【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の第1態様として、遠心分離機と予備分離ユニットとを備えた、汚染物質を含んだガスを浄化するための分離手段が提供されており、この遠心分離機は、
分離空間を包含し、この分離空間を通じてガスが流れることを可能にした固定筐体と、
固定筐体を通じて延び、予備分離ユニットからのガスの供給を可能にしたガス入口と、
分離空間内に配列された分離部材を備え、回転軸(X)の周りを回転するように配置された回転部材と、
回転部材を回転させるための駆動部材と、
浄化されたガスの排出が可能なように構成され、固定筐体の壁を通じた出口開口部を備えたガス出口と、
浄化されるガスから分離された液体不純物の排出が可能なように構成された排液口と、を備え、
予備分離ユニットは、遠心分離機のガス入口の上流に配置され、この予備分離ユニットは、
断面積A2を有し、浄化されるガスの供給を可能にした予備分離入口であって、断面積A2は遠心分離機ガス入口の断面積A1よりも大きい、予備分離入口と、
予備分離ユニットから遠心分離機のガス入口へのガスの供給を可能にするための予備分離出口と、
第1チャンバおよび第1チャンバの下流に配置された第2チャンバであって、予備分離ユニットのこれらのチャンバは、少なくとも1つの貫通穴を備えた少なくとも1つの中間壁により離間された第1チャンバおよび第2チャンバと、を備えている。
【0010】
ガス内の汚染物質は、オイルおよび煤のような液体不純物を含み得る。
【0011】
結果的に、分離手段は、オイルのような液体不純物をガスから分離するためのものであり得る。ガスは、燃焼機関のクランクケースガスであり得る。しかしながら、分離手段は他の発生源からのガス、例えばオイル液滴またはオイルミストの形式の多量の液体不純物を高頻度で含んだ工作機械の周囲環境からのガスを浄化することにも適し得る。分離手段は2つのユニット、オイルミストのような主に小さい体積の液体不純物をガスから分離するための遠心分離機、および遠心分離機の上流に配置されて、オイルのより大きい液体粒子のような、主に大きい体積の液体不純物を分離するための予備分離ユニット、を備えている。したがって、予備分離ユニットは、約10μm超の直径を有する大きいおよび中間サイズの粒子を分離するためとし得る。したがって、予備分離機能は遠心分離機に追加されている。このことは、分離手段を単一ユニットとしてエンジンブロック上に直接搭載することに寄与している。このことは、エンジンの製造に関して空間およびコストの両方を節約する。代替的に、予備分離ユニットは、部分的にまたは完全に分離機と一体化されてもよく、例えばこれにより分離機の固定筐体は予備分離ユニットの外壁のような予備分離ユニットの筐体も形成し、したがって分離手段は単一ユニットを形成する。
【0012】
結果的に、予備分離ユニットは、液体不純物のガスからの分離を促進し得る。それは、予備分離ユニットが、遠心分離機の分離空間への入口の断面積よりも大きい断面積の入口を有するためである。チャンバの配列と組み合わせた断面積のこの関係により、圧力降下、ガス速度、および乱流は予備分離ユニット内で低く維持され、これにより、予備分離ユニットの内壁および中間壁に当たった場合に、より大きいオイル粒子が分離され得る。
【0013】
従来の設定においては、例えばモータの内側面にも存在し得る液体オイルは、モータの内側面に沿って遠心分離機へと搬送され得る。そのような液体オイルは、分離機がタービンホイールにより駆動された場合、例えばエンジンのクランクケースの内側面、または遠心分離機のタービン筐体の内側面にも存在し得る。分離機内のそのような液体オイルの存在は、分離機の分離能力を低下させ得る。しかしながら、本開示の分離手段においては、そのような液体オイルは予備分離ユニットにより捕捉され、結果的にそのような液体オイルが遠心分離機に進入する危険性は、減少され得る。
【0014】
遠心分離機の固定筐体は、周囲側壁ならびに第1および第2端壁を備え得る。固定筐体は、回転軸(X)から周囲側壁までの半径Rを有する円形断面を備えた円筒形状を有し得る。この半径Rは、少なくとも周囲側壁の外周の大部分に関して一定とされ得る。固定筐体は、わずかに円錐形であってもよい。したがって、第1および第2端壁は、円筒形筐体の上側端壁および下側端壁を形成している。
【0015】
遠心分離機のガス入口は、第1端壁を通じて、または第1端壁の近くの周囲壁を通じて、したがって分離機の上部に配置されてもよく、これにより、ガス入口を通じて進入したガスは分離空間に進入し、一方で排液口は第2端壁、例えば分離機の底部に配置されてもよい。ガス入口の断面積A1として示されている。
【0016】
実施形態においては、A1は分離空間の断面積とほぼ同じであり、分離空間はディスクスタックのディスク間の空間またはギャップへの領域である。A1は、分離空間の断面積よりも大きくてもよい。
【0017】
回転部材の分離部材は、汚染物質のガスからの分離を促進する面拡張インサートの一例である。分離部材は、分離ディスクのスタックであってもよい。スタックの分離ディスクは、円錐台形であってもよい。円錐台形のディスクは、回転軸に直交した平面内に広がった平坦部と、上向きまたは下向きに広がり得る円錐部と、を備えていてもよい。平坦部は、円錐部よりも回転軸に接近し得る。さらに、スタックのディスクはラジアルディスクであってもよく、ほぼディスク全体が、回転軸に直交した平面内に広がっていてもよい。
【0018】
分離ディスクのような分離部材は、必ずしもスタック内に配置される必要がないことも理解される。分離空間は、例えば回転軸の周りに広がった軸方向ディスクまたはプレートを備えていてもよい。軸方向ディスクまたはプレートは平坦であってよく、すなわち回転軸に平行な面内に広がっていてもよい。軸方向ディスクまたはプレートは、弓状のまたは径方向面内で見てらせん形状のような、わずかにまたは大きく湾曲した形状を有してもよい。
【0019】
作動時に、浄化されるガスは分離部材の中心を通じて、例えば分離ディスクのスタックの中心を通じて導かれ得る。そのような設定において、回転部材は、各分離ディスクの少なくとも1つの貫通穴により形成された中央空間をさらに形成し得る。この中央空間はガス入口に連結されており、浄化されるガスをガス入口から分離ディスクのスタックのギャップへと搬送するように構成されている。
【0020】
そのような場合、分離空間の断面積は、ディスクのスタック内の最上部のディスクの貫通穴の面積の和である。
【0021】
分離ディスクは、回転軸に直交した中央の、基本的に平坦な部分を備え得る。この部分は、中央空間を形成した貫通穴を備え得る。分離ディスクは、回転軸に直交していない方向に広がった円錐部をさらに備え得る。
【0022】
したがって、中央空間は平坦部の貫通穴により形成されてもよく、これにより分離空間の断面積は、ディスクスタックの上側分離ディスクの平坦部の貫通穴の総和となり得る。
【0023】
駆動部材は、例えば逆流ディスクを備えた燃焼機関または自由ジェットホイールの潤滑油システムからのオイル噴流を利用して回転されるタービンホイールを、備えていてもよい。しかしながら、駆動部材は燃焼機関から独立して、電気モータ、油圧モータ、または空気圧モータを備えていてもよい。
【0024】
遠心分離機の排液口は、固定筐体の複数の貫通穴形状のスポットにより形成され得る。排液口は、自身を通じてまたは自身に入口が配置された端壁の反対側の端壁の中央に配置され得る。排液口は、回転軸に配置されてもよく、または回転軸に中心を合わせて配置されてもよい。排液口は、固定筐体の内側端壁の環状収集壁内にも配置され得る。
【0025】
予備分離ユニットは、浄化されるガスを予備分離ユニット内に供給することを可能にするための予備分離入口を備えている。予備分離入口の断面積はA2により示され、A1により示された遠心分離機のガス入口の断面積よりも大きい。A2はA1よりも25%より大きい、50%より大きい、または100%より大きいといったように、10%よりも大きい。これは主に構造的制限に依存している。
【0026】
さらに、予備分離ユニットは第1および第2チャンバを備え、第2チャンバは第1チャンバの下流に、すなわち予備分離出口のより近傍に配置されている。
【0027】
予備分離ユニットのチャンバは、予備分離ユニットを通じて浄化されるガスが流れることを可能にするように配置されており、すなわちガスは、予備分離入口から予備分離ユニットのチャンバを通じ、予備分離出口から遠心分離機への経路へと出ていく。
【0028】
分離ユニットのチャンバは中間壁により、すなわち予備分離ユニットの内側壁により区切られている。中間壁は貫通穴を備え、汚染されたガスが壁に当たった場合、大きい汚染粒子はガスから分離され、一方でガスは貫通穴を通じて下流のチャンバへと流れ得る。少なくとも1つの貫通穴を備えた中間壁は、内側壁からガスの流れ経路内へと延びたバッフルとし得る。したがって、貫通穴は、そのときバッフルにより邪魔されることの無い流れ経路の一部である。したがって、そのようなバッフルまたは中間壁は、別のチャンバから1つのチャンバを離間し得る。
【0029】
第1態様の実施形態においては、第2チャンバは第1チャンバよりも大きい容積を有する。第2チャンバが第1チャンバよりも大きい容積を有する場合、大きいおよび中間のサイズのオイル粒子への揚力は減少され得る。次に、オイル粒子は例えば第2チャンバの底部に落下し、そこからオイル粒子は予備分離ユニットから排出され得る。
【0030】
第1態様の実施形態においては、予備分離ユニットは、予備分離ユニットのチャンバ内で分離されたオイルのための排液口をさらに備えている。
【0031】
排液口は、予備分離入口と同じであってもよい。
【0032】
第1態様の実施形態においては、遠心分離機の駆動部材は、遠心分離機のタービン筐体内に配置されたタービンホイールを備え、予備分離入口は、タービン筐体に面しており、これにより浄化されるガスは、タービン筐体から予備分離ユニットへと導かれる。
【0033】
したがって、タービンホイールは、燃焼機関のオイルシステムからのオイル噴流を利用して回転されるように配置され得る。したがって、予備分離ユニットはタービン筐体と一体化され、これにより分離手段内の浄化されるガスは、タービン筐体から予備分離入口を通じて予備分離ユニットのチャンバへと直接導かれる。タービン筐体は、遠心分離機の固定筐体の軸方向下側に配置され得る。さらに、遠心分離機の排液口は、分離されたオイルがタービン筐体へと排出されるように設けられ得る。
【0034】
第1態様の実施形態においては、分離手段は単一の、取り外し可能なユニットである。したがって、完成した分離ユニットは単一の、小型のユニットであり、エンジンの単一ユニットとして取り付けられ且つ取り外され得る。このことは、コストおよび空間の両方を節約する。
【0035】
第1態様の実施形態においては、第2チャンバは、回転軸(X)と同じ方向に延びている。
【0036】
分離手段は、回転軸Xが垂直となるようにエンジンに搭載されるために設けられている。第2チャンバも垂直方向に延び、すなわちこれにより、第2チャンバを通じたガスの流れ経路は、垂直方向となる。このことは、より重い液体不純物のガスからの分離をさらに促進しており、すなわち重力が、そのように大きいおよび中間サイズの粒子への揚力をさらに減少させる。
【0037】
第1態様の実施形態においては、予備分離ユニットの少なくとも1つの中間壁は、分離された液体不純物のための少なくとも1つの排液口を備え、この少なくとも1つの排液口は、中間壁の貫通穴の断面積よりも小さい断面積を有する。
【0038】
したがって、排液口は、チャンバから上流に配置されたチャンバへと分離されたオイルを排出するためのものである。このようにして、異なったチャンバから分離されたオイルは、予備分離ユニットの同じ排液口から排出され得る。
【0039】
第1態様の実施形態においては、予備分離入口は第1チャンバの壁に配置され、予備分離出口は第2チャンバの壁に配置されている。したがって、第1チャンバは予備分離入口に隣接していてもよく、第2チャンバは予備分離出口に隣接していてもよい。
【0040】
さらに、予備分離ユニットは、第1チャンバと第2チャンバとの間に配置された第3チャンバを備え得る。
【0041】
予備分離ユニットは、第1チャンバと第2チャンバとの間に配置されたさらなるチャンバさえも備え得ることも理解される。
【0042】
例として、第3チャンバは、第1チャンバの容積よりも大きいが、第2チャンバの容積よりも小さい容積を有し得る。
【0043】
したがって、予備分離ユニットのチャンバは、チャンバが、その上流に配置されたチャンバの容積よりも大きい容積を有するように配列され得る。このようにして、ガスの速度は、予備分離ユニットを貫流する間に減少され得る。
【0044】
例として、第2チャンバは円錐形であってよく、これにより内側断面積は下流方向に向かうに従って減少している。
【0045】
予備分離出口が第2チャンバの壁に配置された場合、そのような予備分離出口は、円錐形の最も狭い部分に配置され得る。したがって、円錐形状の第2チャンバは、予備分離ユニットから遠心分離機の入口への円滑な移送を促進し得る。
【0046】
さらなる例として、第2チャンバと第2チャンバの上流のチャンバとを区切った中間壁は円錐形であり、円錐形の最も狭い部分にガスのための貫通穴を備えており、中間壁は第2チャンバ内に延びている。
【0047】
そのような円錐形状の中間壁は、ガスが円錐形状の第2チャンバに進入した場合に、ガスの速度を減少させることを補助し、それにより例えばオイル粒子のガスからの除去を促進し得る。
【0048】
本発明の第2態様として、汚染物質を含んだガスを浄化するための遠心分離機のための予備分離ユニットが提供されており、この予備分離ユニットは、
断面積A2を有し、浄化されるガスの供給を可能にした予備分離入口と、
予備分離ユニットから遠心分離機の入口へのガスの供給を可能にするための、断面積A3を有する予備分離出口であって、断面積A2は断面積A3よりも大きい、予備分離出口と、
少なくとも第1チャンバおよび第1チャンバの下流に配置された第2チャンバであって、第1チャンバおよび第2チャンバは、予備分離ユニットを通じたガスの貫流を可能にするように配置されており、第2チャンバは、第1チャンバよりも大きい容積を有し、これにより予備分離ユニットを通じたガスの貫流を可能にしたすべてのチャンバは、チャンバが自身の上流に隣接して配置されたチャンバの容積よりも大きい容積を有するように配置された、少なくとも第1チャンバおよび第2チャンバと、を備え、
予備分離ユニットのチャンバは、少なくとも1つの貫通穴を備えた少なくとも1つの中間壁により離間されている。
【0049】
本発明の第2態様に関連して使用された用語および定義は、前述の本発明の第1態様に関連して論じられている。さらに、予備分離ユニットは、前述の第1態様の予備分離ユニットに関連して、任意の例および実施形態において論じられ得る。
【0050】
したがって、第2態様の予備分離ユニットは、クランクケースガスのようなガスを浄化するための既存の遠心分離機に装着され得るユニットを提供している。入口の断面積A2が出口の断面積A3よりも大きいので、ガスの速度は予備分離ユニット内で低く維持され、それにより不純物のガスからの分離を促進している。
【0051】
予備分離出口は、クランクケースガスの分離のための遠心分離機のような、遠心分離機の入口に接続して配置され得る。
【0052】
本発明の第3態様として、汚染物質を含んだガスを浄化するための方法が提供されており、この方法は、
前述の第1態様による分離手段を設けるステップと、
汚染物質を含んだガスを、分離手段の予備分離ユニットの予備分離入口内へと導入するステップと、
浄化されたガスを遠心分離機のガス出口を通じて排出し、且つガスから分離された汚染物質を遠心分離機の排液口を通じて排出するステップと、を含んでいる。
【0053】
本発明の第2態様に関連して使用された用語および定義は、前述の本発明の第1態様に関連して議論されている。
【0054】
遠心分離機を設けるステップは、遠心分離機の回転部材を回転させるステップも含んでいる。
【0055】
ガスは、少なくとも毎分200リットル(lpm)の吹き抜け流量で導入され、例えば少なくとも400lpm、例えば少なくとも500lpmとし得る。
【0056】
本方法は、予備分離ユニットの排液口を通じた、予備分離ユニット内の分離された汚染物質の排出をさらに含み得る。
【0057】
第3態様の実施形態においては、汚染物質を含んだガスは燃焼機関のクランクケースガスであり、汚染物質はオイルを含んでいる。