特許第6641168号(P6641168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641168
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】除塵装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20200127BHJP
【FI】
   E02B5/08 103A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-240228(P2015-240228)
(22)【出願日】2015年12月9日
(65)【公開番号】特開2017-106217(P2017-106217A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594162722
【氏名又は名称】西技工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 義徳
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−133085(JP,A)
【文献】 特開2004−036147(JP,A)
【文献】 特開2002−309563(JP,A)
【文献】 特開平08−060641(JP,A)
【文献】 特開平08−074227(JP,A)
【文献】 特開平11−093144(JP,A)
【文献】 特開平08−074228(JP,A)
【文献】 米国特許第05571406(US,A)
【文献】 米国特許第07815811(US,B1)
【文献】 韓国登録特許第10−1544800(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/00−7/18
E02B 8/00
E02B 8/06−8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水口のスクリーンに滞留した塵芥を熊手で掻き揚げる除塵装置であって、
前記熊手は、1つの棒状体の先端にレーキが設けられ、
前記スクリーンの上方に設けられ、前記スクリーンの幅方向に沿って水平に延びる長尺の下部ガイドレールと、
前記下部ガイドレールの上方に設けられ、前記下部ガイドレールに沿って水平に延びる長尺の上部ガイドレールと、
前記下部ガイドレールに沿って摺動自在な下部移動体と、
前記上部ガイドレールに沿って摺動自在な上部移動体と、
連結バーと開閉レバーとを介して前記下部移動体に連結され、前記熊手の棒状体を摺動自在に支持する下部支持体と、
水平軸回りに回動自在に前記上部移動体に連結され、前記熊手の棒状体を摺動自在に支持する上部支持体と、
前記熊手のレーキを昇降させる昇降駆動手段と、を備え、
前記連結バーの一端部が水平軸回りに回動自在に前記下部支持体に連結され、前記連結バーの他端部が水平軸回りに回動自在に前記開閉レバーに連結され、かつ、前記開閉レバーの基端部が水平軸回りに回動自在に前記下部移動体に連結され、
前記開閉レバーが前記下部支持体側に向けて立ち上げられると、前記上部移動体が時計回り方向に回動して前記熊手の棒状体が時計回りに回動し、前記開閉レバーが前記下部支持体から離れるように寝かせられると、前記上部移動体が反時計回り方向に回動して前記熊手の棒状体が反時計回りに回動することで、前記スクリーンに対する前記熊手の角度が変わる、ことを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
前記開閉レバーの回動を所定の位置で固定することで、前記上部支持体の回動を所定の位置で固定する固定手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の除塵装置。
【請求項3】
人が前記スクリーン側に転落するのを防止可能なように、前記下部ガイドレールの高さが設定されている、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の除塵装置。
【請求項4】
前記上部ガイドレールは、前記下部ガイドレールに比べて長く、かつ、少なくとも一端部が前記下部ガイドレールから突出するように配置されると共に他端部が下部ガイドレールの他端部と同位置に配置され、
前記上部ガイドレールの一端部において、前記下部移動体が前記下部ガイドレールから外れて、前記熊手がほぼ垂直に延びて前記上部ガイドレールの下側に前記熊手のレーキが格納されるようになっている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の除塵装置。
【請求項5】
前記昇降駆動手段は、電動チェーンブロックで構成されて前記下部支持体に配設されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、取水口のスクリーンに滞留・付着した塵芥を除去する除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所などの取水口には、ゴミや流木などの塵芥が流入するのを防止するためのスクリーンが設置され、発電取水に塵芥が混入しないようになっている。そして、スクリーンに塵芥が滞留した場合には、人が熊手(棒にレーキが取り付けられたもの)を使用して、塵芥をスクリーンの上部に掻き揚げていた。しかしながら、この除塵作業は、重労働で、しかも、河川などに転落するおそれがあった。このため、通常は除塵機を設置して、人力によらずに除塵作業を行うが、従来の通常の除塵機は大型で自動化されているため、スペースが狭い場所には設置できない、高額である、などといった問題がある。
【0003】
このため、例えば、比較的小さな水路において、ごみや流木等を確実に掻き揚げることができる、という除塵機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この除塵機は、レーキから延びる2本の摺動部材(棒材)が直進案内手段によって昇降自在に保持され、直進案内手段は、人の高さよりも上に配設されたガイドレールに沿って移動自在となっている。また、電動式油圧シリンダ装置によって直進案内手段およびレーキの角度が調整自在で、電動ウインチによってレーキを昇降させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−036147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の除塵機では、電動式油圧シリンダ装置によって直進案内手段の角度を調整するため、全体が大型化、重量化するばかりでなく、電動式油圧シリンダ装置が故障した場合には、除塵作業が行えず、しかも、早急な復旧が困難である。また、2本の摺動部材を備えてこれを直進案内手段によって保持する必要があるため、構造が複雑で、しかも、幅が大きくなるため、スペースが狭い場所には設置できない場合がある。さらに、ガイドレールから吊り下がるようにして直進案内手段や摺動部材、電動式油圧シリンダ装置などが配設されているため、流速が速い箇所や揚程が比較的高い箇所においては、レーキの安定した昇降(除塵)が困難なおそれがある。
【0006】
そこでこの発明は、小型化が可能で、使い勝手などがよい除塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、取水口のスクリーンに滞留した塵芥を熊手で掻き揚げる除塵装置であって、前記熊手は、1つの棒状体の先端にレーキが設けられ、前記スクリーンの上方に設けられ、前記スクリーンの幅方向に沿って水平に延びる長尺の下部ガイドレールと、前記下部ガイドレールの上方に設けられ、前記下部ガイドレールに沿って水平に延びる長尺の上部ガイドレールと、前記下部ガイドレールに沿って摺動自在な下部移動体と、前記上部ガイドレールに沿って摺動自在な上部移動体と、連結バーと開閉レバーとを介して前記下部移動体に連結され、前記熊手の棒状体を摺動自在に支持する下部支持体と、水平軸回りに回動自在に前記上部移動体に連結され、前記熊手の棒状体を摺動自在に支持する上部支持体と、前記熊手のレーキを昇降させる昇降駆動手段と、を備え、前記連結バーの一端部が水平軸回りに回動自在に前記下部支持体に連結され、前記連結バーの他端部が水平軸回りに回動自在に前記開閉レバーに連結され、かつ、前記開閉レバーの基端部が水平軸回りに回動自在に前記下部移動体に連結され、前記開閉レバーが前記下部支持体側に向けて立ち上げられると、前記上部移動体が時計回り方向に回動して前記熊手の棒状体が時計回りに回動し、前記開閉レバーが前記下部支持体から離れるように寝かせられると、前記上部移動体が反時計回り方向に回動して前記熊手の棒状体が反時計回りに回動することで、前記スクリーンに対する前記熊手の角度が変わる、ことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、下部ガイドレールと上部ガイドレールとに沿って下部移動体と上部移動体とを摺動させて、熊手を所望の位置に移動し、昇降駆動手段で熊手のレーキを上昇させると、熊手の棒状体が下部支持体と上部支持体とで支持されながら、レーキがスクリーンに滞留した塵芥を掻き揚げる。また、手動で開閉レバーを動かすとスクリーンに対する熊手の角度が変わり、例えば、レーキを降ろす際には、レーキをスクリーンから離すように角度を変える。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の除塵装置において、前記開閉レバーの回動を所定の位置で固定することで、前記上部支持体の回動を所定の位置で固定する固定手段を備える、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の除塵装置において、人が前記スクリーン側に転落するのを防止可能なように、前記下部ガイドレールの高さが設定されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3に記載の除塵装置において、前記上部ガイドレールは、前記下部ガイドレールに比べて長く、かつ、少なくとも一端部が前記下部ガイドレールから突出するように配置されると共に他端部が下部ガイドレールの他端部と同位置に配置され、前記上部ガイドレールの一端部において、前記下部移動体が前記下部ガイドレールから外れて、前記熊手がほぼ垂直に延びて前記上部ガイドレールの下側に前記熊手のレーキが格納されるようになっている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1から4に記載の除塵装置において、前記昇降駆動手段は、電動チェーンブロックで構成されて前記下部支持体に配設されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、熊手が1つの棒状体で構成され、棒状体を下部支持体と上部支持体とで支持する構成のため、幅を小さくして小型化が可能となり、スペースが狭い場所にも設置することが可能となる。また、熊手の角度を変えるための動力(シリンダ等)を要しないため、さらに小型化、軽量化が可能となり、しかも、故障の心配がない。さらに、状況に応じて開閉レバーを動かすだけで、容易に熊手の角度を任意に変えることができるため、使い勝手がよい。また、熊手の棒状体が下部支持体と上部支持体とで支持されながら、レーキが昇降するため、流速が速い箇所や揚程が比較的高い箇所においても、レーキの安定した昇降(除塵)が可能となる。
【0014】
請求項2の発明によれば、前記開閉レバーの回動を所定の位置で固定することで、固定手段によって上部支持体の回動(回動角)、つまり、スクリーンに対する熊手の角度を所定の位置で固定できるため、塵芥を避けながらのレーキの降下や、塵芥を掻き揚げながらのレーキの上昇などを、所定の角度で安定して行うことが可能となる。
【0015】
請求項3の発明によれば、人がスクリーン側に転落するのを防止可能なように、下部ガイドレールの高さが設定されているため、作業者などが誤ってスクリーン側に転落するのを防止することができ、安全性が高まる。
【0016】
請求項4の発明によれば、上部ガイドレールの一端部において、下部移動体を下部ガイドレールから外して、熊手をほぼ垂直に延ばせるため、除塵装置を使用しない場合や網場を昇降させる場合などに、熊手が邪魔にならないようにほぼ垂直に延ばして格納することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、昇降駆動手段が電動チェーンブロックで構成されて下部支持体に配設されているだけであるため、構成が簡易となり、より小型化、低費用化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施の形態に係る除塵装置を示す側面図である。
図2図1の除塵装置の正面図である。
図3図1の除塵装置の設置状態を示す側面図である。
図4図1の除塵装置の設置状態を示す正面図である。
図5図1の除塵装置の設置状態を示す平面図である。
図6図1の除塵装置の熊手を示す正面図(a)と側面図(b)である。
図7図1の除塵装置の下部移動体を示す平面図(図2のC−Cから見た図)である。
図8図1の除塵装置の上部移動体を示す平面図(図2のA−Aから見た図)である。
図9図1の除塵装置の下部移動体および下部支持体の周辺を示す拡大図である。
図10図1の除塵装置の連結バーの周辺を示す平面図(図2のB−Bから見た図)である。
図11図1の除塵装置の上部支持体の周辺を示す拡大図である。
図12図1の除塵装置の熊手の各位置の状態を示す図であり、(a)は開限位置、(b)は休止位置、(c)は格納位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0020】
図1および図2は、この発明の実施の形態に係る除塵装置1を示す側面図と正面図である。この除塵装置1は、図3図5に示すように、水力発電所などの取水口100の上に設置され、取水口100の開口前面に配設されたスクリーン101に滞留した、ゴミや流木などの塵芥を掻き揚げる装置であり、主として、熊手2と、下部ガイドレール31および上部ガイドレール32と、下部移動体41および上部移動体42と、下部支持体51および上部支持体52と、電動チェーンブロック(昇降駆動手段)6と、開閉レバー(ハンドル、連結体)71と、固定ユニット(固定手段)72と、を備える。
【0021】
熊手2は、図6に示すように、1つの棒状体21の先端に、櫛状のレーキ22が配設されて構成されている。ここで、棒状体21の長さは、レーキ22がスクリーン101の下端から上端まで昇降できるように設定されている。また、レーキ22の大きさおよび形状は、一度の上昇でスクリーン101に滞留した所定量の塵芥を掻き揚げられるように、設定されている。
【0022】
このレーキ22は、棒状体21に着脱自在で、背面側(塵芥Gを掻き取る面の反対側)には、後述する電動チェーンブロック6のチェーン61を接続するための接続部材23が取り付けられている。さらに、レーキ22の先端部の背面側には、2つのガイドローラ24が回転自在に取り付けられ、後述するようにしてレーキ22が取水台102側に突出した際に、ガイドローラ24が取水台102に沿って回転することで、レーキ22が円滑に移動するようになっている。
【0023】
下部ガイドレール31は、図3図5に示すように、スクリーン101の上方に設けられ、スクリーン101の幅方向に沿って水平に延びる長尺のレールである。具体的には、断面が四角形状の中空棒体で構成され、取水口100の上の取水台102に設置された複数のポール33に支持されて、水平に延びて配設されている。また、下部ガイドレール31の配設高さは、人がスクリーン101側に転落するのを防止可能なように、例えば、平均的な体型の人の腰の辺りに、設定されている。一方、部ガイドレール31の長さは、後述するようにして、熊手2を移動させてスクリーン101全面の除塵が行えるように、設定されている。
【0024】
上部ガイドレール32は、下部ガイドレール31の上方に設けられ、下部ガイドレール31に沿って水平に延びる長尺のレールである。具体的には、断面が四角形状の中空棒体で構成され、図1に示すように、取水台102に設置された既設の網場架台103に支持されて、水平に延びて配設されている。すなわち、柱状の網場架台103がスクリーン101の幅方向に沿って複数設置され、各網場架台103にスクリーン101側に水平に延びるレール支持材34が配設されている。そして、各レール支持材34の上面に設けられた支持部35に支持されて、上部ガイドレール32が配設されている。
【0025】
この上部ガイドレール32は、下部ガイドレール31よりも反スクリーン101側に設置されている。つまり、下部ガイドレール31と上部ガイドレール32とが、段違い平行棒のように配設され、下部ガイドレール31と上部ガイドレール32とを含む面の傾斜方向が、スクリーン101の面の傾斜方向と同方向になるようになっている。
【0026】
また、図4に示すように、上部ガイドレール32の一端部32aが、下部ガイドレール31の一端部から突出して配設され、後述するようにして、この端部32aにおいて熊手2を格納できるようになっている。ここで、この一端部32aは、スクリーン101の外側に位置し、熊手2による除塵を行わない領域となっている。また、上部ガイドレール32の他端部は、下部ガイドレール31の他端部とほぼ同位置となっている。
【0027】
下部移動体41は、下部ガイドレール31に沿って摺動自在な移動体であり、図7に示すように、略正三角形の下部主板411の各角部に、下部ローラ412が垂直軸回りに回転自在に配設されている。そして、1つの下部ローラ412と2つの下部ローラ412とで下部ガイドレール31を挟持した状態で、各下部ローラ412が回転することで、下部ガイドレール31に沿って摺動(移動)自在となっている。
【0028】
また、下部主板411には、下部ガイドレール31の一側面(反熊手2側の側面)に対向する下部側板413が配設され、この下部側板413に、2つの横行ロックネジ414が螺合されている。そして、横行ロックネジ414の横行ロックハンドル415を回して横行ロックネジ414を下部ガイドレール31に締め付ける(押圧する)ことで、下部移動体41を任意の位置で固定できるようになっている。
【0029】
上部移動体42は、上部ガイドレール32に沿って摺動自在な移動体であり、図8に示すように、略三角形の上部主板421の各角部に、上部ローラ422が垂直軸回りに回転自在に配設されている。そして、1つの上部ローラ422と2つの上部ローラ422とで上部ガイドレール32を挟持した状態で、各上部ローラ422が回転することで、上部ガイドレール32に沿って摺動(移動)自在となっている。さらに、上部主板421の上面には、2つの第2の上部ローラ423が水平軸回りに回転自在に配設され、この第2の上部ローラ423が、上部ガイドレール32の上面に接して回転するようになっている。
【0030】
このような下部移動体41と上部移動体42とは、図1に示すように、連結柱43によって連結されている。
【0031】
下部支持体51は、連結バー(連結体)81と開閉レバー71を介して下部移動体41に連結され、熊手2の棒状体21を摺動自在に支持する支持体である。すなわち、図9図10に示すように、棒状体21の両側面を挟むように配設された2つの下部支持板511間に、2つの上部支持ローラ512が水平軸回りに回転自在に配設されている。そして、上部支持ローラ512が棒状体21の上下面に接して回転支持することで、棒状体21が下部支持体51に対して摺動(移動)自在となっている。
【0032】
また、下部支持板511には、連結バー81の一端部が水平軸回りに回転自在に連結され、さらに、連結バー81の他端部が、開閉レバー71の略中央の連結部711に水平軸回りに回転自在に連結されている。一方、開閉レバー71の基端部が、下部移動体41の下部主板411の上面に設けられた連結部416に、水平軸回りに回転自在に連結されている。このようにして、開閉レバー71が連結バー81に設けられ、回動(可動)自在となっている。
【0033】
このように、下部支持体51が、連結バー81と開閉レバー71を介して下部移動体41に連結され、開閉レバー71の連結部711から基端部までが、連結バー81とともに連結体を構成している。
【0034】
上部支持体52は、水平軸回りに回動自在に上部移動体42に連結され、熊手2の棒状体21を摺動自在に支持する支持体である。すなわち、図11に示すように、棒状体21の両側面を挟むように配設された2つの上部支持板521間に、2つの上部支持ローラ522が水平軸回りに回転自在に配設されている。そして、上部支持ローラ522が棒状体21の上下面に接して回転支持することで、棒状体21が上部支持体52に対して摺動(移動)自在となっている。
【0035】
また、上部支持板521には、上部移動体42側に突出した回転支持部523が設けられ、この回転支持部523が、上部移動体42の上部主板421の上面に設けられた連結部424に、水平軸回りに回転自在に連結されている。このようにして、上部支持体52が上部移動体42に連結され、水平軸回りに回動自在となっている。
【0036】
このような下部支持体51と上部支持体52とは、図9図11に示すように、断面がコ字状の棒体である熊手ガイド53によって連結され、この熊手ガイド53で支持体51、52間の棒状体21が覆われるようになっている。また、下部支持体51と上部支持体52との距離は、レーキ22に強い水圧がかかっても、熊手2の棒状体21を安定して支持して、レーキ22による塵芥の掻き揚げを安定して行えるように設定されている。
【0037】
そして、開閉レバー71を人が手で動かすことで上部支持体52が回動して、スクリーン101に対する熊手2の棒状体21の角度(レーキ22とスクリーン101との距離や接触強さ)を任意に変えられるようになっている。すなわち、開閉レバー71を立ち上げるようにして(反時計回りに)回動させると、連結バー81で下部支持体51が押し上げられて上部支持体52が時計回りに回動して、熊手2の棒状体21も時計回りに回動する。例えば、開閉レバー71を垂直に立ち上げると(開限位置)、図12(a)に示すように、水平面に対する棒状体21の傾斜角が67°となる。ここで、水平面に対するスクリーン101の傾斜角を68.2°とする。
【0038】
また、開閉レバー71を寝かせるようにして(時計回りに)回動させると、連結バー81で下部支持体51が引き下げられて上部支持体52が反時計回りに回動して、熊手2の棒状体21も反時計回りに回動する。例えば、開閉レバー71を下限まで下げると(休止位置)、図12(b)に示すように、水平面に対する棒状体21の傾斜角が81°となる。この際、図9に示すように、下部移動体41の下部主板411の上面に設けられた休止ロックピン417を、下部ガイドレール31の所定位置(休止場所)に設けられた休止孔に挿入することで、除塵装置1が休停止するようになっている。
【0039】
また、上部ガイドレール32の一端部32aに上部移動体42が位置する状態では(格納位置)、図12(c)に示すように、下部移動体41が下部ガイドレール31から外れて、上部支持体52がさらに反時計回りに回動して、自重によって熊手2の棒状体21が、ほぼ垂直に延びるようになっている。このようにして、上部ガイドレール32の一端部32aにおいて、熊手2が格納されるものである。
【0040】
電動チェーンブロック6は、熊手2のレーキ22を昇降させる電動機であり、下部支持体51に配設されている。すなわち、図1に示すように、下部支持体51の上面に本体62が配設されて人の腰辺りに位置し、チェーン61の先端が熊手2の接続部材23に接続されている。そして、チェーン61を巻き出したり巻き取ったりすることで、レーキ22(熊手2)が降下したり上昇したりするものである。また、本体62を遠隔操作するための押ボタンスイッチ63は、連結柱43の中央部に配設された水平バー431に配置されている。
【0041】
一方、図1図4に示すように、各レール支持材34の下面に、上部ガイドレール32と平行に延びるケーブルガイドレール64が配設されている。そして、図2に示すように、このケーブルガイドレール64に、電動チェーンブロック6の電源ケーブル65に取り付けられた複数のケーブル滑車66が移動自在に配設されて、電源ケーブル65がケーブルガイドレール64に沿って移動・伸縮自在となっている。また、電動チェーンブロック6には、熊手2の上限位置を規定するための上限リミットが設けられている。
【0042】
固定ユニット72は、上部支持体52の回動を所定の位置で固定するユニットであり、図9に示すように、固定板721と開閉ロックピン722とを備えている。固定板721は、略円板形で、下部移動体41の下部主板411の上面に、板面が垂直に延びるように配設されている。また、固定板721には、円弧軌跡に沿って複数のロック孔721aが形成されている。開閉ロックピン722は、ピン・ロッド状で、固定板721に対して出し入れ自在に開閉レバー71に配設され、固定板721側がロック孔721aに挿入可能となっている。
【0043】
そして、開閉レバー71を所定・所望の角度まで回動させて、開閉ロックピン722を所定・所望のロック孔721aに挿入することで、開閉レバー71が所定・所望の角度で固定される。これにより、上部支持体52および熊手2(レーキ22)の回動が所定・所望の位置で固定されるものである。
【0044】
ここで、ロック孔721aの形成位置は、スクリーン101に対する熊手2の角度が所定角になるように設定されている。例えば、レーキ22を降下させる際に(上記図12(a)の開限位置で)、スレーキ22がクリーン101から離れてスクリーン101に滞留した塵芥を避けられるように、1つの孔位置が設定されている。また、レーキ22の上昇させる際に、スクリーン101に滞留した塵芥を適正に掻き揚げられるように(スクリーン101に対してレーキ22が鋭角になるように)、1つの孔位置が設定されている。このとき、熊手2の自重によってレーキ22の先端部がスクリーン101を押圧しながら上昇し、スクリーン101の上端を超えた際に、勢いでレーキ22が取水台102側に突出して、レーキ22内の塵芥を取水台102にふるい落とせるようになっている。さらに、上記の休止位置(図12(b))と格納位置(図12(c))において、熊手2を固定できるようにそれぞれロック孔721aが形成されている。
【0045】
次に、このような構成の除塵装置1による除塵作業などについて説明する。
【0046】
スクリーン101に滞留した塵芥を除塵する場合、まず、除塵装置1をガイドレール31、32に沿って所望の除塵箇所まで移動させ、横行ロックハンドル415を回して横行ロックネジ414を締め付けて、除塵装置1を固定する。次に、上記のように、開閉レバー71を立ち上げるようにして回動させ、熊手2の棒状体21を寝かせて、スクリーン101に滞留した塵芥に触れないように、レーキ22をスクリーン101から離す。このとき、この位置(例えば、上記図12(a)の開限位置)で固定ユニット72による固定ができる場合には、開閉ロックピン722をロック孔721aに挿入して、熊手2の角度を固定する。
【0047】
この状態で、電動チェーンブロック6を起動して、レーキ22をスクリーン101の下端まで降下させる。次に、上記のように、開閉レバー71を寝かせるように回動させて、熊手2のレーキ22の先端部をスクリーン101に接触させる。続いて、電動チェーンブロック6を起動して、レーキ22をスクリーン101の上端まで上昇させると、熊手2の自重によってレーキ22がスクリーン101を押圧しながら塵芥を掻き揚げ、上記のように、レーキ22内の塵芥が取水台102にふるい落とされる。この際、作業者Mが開閉レバー71を調整、保持して、レーキ22とスクリーン101との接触強さを調整する。あるいは、この位置で固定ユニット72による固定ができる場合には、開閉ロックピン722をロック孔721aに挿入して、レーキ22の位置、接触強さを固定してもよい。
【0048】
このような除塵作業をすべての除塵箇所に対して行い、除塵作業を休止する場合には、図12(b)に示すように、開閉レバー71を下限まで下げて熊手2の棒状体21を立ち上げ、固定ユニット72で熊手2の回動を固定する。さらに、下部ガイドレール31の所定の休止場所まで除塵装置1を移動し、休止ロックピン417を下部ガイドレール31の休止孔に挿入して、除塵装置1を休停止させる。
【0049】
また、網場を昇降させる場合など、除塵装置1を格納する必要がある場合には、上部ガイドレール32の一端部32aに上部移動体42が位置するまで除塵装置1を移動する。これにより、図12(c)に示すように、下部移動体41が下部ガイドレール31から外れて、熊手2の棒状体21がほぼ垂直に延び、熊手2が格納されるものである。
【0050】
以上のように、本除塵装置1によれば、作業者Mがすべて人力で除塵する場合に比べて、作業者Mの労力・負担を大きく軽減することができ、作業時間を大きく短縮することができる。そして、除塵作業に要する時間を短縮できる結果、取水を早期に復旧させて発電量を増加させることが可能となる。
【0051】
また、熊手2が1つの棒状体21で構成され、棒状体21を下部支持体51と上部支持体52とで支持する構成のため、幅を小さくして小型化が可能となり、スペースが狭い場所にも設置することが可能となる。さらに、熊手2の角度を変えるための動力(シリンダ等)を要しないため、より小型化、軽量化が可能となり、しかも、故障の心配がない。また、熊手2の棒状体21が、上記のような距離を隔てた下部支持体51と上部支持体52とで支持されながら、レーキ22が昇降するため、流速が速い箇所や揚程が比較的高い箇所においても、レーキ22の安定した昇降(除塵)が可能となる。
【0052】
一方、開閉レバー71を手で回動するだけで、容易に熊手2の角度・位置を任意に変えることができるため、使い勝手がよい。しかも、作業者Mが開閉レバー71を回動、保持して、レーキ22とスクリーン101との接触強さを調整することができるため、スクリーン101に対する塵芥の付着量や付着状態などに応じて、接触強さを調整して適正かつ容易に除塵することが可能となる。
【0053】
また、固定ユニット72によって上部支持体52の回動(回動角)、つまり、スクリーン101に対する熊手2の角度・位置を所定の位置で固定することができる。このため、例えば、塵芥を避けながらのレーキ22の降下や、塵芥を掻き揚げながらのレーキ22の上昇などを、所定の角度で安定して行うことが可能となる。同様に、固定ユニット72によって、熊手2の角度・位置を開限位置や休止位置において確実に固定することができる。
【0054】
さらに、上部ガイドレール32の一端部32aにおいて、下部移動体41を下部ガイドレール31から外して、熊手2の棒状体21をほぼ垂直に延ばせるため、除塵装置1を使用しない場合や網場を昇降させる場合などに、熊手2が邪魔にならないようにほぼ垂直に延ばして格納することができる。
【0055】
一方、人がスクリーン101側に転落するのを防止可能なように、下部ガイドレール31の高さが設定されているため、作業者Mなどが誤ってスクリーン101側に転落するのを防止することができ、安全性が高まる。また、昇降駆動手段としての電動チェーンブロック6が下部支持体51に配設されているだけであるため、構成が簡易となり、より小型化、製作費の低費用化が可能となる。しかも、電動チェーンブロック6が人の腰辺りに位置するため、電動チェーンブロック6のチェーン61に作業者Mなどが接触することが抑制され、安全性が高まる。
【0056】
そして、上記のようにして小型化、軽量化が可能なため、作業者Mが容易に移動させたり、除塵作業したりすることができ、使い勝手がよい。また、全自動ではなく作業者Mを補助しながら、作業者Mが移動させたり操作したりするものであるため、構成が簡易であるばかりでなく、作業者Mの感覚や作業状況などに合った柔軟な操作等が可能で、より使い勝手がよい。
【0057】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、開閉レバー71の一部が連結体を構成しているが、開閉レバー71が連結体を構成しないようにしてもよい。例えば、屈伸・伸縮するリンク状の連結体で下部移動体41と下部支持体51とを直接連結し、この連結体に開閉レバー71を連結して、開閉レバー71で連結体を屈伸させることで、上部支持体52および熊手2を回動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 除塵装置
2 熊手
21 棒状体
22 レーキ
31 下部ガイドレール
32 上部ガイドレール
32a 一端部
41 下部移動体
42 上部移動体
51 下部支持体
52 上部支持体
6 電動チェーンブロック(昇降駆動手段)
71 開閉レバー(ハンドル)
72 固定ユニット(固定手段)
81 連結バー(連結体)
100 取水口
101 スクリーン
M 作業者
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