特許第6641079号(P6641079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タツタ電線株式会社の特許一覧

特許6641079プリント基板の製造方法及び導電性部材の接合方法
<>
  • 特許6641079-プリント基板の製造方法及び導電性部材の接合方法 図000002
  • 特許6641079-プリント基板の製造方法及び導電性部材の接合方法 図000003
  • 特許6641079-プリント基板の製造方法及び導電性部材の接合方法 図000004
  • 特許6641079-プリント基板の製造方法及び導電性部材の接合方法 図000005
  • 特許6641079-プリント基板の製造方法及び導電性部材の接合方法 図000006
  • 特許6641079-プリント基板の製造方法及び導電性部材の接合方法 図000007
  • 特許6641079-プリント基板の製造方法及び導電性部材の接合方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641079
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】プリント基板の製造方法及び導電性部材の接合方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20200127BHJP
【FI】
   H05K3/34 504Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-220867(P2014-220867)
(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-92040(P2016-92040A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年11月17日
【審判番号】不服2018-16512(P2018-16512/J1)
【審判請求日】2018年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青柳 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 斉徳
(72)【発明者】
【氏名】平野 喜郎
(72)【発明者】
【氏名】浦下 清貴
(72)【発明者】
【氏名】藤川 良太
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 信博
【合議体】
【審判長】 酒井 朋広
【審判官】 五十嵐 努
【審判官】 石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5055652(US,A)
【文献】 米国特許第4978835(US,A)
【文献】 特開昭49−37850(JP,A)
【文献】 特開平1−241394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K3/32-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備半田され、隣り合う導電性接合部間のピッチが100μm〜400μmである複数の導電性接合部に載置された導電性部材の上面と、前記導電性部材の両側の前記予備半田とが、粘着層を有した光透過性シートに接触して覆われることにより前記導電性部材の載置状態を保持する載置状態保持工程と、
前記光透過性シートを介して前記導電性接合部及び前記導電性部材に向けて光を照射することにより前記予備半田を加熱溶融し、前記導電性接合部及び前記導電性部材を接合する接合工程と、
を有することを特徴とする導電性部材の接合方法。
【請求項2】
予備半田され、隣り合う導電性接合部間のピッチが100μm〜400μmである複数の導電性接合部上に、導電性部材をそれぞれ載置する導電性部材セット工程と、
前記導電性部材の上面と、前記導電性部材の両側の前記予備半田とが、粘着層を有した光透過性シートに接触して覆われることにより前記導電性部材の載置状態を保持する載置状態保持工程と、
前記光透過性シートを介して前記導電性接合部及び前記導電性部材に向けて光を照射することにより前記予備半田を加熱溶融し、前記導電性接合部及び前記導電性部材を接合する接合工程と、
を有することを特徴とするプリント基板の製造方法。
【請求項3】
前記光透過性シートは、ポリイミド樹脂により形成されていることを特徴とする請求項2に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項4】
前記接合工程後に、前記光透過性シートを除去する光透過性シート除去工程を有し、
前記光透過性シート除去工程において前記導電性部材の一部が露出されることを特徴とする請求項2又は3に記載のプリント基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話及びコンピュータ等に使用されるプリント基板、プリント基板の製造方法及び導電性部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び多機能化に伴い、回路基板の高密度化が進められている。これに対応するため、配線を非常に細くし、極狭ピッチで配線を配列している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5479432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、配線を細くすると、配線が軽量化することにより移動や変形しやすい。このような配線を基板に半田接合しようとすると、配線が基板から浮いて離れるため半田接合することができない。また、配線を極狭ピッチで配列すると、半田ブリッジが生じやすい。特に、同軸ケーブル等の手作業で半田接合する場合は半田ブリッジがより生じやすい。
【0005】
そこで、本発明の目的は、極細配線を極狭ピッチで接合する場合でも高い歩留まりではんだ接合できるとともに接合部間にブリッジが生じにくい方法及びプリント基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の導電性部材の接合方法は、予備半田された複数の導電性接合部に、載置された導電性部材を光透過性シートで覆うことにより前記導電性部材の載置状態を保持する載置状態保持工程と、前記光透過性シートを介して前記導電性接合部及び前記導電性部材に向けて光を照射することにより前記予備半田を加熱溶融し、前記導電性接合部及び前記導電性部材を接合する接合工程と、を有する。
【0007】
また、本発明のプリント基板の製造方法は、予備半田された複数の導電性接合部上に、導線部材をそれぞれ載置する導線部材セット工程と、前記導電性接合部及び前記導線部材を光透過性シートで覆うことにより前記導線部材の載置状態を保持する載置状態保持工程と、前記光透過性シートを介して前記導電性接合部及び前記導線部材に向けて光を照射することにより前記予備半田を加熱溶融し、前記導電性接合部及び前記導線部材を接合する接合工程と、を有する。
【0008】
上記方法では、導電性接合部への導電性部材(導線部材)の載置状態を光透過性シートで保持しながら光を照射して予備半田を加熱溶融することによって、導電性接合部及び導電性部材(導線部材)を接合している。これにより、導電性部材(導線部材)が細くなって移動や変形し易くなっても、光透過性シートで覆うことにより導電性部材(導線部材)の移動や変形を防止して導電性接合部と接触させることができるため、導電性部材(導線部材)の導電性接合部への接合を高い歩留まりで行える。また、導電性接合部の予備半田を溶融して、導電性部材(導線部材)と導電性接合部との接触面側から半田による接合を行うため、従来のように手作業で導電性部材(導線部材)の上方から半田ゴテを用いて半田付け作業を行う場合よりも、導電性接合部間における半田ブリッジを生じにくくすることができる。これにより、半田ブリッジが原因で生じる短絡を起こり難くすることができる。特に、導電性接合部間のピッチが狭くなった場合において、ブリッジの発生頻度を顕著に低減することが可能になる。
【0009】
ここで、前記光透過性シートは、ポリイミド樹脂により形成されていることが好ましい。
【0010】
ポリイミド樹脂によって形成された光透過性シートであれば、予備半田を溶解させたときの溶融温度において強度を維持できるため、半田接合を完了するまで、導線部材の載置状態を保持することができる。
【0011】
本発明のプリント基板は、上記方法によって製造されたプリント基板であり、導線部材の一部が露出されていることが好ましい。また、前記導線部材の一部に粘着剤が積層されても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、導電性接合部への導線部材の載置状態を光透過性シートで保持しながらこれらを半田接合するため、極細配線を極狭ピッチで接合する場合でも高い歩留まりで半田接合できる。また、導電性接合部間にブリッジを生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るプリント基板の斜視図である。
図2A】導電性接合部に芯線を載置する工程を示す模式図である。
図2B】光透過性シートで芯線の載置状態を保持する工程を示す模式図である。
図2C】導電性接合部と芯線とを接合する工程を示す模式図である。
図2D】光透過性シートを除去する工程を示す模式図である。
図3】プリント基板の製造方法のフローチャートである。
図4】変形例に係るプリント基板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。ここでは、本発明の1実施形態であるプリント基板、プリント基板の製造方法及び導電性部材の接合方法について、図1図4を参照しつつ以下に説明する。
【0015】
(プリント基板)
プリント基板100は、図1に示すように、基板1と、基板1に形成された複数の導電性接合部2とを有している。導電性接合部2の上面(接合面)2aには半田3により同軸ケーブル4の芯線41が接続されている。
【0016】
<導電性接合部>
導電性接合部2は所定のピッチで並んでいる。導電性接合部2の上面2aは同軸ケーブル4の芯線41が接合される接合面である。導電性接合部2は基板1をエッチング処理等することにより形成される。また導電性接合部2は、基板1に銀、銅等の導電性材料を印刷後、焼成等して形成されることもある。導電性接合部2の幅は例えば50μm〜200μmであり、導電性接合部2のピッチは例えば100μm〜400μmである。導電性接合部2を上記幅とすることにより導電性接合部2に芯線41を良好に接続できる。また、導電性接合部2を上記ピッチで並べることによりフィレットを良好な形状にすることができる。これにより導電性接合部2と芯線41との接続強度を所定の強度に保つことができる。
【0017】
<同軸ケーブル>
同軸ケーブル4は、円柱状の芯線41と、芯線41を覆う内部絶縁体42と、内部絶縁体42を覆う外部導体43と、最外層の外部絶縁体44とを有している。図1の拡大図に示すように、芯線41の側周面、特に下半分の面が半田3により導電性接合部2の上面2aに接合されている。芯線41の上半分の面は露出している。芯線41には例えば直径が15μm〜100μmの導線部材を用いることができる。芯線41のピッチは例えば100μm〜400μmである。
【0018】
(プリント基板の製造方法)
次に、プリント基板100の製造方法を、図2A図2D及び図3を参照しつつ説明する。
【0019】
先ず、図2Aに示すように、導電性接合部2の上面2aに芯線41を載置する(導線部材セット工程、図3のS1)。導電性接合部2の上面(接合面)2aには予め半田3が塗布されている。半田3は、上面2a全体に塗布されている。芯線41が細くて軽量である場合、芯線41は変形や移動しやすいため、浮いて導電性接合部2の上面2aから離れることがある(図2Aの左側及び右側の芯線41参照)。
【0020】
そこで、導電性接合部2、半田3及び芯線41を光透過性シート30で覆う(図2B参照)。このとき、芯線41が半田3に接触するようにする。また、光透過性シート30で芯線41及び半田3を覆い、芯線41が変形や移動しないようにする。図2Bでは芯線41の側周面のうち上半分を光透過性シート30で覆っている。また、半田3において芯線41の両側の領域r1,r2が光透過性シート30に覆われている。これにより、芯線41が上下方向及び左右方向に変形及び移動しないようし、芯線41が導電性接合部2に載置された状態を保持する(載置状態保持工程、図3のS2)。
【0021】
光透過性シート30は、ポリイミドによって形成された樹脂層31と、樹脂層31の下方に形成された粘着層32とを有している(図2Bの拡大図参照)。粘着層32により、光透過性シート30を芯線41及び半田3に接着する。
【0022】
なお、光透過性の部材を芯線41上だけに載置することも考えられる。しかし、芯線41が細くて軽量である場合、芯線41は左右へ移動や変形し、導電性接合部2と非接触状態になりやすい。また、導電性接合部2の上面2aは湾曲状に盛り上がりやすく、ここに円柱状の芯線41を載置し、その上に光透過性の部材を載置すると、芯線41が移動や変形してしまう。そこで、本実施形態では光透過性シート30で芯線41の上面及び芯線41の両側の半田3(領域r1,r2)を覆うことにより、芯線41が導電性接合部2に載置された状態を保持しつつ、芯線41の移動及び変形を抑止できる。
【0023】
次に、光を光透過性シート30を介して導電性接合部2及び芯線41に向けて照射する(図2C参照)。光は光透過性シート30を透過して半田3及び芯線41に照射され、光エネルギーにより半田3が溶融する。また、芯線41に照射された光エネルギーが芯線41の下方の半田3にも伝搬し半田3を溶かす。これにより導電性接合部2と芯線41とが半田3によって接合される(接合工程、図3のS3)。光として例えばレーザーや赤外線を照射してもよい。その後、光透過性シート30を除去すると(図2D参照)、本実施形態の接続構造が得られる(光透過性シート除去工程、図3のS4)。
【0024】
図2Dに示すように、芯線41の下半分の側周面は導電性接合部2に半田接合されている。一方、芯線41の上半分の側周面は露出している。露出面には光透過性シート30の粘着層32の一部(粘着剤)が部分的に残存し、積層されていることがある(図1参照)。
【0025】
以上に述べたように、本実施形態の同軸ケーブルの芯線の接続構造によると以下の効果を奏する。
本実施形態では、導電性接合部2への芯線41の載置状態を光透過性シート30で保持しながら光を照射して予備半田を加熱溶融することによって、導電性接合部2及び芯線41を接合している。極細の芯線41を用いると、芯線41が軽量であるため移動や変形し易いが、芯線41を光透過性シート30で覆うことにより芯線41の移動や変形を防止して、芯線41を導電性接合部2と接触させることができる。このため、芯線41の導電性接合部2への接合を高い歩留まりで行える。また、導電性接合部2の予備半田を溶融して、芯線41と導電性接合部2との接触面側から半田による接合を行うため、従来のように手作業で芯線41の上方から半田ゴテを用いて半田付け作業を行う場合よりも、導電性接合部2間における半田ブリッジを生じにくくすることができる。これにより、半田ブリッジが原因で生じる短絡を起こり難くすることができる。特に、導電性接合部2間のピッチが狭くなった場合において、ブリッジの発生頻度を顕著に低減することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態では、光透過性シート30にポリイミド樹脂で形成された樹脂層31を用いている。ポリイミド樹脂は、予備半田を溶解させたときの溶融温度において強度を維持できるため、半田接合を完了するまで、芯線41の載置状態を保持することができる。
【0027】
また、上述した導線部材セット工程として、例えば隣接する導電性接合部の間隔に対応するピッチに導線部材を整列させ、この状態で導電性接合部に載置する方法がある。
【0028】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0029】
例えば、上述の実施形態では導線部材に同軸ケーブルを用いたが、同軸ケーブル位以外の導電性部材や導線部材を用いてもよい。例えば、フラットケーブルを基板に接続するときに上記方法を採用してもよい。また、コネクタを基板に接合する際に上記接合方法を採用してもよい。図4に示すように、コネクタハウジング250に装着された端子(導電性部材)241を基板201に形成された導電性接合部202に接合するときに上記方法を採用することができる。この場合も上述した方法(図2A図2D参照)と同様に、導電性接合部202の上面(接合面)202aに予備半田203を施し、ここに端子241を載置した後、光透過性シートで端子241、半田203及び導電性接合部202を覆う(載置状態保持工程)。この状態で光を照射し、光透過性シートを剥がすと、図4に示すプリント基板200が得られる(接合工程)。端子241の上面は露出している。本発明の方法を採用すると、極細端子を極狭ピッチで接合する場合でも高い歩留まりで半田接合できる。また、従来よりも極細ピッチで芯線を配列できるとともに、このようなピッチでも導電性接合部間にブリッジが生じにくくすることができる。なお、端子241の露出面に光透過性シートの粘着層232が部分的に積層されていてもよい。また、コネクタハウジング250には同軸ケーブルが接続された他のコネクタが取り付けられてもよい。
【0030】
また、上述の実施形態では光透過性シートの樹脂層にポリイミド樹脂を用いたが、半田よりも融点が高く光を透過する樹脂であれば他の樹脂を用いてもよい。
【0031】
また、上述の実施形態では導電性接合部2の上面2aの幅全体に半田を塗布したが、導電性接合部2の上面2aの幅中央付近にだけ半田を塗布し、上面2aの一部を露出させてもよい。この場合、図2Bに示す載置状態保持工程において、光透過性シート30を芯線41の上半分の側周面、半田3の露出部分及び導電性接合部2の上面2aの露出部分に貼り付けることが好ましい。これにより、芯線41が導電性接合部2に載置された状態をより確実に保持することができる。
【0032】
また、光透過性シート30を剥がした後、芯線41の露出面には粘着層32の一部(粘着剤)が積層されていてもよく、粘着層32が積層されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1,201 基板
2,202 導電性接合部
2a,202a 上面(接合面)
3,203 半田
4 同軸ケーブル
30 光透過性シート
31 樹脂層
32,232 粘着層
41 芯線(導電性部材、導線部材)
100,200 プリント基板
241 端子(導電性部材)
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4