(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1は、生地に近いものを製造する発明であるため、本発明のような衣類や寝装具の中に組み込むようなエアロゲル含有積層シートとは異なり、また、特許文献1のものだと、エアロゲルが偏ったところでは、第二中綿層と第一中綿層の接着量が低下する恐れがあり、本発明のようなシートにするとさらなる接着力向上が期待される。
【0008】
そこで、本願発明者は、鋭意研究の結果、ポリエステル複合繊維にエアロゲルを含ませたものとエアロゲル含有中間層とし、かつ、エアロゲル含有中間層の上下それぞれに熱可塑性樹脂フィルム層を配置したエアロゲル含有積層シートは、薄くて軽量で嵩張らず、高い断熱特性を有しながら、第二中綿層と第一中綿層との高い接着性で接着されることを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明者は上記課題を下記の手段により解決した。
[1] 化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される第一中綿層と、
第一熱可塑性樹脂フィルム層と、
エアロゲル含有中間層と、
第二熱可塑性樹脂フィルム層と、
化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される第二中綿層とが、この順で配置されて一体化してなるエアロゲル含有積層シートであって、
前記エアロゲル含有中間層は、ポリエステル複合繊維を含むポリエステル複合繊維層と、エアロゲル層とを含む、エアロゲル含有積層シート。
[2] 前記エアロゲル含有積層シートの全体の厚さが、2.0〜20.0mmである、[1]に記載のエアロゲル含有積層シート。
[3] 前記ポリエステル複合繊維層は、さらに羽毛を含む[1]に記載のエアロゲル含有積層シート。
[4] 前記ポリエステル複合繊維層は、さらにキュプラ繊維を含む[1]に記載のエアロゲル含有積層シート。
[5] 前記ポリエステル複合繊維層は、さらに羽毛及びキュプラ繊維を含む[1]に記載のエアロゲル含有積層シート。
[6] [1]乃至[5]のいずれか一項に記載のエアロゲル含有積層シートを、少なくとも一部に用いてなる、衣料品。
[7] [1]乃至[5]のいずれか一項に記載のエアロゲル含有積層シートを、少なくとも一部に用いてなる、寝装品。
[8] エアロゲル含有積層シートの製造方法であって、
(1)基台上に化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される第一中綿層を配置する工程と、
(2)前記第一中綿層に第一熱可塑性樹脂フィルム層を形成する工程と、
(3)前記第一熱可塑性樹脂フィルム層の上に、ポリエステル複合繊維を含むポリエステル複合繊維層を形成する工程と、
(4)前記ポリエステル複合繊維層の上に、エアロゲルからなる粉を噴射し、前記ポリエステル複合繊維層に固着したエアロゲル層を形成することにより、前記ポリエステル複合繊維層と前記エアロゲル層とを含むエアロゲル含有中間層を形成する工程と、
(5)前記エアロゲル含有中間層の上に、第二熱可塑性樹脂フィルム層を形成する工程と、
(6)前記第二熱可塑性樹脂フィルム層の上に、化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される第二中綿層を配置する工程と、
(7)前記第二中綿層を配置した積層体を加熱し、前記積層体を一体化する工程と、
を含む、前記方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、下記の効果が発揮される。
本発明のエアロゲル含有積層シートは、化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される第一中綿層と、第一熱可塑性樹脂フィルム層と、エアロゲル含有中間層と、第二熱可塑性樹脂フィルム層と、化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される第二中綿層とが、この順で配置されて一体化してなるエアロゲル含有積層シートであって、前記エアロゲル含有中間層は、ポリエステル複合繊維を含むポリエステル複合繊維層と、エアロゲル層とを含むため、混合繊維層内の羽毛繊維は他の繊維に固着され縫い目からの吹き出しや偏りがなく、かつ、羽毛繊維により羽毛の保温性が発揮され軽量で暖かい。
【0011】
さらに本発明にかかるエアロゲル含有積層シートは、エアロゲル含有中間層が化学繊維綿の中綿層で覆われた構造となっていているので湿気や水気に強く、衣料品や寝装具の充填素材に好適である。
また極めて薄いシート状に一体化されているので加工もしやすい。
【0012】
さらに本発明にかかるエアロゲル含有積層シートは、第一中綿層、エアロゲル含有中間層、第二中綿層が順に積層され熱融着によって接着され一体化してなり、エアロゲル含有積層シート全体の厚さが2〜20mm程度で構成されるので、あたかも一枚の生地のように扱え、衣料品や寝装具の中綿として使いやすく、そのまま裁断、縫製でき、製造作業もしやすく、裁断時や縫製時に含有物が飛び散ることもなく、作業環境を良好に維持することができる。
【0013】
そして、厚さ2〜20mm程度という薄さにより、エアロゲル含有積層シートは嵩張ることがなく、コンパクトに畳むことができ、流通においては運搬しやすく保管もしやすい。
また、各層を熱溶着で一体化したことで、上下方向にも左右方向にも弾力性を備え、衣料品に使用した場合には高い保温性だけでなく、着やすく動きやすくなる。
そして、含有されているエアロゲルは、極めて軽量で、かつ高い断熱特性を有するため、本発明のエアロゲル含有積層シートも、軽く、断熱性が高い。
【0014】
エアロゲル含有中間層に羽毛が含まれている場合は、さらに暖かくなり、風合いが柔らかくなるという利点もある。エアロゲル含有中間層にキュプラを含む場合は、水に濡らした時の強度である湿潤強度が高くなり、エアロゲル含有積層シートに吸水性、吸湿性に優れる特性を与えることができる。
【0015】
さらに、本発明にかかるエアロゲル含有積層シートの製造は、
(1)基台上に化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される第一中綿層を配置する工程と、
(2)前記第一中綿層に第一熱可塑性樹脂フィルム層を形成する工程と、
(3)前記第一熱可塑性樹脂フィルム層の上に、ポリエステル複合繊維を含むポリエステル複合繊維層を形成する工程と、
(4)前記ポリエステル複合繊維層の上に、エアロゲルからなる粉を噴射することにより、前記ポリエステル複合繊維層に固着したエアロゲル層を形成することにより、前記ポリエステル複合繊維層と前記エアロゲル層とを含むエアロゲル含有中間層を形成する工程と、
(5)前記エアロゲル含有中間層の上に、第二熱可塑性樹脂フィルム層を形成する工程と、
(6)前記第二熱可塑性樹脂フィルム層の上に、化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される第二中綿層を配置する工程と、
(7)前記第二中綿層を配置した積層体を加熱し、前記積層体を一体化する工程と、
を含むが、簡易な方法で非常に接着力が高く、またダウンプルーフ加工やキルティング加工など特殊な縫製や加工を必要とせず製造が容易である。
そして、第一中綿層と第二中綿層をポリエステルの綿とした場合は、第一中綿層、エアロゲル中間層に含まれるポリエステル、第二中綿層の三層のポリエステルが加熱により溶け、互いに接着するので、別途接着剤の塗布の必要がなく、作業工程が少なく製造しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明にかかるエアロゲル含有積層シート及び該エアロゲル含有積層シートの製造方法を実施するための形態を、実施例の図に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明にかかるエアロゲル含有積層シートの説明用断面図であり、
図2、
図3は本発明にかかるエアロゲル含有積層シートの製造方法の概要説明図であり、図において、1はエアロゲル含有積層シート、2は第一中綿層、3は第一熱可塑性樹脂フィルム層、4はポリエステル複合繊維層、5はエアロゲル層、6はエアロゲル含有中間層、7は第二熱可塑性樹脂フィルム層、8は第二中綿層、9は積層体である。
【0019】
図1に示すエアロゲル含有積層シートの実施例の形態において、エアロゲル含有積層シート1は、化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される第一中綿層2、同様に化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される第二中綿層8、第一中綿層2及び第二中綿層8の間のエアロゲル含有中間層6を備え、エアロゲル含有中間層6は、第一熱可塑性樹脂フィルム層3により第一中綿層2に接着され、第二熱可塑性樹脂フィルム層7により第二中綿層8に接着されている。
そして、エアロゲル含有中間層6は、ポリエステル複合繊維層4及びエアロゲル層5から構成されている。
【0020】
本実施例において、第一中綿層2及び第二中綿層8は、化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される。化学繊維綿は、化学繊維から製造される綿(わた)であり、化学繊維綿の化学繊維としては、再生繊維、半合成繊維、合成繊維、無機質繊維などが挙げられる。特にポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどの合成繊維が好適であり、複数の素材の繊維を複合したものであってもよい。本実施例では、ポリエステルの綿をシート状に形成して中綿としたものを使用している。
【0021】
また、本実施例において、第一中綿層2及び第二中綿層8は、目付(平方メートルあたりの重量)が10〜200g/m
2であり、使用用途によってエアロゲル含有積層シート1全体をより薄く軽量にする場合には、目付が20〜40g/m
2程度となるように薄い中綿を使って第一中綿層2及び第二中綿層8とする。逆にエアロゲル含有積層シート1全体を厚く重量感を持たせて保温性をより高めるには、目付150〜200g/m
2程度にして厚さを持たせて、第一中綿層2及び第二中綿層8をそれぞれ構成する。
第一中綿層2及び第二中綿層8の目付を10g/m
2以下とすると、薄すぎて満足する保温性が期待できず、目付200g/m
2以上だと、厚くなりすぎ重くなり、特に衣料品に使用される場合には動きにくいという問題が生じる。
なお、第一中綿層2及び第二中綿層8はそれぞれ、同じ素材、例えばポリエステルの中綿であってもよく、異なった素材からなる中綿であってもよい。また、目付も第一中綿層2及び第二中綿層8は同じであっても、一方を軽く他方を重くしてもよい。
【0022】
本発明にかかるエアロゲル含有積層シート1は、第一中綿層2及び第二中綿層8の間にエアロゲル含有中間層6を有する。
エアロゲル含有中間層6は、ポリエステル複合繊維層4及びエアロゲル層5から構成されるものであり、本発明において、ポリエステル複合繊維層4及びエアロゲル層5は、エアロゲル含有中間層6を構成する最低限の構成要素である。
【0023】
エアロゲル含有中間層6を構成するポリエステル複合繊維層4を構成するポリエステル複合繊維は、性質の異なる二種類以上のポリマーを口金で複合した繊維であり、本実施例ではPET(ポリエチレンテレフタレート)とPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)の2種類のポリマー成分を複合したポリエステル系の複合繊維を使用している。なお、アセテート系やアクリル系の複合繊維を代用することも可能であるが、PETの特性の軽量、速乾性、耐熱性、耐久性と、PTTの特性の高い伸縮性や形状安定性、そして柔らかい感触とを複合したポリエステル複合繊維が好適である。さらにポリエステル複合繊維は熱可塑性であるため、加熱プレスにより接着効果を発揮するので、第一中綿層2と第二中綿層8とをしっかり接着させることに寄与し、かつ、エアロゲル層5を構成するエアロゲルを第一中綿層2と第二中綿層8との間でしっかり固着させる。また、エアロゲルに加えて、任意選択的である羽毛繊維及びキュプラ繊維についても、加熱によって固着したポリエステル複合繊維層4に閉じ込められ、吹き出す恐れもない。
【0024】
ポリエステル複合繊維層4を構成する、性質の異なる二種類以上のポリマーを複合した複合繊維は、ポリエステル100%の場合のように過剰な弾力性が生じることがなく、また、複数のポリマーの収縮率がそれぞれ異なることから、原糸に捲縮が発現し伸縮性が生じるので、本発明にかかるエアロゲル含有積層シート1に、高い伸縮性を備える効果を発揮する場合がある。
【0025】
エアロゲル含有中間層6は、エアロゲル層5を含む。
前記エアロゲル層5を構成するエアロゲルとしては、シリカエアロゲル、カーボンエアロゲル、アルミナエアロゲルなどが挙げられるが、本発明では、特にシリカエアロゲルが好適に用いることができる。
本発明にかかるエアロゲル含有積層シート1におけるエアロゲル層5を形成するエアロゲルの材料の形状としては、細かい粒状(粉体状)のものが好ましく用いられる。本実施例で使用されるエアロゲルは、非常に低密度な個体で、液体中で調製した多孔体、即ちゲルを、超臨界乾燥を用いて空隙を維持して乾燥多孔体としたもので、エアロゲルを用い場合は、加熱圧縮後も、あたかも中空層を形成するように機能する。また、エアロゲルは極めて軽量の固体である。
そして、前記エアロゲルは熱伝導率が、空気の熱伝導率よりも低いため、高い断熱特性を有する。
【0026】
従来より、高空隙率のエアロゲルは非常に脆弱であり、破砕しやすく、粉砕されて粉塵を生じやすい傾向があり、シート状に成形すると割れや崩壊を生じやすく、使用用途が大きく制限されている。
そこで、本発明では、上記のような衣服品用の生地に使うのは難しいとされるエアロゲルの問題点を、本実施例の構成にすることにより解消している。
【0027】
図には示さないものの、エアロゲル中間層6を構成するポリエステル複合繊維層4は、羽毛(ダウン)繊維を含むことができ、これは好ましい態様である。ここで「羽毛」とは、アヒルやガチョウなどの鳥のダウン(羽毛)やフェザー(羽根)のいずれをも含む総称である。したがって、羽毛として、ダウンだけを使用しても、フェザーだけを使用してもよく、ダウンとフェザーを混合してもよい。なお、軽量で暖かく、風合いが柔らかいことから天然の羽毛が好ましいが、本発明の構成は、人工羽毛、人工羽毛綿と呼ばれる合成繊維の疑似羽毛を用いてもよい。
ポリエステル複合繊維層4に羽毛繊維を混合することで、本発明にかかるエアロゲル含有積層シート1は、保温性が高く通気性も備え、柔らかな風合いを備える。
【0028】
さらに、エアロゲル中間層6を構成するポリエステル複合繊維層4は、キュプラ繊維を含むことができ、これも好ましい態様である。
キュプラ繊維は、天然綿の短い繊維であるコットンリンターを薬品に溶かして繊維に加工した再生繊維でセルロースを主成分とする繊維である。
キュプラ繊維は、水に濡らした時の強度である湿潤強度が高く、ポリエステル複合繊維層4にキュプラ繊維を混合することで、吸水性、吸湿性に優れる特性をエアロゲル含有積層シート1に与える。
【0029】
そして、エアロゲル中間層6のポリエステル複合繊維層4は、羽毛繊維及びキュプラ繊維を一緒に含有することができる。保温性を高くしつつ、吸水性、吸湿性も高めることができるため、非常に好ましい態様である。
【0030】
また、エアロゲル中間層6におけるポリエステル複合繊維の含有量は、エアロゲル中間層6の総重量に対して1〜90重量%であることが好ましい。この含有量であれば、軽量で、速乾性、耐熱性、耐久性を備えたエアロゲル含有積層シート1となる。
【0031】
エアロゲル中間層6におけるエアロゲル含有量は、エアロゲル中間層6の総重量に対して、1〜70重量%であることが好ましい。
【0032】
エアロゲル中間層6における羽毛の含有量は、エアロゲル中間層6の総重量に対して1〜70重量%であることが好ましい。この含有量であれば、本発明にかかるエアロゲル含有積層シート1にほどよい暖かさと柔らかさをもたらす。
【0033】
さらに、エアロゲル中間層6におけるキュプラ繊維の含有量は、エアロゲル中間層6の総重量に対して1〜90重量%であることが好ましく、特に20〜40重量%であると、優れた吸水性、吸湿性が発揮できる。
【0034】
エアロゲル中間層6は、エアロゲル含有積層シート1の使用用途にあわせて、適宜混合する繊維の量を調整し、含有量を調整して混合することで、より用途に適したエアロゲル含有積層シート1を提供できるものとなっている。
【0035】
エアロゲル中間層6は、第一中綿層2と第一熱可塑性樹脂フィルム層3を介して接着されており、一方、第二中綿層8とは、第二熱可塑性樹脂フィルム層7を介して接着されている。第一熱可塑性樹脂フィルム層3、第二熱可塑性樹脂フィルム層7を設けることにより、第一中綿層2と第二中綿層8とを強固に接着するだけでなく、エアロゲルを破壊することなくエアロゲル中間層6を密封し、エアロゲル中間層6の必須成分であるエアロゲルや、任意成分である羽毛繊維及びキュプラ繊維を密封することができ、これらの成分が第一中綿層2や第二中綿層7の隙間、縫い目などから出てきてしまうことを防止するものである。
【0036】
第一熱可塑性樹脂フィルム層3、第二熱可塑性樹脂フィルム層7を構成する成分は、いずれも熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではないが、本発明の代表的な態様としては、熱可塑性ポリウレタンフィルムを用いる。
第一熱可塑性樹脂フィルム層3及び第二熱可塑性樹脂フィルム層7を構成する成分としては、酢酸ビニル樹脂系、ポリビニルアセタール系、エチレン酢酸ビニル樹脂系(EVA)、塩化ビニル樹脂(PVC)系、アクリル樹脂系(ACR)、ポリアミド系(PA)、ポリエチレン系(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)系、ポリプロピレン(PP)系、ポリスチレン(PS)系、セルロース系、α−オレフィン系、合成ゴム系(SR)などが挙げられるが、ポリアミド樹脂(PA)や熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)が好ましい。これらのエラストマータイプも好ましい。これらは接着性、伸縮性に優れ好適である。
上記第一熱可塑性樹脂フィルム層3及び第二熱可塑性樹脂フィルム層7のそれぞれの成分は、単独で構成されていてもよいし、2種以上混合して構成してもよい。
【0037】
そして、本発明にかかる前記エアロゲル含有積層シート1は、その全体の厚さαを2.0〜20.0mmとし、あたかも一枚の生地のように構成する。これは、薄すぎると保温性を確保できず、また20.0mm以上になると、厚くなりすぎて嵩張る上に、軽量感がなくなり、裁断、縫製等の製造作業がしにくくなるためである。
したがって、さらに好ましくは、エアロゲル含有積層シート1の厚さαが2.0〜6.0mm程度になるよう第一中綿層、第二中綿層の目付及び混合繊維層の各繊維の混合比率を調整すると、軽量で嵩張らず、あたかも一枚の生地のように扱え、衣料品や寝装具の中綿として使いやすく、裁断、縫製等の製造作業がしやすくなり好適である。
【0038】
そして、本発明にかかるエアロゲル含有積層シート1は、上記のようにあたかも一枚の生地のように構成されて保温用の素材として取り扱うことができるので、ジャケットやズボン、スカート、シャツ、防寒用インナーや帽子などの衣料品、掛け布団や敷ぶとんなどの寝装具など、任意の保温用の製品を製造するために用いることができる。具体的には、羽毛などの代わりに、衣料品や寝装具の中に入れることができる。
また、各種衣料品や寝装具の一部に本発明にかかるエアロゲル含有積層シート1を用いることもできる。例えば、ジャケットの前身頃と後身頃だけエアロゲル含有積層シート1を用いつつ、袖部を既存の薄手の生地を用いるなど組み合わせると、デザイン性の高い衣料品を製造することもできる。
同様に、寝装品についても側生地内の一部に本発明にかかるエアロゲル含有積層シート1を用いることもできる。
【0039】
本発明にかかるエアロゲル含有積層シート1は、保温用の素材として完成したシート体なので、衣料品、寝装品いずれに用いる場合においても、側生地の種類を問わずに充填、介装ができる。側生地は、例えば、綿、ウール、麻等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル系繊維等の合成繊維、天然あるいは合成の皮革等、任意の素材の生地を使用できる。
さらに、ほどよい弾力性も備え、かつ湿潤強度も高いので、バッグなどのクッション材として使用することも可能である。
【0040】
次に、本発明にかかる羽毛含有保温用シートの製造方法を
図2、
図3に基づいて説明する。
本発明にかかるエアロゲル含有積層シート1の製造方法の一例としては、
(1)基台上に化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される第一中綿層2を配置する工程と、
(2)第一中綿層2に第一熱可塑性樹脂フィルム層3を形成する工程と、
(3)第一熱可塑性樹脂フィルム層3の上に、ポリエステル複合繊維を含むポリエステル複合繊維層4を形成する工程と、
(4)ポリエステル複合繊維層4の上に、エアロゲルからなる粉を噴射し、ポリエステル複合繊維層4に固着したエアロゲル層5を形成することにより、ポリエステル複合繊維層4とエアロゲル層5とを含むエアロゲル含有中間層6を形成する工程と、
(5)エアロゲル含有中間層6の上に、第二熱可塑性樹脂フィルム層7を形成する工程と、
(6)第二熱可塑性樹脂フィルム層7の上に、化学繊維綿をシート状に形成した中綿で構成される第二中綿層8を配置する工程と、
(7)第二中綿層8を配置した積層体9を加熱し、積層体9を一体化する工程と、
を含む。
【0041】
図2、
図3においては、基台上(図示せず)に、第一熱可塑性樹脂フィルム層3を積層する側が上面になるように第一中綿層2がセットされる(第1工程)。第一中綿層2の目付は、10〜200g/m
2で、使用用途を考慮して目付を調整する。
次いで、第一中綿層2の上面に、第一熱可塑性樹脂フィルムを配置して、第一熱可塑性樹脂フィルム層3を形成する(第2工程)。第一熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂から構成されるフィルム状のものであれば特に限定されるものではない。熱可塑性樹脂のフィルムを用いることで、簡便に配置できつつ、密着性を高めることができる。
【0042】
そして、第一熱可塑性樹脂フィルム層3の上に、ポリエステル複合繊維を配置することにより、ポリエステル複合繊維層4を形成する(第3工程)。必要により、羽毛繊維やキュプラ繊維をポリエステル複合繊維にあらかじめ混合させることもできるし、各繊維をそれぞれ噴射して第一熱可塑性樹脂フィルム層3の上に配置してもよい。配置方法については、特に限定されるものではないが、3D積層プリンターを使用して、配置することにより、第一熱可塑性樹脂フィルム層3の上に均一に配置することができる。ポリエステル複合繊維層4は、バランスよく配置できる観点から網状であることが好ましい。なお、ポリエステル複合繊維層4の目付は、5〜80g/m
2であり、用途によって適宜変更できる。
【0043】
ポリエステル複合繊維層4の上に、エアロゲルを配置し、エアロゲル層5を形成する(第4工程)。エアロゲルは、3D積層プリンター等を使用し、エアロゲルの粉を噴射することにより、ポリエステル複合繊維層4の上に配置する。
噴射されたエアロゲルは、ポリエステル複合繊維層4の上に一次的に固着させる状態にする。エアロゲル層5を形成することにより、ポリエステル複合繊維層4とエアロゲル層5からなるエアロゲル含有中間層6が形成される。
【0044】
次に、エアロゲル含有中間層6の上に、第二熱可塑性樹脂フィルムを配置し、第二熱可塑性樹脂フィルム層7を形成する(第5工程)。第二熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂から構成されるフィルム状のものであれば特に限定されるものではなく、第一熱可塑性樹脂フィルムと同じであっても、異なっていてもよい。
【0045】
そして、第二熱可塑性樹脂フィルム層7の上に、第二生地を配置し、第二中綿層8を形成する(第6工程)。第二中綿層8は、第一中綿層2と同じであっても異なっていてもよい。第二中綿層8の目付も、10〜200g/m
2で、用途を考慮して量を調整する。なお、第二中綿層8の目付は、第一中綿層2の目付に依存するものではなく、限定されるものではない。
【0046】
第二中綿層8を形成して得られる積層体9を加熱により熱融着により一体化し、エアロゲル含有積層シート1を形成する(第7工程)。
本実施例にかかるエアロゲル含有積層シート1は、第一中綿層2及び第二中綿層8にポリエステル綿を使用し、さらに、第一中綿層2及び第二中綿層8には、それぞれ第一熱可塑性樹脂フィルム層3及び第二熱可塑性樹脂フィルム層7を用いて、エアロゲル含有中間層6を挟み込む。この状態で加熱すると、第一中綿層2及び第二中綿層8にポリエステル綿及び、第一熱可塑性樹脂フィルム層3及び第二熱可塑性樹脂フィルム層7の熱可塑性樹脂が溶けそれぞれが混ざり合って接着する。こうすることにより、中間のエアロゲル(必要により羽毛及びキュプラ繊維)が第一中綿層2及び第二中綿層8にしっかり密封され、使用しても、羽毛、キュプラ等がエアロゲル含有積層シート1から出てきてしまう心配がない。加熱により溶けたポリエステル樹脂は、全体が熱融着し一体化し、積層体9をあたかも1層のごとく構成する。
加熱温度は、熱融着できる温度であれば限定されるものではないが、例えば、加熱機械の温度を130〜200℃に設定する。
本発明において、加熱と同時または加熱の前又は後に、積層体9(エアロゲル含有積層シート1)を加圧することができ、本発明にかかるエアロゲル含有積層シート1は加圧により、2.0〜20.0mmの厚さに調整される。
なお、第一中綿層2や第二中綿層7に熱可塑性の化学繊維を使用しない場合であっても、十分強固に接着することができるが、さらに接着力を高める場合には、例えば、各中綿層とエアロゲル中間層3の間に、接着剤等を塗布して確実に熱溶着する構成としてもよい。
その後乾燥させて、本発明にかかるエアロゲル含有積層シート1ができる。なお、前記加熱、加圧、乾燥等は、ホットプレス機等を使えば作業効率を高めることができる。
【0047】
本発明のエアロゲル含有積層シート1の製造は、上記の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることができる。
第一中綿層と、第一熱可塑性樹脂フィルム層と、エアロゲル含有中間層と、第二熱可塑性樹脂フィルム層と、第二中綿層とが、この順で配置されて一体化してなるエアロゲル含有積層シートであって、前記エアロゲル含有中間層は、ポリエステル複合繊維を含むポリエステル複合繊維層と、エアロゲル層とを含む、エアロゲル含有積層シート。