(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の光量調整装置に組み込まれた駆動リングは、回転駆動する際に他の部材と接触しながら動作する。このように、光量調整装置に組み込まれる部品は、羽根の可動部を有するため、円滑動作のための摺動性能が求められる。なお、このような課題は、駆動リング以外の光量調整装置の組込部材でも、可動に際して摩擦が生じる部分においては同様に生じる。
【0005】
本発明は、摺動性能を向上した光量調整装置用の回動部材及び保持部材、及び光量調整装置並びにこれを備えた光学装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における光量調整装置用の回動部材は、光量調整装置の光通過経路における光軸の周囲を回動することで、光が通過する開口を絞るための複数の羽根を回動する回動部材であって、前記光量調整装置における他の組込部材と摺接する表面側の少なくとも一部分は、繊維強化複合材料で形成され且つその強化繊維の長手方向が前記回動部材の表面方向に配向した繊維配向性を有する繊維強化層からなり、前記繊維強化層の繊維配向が前記光軸回りに周回しており、前記回動部材のうち前記繊維強化層以外の芯部分は、前記繊維強化複合材料で一体的に形成され、且つ、前記繊維強化層における前記繊維配向性よりも前記強化繊維の繊維配向性が低く、長手方向が前記光軸方向を向く前記強化繊維と他の前記強化繊維とが複雑に交差することを特徴とする。このような本発明の態様によれば、高い摺動性能を有する光量調整装置用の回動部材を実現できる。
【0007】
また、上記本発明では、前記回動部材には、その回動方向に沿って複数の突起部が設けられ、前記複数の突起部は、前記回動部材を回動可能に保持する保持部材に設けられた前記光通過経路の一部となる開口の端面に接し、その接した状態で、前記回動部材は、前記保持部材に対して回動可能であり、前記繊維強化層は、少なくとも前記複数の突起部の表面を形成することを特徴とする。このような本発明の態様によれば、回動部材とその保持部材との摺接部分となる複数の突起部の表面が繊維強化層によって形成されるため、その摺接部分における摺動性能が向上する。
【0008】
また、本発明における光量調整装置用の保持部材は、光量調整装置の光通過経路における光軸の周囲を回動することで、光が通過する開口を絞るための複数の羽根を回動する回動部材を保持する保持部材であって、前記回動部材と摺接する表面側の少なくとも一部分は、繊維強化複合材料で形成され且つその強化繊維の長手方向が前記保持部材の表面方向に配向した繊維配向性を有する繊維強化層からなり、前記繊維強化層の繊維配向が前記光軸回りに周回しており、前記保持部材のうち前記繊維強化層以外の芯部分は、前記繊維強化複合材料で一体的に形成され、且つ、前記繊維強化層における前記繊維配向性よりも前記強化繊維の繊維配向性が低く、長手方向が前記光軸方向を向く前記強化繊維と他の前記強化繊維とが複雑に交差し、前記保持部材には、前記回動部材の回動方向に沿って複数の突起部が設けられ、前記保持部材に設けられた前記複数の突起部が前記回動部材に係合した状態で、前記回動部材は前記保持部材に対して回動可能であり、前記繊維強化層は、前記複数の突起部の表面を形成することを特徴とする。このような本発明の態様によれば、高い摺動性能を有する光量調整装置用の保持部材を実現できる。
【0009】
また、上記本発明では、前記強化繊維は、チタン化合物からなるセラミック繊維とするのが良い。このような本発明に態様によれば、チタン酸カリウム等のチタン化合物繊維の繊維表面を使って高い摺動性能を得ることができる。
【0010】
なお、本発明は、上述した光量調整装置用の回動部材、保持部材だけではなく、光量調整装置、あるいは、この光量調整装置を備えた光学装置にも適用可能であり、広く対象とすることが可能である。
【0011】
例えば、本発明の光量調整装置は、光が通過する開口を絞るための複数の羽根と、前記複数の羽根を回動させる回動部材と、前記回動部材を回動可能に保持する保持部材とを備え、前記回動部材及び前記保持部材の少なくともいずれか一方のうち他方と摺接する表面側の少なくとも一部分は、繊維強化複合材料で形成され且つその強化繊維の長手方向が前記表面の面方向に配向した繊維配向性を有する繊維強化層からなり、前記繊維強化層を備える前記回動部材又は前記保持部材のうち前記繊維強化層以外の芯部分は、前記繊維強化複合材料で一体的に形成され、且つ、前記繊維強化層における前記繊維配向性よりも前記強化繊維の繊維配向性が低く、長手方向が前記光軸方向を向く前記強化繊維と他の前記強化繊維とが複雑に交差することを特徴とする。これにより、回動部材と保持部材との間で十分な摺動性能が得られ、安定した光量調整を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、摺動性能を向上した光量調整装置用の回動部材及び保持部材、及び光量調整装置並びにこれを備えた光学装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1には、本発明の実施形態1である光量調整装置の分解斜視図を示す。
図1に示すように、本実施形態の光量調整装置は、カメラ等の光学機器である撮影装置に搭載されて、撮影時における光量の調整を行うための装置である。この光量調整装置は、例えば、本実施形態では、回動部材である駆動リング1と、この駆動リングを回転可能に保持する保持部材2と、駆動リング1によって回動する複数の絞り羽根3と、駆動リング1との間で複数の絞り羽根3を回動可能に保持するカム部材4とを備える。
【0016】
すなわち、本実施形態の光調整装置は、駆動リング1とカム部材4との間で複数の絞り羽根3を把持し、更に駆動リング1のうち複数の絞り羽根3側とは反対側からカム部材4に対し、保持部材2が接合される。これにより、保持部材2とカム部材4との間で駆動リング1が回動可能となり、この駆動リング1の回動によって複数の絞り羽根3が回動する構成となる。なお、保持部材2又はカム部材4は、このように駆動リング1及び複数の絞り羽根3からなる駆動系を実質的に覆うため、カバー部材としての役割がある。
【0017】
以下、これら光量調整装置を構成する部材(組込部材)のそれぞれについて詳細に説明する。
【0018】
図1において、1はリング状に形成された駆動リングである。駆動リング1の中央には開口部1aが形成されている。この駆動リング1には、その周方向7箇所に形成された軸穴部1b〜1hと、周方向に7つに分割された複数の突起部である突条部1iと、周方向一部に形成されたギア部1jとを有する。また、駆動リング1の周方向1箇所には、遮光部1kが形成されている。
【0019】
2はリング状に形成された保持部材である。保持部材2の中央には上記駆動リング1の開口部1aに対して連通する開口部2aが形成されている。また、この開口部2aの内周面2bは、後述するが駆動リング1が摺接する面となる。
【0020】
3は光量調整羽根となる絞り羽根である。本実施形態では、7枚の絞り羽根3を用いる場合について説明するが、3枚以上の複数の絞り羽根3を使用する絞り装置に適用することができる。
【0021】
また、絞り羽根3は、回動中心軸となる第1軸部3a、および回動のための駆動力が入力される被駆動軸である第2軸部3bが互いに反対側の面に形成され、先端に向かって先細り形状に形成された羽根部3cとを有する。これら各絞り羽根3の羽根部3cは、光通過経路内に向かってそれぞれ移動することにより、光を遮蔽する部分となる。
【0022】
4はリング状に形成され、各絞り羽根3の移動を案内するためのカム部材であり、本実施形態における光量調整装置のベース部材を兼ねている。このカム部材4の中央には、上記駆動リングの開口部1a及び保持部材2の開口部2aとそれぞれ連通する開口部4aが形成されている。また、カム部材4には、その周方向7箇所にカム溝部4b〜4hが形成されている。さらに、カム部材4の周方向1箇所には、穴部4iとモータ取り付け部4jが設けられている。
【0023】
5は駆動リング1を回転駆動するためのステッピングモータである。ステッピングモータ5の出力軸には、ピニオンギア6がその出力軸と一体回転するよう取り付けられている。ステッピングモータ5は、カム部材4のモータ取り付け部4jに固定され、ピニオンギア6は、カム部材4の穴部4iを貫通して駆動リング1のギア部1jと噛み合う。なお、ステッピングモータ5を、保持部材2に固定してもよい。そして、これら駆動リング1、カム部材4、ステッピングモータ5およびピニオンギア6により、本実施形態の光量調整装置の駆動機構が構成される。
【0024】
7は位置センサであり、例えば、フォトインタラプタにより構成されている。位置センサ7の投光部と受光部との間に駆動リング1に形成された遮光部1kが入り込むことにより、駆動リング1がその初期位置(所定位置)にあることを検知することができる。ここにいう初期位置は、複数の絞り羽根3によって形成される絞り開口の径(サイズ)が所定の開放開口径となる位置である。位置センサ7により検出された初期位置を基準として、ステッピングモータ5に与える駆動パルス信号の数をカウントすることで、絞り開口径を制御し、光量を調整することができる。
【0025】
保持部材2は、カム部材4との間に絞り羽根3および駆動リング1をこの順で配置する空間を形成してカム部材4に固定されることで、カム部材4に対する回転部材1および絞り羽根3の脱落を防止する。駆動リング1に形成された突条部1iは、保持部材2の開口部2a内に回転可能に挿入される。駆動リング1は、複数の突条部1iの外周面が保持部材2の開口部2aの内周面2bに対して摺動することで、その周方向(光軸回り方向)にて回転可能に支持される。なお、このような保持部材2を形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂にガラスフレークを添加したポリカーボネート複合材料等が挙げられる。
【0026】
また、絞り羽根3の第1軸部3aはそれぞれ、駆動リング1に形成された軸穴部1b〜1hに回動可能に挿入される。一方、第2軸部3bはそれぞれ、カム部材4に形成されたカム溝部4b〜4hに挿入される。
【0027】
カム部材4に固定されたステッピングモータ5が駆動されてピニオンギア6が回転すると、ピニオンギア6にギア部1jが噛み合っている駆動リング1も回転する。これにより、絞り羽根3は、第2軸部3bがカム部材4のカム溝部4b〜4hに沿って移動し(すなわち、第2軸部3bがカム溝部4b〜4hから駆動力を受けて)、第1軸部3aを中心に回動する。
【0028】
各絞り羽根3は、周方向にて均等間隔で配置、すなわち、光通過経路を取り囲むように環状配置されており、それぞれの羽根部3cが他の絞り羽根の羽根部と重なり合うことで、それらの内側に光通過開口である絞り開口を形成する。そして、絞り羽根3が回動することで羽根部3cの重なり量が変化するとともに、絞り開口径が連続的に変更され、通過する光量を調整することが可能となる。
【0029】
図2には、上記のように構成された光量調整装置の保持部材2側からの図を示す(羽根全開状態)。また、
図3には、
図2における光量調整装置の羽根全閉状態を示す。本実施形態における駆動リング1を回転させると、この駆動リング1及びカム部材4に係合する複数の絞り羽根3は、
図2に示す絞り羽根3の全開状態(光通過開口を開いた状態)から、
図3に示す絞り羽根3の全閉状態(光通過開口を閉じた状態)に移行する。このように駆動リング1が回動する際、保持部材2の開口部2aの内周面2bに対して、駆動リング1の複数の突条部1iが摺動する(
図4参照)。そのため、駆動リング1が回動するにつれ、突条部1iと開口部2aの内周面2bとの間に摩擦が生じる。
【0030】
ここで、本実施形態では、このような摩擦が生じる光量調整装置の組込部材、例えば、駆動リング1は、全体がセラミックス繊維強化複合材料から形成されている。具体的には、駆動リング1は、セラミックス繊維強化複合材料に含まれるセラミックス繊維の長手方向が駆動リング1の表面方向に実質的に配向した繊維配向性を有するセラミックス繊維強化層100を有する。
【0031】
このセラミックス繊維強化層100は、主に、セラミックス繊維強化複合材料に含まれる樹脂と分散した微細なセラミックス繊維とで構成される。なお、セラミックス繊維強化層100において駆動リング1の表面方向に実質的にセラミックス繊維が配向するとは、例えば、このセラミックス繊維の長手方向が、駆動リング1の表面方向に配向している割合の方が、厚さ方向に向いている割合よりも相対的に高いことを示す。このようにセラミックス繊維強化層100が上記の繊維配向を有することにより、駆動リング1と他の部材(本実施形態では保持部材2)との高い摺動性能を得ることができる。なお、セラミックス繊維強化層100の繊維配向が面方向において実質的に揃っているので、仮にセラミックス繊維を担持する樹脂部分が摺接面から削れ落ちて、セラミックス繊維の外周面(側面)がそのまま摺接面に出現したとしても、セラミックス繊維の外周面が摺接面の面方向となっているため、各セラミックス繊維が摺動性を低下させることを有効に防ぐことができ、駆動リング1と他の部材との高い摺動性を十分に確保できる。
【0032】
例えば、駆動リング1を回転させるにつれて駆動リング1と保持部材2との間で生じる摩擦から駆動リング1の表面側でセラミックス繊維強化層100の樹脂部分が削れたとしても、残ったセラミックス繊維はその面方向に配向していることから、保持部材2とセラミックス繊維の長手方向に沿った外周面とが実質的に摺接することになる。つまり、セラミックス繊維強化層100の表面に出現した各セラミックス繊維の外周面が摺接面となって、駆動リング1と保持部材2との間で駆動リング1の高い摺動性能を長期に亘って維持することが可能となる。また、セラミックス繊維強化層100の表面に塗装によって保護膜を形成した場合には、使用開始当初は保護膜の表面が摺接面となり、保護膜が削れた後は、セラミックス繊維強化層の表面(樹脂表面)が摺接面となり、その後、樹脂表面が削れた後は、セラミックス繊維の外周面が出現した面が摺接面となる。なお、保護膜を設けない場合は、セラミックス繊維強化層100の表面が摺接面となる。
【0033】
なお、セラミックス繊維強化層100は、例えば、セラミックス繊維強化複合材料を金型成形することによって作製することが可能であり、そのセラミックス繊維の寸法(長さや直径等)や成形時の圧力や温度などを適宜調整することにより、所望の繊維配向を形成することが可能となる。
【0034】
ここで、セラミックス繊維強化複合材料について説明する。セラミックス繊維強化複合材料としては、例えば、チタン酸カリウム繊維等のセラミックス繊維とポリカーボネート等の樹脂材料の複合材料が挙げられる。チタン酸カリウム繊維は一般式K
20・nTiO
2で示される。また、セラミックス繊維として、例えば、平均繊維径0.3乃至0.6μm、平均繊維長10乃至20μmと極めて微細なチタン酸カリウム繊維(大塚化学製:8チタン酸カリウム繊維)を用いると、本実施形態における繊維配向の形成において有効である。つまり、本発明では、セラミックス繊維としてセラミックス短繊維を用いれば、繊維配向の形成において有利である。すなわち、セラミックス繊維強化層がセラミックス短繊維強化層であることが高い摺動性能を確保する上で好ましい。特に、セラミックス短繊維を用いると、上記繊維配向性が更に改善され、摺接面の表面粗さを小さく抑えることが可能となることから、高い摺動性能を得ることが可能となる。さらに、セラミックス繊維としては、例えば、高強度・高弾性・高アスペクト比特徴を有していることが好ましい。優れた補強性能を発揮するからである。なお、チタン酸カリウム繊維以外のセラミックス繊維であっても、繊維長が比較的短く且つ高強度・高弾性等の特性を満たせば、他のチタン化合物繊維であってもよいし、チタン系以外のセラミックス繊維であってもよい。
【0035】
なお、硬さの指標であるモース硬度においては、例えば、炭素繊維が6、ガラス繊維が7に対し、チタン酸カリウム繊維(大塚化学製:8チタン酸カリウム繊維)は4と柔軟であり、被摺動部材を摩耗させにくい。本実施形態では、駆動リング1の保持部材2に対する摺動性能を向上させていることから、ポリカーボネート複合材料から保持部材2が摩擦によって削れてしまうことを有効に防ぐことが可能となる。
【0036】
また、本実施形態においては、セラミックス繊維強化層100に含有させるセラミックス繊維としては、例えば、繊維表面に導電化処理が施されず、チタン酸カリウム等のセラミックス材料自体によって繊維表面が形成され、その繊維表面を摺接面として使うことにより、高い摺動性能を得ることができる。
【0037】
ここで、
図5には、上述したセラミックス繊維強化複合材料を使用した成形部材の模式的な表面状態を示す。
図4に示すように、従来の炭素繊維やガラス繊維よりも比較的柔らかいセラミックス繊維Fの長手方向が表面に配向していることで、高い摺動性能を得ることができ、また保持部材2の摩耗による削れ等を有効に低減できる。
【0038】
図6には、上述したセラミックス繊維強化複合材料を使用した成形部材の模式的な断面図を示す。
図6に示すように、表面部は表面方向に配向しているが、セラミックス繊維強化層100以外の芯部分は、セラミックス繊維のマトリックス構造Mを有しているため、セラミックス繊維同士が厚さ方向等において複雑に交差することで、駆動リング1全体の剛性を十分に確保できる。これにより、駆動リング1を薄く成形できるため、駆動リング1の軽量化や回転駆動の性能を向上できる。
【0039】
以下、本発明を実施例及び比較例を対比しながら詳細に説明する。
【0040】
<実施例1>
実施例1の駆動リングとして、ポリカーボネート(PC)樹脂にセラミックス繊維(チタン酸カリウム繊維)を5重量%添加して得られたセラミックス繊維複合材料(商品グレード:CT112N/大塚化学製)を使って駆動リング1(塗装なし)を作製し、ポリカーボネート樹脂にガラスフレーク20重量%添加して得られた材料を保持部材2に用いて、上述の光量調整装置に組み込み、絞り動作耐久試験を行った。この結果、表1に示すように、100万回動作後でも作動、絞り精度は良好であり、駆動リング1及び保持部材2の外観面においても目立った摩耗はなかった。また、この実施例1の駆動リング1では、塗装がなくても、100万回動作を超える高い耐久性を実現することができた。
【0041】
<実施例2>
実施例2の駆動リングとして、ポリカーボネート(PC)樹脂にセラミックス繊維(チタン酸カリウム繊維)を15重量%添加して得られたセラミックス繊維複合材料(商品グレード:CT132NC/大塚化学製)を使って駆動リング1(塗装なし)を作製し、ポリカーボネート樹脂にガラスフレーク20重量%添加して得られた材料を保持部材2に用いて、上述の光量調整装置に組み込み、絞り動作耐久試験を行った。この結果、表1に示すように、100万回動作後でも作動、絞り精度は良好であり、駆動リング1及び保持部材2の外観面においても目立った摩耗はなかった。また、この実施例3の駆動リング1では、塗装がなくても、100万回動作を超える高い耐久性を実現することができた。
【0042】
<比較例1>
続いて参考のため、比較例1を説明する。比較例1の駆動リングとして、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維を20重量%添加して得られたガラス繊維複合材料を使用して駆動リング(塗装なし)を作製し、ポリカーボネート樹脂にガラスフレーク20重量%添加して得られた材料を保持部材2に用いて、上述の光量調整装置に組み込み、絞り動作耐久試験を行った。この結果、表1に示すように、15万回動作で駆動リング、保持部材共に摩耗し材料が削れた。
【0043】
<比較例2>
比較例2の駆動リングとして、ポリカーボネート樹脂に炭素繊維を15重量%添加して得られた材料を使用して駆動リング(塗装なし)を作製し、ポリカーボネート樹脂にガラスフレーク20重量%添加して得られた材料を保持部材2に用いて、上述の光量調整装置に組み込み、絞り動作耐久試験を行った。この結果、表1に示すように、15万回動作で駆動リング、保持部材共に摩耗し材料が削れた。
【0044】
<比較例3>
比較例3の駆動リングとして、ポリカーボネート樹脂に炭素繊維を15重量%添加して得られた材料を使用して駆動リング(塗装なし)を作製し、ポリカーボネート樹脂に炭素繊維を15重量%添加して得られた材料を保持部材に用いて、上述の光量調整装置に組み込み、絞り動作耐久試験を行った。この結果、表1に示すように、5万回動作で駆動リング、保持部材共に摩耗し材料が削れた。
【0045】
<比較例4>
比較例4の駆動リングとして、ポリカーボネート樹脂に炭素繊維を15重量%添加して得られた材料を使用して駆動リング(塗装なし)を作製し、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維を20重量%添加して得られた材料を保持部材に用いて、上述の光量調整装置に組み込み、絞り動作耐久試験を行った。この結果、表1に示すように、5万回動作で駆動リング、保持部材共に摩耗し材料が削れた。
【0046】
<比較例5>
比較例5の駆動リングとして、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維を20重量%添加して得られた材料を使用して駆動リング(塗装なし)を作製し、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維を20重量%添加して得られた材料を保持部材に用いて、上述の光量調整装置に組み込み、絞り動作耐久試験を行った。この結果、表1に示すように、5万回動作で駆動リング、保持部材共に摩耗し材料が削れた。
【0048】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【0049】
(実施形態2)
図7には、実施形態2に係る光量調整装置の概略を示す分解斜視図を示す。また、
図8には、
図7の光量調整装置の概略を示す正面図(羽根全開状態)を示す。
図7及び
図8に示すように、本実施形態の光量調整装置においては、駆動リング10の開口部10aの周縁において筒状突起部となる環状突起部11を設け、この環状突起部11を、保持部材20の開口部20aを規定する内周面20b(凸部20c)に摺接するようにした以外は、上述した実施形態1と同様である。なお、
図7及び
図8において、実施形態1と同一部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0050】
詳細には、本実施形態では、駆動リング10の環状突起部11の表面がセラミックス繊維強化層100によって構成されている。一方、保持部材20には、開口部20aの内周面20bにおいて実質的に等間隔で7箇所の凸部20cが設けられている。各凸部20cは、開口部20aの内周面20bから光通過経路側に向かって突出して設けられ、その表面はR面となっている。そして、本実施形態においては、駆動リング10を回転させると、駆動リング10の環状突起部11が保持部材20の凸部20cに摺接する。このとき、本実施形態では、この環状突起部のうち凸部20cに摺接する側の表面を構成する部分が、セラミックス繊維強化層100によって構成させているため、上述した実施形態1と同様に、高い摺動性能を得ることが可能となる。
【0051】
(実施形態3)
図9には、実施形態3に係る光量調整装置の概略を示す分解斜視図を示す。また、
図10には、
図9の光量調整装置の概略を示す正面図(羽根全開状態)を示す。
図9及び
図10に示すように、本実施形態の光量調整装置においては、駆動リング10の開口部10aの周縁において筒状突起部となる環状突起部11を設け、この環状突起部11を、保持部材2の開口部2aを規定する内周面2bに摺接するようにした以外は、上述した実施形態2と同様である。なお、
図9及び
図10において、実施形態1又は2と同一部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0052】
詳細には、本実施形態では、駆動リング10の環状突起部11の表面がセラミックス繊維強化層100によって構成されている。そして、本実施形態では、駆動リング10の環状突起部11と、保持部材2の内周面2bとが面接触で摺接する。この場合でも、本実施形態では、この環状突起部11のうち保持部材2の内周面2bに摺接する側の表面を構成する部分が、セラミックス繊維強化層100によって構成させているため、上述した実施形態1または2と同様に、高い摺動性能を得ることが可能となる。
【0053】
(他の実施形態)
以上本発明を各実施形態1〜3に基づいて詳細に説明したが、本発明は上述した各実施形態1〜3に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、駆動リング1側においてセラミックス繊維強化層100を適用した場合について説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、保持部材2のうち駆動リング1と接触する部分において少なくともセラミックス繊維強化層100を適用してもよく、実施形態2、3においてもこれを適用してもよい。
【0054】
また、上述した実施形態1では、駆動リング1と保持部材2のうち片方の駆動リング1に対してセラミックス繊維強化層100を適用した場合について説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、駆動リング1及び保持部材2の両方において相互に接触する部分のそれぞれにセラミックス繊維強化層100を適用してもよい。
【0055】
なお、上述したセラミックス繊維強化層100は、光量調整装置の組込部材間で摺接する部分だけに適宜設けてもよいし、組込部材の全体をセラミックス繊維強化複合材料によって形成してもよい。