【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明は以下のように構成される。
本発明は、被験者に貼り付ける導電部材と、リード線を介して生体信号測定器と電気接続する電極部とを備える生体電極について、袋状のゴム状弾性体でなり、押圧により圧縮変形したり、押圧を止めて復元したりすることで、前記導電部材を電極部に対して着脱可能とする吸引操作部を備えることを特徴とする生体電極を提供する。
【0008】
本発明の導電部材は、電極部と被験者の皮膚との間に導電部材を介在させることで、電極部と被験者の皮膚とが直接接触しないようにすることができる。そして、この導電部材を電極部に対して着脱可能とすることで、直接被験者に触れる導電部材のみを使い捨てとすることができる。よって、被験者ごとに導電部材を交換することで、交差感染の発生等を抑制することができる。
【0009】
また本発明では、吸引操作部によって電極部が導電部材を吸引することができる。即ち、まず押圧により吸引操作部の内部の空気を排出して圧縮変形させ、押圧を止めて吸引操作部に空気を吸引させながら形状を復元させる。そして、この際に吸引操作部の内部に生じる陰圧による吸引力で電極部に対して導電部材を吸い付けたり、さらに導電部材を介して被験者の皮膚を吸い付けたりすることができる。電極部から導電部材を剥がす場合には、再度、吸引操作部を押圧して圧縮変形させることで、吸引操作部の内部の空気を噴出する。これにより、陰圧による吸引力を解除して導電部材を電極部から剥離することができる。
【0010】
前記導電部材はシート状の導電部材として構成できる。こうすることで、被験者からの生体信号を電極部で取得することができる。
【0011】
前記導電部材は厚み方向で通気性が無いものを利用できる。これによれば、吸引操作部による吸引力によって電極部に対して導電部材を吸着して保持することができる。そのため、例えば電極部に対して導電部材を保持した状態で、作業者が導電部材に触れることなく被験者に導電部材を付けたり剥がしたりすることができる。よって、作業者にとっての取扱性を高め、作業効率を上げることができる。効率よく作業を行うことで、作業者や被験者にとっての測定時のストレスを軽減することができる。また、直接被験者の皮膚を吸引することなく、導電部材を被験者に貼り付けることで電極部を被験者に対して保持することができるため、被験者にとってのストレスを軽減することができる。さらに、吸引操作部の内部と被験者の皮膚を通気性が無い導電部材で遮断することができるため、被験者の皮膚に付着しているバクテリアや真菌、被験者の皮膚片や皮脂等が吸引操作部の内部に入り込み難くすることができる。よって、吸引操作部の内部にバクテリア等が繁殖したり、皮膚片等が付着したりするといった事態の発生を抑制できる。
【0012】
前記導電部材は厚み方向で通気性を有するものを利用できる。これによれば、吸引操作部による吸引力によって、通気性の導電部材を介して電極部に被験者の皮膚を吸着して保持することができる。したがって、例えば被験者に導電部材を付けた状態で、電極部を導電部材を介して被験者に付けたり剥がしたりすることができる。よって、作業者が導電部材に触れることなく電極部を被験者に対して付けたり剥がしたりできるため、作業者にとっての取扱性を高めることができる。効率よく作業を行うことで、作業者や被験者にとっての測定時のストレスを軽減することもできる。またこの方法によれば、電極部が被験者の皮膚に直接接触しないため、被験者の皮膚に例えば痕が残るほど強く吸着することを抑えることができ、被験者のストレスを軽減することができる。こうした通気性を有する導電部材の例としては、例えば導電性のウレタンなどの発泡体を素材とすることができる。また他の例としては、貫通孔を有する粘着性のシートとすることもできる。
【0013】
前記本発明の導電部材は、粘着ゲルであるものとすることができる。
【0014】
こうすることで、安価であり、容易に電極部に対して貼り付け可能な導電部材とすることができる。また、粘着ゲルを被験者の皮膚や電極部に対して密着させることで、間に間隙が生じないように確実に取り付けることができる。
【0015】
前記本発明の電極部は、導電部材の保持面と、前記保持面に開口部を有し、該開口部と前記吸引操作部の内部とを連通する通気孔とを有するものとすることができる。
【0016】
電極部に導電部材の保持面を設けることで、導電部材を面で保持することができる。よって、点や線で保持するよりも、より安定した状態で導電部材を電極部に対して保持することができる。また、吸引操作部の内部の空気が出入りする開口部を保持面に設けることで、より確実に導電部材を保持面に吸着させて保持することができる。導電部材において保持面と接触する部分の面積は、保持面の面積と同じか、または、保持面の面積よりも大きいことが好ましい。しかし、電極部が被験者に接触しなければ、前記導電部材において保持面と接触する部分の面積は保持面の面積よりも小さくても良い。
【0017】
前記本発明の導電部材は、前記電極部に対して貼り付けられる粘着部と、該粘着部よりも粘着力が弱い非粘着部とを有するものとすることができる。
【0018】
このように非粘着部を設けることで、作業者が触れても手に貼り付かない箇所とすることができる。よって、作業者にとっての取扱性を向上させることができる。また、導電部材を保管する際には、電極部や被験者と接触する箇所に保護フィルムを貼り付けておく場合がある。こうすることで、導電部材にごみやほこりなどの異物が付着したり、意図せず導電部材に接触したりすることを防ぐことができる。この保護フィルムは、導電部材を使用する際に導電部材から剥がす場合がある。そこで本発明のように、導電部材が粘着部よりも粘着力が低い非粘着部を設けることで、この非粘着部から保護フィルムを剥がしやすくすることができる。
【0019】
前記本発明の吸引操作部が、前記電極部の側から伸長してラッパ状に広がる拡径部を有する軸部と、前記拡径部の端部を閉塞する笠状操作部とを有しており、該笠状操作部が、弾性変形により圧縮変形するものとすることができる。
【0020】
吸引操作部が大型化すると、リード線が吸引操作部に引っ掛かったり、互いに近接する複数の測定位置に複数の生体電極を取り付ける場合に吸引操作部が邪魔になったりしやすいため、測定作業が効率的に行えなくなる場合がある。また、吸引操作部が大型化すると吸引力が大きくなり過ぎて導電部材に損傷を与えたり、重量が増えて自重で生体電極自体が被験者の皮膚から剥がれたりしやすくなる場合もある。したがって、これらを考慮すると、吸引操作部の大きさとしては、高さ方向の長さが短く、全体としても小型化する方が都合が良いことがある。しかし、吸引操作部を小型化し過ぎると今度は作業者が押圧操作し難くなるなど、取扱性が低下してしまう。また、内部空間の容積が減るため、導電部材を保持するための吸引力が弱くなってしまう場合もある。そのため、吸引操作部としては、導電部材を保持するための吸引力を確保しつつ、作業者が押圧操作しやすい大きさや形状を有する必要がある。
【0021】
そこで、前記本発明では吸引操作部が、前記電極部の側から伸長してラッパ状に広がる拡径部を有する軸部と、前記拡径部の端部を閉塞する笠状操作部とを有しており、該笠状操作部が、弾性変形により圧縮変形するものとすることができる。こうすることで、吸引操作部を高さ方向で小型化しつつ容積を大きくすることができるため、導電部材に対する十分な吸引力を発揮することができる。
【0022】
押圧操作の方法としては、吸引操作部の高さ方向や幅方向で圧縮変形させることができる。特に、作業者は通常、台の上に寝かされた状態の被験者に生体電極を取り付ける。その際、作業者の目の高さは取付位置よりも上にあり、その取付け位置よりも上側から生体電極を皮膚に載せるように取り付ける。よって、作業者にとっては吸引操作部を上側から下側に向けて押圧し、高さ方向で圧縮変形させる作業を行いやすいため、導電部材や被験者に対して電極部を取り付ける作業を楽に行うことができる。このように吸引操作部を高さ方向で圧縮変形させる場合には、例えば導電部材と拡径部との間に人差し指と中指を挿入してそれら2本の指で軸部を挟み、さらに親指を笠状操作部の頂部側に当てて、親指と人差し指の間や、親指と中指の間で吸引操作部を押圧することができる。この方法により、より楽な姿勢で、強い力を指先に加えることなく吸引操作部を圧縮変形させることができる。
これらにより、吸引操作部を単に球状にする場合と比較してより高さ方向で小型化しつつ、導電部材の吸引力と取扱い性を確保することが可能となる。
【0023】
前記本発明の電極部と前記吸引操作部が相互に着脱可能に凹凸係合する装着部を有するものとすることができる。
【0024】
こうすることで、吸引操作部を電極部から脱離してそれぞれを別々に洗浄したり、汚れや損傷が生じた吸引操作部だけを取り換えたりすることが容易に可能となる。従って、より衛生面で有利な生体電極とすることができる。また、電極部と前記吸引操作部が相互に着脱可能に凹凸係合する装着部を有することで、吸引操作部を電極部に確実に装着することができる。さらに、このように凹凸係合することで、電極部と吸引操作部の接触部分の気密性を高めて吸引操作部からの空気を装着部で漏らすことなく排出することができる。
【0025】
前記本発明の電極部は、前記リード線を着脱可能に保持するリード線保持部を備えるものとすることができる。
【0026】
こうすることで、リード線を電極部に対して確実に保持することができる。また、リード線保持部を弾性体でなるものとし、電極部に対して着脱可能に保持されるものとすることで、リード線保持部に汚れや損傷が生じた場合にリード線保持部のみを電極部から取り外して洗浄したり交換したりすることができる。
【0027】
前記本発明の電極部は、導電部材の保持面を有し、当該保持面が凹状の曲面であるものとすることができる。
【0028】
電極部が導電部材の保持面を有し、この保持面を凹状とすることで、電極部を導電部材に軽く接触させた状態で、保持面と導電部材との間に空間を生じさせることができる。よって、その状態から吸引操作部を操作して導電部材を保持面側に吸い上げて浮かせ、保持面に対して貼り付けやすくすることができる。また、保持面を曲面とすることで、保持面が段部を有する場合と比較して導電部材を貼り付けやすくすることができるし、導電部材に段部の角部が接触して損傷が生じるといった事態を起こし難くすることもできる。さらに、単に平坦面でなる場合よりも保持面の面積が増えるため、導電部材が貼り付く面積も増やすことができる。よって、導電部材をより保持しやすい保持面とすることができる。