特許第6641107号(P6641107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641107
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】自動車のトルク伝達装置用ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/134 20060101AFI20200127BHJP
   F16H 45/02 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   F16F15/134 D
   F16F15/134 A
   F16H45/02 Y
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-136974(P2015-136974)
(22)【出願日】2015年7月8日
(65)【公開番号】特開2016-20738(P2016-20738A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2018年2月8日
(31)【優先権主張番号】1456726
(32)【優先日】2014年7月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503041177
【氏名又は名称】ヴァレオ アンブラヤージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル、エンヌベル
(72)【発明者】
【氏名】ロエル、ベルオーグ
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−066360(JP,A)
【文献】 実開昭59−075922(JP,U)
【文献】 国際公開第2014/084100(WO,A1)
【文献】 特開2012−202544(JP,A)
【文献】 特開2007−120633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00− 15/36,
1/00− 6/00
F16H 39/00− 47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク入力要素(22)と、
トルク出力要素(28)と、
前記トルク入力要素及び出力要素の間に取り付けられ、かつ前記トルク入力要素(22)及び出力要素(28)の回転と互いに逆に作用する異なる弾性部材(26a、26b)の少なくとも1つのグループ(26)とを備え、
前記弾性部材のグループの前記弾性部材(26a、26b)は、前記弾性部材のグループ(26)の前記弾性部材(26a、26b)が、互いに同位相で変形するように整相部材(30)を介して直列に配設され、前記弾性部材(26a、26b)の前記グループ(26)は、前記トルク入力要素(22)に形成されたハウジング(44)内に受入れられ、前記ハウジングは、当該ハウジング(44)の径方向正中面に対して非対称であり、
互いに直列に連結された前記弾性部材(26a、26b)は、互いに異なる寸法を有し、かつ、前記ハウジング(44)の径方向正中面に関して非対称であり、
各ハウジング(44)が、ほぼ一定な、かつ異なる平均アーチ形加工半径を持つ第1角度区間(44a)及び第2角度区間(44b)と、前記第1角度区間及び第2角度区間(44a、44b)を連結する第3角度区間(44c)とを含み、
前記第1角度区間及び前記第2角度区間の少なくとも一方、好ましくは両方は、前記トルク入力要素から前記トルク出力要素に向かうトルク伝達の欠如に対応する前記トルク伝達装置の位置において、少なくとも1つの弾性部材、好ましくは2つが、6つの異なる接点で前記ハウジングの壁と接触し、好ましくは前記接点の2つが、前記ハウジングの径方向内側の壁上に位置し、かつ他の4つの接点が、前記ハウジングの径方向外側の壁上に位置することを確実にするために形作られることを特徴とする、自動車のトルク伝達装置用のダンパ。
【請求項2】
前記ハウジング(44)は、前記ダンパの中心に対して、前記ハウジングに沿って測定されるアーチ形加工半径が変化する、アーチ形管を形成することを特徴とする請求項1に記載のダンパ。
【請求項3】
前記ハウジング(44)に沿って、前記ハウジング(44)の横断面が、部分的に環状の形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のダンパ。
【請求項4】
前記第3角度区間は、前記ハウジングを画定する壁が、連続し、かつ好ましくは傾斜の断絶を有さないために形作られることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のダンパ。
【請求項5】
トルク入力部材が、第1(22a)及び第2(22b)誘導リングを含み、前記ハウジングが、前記第1及び/又は第2誘導リング(22a、22b)内でブラインダ(46、48)によって少なくとも部分的に画定されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のダンパ。
【請求項6】
前記弾性部材(26a、26b)が、コイルばね好ましくは真っ直ぐなコイルばねであることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のダンパ。
【請求項7】
各弾性部材のグループ(26)が、同一の直径、及び/又は異なる長さを持つ少なくとも第1コイルばね(26a)及び第2コイルばね(26b)を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のダンパ。
【請求項8】
弾性部材(26a、26b)の前記グループ(26)が、前記第1コイルばね(26a)の長さよりも短い長さを有し、前記第1コイルばね(26a)の直径よりも小さい直径を有し、かつ前記第1コイルばね(26a)の内部に配置された少なくとも1つの第3コイルばねを更に含むことを特徴とする請求項に記載のダンパ。
【請求項9】
第1軸(12)に接続された入力要素(34)と、第2軸(14)に接続された出力要素(22)とを含むクラッチ(32)と、
前記クラッチの前記出力要素及び前記第2軸の間に配置された、請求項1からのいずれか一項に記載のダンパと、
を含むことを特徴とする自動車のトルク伝達装置(10)。
【請求項10】
インペラブレードホイール(16)と、タービンブレードホイール(18)とを更に含み、前記インペラブレードホイールが、リアクタ(20)を介して前記タービンブレードホイール(18)を流体動力学的に駆動するように構成され、前記クラッチ(32)及び前記タービンブレードホイール(18)が、前記出力要素に接続されることを特徴とする請求項に記載のトルク伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のトルク伝達装置用のダンパ及びそのようなダンパを有する自動車のトルク伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のトルク伝達装置用のダンパは、例えば出願人名義の特許文献1又は特許文献2に記載されている。ダンパは、エンジン出力軸からボックスの入力軸へのねじり振動の伝達を抑えることを可能にする。
【0003】
このようなダンパは、トルク入力要素と、トルク出力要素と、トルク入力要素及び出力要素の間に取り付けられ、かつトルク入力要素及び出力要素の回転と互いに逆に作用する弾性部材とを含むことが知られている。
【0004】
ダンパがLTD(「Long Travel Damper(ロングトラベルダンパ)」)タイプ又は長ストロークダンパである場合、ダンパは、グループ毎に配設された幾つかの弾性部材を含み、同じグループの弾性部材は、各グループの弾性部材が、互いに同位相で変形するように整相部材を介して直列に配設される。同じグループの弾性部材は、同一であるか、又は特に長さ又は硬度の異なる特性を有しても良い。
【0005】
整相部材は、動作時に、正の方向と呼ばれる回転方向でも、「逆の」方向と呼ばれる反対回転方向でも弾性部材を圧縮できる。正の方向は、トルクがトルク入力要素からトルク出力要素に向かって伝達される動作の場合に対応する。動作段階によっては、例えば利用者がアクセルから足を突然引っ込める時、抵抗トルクが、トルク出力要素からトルク入力要素に向かって伝達され、このことは、整相部材の「逆」方向での回転を引き起こし得る。
【0006】
整相部材による弾性部材の圧縮は、その場合にトルク入力要素及び/又は出力要素に対する弾性部材の滑動を引き起こし得る。これらの滑動は、ダンパによるトルク伝達におけるヒステリシスを引き起こし、トルク入力部材及び/又は出力部材に対する摩擦による弾性部材の早期磨滅も引き起こし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2947025号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2988455号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、先行技術の短所を有さないか、又は少なくともそれらの影響を抑え改善された、自動車のトルク伝達装置用ダンパを提案することからなる。
【0009】
さらに、欧州特許出願公開第0093287号明細書にあるように、摩擦ディスク内で様々な形状の窓内に受けられる異なるばねを含むクラッチ用摩擦ディスクが知られている。窓は、直線的である、径方向内側を特に有する。異なるばねは、剛性及び振動減衰効果をクラッチの様々な負荷状態に適応させることを特に可能にする。
【0010】
本発明の目的を達するために、トルク入力要素と、トルク出力要素と、トルク入力要素及び出力要素の間に取り付けられ、かつトルク入力要素及び出力要素の回転と互いに逆に作用する異なる弾性部材の少なくとも1つのグループとを備え、弾性部材グループの弾性部材は、弾性部材グループの弾性部材が、互いに同位相で変形するように整相部材を介して直列に配設され、弾性部材グループは、ハウジングの径方向正中面に対して非対称なハウジング内に受けられることを特徴とする、自動車のトルク伝達装置用ダンパが提案される。
【0011】
このようにして、一方では好適には、弾性部材を受けるハウジングは、各弾性部材の満足のゆく誘導を確実にするために形作られても良いのであるが、先行技術においては、グループ当たり弾性部材1つのみが適切に誘導され、一般的に最も長いか最も幅が広かった。
【0012】
あるいは、換言すると、本発明によれば、同じ弾性部材グループの全ての弾性部材は、ハウジングに沿って、ハウジングの内面の近傍にあることが確実にされる。更に正確には、本発明の一態様によれば、ハウジングの内面と、グループの各弾性部材の外周との間で測定される距離が、ハウジングに沿ってほぼ一定であることが確実にされる。
【0013】
本発明によれば、ハウジングの形状は、圧縮中に各弾性部材の運動学的誘導を確実にするために、同じ弾性部材グループの各弾性部材の形状に適応される。このことは、ダンパのヒステリシス及び動作のより良い制御を確実にする。
【0014】
好ましい実施態様によれば、ダンパは、単独又は組み合わせて選択される、次の特性の1つ以上を有することができる。
・ハウジングは、ダンパの中心に対して、ハウジングに沿って測定されるアーチ形加工半径が変化するアーチ形管を形成する。アーチ形加工半径は、ハウジングに沿って円周方向に測定される。
・ハウジングに沿って、ハウジングの横断面は、部分的に環状の形状を有する。
・各ハウジングは、ほぼ一定でかつ異なる平均アーチ形加工半径を持つ第1及び第2角度区間と、第1及び第2角度区間を連結する第3角度区間とを含む。
・第3角度区間は、ハウジングを画定する壁が、連続し、かつ好ましくは傾斜の断絶を有さないために形作られる。
・トルク入力部材は、第1及び第2誘導リングを含み、ハウジングは、第1及び/又は第2誘導リング内でブラインダ(blinder)によって少なくとも部分的に画定される。
・弾性部材は、好ましくは真っ直ぐなコイルばねであり、第1角度区間及び第2角度区間の少なくとも一方、好ましくは両方が、トルク入力要素からトルク出力要素に向かうトルク伝達の欠如に対応するトルク伝達装置の位置において、少なくとも1つの弾性部材、好ましくは2つが、6つの異なる点でハウジングの壁と接触し、好ましくは接点の2つが、ハウジングの径方向内側の壁上に位置し、かつ他の4つの点が、ハウジングの径方向外側の壁上に位置することを確実にするために形作られる。
・弾性部材グループは、同一の直径、及び/又は異なる長さを持つ少なくとも第1及び第2コイルばねを含む。
・弾性部材グループは、第1コイルばねの長さよりも短い長さと、第1コイルばねの直径よりも小さい直径を持ち、かつ第1コイルばねの内部に配置された少なくとも1つの第3コイルばねを更に含む。
【0015】
もう1つの態様によれば、本発明は、第1軸に接続された入力要素と、第2軸に接続された出力要素とを含むクラッチと、クラッチの出力要素及び第2軸の間に配置された、前述のダンパとを含む自動車のトルク伝達装置を提案する。
【0016】
好ましい実施態様によれば、伝達装置は、次の特性を有しても良い。すなわち、この装置は、インペラブレードホイールと、タービンブレードホイールとを更に含み、インペラブレードホイールが、反応器を介してタービンブレードホイールを流体動力学的に駆動するように構成され、クラッチ及びタービンブレードホイールが、前記出力要素に接続されて良い。
【0017】
本発明は、以下に続く記載で、添付図面を参照してなされた記載に照らしてより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】自動車のエンジン出力軸及びギヤボックスの入力軸の間のトルク伝達装置を概略的に表す。
図2図1のトルク伝達装置内で利用されるように構成されたダンパを取り付けられた状態の斜視図で概略的に表す。
図3図1のトルク伝達装置内で利用されるように構成されたダンパを分解組立て図で概略的に表す。
図4図1のトルク伝達装置内で利用されるように構成されたダンパを平面図で概略的に表す。
図5】誘導リングが取り去られた図2から図4のダンパを平面図で概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
トルク伝達装置10(ここでは、流体力学トルクコンバータである)は、図1に概略的に表される。かかるトルク伝達装置は、例えば自動車の自動変速機において利用される。
【0020】
トルク伝達装置は、例示しない実施例において円板クラッチであっても良い。
【0021】
トルク伝達装置10は、エンジン出力軸12に、従来はクランク軸からギヤボックスの入力軸14にトルクを伝達することを可能にする。
【0022】
このために、トルク伝達装置10は、2つの並行した方法を利用できる。
【0023】
第1段階で利用される第1の方法は、リアクタ20を介してタービンブレードホイール18を流体動力学的に駆動できるインペラブレードホイール16を利用することからなる。インペラホイール16は、エンジン出力軸12に接続される。タービンホイール18は、以下でそれぞれ前部誘導リング22a及び後部誘導リング22bと呼ばれる、ダンパ24の2つの誘導リングのアセンブリ22に接続される。ここで、例えば前部誘導リング22aは、タービンホイール18と回転連動する。このことは、特にリベットを介して実行され得る。図2から図5を参照して以下で更に詳細に記載されるダンパ24は、誘導リングのアセンブリ22を、ギヤボックスの入力軸14と回転連動した環状の覆い28に接続する弾性部材26a、26bの1つ以上のグループ26を本質的に含む。ダンパ24は、同じグループ26の弾性部材26a、26bが、同位相で作用することを確実にするために、整相部材30も含む。ダンパ24は、エンジン出力軸12からギヤボックスの入力軸14に向かう振動及び騒音の伝達を抑えることを可能にする。
【0024】
第2の方法によれば、トルク伝達装置10は、エンジン出力軸12からギヤボックスの入力軸14に、ロックアップクラッチと呼ばれるクラッチ32を通してトルクを伝達する。クラッチ32は、例えば円板タイプであっても良い。この第2の方法は、定常状態でタービン及びインペラホイールの間の望ましくない滑動を回避するために、すなわちエンジン出力軸12及びギヤボックスの入力軸14の油圧接続後に、第1の方法に続いて利用される。
【0025】
クラッチ32は、ダンパ24がエンジン出力軸12からギヤボックスの入力軸14にトルクを伝達するために、この場合に同様に利用されるように、エンジン出力軸12に接続された入力要素34と、スプラインハブ38(図2及び図3を参照)によって誘導リングのアセンブリ22に接続された出力要素36とを含む。スプラインハブ38は、ここでは、例えばリベットを用いて後部誘導リング22bに固定される。
【0026】
図2から図5に例示したようなLTDタイプのダンパ24は、以下で更に詳細に記載される。
【0027】
ダンパ24の2つの誘導リング22a、22bは回転連動する。このために、ここでは、前部誘導リング22aは、後部誘導リング22bの脚部23を受けるスロットを有する。
【0028】
これら2つの誘導リング22a、22bは、弾性部材26a、26bのグループ26によって環状の覆い28に弾性的に接続される。弾性部材26a、26bは、異なる長さであっても良く、好ましくは同じ長さに対して、湾曲ばねよりも大きな柔軟性を有する真っ直ぐな渦巻きばね(コイルばね)である。第1コイルばね26aの長さよりも短い長さと、第1コイルばね26aの直径よりも小さい直径を有する第3コイルばねが、第1コイルばね26aの内部に配置され得ることに注目すべきである。
【0029】
誘導リング22a、22bと回転連動する整相部材30は、各グループの弾性部材26a、26bが、同位相で確実に作用できるようにする。このようにして弾性部材26a、26bの圧縮は、エンジン出力軸12からのねじり振動をフィルタにかけ、かつそれらをギヤボックスの入力軸14に伝達しないか、又は少なくとも減衰されたレベルで伝達することを可能にする。
【0030】
弾性部材26a、26bの圧縮は、2つの支承面、すなわち、ここでは、覆い28の径方向脚部40の側面によって形成され、覆い28と連動した一方28aと、整相部材30の径方向脚部42の側面によって形成され、整相部材30と連動した他方30aとの間で行われる。
【0031】
ここで、2つの支承面28a、30aが、径方向に対して明らかに、例えば2〜6°の角度で傾斜することに注目すべきである。
【0032】
さらに、圧縮の場合に弾性部材の滑動を回避するため、又は少なくとも減少させるために、弾性部材26a、26bの各グループ26は、2つの誘導リング22a、22bの間に位置するハウジング44内に受けられる。このハウジング44の壁は、弾性部材26a、26bの誘導を、この弾性部材の不確定な圧縮中に可能にし、かつこのようにしてこの弾性部材26a、26bの滑動を回避するために、誘導リング22a、22bによって形成される。誘導リング22a、22bの間に位置するハウジング44の内部容積は、弾性部材の設置のために利用できる。
【0033】
このために、誘導リング22a、22bによって形成されるハウジングの壁(及び従ってハウジング自体)は、ハウジングの径方向正中面に対して、すなわちダンパ24の半径に沿って配向される面で、かつハウジング44を同一の長さの2つの部分に分割する面に対して非対称である。ハウジング44の内部容積の横断面は、ハウジングに沿って変化する。好ましい実施例において、ハウジング44に沿って測定される断面は、漸減する。弾性部材をそれらの圧縮中に更に効果的に誘導することを可能にするハウジングを製作することが、このようにして可能である。実際に、発明者は、トーラスの一部に沿って、すなわちダンパの中心に対して一定の曲率半径によって伸長するハウジングが、一般的に利用される2つの弾性部材の大きい方を効果的に誘導することを可能にするために備えられることを確認した。しかしながら、この場合に、小さい寸法の弾性部材は、この弾性部材のハウジングの壁による誘導が、満足でないために滑動を受ける。反対にここでは、非対称な壁によって、壁の一つの角度区間を2つの弾性部材の一方に適応させ、かつ当該一つの角度区間と異なるもう一つの角度区間を、2つの弾性部材の他方に適応させることが可能であり、このようにしてハウジング44の壁による2つの弾性部材の適切な誘導を確実にする。
【0034】
誘導リング22a、22bによって形成された各ハウジング44の壁は、それぞれ前部及び後部誘導リング22a、22b内でブラインダ46、48によって特に形成され得る。ブラインダ46、48は、ばね26a、26bを見えるようにする開口部の周りでの誘導リング28a、28bの表面の変形によって形成される。誘導リング22a、22bの表面の変形は、この変形される表面の形状が、受けられるばねの形状にほぼ対応するように行われる。開口部の存在のために、ハウジング44の横断面は、部分的に環状の形状を有する。
【0035】
各ハウジング44は、このようにしてダンパの中心に対して変化するアーチ形加工半径のアーチ形管の形状を有する。大きいばね26aを受けるためのハウジング44の第1角度区間44aは、小さいばね26bを受けるための第2角度区間44bよりも大きい曲率半径を有する。第1及び第2角度区間44a、44bの間に位置するハウジング44の第3角度区間44cは、ハウジング44を画定する表面の規則性、特に好ましくは傾斜の断絶のない、それらの連続性を確実にする。更に正確には、ここでブラインダによって画定されたばね26a、26bの支承面は、アーチ形に加工され、かつトーラスの一部を形成する。
【0036】
好ましくは、第1角度区間44a及び第2角度区間44bの少なくとも一方は、トルク伝達の欠如に対応するダンパの位置において、少なくとも1つの弾性部材又はばね26a、26bが、6つの異なる点でハウジングの壁、特にブラインダ46、48の壁と接触することを確実にするために形作られる。更に好ましくは、第1角度区間44a及び第2角度区間44bは、トルク伝達の欠如に対応するダンパの位置において、2つの弾性部材又はばね26a、26bが、6つの異なる点でハウジングの壁、特にブラインダ46、48の壁と接触することを確実にするために形作られる。
【0037】
好ましくは、これら6つの接点において、2つの接点がハウジングの径方向内側の壁上に位置し、かつ他の4つの点がハウジングの径方向外側の壁上に位置する。同様に好ましくは、これらの接点において、3つの接点が前部誘導リング上に配置され、かつ3つが後部誘導リング上に配置される。
【0038】
このようにして、弾性部材グループ26は、エンジン出力軸に由来する振動を減衰させ、かつギヤボックスの入力軸へのその伝播を回避するために誘導リング22a、22b及び環状の覆い28の間に機能的に配置される。この減衰は、弾性部材26a、26bを圧縮して行われ、弾性部材26a、26bのこの圧縮は、弾性部材26a、26bの滑動を抑えて行われる。
【0039】
さらに、整相部材30は、振動の減衰に寄与する、釣り合い重り付き振り子52を持つプレート50と同様に回転連動する。
【0040】
当然に、本発明は、以上に記載した実施態様の唯一の例に限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5