特許第6641004号(P6641004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6641004ドライガスシールシステムおよびドライガスシールシステムを備える流体機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641004
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】ドライガスシールシステムおよびドライガスシールシステムを備える流体機械
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/70 20060101AFI20200127BHJP
   F04D 29/12 20060101ALI20200127BHJP
   F01D 11/00 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   F04D29/70 K
   F04D29/12 B
   F01D11/00
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-520585(P2018-520585)
(86)(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公表番号】特表2018-536109(P2018-536109A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2016075284
(87)【国際公開番号】WO2017068073
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2018年6月19日
(31)【優先権主張番号】102015013659.3
(32)【優先日】2015年10月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロガー・ズーター
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ベシャート
【審査官】 小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4084825(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0324391(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0225325(US,A1)
【文献】 特表2010−525224(JP,A)
【文献】 特開2012−107609(JP,A)
【文献】 特表2011−522175(JP,A)
【文献】 特表2015−520317(JP,A)
【文献】 特開2011−231880(JP,A)
【文献】 特開2013−122185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/08−29/16,29/70
F04B 39/16
F01D 11/00−11/10
F16J 15/34−15/453,15/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体機械のドライガスシールシステム(1)であって、前記流体機械のロータ側の構成部材(2)を、前記流体機械のステータ側の構成部材(3)に対してシールするための少なくとも一つのドライガスシール(4)と、前記流体機械から取り出されたプロセスガス(11)を浄化するための浄化装置とを備え、前記プロセスガス(11)は浄化の後、単独または個々のドライガスシール(4)に、浄化された封止用ガス(10)として供給可能であるドライガスシールシステムにおいて、
前記浄化装置(13)は、前記流体機械の前記ロータ側の構成部材(2)に組み込まれた遠心装置として実施され、前記遠心装置は、前記流体機械の軸(2)に組み込まれており、前記軸(2)は、前記プロセスガス(11)のための少なくとも一つの入口開口部(22)と、ドライガスシール(4)それぞれに対して前記封止用ガス(10)のための少なくとも一つの径方向の出口孔(23)を有していることを特徴とするドライガスシールシステム。
【請求項2】
前記軸(2)は、不純物のための少なくとも一つの出口開口部(24)を有していることを特徴とする請求項に記載のドライガスシールシステム。
【請求項3】
封止用ガス(10)のための外部貯蔵装置を特徴とする請求項1または2に記載のドライガスシールシステム。
【請求項4】
少なくとも一つの加熱孔が、前記ステータ側の構成部材(3)に形成されていることを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載のドライガスシールシステム。
【請求項5】
ステータ(3)とロータ(2)とドライガスシールシステム(1)とを備える流体機械であって、前記ドライガスシールシステム(1)は、請求項1からのいずれか一項に記載の前記ドライガスシールシステムとされることを特徴とする流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のおいて書き部に記載の流体機械のためのドライガスシールシステムと、このようなドライガスシールシステムを備える流体機械とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばターボコンプレッサのような流体機械において、当該流体機械のロータ側の構成部材を、当該流体機械のステータ側の構成部材に対してシールするために、従来のオイルフィルムシールに代わるドライガスシールシステムを用いることが増えている。
【0003】
図1および図2は、従来技術から既知であるドライガスシールシステム1の詳細を示し、当該ドライガスシールシステムは、流体機械のロータ側の構成部材2を、当該流体機械のステータ側の構成部材3に対してシールするのに役立つ。図1には二つのドライガスシール4が示され、当該ドライガスシールは、ロータ側の構成部材2をステータ側の構成部材3に対してシールするのに役立ち、ドライガスシール4のそれぞれは、ロータ側のシール要素6と、ステータ側のシール要素7とから成るシール装置5を含む。個々のドライガスシール4のシール装置5の個々のステータ側のシール要素7は、個々のドライガスシール4のステータ側の担持装置8に固定され、一方で個々のステータ側の担持装置8に支持され、他方でステータ側の構成部材に支持されるバネ要素9を介して、所定の力でロータ側のシール要素6に押し付けられる、もしくは押圧される。これによりステータ側のシール要素7は、ロータ側のシール要素6に確定的に当接する。
【0004】
こうして一方でドライガスシールシステム1のドライガスシール4のそれぞれに、シールガスとも称されるいわゆる封止用ガス10が供給され、当該封止用ガス10もしくはシールガスは、流体機械12から取り出され、浄化のために浄化装置13を介してガイドされる浄化されたプロセスガス11である。個々のドライガスシール4にはまた、二つのさらなるガス流、すなわちバッファガスとも称されるバリアガス14と、セパレーションガスとも称される分離ガス15とが供給される。バリアガス14および分離ガス15は例えばN2であり、当該N2は貯蔵装置25内に用意され、処理の後、相応の制御装置26を介して個々のドライガスシール4に供給される。
【0005】
ドライガスシールのガス戻りとは、流体機械12およびそれとともにプロセスに戻される封止用ガス10の漏れ16であり、封止用ガス10とバリアガス14との混合物からの、内部漏れとも称される漏れ17であり、バリアガス14と分離ガス15との混合物の、外部漏れとも称される漏れ18であり、ベアリング漏れとも称される、軸受けへの分離ガス15の漏れ19である。
【0006】
したがって上記において既に述べたように、ドライガスシールシステム1では、プロセスから、すなわち流体機械からプロセスガス11を取り出し、浄化装置13において浄化し、浄化されたプロセスガス11を個々のドライガスシール4に、封止用ガス10もしくはシールガスとして供給することが必要である。このとき従来技術から既知であるドライガスシールシステム1において、プロセスガス11の処理もしくは浄化は、外部のフィルターシステムにおいて行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ドライガスシールシステムの構成の簡略化に対する需要がある。したがって本発明は、より簡単な構成を備えるドライガスシールシステムを創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、請求項1に記載のドライガスシールシステムにより解決される。本発明によれば浄化装置は、流体機械のロータに組み込まれた遠心装置として実施されている。
【0009】
本発明により、流体機械から取り出されるとともに、封止用ガスとして用いられるプロセスガスを処理するための、フィルター装置の形での外部浄化装置は省略され得る。それどころか本発明では、流体機械のロータに遠心装置として形成された浄化装置を組み込むことが提案され、当該浄化装置は浄化された封止用ガスを提供するためにプロセスガスを浄化することを引き受ける。外部浄化装置が不要になるため、ドライガスシールシステムの構成は簡略化され得る。ドライガスシールシステムのコスト、複雑さ、および故障発生度が低減される。
【0010】
一の有利な発展的構成によれば、遠心装置は流体機械のロータの軸に組み込まれており、当該軸は好ましくはプロセスガスのための少なくとも一つの入口開口部と、ドライガスシールごとに封止用ガスのための少なくとも一つの径方向の出口孔と、不純物のための少なくとも一つの径方向の出口孔とを有している。遠心装置をロータの軸に組み込むことにより、浄化された封止用ガスを提供するためにプロセスガスを特に有利に処理することが可能となる。さらなる有利点は、中空にされたロータもしくは中空にされた軸により、ロータのダイナミクスが改善され得ることである。さらに、既存の流体機械への取り付けもしくは既存の流体機械の変更が簡単に行われ得る。
【0011】
一の有利な発展的構成によれば、ドライガスシールシステムは、封止用ガスのための外部の貯蔵装置を有する。外部貯蔵型封止用ガスにより、流体機械のロータが停止しているとき、単独または個々のドライガスシールのシール機能が維持され得る。
【0012】
一の有利な発展的構成によれば、ドライガスシールシステムは、ステータおよび/またはハウジングカバー内に少なくとも一つの加熱孔を有する。これによりドライガスシールのいわゆる凝固もしくは閉塞が防止され得る。
【0013】
一のさらなる有利な発展的構成によれば、浄化装置はロータ内に、外部の液体を用いた相応の洗浄装置(図示せず)を有し、当該液体は例えば入り口孔を介して、任意選択的に付加的なノズルも用いて供給される。汚染された洗浄水は一つまたは複数の出口孔を介して排出される。
【0014】
本発明に係る流体機械は請求項7に定義されている。
【0015】
本発明の好ましい発展的構成は、従属請求項および以下の詳細な説明に記載されている。本発明の実施の形態を図面に基づいてより詳しく説明するが、本発明は当該実施の形態に限定されるものではない。図面に示すのは以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】流体機械を、設備技術を備えていない従来技術によるドライガスシールシステムの領域において、概略的な軸方向断面で示す図である。
図2】設備技術を備える従来技術によるドライガスシールシステムのブロック図である。
図3】本発明に係るドライガスシールシステムを備える流体機械を概略的な軸方向断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、流体機械、特にターボコンプレッサのドライガスシールシステム1と、ドライガスシールシステム1を備える流体機械とに関する。
【0018】
ドライガスシールシステム1は、少なくとも一つのドライガスシール4を有し、当該ドライガスシールは、以下において短くロータ2と称される、流体機械のロータ側の構成部材2を、以下において短くステータ3もしくはハウジングと称される、流体機械のステータ側の構成部材3に対してシールするのに役立つ。
【0019】
図3は、本発明に係るドライガスシールシステム1の領域における流体機械の断面を示しており、ドライガスシールシステム1に関してドライガスシール4が示されており、ドライガスシール4は、流体機械のロータ2を、図3において示されていないステータ3もしくはハウジングに対してシールする。図3にはロータ2により受容されたインペラ20が示され、インペラ20はプロセスガスの流れをガイドする働きをする。
【0020】
すでに述べたように、ドライガスシールシステムではプロセスガス11が取り出され、浄化され、浄化された封止用ガス10としてドライガスシール4に供給される。
【0021】
本発明によれば封止用ガス10を提供するためにプロセスガス11を浄化することに役立つ浄化装置は、流体機械のロータ2に組み込まれており、遠心装置として実施され、当該遠心装置は矢印21の方向に回転するロータ2の回転エネルギーを利用し、それにより不純物および/または液体をプロセスガス11から分離し、そのようにしてプロセスガス11から浄化された封止用ガス10を得る。
【0022】
このとき遠心装置は流体機械のロータ2の軸に組み込まれており、当該軸2はプロセスガス11のための少なくとも一つの入口開口部22と、個々のドライガスシール4に対して、浄化された封止用ガス10のための少なくとも一つの出口開口部23と、プロセスガス11から分離された不純物のための少なくとも一つの出口開口部24とを有している。
【0023】
したがって、本発明によれば、プロセスガス11から不純物を除去し、封止用ガス10をドライガスシール4に供給するために、遠心力が用いられる。
【0024】
遠心力とコンプレッサ内の流れ状況に基づいて、すでに入口開口部22の上流でプロセスガス11から第一の不純物が除去され、それにより当該第一の不純物はまず、軸もしくはロータの内部空間に全く進入し得ない。ロータもしくは軸2の内部でさらなる不純物がプロセスガスから分離され、単独または個々の出口開口部24を介して排出される。その後、浄化されたプロセスガスおよびそれとともに封止用ガス10は、出口開口部23を介してドライガスシール4に供給され得る。
【0025】
一の有利な発展的構成によれば、浄化された封止用ガス10のための外部貯蔵装置(図示せず)が設けられており、当該外部貯蔵装置は、ロータ2が回転する通常運転時に浄化された封止用ガス10で充填され得、それにより、ロータの停止時に、浄化された封止用ガスを貯蔵装置から取り出し、個々のドライガスシール4に供給する。これは特に、流体機械が停止している間の冷却段階において行われる。
【0026】
一のさらなる有利な発展的構成によれば、ステータ3および/またはハウジングカバー内に少なくとも一つの加熱孔(図示せず)が設けられ、これによりロータ2の停止時に、ドライガスシールシステム1、特にドライガスシール4を温度調整し、それによりドライガスシールの閉塞を防止する。
【0027】
したがって、本発明により、ドライガスシールシステム1もしくはドライガスシールシステム1を備える流体機械であって、当該ドライガスシールシステムもしくはドライガスシールシステムを備える流体機械において、取り出されたプロセスガス11の処理、すなわち当該取り出されたプロセスガスの浄化が、ロータ2もしくはロータ軸内部で行われる、すなわち、プロセスガス11を浄化するために遠心力を用いる、ロータ軸に組み込まれた遠心装置によって行われるドライガスシールシステムもしくはドライガスシールシステムを備える流体機械が提案される。
【0028】
上記の遠心力は、流体機械の作動時に回転するロータ2において元より存在し、それにより例えばフィルターのような外部浄化装置13は省略され得る。全体としてドライガスシールシステム1および、このようなドライガスシールシステム1を有する流体機械の複雑性、故障発生度、およびコストが低減される。本発明に応じて既存の流体機械への取り付けもしくは既存の流体機械の変更が行われ得る。
【0029】
一のさらなる有利な発展的構成によれば、ロータ2内の浄化装置13は、外部の液体を用いた相応の洗浄装置(図示せず)を有し、当該液体は例えば入口開口部22を介して、任意選択的に付加的なノズルも用いて供給される。汚染された洗浄水は一つまたは複数の出口開口部23,24を介して排出される。
【符号の説明】
【0030】
1 ドライガスシールシステム
2 ロータ
3 ステータ
4 ドライガスシール
5 シール装置
6 ロータ側のシール要素
7 ステータ側のシール要素
8 担持装置
9 バネ
10 封止用ガス/シールガス
11 プロセスガス
12 流体機械
13 浄化装置
14 バリアガス/バッファガス
15 分離ガス/セパレーションガス
16 漏れ(封止用ガス)
17 漏れ/内部漏れ
18 漏れ/外部漏れ
19 漏れ/ベアリング漏れ
20 インペラ
21 回転方向
22 入口開口部
23 出口開口部
24 出口開口部
25 貯蔵装置
26 制御装置
27 ブースタシステム
図1
図2
図3