(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0013】
(1)第1の実施の形態
(エレベーターシステム)
図1において、100は全体として第1の実施の形態によるエレベーターシステムを示す。このエレベーターシステム100は、複数の異なる建物1(建物1a〜1d)内に設置された複数のエレベーター2(エレベーター2a〜2d)と、エレベーター2の作動状態を監視する監視装置3(監視装置3a〜3d)と、建物1から離れた遠隔地に設けられ、監視装置3および監視回線4を介してエレベーター2の作動状態を遠隔的に監視する監視センタ5とを備える。
【0014】
また、エレベーターシステム100は、通信網6を介して監視センタ5と接続され、エレベーター2の冠水退避運転の設定、エレベーター2の冠水退避運転に係る報知などが可能であって、エレベーター2の所有者・管理者27(27a〜27d)が操作可能な制御端末26(26a〜26d)を備える。なお、冠水退避運転では、最上階が基準階に変更されてサービスが継続されてもよいし、退避階(例えば最上階)に移動後、運転が休止されてもよいし、冠水による機器の破損を軽減するその他の運転が行われてもよい。
【0015】
また、エレベーターシステム100は、電話回線28を介して監視センタ5と接続され、エレベーター2の冠水退避運転に係る報知などが可能であって、エレベーター2の所有者・管理者27が操作可能な電話機29(29a〜29d)を備える。
【0016】
また、エレベーターシステム100は、通信網6を介して監視センタ5と接続され、エレベーター2の冠水退避運転の設定、エレベーター2の冠水退避運転に係る報知などが可能であって、エレベーター2の保守員36(36a〜36d)が操作可能な制御端末37(37a〜37d)を備える。
【0017】
また、エレベーターシステム100は、電話回線28を介して監視センタ5と接続され、エレベーター2の冠水退避運転に係る報知などが可能であって、エレベーター2の保守員36が操作可能な電話機38(38a〜38d)を備える。
【0018】
(監視センタ)
監視センタ5は、例えば情報処理装置(報知制御装置、エレベーター遠隔制御装置など)であり、CPU(Central Processing Unit)などの制御装置、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、通信インターフェースなどを備え、制御装置が記憶装置に記憶されたプログラムおよびデータを読み出して実行することで、後述の各部(各種の機能)が実現される。なお、各種の機能の一部または全部は、回路などのハードウェアにより実現されてもよい。
【0019】
より具体的には、監視センタ5は、監視回線4、通信網6、電話回線28に接続される通信部9と、通信部9を介してエレベーター2に冠水退避運転を連動設定する遠隔制御設定部10と、通信部9を介して、関係者(エレベーター2の所有者・管理者27、保守員36など)に冠水退避運転に係る報知をするための報知デバイス(制御端末26、制御端末37、電話機29、電話機38、後述の表示部、警報装置等)に指令する報知司令部30とを備える。
【0020】
遠隔制御設定部10は、冠水退避運転を行うエレベーター2(以下では冠水退避運転エレベーターと称する。なお、冠水退避運転エレベーターとしてエレベーター2aを例に挙げて適宜説明する。)と連動して冠水退避運転させるエレベーター(連動対象エレベーター)を抽出する連動設定対象抽出部14を備える。
【0021】
連動設定対象抽出部14は、エレベーター検索部15、近隣閾値格納部16、標高比較部17、雨量比較部18、および雨量閾値格納部19を備え、エレベーター2とエレベーター2の所在地とが対応付けられた所在地情報を記憶する所在地情報11、建物1と建物1の標高とが対応付けられた標高情報を記憶する標高情報12、および位置と雨量(例えば直近の規定時間の雨量)とが対応付けられた雨量マップ情報を記憶する雨量マップ情報13に基づいて、冠水退避運転エレベーターから所定範囲内のエレベーター2を識別し、識別されたエレベーター2の所在地における雨量と、冠水退避運転エレベーターの設置高(基準地点からの高さを示すものであり、例えば、標高、海抜など。)と識別されたエレベーター2の設置高との高低関係とに基づいて、連動対象エレベーターを抽出する。なお、雨量マップ情報13は、エレベーター2ごとに雨量を記憶してもよいし、エレベーター2を含む地域(所定領域)ごとに雨量を記憶してもよいし、所定の雨量(雨量閾値)を超える地域(所定領域)の情報を記憶してもよいし、その他の形式で情報を記憶してもよく、定期的または適宜のタイミングで気象庁などの外部ソースから情報が収集されて更新される。
【0022】
エレベーター検索部15は、冠水退避運転エレベーターの所在地から所定領域内に存在する近隣のエレベーター2(以下では近隣エレベーターと称する。)を検索(識別)する。例えば、エレベーター検索部15は、所在地情報11に記憶された所在地と近隣閾値格納部16に記憶された近隣閾値とに基づいて、近隣エレベーターを検索する。
【0023】
標高比較部17は、エレベーター検索部15によって検索された近隣エレベーターを有する建物1の標高が冠水退避運転エレベーターを有する建物1の標高に比べて低いか否かを判断する。例えば、標高比較部17は、標高情報12に記憶された建物1の標高情報に基づいて、近隣エレベーターを有する建物1の標高が、冠水退避運転エレベーターを有する建物1の標高に比べて低いか否かを判断する。本例では、
図1に示すように、エレベーター2bを有する建物1bの標高は、エレベーター2aを有する建物1aの標高に比べて低くなっている。
【0024】
雨量比較部18は、冠水退避運転エレベーターを有する建物1の標高に比べて標高が低いと標高比較部17によって判断された近隣エレベーターを有する建物1の所在地の雨量が予め設定された雨量閾値より多いか否かを判断する。例えば、雨量比較部18は、近隣エレベーターを有する建物1の所在地における雨量マップ情報13に記憶された雨量が雨量閾値格納部19に記憶された雨量閾値より多いか否かを判断する。
【0025】
そして、連動設定対象抽出部14は、雨量比較部18により雨量閾値より多いと判定された近隣エレベーターを連動対象エレベーターとして抽出する。つまり、連動設定対象抽出部14は、近隣エレベーターを特定し、近隣エレベーターのうち、標高が冠水退避運転エレベーターの標高より低い近隣エレベーターであって、所在地における雨量が雨量閾値を超える近隣エレベーターを特定し、当該近隣エレベーターを連動対象エレベーターとして抽出(特定)する。
【0026】
また、報知司令部30は、該当するエレベーター2が設けられる建物1内の警報装置および表示部、該当するエレベーター2の所有者・管理者27の制御端末26および電話機29、並びに、該当するエレベーター2の保守員36の制御端末37および電話機38に対し、冠水退避運転が実施されたこと、冠水のおそれがあることなどを報知するように司令(制御)する。
【0027】
より具体的には、報知司令部30は、第2エレベーター検索部31、近隣第2閾値格納部32、第2標高比較部33、第2雨量比較部34、雨量第2閾値格納部35、および保守員検索部42を備え、所在地情報11、標高情報12、雨量マップ情報13、およびエレベーター2と保守員36とが対応付けられた保守員情報を記憶する保守員情報41に基づいて、冠水退避運転エレベーターから所定範囲内のエレベーター2を識別し、識別されたエレベーター2の所在地における雨量と、冠水退避運転エレベーターの設置高と識別されたエレベーター2の設置高との高低関係とに基づいて、報知を行う対象、および当該報知のタイミング(識別されたエレベーター2の関係者への報知)を制御する。
【0028】
第2エレベーター検索部31は、エレベーター検索部15によって近隣エレベーターとして検索されなかったエレベーター2から、近隣閾値よりも該当範囲が広くなるように予め設定された近隣第2閾値内に存在するエレベーター2(近隣第2エレベーター)を検索する。例えば、第2エレベーター検索部31は、所在地情報11に記憶された所在地と近隣第2閾値格納部32に記憶された近隣第2閾値とに基づいて近隣第2エレベーターを検索する。
【0029】
第2標高比較部33は、第2エレベーター検索部31によって検索された近隣第2エレベーターを有する建物1の標高が冠水退避運転エレベーターを有する建物1の標高に比べて低いか否かを判断する。例えば、第2標高比較部33は、標高情報12に記憶された標高情報に基づいて、近隣第2エレベーターを有する建物1の標高が、冠水退避運転エレベーターを有する建物1の標高に比べて低いか否かを判断する。本例では、
図1に示すように、エレベーター2cを有する建物1cの標高は、エレベーター2aを有する建物1aの標高に比べて低くなっている。
【0030】
第2雨量比較部34は、冠水退避運転エレベーターを有する建物1の標高に比べて標高が低いと第2標高比較部33によって判断された近隣第2エレベーターを有する建物1の所在地の雨量が予め設定された雨量第2閾値(将来的に冠水が発生するおそれのある雨量)以上であるか否かを判断する。また、第2雨量比較部34は、雨量比較部18によって雨量閾値以下であると判断された近隣エレベーターを有する建物1の所在地の雨量が、雨量閾値よりも該当範囲が広くなるように予め設定された雨量第2閾値以上であるか否かを判断する。例えば、第2雨量比較部34は、近隣第2エレベーターを有する建物1の所在地における雨量マップ情報13に記憶された雨量が雨量第2閾値格納部35に記憶された雨量第2閾値以上であるか否かを判断する。
【0031】
保守員検索部42は、保守員情報41に基づいて、連動対象エレベーターを担当する保守員36を特定する。
【0032】
上述のように、報知司令部30は、冠水退避運転に係る報知を行う対象のエレベーター2(将来的に冠水のおそれがあるエレベーター2)を特定(識別)して所定の報知を実施する。例えば、報知司令部30は、通信網6を介して、エレベーター2の所有者・管理者27の持つ制御端末26に、将来的に冠水のおそれがあることなどを情報発信する。
【0033】
ここで、建物1には、エレベーター2の冠水退避運転に伴って警報を発する警報装置20,21が設けられている。警報装置20は、エレベーター2aの乗りかご内に設置され、警報装置21は、管理室内に設置される。
図1では、建物1a内にのみ警報装置20,21を示しているが、建物1b〜1d内に同様の警報装置20,21が設けられている。
【0034】
また、建物1には、エレベーター2が冠水退避運転を実施する旨、冠水のおそれがある旨などを表示する表示部が設けられている。表示部としては、エレベーター2の乗りかご内に設置されたかご内インジケータ23、乗場に設置された乗場インジケータ25、乗場に設置された乗場モニタ24、管理室に設置されたモニタ22などを採用できる。なお、
図1では、建物1a内に表示部を示しているが、建物1b〜1d内に同様の表示部が設けられている。
【0035】
例えば、監視センタ5は、通信網6を介して、エレベーター2の所有者・管理者27の持つ制御端末26に、他のエレベーター2で冠水退避運転を実施したこと、および将来的に冠水のおそれがあることを情報発信する。また、監視センタ5は、電話回線28を介して、エレベーター2の所有者・管理者27の持つ電話機29に、他のエレベーター2で冠水退避運転を実施したこと、および将来的に冠水のおそれがあることを情報発信する。これにより、エレベーター2の所有者・管理者27に他のエレベーター2の冠水退避運転の実施、および自身のエレベーター2が将来的に冠水のおそれがあることを確実に知らせることができる。
【0036】
また、例えば、監視センタ5は、通信網6を介して、エレベーター2の保守員36の持つ制御端末37に、他のエレベーター2で冠水退避運転を実施したこと、および将来的に冠水のおそれがあることを情報発信する。また、監視センタ5は、電話回線28を介して、エレベーター2の保守員36の持つ電話機38に他のエレベーター2で冠水退避運転を実施したこと、および将来的に冠水のおそれがあることを情報発信する。これにより、エレベーター2の保守員36に他のエレベーター2の冠水退避運転の実施、および担当のエレベーター2が将来的に冠水のおそれがあることを確実に知らせることができる。
【0037】
(連動設定処理)
図2は、連動設定処理に係る処理手順を示す。なお、
図2では、冠水退避運転エレベーターをエレベーターAと示している。
【0038】
エレベーターAの所有者・管理者27が制御端末26を操作し、エレベーターAの冠水退避運転を遠隔で制御設定すると(ステップS1)、制御端末26は、監視センタ5の連動設定対象抽出部14に対し、連動設定が必要となるエレベーター2の有無確認を要求する(ステップS2)。
【0039】
連動設定対象抽出部14のエレベーター検索部15は、有無確認の要求に基づいて、冠水退避運転が遠隔設定されたエレベーターAの所在地を所在地情報11から抽出する(ステップS3)。
【0040】
続いて、エレベーター検索部15は、近隣閾値格納部16から近隣閾値を読み出し、エレベーターAの所在地から近隣閾値内に存在するエレベーター2(近隣エレベーター)の情報を所在地情報11から抽出する(ステップS4)。例えば、エレベーターAがエレベーター2aである場合、
図1に示すように、エレベーター2aが含まれる近隣閾値内にエレベーター2bが存在していることから、エレベーター2bが近隣エレベーターとして抽出される。
【0041】
続いて、エレベーター検索部15は、近隣エレベーターを抽出したか否かを判定する(ステップS5)。エレベーター検索部15は、近隣エレベーターを抽出したと判定した場合、ステップS6に処理を移し、近隣エレベーターを抽出していないと判定した場合、
図3のステップS101に処理を移す。
【0042】
ステップS6では、標高比較部17は、エレベーター検索部15で検索された近隣エレベーターを有する建物1の標高情報と、冠水退避運転が遠隔設定されたエレベーターAを有する建物1の標高情報とを標高情報12から抽出する。
【0043】
続いて、標高比較部17は、近隣エレベーターを有する建物1の標高が、遠隔設定されたエレベーターAを有する建物1の標高に比べて低いか否かを判定する(ステップS7)。標高比較部17は、近隣エレベーターを有する建物1の標高が、エレベーターAを有する建物1の標高に比べて低いと判定した場合、ステップS8に処理を移し、近隣エレベーターを有する建物1の標高が、エレベーターAを有する建物1の標高に比べて低くない(高いまたは同じ)と判定した場合、
図3のステップS101に処理を移す。
【0044】
ステップS8では、雨量比較部18は、エレベーターAよりも標高が低い近隣エレベーターの所在地における雨量情報を雨量マップ情報13から抽出する。
【0045】
続いて、雨量比較部18は、雨量閾値格納部19から雨量閾値を読み出し、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量閾値より多いか否か判定する(ステップS9)。雨量比較部18は、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量閾値より多いと判定した場合、判定対象の近隣エレベーターを連動対象エレベーターとしてステップS10に処理を移し、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量閾値以下であると判定した場合、
図3のステップS101に処理を移す。
【0046】
ステップS10では、遠隔制御設定部10は、連動対象エレベーターに冠水退避運転の実施を指令する。より具体的には、遠隔制御設定部10は、冠水退避運転エレベーターから近隣閾値内にあり、冠水退避運転エレベーターを有する建物1の標高よりも低く、かつ所在地の雨量が雨量閾値よりも多いエレベーター2に対して、通信部9、監視回線4、および監視装置3を介して、冠水退避運転の実施(設定)を指令する。
【0047】
続いて、監視センタ5の遠隔制御設定部10は、冠水退避運転の設定に係る報知を制御する(ステップS11)。例えば、監視センタ5は、通信網6を介して連動対象エレベーターの所有者・管理者27の所有する制御端末26に電子メールなどで冠水退避運転の連動設定を報知する。また、例えば、監視センタ5は、電話回線28を介して連動対象エレベーターの所有者・管理者27の所有する電話機29に自動音声などで冠水退避運転の連動設定を報知する。また、例えば、監視センタ5は、連動対象エレベーターの建物1に備えられた警報装置および表示部に冠水退避運転の連動設定を報知する。
【0048】
続いて、監視センタ5の保守員検索部42は、保守員情報41に基づいて、連動対象エレベーターを担当する保守員36の情報を抽出する(ステップS12)。
【0049】
続いて、監視センタ5の遠隔制御設定部10は、冠水退避運転の設定に係る報知を制御する(ステップS13)。例えば、監視センタ5は、通信網6を介して、抽出した保守員36の所有する制御端末37に電子メールなどで冠水退避運転の連動設定を報知する。また、例えば、監視センタ5は、通信網6を介して、抽出した保守員36の所有する電話機38に自動音声などで冠水退避運転の連動設定を報知する。
【0050】
上記処理によれば、冠水退避運転の連動設定を実施した際に、連動設定されたエレベーター2の保守員36に対して冠水退避運転の連動設定を確実に報知でき、保守員36が冠水退避運転によりエレベーター2を利用できなくなる状態を故障と勘違いしてしまい、不要に故障調査を実施してしまう事態を回避できるようになる。また、保守員36が天気予報などの情報により事前にエレベーター2の冠水退避運転を設定しようと該当エレベーター2のビルへ不要に出動するだけでなく、冠水退避運転中に冠水退避運転を設定することで故障を発生させる事態を回避できるようになる。
【0051】
(報知制御処理)
図3は、冠水のおそれがあるエレベーター2の関係者(例えば所有者・管理者27)に報知を行うための報知制御処理に係る処理手順を示す。
【0052】
ステップS101では、エレベーター検索部15は、近隣閾値格納部16から近隣閾値を読み出し、エレベーターAの所在地から近隣閾値内に存在するエレベーター2(近隣エレベーター)の情報を所在地情報11から抽出する。
【0053】
続いて、エレベーター検索部15は、近隣エレベーターを抽出したか否かを判定する(ステップS102)。エレベーター検索部15は、近隣エレベーターを抽出したと判定した場合、ステップS103に処理を移し、近隣エレベーターを抽出していないと判定した場合、ステップS115に処理を移す。
【0054】
ステップS103では、標高比較部17は、エレベーター検索部15で検索した近隣エレベーターを有する建物1の標高情報と、冠水退避運転が遠隔設定されたエレベーターAを有する建物1の標高情報とを標高情報12から抽出する。
【0055】
続いて、標高比較部17は、近隣エレベーターを有する建物1の標高が、遠隔設定されたエレベーターAを有する建物1の標高に比べて低いか否かを判定する(ステップS104)。標高比較部17は、近隣エレベーターを有する建物1の標高が、エレベーターAを有する建物1の標高に比べて低いと判定した場合、ステップS105に処理を移し、近隣エレベーターを有する建物1の標高が、エレベーターAを有する建物1の標高に比べて低くない(高いまたは同じ)と判定した場合、ステップS109に処理を移す。
【0056】
ステップS105では、雨量比較部18は、エレベーターAよりも標高が低い近隣エレベーターの所在地における雨量を雨量マップ情報13から抽出する。
【0057】
続いて、雨量比較部18は、雨量閾値格納部19から雨量閾値を読み出し、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量閾値以上であるか否か判定する(ステップS106)。雨量比較部18は、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量閾値より多いと判定した場合、連動設定がなされているので処理を終了し、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量閾値以下であると判定した場合、ステップS107に処理を移す。
【0058】
ステップS107では、報知司令部30は、ステップS106において雨量比較部18により雨量が雨量閾値より少ないと判断(診断)されたエレベーター2を抽出(特定)する。
【0059】
続いて、報知司令部30は、抽出したエレベーター2の所有者・管理者27に対して、将来的に冠水のおそれがあることを報知し(ステップS108)、所定時間が経過した後に再びステップS101からの処理を行うように(複数回の報知が行われるように)セットし、処理を終了する。例えば、報知司令部30は、抽出したエレベーター2がエレベーター2bである場合、通信網6を介して所有者・管理者27bの所有する制御端末26bに電子メールなどで将来的に冠水のおそれがあり、エレベーター2bを退避させるべき旨を報知(命令)し、電話回線28を介してエレベーター2bの所有者・管理者27bの所有する電話機29bに自動音声などで将来的に冠水のおそれがあり、エレベーター2bを退避させるべき旨を報知(命令)する。
【0060】
ステップS109では、雨量比較部18は、標高比較部17にてエレベーターAより標高が高いと判断された近隣エレベーターの所在地における雨量を雨量マップ情報13から抽出する。
【0061】
続いて、雨量比較部18は、雨量閾値格納部19から雨量閾値を読み出し、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量閾値より多いか否か判定する(ステップS110)。雨量比較部18は、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量閾値より多いと判定した場合、ステップS108に処理を移し、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量閾値以下であると判定した場合、ステップS111に処理を移す。
【0062】
ステップS111では、第2雨量比較部34は、雨量比較部18にて雨量が雨量閾値以下であると判断された近隣エレベーターの所在地における雨量を雨量マップ情報13から抽出する。
【0063】
続いて、第2雨量比較部34は、雨量第2閾値格納部35から雨量第2閾値を読み出し、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量第2閾値以上であるか否か判定する(ステップS112)。第2雨量比較部34は、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量第2閾値より多いと判定した場合、ステップS113に処理を移し、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量第2閾値以下であると判定した場合、ステップS114に処理を移す。
【0064】
ステップS113では、報知司令部30は、ステップS112で雨量が雨量第2閾値より多いと判定されたエレベーター2の所有者・管理者27に対して、将来的に冠水のおそれがあることを報知し、処理を終了する。ここで、雨量が雨量第2閾値より多いかつ雨量閾値以下であることから、この際の報知は、ステップS108と比較して危険度を下げて行われる。例えば、報知司令部30は、ステップS112で雨量が雨量第2閾値より多いと判定されたエレベーター2がエレベーター2bである場合、電子メールなどでの報知を行わず、電話回線28を介してエレベーター2bの所有者・管理者27bの所有する電話機29bに自動音声などで将来的に冠水のおそれがあることを報知(警告)する。また、例えば、報知司令部30は、内容としては、エレベーター2bを退避すべき旨ではなく、エレベーター2bを退避させた方がよい旨を報知(警告)する。
【0065】
ステップS114では、報知司令部30は、ステップS112で雨量が雨量第2閾値以下であると判定されたエレベーター2の所有者・管理者27に対して、将来的に冠水のおそれがあることを報知し、処理を終了する。ここで、雨量が雨量第2閾値以下であることから、この際の報知は、ステップS113と比較して危険度を下げて行われる。例えば、報知司令部30は、ステップS112で雨量が雨量第2閾値以下であると判定されたエレベーター2がエレベーター2bである場合、自動音声などでの報知を行わず、通信網6を介して所有者・管理者27bの所有する制御端末26bに電子メールなどで将来的に冠水のおそれがあることを報知(注意)する。また、例えば、報知司令部30は、内容としては、エレベーター2bを退避させた方がよい旨ではなく、エレベーター2bの退避について検討した方がよい旨を報知(注意)する。
【0066】
ステップS115では、第2エレベーター検索部31は、近隣第2閾値格納部32から近隣第2閾値を読み出し、エレベーターAの所在地から近隣第2閾値内に存在するエレベーター2(近隣第2エレベーター)の情報を所在地情報11から抽出する。例えば、エレベーターAがエレベーター2aである場合、
図1に示すように、エレベーター2cが近隣第2エレベーターとして抽出される。
【0067】
続いて、第2エレベーター検索部31は、近隣第2エレベーターを抽出したか否かを判定する(ステップS116)。第2エレベーター検索部31は、近隣第2エレベーターを抽出したと判定した場合、ステップS117に処理を移し、近隣第2エレベーターを抽出していないと判定した場合、処理を終了する。
【0068】
ステップS117では、第2標高比較部33は、第2エレベーター検索部31で検索された近隣第2エレベーターを有する建物1の標高情報と、冠水退避運転を遠隔設定されたエレベーターAを有する建物1の標高情報とを標高情報12から抽出する。
【0069】
続いて、第2標高比較部33は、近隣第2エレベーターを有する建物1の標高が、遠隔設定されたエレベーターAを有する建物1の標高に比べて低いか否かを判定する(ステップS118)。第2標高比較部33は、近隣第2エレベーターを有する建物1の標高が、エレベーターAを有する建物1の標高に比べて低いと判定した場合、ステップS119に処理を移し、近隣第2エレベーターを有する建物1の標高が、エレベーターAを有する建物1の標高に比べて低くない(高いまたは同じ)と判定した場合、処理を終了する。
【0070】
ステップS119では、第2雨量比較部34は、エレベーターAよりも標高1が低い近隣第2エレベーターの所在地における雨量を雨量マップ情報13から抽出する。
【0071】
続いて、第2雨量比較部34は、雨量第2閾値格納部35から雨量第2閾値を読み出し、近隣第2エレベーターの所在地における雨量が雨量第2閾値より多いか否か判定する(ステップS120)。第2雨量比較部34は、近隣第2エレベーターの所在地における雨量が雨量第2閾値より多いと判定した場合、ステップS121に処理を移し、近隣第2エレベーターの所在地における雨量が雨量第2閾値以下であると判定した場合、処理を終了する。
【0072】
ステップS121では、報知司令部30は、ステップS120で雨量が雨量第2閾値より多いと判定されたエレベーター2の所有者・管理者27に対して、将来的に冠水のおそれがあることを報知し、処理を終了する。ここで、雨量は雨量第2閾値より多くても、近隣第2閾値以内かつ近隣閾値を超える範囲であることから、この際の報知は、ステップS114と比較して危険度を下げて行われる。例えば、報知司令部30は、ステップS120で雨量が雨量第2閾値より多いと判定されたエレベーター2がエレベーター2bである場合、自動音声などでの報知を行わず、通信網6を介して所有者・管理者27bの所有する制御端末26bに電子メールなどで将来的に冠水のおそれがあることを報知(通知)する。また、例えば、報知司令部30は、内容としては、近隣閾値内ではないが近隣第2閾値内で冠水退避運転の設定が行われたエレベーター2がある旨を報知(通知)する。
【0073】
上述したように、本実施の形態によれば、冠水退避運転エレベーターと共に冠水退避運転を必要する連動対象エレベーターに対して冠水退避運転を連動設定させた際に、連動対象エレベーターの保守員36に冠水退避運転の実施を報知することができる。これにより、冠水退避運転を連動設定したことにより発生する、エレベーターの保守員36の不要な故障調査および出動、二重の冠水退避運転を設定することによりエレベーター2が故障することを回避することができる。
【0074】
更に、冠水退避運転を必要としないと判断されたエレベーター2に対しても、所在地、標高、および雨量に基づいて冠水のおそれの度合いを区別してエレベーター2の所有者・管理者27に対してその旨を報知することができる。これにより、冠水退避運転の連動設定が不要であると判断されたエレベーターが判断後の雨量増加、長期的な雨天などにより結果的に冠水で故障する事態を回避できるようになる。
【0075】
更に、エレベーターの位置、標高、およびその場所の雨量に基づいて決定される報知レベルに応じて報知回数を変更することで、関係者に報知をより適切に認識させることができる。また、報知レベルに応じて報知内容を変更することで、エレベーターの位置、標高、およびその場所の雨量が加味された内容をより適切に関係者に知らせることができる。また、報知レベルに応じて報知デバイスを変更することで、関係者は、より適切に報知を受け取ることができる。更に、報知回数、報知内容、および報知デバイスを適宜に組み合わせることで、関係者に対してより適切に報知を行うことができる。
【0076】
かかる本実施の形態の構成によれば、信頼性の高いエレベーター2の遠隔制御および冠水避難運転を実現させることができる。
【0077】
(2)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、本発明を監視センタ5に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の監視センタに広く適用することができる。
【0078】
また上述の第1実施形態においては、雨量比較部18、雨量マップ情報13、および雨量閾値格納部19を備え、雨量を考慮して冠水退避運転エレベーターに連動させて近隣エレベーターを冠水退避運転させる構成について述べたが、本発明はこれに限られず、雨量比較部18、雨量マップ情報13、および雨量閾値格納部19を備えずに(雨量を考慮せずに)、標高比較部17によって近隣エレベーターを有する建物1の標高が、冠水退避運転エレベーターを有する建物1の標高に比べて低いと判断されたときに、近隣エレベーターを冠水退避運転させる構成にしてもよい。
【0079】
また上述の第1実施形態においては、標高比較部17および標高情報12を備え、標高を考慮して冠水退避運転エレベーターに連動させて近隣エレベーターを冠水退避運転させる構成について述べたが、本発明はこれに限られず、標高比較部17および標高情報12を備えずに(標高を考慮せずに)、雨量比較部18が雨量閾値格納部19から雨量閾値を読み出し、近隣エレベーターの所在地における雨量が雨量閾値以上であると判断したときに、近隣エレベーターを冠水退避運転させる構成にしてもよい。
【0080】
また上述の第1実施形態においては、雨量比較部18、雨量マップ情報13、雨量閾値格納部19、第2雨量比較部34、および雨量第2閾値格納部35を備え、雨量を考慮して報知を制御する構成ついて述べたが、本発明はこれに限られず、これらの構成を備えずに(雨量を考慮せずに)、報知を制御するようにしてもよい。
【0081】
また上述の第1実施形態においては、標高比較部17、標高情報12、および第2標高比較部33を備え、標高を考慮して報知を制御する構成について述べたが、本発明はこれに限られず、これらの構成を備えずに(標高を考慮せずに)、報知を制御するようにしてもよい。
【0082】
また上述の第1実施形態においては、近隣閾値、雨量閾値、近隣第2閾値、および雨量第2閾値を用いて多様な報知を実現する構成について述べたが、本発明はこれに限られず、近隣第2閾値および雨量第2閾値を用いることなく、近隣閾値および雨量閾値のみを用いて報知を制御するようにもよい。この場合、例えば、漏れがないように閾値を広く設定した近隣閾値および雨量閾値が用いられる。
【0083】
また上述の第1実施形態においては、報知回数、報知内容、報知デバイスの少なくとも1つが異なる危険度(報知レベル)を4種類(lv1〜lv4)設け、所在地、標高、雨量に基づいて何れかの報知レベルで報知を行う構成について述べたが、本発明はこれに限られず、報知レベルを4種類より少なく設定してもよいし、多く設定してもよい。
【0084】
また上述の第1実施形態においては、報知制御処理では、エレベーター2の所有者・管理者27に対して報知を行う構成について述べたが、本発明はこれに限られず、エレベーター2の保守員36に対して報知を行うようにしてもよいし、エレベーター2に係る警報装置および表示部で報知が行われるようにしてもよい。
【0085】
また上述の第1実施形態においては、建物1aに設置された警報装置および表示部は建物1b〜1dにも設定されていると述べたが、本発明はこれに限られず、全てを設置する必要はなく、設置されている装置に対して報知することとしてもよい。例えば建物1bには警報装置が設置され、建物1cには表示部が設置されていた場合、エレベーター2bが報知対象となった場合、警報装置のみで報知を行い、エレベーター2cが報知対象となった場合、表示部のみで報知を行ってもよい。
【0086】
また上述の第1実施形態においては、報知対象となったエレベーター2の所有者・管理者27が所持する制御端末26および電話機29、保守員36が所持する制御端末37および電話機38を区別して報知するように述べたが、本発明はこれに限られず、全ての装置に報知してもよいし、その他の装置の組合せとして報知をしてもよい。
【0087】
また上述の第1実施形態においては、冠水退避運転を連動設定しないと判断された場合に、将来的に冠水のおそれがある旨の報知を行う構成について述べたが、本発明はこれに限られず、ステップS10で連動設定をせずに、関係者に対して、将来的に冠水のおそれがある旨の報知を行うように構成しもよい。この場合、危険度が最も高い報知レベル(lv1(警告)よりも高いlv0(危険))で報知が行われるのが好適である。
【0088】
また上述の実施の形態に係るエレベーターシステム100は、必ずしも開示した全ての機能構成を備える形態に限定されない。すなわち、ある構成部分を他の構成に置き換えたり、ある構成部分に他の構成を加えたりすることも可能である。例えば、
図1中では監視センタ5内で連動設定対象および報知対象を抽出し、監視センタ5よりエレベーター2へ冠水退避運転を遠隔設定し、エレベーター2の所有者・管理者27、および保守員36に冠水退避運転の実施および将来的に冠水のおそれがあることを報知する構成を説明したが、エレベーター2に接続された監視装置3に連動設定対象抽出部14または報知司令部30を設け、監視装置3から他のエレベーター2に接続された監視装置3へ冠水退避運転を遠隔設定したり、監視装置3から他のエレベーター2の所有者・管理者27および保守員36に冠水退避運転の実施および将来的に冠水のおそれがあることを報知したりしてもよい。ただし、こうした場合、監視装置3の一台あたりの機能を増やすためにコスト面と取付環境を考慮して実施することが好ましい。さらに、
図1に示す構成では、建物1、エレベーター2、および監視装置3は、実質上、4系統の場合に該当しているが、その系統数は、1系統、2系統、3系統、5系統以上であってもよい。つまり、本発明は、
図1、
図2、および
図3を参照して説明した実施の形態に限定されない。
【0089】
付言するならば、エレベーター検索部15、第2エレベーター検索部31等は、識別部の一例である。雨量比較部18、第2雨量比較部34等は、抽出部の一例である。遠隔制御設定部10、報知司令部30等は、制御部の一例である。標高比較部17、第2標高比較部33等は、特定部の一例である。