特許第6641028号(P6641028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6641028輝度調整装置、表示装置及び輝度調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641028
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】輝度調整装置、表示装置及び輝度調整方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/00 20200101AFI20200127BHJP
【FI】
   H05B37/02 G
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-550963(P2018-550963)
(86)(22)【出願日】2016年11月18日
(86)【国際出願番号】JP2016084258
(87)【国際公開番号】WO2018092267
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2018年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】300016765
【氏名又は名称】NECディスプレイソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】松井 勝之
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−311008(JP,A)
【文献】 特開平6−167695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部が備える光源を駆動する駆動値を目標値になるように制御することで前記光源の輝度を調整する輝度調整装置であって、
前記光源を使用した時間を前記駆動値の三乗値を用いて補正し、該補正した時間を積算して前記光源の積算使用時間を求め、予め記憶された前記光源の使用時間と輝度との関係を示す輝度特性と前記積算使用時間とに基づいて前記駆動値を求める劣化補正部を備える輝度調整装置。
【請求項2】
前記表示部の使用状態に基づいて、前記駆動値の初期値を設定する初期値生成部をさらに備え、
前記劣化補正部は、前記積算使用時間を前記輝度特性の使用時間としたときの該使用時間に対応する輝度を前記輝度特性から求め、該求めた輝度と前記駆動値の初期値とに基づいて前記駆動値を求める請求項1に記載の輝度調整装置。
【請求項3】
前記表示部の使用状態は、前記表示部における画質の設定値と、前記表示部に入力される映像の映像特性との少なくともいずれか一方から設定される請求項2に記載の輝度調整装置。
【請求項4】
前記駆動値および前記輝度は、前記光源を用いて前記表示部に入力される映像を表示するときの最大値を1に正規化した値である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の輝度調整装置。
【請求項5】
前記劣化補正部は、所定時間が経過するごとに、前記光源を使用した時間を前記駆動値の三乗値を用いて補正し、該補正した時間を前記積算使用時間に積算することで前記積算使用時間を更新する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の輝度調整装置。
【請求項6】
前記輝度を維持するように調整する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の輝度調整装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の輝度調整装置と、
前記表示部と、
を備える表示装置。
【請求項8】
表示部が備える光源を駆動する駆動値を目標値になるように制御することで前記光源の輝度を調整する輝度調整方法であって、
前記光源を使用した時間を前記駆動値の三乗値を用いて補正し、該補正した時間を積算して前記光源の積算使用時間を求め、予め記憶された前記光源の使用時間と輝度との関係を示す輝度特性と前記積算使用時間とに基づいて前記駆動値を求めるステップを含む輝度調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝度調整装置、表示装置及び輝度調整方法に関する。
【0002】
表示装置におけるバックライトの輝度は経年劣化により穏やかに低下する。このため、バックライトの輝度は、所望の設定値に調節されたとしても、半年から一年後には、その設定値を下回ってしまう問題がある。
この問題を解決するために、例えば、輝度センサを用いてバックライトの輝度を測定し、その測定値が設定値になるようにバックライトの輝度を補正する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、輝度センサを用いる必要があるため高コストとなるとともに、輝度センサは、精密な光学部品のため、汚れ、変色及び変形などによる故障や誤動作が起こりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−167695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バックライトの劣化による輝度の低下は、ユーザによる表示装置の画質設定や、その表示装置に入力される映像の映像特性に応じた制御などの使用状態に応じて、異なる劣化特性を示す。したがって、特許文献1に記載の方法では、バックライトに駆動時間に応じた電圧を印加するため、同一の駆動時間であっても、表示装置の使用状態の違いによってはバックライトの輝度の過補正又は補正不足が発生していまい、輝度の補正精度が低い。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、輝度センサを用いずに、バックライトにおける輝度の補正精度を向上可能な輝度調整装置、表示装置及び輝度調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、表示部が備える光源を駆動する駆動値を目標値になるように制御することで前記光源の輝度を調整する輝度調整装置であって、前記光源を使用した時間を前記駆動値の三乗値を用いて補正し、該補正した時間を積算して前記光源の積算使用時間を求め、予め記憶された前記光源の使用時間と輝度との関係を示す輝度特性と前記積算使用時間とに基づいて前記駆動値を求める劣化補正部を備える輝度調整装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上述の輝度調整装置であって、前記表示部の使用状態に基づいて、前記駆動値の初期値を設定する初期値生成部をさらに備え、前記劣化補正部は、前記積算使用時間を前記輝度特性の使用時間としたときの該使用時間に対応する輝度を前記輝度特性から求め、該求めた輝度と前記駆動値の初期値とに基づいて前記駆動値を求める。
【0008】
本発明の一態様は、上述の輝度調整装置であって、前記表示部の使用状態は、前記表示部における画質の設定値と、前記表示部に入力される映像の映像特性との少なくともいずれか一方から設定される。
【0009】
本発明の一態様は、上述の輝度調整装置であって、前記駆動値および前記輝度は、前記光源を用いて前記表示部に入力される映像を表示するときの最大値を1に正規化した値である。
【0010】
本発明の一態様は、上述の輝度調整装置であって、前記補正部は、所定時間が経過するごとに、前記光源を使用した時間を前記駆動値の三乗値を用いて補正し、該補正した時間を前記積算使用時間に積算することで前記積算使用時間を更新する。
【0011】
本発明の一態様は、上述の輝度調整装置であって、前記輝度を維持するように調整する。
【0012】
本発明の一態様は、上述の輝度調整装置と、前記表示部と、を備える表示装置である。
【0013】
本発明の一態様は、表示部が備える光源を駆動する駆動値を目標値になるように制御することで前記光源の輝度を調整する輝度調整方法であって、前記光源を使用した時間を前記駆動値の三乗値を用いて補正し、該補正した時間を積算して前記光源の積算使用時間を求め、予め記憶された前記光源の使用時間と輝度との関係を示す輝度特性と前記積算使用時間とに基づいて前記駆動値を求めるステップを含む輝度調整方法である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、輝度センサを用いずに、バックライトにおける輝度の補正精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】発明の一実施形態に係る輝度調整装置4を備える表示装置1の構成概略図の一例を示す図である。
図2】「光量」における映像表示部5のBL駆動値と劣化速度との関係を示す図である。
図3】「温度」における映像表示部5のBL駆動値と劣化速度との関係を示す図である。
図4図2及び図3に示すBL駆動値と劣化速度との関係の合算特性を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るBL劣化補正部7の概略構成の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る輝度調整装置4の処理の流れについて、説明する図である。
図7】従来の輝度補正方法により補正された輝度変化を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態に係る輝度調整装置4の主要な構成を説明する図である。
図9】本発明の一実施形態に係る輝度調整装置4の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。また、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0017】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」、「有する」や「備える」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0018】
本発明の一実施形態に係る輝度調整装置は、例えば、バックライト(以下、「BL」という。)等の表示部の輝度を制御するために用いる駆動値(以下、「BL駆動値」という。)を目標値になるように制御することで、BLの輝度を維持する。なお、このBL駆動値は、例えば、表示部の光源への電流、電圧、電力、PWM(Pulse Width Modulation)のデューティ比など、表示部の輝度を変化させる制御値である。例えば、BL駆動値が高い値であると表示部の輝度が高くなり、BL駆動値が低い値であると表示部の輝度が低くなる。本実施形態では、このBL値駆動値は、正規化された0から1の値を持ち、1なら表示部の輝度が最大であり、0なら表示部の輝度が最低(消灯)の状態を示すものとする。
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る輝度調整装置を備える表示装置を、図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、発明の一実施形態に係る輝度調整装置4を備える表示装置1の構成概略図の一例を示す図である。
図1に示すように、表示装置1は、画質設定部2、映像解析部3、輝度調整装置4及び映像表示部5を備える。なお、映像表示部5は、表示部の一例であってよい。
【0021】
画質設定部2は、ユーザ等からの操作により入力された映像表示部5の画質を設定値として設定する。ここで画質の設定とは、例えば、ブライトネス(Brightness)の設定である。ブライトネスは、バックライトの消費電力を変更する設定であり、値が大きいときは表示画面を明るく表示し、値が小さいときは表示画面を暗く表示する。また、画質の設定とは、例えば、バックライトの省電力モードの設定である。モードは、バックライトの消費電力は大きいが表示画面を明るく表示するモード(高輝度モード)とバックライトの消費電力は小さいが表示画面を暗く表示するモード(省電力モード)などが設定できる。すなわち、画質の設定は、光源電力の値を設定する。
映像解析部3は、映像表示部5に入力される映像信号を解析することで、その映像信号の映像特性を取得する。ここで、映像特性とは、例えば映像表示部5の表示画面内の明るさの平均値である。例えば、入力される映像が明るいときは光源の輝度を明るくし、入力される映像が暗いときは光源の輝度を暗くする光源電力の調光制御が実行される。例えば、入力される映像信号とは、パーソナルコンピュータやビデオなどの外部装置から入力される映像である。
【0022】
輝度調整装置4は、映像表示部5が備えるバックライト(光源)の輝度を制御するために用いるBL駆動値を目標値になるように制御することで、映像表示部5の輝度を維持する。
映像表示部5は、輝度調整装置4からの制御に基づいて、映像解析部3からの映像を表示する。例えば、映像表示部5は、LCD(Liquid Crystal Display)やマイクロミラーデバイスなどの表示パネルと、その表示パネルを照明する光源であるバックライトを備える。
【0023】
以下に、本発明の一実施形態に係る輝度調整装置4の特徴について、説明する。
上述したように、BL駆動値を低下させると、映像表示部5の光源である、例えばLED(light emitting diode)素子(特にパッケージや封止樹脂、蛍光体)の劣化主因である「光量」と「温度」とが低下する。「光量」と「温度」とのそれぞれの変化による映像表示部5の劣化特性は、アレニウス則により次のように仮定できる。なお、図2は、「光量」における映像表示部5のBL駆動値と劣化速度との関係を示す図である。図3は、「温度」における映像表示部5のBL駆動値と劣化速度との関係を示す図である。
【0024】
図2に示すように、「光量」による劣化速度は、BL駆動値に対してほぼ一次関数となる。例えば、「光量」は、BL駆動値に比例し、BL駆動値が1/2倍になるごとに劣化速度が半減する。
一方、図3に示すように、「温度」による劣化速度は、ほぼ二次関数となる。例えば、映像表示部5の光源であるLEDの温度が10度下がるごとに寿命2倍になる(BL電流100%時、LED温度上昇50度)。また、BL駆動値が最大の場合における温度を室温+50℃とすると、BL駆動値が20%下がるごとに劣化速度が半減する。
換言すると、BL駆動値が増加すると劣化速度が加速される。
【0025】
したがって、「光量」と「温度」とを考慮したBL駆動値と劣化速度との関係、すなわち上記図2及び図3に示すBL駆動値と劣化速度との関係の合算特性は、図4に示すように、映像表示部5の駆動時間にBL駆動値の三乗値(BL駆動値を三乗した値)を乗じた三次式として近似される。本発明の一実施形態に係る輝度調整装置の特徴の一つは、このBL駆動値の三乗を利用することにより、「光量」と「温度」とを考慮した輝度の劣化特性を加味した、映像表示部5が備える光源の適切なBL駆動値を求めることである。
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る輝度調整装置4の概略構成を説明する。
輝度調整装置4は、初期BL駆動値生成部6(初期値生成部)、BL劣化補正部7(劣化補正部)、BL駆動部8、べき乗計算部9、時間計測部10及びストレス時間記録部11を備える。
【0027】
初期BL駆動値生成部6は、映像表示部5の使用状態に基づいて、BL駆動値の初期値I(0)を生成する。この映像表示部5の使用状態は、例えば、映像表示部5における画質の設定値と、映像表示部5に入力される映像信号の映像特性との少なくともいずれか一方である。すなわち、映像表示部5の使用状態とは、映像表示部5が備えるバックライトの輝度を変化させ得る設定又は信号でバックライトを使用している状態である。
例えば、初期BL駆動値生成部6は、ユーザにより設定された画質の設定値を、画質設定部2から取得する。また、初期BL駆動値生成部6は、映像解析部3から映像特性を取得する。そして、初期BL駆動値生成部6は、取得した画質の設定値及び映像特性に基づいて、BL駆動値の初期値I(0)を生成する。
【0028】
なお、初期BL駆動値生成部6は、例えば映像表示部5の使用状態により予め設定された計算式やテーブルに基づきBL駆動値の初期値I(0)を決定してもよい。これら計算式やテーブルは、例えば、映像表示部5における画質の設定値と、映像表示部5に入力される映像の映像特性との少なくともいずれかに基づいて、BL駆動値の初期値I(0)が決定できるように、実験的又は理論的に定めればよい。予め設定されたテーブルを用いる場合には、映像表示部5の種々の使用状態と、その使用状態ごとに関連付けられたBL駆動値の初期値I(0)とを備えるルックアップテーブルを不図示の記憶部に予め記憶されていてもよい。そして、初期BL駆動値生成部6は、画質設定部2又は映像解析部3から取得した使用状態に対応するBL駆動値の初期値I(0)を上記ルックアップテーブルから取得することで、BL駆動値の初期値I(0)を生成する。なお、経時変化に伴う輝度の劣化を補正するので、初期値I(0)は1より小さい値に設定することが望ましい。例えば、初期値I(0)は0.7に設定される。
初期BL駆動値生成部6は、生成したBL駆動値の初期値I(0)を、BL劣化補正部7に出力する。
【0029】
BL劣化補正部7は、映像表示部5の電源がONされてから(バックライトが点灯されてから)所定時間経過後に、予め設定された映像表示部5の使用状態を用いた予測により、BL駆動値の三乗値と、映像表示部5の駆動時間の積算値とに基づいて、映像表示部5におけるバックライト(光源)の使用時間を補正する。
そして、BL劣化補正部7は、補正した使用時間(以下、「ストレス時間値」ともいう)を積算した光源の積算使用時間を求める。次に、BL劣化補正部7は、この積算使用時間と、予め記憶された映像表示部5の特性(例えば、図7左の劣化特性)とを用いてBL駆動値を求める。この映像表示部5の特性とは、例えば、光源の使用時間と輝度との関係を示す輝度特性である。
【0030】
図5は、本発明の一実施形態に係るBL劣化補正部7の概略構成の一例を示す図である。図5に示すように、BL劣化補正部7は、劣化特性補正部71及び駆動値算出部72を備える。
【0031】
劣化特性補正部71は、ストレス時間記録部11から、現在のストレス時間値T(n)を読み出す。このストレス時間値T(n)とは、映像表示部5の駆動開始時(例えば、製品の使用開始時)は0でありBL駆動値と、映像表示部5を駆動する駆動時間(バックライトの使用時間)とに応じて増加していく変数値である。
劣化特性補正部71は、予め設定される劣化係数βと、ストレス時間値T(n)とに基づいて、映像表示部5における現在の輝度L(0〜1)を算出する。この劣化係数βは、BL駆動値が最大で映像表示部5を駆動した場合における輝度半減時間であって、以下に示す式で表すことができる。
β=−ln(0.5)/k …(1)
【0032】
なお、lnは自然対数である。また、kはBL駆動値が最大で使用した場合における輝度の半減時間を示す。
したがって、例えば、劣化特性補正部71は、予め設定される劣化係数βと、ストレス時間値T(n)とに基づいて、以下に示す式に基づいて、映像表示部5における現在の輝度L(0〜1)を算出することができる。
L=eβ×T(n) …(2)
式(2)は、光源の使用時間と輝度との関係を示す輝度特性の一例である。ここで、T(n)はバックライトの使用時間に対応する。
【0033】
駆動値算出部72は、劣化特性補正部71により算出された現在の輝度Lと、BL駆動値の初期値I(0)とに基づいて、BL駆動値I(n)を算出する。例えば、駆動値算出部72は、劣化特性補正部71により算出された現在の輝度Lと、BL駆動値の初期値I(0)とに基づいて、以下に示す式を用いて、BL駆動値I(n)を算出する。
I(n)=Min(1,I(0)/L) …(3)
【0034】
ここで、Min(1,I(0)/L)は1とI(0)/Lとのうち、小さい値を出力する処理であることを示す。式(3)は、BL駆動値が1より大きくなることを防止する。すなわち、バックライトに過大な電流が流れないように防止する。なお、過大電流を考慮しないときは、BL駆動値I(n)=I(0)/Lとして求めてもよい。なお、BL駆動値I(n)が1になった場合又は1より大きくなった場合は、輝度の目標値に対して、映像表示部5に表示している輝度が不足することを示す。したがって、この場合には、映像表示部5に表示している輝度が不足していることを示す情報を、補正限界としてユーザに警告してもよい。この警告は、音声でもよいし、警告信号を出力することでもよいし、表示灯を表示させてもよいし、種々の態様を採ることができる。
図1に戻り、駆動値算出部72は、算出したBL駆動値I(n)をBL駆動部8及びべき乗計算部9に出力する。
【0035】
BL駆動部8は、駆動値算出部72から出力されたBL駆動値に従い、電流、電圧、電力及び点灯時間(PWM)のいずれかの値を可変して、映像表示部5の光源を発光させることで、映像表示部5を駆動する。ここで、BL駆動値は、上述したように、正規化された0から1の値であるため、1なら輝度が最大、0なら輝度が最小の状態となる。
【0036】
時間計測部10は、映像表示部5の駆動が開始される(バックライトが点灯される)と、所定時間Δh(例えば10時間)を計時する。
べき乗計算部9は、駆動値算出部72から出力された現在のBL駆動値I(n)を取得する。そして、べき乗計算部9は、BL駆動値I(n)の三乗値I(n)を算出する。なお、BL駆動値I(n)は0から1であるため、その三乗値I(n)も0から1となる。べき乗計算部9は、映像表示部5の駆動が開始されてから所定時間Δh経過ごとに、現在のBL駆動値I(n)の三乗値I(n)を算出する。
【0037】
ストレス時間記録部11は、べき乗計算部9に算出された三乗値I(n)と所定時間Δhとを乗算した値に、前回のストレス時間値を加算した値を新たなストレス時間値とすることで、所定時間Δhが経過するごとにストレス時間値を更新する。
具体的には、ストレス時間記録部11は、前回のストレス時間値T(n−1)を記録してから所定時間Δhが経過したことを示す計時完了信号を時間計測部10から受信する。そして、ストレス時間記録部11は、その計時完了信号を取得すると、べき乗計算部9から三乗値I(n)を取得する。そして、ストレス時間記録部11は、以下に示す式に基づいて、ストレス時間値T(n)を更新し、記録する。換言すれば、この更新とは、光源を使用した時間をBL駆動値の三乗値I(n)を用いて補正し、該補正した時間を積算して光源の積算使用時間を求めることである。
T(n)=T(n−1)+Δh×I(n) …(4)
【0038】
上述したように、所定時間Δhは、時間計測部10から受信した前回のストレス時間値を記録してからの経過時間であって、例えば10時間なら10となる。
したがって、劣化特性補正部71では、この更新されたストレス時間値T(n)に基づいて、式(2)を用いて、現在の輝度L(0〜1)が算出される。換言すれば、劣化特性補正部71では、BL駆動値の三乗値I(n)を用いて光源を使用した時間を補正し、該補正した時間を積算して光源の積算使用時間を求める。
そして、劣化特性補正部71は、求めた光源の積算使用時間を輝度特性(式(2))の使用時間(T(n))としたときの該使用時間に対応する輝度Lを輝度特性(式(2))から求め、該求めた輝度LとBL駆動値の初期値I(0)とに基づいて新たなBL駆動値を求める。
【0039】
以下に、輝度調整装置4における映像表示部5の輝度を維持するように調整する方法(以下、「輝度調整方法」という。)の流れについて、説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る輝度調整装置4の処理の流れについて、説明する図である。
ユーザにより映像表示部5の電源がONされると(ステップS101)、初期BL駆動値生成部6は、映像表示部5の使用状態に基づいて、BL駆動値の初期値I(0)を生成する(ステップS102)。
【0040】
劣化特性補正部71は、ストレス時間記録部11から、現在のストレス時間値T(n)を読み出す(ステップS103)。劣化特性補正部71は、予め設定される劣化係数βと、読み出したストレス時間値T(n)とに基づいて、式(2)から映像表示部5における現在の輝度Lを算出する(ステップS104)。
【0041】
駆動値算出部72は、劣化特性補正部71により算出された現在の輝度Lと、BL駆動値の初期値I(0)とに基づいて、以下に示す式(3)を用いて、BL駆動値I(n)を算出する(ステップS105)。駆動値算出部72は、算出したBL駆動値I(n)をBL駆動部8及びべき乗計算部9に出力する。BL駆動部8は、駆動値算出部72から出力されたBL駆動値に従い、映像表示部5を駆動する。
【0042】
時間計測部10は、映像表示部5の駆動が開始されると、所定時間Δh(例えば10時間)を計時する(ステップS106)。
べき乗計算部9は、映像表示部5の駆動が開始されてから所定時間Δhが経過したか否かを判定し(ステップS107)、所定時間Δhが経過した場合には、現在のBL駆動値I(n)の三乗値I(n)を算出する(ステップS108)。ここで、例えば、べき乗計算部9は、時間計測部10から計時完了信号を受信することで、映像表示部5の駆動が開始されてから所定時間Δhが経過したと判定してよい。
【0043】
そして、ストレス時間記録部11は、計時完了信号を時間計測部10から受信した場合には、べき乗計算部9から三乗値I(n)を取得する。そして、ストレス時間記録部11は、式(4)に基づいて、ストレス時間値T(n)を更新し、記録する(ステップS109)。ストレス時間記録部11によるステップS109の処理が完了すると、ステップS103の処理に移行する。このように、ステップS103からステップS109までの処理を繰り返す。ただし、ステップS109の処理の後、画質の設定値や入力映像等の映像表示部5の使用状態が変更されていた場合には、ステップS102の処理に戻る。
なお、電源OFFの処理は、ステップS107の処理の中で割り込み処理等により実行されてもよい。また、電源OFFの処理では、ステップS106の処理において計測された時間を記憶して電源OFFし、再度電源ONされた後にステップS106で記憶した計測時間を読み出して、読み出した計測時間から時間計測を開始してもよい。
【0044】
次に、本発明の一実施形態に係る輝度調整装置4の効果について、説明する。
図7は、輝度センサを用いない、従来の輝度補正方法により補正された輝度変化を説明する図である。
【0045】
図7に示すように、輝度を補正しない場合(駆動値を固定値で駆動した場合)において、ディスプレイ輝度低下に関しては、パネルメーカやBL部品メーカは、例えば、30000時間で輝度半減といった規格値や各動作時間における典型的な輝度特性を情報公開している(図7左)。しかしながら、この輝度特性は輝度最大で連続使用した際の特性であり、ユーザが画面の輝度を下げた一般的な使用状態では、異なる劣化特性を示す。したがって、従来の方法のように、動作時間のみで輝度の劣化を予測し、BLに印加する電圧を調整する方法では、輝度の過補正が発生する場合がある(図7右)。例えば、表示装置を省電力モード(バックライトを暗くした設定)で長時間使用すると、過補正になり、相対輝度が上がってしまうことがある。
一方、本発明の一実施形態に係る輝度調整装置4は、画面の使用状態に基づいて、劣化速度を予測し、BL駆動値の三乗値と映像表示部5の駆動時間の積算値とをその予測の基準とする。これにより、ユーザが画面の輝度を下げた一般的な使用状態においても、正確に劣化速度を予測し、輝度の過補正又補正不足を抑制することができる。
【0046】
次に、本発明の一実施形態に係る輝度調整装置4の主要な構成について、説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る輝度調整装置4の主要な構成を説明する図である。
図8に示すように、輝度調整装置4は、BL劣化補正部7を備える。
【0047】
BL劣化補正部7(劣化補正部)は、映像表示部5が備える光源を使用した時間を駆動値の三乗値を用いて補正し、該補正した時間を積算して上記光源の積算使用時間を求め、予め記憶された上記光源の使用時間と輝度との関係を示す輝度特性と上記積算使用時間とに基づいてBL駆動値を求める。これにより、輝度調整装置4は、ユーザによる映像表示部5の使用状態の違いがあっても、映像表示部5の輝度の過補正又補正不足の発生を抑制することができる。したがって、輝度調整装置4は、輝度センサを用いずに、映像表示部5における輝度の補正精度を向上させることができる。また、輝度調整装置4は、経年劣化を見越して映像表示部5の輝度を高めに設定する必要がないため、電力削減を実現する。
【0048】
以下に、本発明の一実施形態に係る表示装置1の変形例について、説明する。図9は、本発明の一実施形態に係る輝度調整装置4の変形例を示す図である。本変形例の表示装置1Aは、映像解析部3、複数の輝度調整装置4及び映像表示部5を備える。
この表示装置1Aは、映像表示部5におけるBLを画面内で分割し、明るい映像信号のエリアではBL駆動値を大きく、暗い映像信号のエリアではBL駆動値を小さくするように自動制御する。そして、表示装置1Aは、上記分割されたBLごとに経年劣化も独立補正するため、分割されたBLごとに輝度調整装置4を設け、ステップS102からステップS109の処理をそれぞれ独立して実施する。
【0049】
このように、上述の輝度調整方法は、輝度センサを用いないため、低輝度、低価格、多画面設置など様々な使用状態において副作用が少なく、一般的なディスプレイ製品に組み込み、ON/OFFを含めた一切の設定なく常時利用できる、経年劣化補正である。なお、この輝度調整方法は、BL分割駆動(ローカルディミング)や多画面設置(タイリング利用)に特に適す。
【0050】
上述した実施形態における輝度調整装置4をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0051】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0052】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 表示装置
2 画質設定部
3 映像解析部
4 輝度調整装置
5 映像表示部
6 初期BL駆動値生成部(初期値生成部)
7 BL劣化補正部(劣化補正部)
8 BL駆動部
9 べき乗計算部
10 時間計測部
11 ストレス時間記録部
71 劣化特性補正部
72 駆動値算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9