(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分析部は、前記データの前記データ形式を識別する際、前記データが連続値データであるか離散データであるかを判定し、前記データが前記連続値データであると判定された場合、前記データを離散データに離散化処理する、
請求項2から3のいずれか1項に記載の状態分析装置。
前記分析部の分析に用いられる検証項目及び分析手法であって、既に用意されている検証項目とは異なる他の検証項目、及び前記他の検証項目を分析するための他の分析手法が追加可能である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の状態分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の状態分析装置、状態分析方法及び状態分析プログラムを、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の状態分析装置1の構成を示すブロック図である。状態分析装置1は、例えば製品の製造過程で蓄積された種々のデータから、不良等が発生している状態がどのような要因によるものなのかを分析する装置である。状態分析装置1は、例えば、記憶部10と、データ分類部100と、分析部200と、判定部300と、表示部400と、を備える。記憶部10は、例えば、入力データ記憶部11と、変数定義データ記憶部12と、4M・検証項目マスタ記憶部13とを備える。データ分類部100は、例えば、4M定義部110と、検証項目定義部120と、データ分割部130とを備える。分析部200は、例えば、前処理部210と、分析処理部220とを備える。判定部300は、分析結果集計部310と、集計結果判定部320とを備える。表示部400は、例えば、判定結果表示部410を備える。
【0009】
データ分類部100、分析部200、及び判定部300は、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。また、データ分類部100、分析部200、及び判定部300の機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0010】
記憶部10は、種々のデータが記憶される記憶装置である。記憶部10は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現される。入力データ記憶部11には、製品の製造過程で取得された種々の入力データが記憶されている。
【0011】
図2は、入力データの例を示す図である。入力データは、例えば、1製品のデータが1行(レコード)で表現される形式のデータである。入力データは、例えば数百にのぼる多数の製造工程から収集される数百万種類の膨大なデータである。入力データの説明変数(独立変数)はデータ1のようにカテゴリカル(離散データ)な形式であっても、データ2のように数値(連続値データ)であってもよい。入力データの目的変数(従属変数)は、結果1のように0または1(例えば良品または不良品)で表されるデータか、結果2のような歩留まりのように品質の程度を表す連続値データである。また、データは、時系列順に並べられている。
【0012】
変数定義データ記憶部12には、入力データのデータ要素が説明変数であるか目的変数であるかどうかが定義されて記憶されている。
図3は、データの変数を定義する例を示す図である。図示するように、
図2のデータ1及びデータ2は説明変数であり、結果1及び結果2は、目的変数と定義されている。
【0013】
4M・検証項目マスタ記憶部13には、入力データのデータ要素を分類するための管理項目と検証項目とが記憶されている。
図4は、4Mの各管理項目に対して割り当てられる複数の検証項目を示す図である。管理項目は、例えば品質管理に用いられる4Mの項目で定義されている。4Mとは、例えば、人(Man)、機械(Machine)、取り扱い物質(Material)、及び方法(Method)で定義される管理項目である。また、4Mに分類されない、その他(Other)の管理項目が、4M・検証項目マスタ記憶部13において定義されてもよい。これらの管理項目は、ユーザによって任意に入力されてもよい。管理項目は、上記の4M以外の項目を用いてもよく、任意に変更及び追加され得る。
【0014】
検証項目は、4Mの各管理項目に対して定義される品質不良の要因を見つけるための複数の観点である。検証項目は、例えば品質工学、信頼性工学に基づく検証の観点に基づいて設定される項目である。検証項目は、例えば、不良の偏り、不良のばらつき、初期不良、及び摩耗不良が定義される。4M(Man、Machine、Material、Method)の4つの管理項目のそれぞれに対して不良の偏り、不良のばらつき、初期不良、及び摩耗不良の検証項目が割り当てられる。
【0015】
データ分類部100は、4Mの管理項目毎に分類された入力データのデータ要素を対応する複数の検証項目毎に分類する。データ分類部100は、入力データ記憶部11に記憶された入力データのデータ要素を4M・検証項目マスタ記憶部13に記憶された4Mの管理項目と検証項目の組み合わせ毎に分類する。4M定義部110は、入力データを構成するデータ要素が、4M・検証項目マスタ記憶部13に記憶された4Mの管理項目のいずれかに対応するのか定義する。データ要素と4Mの管理項目との対応関係は、適宜ユーザによって設定され得る。
【0016】
図5は、入力データのデータ要素と4Mの管理項目との関係を示す図である。図示するように、4M定義部110は、入力データを構成するデータ要素が4Mのいずれに相当するのかを定義している。データ要素と4Mとの関係は、適宜ユーザによって設定され得る。例えばデータ1は4MのうちMaterialが割り当てられ、データ2はMachineが割り当てられている。
【0017】
検証項目定義部120は、入力データの各データ要素に対する各検証項目を定義する。
図6Aは、データ要素に対する検証項目を示す図である。検証項目定義部120は、4M定義部110において定義されたデータ要素と4Mの対応関係と、4M・検証項目マスタ記憶部13に記憶された検証項目とに基づいて入力データの各データ要素に対する各検証項目を定義する。例えばデータ1及びデータ2の検証項目は、不良の偏り、不良のばらつき、初期不良、及び摩耗不良がそれぞれ割り当てられている。これらの検証項目は、適宜ユーザによって設定及び追加され得る。
【0018】
データ分割部130は、4M定義部110及び検証項目定義部120によって定義された結果に基づいて、入力データを構成するデータ要素から抽出される説明変数のデータ及び目的変数のデータを4Mと検証項目とで構成されるマトリクスにマッピングする。
図6Bは、マッピング結果を示す図である。
【0019】
分析部200は、データ分類部100によって分類された入力データと、変数定義データ記憶部12に記憶された変数定義とに基づいて、4Mの管理項目と複数の検証項目の組み合わせ毎に不具合の有無を分析する。前処理部210は、データ分類部100によって分類された入力データをデータ形式に基づいて、後述する分析を可能とするデータ形式に変換すると共に分析手法を選択する。
【0020】
前処理部210は、説明変数データ型判断部211と、説明変数離散化部212と、目的変数データ型判断部213と、分析手法選択部214とを備える。説明変数データ型判断部211は、変数定義データ記憶部12に記憶された変数定義に基づいてデータ分類部100で分類されたデータの説明変数を抽出し、各説明変数のデータが連続値データであるか離散データであるかを判定する。説明変数データ型判断部211は、例えばデータの値の種類が5(=分割数+1)以上のデータを連続値データと判定する。説明変数データ型判断部211は、例えばデータの値の種類が5未満のデータを離散データと判定する。例えばデータ1は離散データであり、データ2は連続値データである(
図2参照)。
【0021】
説明変数離散化部212は、説明変数データ型判断部211が説明変数のデータは連続値データであると判定した場合、データを離散化する処理を行う。
図7は、連続値である説明変数を離散化する処理を示す図である。図示するように例えば、説明変数離散化部212は、連続値である説明変数を4分位で4分割して離散化する。
図8は、離散化された説明変数を示す図である。
図8に示されるように、説明変数離散化部212は、説明変数であるデータ2の数値データを、L、ML、MH、Hの4つの区分で分類されたデータ値に離散化する。
【0022】
説明変数離散化部212が離散化処理を行うと、後の処理で扱われるデータが連続値データか離散化データか否かを識別する必要がなくなり、後の処理がシンプルになる。離散化するデータの分割数は必要に応じて異なる数字に変更しても良い。例えば説明変数データ型判断部211は、データの値の種類が5以上のデータを連続値データと識別しているが、この値を説明変数離散化部212が分割するデータの分割数に応じて変更してもよい。
【0023】
次に目的変数データ型判断部213は、データの目的変数が連続値データであるか離散データであるかを識別する。目的変数データ型判断部213は、目的変数の値の種類をカウントし、目的変数の値の種類が3以上であれば連続値データと識別し、目的変数の値の種類が2以下であれば離散データと識別する。例えば目的変数である結果1の値の種類は0と1の2種類であるので、目的変数データ型判断部213は、結果1を離散データと識別する(
図2参照)。そして目的変数である結果2の値の種類は3種類以上あるので、目的変数データ型判断部213は、結果2を連続値データと識別する(
図2参照)。
【0024】
分析手法選択部214は、目的変数データ型判断部213による目的変数が連続値データであるか離散データであるかという識別結果に応じてデータを分析するための適切な分析アルゴリズムを選択する。即ち、分析手法選択部214は、分析手法を選択する際に、データ形式に基づいて、検証項目毎にデータに対して適用される分析手法を選択する。例えば
図2に示すような入力データの場合には、分析手法選択部214は、結果1のデータに対しては離散データとしての分析手法を選択し、結果2のデータに対しては連続値データとしての分析手法を選択する。
【0025】
分析処理部220は、前処理部210によって前処理された入力データに対して複数の分析処理を実行する。分析処理部220は、不良の偏り分析部221と、不良のばらつき分析部222と、初期不良分析部223と、摩耗不良分析部224とを備える。即ち、分析処理部220は、検証項目のそれぞれに対応した複数の分析部を備える。これらの分析部は、検証項目によって変更してもよいし、他の検証項目に対応して他の分析部を追加してもよい。
【0026】
不良の偏り分析部221は、不良の偏りの観点から不具合の有無を分析する。不良の偏り分析部221は、不良率(目的変数が”1”の値を取る比率を指し、本明細書の説明では同様の意味とする)が偏って高くなるデータを抽出する。
図9は、不良率の偏りを示すグラフである。不良の偏り分析部221は、ある1つの説明変数があるデータ値をとる時に、それ以外の場合と比べて不良率が有意に高くなっているかの指標となる数値を算出する。図示するように、例えば製品に用いられる一部品(Material)が異なる流通経路A〜Gで仕入れられている場合、不良の偏り分析部221によって不良率が高い部品の流通経路を抽出することができる。不良の偏り分析部221の処理の内容の詳細については後述する。
【0027】
不良のばらつき分析部222は、不良のばらつきの観点から不具合の有無を分析する。不良のばらつき分析部222は、歩留まり(目的変数)のばらつきが大きくなるデータ値を抽出する。不良のばらつき分析部222は、ある1つの説明変数があるデータ値をとる時に、それ以外の場合と比べて歩留まりが有意に低くなっているかの指標となる数値を算出する。
図10は、歩留まりのばらつきを示す図である。図示するように、例えば製品が作業員A〜Cによって組み立てられている場合に、Bの歩留りのデータにばらつきが多いことを抽出することができる。不良のばらつき分析部222の処理の内容の詳細については後述する。
【0028】
初期不良分析部223は、初期不良の観点から不具合の有無を分析する。初期不良分析部223は、初期に不良率が高くなる傾向を示すデータ値を抽出する。初期不良分析部223は、ある1つの説明変数があるデータ値を取り続ける製造条件下で製造した場合にその製造初期において、それ以外の場合と比べて不良率が有意に高くなっているかの指標となる数値を算出する。
図11は、初期の不良率が高いデータを示す図である。初期不良分析部223による分析は、例えば製品にある部品が使われる場合に、製品の製造初期には安定せずに不良を起こすようなケースで、部品による原因を発見することを目的としている。初期不良分析部223の処理の内容の詳細については後述する。
【0029】
摩耗不良分析部224は、4Mの管理項目のそれぞれと摩耗不良の検証項目との相関を分析する。摩耗不良分析部224は、後期になるほど不良率が高くなる傾向を示すデータ値を抽出する。摩耗不良分析部224は、ある1つの説明変数があるデータ値を取り続ける製造条件下で製造した場合にその製造後期において、それ以外の場合と比べて不良率が有意に高くなっているかの指標となる数値を算出する。
図12は、後期の不良率が高いデータを示す図である。摩耗不良分析部224による分析は、例えばある材料を使い続けた場合に、製造後期に材料が劣化して来て不良を起こすようなケースで、部品による原因を発見することを目的としている。摩耗不良分析部224の処理の内容の詳細については後述する。
【0030】
以上、まとめると、分析部200は、データのデータ形式を識別する際、データの説明変数及び目的変数が連続値データか離散データであるかを識別する。分析部200は、説明変数が連続値データと識別した場合はデータを離散データに離散化処理し、目的変数の識別結果に応じてデータに対して適用される分析手法を選択する。
【0031】
以下、各分析処理の具体的な内容を詳細に説明する。
【0032】
不良の偏り分析部221は、データの種類に応じてt検定又はFisher検定を実施する。不良の偏り分析部221は、例えば目的変数が連続値データの場合には、説明変数のデータ値毎にt検定を実施する。t検定では、算出されるt値の絶対値が大きければ大きいほど、強く有意であると判断される。不良の偏り分析部221は、目的変数の平均値に有意な差が生じているかどうかを調べるためにp値を算出する。p値は、サンプルデータから得られた平均値の差の有意性を判断するための指標となり、p値が小さいと帰無仮説は棄却され、サンプリングによる偶然ではなく確かに統計的に有意な差があると判断される。
【0033】
図13は、不良の偏り分析部221によるt検定を示す図である。ここでt検定は、説明変数であるデータ1が値Aをとった場合の目的変数2に対して行われる。不良の偏り分析部221は、データ1が値Aの場合とそれ以外の場合とでサンプル数、目的変数2の平均値、標準偏差をそれぞれ算出する。その後、不良の偏り分析部221は、その後t検定を実施し平均値に有意差があるかどうかを調べる。不良の偏り分析部221は、このような処理を全ての説明変数のデータ値に対して実行する。
図14は、不良の偏り分析部221によるt検定のp値のリストの算出結果を示す図である。
【0034】
また、不良の偏り分析部221は、目的変数が離散データの場合、説明変数の各データ値毎にFisher検定を実施する。そして不良の偏り分析部221は、目的変数が”1(例えば不良品に該当)”の値をとる頻度が各データ値において有意に高くなっているかどうかを調べるためにp値を算出する。
【0035】
図15は、不良の偏り分析部221によるFisher検定を示す図である。Fisher検定は、2×2の分割表で分割されたデータの検定法である。説明変数であるデータ1が値Aの場合の目的変数1に対して行われる。不良の偏り分析部221は、データ1が値Aをとった場合とそれ以外の場合とで、目的変数1(結果1)の値が”1(例えば不良品)”または”0(例えば良品)”となったデータ件数を算出する。そして不良の偏り分析部221は、目的変数1の値が”1”となる頻度に有意差があるかどうかを調べる。不良の偏り分析部221は、このような手続きを全ての説明変数のデータ値に対して実行し、p値のリストを結果として出力する。
図16は、不良の偏り分析部221によるFisher検定のp値のリストの算出結果を示す図である。
【0036】
不良のばらつき分析部222は、データの目的変数が連続値である場合にのみ処理を実行する。不良のばらつき分析部222は、目的変数が連続値である場合、説明変数のデータ値毎にF検定を実施する。F検定は、検定統計量が帰無仮説の下でF分布に従うことを仮定して行う統計的検定である。F分布は、2つの群の標準偏差の比を統計量Fとすると、両群とも正規分布に従う場合にはFはF分布に従うという分布である。
図17は、不良のばらつき分析部222によるF検定を示す図である。
【0037】
不良のばらつき分析部222は、例えばデータ1が値Aをとった場合とそれ以外の場合とでサンプル数、標準偏差をそれぞれ算出しF検定を実施して標準偏差に有意差があるかどうかを調べる。そして不良のばらつき分析部222は、目的変数の標準偏差に有意な差があるかどうかを調べるためにp値を算出する。
図18は、不良のばらつき分析部222によるF検定のp値のリストの算出結果を示す図である。
【0038】
また、不良のばらつき分析部222は、データの目的変数が離散値である場合は処理を実行しない。目的変数が”0”または”1”の離散値しか取らない場合、目的変数の値の分布は2項分布に従う。このため、ばらつきの差は不良の偏り分析部221で計算した平均値の差と等価となり、改めて計算する意味を持たないためである。
【0039】
次に初期不良分析部223及び摩耗不良分析部224による分析処理では、前処理として各データ値に対するデータを初期、中期、後期に分割する。
図19は、検定前に前処理されたデータを示す図である。初期不良分析部223及び摩耗不良分析部224は、各データ値が連続して何回出現したかをカウントし、カウント数を初期、中期、後期の3領域に分割し、カウント数に応じてデータを各領域に割り当てる。図示するように、例えばデータ1のAが連続するカウント数1〜6が初期、中期、後期にそれぞれ分割される。残る処理は不良の偏り分析部221の処理と殆ど同様の手順で行われる。
【0040】
図20は、初期不良分析部223によるt検定の結果を示す図である。図示するように、初期不良分析部223は、目的変数が連続値の場合にt検定を実施する。初期不良分析部223は、初期の不良を分析するため、例えば説明変数データ1が値Aで、かつカウンタが初期の場合に目的変数2に対する有意差検定を実施する。また、初期不良分析部223は、目的変数が離散値の場合にはFisher検定を実施する。
図21は、初期不良分析部223によるFisher検定を示す図である。
【0041】
初期不良分析部223は、上記処理を全ての説明変数のデータ値に対して実行する。そして初期不良分析部223は、p値のリストを結果として出力する。
図22は、初期不良分析部223によるt検定またはFisher検定のp値のリストの算出結果を示す図である。
【0042】
摩耗不良分析部224による分析処理は、基本的に初期不良分析部223の処理と同様である。摩耗不良分析部224は、後期の不良を分析するため、例えば説明変数データ1が値Aで、かつカウンタが後期の場合に目的変数2に対する有意差検定を実施する。摩耗不良分析部224の分析処理は、初期不良分析部223がカウンタ初期に対して行った処理と全く同様の処理をカウンタ後期に対して実行する。上記処理により、分析部200における各分析処理が終了する。
【0043】
判定部300は、分析部200が分析した分析結果を集計すると共に集計結果に基づいて各管理項目と判断項目の組み合わせに対し不具合の有無を判定する。判定部300は、得られた分析結果を再び4M×分析項目のマトリクスにマッピングする。
【0044】
分析結果集計部310は、4Mの管理項目に対する検証項目毎にp値の最小値(太字)を集計する。
図23は、分析部が不良の偏り分析部221の場合の分析結果を集計した図である。分析結果集計部310は、同様に全ての分析部の分析結果を集計する。
図24は、全ての分析部の分析結果を集計した図である。
【0045】
次に集計結果判定部320は、各p値に基づいて各管理項目と判断項目の組み合わせに対し不具合の有無を判定する。集計結果判定部320は、各p値が、不具合可能性高(p値1%未満)、不具合可能性中(p値1%以上5%未満)、不具合可能性低(p値5%以上)のいずれに該当するかを判定する。即ち集計結果判定部320は、各管理項目と判断項目の組み合わせに対し目的変数とデータとの関連の有意性を複数の段階に区分して判定する。集計結果判定部320は、閾値として1%、5%という値を用いているがこれらの値は必要に応じて変更しても良い。
【0046】
表示部400は、判定部300の判定結果を画像IMで表示する判定結果表示部410を備える。
図25は、判定結果表示部410に表示される画像IMを示す図である。画像IMには、判定部300の判定結果が4M(管理項目)×各分析部(検証項目)のマトリクスにそれぞれ表示される。画像IMのマトリクスの各表示欄には、判定結果が例えば色の変化によって表示される。
【0047】
例えば、不具合の可能性が低い場合、画像IMのマトリクスの各表示欄には、青色の信号を表示してもよい。不具合の可能性が中の場合、画像IMのマトリクスの各表示欄には、黄色の信号を表示してもよい。不具合の可能性が高い場合、画像IMのマトリクスの各表示欄には、赤色の信号を表示してもよい。そして、データが存在しない場合は、画像IMのマトリクスの各表示欄を無表示としてもよい。操作者は、画像IMの色を判別することにより、各管理項目と検証項目の組み合わせにおける不具合の有無を把握することができる。
【0048】
以下、状態分析装置1の処理の流れについて説明する。
図26及び
図27は、状態分析装置1の処理を示すフローチャートである。4M定義部110において4Mの管理項目に対応するデータを入力する(ステップS110)。検証項目定義部120において検証項目を入力する(ステップS111)。データ分割部130は、入力されたデータを4Mの管理項目と検証項目とで構成されるマトリクスにマッピングする(ステップS112)。
【0049】
説明変数データ型判断部211は、マッピングされたデータの説明変数が連続値データか否かを判断する(ステップS113)。説明変数が連続値データである場合(ステップS113:Yes)、説明変数離散化部212は、説明変数のデータを離散化する(ステップS114)。
【0050】
説明変数が連続値データでなく離散データの場合(ステップS113:No)、ステップS115の処理へ進む。目的変数データ型判断部213は、データの目的変数が連続値データか否かを判定する(ステップS115)。目的変数が連続値データである場合(ステップS115:Yes)、分析手法選択部214は、連続値データを分析するための適切な分析アルゴリズムを選択する(ステップS116)。
【0051】
不良の偏り分析部221は、目的変数が連続値データである場合、不良の偏りをt検定で分析する(ステップS117)。不良のばらつき分析部222は、目的変数が連続値データである場合、説明変数のデータ値毎にF検定を実施する(ステップS118)。
【0052】
初期不良分析部223は、目的変数が連続値の場合にt検定を実施する(ステップS119)。摩耗不良分析部224は、目的変数が連続値の場合にt検定を実施する(ステップS120)。ステップS115で、目的変数が連続値データでなく離散データの場合(ステップS115:No)、分析手法選択部214は、離散データを分析するための適切な分析アルゴリズムを選択する(ステップS116)。不良の偏り分析部221は、目的変数が離散データである場合、不良の偏りをFisher検定で分析する(ステップS131)。
【0053】
不良のばらつき分析部222は、目的変数が離散データである場合、処理を実行しない。初期不良分析部223は、目的変数が離散値の場合にFisher検定を実施する(ステップS132)。摩耗不良分析部224は、目的変数が離散値の場合にFisher検定を実施する(ステップS133)。分析結果集計部310は、4Mの管理項目に対する検証項目毎に分析結果を集計する(ステップS140)。
【0054】
集計結果判定部320は、分析結果に基づいて不具合の有無を判定する(ステップS141)。不具合の可能性が低い場合(ステップS142:Yes)、判定結果表示部410は、青色の信号を表示する。
【0055】
不具合の可能性が中の場合(ステップS143:Yes)、判定結果表示部410は、黄色の信号を表示する。不具合の可能性が高い場合(ステップS144:Yes)、判定結果表示部410は、赤色の信号を表示する。データが存在しない場合は、判定結果表示部410は、無表示とする。
【0056】
以上で説明した第1の実施形態によれば、状態分析装置1がデータ分類部100と、分析部200と、判定部300と、を持つことにより、製品に生じる状態を様々な分析手法により1度で網羅的に分析することができる。即ち状態分析装置1によると、製品の製造過程で蓄積された膨大な量の種々のデータに基づいて不良等が発生している状態がどのような要因によるものなのか分析することができる。状態分析装置1によると、複数の管理項目に対応する複数の検証項目において不良等が発生している状態を可視化された態様で容易に把握することができる。
【0057】
具体的には、状態分析装置1によれば、入力データが一定のデータ形式であればどのようなデータに対しても4M(+Other)×品質工学で用いる4つの分析手法のマトリックスでの不具合を表示する俯瞰図を自動的に出力することができる。これにより状態分析装置1によると、分析手法を試行錯誤する必要なく、短期間で容易に品質管理のどこに課題があるか把握することができ、観点の見落としも防ぐことができる。
【0058】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、分析部200において、不良の偏り、不良のばらつき、初期不良、及び摩耗不良の各検証項目の要因が発生しているか否かを分析するものとして説明した。分析の観点はこれらに限定されるものではなく、分析部200には他の分析手法を行う構成が追加されてもよい。第2実施形態では、上記の検証項目に更なる検証項目を追加して不良の要因を分析する。
【0059】
図28は、第2の実施形態にかかる状態分析装置2の構成を示すブロック図である。状態分析装置2は、第1実施形態に比して分析部200に既に用意されている検証項目とは異なる他の分析手法であるシューハート分析部225が追加されている。そして、4M・検証項目マスタ記憶部13にも既に用意されている検証項目とは異なる他の検証項目であるシューハート分析の検証項目が追加で記憶されている。状態分析装置2では、分析の検証項目および処理ブロックを追加または削除して検証項目を自由に取捨選択することが可能である。
【0060】
図29は、データの変数を定義する例を示す図である。後で説明するように、シューハートの管理図による分析を行うためには、「群」と呼ばれるグループ単位を定義するのに用いる変数を定める必要があり、この例ではデータ1がこれに該当する。
図30は、4Mの各管理項目に対して割り当てられる複数の検証項目を示す図である。ここでは、第1実施形態に比してシューハート分析の検証項目が追加されている(
図4参照)。
【0061】
図31は、統計量が時系列で変化するシューハートの管理図である。シューハート分析とは、データから算出した統計量を時系列順にならべた時の変動が統計的に極めて稀にしか起こらない異常な変動になっているか否かを判定する手法である。図示するように、ある日に急激な変動データが確認されるが、シューハート分析でこの変動が異常な変動なのか否かが分析される。
【0062】
図32は、シューハートの異常判定ルールを示す図である。図示するように、異常の判定は8つのルールに該当するか否かで行われる。
図33は、時系列で発生するデータの変動を示す図である。図示するように、シューハートの管理図の考え方では、生産工程の品質要素(4M)が均一とみなせる時間的ブロック(以下、「群」と呼ぶ)内での平均的な郡内変動は群1のように偶然変動(いつもの状態)とみなす。そして、シューハートの管理図の考え方では、偶然変動では説明できない群2のような群内変動や群3のような群間変動(いつもと異なる状態)を異常として検出する。
【0063】
シューハートの管理図では、データの各群から算出した統計量がプロットされる(
図31参照)。統計量は、例えば群の平均値、中央値、ばらつき(最大値と最小値の差)などである。
図34は、シューハート分析によって分析される異常を示す図である。シューハート管理図による分析では、異常が発生した群と発生しなかった群とで不良率を比較することで、シューハートの異常と不良とに関係性があるか否かが調査される。
【0064】
以下、シューハート分析部225による具体的な分析手順について説明する。シューハートの分析を行う際には、変数定義データにおいて、どのデータが群を規定する変数(以下、群変数と呼ぶ)であるかを定義しておく(
図29参照)。また、4M・検証項目マスタ記憶部13の検証項目に「シューハート」を追加する。また、分析部200にシューハート分析部225が追加される。ここで、4M・検証項目マスタ記憶部13の検証項目と分析部200のシューハート分析部225を追加する場合、ユーザによって設定されてもよいし、他の状態分析装置2と接続されることにより自動的に追加されてもよい。
【0065】
図35は、シューハート分析に用いられる入力データを示す図である。分析対象となる入力データに対して、変数定義データ記憶部12においてデータ1が群変数に指定されているものとする。また、データは時系列順に並んでいることを前提とする。この条件において、群変数が同一の値を取り続けている場合にはこれらのデータを同一の群と考えて入力データをデータ分割部130によって群単位に分割し、シューハート分析部225によって群毎に統計量(例えば平均値)を算出する。
【0066】
図36は、シューハート分析部225による統計量の算出結果を示す図である。数値をグラフにプロットすると、時系列グラフが得られる(
図31参照)。シューハート分析部225は、群単位で算出された統計量に8つのルール(
図32参照)のいずれかに該当する群があるかどうかを検索する。シューハート分析部225は、検索の結果、8つのルールに該当する群があればその群で異常が発生したものと判定する。
図37は、群単位で判定処理された結果を示す図である。次にシューハート分析部225は、群単位になっている
図37のデータを元の個体単位のデータに展開し、連続する群のそれぞれで発生した異常を判定する。
【0067】
図38は、シューハート分析による異常判定を示す図である。図示するように、シューハート分析部225は、例えば群5のように、1つの群を異常と判定した場合、その群に含まれる全ての個体において異常が発生したものとして扱う。以後、シューハート分析部225は、シューハートの異常と目的変数との間に関係性があるか否かを検定により判定する。シューハート分析部225は、シューハートの異常があった個体集合となかった個体集合とで検定を実行する。この処理は第1の実施形態で説明した不良の偏りを分析する手続きと同一である。
【0068】
シューハート分析部225は、例えば入力データの目的変数が連続値であればt検定を行う。
図39は、シューハート分析部225によるt検定の結果を示す図である。シューハート分析部225は、例えば入力データの目的変数が離散値であればFisher検定を実施し、検定p値を得る。
図40は、シューハート分析部225によるFisher検定の結果を示す図である。以後の状態分析装置2における処理は第1の実施形態と同様である。
【0069】
判定部300において4Mと各検証項目とからなるマトリクスに検定p値を集計し、表示部400で判定結果を示す画像IMによって可視化すると、シューハートの管理図による分析を加えたマッピングが完成する。
図41は、判定結果表示部に表示される画像IMを示す図である。
【0070】
以下、状態分析装置2の処理について説明する。S221及びS234のシューハート分析部225による分析処理以外は第1の実施形態の処理と同一であるため、以下ではS221及びS234の処理内容のみ説明する。
図42及び
図43は、状態分析装置2の処理を示すフローチャートである。
【0071】
検証項目定義部120においてシューハート分析を加えた検証項目を入力する(ステップS211)。シューハート分析部225は、データの説明変数の群毎の統計量を算出し、群毎にシューハートの異常判定ルールに該当するか否かを判定する。シューハート分析部225は、目的変数が連続値の場合に、シューハートの異常があった個体集合となかった個体集合とでt検定を実行し検定p値を算出する(ステップS221)。シューハート分析部225は、目的変数が離散値の場合に、シューハートの異常があった個体集合となかった個体集合とでFisher検定を実行し検定p値を算出する(ステップS234)。
【0072】
以上で説明した第2の実施形態に係る状態分析装置2によると、分析部200で他の分析部を追加することにより、ユーザが所望の検証項目において不良等が発生している状態を可視化された態様で容易に把握することができる。具体的には状態分析装置2によると、シューハートの管理図による分析を加えることで、品質に影響を与える「いつもとは異なる状態(異常)」を自動抽出することができる。
【0073】
以上で説明した少なくとも一つの実施形態によれば、状態分析装置1がデータ分類部100と、分析部200と、判定部300と、を持つことにより、製品に生じる状態を様々な分析手法により分析することができる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。例えば、実施形態の状態分析装置は製造ラインの不良要因を分析する場合に適用する他に、製造ライン以外の不良要因を分析するために適用ことができる。