(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硬化性水性組成物であって、(i)少なくとも2個のカルボン酸基を含む1種以上のポリ酸またはそれらの塩と、(ii)ペンタエリスリトールと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する1種以上の追加のポリオールとを含む2種以上のポリオールの混合物と、(iii)前記硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて0.5〜12重量%の、1種以上のアゼチジニウム基含有樹脂と、(iv)前記硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて25〜60重量%の1種以上の炭水化物とを含み、前記(i)の1種以上のポリ酸における前記カルボン酸基またはそれらの塩の当量数の前記(ii)の2種以上のポリオールの混合物における前記ヒドロキシル基の全当量数に対する比が、1/0.01〜1/10である、硬化性水性組成物。
前記(i)の1種以上のポリ酸が、ポリアクリル酸(pAA)及びpAA水溶液コポリマーより選択されるポリマー性ポリ酸である、請求項1に記載の硬化性水性組成物。
前記(i)の1種以上のポリ酸における前記カルボン酸基またはそれらの塩の当量数の前記(ii)の2種以上のポリオールの混合物における前記ヒドロキシル基の全当量数に対する比が、1/0.2〜1/1である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性水性組成物。
硬化性水性組成物を形成することを含む繊維及び繊維状物品の基材を処理、コーティング、または含浸させる方法であって、水または1種以上の水性溶媒と、(i)少なくとも2個のカルボン酸基を含む1種以上のポリ酸またはそれらの塩と、(ii)ペンタエリスリトールと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する1種以上の追加のポリオールとを含む2種以上のポリオールの混合物と、(iii)前記硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて0.5〜12重量%の、1種以上のアゼチジニウム基含有樹脂と、(iv)前記硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて30〜60重量%の1種以上の炭水化物と、を混合することであって、前記(i)の1種以上のポリ酸における前記カルボン酸基またはそれらの塩の当量数の前記(ii)の2種以上のポリオールの混合物における前記ヒドロキシル基の全当量数に対する比が、1/0.01〜1/10である、混合することと、
前記基材と前記硬化性水性組成物とを接触させるか、または代替的に前記硬化性水性組成物を前記基材へと塗布することと、
前記硬化性水性組成物を100℃〜400℃の温度で加熱することと、を含む、方法。
【発明の概要】
【0005】
1.本発明によると、(i)少なくとも2個のカルボン酸基を含む1種以上のポリ酸またはそれらの塩、好ましくは少なくとも1種のポリマー性ポリ酸と有機多塩基酸との組み合わせと、(ii)ペンタエリスリトールと少なくとも2個のヒドロキシル基を含む1種以上の追加のポリオールとを含む2種以上のポリオールの混合物と、(iii)硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて0.5〜12重量%、好ましくは1〜5重量%の、1種以上のアゼチジニウム基含有樹脂と、(iv)硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて25〜70重量%、好ましくは30〜60重量%の1種以上の炭水化物とを含む硬化性水性組成物が提供され、ここで(i)の1種以上のポリ酸におけるカルボン酸基またはそれらの塩の当量数の(ii)の2種以上のポリオールの混合物におけるヒドロキシル基の全当量数に対する比が、1/0.01〜1/10、または好ましくは1/0.2〜1/3、またはより好ましくは1/0.2〜1/1である。
【0006】
2.上述の項目1の硬化性水性組成物によると、組成物は、(v)1種以上のリン含有促進剤をさらに含む。
【0007】
3.上述の項目1または2のいずれか1つの硬化性水性組成物によると、(i)の1種以上のポリ酸は、ポリマー性ポリ酸、好ましくは、ポリアクリル酸(pAA)、及びpAA水溶液コポリマーを含む。
【0008】
4.上述の項目1、2または3のいずれか1つの硬化性水性組成物によると、(ii)のポリオールの混合物は、二価ポリオールまたは三価ポリオール、好ましくは、トリエタノールアミン(TEA)、グリセロール、ジエタノールアミンまたはトリメチロールプロパン(TMP)を含む。
【0009】
5.上述の項目1、2、3または4のいずれか1つの硬化性水性組成物によると、(i)の1種以上のポリ酸が、(ii)の、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン及びジプロパノールアミン、及びジ−イソプロパノールアミンのような追加のポリオールである、少なくとも2個のヒドロキシル基を有するアルカノールアミンのカルボン酸塩として存在するポリマー性ポリ酸である。
【0010】
6.上述の項目1、2、3、4または5のいずれか1つの硬化性水性組成物によると、(iii)アゼチジニウム基含有樹脂は、好ましくはエピクロロヒドリンのアミノアミドのようなエピハロヒドリンのアミノアミドより選択される。
【0011】
7.上述の項目1〜6のいずれか1つの硬化性水性組成物によると、(iv)の1種以上の炭水化物は、単糖類、二糖類、糖アルコールまたは多糖類、好ましくは、デンプンまたはマルトデキストリン、または好ましくは還元糖から選択される多糖類の1種以上より選択される。
【0012】
8.上述の項目1〜7のいずれか1つの硬化性水性組成物によると、硬化性水性組成物は、2〜8の、好ましくは2〜6のpHを有する。
【0013】
9.上述の項目1〜8のいずれか1つの硬化性水性組成物によると、好ましくは、組成物の粘度を低下させるために、硬化性水性組成物は、1種以上の鉱酸のような≦3.0のpKaを有する強酸触媒を含み、そして≦4.5の、好ましくは≦3.5のpHを有し得る。
【0014】
10.第二の態様において、本発明は、(i−A)硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて10〜50重量%、好ましくは15〜30重量%の1種以上のアミン含有無機安定剤と(iii)硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて0.5〜12重量%、好ましくは1〜5重量%の1種以上のアゼチジニウム基含有樹脂と、(iv)硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて38〜89.5重量%の、1種以上の炭水化物、好ましくは還元糖と、を含む硬化性水性組成物を含む。
【0015】
11.上述の項目10の硬化性水性組成物によると、(i−A)のアミン含有無機安定剤は、無機酸のアミン酸塩及びアンモニア酸塩、またはタングステン酸アンモニウム、パラ及びメタのリン酸アンモニウムのような硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、亜リン酸、炭酸、タングステン酸のアンモニウム塩などの無機酸、ならびにそれらの塩から選択され、好ましくは、7.5以下のpKaを有し、好ましくは重炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムまたは硫酸アンモニウムである。そのようなアミン含有無機安定剤は、酸に応じて、一塩基性、または二塩基性、または多塩基性であってよい。例えば、リン酸(H
3PO
4)は潜在的に3個の酸性プロトンを有する。したがって、例えば、リン酸一アンモニウムである(NH
4)H
2PO
4、リン酸二アンモニウムである(NH
4)
2HPO
4、及びリン酸三アンモニウムである(NH
4)
3PO
4が、本発明のバインダー組成物においての利用を見いだし得る。リン酸アンモニウムナトリウムである(NH
4)
2NaPO
4、及びリン酸水素アンモニウムナトリウムであるNa(NH
4)HPO
4などのようなリン酸の混合アンモニウム塩もまた意図される。本明細書において使用されるとき、用語「アンモニウム」は「アルキルアンモニウム」を含む。
【0016】
12.上述の項目10または11のいずれか1つの硬化性水性組成物によると、水性バインダー組成物のpHは、任意の混合または貯蔵または処理装置の腐食を最小限に抑え、そして7〜12の範囲、例えば約10以下である。
【0017】
13.本発明の別の態様において、不織布、ガラス繊維断熱材のような耐熱性不織布などのような繊維及び繊維状物品の基材を処理、コーティング、または含浸させる方法は、水または1種以上の水性溶媒と(i)少なくとも2個のカルボン酸基を含む1種以上のポリ酸またはそれらの塩、好ましくは少なくとも1種のポリマー性ポリ酸と有機多塩基酸との組み合わせと、(ii)ペンタエリスリトールと少なくとも2個のヒドロキシル基を含む1種以上の追加のポリオールとを含む2種以上のポリオールの混合物と、(iii)硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて0.5〜12重量%、好ましくは1〜5重量%の、1種以上のアゼチジニウム基含有樹脂と、(iv)硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて30〜70重量%の1種以上の炭水化物と、を混合することであって、ここで(i)の1種以上のポリ酸におけるカルボン酸基またはそれらの塩の当量数の(ii)の2種以上のポリオールの混合物における前記ヒドロキシル基の全当量数に対する比が、1/0.01〜1/10、または好ましくは1/0.2〜1/3、またはより好ましくは1/0.2〜1/1である、混合することと、基材と硬化性水性組成物とを接触させること、または代替的に硬化性水性組成物を基材へと塗布することと、硬化性水性組成物を100℃〜400℃の温度で加熱することと、を含む。
【0018】
14.上述の項目13によると、硬化性水性組成物は、上述の項目1〜9のいずれか1つの組成物であってよい。
【0019】
15.本発明のさらに別の態様において、不織布または、ガラス繊維断熱材のような耐熱性不織布などのような繊維及び繊維状物品の基材を処理、コーティング、または含浸させる方法は、水または1種以上の水性溶媒と(i−A)硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて10〜50重量%、好ましくは15〜30重量%の1種以上のアミン含有無機安定剤と、(iii)硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて0.5〜12重量%、好ましくは1〜5重量%の1種以上のアゼチジニウム基含有樹脂と、(iv)硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて45〜89.5重量%の、1種以上の炭水化物、好ましくは還元糖と、を混合することと、基材と硬化性水性組成物とを接触させること、または代替的に硬化性水性組成物を基材へと塗布することと、硬化性水性組成物を100℃〜400℃の温度で加熱することと、を含む。
【0020】
16.本発明のさらになお別の態様において、繊維状物品または不織物品は、上述の13〜15のいずれかの方法によって調製でき、例えばシートまたはシーリングパネルなどのガラス繊維断熱材、及び複合材のような、耐熱性不織布を含む。
【0021】
本明細書において使用されるとき、「追加のポリマー」は、ポリ(アクリル酸)(pAA)などの(コ)ポリマー単位としてエチレン性不飽和モノマーを含む任意の(コ)ポリマーを表す。
【0022】
本明細書において使用されるとき、語句「アルキル」は、1個以上の炭素原子を含む任意の脂肪族アルキル基を意味し、アルキル基は、n−アルキル基、s−アルキル基、i−アルキル基、t−アルキル基、または1種以上の5員、6員または7員の環構造を含む環式脂肪族を含む。
【0023】
本明細書において使用されるとき、語句「水性」は、水と、水及び水混和性溶媒を含む混合物とを含み、「水性組成物」は、塩または酸の水和物の形態の水のみを有する粒状組成物またはスプレー乾燥組成物であり得る。
【0024】
本明細書において使用されるとき、語句「全固形分に基づいて」は、バインダー(例えば、ポリ酸、ポリオール、ポリマーまたは樹脂、炭水化物、安定剤、シラン、充填剤及びtc)中のすべての不揮発成分の全重量と比較した、任意の所与の成分の重量を表す。
【0025】
本明細書において使用されるとき、語句「DE」または「デキストロース当量」は、「乾燥物質におけるデキストロースの百分率として表現される還元糖含量」を表し、そして多糖類の分子量を描写するのに使用される。Handbook of Starch Hydrolysis Products and Their Derivatives(Page 86,1995 By M.W.Kearsley,S.Z.Dziedzic、数平均分子量(Mn)に反比例するその理論値は、DE=Mグルコース/Mn×100または180/Mn×100として計算される。Rong Y,Sillick M,Gregson CM.“Determination Of Dextrose Equivalent Value And Number Average Molecular Weight Of Maltodextrin By Osmometry”,J Food Sci.2009 Jan−Feb;74(1),pp.C33−C40、例えばデキストロースは100のDEを有し、一方で純粋なデンプン(例えばトウモロコシ)は0のDE値を有する)を参照。
【0026】
本明細書において使用されるとき、他に示されない限り、語句「コポリマー」は、独立して、コポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマー、セグメント化コポリマー、グラフトコポリマー、及びそれらの任意の混合物または組み合わせを含む。
【0027】
本明細書において使用されるとき、語句「実質的にホルムアルデヒドを含まない」は、添加されるホルムアルデヒドを含まず、乾燥及び/または硬化の結果として、実質的にホルムアルデヒドを遊離させない組成物を表す。好ましくは、そのようなバインダーまたはバインダーを組み入れる材料は、バインダーの乾燥及び/または硬化の結果として、100ppm未満のホルムアルデヒド、より好ましくは25ppm未満のホルムアルデヒド、そして最も好ましくは5ppm未満のホルムアルデヒドを遊離させる。
【0028】
本明細書において使用されるとき、語句「耐熱性繊維」は、加工中の125℃〜400℃の温度にさらされることによって実質的に影響を受けない繊維を意味する。
【0029】
本明細書において使用されるとき、用語「マレイン酸」は、他に示されない限り、マレイン酸または無水マレイン酸のいずれかを互いに独立して含む。
【0030】
本明細書において使用されるとき、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を意味し、本明細書で使用される用語「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリル及びそれらの混合物を意味する。
【0031】
本明細書において使用されるとき、他に示されない限り、語句「分子量」は、ポリマーが水溶性の場合にポリアクリル酸標準に対して測定され、ポリマーが水分散性の場合にポリスチレン標準に対して測定される、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリマーの重量平均分子量を表す。
【0032】
本明細書において使用されるとき、安定剤の「pKa」は、酸安定剤の最も酸性のプロトンのpKaまたは酸または塩安定剤の最低のpKaとして扱われ、すなわち最も強いプロトンまたは塩基の共役体のpKaとして理解される。
【0033】
本明細書において使用されるとき、語句「多塩基」は、少なくとも2個の反応性酸官能基またはそれらの塩もしくは無水物を有することを意味する(例えばHawley’s Condensed Chemical Dictionary,14th Ed.,2002,John Wiley and Sons,Inc.を参照)。
【0034】
本明細書において使用されるとき、語句「ポリオール」及び「ポリヒドロキシ」は、2個以上のヒドロキシ基を含む有機化合物または有機化合物の構造部分を表す。
【0035】
本明細書において使用されるとき、語句「重量%」は、重量%を表す。
【0036】
単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他を明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。他に定義されない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同一の意味を有する。
【0037】
同一の成分または性質を示すすべての範囲の終点は、終点を含み、独立して組み合わせることができる。したがって、例えば、1000以上かつ1,000,000まで、または好ましくは250,000まで、またはより好ましくは100,000まで、さらにより好ましくは、10,000まで、さらになおもより好ましくは5,000までという重量平均分子量の開示された範囲は、1,000〜1,000,000、または5,000〜1,000,000、または10,000〜1,000,000、または250,000〜1,000,000、または100,000〜250,000、または100,000〜1,000,000、または好ましくは1,000〜250,000、または好ましくは5,000〜250,000、または好ましくは10,000〜250,000、またはより好ましくは、1,000〜100,000、またはより好ましくは、5,000〜100,000、またはより好ましくは、10,000〜100,000、またはさらにより好ましくは、1,000〜10,000、またはさらにより好ましくは、5,000〜10,000、またはさらになおもより好ましくは、1,000〜5000という重量平均分子量を意味すべきである。
【0038】
他に示されない限り、すべての温度及び圧力の単位は、「周囲条件」とも呼ばれる、室温(〜20から22℃)及び標準圧力(STP)である。
【0039】
括弧を含むすべての語句は、含まれている括弧内の事項及びその非存在のいずれかまたは両方を示す。例えば、語句「(コ)ポリマー」は、択一的に、ポリマー、コポリマー及びそれらの混合物を含む。
【0040】
本発明のホルムアルデヒドを含まない硬化性水性組成物は、生物由来の炭水化物を含み、硬化したミネラルウール製品またはガラスビーズドッグボーンの湿潤機械的性能を著しく改善する。硬化性水性組成物は、0.5〜12重量%、例えば1〜5重量%のアゼチジニウム基含有樹脂という驚くほど低いレベルで優れた引張強度性能を提供する。引張強度のデータは、硬化性水性組成物が、炭水化物を含まずに作製された組成物と同一のレベルの湿潤引張強度を維持することを示す。さらに、硬化性水性組成物は、アゼチジニウム基含有樹脂の従来の組成物よりも速い乾燥時間をもたらす高固形分配合物におけるアゼチジニウム基含有樹脂の使用を可能にする。さらに、本発明は、硬化した水性組成物の改善された乾燥引張性能によって示されるように、硬化性水性組成物のガラス繊維基材への改善されたカップリングを可能にする。
【0041】
本発明の組成物は、水和水のみを有する乾燥または粒状組成物を提供し、25〜70重量%、または30重量%〜60重量%の全固形分を有する安定な濃縮組成物を提供する。そのような濃縮物は、水または1種以上の水性溶媒によって希釈して、水性硬化性バインダー組成物を提供することができる。したがって、本発明は、硬化性水性組成物の全重量に基づいて、0.5〜70重量%、好ましくは20〜65重量%、または好ましくは30〜60重量%の全固形分を含む安定な水性熱硬化性バインダー組成物を提供する。
【0042】
本発明の硬化性水性組成物は、(i)1種以上のポリ酸を含む。ポリ酸は、加熱及び硬化操作の間、組成物中のポリオールとの反応に実質的に利用可能なままであるように、十分に不揮発性でなければならない。ポリ酸は、1種以上のポリマー性ポリ酸、1種以上の有機多塩基酸、または好ましくはそれらの混合物であってもよい。
【0043】
(i)の1種以上のポリ酸は、例えば、有機多塩基酸、少なくとも2個のカルボン酸基を含むポリエステル、少なくとも2個、好ましくは少なくとも4個の共重合したカルボン酸を含む付加(コ)ポリマー、塩または無水物官能性モノマーを含む。好ましくは、1種以上のポリマー性ポリ酸は、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーから形成される付加(コ)ポリマー、最も好ましくは(メタ)アクリル酸のポリマー及びコポリマーより選択される。付加(コ)ポリマーは、例えば、塩基性媒体に可溶化されたアルカリ可溶性樹脂などのような水性媒体中の付加(コ)ポリマーの溶液の形態であってもよく、例えば乳化重合された分散液のような水性分散液の形態で、または水性懸濁液の形態であってもよい。
【0044】
有機多塩基酸は、少なくとも2個のカルボン酸基と水性媒体中で2個のカルボン酸基に加水分解する無水物基とを有する約1000未満の分子量を有する化合物、またはそれらの塩、例えば多塩基カルボン酸及び無水物、またはそれらの塩であってよい。例示的な多塩基酸及び無水物は、例えば、クエン酸、ブタントリカルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、無水コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、アジピン酸、グルタル酸、酒石酸、イタコン酸、トリメリット酸、ヘミメリト酸、トリメシン酸、トリカルバリール酸、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、カルボン酸のオリゴマーなど、及びそれらの塩を含んでよい。好ましくは、(i)の1種以上のポリ酸は、クエン酸を含み、より好ましくは、それはポリマー性ポリ酸と混合したクエン酸を含む。
【0045】
好適なポリマー性ポリ酸(コ)ポリマーは、水性媒体中でジカルボン酸に加水分解する1種以上のエチレン性不飽和カルボン酸、無水物、及びそれらの塩、ならびに任意で1種以上のコモノマーの付加重合から形成される。
【0046】
好適なエチレン性不飽和カルボン酸または無水物は、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、2−メチルイタコン酸、α−メチレングルタル酸、マレイン酸モノアルキル、フマル酸モノアルキル、及びそれらの塩;例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アクリル酸、及び無水メタクリル酸などのエチレン性不飽和酸無水物、ならびにそれらの塩を含んでよい。好ましいモノマーは、(メタ)アクリル酸及びマレイン酸、ならびにそれらの塩、及び無水マレイン酸である、カルボン酸基、無水物基または塩を含んでよい。カルボン酸基、無水物基または塩を含むモノマーは、ポリマーの重量に基づいて、10重量%以上、または25重量%以上、または好ましくは30重量%以上、またはより好ましくは75重量%以上、またはさらにより好ましくは85重量%以上、かつ、100重量%まで、例えば、90〜99重量%のレベルで使用される。
【0047】
好適なエチレン性不飽和コモノマーは、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソデシルなどの1種以上のアクリル酸エステルモノマー;ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート及びアリルオキシ官能性ヒドロキシル基含有モノマーのようなヒドロキシル基含有モノマー;モノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキル(メタ)アクリルアミドまたはt−ブチルアクリルアミドなどのアクリルアミドまたはアルキル置換アクリルアミド;スチレンまたは置換スチレン;ブタジエン;酢酸ビニルまたは他のビニルエステル;アクリロニトリルまたはメタクリロニトリル;などを含んでよい。
【0048】
コモノマーの好適な例は、1種以上のアリルオキシ官能性ヒドロキシル基含有モノマー;ビニルホスホン酸、ホスホアルキル(メタ)アクリレートなどのような1種以上のリン含有コモノマー、またはそれらの塩;またはビニルスルホン酸モノマーなどのような1種以上の強酸官能性モノマー、及びそれらの塩;またはそのようなコモノマーのいずれかの混合物を含んでよい。そのようなコモノマーは、付加モノマー混合物中に、付加コポリマーを作製するために使用されるモノマーの全重量に基づいて、3重量%以上、または10重量%以上、かつ20重量%以下、または15重量%以下の量で含まれてよい。
【0049】
1種以上の好ましいアリルオキシ官能性ヒドロキシル基含有モノマーは、式I:
CH
2=C(R
1)CH(R
2)OR
3
〔式中、R
1及びR
2は独立して水素、メチル、及び−CH
2OHより選択され;そしてR
3は、水素、−CH
2CH(CH
3)OH、−CH
2CH
2OH、C(CH
2OH)
2−C
2H
5、及び(C
3−C
12)ポリオール残基より選択される〕
または式II:
【0051】
〔式中、Rは、CH
3、Cl、Br及びC
6H
5より選択され、Xは、共有結合、二価のメチレンまたは二価のC
2〜C
6アルキレン、またはアルキレン基またはアルコキシレン基であり;かつR
1はH、OH、CH
2OH、CH
2CH
2OH、CH(CH
3)OH、グリシジル、CH(OH)CH
2OH、及び(C
3−C
12)ポリオール残基より選択され、好ましくはOHである〕
のヒドロキシル基含有モノマーより選択されてよい。
【0052】
そのような官能性ヒドロキシル基含有モノマーは、モノマー混合物の全重量に基づいて、99重量%まで、または70重量%まで、好ましくは30重量%までのレベルで付加モノマー混合物に含まれ、そしてモノマー混合物の全重量に基づいて、1重量%以上、または10重量%以上の量で使用することができるアリルオキシモノマーであってよい。好適な式(II)の不飽和モノマーの例は、Clamenらの米国特許第7,766,975号に開示されるような、アリルアルコール、メタリルアルコール、アリルオキシエタノール、アリルオキシプロパノール、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールを含む。上記の式I及び式IIのモノマーは、当業者に公知であり、Clamenらの米国特許第7,766,975号に開示される、様々な合成経路によって調製することができる。例えば、塩化アリルを種々のポリヒドロキシ化合物、例えばエリスリトール、ペンタエリスリトール、グリセリン及び糖アルコールのような(C3〜C6)−ポリヒドロキシ化合物と反応させて、これらのポリヒドロキシ化合物の対応するアリルオキシ誘導体を得ることができる。ビニルグリコールは、米国特許第5,336,815号に記載されているような方法によって調製することができる。水性重合条件下で式Iのアリルオキシ化合物に加水分解するアリルオキシ化合物、例えばアリルグリシジルエーテルも本発明のポリマー添加剤を製造するためのモノマーとして有用である。
【0053】
(i)の1種以上のポリ酸は、好適には1000以上の重量平均分子量を有し、重量平均分子量は1000以上から、1,000,000まで、または好ましくは250,000まで、またはより好ましくは100,000まで、またはさらにより好ましくは10,000まで、さらになおもより好ましくは5,000のまでの範囲である。より高分子量のアルカリ可溶性樹脂は、過剰な粘度を示す硬化性水性組成物をもたらし得る。したがって、付加ポリマーが、1種以上のカルボン酸、無水物またはその塩の反応産物を、付加ポリマーを製造するために使用されるモノマーの全重量に基づいて10重量%以上、例えば30重量%の量で含むアルカリ可溶性樹脂であるとき、500〜20,000の分子量が好ましい。
【0054】
(i)のポリマー性ポリ酸としての1種以上の付加(コ)ポリマーは、好ましくは、水溶液重合によって調製され、また、当技術分野で周知の乳化重合技術によって調製されてもよい。重合反応は、当技術分野に公知の様々な方法によって開始することができ、例えば、酸化還元反応(「レドックス反応」)を用いてフリーラジカルを生成させて重合を行うことによってのように、1種以上の開始剤の熱分解を使用することによって開始することができる。ポリマー性ポリ酸を作製するための重合のための方法、媒体及び試薬は、Clamenらの米国特許第7,766,975号に開示される。
【0055】
好ましくは、ポリマー性ポリ酸(i)は、Clamenらの米国特許第7,766,975号に開示されるように、水中での漸次添加溶液重合によって形成する。
【0056】
付加(コ)ポリマーを1種以上の連鎖移動剤の存在下で重合して、低い平均分子量の(コ)ポリマーを調製することができる。例えば、米国特許第5,294,686号に開示されるような、2−メルカプトエタノールのようなSH基を含む有機化合物;ヒドロキシルアンモニウム硫酸塩のようなヒドロキシルアンモニウム塩;ギ酸;亜硫酸水素ナトリウム;または、例えば次亜リン酸ナトリウムのような、例えば次亜リン酸及びその塩のようなリン含有促進剤などのリン含有調節剤のような通常の調節剤を使用してよい。リン含有促進剤を除く連鎖移動剤は、一般に、硬化性水性組成物中のモノマーの重量に基づいて、0〜15重量%、好ましくは1〜10重量%の量で使用される。リン含有促進剤については以下に説明する。
【0057】
水性媒体中での溶解性を改善するために、1種以上の付加(コ)ポリマーのカルボン酸基またはそれらの塩を、1種以上の固定または揮発性の塩基で中和してもよい。好ましくは、付加(コ)ポリマーのカルボン酸基またはそれらの塩を、揮発性塩基で中和してもよい。本明細書において「揮発性塩基」によって、硬化性水性組成物によって基材を処理する条件下において実質的に揮発性である1種以上の塩基を意味する。好適な揮発性塩基は、例えば、アンモニアまたは揮発性低級アルキルアミンを含む。本明細書において「固定」塩基によって、硬化性水性組成物の使用及び硬化の条件下において実質的に不揮発性である塩基を意味する。例えば、水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムなどの固定多価塩基は、コポリマー成分が水性分散液の形態で使用される場合、水性分散液を不安定にする傾向となる可能性があり、好ましくは使用されないが、それらは少量において使用することができる。
【0058】
使用される1種以上の塩基の量は、付加(コ)ポリマーのカルボン酸基またはそれらの塩が、当量に基づいて計算して35%未満、20%未満、または5%未満の程度まで中和されるような量であってよい。中和塩基を一切使用しないことが好ましい。
【0059】
本発明の(ii)の2種以上のポリオールの混合物は、ペンタエリスリトールに加えて、ヒドロキシル基を2個または3個または3個以上、または好ましくは3個以上含む1種以上のポリオールを含む。ポリオールは、加熱及び硬化操作の間、組成物中のポリ酸との反応に実質的に利用可能なままであるように、十分に不揮発性でなければならない。ポリオールは、例えば(ポリ)エチレングリコール、ジエタノールアミン(DEA)、グリコール化尿素、1,4−シクロヘキサンジオール、レゾルシノール、カテコール、及びC
3〜C
8(ポリ)アルキレングリコール;グリセロール、トリメタノールプロパン(TMP)、トリメタノールエタン、トリエタノールアミン(TEA)、1,2,4−ブタントリオール、ポリ(ビニルアルコール)、部分加水分解ポリ(ビニルアセテート)、プロポキシル化トリメチロールプロパン、プロポキシル化ペンタエリスリトール、以下の式(III):
【0061】
〔式中、R及びR”は、独立して、Hまたは、アリール、シクロアルキル及びアルケニル基を含んでもよい、一価のC
1〜C
18直鎖または分岐のアルキルラジカルを表し;R’は、二価のC
1〜C
5アルキレンラジカルまたは共有結合を表し;yは整数1または2であり、xは0または1であり、(x+y)=2となるようにされている〕のβ−ヒドロキシアミドのような、3個以上のヒドロキシル基を含む三価ポリオール、及びそれらの混合物より選択してもよい。他の好適な少なくとも3個のヒドロキシル基を有する三価ポリオールは、米国特許第4,076,917号の教示に従って調製し得るような、例えばビス−(N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル))アジパミドのような例えばβ−ヒドロキシアルキルアミドのような反応性ポリオール、ならびにヒドロキシル基含有モノマーの重合産物を含む付加(コ)ポリマー、またはそれらの混合物及び組み合わせを含んでもよい。
【0062】
さらに、ペンタエリスリトール以外の好適なポリオールは、(i)の1種以上のエチレン性不飽和カルボン酸と上述の式(I)または(II)のモノマーのような1種以上のヒドロキシル基含有モノマーとの重合産物を含む本発明の1種以上のポリマー性ポリ酸を含んでもよい。
【0063】
好ましくは、ペンタエリスリトール以外の1種以上のポリオールは、三価アルコール、ジエタノールアミンまたは式(III)の二価ポリオールを含む。好ましい三価アルコールは、グリセロール、TEA、式(III)の三価のβヒドロキシアミド、及びそれらの混合物である。
【0064】
本発明のポリ酸組成物において、硬化性水性組成物、すなわち1種以上のポリ酸(i)におけるカルボキシまたはその塩の当量数の、ポリオール(ii)とペンタエリスリトールとのヒドロキシルの全当量数であって、1種以上の炭水化物中のヒドロキシル基を数えないヒドロキシルの全当量数に対する比は、約1/0.1〜約1/10、好ましくは1/0.2〜1/1であり、例えば、1/3までの範囲であってよい。過剰の揮発性有機化合物(VOC)を避け、良好な硬化ネットワークの形成を確実にするために、硬化性水性組成物において、ポリオール(ii)とペンタエリスリトールとにおけるヒドロキシル当量に対して過剰の当量のカルボキシ、無水物、またはそれらの塩が好ましい。本明細書において使用されるとき、(ii)の2種以上のポリオールの混合物中のヒドロキシル当量数の合計は、炭水化物からのヒドロキシル基を一切含まない。
【0065】
水性バインダー組成物は、(iv)の単糖類、二糖類、糖アルコールまたは多糖類などの1種以上の炭水化物を含むことができる。用語「炭水化物」は、ポリヒドロキシル化化合物であって、その多くがアルデヒド基またはケトン基を含むかまたは加水分解でそのような基を生じる、式(CH
2O)
nのポリヒドロキシル化化合物を表す。炭水化物は、バインダー組成物の加熱または硬化の間にバインダー組成物中に残留する能力を最大にするために十分に不揮発性でなければならない。
【0066】
好適な炭水化物は、単糖類または二糖類などの糖類、好ましくは還元糖を含む。好適な単糖類は、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、またはヘプトースからなることができ、好ましくは、ペントース及びヘキソースと呼ばれる5または6個の炭素原子を有するものからなることができる。糖類は、アルドースと呼ばれるアルデヒドまたはケトースと呼ばれるケトンを含んでもよい。好適なアルドペントース糖は、リボース、アラビノース、キシロース、及びリキソースを含み、ケトペントース糖は、リブロース、アラブロース、キシルロース、及びリキスロースを含む。アルドヘキソース糖の例は、グルコース(例えばデキストロース)、マンノース、ガラクトース、アロース、アルトロース、タロース、グロース及びイドースを含み、ケトヘキソース糖は、フルクトース、プシコース、ソルボース、及びタガトースを含む。ケトヘプトース糖はセドヘプツロースを含む。そのような炭水化物の他の天然または合成の立体異性体または光学異性体もまた、水性バインダー組成物の炭水化物成分として有用であり得る。
【0067】
好適な還元糖は、例えば、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マルトース、グルコース、デキストロース、キシロース及びレブロースを含んでもよい。さらに、コーンシロップ、高フルクトースコーンシロップ、トウモロコシ穂軸由来のヘミセルロース、脱リグニン木及び竹、及び他のフルクトース、キシロース、及びデキストロース同等物などの多数の好適な還元糖源を使用することができる。1種の好適な市販のコーンシロップは、例えば97%以上のデキストロース含量を有するADM97/71コーンシロップ(Archer Daniels Midland Company Decatur、IL)である。好ましい還元糖は、5−炭還元糖及び6−炭素還元糖である。
【0068】
好適な糖アルコールは、例えば、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールであってよい。
【0069】
好適な二糖類は、スクロース、ラクトース、またはマルトースを含んでもよい。
【0070】
好適な多糖類(三糖以上の糖類を含む)は、例えばデンプン、セルロース、グアー及びキサンタンなどのようなガム、アルギン酸塩、キトサン、ペクチン、ゲラン及びそれらのエーテル化、エステル化、酸加水分解、デキストリン化、酸化または酵素処理の誘導体であってよい。そのような多糖類は、植物、動物及び微生物のソースを含む天然産物から誘導することができる。
【0071】
好適なデンプンは、トウモロコシ(maize)またはトウモロコシ(corn)、ワクシートウモロコシ、高アミローストウモロコシ、ジャガイモ、タピオカ及びコムギデンプンを含む。他のデンプンは、米、ワキシーライス、エンドウ、サゴ、オートムギ、オオムギ、ライムギ、アマランス、サツマイモ、及び、高アミローストウモロコシデンプンのような例えばアミロース含量が40%以上のハイブリッド高アミロースデンプンのような、従来の植物育種から得られるハイブリッドデンプンのような多種のものを含む。高アミロースジャガイモ及びジャガイモアミロペクチンデンプンなどの遺伝子操作されたデンプンも有用であり得る。
【0072】
多糖類は、エーテル化、エステル化、酸加水分解、デキストリン化、酸化または酵素処理(例えばα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼまたはグルコアミラーゼによる)などの修飾または誘導体化、または生物工学処理されてもよい。
【0073】
水性組成物の炭水化物は、例えばヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシまたは他の置換基によって任意に置換されていてもよい。炭水化物は、コーンシロップ、小麦シロップまたは高フルクトースコーンシロップを含む、粉末または顆粒糖または糖シロップの形態であってもよい。
【0074】
好ましくは、炭水化物が糖シロップである場合、それは50〜100のDEを有する。
【0075】
好ましくは、炭水化物が多糖類である場合、0〜35、またはより好ましくは0〜30のDEを有するデンプン、マルトデキストリン及び多糖類より選択される。
【0076】
好ましくは、硬化性水性組成物は、米国特許第6,136,916号に開示されているような化合物であってもよい、(v)の1種以上のリン含有促進剤も含む。好ましくは、促進剤は、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、またはそれらの混合物からなる群より選択される。リン含有促進剤は、硬化性水性組成物に添加されるリン含有基を有する1種以上の(コ)オリゴマーであってよく、例えば付加重合によって次亜リン酸ナトリウムの存在下で形成されたアクリル酸の(コ)オリゴマーであってよい。さらに、1種以上のリン含有促進剤は、連鎖移動剤としてのポリマー性ポリ酸であるリン酸含有基を有するポリマー性ポリ酸、例えば、次亜リン酸ナトリウムの存在下で形成される、アクリル酸と、任意でのエチレン性不飽和コモノマーとの付加(コ)ポリマーの一部を含んでよい。
【0077】
(v)の1種以上のリン含有促進剤は、硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて0.1重量%〜40重量%、または1重量%以上、または好ましくは2重量%以上、または20重量%まで、または好ましくは15重量%まで、そしてより好ましくは12重量%までのレベルで使用してよい。リン含有促進剤がポリマー性ポリ酸の一部を構成するとき、リン含有促進剤の重量%は、総バッチ固形分の一部分として反応器に投入されたリン含有促進剤の固形分重量%によって決定される。
【0078】
本発明の硬化性水性組成物は、1種以上の強酸触媒を含み、好ましくは≦3.5、より好ましくは2.5以下、さらにより好ましくは2.1〜2.3の低いpHを有する。低pHは、例えば、1種以上の好適な酸、好ましくは鉱酸を硬化性水性組成物に添加することによって得ることができる。鉱酸は、バインダーの塗布または製造のいずれかの時点で添加することができる。鉱酸は、硫酸または硝酸であってよい。他の好適な酸は、p−トルエンスルホン酸のような、例えばカルボン酸及びスルホン酸のような有機酸であってよい。
【0079】
硬化性水性組成物が強酸エステル化触媒(≦3.0のpKaを有する)を含むとき、カルボン酸基または付加(コ)ポリマーの塩は、好ましくは揮発性塩基のような不安定塩基によって中和され得る。当量に基づくことに関して、ジカルボン酸の半エステルまたはジカルボン酸の無水物を使用するとき、酸の当量は対応するジカルボン酸の当量と等しくなるように計算される。
【0080】
硬化性水性組成物は、1種以上のポリ酸、1種以上のポリオール、ペンタエリスリトール、及び所望なら1種以上のリン含有促進剤及び任意の追加成分を従来の混合技術を用いて混合することによって調製することができる。任意で、(i)の1種以上のポリ酸と混合する前に、1種以上の有機多塩基酸またはその塩を反応条件下で1種以上のポリオール(ii)と混合してもよい。水は、輸送時の重量を最小限に抑えるために、使用前ではなく使用時点において、組成物の残部と混合することができる。
【0081】
本発明の硬化性水性組成物の全固形分は、0.5〜99重量%であってよい。組成物の全固形分は、例えば水和水のみを含有する乾燥(例えばスプレー乾燥)バインダー組成物または粒状バインダー組成物などの場合に、組成物の全重量に基づいて90重量%以上または95重量%以上の範囲であってよい。液体組成物は、溶液または分散液と同様に、70重量%まで、または65重量%まで、または60重量%までの全固形分を有することができ、そのような全固形分は、0.5重量%以上、または20重量%以上、または30重量%以上の範囲であってよい。硬化性水性組成物の全固形分は、基材を処理する様々な手段に適した粘度を有する組成物を提供するように選択することができる。例えば、スプレー可能な硬化性水性組成物は、10重量%以下の全固形分を有することができる。しかしながら、基材は、10重量%以上の全固形分を有する硬化性水性組成物に浸漬されていてもよく、またはそれ自体を接触させてもよい。
【0082】
本発明の組成物は、任意の時点で添加できる添加剤をさらに含んでもよい。好適な添加剤は、バインダー固形分の全重量に基づいて、40重量%までの量で使用される乳化剤、顔料、充填剤または増量剤;耐マイグレーション助剤;例えばウレタン、及びビスフェノール型エポキシ樹脂のようなエポキシ樹脂のような硬化剤;造膜助剤;バインダー固形分の全重量に基づいて0.01〜5重量%で使用される、ホスホン酸塩、マレイン酸塩、スルフィン酸塩及びドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)、好ましくは5〜25のHLBを有する非イオン性界面活性剤及び非芳香族スルホン酸塩を含むアニオン性または非イオン性界面活性剤;展着剤;粉塵抑制剤;殺生物剤;可塑剤;シランなどのようなカップリング剤、消泡剤;チオ尿素、シュウ酸塩、及びクロム酸塩、例えばシュウ酸スズのような腐食防止剤、特に≦4のpHで有効な腐食防止剤及び酸化防止剤;着色剤;帯電防止剤;潤滑剤;粉塵抑制剤またはワックスの各々の1種以上を含む。
【0083】
好適な充填剤または増量剤は、カオリン及びベントナイトを含む微結晶性シリカ;焼成ケイ酸アルミニウム、ケイ灰石;ケイソウ土シリカ;粉砕ガラス;霞石閃長岩;ハイドロタルサイト;雲母;例えばフィロケイ酸塩のようなスメクタイト、二酸化チタン、酸化亜鉛、例えば焼成ケイ酸アルミニウムのような焼成粘土及び焼成ケイ酸塩、及びそれらの混合物を含んでもよい。カオリン粘土、スメクタイトまたはフィロケイ酸塩は、それらを疎水性にするためにトリアルキルアリールアンモニウム化合物などによって表面処理してもしなくてもよい。
【0084】
例えばガラスウールまたはミネラルウールのような耐熱性不織繊維上への硬化性水性組成物のスプレーによる塗布を容易にするために、組成物は、1種以上の消泡剤をさらに含んでもよい。好適な消泡剤は、例えば会合性増粘剤のような、エトキシル化された非イオン性及び疎水性−親水性−疎水性ブロックコポリマーを、それぞれバインダー固形分の全重量に基づいて0.001〜5重量%の量で、または式(III)のラクトンからのβ−ヒドロキシアミドを、バインダー固形分の全重量に基づいて10重量%までまたはそれ以上まで、または5重量%まで、または1重量%までの量で、または0.1重量%以上、または0.5重量%以上で、含んでもよい。
【0085】
好ましくは、ガラスウールまたはミネラルウールの基材を処理するための硬化性水性組成物は、シラン、特に、例えばSILQUEST(商標)A−187(Momentive Performance Materials、Waterford、NY)として入手可能なγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン化合物のような3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、アミノプロピルトリ(m)エトキシシランのような加水分解性オキシシランのようなカップリング剤を含む。そのようなカップリング剤は、バインダー固形分の全重量に基づいて0.1重量%以上、または0.2重量%以上、または0.5重量%以上の量で使用することができ、そのような量は、バインダー固形分に基づいて5重量%まで、または2重量%まで、または1.5重量%までの範囲であってよい。
【0086】
好ましくは、表面被覆を促進するために、1種以上の界面活性剤及び乳化剤が、結合剤固形分が一緒に混合された直後に硬化性水性組成物に添加される。1種以上の界面活性剤または乳化剤は、より高い全固形分(30%をこえる)及び室温以上の貯蔵温度で水性均質性を維持するのに役立つ。好適な界面活性剤は、非イオン性物質、スルホン酸塩、硫酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩を含み得る。特に有用なものは、SURFYNOL(商標)(Air Products and Chemicals、Inc.、Allentown、PA)及びTERGITOL(商標)(The Dow Chemical Company、Midland、MI)のような非シリコーン及びアセチレン基含有の界面活性剤、ならびにNEODOL(商標)(Shell Chemicals、Houston、TX)のようなエトキシル化脂肪アルコールである。
【0087】
微粉または微細材料を含む基材上での使用のために、好ましくは1種以上の粉塵抑制剤を添加してもよい。そのような粉塵抑制剤は、主にC
25より高い炭素数と、約400℃(752°F)より高い沸点とを有する炭化水素を含んでもよい。これらは、MULREX(商標)不燃性油(Exxonmobil Oil Corp.、Fairfax、VA)及びGaro 217(G.O.V.I.、NV、Drongen、Belguim)のような非発煙炭化水素エマルションを含むことができる。そのような粉塵抑制剤は、乳化された水性分散液として、または乳化せず直接、全バインダー固形分に基づいて1〜5重量%、好ましくは3.0重量%までの量で添加することができる。
【0088】
本発明は、本発明の硬化性水性組成物を形成し、基材を硬化性水性組成物と接触させるかまたは硬化性水性組成物を基材に塗布し、そして硬化性水性組成物を、組成物を乾燥及び硬化させるために100℃〜400℃の温度に加熱することによって、1種以上の基材を処理するための方法を提供する。基材は、一般的に、例えば、浸漬被膜の例のようなコーティング、サイジング、飽和、結合、及びそれらの組み合わせとして記載される方法によって、硬化性水性組成物と接触させることができる。
【0089】
硬化性水性組成物は、例えば、エアスプレーまたはエアレススプレー、パディング、飽和、ロールコーティング、カーテンコーティング、ビーター堆積、または凝固などの従来の技術によって基材に塗布することができる。20,000を超える重量平均分子量とRT及び標準圧力で例えば≧600のセンチポアズという高粘度とを有するポリ酸付加(コ)ポリマーを含む硬化性水性組成物は、好ましくはディップコーティングまたはロールコーティングによって繊維基材及び複合基材へと塗布してよい。
【0090】
硬化性水性組成物の乾燥及び硬化において、加熱の持続時間及び温度は、乾燥速度、処理または取り扱いの容易性、及び処理された基材の特性発現に影響を及ぼす。100℃以上かつ400℃までの好適な熱処理は、3秒〜15分間維持することができる。好ましくは、熱処理温度は150℃以上であり、そのような好ましい熱処理温度は280℃まで、またはより好ましくは225℃までの範囲であってよい。
【0091】
所望なら、乾燥及び硬化を2つ以上の別個の工程で実施することができる。例えば、硬化性水性組成物は、最初に、組成物を実質的に硬化しないが組成物を実質的に乾燥させるのに十分な温度及び時間で加熱し、次いで、より高い温度及び/またはより長い時間での第2の時間の加熱をして硬化を実施してもよい。「Bステージ化」と呼ばれるそのような手順は、バインダー処理された不織布を、例えば後に、硬化プロセスと同時の特定の形状への成形または成型を伴ってまたは伴わずに硬化することができるロール形態で提供するのに使用することができる。
【0092】
ポリ酸(i)は、特定のタイプの処理装置、特に軟鋼から作られたものに対して腐食性であり得るので、そのようなポリ酸を含む溶液を取り扱う際にはある種の腐食制御を実施することが好ましい。これらの実施は、例えば、TEAまたは塩基性ポリオール(ii)の例のようなpH制御、リン酸含有促進剤及びそれらを含むポリマーの使用を減少させること、ならびにより腐食性の材料の代わりにプロセス装置自体にステンレス鋼のような材料を使用することを含むことができる。
【0093】
好適な基材は、例えばガラス繊維及び鉱物繊維のような繊維のような繊維及び繊維状物品、;不織布;アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、ポリイミド繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、鉱物繊維及びガラス繊維を含む耐熱織布及び不織布;例えば、ポリ(芳香族イミド)またはPVCのような微細または繊維状の金属及び耐熱プラスチック材料を含んでよい。好適な不織布基材は、例えば、ニードルパンチング、エアレイド法、またはウェットレイド法によって生じる絡み合いなどの純粋な機械的手段;例えばポリマー結合剤による処理のような化学的手段;または不織布形成前、不織布形成中または不織布形成後の機械的手段及び化学的手段の組み合わせによって固められた繊維を含むことができる。耐熱性不織布はまた、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、及び超吸収性繊維のようなそれ自体耐熱性ではない繊維を、それらが基材の性能に実質的に悪影響を及ぼさない程度またはその量で含んでもよい。
【0094】
本発明の硬化性水性組成物の好適な用途は、例えば、オーブン及び建築用構造物において使用する断熱バットまたはロールとして、屋根または床用の補強マットとして、ロービングとして、プリント回路基板用のマイクロガラスベースの基材として、電池セパレータとして、例えばエアーダクトフィルター用のフィルターストックとして、テープストックとして、石積みのためのセメント系及び非セメント系コーティングの補強用スクリムとして、または研磨剤としての使用のための不織布;例えばブレーキシュー及びパッドのような研磨剤及びストックまたはそれらのプリプレグとして、またはシートまたはパネルとして、またはシーリングタイルとしての使用のための織布、不織布、及び複合材;例えば、150℃〜250℃の温度で熱アスファルト組成物を含浸させて屋根板またはロール屋根材を作製するための、鉱物またはガラス繊維含有耐熱不織布を含む。
【0095】
実施例:以下の非限定的な例は、硬化性水性組成物及び耐熱性不織布のためのバインダーとしてのその使用を説明する。
【0096】
これ以降に使用される略語には、以下:
pAA=ポリアクリル酸;SHP=次亜リン酸ナトリウム;及びTEA=トリエタノールアミン、
が含まれる。
【0097】
試験方法:以下の試験を、指定された硬化性水性組成物において実施した。
【0098】
処理されたガラスマイクロファイバーフィルターペーパーの引張試験:20.3cm×25.4cmシートとしてのバインダー含浸マイクロファイバーフィルター(Whatman International Inc.、Maidstone、England、GF / A、カタログ番号1820866)を、指定された予備混合の硬化性水性組成物で満たされたトラフを通してシートを引き出し、シートを均質化して余分なバインダーを吸収するために、3m/分の速度及び3バールの圧力で2個のカレンダーロール(Mathis lab foulard)の間に処理したシートを走行させることによって調整した。得られたシートを、2300rpmに設定されたファンで通気されたMathisオーブン中で200℃2.5分間乾燥させた。乾燥後の重量を測定して、バインダーのアドオン(add−on;フィルターペーパーの重量の百分率としての乾燥バインダー重量)を計算した。すべてのシートは約20%のバインダーアドオン、約53g固形分/シートのm
2を有していた。「アドオン」は、フィルターシートの重量に基づく、最初の乾燥後かつ硬化前のフィルターシート上に残存するバインダーの固形分の重量%である。次いで、乾燥したシートを、サンプルを乾燥させるために使用した同じタイプのMathisオーブン中で200℃150秒間硬化した。それぞれの指定された硬化性水性組成物について、合計3〜8回の試験が行われ、平均引張強度が報告された。
【0099】
乾燥引張:乾燥し硬化したシートを168×30mmのストリップに切断し、各シートを、23℃及び50%RHにおいて、100mm/分の速度でZwick試験機(Zwicki(商標)1140、Zwick GmbH&Co.KG、Ulm、DE)を用いて試験した。
【0100】
湿潤引張:乾燥し硬化したシートを168×30mmのストリップに切断し、各シートをウォーターバス中に10分間浸漬し、次いで100mm/分の速度でZwick試験機(Zwicki(商標)1140)を用いる試験によって試験した。
【0101】
ドッグボーン引張試験:ドッグボーン(75mm(1)x42mm(w)及び25mm(25)×6mm厚)を、ガラスビーズ(Spheriglass(商標)2024 CP00、106〜212μm、Specification31102、Potters Industries、Kirchenheombolanden、DE)をビーカー中で混合し、均一なスラリーが得られるまでスパチュラを用いて手で指定された硬化性水性組成物と共に混合し、上述の寸法を有するポリテトラフルオロエチレンコーティングされたステンレス鋼成形型を混合物で満たし、緻密で均一なシェルボーンを作製することができるようにスラリーを圧縮することによって作製した。次いでドッグボーンをMathisオーブン中で200℃30分間硬化する。乾燥強度のために、ドッグボーンを、>12時間23℃/50%RHにおいて調整し、次いで試験した。湿潤強度のために、他に示されない限り、ドッグボーンを、Mathisオーブン中のウォーターバス中に90℃90分間配置して、オーブンから取り出し、30分間冷却させて調整し、次いで試験した。次いで、硬化され調整されたドッグボーンの乾燥引張強度及び湿潤引張強度を、Zwick Z005引張試験機Zwick GmbH&Co.Kg、Ulm、DE)を用いて、ドッグボーンを試験機の顎部に配置し、ドッグボーンを顎部によって5mm/分の変位速度で折り曲げることによって試験した。 試験は、破断時の最大引張力を記録した。それぞれの指定された硬化性水性組成物について、合計3〜6回の試験を実施し、平均引張強度を報告した。
【0102】
以下の表1及び1Aに示されるように、以下の材料が実施例において使用された。
【0104】
以下の表2に指定される硬化性水性組成物を、指定されたバインダー中のポリマー性ポリ酸をウォーターバス中で65℃15分間加熱し、ペンタエリスリトールをポリ酸へとゆっくりと添加し、次いで30〜35分間攪拌し、任意のSHP及びグリセロールまたはポリオールを添加し、15分以上攪拌することによってバインダーを作製し、次いでデンプン、指定されたバインダー、クエン酸及びアゼチジニウム含有を単純に混合することによって調製した。
【0106】
これらの組成物のドッグボーン引張試験の結果について、以下の表3にそれぞれの試験の3回の試験の平均として報告する。
【0108】
以下の表3に示されるように、本発明の実施例6の組成物は、比較例5のようなデンプンを一切含まない、同一の熱硬化性水性硬化可能なバインダーと少なくとも匹敵する湿潤引張強度をもたらす。ペンタエリスリトールを含む本発明の実施例6の組成物はまた、比較例3におけるTEAを用いて作製された組成物と比べて、優れた湿潤引張強度をもたらした。
【0110】
以下の表4に示される高炭水化物硬化性水性組成物を、ビーカー中のタービンミキサーによって単純に混合し、D−グルコースを水に撹拌し、次いで硫酸アンモニウムを添加し、10分間撹拌し、次いで、アゼチジニウム基含有樹脂を添加し、さらに10分間撹拌することによって調製した。試験結果を、それぞれの試験で3回の試験の平均として以下の表5に示す。
【0111】
以下の表5に示されるように、本発明の硬化性水性組成物は、わずかに2重量%(固形分に基づく)のアゼチジニウム基含有樹脂の使用にもかかわらず、実施例8において劇的に改善された湿潤強度及び乾燥強度をもたらした。
【0114】
硬化性水性組成物の配合物を、以下の表6に示される材料によって、上述の表2における組成物と同様に作製した。硬化性水性組成物をテストし、6回の試験の平均として結果を以下の表7に示す。
【0117】
上述の表7に示されるように、実施例10、11、12及び13における本発明の硬化性水性組成物は、それぞれアゼチジニウム基含有樹脂を含まないか、またはアゼチジニウム基含有樹脂のみを含む、比較例9及び14と比べてはるかに良好な湿潤引張強度をもたらす。さらに、実施例13は、15部(固形分)のアゼチジニウム基含有樹脂を使用したとき、実施例10、11及び12におけるそれぞれ1、4及び9部と反対に、湿潤引張強度のわずかな増加及び乾燥引張強度の低下のみを示している。
【0118】
以下の表8において、上述の表2の配合物のように種々の配合物を作製し、試験した。表8のすべての硬化性水性組成物は、2.15付近のpHを有した。試験の結果を以下の表9に示す。
【0121】
上述の表9に示されるように、実施例20、21、23及び24において、本発明の硬化性組成物は、すべてわずかに1重量%のアゼチジニウム基含有樹脂(バインダー3の固形分30部)を有していたのにもかかわらず、湿潤引張強度における劇的な改善をもたらした。
(態様)
(態様1)
硬化性水性組成物であって、(i)少なくとも2個のカルボン酸基を含む1種以上のポリ酸またはそれらの塩と、(ii)ペンタエリスリトールと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する1種以上の追加のポリオールとを含む2種以上のポリオールの混合物と、(iii)前記硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて0.5〜12重量%の、1種以上のアゼチジニウム基含有樹脂と、(iv)前記硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて25〜70重量%の1種以上の炭水化物とを含み、前記(i)の1種以上のポリ酸における前記カルボン酸基またはそれらの塩の当量数の前記(ii)の2種以上のポリオールの混合物における前記ヒドロキシル基の全当量数に対する比が、1/0.01〜1/10である、硬化性水性組成物。
(態様2)
前記組成物が(v)1種以上のリン含有促進剤をさらに含む、態様1に記載の硬化性水性組成物。
(態様3)
前記(i)の1種以上のポリ酸が、少なくとも1種のポリマー性ポリ酸と有機多塩基酸との組み合わせを含む、態様1に記載の硬化性水性組成物。
(態様4)
前記(i)の1種以上のポリ酸が、ポリアクリル酸(pAA)及びpAA水溶液コポリマーより選択されるポリマー性ポリ酸である、態様1に記載の硬化性水性組成物。
(態様5)
(iii)の、前記硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて1〜5重量%の1種以上のアゼチジニウム基含有樹脂を含む、態様1に記載の硬化性水性組成物。
(態様6)
前記(ii)のポリオールの混合物中の前記1種以上の追加のポリオールが、二価ポリオールまたは三価ポリオールを含む、態様1に記載の硬化性水性組成物。
(態様7)
前記(iii)のアゼチジニウム基含有樹脂がエピハロヒドリンのアミノアミドより選択される、態様1に記載の硬化性水性組成物。
(態様8)
前記(iv)の1種以上の炭水化物が、還元糖、デンプン、またはマルトデキストリンより選択される、態様1に記載の硬化性水性組成物。
(態様9)
前記(i)の1種以上のポリ酸における前記カルボン酸基またはそれらの塩の当量数の前記(ii)の2種以上のポリオールの混合物における前記ヒドロキシル基の全当量数に対する比が、1/0.2〜1/1である、態様1〜8のいずれか1項に記載の硬化性水性組成物。
(態様10)
硬化性水性組成物を形成することを含む繊維及び繊維状物品の基材を処理、コーティング、または含浸させる方法であって、水または1種以上の水性溶媒と、(i)少なくとも2個のカルボン酸基を含む1種以上のポリ酸またはそれらの塩と、(ii)ペンタエリスリトールと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する1種以上の追加のポリオールとを含む2種以上のポリオールの混合物と、(iii)前記硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて0.5〜12重量%の、1種以上のアゼチジニウム基含有樹脂と、(iv)前記硬化性水性組成物の全固形分重量に基づいて30〜70重量%の1種以上の炭水化物と、を混合することであって、前記(i)の1種以上のポリ酸における前記カルボン酸基またはそれらの塩の当量数の前記(ii)の2種以上のポリオールの混合物における前記ヒドロキシル基の全当量数に対する比が、1/0.01〜1/10である、混合することと、
前記基材と前記硬化性水性組成物とを接触させるか、または代替的に前記硬化性水性組成物を前記基材へと塗布することと、
前記硬化性水性組成物を100℃〜400℃の温度で加熱することと、を含む、方法。