5が出力される。第1および第2電流I
1P、I
1Nはそれぞれ、第1および第2トランジスタ15c、15dのドレイン電流に相当する。出力信号V
5は、ノードK
4の電圧に相当し、第1電流I
1Pと第2電流I
1Nとに基づいて各電力増幅器15内で生成され、ノードK
4からマッチング回路5に出力される。
【0021】
マッチング回路4は、電力増幅器15とアンテナ5との間にインピーダンスマッチング用に設けられている。電力増幅器15から出力された出力信号V
5は、マッチング回路4を通過してアンテナ5に供給され、アンテナ5から外部に送信されることになる。
【0022】
マッチング回路4を通過した出力信号V
5は、フィルタ回路6を介して検出回路7にも供給される。フィルタ回路6は、電気抵抗6aとコンデンサ6bにより構成されたローパスフィルタであり、出力信号V
5の高周波成分を除去する。高周波成分が除去された出力信号V
5は、検出回路7用の検出信号V
DETとして出力される。なお、フィルタ回路6は、出力信号V
5の高周波成分を除去可能であれば、その他の構成を有していてもよい。
【0023】
検出回路7は、電力増幅器15から出力された出力信号V
5の直流成分を検出する回路であり、具体的には、出力信号V
5の直流成分を検出信号V
DETを利用して検出する。本実施形態のフィルタ回路6は、出力信号V
5のおおむね全ての交流成分を除去するため、検出信号V
DETはほぼ出力信号V
5の直流成分に相当する。よって、検出回路7は、検出信号V
DETの値から出力信号V
5の直流成分の値を検出することができる。
【0024】
検出回路7は、出力信号V
5の直流成分の検出結果に対応する制御信号V
OUTをバイアス印加部3に出力する。そして、バイアス印加部3は、制御信号V
OUTに基づいて第1および第2バイアス電圧を制御し、これにより第1および第2信号のデューティ比を調整する。その結果、出力信号V
5の波形が変化し、この出力信号V
5がマッチング回路4、アンテナ5、フィルタ回路6、および検出回路7に供給される。
【0025】
このように、本実施形態の無線通信装置は、出力信号V
5の直流成分を検出回路7により検出し、検出回路7の検出結果に基づいて出力信号V
5の波形を変化させる。これにより、出力信号V
5の波形を所望の波形に調整することができる。具体的には、本実施形態の無線通信装置は、出力信号V
5の直流成分の値をVDD/2に近づけ、出力信号V
5の波形の対称性を向上させるように動作する。ここで、VDDは、GND配線の電位を0としたときのVDD配線の電位を表す。以下、本実施形態の無線通信装置の動作について詳細に説明する。
【0026】
図2は、第1実施形態の無線通信装置の動作を説明するための波形図である。
【0027】
図2(a)は、デューティ比を調整される前の第1信号V
4Pと、デューティ比を調整された後の第1信号V
4Pの一例を示している。デューティ比が調整される前の第1信号V
4Pでは、デューティ比が50%に設定されている(
図2(a)左)。一方、デューティ比が調整された後の第1信号V
4Pでは、デューティ比が50%から変化し、第1信号V
4Pがハイの期間が第1信号V
4Pがローの期間よりも長くなっている(
図2(b)右)。
【0028】
図2(b)は、デューティ比を調整される前の第2信号V
4Nと、デューティ比を調整された後の第2信号V
4Nの一例を示している。デューティ比が調整される前の第2信号V
4Nでは、デューティ比が50%に設定されている(
図2(b)左)。一方、デューティ比が調整された後の第2信号V
4Nでは、デューティ比が50%から変化し、第2信号V
4Nがハイの期間が第2信号V
4Nがローの期間よりも短くなっている(
図2(b)右)。
【0029】
なお、第2信号V
4Nのハイ期間とロー期間はそれぞれ、第1信号V
4Pのロー期間とハイ期間と同じ長さになるように調整されている。別言すると、第2信号V
4Nのデューティ比が、第1信号V
4Pのデューティ比とそろうように調整されている。
【0030】
図2(c)は、デューティ比を調整される前の第1電流I
1Pと、デューティ比を調整された後の第1電流I
1Pの一例を示している。第1信号V
4Pが
図2(a)のように変化することで、第1電流I
1Pのパルス幅が短くなっている。
【0031】
図2(d)は、デューティ比を調整される前の第2電流I
1Nと、デューティ比を調整された後の第2電流I
1Nの一例を示している。第2信号V
4Nが
図2(b)のように変化することで、第2電流I
1Nのパルス幅が短くなっている。
【0032】
図2(e)は、デューティ比を調整される前の出力信号V
5と、デューティ比を調整された後の出力信号V
5の一例を示している。デューティ比が調整される前には、出力信号V
5は矩形波の波形を有している。よって、出力信号V
5の各パルスは長方形の波形を有している。一方、デューティ比が調整された後には、第1および第2電流I
1P、I
1Nのパルス幅が短くなることで、出力信号V
5の各パルスの波形が長方形から台形に変化している。
【0033】
その結果、ノードK
4における電圧(出力信号V
5)と電流(第1電流I
1Pと第2電流I
1Nとの和)との重なり部分が少なくなる。これにより、本実施形態における無線通信のエネルギー効率が向上される。
【0034】
なお、アンテナ5に出力される信号に含まれる高調波成分を抑えるためには、出力信号V
5の波形を対称にすることが望ましい。これは、上述のように、第2信号V
4Nのハイ期間とロー期間をそれぞれ、第1信号V
4Pのロー期間とハイ期間と同じ長さに設定することで実現可能である。
【0035】
図3は、第1実施形態の無線通信装置の動作を説明するための別の波形図である。
図3は、バイアス印加部3によるバイアスの印加とデューティ比の調整との関係を示したものである。
【0036】
図3(a)は、信号発生部1から発生した信号V
1の一例を示している。この信号V
1は、電圧0と電圧VDDとの間で変動する正弦波である。以下、この信号V
1から生じる第1電圧や第1電流について説明する。
【0037】
図3(b)は、第1バイアス電圧が印加された直後の第1信号V
2Pを示している。第1信号V
2Pの振動方向は、インバータ2の作用により、信号V
1の振動方向と反転している。また、第1信号V
2Pの平均値は、第1バイアス電圧の影響により、第1インバータ13の閾値V
THよりもV
Bだけ高くなっている。さらに、
図3(b)は、第1信号V
2Pの値が閾値V
THよりも低い期間T
1と、第1信号V
2Pの値が閾値V
THよりも高い期間T
2とを示している。
【0038】
図3(c)は、第1インバータ13を通過後の第1信号V
3Pを示している。第1信号V
3Pの波形は、上述の閾値V
THの影響により、ハイ期間T
1がロー期間T
2よりも短い矩形波となる。なお、正確には、第1信号は下流に伝播するにつれて徐々に正弦波から矩形波に変化していくが、ここでは作図の便宜上、第1信号V
2Pを正弦波で示し、第1信号V
3Pを矩形波で示している。
【0039】
図3(d)は、第3インバータ15aを通過後の第1信号V
4Pを示している。第3インバータ15aの作用により、第1信号V
4Pの波形は、ロー期間T
1がハイ期間T
2よりも短い矩形波となる。
【0040】
図3(e)は、第1トランジスタ15cから出力された第1電流I
1Pを示している。第1信号V
4Pのロー期間T
1の影響により、第1電流I
1Pのパルス幅はT
1になる。
【0041】
このように、第1信号V
4Pのデューティ比は第1バイアス電圧に応じて変化し、これにより第1電流I
1Pのパルス幅が変化する。これは、第1電流I
1Pでも同様である。すなわち、第2信号V
4Nのデューティ比は第2バイアス電圧に応じて変化し、これにより第2電流I
1Nのパルス幅が変化する。その結果、
図2(e)に示すように、出力信号V
5の波形を正弦波に近付けることができる。
【0042】
次に、本実施形態の検出回路7の構成や動作について説明する。
【0043】
図4は、第1実施形態の検出回路7の構成例を示す回路図である。
図4に示す検出回路7は、第1可変抵抗7aと、第2可変抵抗7bと、比較器7cとを有している。
【0044】
第1および第2可変抵抗7a、7bは、VDD配線とGND配線との間に直列に接続されており、電圧VDD/2を出力するために使用される。比較器7cは、フィルタ回路6から検出信号V
DETが入力される第1入力端子と、電圧VDD/2が入力される第2入力端子とを有している。
【0045】
そして、比較器7cは、V
DETとVDD/2との比較結果を示す制御信号V
OUTを出力端子から出力する。制御信号V
OUTは例えば、V
DETがVDD/2以上のときにハイとなり、V
DETがVDD/2未満のときにローとなる2値信号である。
【0046】
バイアス印加部3は、制御信号V
OUTがハイのときには、出力信号V
5の直流成分を減少させるように第1および第2バイアス電圧を調整する。一方、バイアス印加部3は、制御信号V
OUTがローのときには、出力信号V
5の直流成分を増加させるように第1および第2バイアス電圧を調整する。その結果、出力信号V
5の直流成分の値はVDD/2に近付いていく。
【0047】
図5は、第1実施形態の検出回路7の動作を説明するための波形図である。
【0048】
図5(a)左は、出力信号V
5の一例を示している。この出力信号V
5の波形は、正弦波に近く、ほぼ上下対称である。よって、この場合の検出信号V
DETの値は、ほぼVDD/2となる(
図5(a)右)。
【0049】
図5(b)左は、出力信号V
5の別の一例を示している。この出力信号V
5の波形は、正弦波から遠く、上下非対称である。よって、この場合の検出信号V
DETの値は、VDD/2からずれる(
図5(b)右)。
【0050】
このような上下非対称な出力信号V
5は、第1信号V
4Pのデューティ比と第2信号V
4Nのデューティ比がそろっていない場合に発生し、偶数次の高調波成分を多く含んでいる。そこで、本実施形態の検出回路7は、このような非対称性を検出信号V
DETを利用して検出し、その検出結果を示す制御信号V
OUTをバイアス印加部3に出力する。これにより、出力信号V
5の波形の対称性を向上させ、出力信号V
5に含まれる偶数次の高調波成分を減少させることができる。
【0051】
図6は、第1実施形態の無線通信装置の性能について説明するためのグラフである。
【0052】
曲線C1は、本実施形態の電力増幅器15において、
図2のようにデューティ比を調整した場合の消費電流を示す。曲線C2は、本実施形態の電力増幅器15において、
図2のようにデューティ比を調整しなかった場合の消費電流を示す。曲線C3は、本実施形態の電力増幅器15をnMOS型の電力増幅器に置き換えた場合において、
図2のようにデューティ比を調整した場合の消費電流を示す。これらは、シミュレーションにより得られた結果を示している。
図6の横軸は、出力信号V
5のパワーを表す。
【0053】
曲線C1、C2の比較から、本実施形態のデューティ比調整は消費電流を低減させる効果があることが分かる。さらに、曲線C1、C3の比較から、本実施形態のデューティ比調整は本実施形態の電力増幅器15に適していることが分かる。
【0054】
図7も、第1実施形態の無線通信装置の性能について説明するためのグラフである。
【0055】
図7(a)の横軸は、第1信号V
4Pのパルス幅(下側パルス幅)を表す。なお、第2信号V
4Nのパルス幅(上側パルス幅)は固定とする。また、
図7(a)の縦軸は、出力信号V
5に含まれる2次高調波のパワーと、V
DET−VDD/2の値とを示している。符号W
1、W
2、W
3は3種類のパルス幅を示している。
図7(a)は、下側パルス幅がW
2のときに、2次高調波成分が減少し、V
DETがVDD/2に近付くことを示している。
【0056】
図7(b)は、下側パルス幅がW
1、W
2、W
3のときの出力信号V
5を示している。
図7(b)によれば、下側パルス幅がW
2のときの出力信号V
5の波形は、上下対称形に近いことが分かる。
【0057】
以上のように、本実施形態のバイアス印加部3は、出力信号V
5の直流成分に基づいて第1および第2信号にバイアスを印加する。よって、本実施形態によれば、第1および第2信号のデューティ比をバイアスにより調整し、出力信号V
5の波形を所望の波形に調整することが可能となる。本実施形態によれば、出力信号V
5の波形の対称性を向上させ、アンテナ5に出力される偶数次の高調波成分を減少させることが可能となる。
【0058】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の無線通信装置の構成を示す回路図である。
【0059】
図8の無線通信装置は、
図1に示す構成要素に加えて、第1コンデンサ21と、第2コンデンサ22と、第1インバータ23と、第2インバータ24と、電力増幅器25とを備えている。電力増幅器25は、第3インバータ25a、第4インバータ25b、第1トランジスタ25c、および第2トランジスタ25dを有している。第1コンデンサ21、第2コンデンサ22、第1インバータ23、第2インバータ24、電力増幅器25はそれぞれ、第1コンデンサ11、第2コンデンサ12、第1インバータ13、第2インバータ14、電力増幅器15と同じ構成や機能を有している。
【0060】
図8の無線通信装置は、
図1の無線通信装置の無線送信機能と直流成分検出機能とを分離した構成を有しており、具体的には、無線送信用の第1回路10と、直流成分検出用の第2回路20とを備えている。第2回路20は、第1回路10のレプリカに相当する。
【0061】
第1回路10は、第1コンデンサ11と、第2コンデンサ12と、第1インバータ13と、第2インバータ14と、第1電力増幅器の例である複数の電力増幅器15と、マッチング回路4と、アンテナ5とを備えている。これらの構成要素の構成や機能は、第1実施形態の場合と同様である。
【0062】
第2回路20は、第1コンデンサ21と、第2コンデンサ22と、第1インバータ23と、第2インバータ24と、第2電力増幅器の例である電力増幅器25と、フィルタ回路6と、検出回路7とを備えている。
【0063】
信号発生部1は、信号V
1、V
6を発生する。信号V
1と信号V
6は、同じ波形の信号である。信号発生部1から発生した信号V
6は、インバータ2を通過した後、ノードK
5で、第1コンデンサ21に供給される第1信号と、第2コンデンサ22に供給される第2信号とに分かれる。
【0064】
第1コンデンサ21を通過した第1信号は、第1および第3インバータ23、25aを通過した後、第1トランジスタ25cのゲート端子に供給される。また、第2コンデンサ22を通過した第2信号は、第2および第4インバータ24、25bを通過した後、第2トランジスタ25dのゲート端子に供給される。第1および第2トランジスタ25c、25dは、それぞれpMOSとnMOSであり、インバータを構成している。
【0065】
ここで、バイアス印加部3は、第1コンデンサ21と第1インバータ23との間のノードK
6で、第1信号に第1バイアス電圧を印加する。第1バイアス電圧は、ノードK
2に供給されるものと同じものである。
図8では、第1バイアス電圧が印加された直後の第1信号が符号V
7Pで示され、第1インバータ23を通過後の第1信号が符号V
8Pで示され、第3インバータ25aを通過後の第1信号が符号V
9Pで示されている。
【0066】
同様に、バイアス印加部3は、第2コンデンサ22と第2インバータ24との間のノードK
7で、第2信号に第2バイアス電圧を印加する。第2バイアス電圧は、ノードK
3に供給されるものと同じものである。
図8では、第2バイアス電圧が印加された直後の第2信号が符号V
7Nで示され、第2インバータ24を通過後の第2信号が符号V
8Nで示され、第4インバータ25bを通過後の第2信号が符号V
9Nで示されている。
【0067】
第1トランジスタ25cに第1信号V
9Pが供給されると、第1トランジスタ25cから第1電流I
2Pが出力される。また、第2トランジスタ25dに第2信号V
9Nが供給されると、第2トランジスタ25dから第2電流I
2Nが出力される。その結果、第1トランジスタ25cと第2トランジスタ25dとの間のノードK
8からフィルタ回路6に出力信号V
10が出力される。第1および第2電流I
2P、I
2Nはそれぞれ、第1および第2トランジスタ25c、25dのドレイン電流に相当する。出力信号V
10は、ノードK
8の電圧に相当し、第1電流I
2Pと第2電流I
2Nとに基づいて電力増幅器25内で生成され、ノードK
8からフィルタ回路6に出力される。
【0068】
電力増幅器25から出力された出力信号V
10は、フィルタ回路6を介して検出回路7に供給される。フィルタ回路6は、電気抵抗6aとコンデンサ6bにより構成されたローパスフィルタであり、出力信号V
10の高周波成分を除去する。高周波成分が除去された出力信号V
10は、検出回路7用の検出信号V
DETとして出力される。
【0069】
検出回路7は、電力増幅器25から出力された出力信号V
10の直流成分を検出する回路であり、具体的には、出力信号V
10の直流成分を検出信号V
DETを利用して検出する。本実施形態のフィルタ回路6は、出力信号V
10のおおむね全ての交流成分を除去するため、検出信号V
DETはほぼ出力信号V
10の直流成分に相当する。よって、検出回路7は、検出信号V
DETの値から出力信号V
10の直流成分の値を検出することができる。
【0070】
検出回路7は、出力信号V
10の直流成分の検出結果に対応する制御信号V
OUTをバイアス印加部3に出力する。そして、バイアス印加部3は、制御信号V
OUTに基づいて第1および第2バイアス電圧を制御し、これにより第1および第2回路10、20内の第1および第2信号のデューティ比を調整する。その結果、第1回路10内の出力信号V
5の波形が変化し、この出力信号V
5がマッチング回路4およびアンテナ5に供給される。さらには、第2回路20内の出力信号V
10の波形が変化し、この出力信号V
10がフィルタ回路6および検出回路7に供給される。
【0071】
このように、本実施形態の無線通信装置は、出力信号V
10の直流成分を検出回路7により検出し、検出回路7の検出結果に基づいて出力信号V
5、V
10の波形を変化させる。これにより、出力信号V
5、V
10の波形を所望の波形に調整することができる。具体的には、本実施形態の無線通信装置は、出力信号V
5、V
10の直流成分の値をVDD/2に近づけ、出力信号V
5、V
10の波形の対称性を向上させるように動作する。
【0072】
本実施形態によれば、第1および第2回路10、20内の第1および第2信号のデューティ比をバイアスにより調整し、出力信号V
5、V
10の波形を所望の波形に調整することが可能となる。
【0073】
本実施形態の構成は、例えば無線通信装置の無線送信機能と直流成分検出機能とを分離したい場合に好適である。一方、第1実施形態の構成は、例えば無線通信装置を少ない部品で構成したい場合に好適である。
【0074】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。