(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分a)の共役ジエンをベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、10〜98.5重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の粒状組成物。
成分a)のブタジエンをベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、25〜85重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の粒状組成物。
成分b)のα,β−不飽和ニトリルをベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、0.5〜60重量%であることを特徴とする、請求項1〜3の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
成分b)のアクリロニトリルをベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、5〜55重量%であることを特徴とする、請求項1〜3の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
成分b)のアクリロニトリルをベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、15〜50重量%であることを特徴とする、請求項1〜3の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
成分c)をベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、0.5〜10重量%であることを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
成分c)をベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、0.5〜8重量%であることを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
成分c)をベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、0.5〜5重量%であることを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
成分d)をベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、0.5〜20重量%であることを特徴とする、請求項1〜9の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
成分d)をベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、1〜15重量%であることを特徴とする、請求項1〜9の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
成分d)をベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、1〜10重量%であることを特徴とする、請求項1〜9の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
前記成分c)の多官能、ラジカル重合性コモノマーが、2個以上の官能性、ラジカル重合性基を有するモノマーから選択されることを特徴とする、請求項1〜12の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
前記成分c)の多官能、ラジカル重合性コモノマーが、二不飽和もしくは多不飽和のモノマーから選択されることを特徴とする、請求項1〜12の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
前記成分c)の多官能、ラジカル重合性コモノマーが、2、3または4個の重合性C=C二重結合を有する化合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜12の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
前記成分c)の多官能、ラジカル重合性コモノマーが、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2−ポリブタジエン、N,N’−m−フェニレンマレイミド、2,4−トリレンビス(マレイミド)、トリアリルトリメリテート、アクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタンまたはアクリル酸2−アクリルアミドエチル、およびC2〜C10の多価アルコールの多官能のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびイタコン酸エステルならびにそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜12の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
前記成分c)の多官能、ラジカル重合性コモノマーが、メチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレン−1,6−ビスアクリルアミドおよびジエチレントリアミン−トリスメタクリルアミドから選択されることを特徴とする、請求項1〜12の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
成分d)の官能化コモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびアミン官能性(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜18の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
成分d)の官能化コモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸一級アミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸二級アミノアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エポキシ官能性モノマー、α,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルもしくはジエステルからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜18の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
成分d)の官能化コモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノ(C2〜C4)アルキル、アクロレイン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−アリル尿素、およびN−アリルチオ尿素、(メタ)アクリルアミド、単一もしくは二重にN−置換された(メタ)アクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、ヒドロキシ−もしくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メタクリル酸ステアリル、グリシジル(メタ)アクリレート、α,β−不飽和ジカルボン酸のC1〜C10アルキル、C2〜C12アルコキシアルキル、C1〜C12ヒドロキシアルキル、C5〜C12シクロアルキル、C6〜C12アルキルシクロアルキル、C6〜C14アリールのモノエステルまたはジエステル、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜18の少なくとも1項に記載の粒状組成物。
請求項1〜24の少なくとも1項に記載の粒状組成物を製造するための方法であって、少なくとも成分a)〜d)を乳化重合にかけ、次いで、噴霧乾燥させることを特徴とする方法。
請求項1〜24の少なくとも1項に記載の粒状組成物を製造するための方法であって、少なくとも成分a)〜d)を乳化重合にかけ、次いで、剥離剤を添加してから、噴霧乾燥させることを特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の組成物のコポリマーは、エラストマー性であり、以下ではミクロゲルとも呼ばれる。本発明の感覚において「固体状(solid)」という用語は、好ましくは、その組成物が、1barの大気圧下20℃で、1000Pasよりも高い動的粘度を有しているということを意味している。
【0015】
成分a)
成分a)の共役ジエンは、どのようなタイプであってもよい。(C
4〜C
6)共役ジエンを使用するのが好ましい。特に好ましいのは、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、またはそれらの混合物である。特に好ましいのは、1,3−ブタジエンおよびイソプレンまたはそれらの混合物である。特に好ましいのは、1,3−ブタジエンである。
【0016】
一つの好ましい実施態様においては、成分a)のブタジエンをベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、10〜98.5重量%、好ましくは25〜85重量%である。
【0017】
成分b)
α,β−不飽和ニトリルとしては、各種公知のα,β−不飽和ニトリルを使用することができるが、(C
3〜C
5)−α,β−不飽和ニトリル、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物が好ましい。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0018】
一つの好ましい実施態様においては、成分b)のアクリロニトリルをベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、0.5〜60重量%、好ましくは5〜55重量%、より好ましくは15〜50重量%である。
【0019】
成分c)
一つの好ましい実施態様においては、成分c)をベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、0.5〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0020】
成分c)は、成分a)、b)およびd)とは異なっている。
【0021】
成分c)の多官能ラジカル重合性コモノマーは、2個以上の官能性、ラジカル重合性基を有するモノマー、特に二不飽和もしくは多不飽和のモノマーから選択するのが好ましく、より特には2、3もしくは4個の重合性C=C二重結合を有する化合物、たとえば、具体的には、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2−ポリブタジエン、N,N’−m−フェニレンマレイミド、2,4−トリレンビス(マレイミド)、トリアリルトリメリテート、アクリルアミドたとえばメチレン−ビスアクリルアミド、ヘキサメチレン−1,6−ビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、もしくはアクリル酸2−アクリルアミドエチル、そしてさらには特に、C
2〜C
10の多価アルコール、特にエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、2〜20個、特には2〜8個のオキシエチレン単位を有するポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびソルビトールの好ましくは多官能のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびイタコン酸エステル、脂肪族ジオールおよびポリオールから形成される不飽和ポリエステル、ならびにおよびそれらの混合物から選択される。
【0022】
成分c)の多官能ラジカル重合性コモノマーが以下のものから選択されるのがより好ましい:ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタン−1,4−ジオールジ(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物。
【0023】
上述の成分c)の多官能ラジカル重合性モノマーは、本発明の組成物におけるコポリマーの調製の際の架橋に特に役立っている。
【0024】
成分d)
一つの好ましい実施態様においては、成分d)をベースとするコポリマー単位の量が、全部のコモノマー単位を合計した量を規準にして、0.5〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0025】
成分d)は、成分a)〜c)とは異なっている。
【0026】
成分d)の好ましい官能化コモノマーとしては、以下のものが挙げられる:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アミン官能性(メタ)アクリル酸エステル、たとえば、(メタ)アクリル酸一級アミノアルキルエステル、たとえば(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、および(メタ)アクリル酸アミノブチル、(メタ)アクリル酸二級アミノアルキルエステル、特に(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノ(C
2〜C
4)アルキル、アクロレイン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−アリル尿素、およびN−アリルチオ尿素、(メタ)アクリルアミド、たとえば(メタ)アクリルアミド、単一もしくは二重にN−置換された(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、たとえば、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、たとえば、ヒドロキシ−もしくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メタクリル酸ステアリル、エポキシ官能性モノマー、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、α,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルもしくはジエステル、たとえば、アルキル、好ましくはC
1〜C
10アルキル、特にはエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルもしくはn−ヘキシル、アルコキシアルキル、好ましくはC
2〜C
12アルコキシアルキル、より好ましくはC
3〜C
8アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、好ましくはC
1〜C
12ヒドロキシアルキル、より好ましくはC
2〜C
8ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、好ましくはC
5〜C
12シクロアルキル、より好ましくはC
6〜C
12シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、好ましくはC
6〜C
12アルキルシクロアルキル、より好ましくはC
7〜C
10アルキルシクロアルキル、アリール、好ましくはC
6〜C
14アリールのモノエステまたはジエステル(ジエステルの場合においては、それらのエステルが混合エステルであってもよい)、およびそれらの混合物。
【0027】
さらなるモノマー
本発明の組成物におけるコポリマーにはさらに、0〜20重量%の、成分a)〜d)とは異なる、ラジカル重合性モノマーe)をベースとするさらなる構造単位が含まれていてもよい。ラジカル重合性モノマーe)は、好ましくは、以下のものから選択される:スチレン、イソプレン、2−クロロブタジエン、2,3−ジクロロブタジエン、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、たとえば(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、ならびにテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、およびそれらの混合物。
【0028】
本発明の組成物におけるコポリマーは、ブタジエン、アクリロニトリル、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)ならびに、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸グリシジル、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、およびメタクリルアミドの群から選択される少なくとも1種のモノマーをベースとするコポリマーであるのが好ましい。
【0029】
本発明の組成物におけるコポリマーは、高エネルギー放射線によって架橋されていないミクロゲルであるのが好ましい。ここでの高エネルギー放射線とは、便宜上、波長0.1μm未満の電磁線を意味している。
【0030】
本発明の組成物中のミクロゲルの一次粒子は、ほぼ球状の形状を有しているのが好ましい。DIN 53206:1992−08に従えば、一次粒子は、コヒーレント相の中に分散されたミクロゲル粒子であって、適切な物理的方法(電子顕微鏡)の手段によって個々の粒子として検出することが可能である(たとえば、Roempp Lexikon,Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,1998参照)。「ほぼ球状の(aproximately spherical)」形状という用語は、そのミクロゲルの分散された一次粒子が、電子顕微鏡を用いてその薄片を観察したときに、実質的に円形部分を形成しているように観察することが可能であるということを意味している。このことによって、本発明の組成物におけるミクロゲルが、「インサイチュー(in situ)」法で形成させた分散ゴム相(これは通常、不規則な形状を有している)とは区別される。本発明の組成物中のミクロゲル粒子は、そのミクロゲルゴム相が別の調製プロセスから得られているので、熱硬化性ポリマーの中で混合物を製造する分散の過程においても、実質的に均質な球形を保持し、事実上変化がない。分散の方法(これについては、以下で説明する)の結果として、ミクロゲルラテックスの中のミクロゲルの微細な粒径分布を、混合物にほぼ近似的に移行させることが可能であるが、その理由は、組成物を形成させる場合に、ミクロゲルおよびそれらの粒径分布には実質上何の変化も起きないからである。
【0031】
本発明の組成物中のミクロゲルの一次粒子は、好ましくは5〜500nm、より好ましくは20〜400nm、より好ましくはさらに20〜300nm、より好ましくはさらに20〜250nm、好ましくはさらに20〜150nm、そして好ましくはさらに30〜90nmの平均粒子直径を有している。
【0032】
本発明の組成物を製造する際に、ミクロゲルの一次粒子の平均粒子直径には実質的に変化がないので、その組成物におけるミクロゲルの一次粒子の平均粒子直径はやはり、適用媒体、より特には、熱硬化性ポリマーまたはその溶液、ミクロゲル/熱可塑性プラスチックの混合物の溶液、またはその他の溶解混合物の分散体における一次粒子の平均粒子直径に実質的に相当する。それは、DIN 53206に従い、分散体についてその目的に適した超遠心法により求めることができる。
【0033】
好ましくは乳化重合によって調製したコポリマーのラテックス中では、その一次粒子のサイズは、希釈したサンプルについての動的光散乱法によって近似的に求めることもできる。633nm(赤)および532nm(緑)でのレーザー操作が、通常実施される。動的光散乱法の場合においては、粒径分布曲線の中間値が得られる。
【0034】
好ましくは乳化重合によって調製されたミクロゲルの平均直径は、たとえば0.1μm(100nm)±0.01μm(10nm)のような高い精度で設定することが可能であって、それによりたとえば、全部のミクロゲル粒子の内の少なくとも75%が、0.095μm〜0.105μmの間のサイズを有するような粒径分布で製造することができる。その他の、特に5〜500nmの間の範囲の平均直径のミクロゲルを、高い精度で製造することが可能である(全部の粒子の内の少なくとも75重量%が、(超遠心法で測定した)積分粒径分布曲線の最大値の±10%の範囲内に収まる)。その結果、本発明の組成物の中のミクロゲルのモルホロジーを意のままに決めることが実際に可能である。
【0035】
本発明の組成物の中のミクロゲルは、好ましくは少なくとも約70重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%、さらに好ましくは少なくとも約90重量%の、23℃でのトルエン不溶性の画分(ゲル含量)を有する。ゲル含量は、トルエン中において23℃で測定する。この目的のためには、250mgのミクロゲルを、25mlのトルエン中において、23℃で24時間振盪させて膨潤させる。20 000rpmの遠心分離によって、不溶分を分離し、それを乾燥させる。「ゲル含量」は、乾燥させた残分の初期質量に対する比率であって、パーセントの単位で報告される。
【0036】
本発明の組成物の中のミクロゲルは、トルエン中において23℃で、好ましくは約80未満、より好ましくは60未満、より好ましくはさらに40未満の膨潤指数を有している。したがって、ミクロゲルの膨潤指数(Qi)が、1−15と1−10との間にあるのが好ましい。膨潤指数は、トルエン中において23℃で24時間かけて膨潤させた溶媒含有ミクロゲルの重量(20 000rpmで遠心分離させた後)と、乾燥させたミクロゲル重量とから、次式により計算する:
Qi=ミクロゲルの湿時重量/ミクロゲルの乾燥重量
【0037】
膨潤指数を測定するためには、より正確には、250mgのミクロゲルを、25mlのトルエン中において24時間かけて振盪させることにより膨潤させることができる。遠心分離によってゲルを分離してから、湿時に秤量し、70℃で、恒量になるまで乾燥させて、再度秤量する。
【0038】
本発明の組成物の中のミクロゲルは、好ましくは−100℃〜+120℃、より好ましくは−100℃〜+50℃、より好ましくはさらに−80℃〜+20℃、より好ましくはさらに−50℃〜+15℃、特には−50℃〜10℃、より特には−50℃〜0℃のガラス転移温度Tgを有している。
【0039】
本発明の組成物の中のミクロゲルが、5℃より大、好ましくは10℃より大、より好ましくは15℃より大のガラス転移幅を有しているのが好ましい。そのようなガラス転移幅を有するミクロゲルは、完全に均質に放射線架橋されたミクロゲルとは対照的に、一般的には、完全に均質には架橋されていない。
【0040】
ミクロゲルのガラス転移温度およびガラス転移幅(ΔTg)は、示差走査熱量測定(DSC)の手段によって測定される。TgおよびΔTgを測定するためには、2回の冷却/加熱サイクルを実施する。TgおよびΔTgは、2回目の加熱サイクルで測定する。その測定をするためには、Perkin−Elmer製のDSCサンプルホルダー(標準アルミニウムボート)の中で、選択されたミクロゲルの10〜12mgを使用する。第一のDSCサイクルは、最初に液体窒素を用いてサンプルを冷却して−100℃とし、次いで20K/分の速度で+150℃にまで加熱することにより実施する。サンプル温度が+150℃に達するやいなや、直ぐにサンプルを冷却することにより、第二のDSCサイクルを開始する。冷却は、約320K/分の速度で実施する。第二の加熱サイクルにおいては、第一のサイクルの場合と同様にして、サンプルを再加熱して+150℃とする。第二のサイクルにおける加熱速度もまた、20K/分である。第二の加熱操作のDSC曲線から、TgおよびΔTgを図式的に求める。この目的のためには、DSC曲線に対して3本の直線を引く。第一の直線は、Tgより低いDSC曲線の部分に引き、第二の直線は、変曲点を有するTgを通る曲線の部分に引き、そして第三の直線は、Tgより高いDSC曲線の部分に引く。このようにすると、二つの交点を有する3本の直線が得られる。その二つの交点はそれぞれ、特性温度として採用される。ガラス転移温度Tgは、それら二つの温度の中間値として得られ、ガラス転移幅ΔTgは、それら二つの温度の差から得られる。
【0041】
本発明の組成物の中のミクロゲルのヒドロキシル基含量は、DIN 53240に従い、無水酢酸と反応させ、その反応で放出された酢酸をKOHと反応させることにより、ヒドロキシル価(単位:mgKOH/gポリマー)として求めることができる。本発明の組成物の中のミクロゲルのヒドロキシル価は、好ましくは0.1〜100、より好ましくは0.5〜50mgKOH/gポリマーである。
【0042】
ヒドロキシル価の測定の中で、ミクロゲルの酸価を求めることもまた同様に可能である。この目的のためには、サンプル物質を、無水酢酸とは反応させず、代わりに、KOH溶液を用いて直接的に滴定すると、酸価がmgKOH/gポリマーの単位で得られる。本発明の組成物の中のミクロゲルの酸価は、好ましくは4〜100の間、より好ましくは5〜50mgKOH/gポリマーの間、より特には7.5〜40mgKOH/gポリマーである。
【0043】
本発明の組成物の全質量の一部としての剥離剤の割合は、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜15%、好ましくはさらに1〜10%である。本発明の組成物が、160〜600g/Lの嵩密度を有しているのが好ましい。
【0044】
方法
本発明はさらに、本発明の固体状組成物を製造するための方法にも関し、それは、少なくとも成分a)〜d)を乳化重合にかけ、場合によっては剥離剤を添加した後に、次いで噴霧乾燥させることを特徴としている。
【0045】
その乳化重合は、使用したモノマーの全量を規準にして70mol%以上、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上の転化率になるように実施するのが好ましい。転化率が、70%以上〜100%の範囲、好ましくは80%以上〜100%の範囲、より特には90%以上〜100%の範囲に達したら、一般的には重合を停止させる。
【0046】
重合温度は、一般的には5℃以上〜100℃、好ましくは5℃以上〜90℃、より特には8℃〜80℃の範囲である。
【0047】
乳化剤:
乳化重合は、一般的には、乳化剤を使用して実施される。この目的のためには、広い範囲で、当業者に公知で入手可能な乳化剤が存在する。使用可能な乳化剤としては、たとえば、アニオン性乳化剤、またはそうでなければ、中性の乳化剤が挙げられる。アニオン性乳化剤を使用するのが好ましく、水溶性の塩の形態で使用するのが、より特に好ましい。
【0048】
使用可能なアニオン性乳化剤としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸、およびレボピマル酸(laevopimaric acid)を含む樹脂酸混合物を二量化、不均化、水素化、および変性することによって得られる変性樹脂酸が挙げられる。一つの特に好ましい変性樹脂酸は、不均化樹脂酸である(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,6th edition,volume 31,pp.345〜355)。
【0049】
使用可能な他のアニオン性乳化剤は、脂肪酸である。それらの酸には、1分子あたり6〜22個のC原子が含まれる。それらは完全に飽和であってもよいし、そうでなければ、その分子中に1個または複数の二重結合を含んでいてもよい。脂肪酸の例としては、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。それらのカルボン酸は、通常、特定の由来の油脂、たとえばヒマシ油、綿実油、ラッカセイ油、アマニ油、ココナッツ脂、パーム核油、オリーブ油、ナタネ油、ダイズ油、魚油、および牛脂などをベースにしている(Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,6th edition,volume 13,pp.75〜108)。好ましいカルボン酸は、ココナッツ脂肪酸および牛脂に由来するもので、部分的または全面的に水素化されている。
【0050】
変性された樹脂酸および/または脂肪酸をベースとするこのタイプカルボン酸は、水溶性のリチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムの塩の形態で使用される。ナトリウム塩およびカリウム塩が好ましい。
【0051】
さらなるアニオン性乳化剤は、有機基に結合されたスルホン酸塩、硫酸塩、およびリン酸塩である。好適な有機基としては、脂肪族、芳香族、アルキル化芳香族化合物、縮合環芳香族化合物、さらにはメチレン橋かけされた芳香族化合物が挙げられるが、そのメチレン橋かけされた芳香族化合物および縮合環芳香族化合物は、さらにアルキル化されていてもよい。そのアルキル鎖の長さは、6〜25個のC原子である。芳香族化合物に結合されたアルキル鎖の長さは、3〜12個の間のC原子である。
【0052】
硫酸塩、スルホン酸塩およびリン酸塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムの塩の形態で使用される。ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムの塩が好ましい。
【0053】
そのようなスルホン酸塩、硫酸塩、およびリン酸塩の例は、ラウリル硫酸Na、アルキルスルホン酸Na、アルキルアリールスルホン酸Na、メチレン橋かけされたアリールスルホン酸のNa塩、アルキル化ナフタレンスルホン酸のNa塩、およびさらにはメチレン橋かけされたナフタレンスルホン酸のNa塩であるが、それらはオリゴマー化されていてもよく、そのような場合、オリゴマー化度は、2〜10の間である。通常、アルキル化ナフタレンスルホン酸およびメチレン橋かけされた(そして場合によってはアルキル化された)ナフタレンスルホン酸は、異性体混合物の形態になっていて、それは、一分子中に2個以上のスルホン酸基(2〜3個のスルホン酸基)を含んでいてもよい。特に好ましいのは、ラウリル硫酸Na、12〜18個のC原子を有するアルキルスルホン酸Na混合物、アルキルアリールスルホン酸Na、ジイソブチレンナフタレンスルホン酸Na、メチレン橋かけされたポリナフタレンスルホン酸塩混合物、およびメチレン橋かけされたアリールスルホン酸塩混合物、である。
【0054】
中性の乳化剤は、好ましくは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドと、十分に酸性の水素を有する化合物とのアダクトから誘導される。そのような化合物としては、たとえば、フェノール、アルキル化フェノールおよびアルキル化アミンが挙げられる。それらのエポキシドの平均重合度は、2〜20の間である。中性の乳化剤の例は、8、10および12個のエチレンオキシド単位を有するエトキシル化ノニルフェノールである。中性の乳化剤は、通常単独で使用されることはなく、アニオン性乳化剤と組み合わせて使用される。
【0055】
好ましいのは、不均化アビエチン酸、および部分水素された獣脂脂肪酸のNaおよびK塩およびそれらの混合物、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸Na、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸塩、さらには、アルキル化およびメチレン橋かけされたナフタレンスルホン酸である。
【0056】
乳化剤は、モノマー混合物100重量部を基準にして、0.2〜15重量部、好ましくは0.5〜12.5重量部、より好ましくは1.0〜10重量部の量で使用するのが好ましい。
【0057】
一般的には、上述の乳化剤を使用して乳化重合を実施する。重合が終了した後で、ある種の不安定さのために、早々にセルフ−コアグレーションを起こす傾向を有するラテックスが得られるのなら、後から、前述の乳化剤を添加して、ラテックスを同様に安定化させることもまた可能である。これは、スチームを用いた処理で未反応のモノマーを除去する前、ならびに、ラテックスを貯蔵する前、またはスプレー乾燥を実施する前には、特に必要となる可能性がある。
【0058】
連鎖移動剤:
本発明の組成物の中のミクロゲルが、重合の途中で架橋されるようにして、乳化重合を実施するのが好ましい。一般的に言えば、したがって、連鎖移動剤を使用する必要はない。それにも関わらず、連鎖移動剤を使用することも可能である。そのような場合には、モノマー混合物100重量部あたり、通常0.01〜3.5重量部、好ましくは0.05〜2.5重量部の量で反応剤を使用する。使用する連鎖移動剤は、たとえば、以下のものであってよい:メルカプタン含有カルボン酸、メルカプタン含有アルコール、キサントゲンジスルフィド、チウラムジスルフィド、ハロゲン化炭化水素、分岐状の芳香族もしくは脂肪族炭化水素、およびさらには直鎖状もしくは分岐状のメルカプタン。それらの化合物は、通常、1〜20個の炭素原子を有している(参照:Rubber Chemistry and Technology(1976),49(3),610〜49(Ueraneck,C.A.):”Molecular weight control of elastomers prepared by emulsion polymerization”および、D.C.Blackley,Emulsion Polymerization,Theory and Practice(Applied Science Publishers Ltd.,London,1975,pp.329〜381)。
【0059】
メルカプタン含有アルコールおよびメルカプタン含有カルボン酸の例は、モノチオエチレングリコールおよびメルカプトプロピオン酸である。
【0060】
キサントゲンジスルフィドの例は、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、およびジイソプロピルキサントゲンジスルフィドである。
【0061】
チウラムジスルフィドの例は、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、およびテトラブチルチウラムジスルフィドである。
【0062】
ハロゲン化炭化水素の例は、四塩化炭素、クロロホルム、ヨウ化メチル、ジヨードメタン、ジフルオロジヨードメタン、1,4−ジヨードブタン、1,6−ジヨードヘキサン、臭化エチル、ヨウ化エチル、1,2−ジブロモテトラフルオロエタン、ブロモトリフルオロエテン、ブロモジフルオロエテンである。
【0063】
分岐状の炭化水素の例は、それからH基を容易に脱離させることが可能なものである。そのようなものの例は、トルエン、エチルベンゼン、クメン、ペンタフェニルエタン、トリフェニルメタン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、ジペンテン、およびさらにはテルペン、たとえば、リモネン、α−ピネン、ベータ−ピネン、α−カロテン、およびベータ−カロテンである。
【0064】
直鎖状もしくは分岐状のメルカプタンの例は、n−ヘキシルメルカプタン、またはそうでなければ、9〜16個の炭素原子と、少なくとも3個の三級炭素原子とを含むメルカプタンであって、硫黄が、それら三級炭素原子の1個に結合されているものである。それらのメルカプタンは、個別のものであっても混合物であってもよい。たとえば好適な例は、オリゴマー化プロペン、特にテトラマー性プロペンを含む硫化水素、またはオリゴマー化イソブテン、特にトリマー性イソブテンを含む硫化水素の付加化合物であるが、それらは、文献では、三級ドデシルメルカプタン(「t−DDM」)として認められていることが多い。
【0065】
そのようなアルキルチオール、およびアルキルチオールの(異性体)混合物は、市場で入手することもできるし、またはそうでなければ、当業者ならば文献に十分に記載されているプロセスで調製することもできる(参照:たとえば、特開平7−316126号公報、特開平7−316127号公報、および特開平7−316128号公報、さらには英国特許第823,823号明細書および英国特許第823,824号明細書)。
【0066】
個々のアルキルチオールおよび/またはそれらの混合物は、モノマー混合物100重量部あたり、通常は0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜1.5重量部の量で使用される。
【0067】
連鎖移動剤または連鎖移動剤の混合物の計量仕込みは、重合開始時か、またはそうでなければ重合の途中で何回かに分けて実施されるが、重合の途中に連鎖移動剤混合物の全部またはいくつかの成分を、数回に分けて添加するのが好ましい。
【0068】
重合開始剤:
乳化重合は、典型的には、重合開始剤を使用して開始されるが、重合開始剤が分解して、ラジカルを発生する(ラジカル重合開始剤)。それらとしては、−O−O−単位(ペルオキソ化合物)または−N=N−単位(アゾ化合物)を含む化合物が挙げられる。
【0069】
ペルオキソ化合物としては、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸塩、ペルオキソ二リン酸塩、ヒドロペルオキシド、過酸、過酸エステル、過酸無水物、および2個の有機基を有するペルオキシドが挙げられる。ペルオキソ二硫酸およびペルオキソ二リン酸の好適な塩は、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩である。好適なヒドロペルオキシドの例は、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、およびp−メンタンヒドロペルオキシドである。2個の有機基を有する好適なペルオキシドは、ジベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルアセテートなどである。好適なアゾ化合物は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル、およびアゾビスシクロヘキサンニトリルである。
【0070】
過酸化水素、ヒドロペルオキシド、過酸、過酸エステル、ペルオキソ二硫酸塩およびペルオキソ二リン酸塩は、還元剤と組み合わせても使用される。好適な還元剤は、スルフェン酸塩、スルフィン酸塩、スルホキシル酸塩、亜ジチオン酸塩、亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、二亜硫酸塩、糖、尿素、チオ尿素、キサントゲン酸塩、チオキサントゲン酸塩、ヒドラジニウム塩、アミンおよびアミン誘導体たとえば、アニリン、ジメチルアニリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、またはトリエタノールアミンである。酸化剤および還元剤からなる重合開始剤系は、レドックス系と呼ばれる。レドックス系を使用する場合には、遷移金属化合物たとえば鉄、コバルトまたはニッケルの塩を、適切な錯化剤(complexing agent)たとえば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、およびさらにはリン酸三ナトリウムまたは二リン酸四カリウムと組み合わせてさらに使用されることも多い。
【0071】
好ましいレドックス系の例としては、以下のものが挙げられる:1)ペルオキソ二硫酸カリウムとトリエタノールアミンとの組合せ;2)ペルオキソ二リン酸アンモニウムとメタ重亜硫酸ナトリウム(Na
2S
2O
5)との組合せ;3)p−メンタンヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒド−スルホキシル酸ナトリウムと、硫酸Fe(II)(FeSO
4・7H
2O)、エチレンジアミノ酢酸ナトリウム、およびリン酸三ナトリウムとの組合せ;4)クメンヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒド−スルホキシル酸ナトリウムと、硫酸Fe(II)(FeSO
4・7H
2O)、エチレンジアミノ酢酸ナトリウムおよび二リン酸四カリウムとの組合せ。
【0072】
酸化剤の量は、モノマー100重量部あたり、好ましくは0.001〜1重量部、より特には0.001〜0.09重量部である。還元剤のモル量は、使用された酸化剤のモル量を基準にして、50%〜500%の間である。
【0073】
錯化剤のモル量は、使用された遷移金属の量を基準にするが、通常、その量と当モルである。
【0074】
重合を実施するためには、重合開始剤系の一部または全部の成分を、重合に開始時または重合の途中に、重合系の中に計量仕込みする。
【0075】
重合の途中に、活性化剤系の成分の一部または全部を分注するのが好ましい。逐次的に添加することによって、反応速度を調節することが可能となる。
【0076】
重合時間は、一般的には5時間〜30時間の範囲であるが、モノマー混合物のアクリロニトリル含量、活性化剤系、および重合温度に実質的に依存する。
【0077】
重合においては、その目的は、重合転化率を最大にして、コポリマーを架橋させることである。この理由のために、停止剤を使用する必要はない。それにも関わらず、停止剤を使用するのならば、好適な例としては以下のものが挙げられる:ジチオカルバミン酸ジメチル、亜硝酸Na、ジチオカルバミン酸ジメチルと亜硝酸Naとの混合物、ヒドラジンおよびヒドロキシルアミンおよびそれらから誘導される塩、たとえば、硫酸ヒドラジニウムおよび硫酸ヒドロキシルアンモニウム、ジエチルヒドロキシルアミン、ジイソプロピルヒドロキシルアミン、ヒドロキノンの水溶性の塩、亜ジチオン酸ナトリウム、フェニル−α−ナフチルアミン、および芳香族フェノールたとえば、tert−ブチルピロカテコール、またはフェノチアジン。
【0078】
乳化重合において使用する水の量は、モノマー混合物100重量部あたり、70〜300重量部の範囲、好ましくは80〜250重量部の範囲、より好ましくは90〜200重量部の範囲の水である。
【0079】
重合の際の粘度を下げるためには、pH調節のためおよびpH緩衝剤として、乳化重合の際の水相に塩を添加することも可能である。典型的な塩は、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、ならびに塩化カリウムの形態の1価の金属の塩である。好ましいのは、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、および塩化カリウムである。それらの電解質の量は、モノマー混合物100重量部を基準にして、0〜1重量部、好ましくは0〜0.5重量部の範囲である。
【0080】
重合はバッチ式で実施してもよいし、あるいはそうでなければ、撹拌タンクのカスケードで連続的に実施してもよい。
【0081】
均質な重合プロファイルを達成するためには、重合の開始時には重合開始剤系のほんの一部のみを使用し、次いで重合の途中に、残りのものを計量仕込みするのが好ましい。重合開始剤の全量の、通常は10〜80重量%、好ましくは30〜50重量%を用いて重合を開始させる。重合開始剤系の個々の構成成分を後から計量仕込みすることもまた可能である。
【0082】
化学的に均質な製品を製造することを目的としているのならば、その組成がブタジエン/アクリロニトリルの共沸比から外れている場合には、アクリロニトリルおよび/またはブタジエンを後から計量仕込みする。追加計量仕込みは、10〜34重量%のアクリロニトリル含量を有するNBR製品、およびさらには40〜50重量%のアクリロニトリルを有する製品の場合に好ましい(W.Hofmann,Rubber Chem.Technol.,36(1963),1)。追加計量仕込みは、たとえば旧東独特許第154 702号明細書に記載されているように、コンピュータープログラムに基づき、コンピューター制御で実施するのが好ましい。
【0083】
未反応のモノマーおよびさらには揮発性の成分を除去するために、反応停止させたラテックスを水蒸気蒸留にかける。この操作においては、70〜150℃の範囲の温度を採用し、温度が100℃未満の場合には、圧力を下げる。
【0084】
乳化剤を用いてラテックスを安定化させてから、揮発性の成分を除去するのがよい。これは、本発明の組成物中のコポリマー100重量部を規準にして、上述の乳化剤を0.1〜2.5重量%、好ましくは0.5〜2.0重量%の量で使用することにより有用に実施される。
【0085】
乳化重合によって製造されたミクロゲルは、噴霧乾燥によって仕上げられるが、それは、剥離剤の存在下に実施するのが同様に好ましい。
【0086】
仕上げ作業の前または途中に、1種または複数の老化防止剤をラテックスに添加してもよい。この目的に好適なのは、フェノール系、アミン系、およびその他の老化防止剤である。
【0087】
好適なフェノール系老化防止剤としては以下のものが挙げられる:アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、立体障害フェノール、たとえば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル)−p−クレゾール、ポリ(ジシクロペンタジエン−co−p−クレゾール)、エステル基を含む立体障害フェノール、たとえば、β−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオン酸n−オクタデシル、チオエーテルを含む立体障害フェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BPH)、2−メチル−4,6−ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール、およびさらには立体障害チオビスフェノール。特に好適な実施態様においては、2種以上の老化防止剤、たとえばβ−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオン酸n−オクタデシル、ポリ(ジシクロペンタジエン−co−p−クレゾール)、および2−メチル−4,6−ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノールの混合物を添加する。
【0088】
ゴムの変色がさほど重要ではない場合には、アミン系の老化防止剤も使用されるが、その例としては、ジアリール−p−フェニレンジアミン(DTPD)、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、フェニル−β−ナフチルアミン(PBN)の混合物であるが、フェニレンジアミンをベースとしたものが好ましい。フェニレンジアミンの例としては、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、またはN,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)などが挙げられる。
【0089】
その他の老化防止剤としては、ホスファイトたとえばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、重合させた2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、亜鉛メチルメルカプトベンズイミダゾール(ZMMBI)などが挙げられる。ホスファイトは、一般的には、フェノール系老化防止剤と組み合わせた形で使用される。ペルオキシド加硫されるNBR製品では特に、TMQ、MBI、およびMMBIが使用される。
【0090】
乳化重合からのラテックスの噴霧乾燥は、一般的には、慣用される噴霧塔で実施される。この場合においては、好ましくは15〜100℃に加熱した、ラテックスを、ポンプで噴霧塔の中に移送し、たとえば塔頂に位置しているノズルを通して、50〜500bar、好ましくは100〜300barの圧力で噴霧する。好ましくは100〜350℃の入口温度を有する加熱空気をたとえば向流で供給して、水を蒸発させる。粉末が下向きに落下し、乾燥した粉体が塔底から抜き出される。使用される各種の剥離剤ならびにその他の添加剤、たとえば、老化防止剤、抗酸化剤、蛍光増白剤なども、好ましくは乾燥粉体として、同様に塔頂から吹き込む。それらは、噴霧乾燥させる前のラテックスに、全面的または部分的に混合してもよい。噴霧塔に供給されるラテックスは、ラテックスを規準にして、好ましくは10〜60、より好ましくは20〜50重量%、好ましくはさらに30〜50重量%の固形分濃度を有している。このような仕上げ作業によって、具体的には、球状もしくは実質的に球状のミクロゲル粒子のアグロメレート化物が得られる。本発明の固体状組成物が、2〜2000μm、好ましくは2〜500μm、より特には5〜200μmの平均粒子直径を有する一次粒子のアグロメレート化物の形態であるのが好ましい。
【0091】
噴霧乾燥によるラテックスの仕上げ作業において、好ましくは、同様にして市販の剥離剤をさらに添加することも可能である。剥離剤は、以下のものから選択するのが好ましい:シリカ、特に5m
2/gより大きいBET比表面積を有するもの(それらは、化学的に変性、特に疎水化されていてもよい)、または炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリケートたとえば、タルクまたはマイカ、脂肪酸の塩、特にたとえば、10個を超える炭素原子を有する脂肪酸のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩、とえば、具体的にはそのような脂肪酸のカルシウム塩およびマグネシウム塩、たとえば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸亜鉛アルミニウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、60℃よりも高いガラス転移温度を有するポリマー、たとえば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、およびデンプン、親水性ポリマー、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキシド化合物、特にポリエチレンオキシド化合物、たとえば、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、およびセルロース誘導体、ヒドロフルオロカーボンポリマー、ならびに上記の剥離剤の混合物。
【0092】
剥離剤を使用するならば、シリカ、炭酸カルシウム、シリケート、および脂肪酸の塩の群から選択し、乳化重合の後ミクロゲルの仕上げ作用の間に添加するのがより好ましい。しかしながら、独立した剥離剤を添加することなく、ミクロゲルを、所望の有利な使用形態に転化させてもよい。
【0093】
スプレー粒子は、場合によっては先に述べたような剥離剤を使用して、乳化重合から得られたラテックスを噴霧乾燥することにより得るのが好ましい。
【0094】
本発明はさらに、好ましくは靱性および破断にいたるまでのエネルギー吸収を増大させる目的で、熱硬化性組成物における添加剤としての、本発明の固体状組成物の使用にも関する。
【0095】
熱硬化性組成物
本発明はさらに、少なくとも
A)本発明の固体状組成物、および
B)熱硬化性ポリマー
を含む熱硬化性組成物にも関する。
【0096】
本発明の熱硬化性組成物における、熱硬化性ポリマーB)の、本発明の固体状組成物A)に対する重量比は、好ましくは0.5:99.5〜99.5:0.5、好ましくは2:98〜98:2、より好ましくは2:98〜15:85である。
【0097】
熱硬化性ポリマー
成分B)の熱硬化性ポリマーは、好ましくは熱硬化性物質であり、これは熱硬化性樹脂とも呼ばれる。熱硬化性物質は、好ましくは、三次元構造を有する密に架橋されたポリマーであって、それは、構成成分の間で恒久的な結合をされることによって、不溶性および不融性が得られている。通常、熱硬化性物質は、少なくとも2種の比較的高い官能性の反応性成分を組み合わせることによって製造されるが、その反応剤の官能価は、典型的には2以上である。それらの成分を完全に混合した後で、その熱硬化性成分の混合物を、型の中、または被着体(adherend)の間に入れ、多くの場合熱および/または高エネルギー放射線の影響下で、その混合物を硬化させる。
【0098】
本発明の熱硬化性組成物中の熱硬化性ポリマーB)は、重縮合性熱硬化性物質、重付加性熱硬化性物質、および付加重合熱硬化性物質からなる群より選択するのが好ましい。公知の熱硬化性物質の例は、たとえば以下の樹脂/接着剤である:フェノール樹脂、特にフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂、特にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、RIMポリウレタン系、PU樹脂およびフォーム、エポキシ接着剤、PU接着剤、UP接着剤、シアノアクリレートおよびメタクリレート接着剤、シリコーン樹脂およびシリコーン接着剤、シラン−架橋樹脂および接着剤、フラン樹脂、ポリイミド、不飽和ポリエステル、ビニルおよび/またはアクリル系エステルからなる樹脂および接着剤など。
【0099】
熱硬化性ポリマー、すなわち、樹脂および接着剤は、好ましくは以下のものからなる群より選択される:ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂たとえば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン/フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、たとえば、メラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、レソルシノール・ホルムアルデヒド樹脂、キシレノール−ホルムアルデヒド樹脂、フルフリルアルコール−ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、反応射出成形ポリウレタン樹脂(RIM−PU)、フラン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂またはジアリルイソフタレート樹脂の混合物。
【0100】
特に好ましいのは、PU、RIM−PU、アミノ樹脂、およびフェノール樹脂、エポキシおよびUP系である。このタイプの熱硬化性ポリマーは自体公知であり、それらの製造には、たとえば以下の文献を参照することができる:Saechtling,Kunststoff Taschenbuch,28th edition,section 4.17;Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th edition,volume A26,p.665〜;Ullmann,同上,volume 9,p.547〜;Elias,Makromolekuele,volume 2,Technologie,5th edition,section 15.6。
【0101】
本発明の熱硬化性組成物は、好ましくは、成分A)とB)とを混合することにより製造される。
【0102】
本発明の熱硬化性組成物が、好ましくは以下のものからなる群から選択される1種または複数のプラスチック添加剤を含んでいるのが好ましい:充填剤および補強剤、顔料、UV吸収剤、難燃剤、消泡剤、脱泡剤、濡れ剤および分散剤、ガラス繊維および炭素繊維、布帛およびスクリム、カーボンナノチューブ、グラフェン、触媒、増粘剤、沈降防止剤、防縮性添加剤、チクソトロープ剤、剥離剤、流動調節剤、接着促進剤、艶消剤、腐食防止剤、スリップ剤、殺虫剤など。プラスチック添加剤は、たとえば以下のような有機および/または無機の充填剤から選択するのが好ましい:木粉、セルロース、綿繊維、人造絹糸、鉱物質繊維、微粉砕鉱物質、マイカ、短繊維および長繊維、ガラスマット、炭素繊維、可塑剤、有機および/または無機顔料、難燃剤、抗害虫剤たとえば、シロアリ対策の薬剤、齧歯類対策の薬剤など、ならびにその他の慣用されるプラスチック添加剤。特に好ましいのは、繊維質の充填剤である。それらは、本発明の組成物の中に、組成物の全量を規準にして、約40重量%まで、好ましくは約20重量%までの量で存在させるのがよい。
【0103】
本発明はさらに、熱硬化性組成物を製造するための、本発明の固体状組成物(A)の使用にも関する。
【0104】
本発明はさらに、
a)本発明の固体状組成物(A)を、場合によってはプラスチック添加剤(より特には、有利には分散の前に添加されているもの)を含む、熱硬化性プラスチックを形成することが可能な1種または複数の反応剤、またはそれらの溶液の中に分散させる工程、
b)場合によっては、さらなる成分を添加する工程、および
c)そのようにして得られた分散体を硬化させる工程
を含む、熱硬化性組成物を製造するための方法にも関する。
【0105】
分散工程a)
熱硬化性ポリマーを形成する能力を有する上述の反応剤は、それらのためのモノマー、オリゴマー(プレポリマー)、または架橋剤から選択するのが好ましい。
【0106】
熱硬化性ポリマーB)を形成する能力を有する好ましい反応剤は、以下のものからなる群より選択するのが好ましい:ポリオールおよびそれらの混合物、脂肪族ポリオールおよびそれらの混合物、脂肪族ポリエーテルポリオールおよびそれらの混合物、脂肪族ポリエステルポリオールおよびそれらの混合物、芳香族ポリエステルポリオールおよびそれらの混合物、ポリエーテルポリエステルポリオールおよびそれらの混合物、不飽和ポリエステルおよびそれらの混合物、芳香族アルコールまたはそれらの混合物、スチレン、ポリイソシアネート、イソシアネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、カプロラクタム、ジシクロペンタジエン、脂肪族および脂環族アミンおよびポリアミン、ポリアミドアミン、芳香族アミンおよびポリアミン、RT−およびHT−架橋シリコーン、シアノ−および(メタ)アクリレート、ポリアリル化合物、ビニルエステル、Aステージの重縮合性熱硬化性物質、ならびにさらには、上述の出発物質の誘導体、混合物または溶液。
【0107】
特に好ましいのは、脂肪族ポリオールおよびそれらの混合物、芳香族アルコール、スチレン、エポキシ樹脂、アミン、および不飽和ポリエステルである。
【0108】
この方法の特に好ましい実施態様においては、固体状組成物(A)を、熱硬化性ポリマーを形成する能力を有する反応剤(この反応剤は、場合によっては、分散の前に有利には添加されるプラスチック添加剤を含む)と共に、ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、ローラーベッド(roller bed)、3本ロールミル、単軸もしくは多軸スクリューエクストルーダー、ニーダーおよび/またはディソルバーの手段による処理にかける。
【0109】
本発明の熱硬化性組成物は、技術的には単純な分散装置たとえば、ロールおよびディソルバーを用いてさえも、再現性よく製造することができる。熱硬化性ポリマーを形成することが可能な反応剤の中にミクロゲル(A)が微細に分散された結果として、次いで、熱硬化性ポリマーB)の中にミクロゲルを特に効果的に分散させることが同様に可能となったが、これは、これまで従来技術において、装置の面で高レベルの複雑さを用いた場合にしか可能でなかった。普及型の分散装置を使用した場合であっても、その熱硬化性組成物の機械的性質が、驚くほど改良される。
【0110】
そのようにして得られた熱硬化性物質前駆体は、場合によっては硬化剤を添加して、硬化により熱硬化性物質を形成させるまで、容易に貯蔵できる。それらが微細に分散されているために、顕著な沈降はない。
【0111】
分散は、10kJ/m
3未満、より特には8kJ/m
3未満の熱硬化性ポリマーの容積特異性(volume−specific)エネルギー密度で実施するのが好ましい。
【0112】
さらなる成分b)
熱硬化性組成物を製造するための、上述のさらなる成分b)は、特に、熱硬化性ポリマーを形成させるためのさらなる(第二の)成分、より特には硬化剤たとえば、ポリイソシアネート、ポリアミン、ホルムアルデヒド供与体、スチレンなどである。さらに、それらには、上述のプラスチック添加剤、たとえば繊維質充填剤やその他のものが含まれていてもよい。
【0113】
硬化c)
硬化は、一般的には、熱硬化性ポリマーで慣用される条件下で実施する。工程c)を、成形および/または、被着体との間での凝縮結合(adhesive bonds)の形成が同時に起きるように実施するのがより好ましい。
【0114】
本発明はさらに、上述のミクロゲルを含む固体状組成物(A)を用いて得ることが可能な熱硬化性組成物にも関する。
【0115】
本発明はさらに、成形物品として、コーティングまたは接着性物質/接着剤としての、本発明の熱硬化性組成物の使用にも関する。それには、いわゆるミクロゲル充填プレプレグの製造もまた含まれる。本発明はさらに、その他各種の用途がある中でも、たとえば、特に電子用構成成分においては、たとえば電子機器のためのハウジングとして、建築用構成成分においては、たとえば建築材料として、複合材料構成成分においては、自動車、航空機または船舶運輸産業のため、一成分および二成分系接着剤においては、自動車、航空機、船舶運輸、電子産業および建築産業のための本発明の組成物の使用にも関する。
【0116】
以下の実施例を用いて本発明を説明する。しかしながら、本発明は、それらの実施例に開示された内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0117】
ミクロゲルの製造およびキャラクタリゼーションに関する実施例
以下で説明するのは、本発明のミクロゲルM1〜M3の製造であり、これらはさらなる実施例で使用される。それに加えて、欧州特許第1674501号明細書(p.12参照)に倣った、従来技術による、本発明ではない比較例B1〜B4についても説明する。比較例K1〜K5は、米国特許出願公開第2006/0079609号明細書に倣い、従来技術により製造し、コアグレーションによって仕上げている。K1とM1の化学的組成は同一であるが、仕上げ作業の点で異なっている。ポリマーM1〜M3、B1〜B4、およびK1〜K5は、乳化重合により調製し、以下のモノマーを使用している:1,3−ブタジエン(BDN)、スチレン(ST)、アクリロニトリル(ACN)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、メタクリルアミド(MAA)、アクリル酸(AS)、およびジビニルベンゼン(DVB)。ミクロゲルを調製するために使用したモノマー、および基本的な配合成分を以下の表にまとめた。
【0118】
【表1】
【0119】
数字は、純出発物質100%を規準としたものである。AOSおよびAlkylSはそれぞれ、CAS番号68439−57−6(アルファ−オレフィンスルホン酸塩)およびCAS番号68188−18−1(アルキルスルホン酸塩)を有するスルホン酸塩含有乳化剤である。
【0120】
ポリマーは、撹拌機構を備えた20Lオートクレーブの中で調製した。重合バッチでは、モノマーを、0.008重量%(モノマーの合計量規準)の4−メトキシフェノールと共に使用した。それぞれの場合において最初に、乳化剤および表に記載した量の水(プレミックスの水溶液および重合開始剤の水溶液を調製するために要した水の量を差し引く)を、オートクレーブに初期仕込みとして導入した。
【0121】
その反応混合物を15℃に状態調節してから、新たに調製したプレミックス水溶液(4%強度)をオートクレーブに添加して、重合開始剤を活性化させた。それらのプレミックス溶液は、以下のものからなっていた:0.284gのエチレンジアミン四酢酸、0.238gの硫酸鉄(II)・7H
2O(結晶水は除いて計算)、および0.576gのRongalit(登録商標)C(ホルムアルデヒド−スルホキシル酸Na・二水和物、結晶水は除いて計算)。まず、その溶液の半分を添加した。重合開始させるために、さらに、0.058重量%(この場合もまた全モノマーの合計量規準)のp−メンタンヒドロペルオキシド(Trigonox(登録商標)NT50、Akzo−Degussa製)を、その反応器の中で調製された200mlの乳化剤溶液ですでに乳化されている、反応器の中に計量仕込みした。アクリロニトリル含有製品の場合には、0.02重量%を計量仕込みした。転化率が30%に達したら、残りの50%のプレミックス溶液を計量仕込みした。
【0122】
重合の際の温度管理は、冷却液の量と、冷却液の温度を15±5℃に設定する形で行った。
【0123】
85%よりも高い(通常:90%〜100%)の重合転化率が達成されたら、2.35gのジエチルヒドロキシルアミンの水溶液を添加することにより重合を停止させた。ラテックスから揮発性成分を除去するために、スチームを用いてラテックスのストリッピングを行った。
【0124】
先に説明した方法によって測定した分析データを次の表に転載する。分析のための沈降では、CaCl
2を用い60℃でポリマーを沈降させ、洗浄した。比較例K1〜K5は、NaClおよびリン酸(比較的大量が必要)を用いて75℃でコアグレート化させ、その後で、洗浄および乾燥(乾燥オーブン中、減圧下55〜60℃で恒量になるまで)させてから、流し込み性についての試験をした。
【0125】
【表2】
【0126】
ミクロゲルの噴霧乾燥およびそれらのキャラクタリゼーションに関する実施例:
M1〜M3およびB1〜B4で得られたエマルションポリマー(ラテックス)の噴霧乾燥は、Buechi B−290実験室用噴霧乾燥器を使用して実施したが、選択した設定は、典型的には以下のとおりである:
【数1】
空気入口温度135℃、ノズルクリーナー設定2、ポンプ45%、空気出口温度約75℃。噴霧乾燥の前に、使用されるラテックスを、50μmのMonodur布を通過させた。実際に噴霧乾燥する前に、水を噴霧することによって噴霧乾燥器を加熱した。さらなる用途に使用するための乾燥ポリマーの部分は、噴霧乾燥の際にサイクロン中および/または捕集容器中に析出した部分であった。噴霧円筒の壁面上に析出したり、あるいはサイクロンを通過して空気フィルターに出たりした物質は、ロスとみなした。したがって、噴霧乾燥収率は、実際に得られた量の、理論的に可能な量に対する比率として計算する。後者は、使用したラテックスの量とその固形分濃度の積である。噴霧操作は、定常状態操作を確保するために連続で数時間実施した。
【0127】
次いで、サイクロンおよび/または捕集容器に析出した物質をねじ蓋式のPE容器の中に入れ、所定の量の粉体組成物と混合した。この組成物は、2重量%の沈降シリカSipernat(登録商標)D17(Evonik Degussa GmbH)からなっていた。混合は、Turbula(登録商標)T2Fタンブルミキサー(Willy A.Bachofen AG Maschinenfabrik製)の中、トランスミッション(transmission)設定49rpm、混合時間30分間で実施した。
【0128】
流し込み性試験
次いでその粉体物質について、EN ISO 6186:1998、方法Aに従って、流し込み性試験を実施した。流し込み性は、150gの粉体を、特定のノズルサイズ(10、15、または25mmの出口直径;本発明の場合においては15mmを選択)を有する漏斗を通過させたときの、流動時間および流動挙動から評価される。
【0129】
嵩密度の測定
物質の嵩密度も、EN ISO 60:1999に従って測定した。この目的のためには、100mlの粉体の質量を測定し、嵩密度をg/mlの単位で表した。上述の両方の試験には、Fluometer(KARG Industrietechnik製)を使用した。
【0130】
ブロッキング傾向
粉体のブロッキング傾向もまた同様にして確認した。試験は、社内プロトコールに従って実施した。充填用型枠を、平坦な底板上に置き、サンプルを導入する。その充填用型枠は、滑らかな表面を有するステンレス鋼パイプであって、45mmの内径および50mmの高さを有している。サンプルの量を選択して、約1cmのプレスケーキが得られるようにする。次いで、そのサンプル物質の上にアルミニウム製のダイを置くが、このダイも同様に45mmの直径と、さらには178gの重量を有している。このダイに、4.7kgの重りを乗せて、24時間の試験時間の開始とする。所定の時間が経過したら、重りを取り除き、ダイを取り除き、充填用型枠を取り除くが、このプロセスの間にプレスケーキに損傷を与えることがないようにする。試験結果は、次の判定基準に従って、目視によりプレスケーキを評価する:
1=サンプルがブロッキングせず、型枠を外した直後にバラバラになる
2=サンプルがほんのわずかブロッキングし、少し圧力を加えるとバラバラになる
3=サンプルがわずかなブロッキング性を示して互いに付着しているが、穏やかな力でバラバラにすることができる
4=サンプルが高いブロッキング性を示し、力を加えたときのみ分離することが可能であり、分かれて元のサンプルに戻る
5=サンプルが固いブロッキングを起こしていて、力を加えたときのみ分離することが可能であり、断片が相互に付着したままである
6=試験の間に、サンプルがもはや分離しない
【0131】
視覚的品質
最後に、噴霧乾燥した物質自体の品質を、視覚的評価にかけ、以下の次の判定基準を使用して評価した:
1=物質が、極めて均質で微細な粒径分布を有し、タック性が極めて低く、変色がなく、ダスティングが極めて少なく、噴霧乾燥が中断されない
2=物質が、ほんのわずかな割合で相対的に大きなアグロメレート化物を含み、タック性がほとんどなく、変色がわずかで、ダスティングがほとんどなく、噴霧乾燥がほとんど中断されない
3=物質が、顕著な割合で相対的に大きなアグロメレート化物を含むかまたは特に大きなアグロメレート化物の数が多く、わずかに粘着性があり、わずかにダスティングがあり、わずかに変色されており、噴霧乾燥がしばしば中断される
4=物質が、多くの各種の粒子サイズのアグロメレート化物を含み、粘着性があり、ダスティングがあり、変色されており、噴霧乾燥が崩壊により極めてしばしば中断される
5=物質が、極めて不均質な粒径分布を有し、粘着性が極めて高く、ダスティングが強く、高度に変色されており、噴霧乾燥の実施がほとんど不可能である
6=粉体物質がまったく得られず、噴霧乾燥の実施が不可能である
【0132】
次の表に結果をまとめた。
【0133】
【表3】
【0134】
25mmの最大ノズル直径であってさえも、比較例K1〜K5は、流し込み不可能であり、本発明によって取り組むべき課題を解決するには適していない。
【0135】
さらに、ミクロゲルについての、本発明実施例と従来技術実施例との比較からわかるように、本発明のミクロゲルの噴霧乾燥によって、本発明の特性の組合せのおかげで、粉体の形態で計量仕込みするのに高度に適した物質が得られる。従来技術は、噴霧乾燥には適していないか、または流し込み性が全くないかもしくは流し込み性が極めて乏しく、比較的低い嵩密度しか示さない噴霧乾燥した物質しか得られないが、そのような物質は、顕著に低い収率でしか得られず、かつ、極めて強いブロッキング傾向を有し、不均質性が顕著に高く、低品質であり、全体として噴霧乾燥で加工するには適していない。
【0136】
単純なディソルバーによる、本発明のミクロゲルの高い分散性の例
上述の、噴霧乾燥させ粉体化した本発明のミクロゲルM3を、真空ディソルバーを使用して、エポキシ樹脂反応剤Araldite(登録商標)LY564(Huntsman製)の中に分散させた。粒子濃度は、硬化剤(選択された特定の配合に依存)を混合した後で、ポリマー混合物の中のミクロゲルの割合が5重量%になるように設定した。したがって、硬化のためのエポキシ樹脂の反応剤の中では、ミクロゲル濃度はもっと高くなければならない。本発明実施例においては、エポキシ樹脂反応剤混合物中での粉体化したミクロゲルM3の割合は、7重量%であった。分散は5000rpmで実施したが、混合物の温度は、20〜45℃の間に維持した。
【0137】
エポキシ樹脂反応剤における粒径分布は、動的光散乱法の手段により、四つの異なった分散時間で測定した。この場合、15分後には、ミクロゲルのアグロメレート化物の崩壊の結果としての粒径分布における変化が、実質的にまったくないことを示すことが可能であった。極めて簡単な装置を使用すると、ほんの短い混合時間の後には、ミクロゲル粒子の一次粒子径までの分散が達成されるが、このことは、検出される粒子の半径から明らかである。このことは、ポリマーラテックスの中で噴霧乾燥および分散させる前に測定したミクロゲル粒子の直径と、極めて良好な一致をしている。
【0138】
エポキシ樹脂の変性および機械的データを使用した評価の例
熱硬化性樹脂混合物を製造するために、エポキシ樹脂反応剤のAraldite(登録商標)LY564(Huntsman製)の中に、真空ディソルバーを使用し5000rpmで60分間かけて、それぞれの粒子を分散させたが、その間その混合物の温度は20〜45℃の間に保った。それぞれの場合において選択された粒子の量は、それで得られる混合物全体の中のそれらの割合が5重量%になるようにした。開始時にその混合物にさらに添加したのは、35phr(樹脂100部あたりの部数、別の言い方をすれば、たとえば100gの樹脂反応剤に対して35gの硬化剤)の濃度の硬化成分Aradur(登録商標)2954(Huntsman製)およびさらには0.2phrの脱泡剤Byk(登録商標)−A515であり、これらの成分も同様に分散させた。
【0139】
機械的性質を測定する目的で、それぞれの標準で必要とされる寸法の試験片を作成した。硬化は、この樹脂/硬化剤系で確立された温度プログラム(60℃で2時間プラス、120℃でさらに8時間)に基づいて実施した。
【0140】
DIN EN ISO 178に記載されているようにして、Zwick万能試験機を用いて3点曲げ測定(3PB)を実施して、曲げモジュラスE
f、曲げ強度σ
fm、および最大変形ε
fmを求めた。材料の靱性は、Zwick万能試験機上で、ISO 13586に従ったCompact Tension(CT)試験片について測定したが、測定されたK
Icの値は、破壊靱性の目安として役立ち、G
Icの値は、供給されることが可能な破壊エネルギーの目安として役立つ。Charpy衝撃靱性Akは、DIN ISO 179/1fUの記載に従い、Ceast製の試験装置上で実施した。
【0141】
得られた結果を以下の表に示す。P52は、粉体の形状の市販の耐衝撃性改良剤Genioperl(登録商標)P52(Wacker Chemie AG製)である。サンプルM1については、先に挙げた噴霧乾燥し、粉体化させたミクロゲルM1を使用した。参照例として挙げたのは、樹脂混合物に変性剤を添加することなく製造した、未変性の試験片である。
【0142】
【表4】
【0143】
それらの結果から、本発明のミクロゲルを用いれば、簡単な手段で熱硬化性樹脂混合物を変性することが可能であり、そして本発明のミクロゲルを用いた変性が、混合物の性質に有利な影響を与えるということがわかる。破壊靱性および衝撃靱性が、特に代替えの解決策に比較して、大幅に増大し、しかも、その他の所望される機械的性質は、ほんのわずかしか影響されない。