(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光硬化型インクのインク滴が印刷媒体に着弾した後に光を照射して前記インク滴を硬化させることでドットを形成する走査を、所定の単位領域に対して往路方向と復路方向とでヘッドからの前記インク滴の吐出範囲が異なる規定数のパスごとに交互に行い、前記インク滴の前記印刷媒体への着弾から硬化までの時間が往路方向と復路方向とで異なる印刷方法であって、
前記ドットは、インクの量が最も少ない最小ドットと、前記最小ドットよりインクの量が多い通常ドットとを含み、
往路走査時および復路走査時のいずれにおいても、規定数の前記パスの内、最初の前記パスから最終の前記パスの直前の前記パスまでに、前記通常ドットおよび前記最小ドットを用いて画像がほぼ完成した状態に形成されるように前記インク滴の吐出を制御し、
複数回の前記走査のうち、前記単位領域の表面層を形成する最終の前記パスとなる後走査において前記画像が完成するように、前記表面層における前記ドット同士が接触しない密度で前記最小ドットのみが形成されるように前記インク滴の吐出を制御することを特徴とする印刷方法。
複数回の前記走査のうち、前記後走査の前に行われる前走査において、前記印刷媒体の表面に吐出された少なくとも一部の前記ドット同士が結合する密度で前記ドットが形成されるように前記インク滴の吐出を制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
光硬化型インクのインク滴が印刷媒体に着弾した後に光を照射して前記インク滴を硬化させることでドットを形成する走査を、所定の単位領域に対して往路方向と復路方向とで交互に行い、前記インク滴の前記印刷媒体への着弾から硬化までの時間が往路方向と復路方向とで異なる印刷方法であって、
複数回の前記走査のうち、前記単位領域の表面層を形成する後走査において、前記表面層における前記ドット同士が接触しない密度で前記ドットが形成されるように前記インク滴の吐出を制御し、
前記後走査において形成される前記ドットのうちの少なくとも一部において、1つの前記ドットを形成するために吐出される前記インク滴の量が、前記後走査よりも前に行われる走査である前走査において形成される1つの前記ドットを形成するために吐出される前記インク滴の量よりも少なくなるように前記インク滴の吐出を制御し、
複数回の前記走査のうち、前記前走査において形成される少なくとも一部の前記ドットについて、1つの当該ドットを形成するために吐出されるインク滴の量が、前記後走査において形成される1つの前記ドットを形成するために吐出される前記インク滴の量と同じとなるように前記インク滴の吐出を制御し、
前記後走査の前に行われる中間走査において、前記中間走査で形成される中間層における前記ドット同士が接触しない密度で前記ドットが形成されるように前記インク滴の吐出を制御するとともに、一定の吐出デューティに基づいて前記インク滴の吐出を制御することを特徴とする印刷方法。
前記吐出制御部は、前記ヘッドが前記印刷媒体に対して前記副走査方向に相対的に移動するときに前記ヘッドの後方となる側の端部から前方に所定の範囲の前記ノズルによって、最も少ない吐出量のインク滴を吐出するように設定するとともに、当該範囲に前記後走査において前記インク滴を吐出する後走査範囲を含ませ、
前記後走査範囲よりも前記ヘッドの前方側の範囲の前記ノズルによって、最も多い吐出量のインク滴を吐出するように設定することを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態について
図1〜
図15に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0026】
〔印刷装置1の構成〕
図1は、印刷装置1の構成を示す平面図であり、
図2は、印刷装置1の構成を示す側面図である。
図3は、キャリッジ2の構成を示す下面図である。
【0027】
図1および
図2に示すように、印刷装置1は、キャリッジ2、ガイドレール3、プラテン4、駆動ローラ5、従動ローラ6および制御部7を備えている。この印刷装置1は、マルチパス方式で記録を行うプリンタである。また、印刷装置1は、UV硬化インクを印刷用のインクとして用いる。
【0028】
キャリッジ2は、ガイドレール3に沿って主走査方向X1,X2(X2はX1と反対の方向)にパスごとに往復移動可能に支持されている。
図3に示すように、キャリッジ2には、ヘッドH1〜H4と、UVランプ21,22とが搭載されている。ヘッドH1〜H4は、長方形をなすキャリッジ2の中央に配置されている。UVランプ21は、キャリッジ2の一方の端部側(主走査方向X2に移動するときのキャリッジ2の前方側)に配置されている。UVランプ22は、キャリッジ2の他方の端部側(主走査方向X1に移動するときのキャリッジ2の前方側)に配置されている。また、ヘッドH1〜H4は、UVランプ21に近い方から、ヘッドH1,H2,H3,H4の順で配置されている。
【0029】
ヘッドH1〜H4は、印刷媒体101に対してインク滴を吐出する印刷用のヘッドである。ヘッドH1〜H4は、インク吐出面に開口し、主走査方向X1,X2方向と直交する副走査方向Yに沿って複数列に並ぶ複数のノズルが設けられており、これらのノズルからインク摘を吐出する。また、ヘッドH1はシアン(C)のインクを吐出し、ヘッドH2はマゼンタ(M)のインクを吐出し、ヘッドH3はイエロー(Y)のインクを吐出し、ヘッドH4はブラック(K)のインクを吐出する。
【0030】
ここで、各ヘッドH1〜H4が印刷媒体101に対して副走査方向Yへ相対的に移動するときの前方側の端部をヘッドH1〜H4の前端部と称し、各ヘッドH1〜H4が同様に移動するときの後方側の端部をヘッドH1〜H4の後端部と称する。
【0031】
各ヘッドH1〜H4は、インク吐出面に開口し、副走査方向Yに沿って一列に並ぶ複数のノズル23が設けられており、これらのノズル23によりノズル列24が構成される。ノズル23は、複数のパスにそれぞれ対応するようにグループに分けられる。例えば、ノズルは、ヘッドH1〜H4の先端部側から順に区切られる領域ごとに、第1パス〜第nパスに対応したグループに分けられる。
【0032】
UVランプ21,22は、ヘッドH1〜H4の各ノズル23から吐出されて印刷媒体101上に着弾したインク滴(UV硬化インク)に紫外線を照射する光源である。UVランプ21,22は、複数のUV−LED素子が配列されることで構成されている。
【0033】
なお、本実施形態では、インクとして紫外線硬化型インクを用いる場合について説明するが、これに限定されず、紫外線以外の光で硬化する光硬化型インクも採用できる。
【0034】
印刷媒体101上に着弾したインク滴には、キャリッジ2が主走査方向X1に沿った往路を走査(移動)するときに、UVランプ21からの紫外線が照射され、キャリッジ2が主走査方向X2に沿った復路を走査するときに、UVランプ22からの紫外線が照射される。
【0035】
プラテン4は、キャリッジ2が移動するガイドレール3と対向する位置に設けられた支持台である。このプラテン4は、印刷媒体101の位置を規定するとともに、印刷媒体101を吸着などにより固定するための機構を有している。
【0036】
駆動ローラ5は、駆動軸を介して駆動力を与えられて回転するローラであり、主走査方向X1,X2に所定の間隔をおいて2つ配置されている。従動ローラ6は、駆動ローラ5と当接することにより、駆動ローラ5と反対方向に回転するローラであり、駆動ローラ5と対向する位置に2つ配置されている。駆動ローラ5および従動ローラ6は、その間に印刷媒体101を挟むことで、駆動ローラ5の回転に応じて、副走査方向Yに対して逆方向に印刷媒体101を所定のピッチで搬送する。このピッチは、1回の走査でヘッドH1〜H4が印刷した印刷領域(バンド)の副走査方向Yの幅である。
【0037】
なお、以降の説明では、主走査方向X1,X2について、方向を特定しない場合は、単に主走査方向Xと称する。
【0038】
制御部7は、主走査制御部8と、副走査制御部9と、吐出制御部10とを有している。また、制御部7は、UVランプ21,22の点灯を制御する。
【0039】
主走査制御部8(移動制御部)は、キャリッジ2を主走査方向Xへ移動させるために、キャリッジ2を駆動するためのモータなどの動作を制御する。また、主走査制御部8は、1回の走査毎に改行を行うため、走査開始前に走査開始信号を出力し、走査終了後に走査終了信号を出力する。
【0040】
副走査制御部9(移動制御部)は、印刷媒体101を副走査方向Yと逆方向に搬送するために、駆動ローラを駆動するモータなどの動作を制御する。この副走査制御部9は、主走査方向Xの各走査が終わる毎に印刷媒体101を上記のピッチの搬送量で搬送するように、モータの回転を制御する。
【0041】
主走査制御部8および副走査制御部9は、所定のパス(単位領域)に対してインク滴を吐出しながら主走査方向Xへの走査を複数回行うようにヘッドH1〜H4を主走査方向Xに移動させるとともに、主走査方向Xへの走査毎にヘッドH1〜H4および印刷媒体101が相対的に移動するように、ヘッドH1〜H4および前記印刷媒体101の少なくともいずれか一方を副走査方向Yに移動させる制御を行う。これにより、記録可能な領域が段階的に印刷される。
【0042】
吐出制御部10は、ヘッドH1〜H4からのインク滴の吐出を制御する制御部であり、ドットサイズ別吐出制御部11と、色別吐出制御部12と、メモリ13とを含んでいる。
【0043】
ドットサイズ別吐出制御部11は、印刷媒体101上に着弾したインク滴が形成するドットのサイズに応じて、インク滴を吐出するパス(タイミング)と、インク滴の量とを異ならせるようにインク滴の吐出を制御する。このドットサイズ別吐出制御部11は、第1制御部11aおよび第2制御部11bで構成されている。
【0044】
第1制御部11aおよび第2制御部11bは、Lドット、MドットおよびSドットを印刷するパス数を別個に設定してインク滴の吐出を制御する制御部である。一方、第2制御部11bは、LドットおよびMドットを形成した後に、Sドットを形成するようにインク滴の吐出を制御する。
【0045】
ここで、Lドット、MドットおよびSドットとは、印刷媒体101上に着弾したインク滴が集合(結合)して硬化することによって形成されるドットである。Lドットは最も大きいサイズ(直径)を有し、Sドットは最も小さいサイズを有し、Mドットは中間のサイズを有しており、それぞれのサイズは規定値として定められている。Lドット、MドットおよびSドットを形成するためのインク滴は、インク滴を形成するための液滴数が異なるのみで1つのノズル23から共通して吐出されるが、これには限定されない。例えば、Lドット、MドットおよびSドットを形成するためのインク滴をそれぞれ異なるノズル列24から吐出するようにしてもよい。なお、Lドット、MドットおよびSドットのそれぞれのサイズに応じて、各サイズのインク滴を吐出するノズル23の数を定めてもよい。
【0046】
また、Lドットは、その形成に最も多いインクの吐出量(インク量)を必要とするので、最も高い濃度で発色する。Sドットは、その形成に最も少ないインクの吐出量を必要とするので、最も低い濃度で発色する。Mドットは、その形成に中間のインクの吐出量を必要とするので、中間の濃度で発色する。
【0047】
色別吐出制御部12は、印刷画像における表面層を形成する最後のパスで、最終の往路走査時と復路走査時とで同じ色のインクでドットを形成するように、インク滴の吐出を制御してもよい。
【0048】
メモリ13は、第1制御部11aおよび第2制御部11bの制御に必要なバリアブルカーブデータと、第1制御部11a、第2制御部11bおよび色別吐出制御部12の制御に必要な吐出デューティと、第1制御部11a、第2制御部11bおよび色別吐出制御部12の制御に必要なマスクパターンとを記憶する記憶装置である。
【0049】
吐出デューティは、1回の主走査で、ヘッドH1〜H4における全てのノズル23に対するインク滴を吐出するノズル23の比率を示すデータである。換言すれば、吐出デューティは、1回の主走査に吐出可能な最大の吐出量に対する吐出量の比率を示すデータである。マスクパターンは、各パスに対応する主走査時に形成する画素を指定するために、ヘッドH1〜H4においてインク滴を吐出するノズル23を定めるパターンのデータである。バリアブルカーブデータについては、後に詳しく説明する。
【0050】
印刷装置1は、インク滴の吐出制御に関して、第1モード、第2モードおよび第3モードという3つの動作モードで動作する。第1モードでは、第1制御部11aによるインク滴の吐出制御が行われ、第2モードでは、第2制御部11bによるインク滴の吐出制御が行われ、第3モードでは、色別吐出制御部12によるインク滴の吐出制御が行われる。これらの各動作モードについては、後に詳しく説明する。
【0051】
なお、上記の構成では、印刷媒体101上の印刷領域を副走査方向Yに移動させるために、印刷媒体101を副走査方向Yと逆方向に搬送し、キャリッジ2を副走査方向Yに移動させないようにしている。しかしながら、本実施形態では、キャリッジ2が印刷媒体101に対して相対的に移動できればよく、上記の構成に限定されない。
【0052】
例えば、印刷装置1は、印刷媒体101を搬送せずに固定しておき、キャリッジ2を副走査方向Yに移動させることにより、キャリッジ2を印刷媒体101に対して相対的に移動させる構成を採用してもよい。この構成では、駆動ローラ5および従動ローラ6が不要であるが、キャリッジ2を副走査方向Yに駆動するための機構が必要となる。このような機構としては、例えば、キャリッジ2をガイドレール3ごと副走査方向Yに駆動する機構が挙げられる。これに伴い、副走査制御部9は、駆動ローラ5の制御に代わって、上記の機構の動作を制御する。
【0053】
また、ヘッドH1〜H4は、ノズル列24が単一のヘッドで構成されているが、これに限らず、ノズル列24が複数同一のヘッドに構成されていてもよい。また、ヘッドH1〜H4は、各ヘッドが主走査方向X1,X2に交互にオフセットして配置されたスタガ型であってもよい。
【0054】
〔第1モード〕
まず、第1モードについて説明する。
図4は、印刷装置1の第1モードによるLドット、MドットおよびSドットの形成を示す図である。また、
図5は、印刷装置1によって印刷される色の濃度とLドット、MドットおよびSドットの割合との関係を示すバリアブルカーブを示す図である。さらに、
図6の(a)は印刷装置1によって印刷された画像を拡大して示す図であり、
図6の(b)は従来の印刷装置によって印刷された画像を拡大して示す図である。
【0055】
第1モードにおいては、パス数が少ない場合に生じる縞やスジの発生を抑えるとともに、印刷画像の粒状感を向上させる。
【0056】
パス数が少ない場合に見られる縞やスジは、印刷画像における濃い色の部分で目立つ。また、前述のように、Lドットで形成される画像の濃度が最も高い。したがって、Lドットのインク滴を吐出するノズル23の数を多く設定し、Lドットの形成を多くのパス数で行うことにより、印刷画像における縞やスジを目立たなくすることができる。
【0057】
一方、粒状感は、印刷媒体101上へ着弾するインク滴がパス間でずれることによって悪化する。また、粒状感の悪化は、印刷画像における薄い色の部分で目立つ。したがって、Sドットの形成を少ない数のパスで行うことにより、印刷画像における粒状感を向上させることができる。
【0058】
そこで、第1制御部11aは、Sドットを形成するパスよりも多い数のパスでLドットを形成するように、Sドットを形成するインク滴(第1インク滴)、Lドットを形成するインク滴(第2インク滴)およびMドットを形成するインク滴(第3インク滴)の吐出タイミングおよび吐出量を制御する。4つのパスで印刷する
図4の例では、第1制御部11aは、4つのパスでLドットが形成され、3つのパスでMドットが形成され、2つのパスでSドットが形成されるようにインク滴の吐出を制御する。Lドットについては、規定数のパスを全て用いて形成することが望ましいが、規定数より少ないパス(
図4に示す例では1つ少ない3つのパス)で形成してもよい。一方、Sドットについては、最小のパス数、すなわち1つのパスを用いて形成することが望ましいが、規定数より多いパス(
図4に示す例では1つ多い2つのパス)で形成してもよい。
【0059】
図4において示す「ヘッド」は、前述のヘッドH1〜H4であり、4つのパスのそれぞれに対応するノズル23が、第1パス部P1、第2パス部P2、第3パス部P3および第4パス部P4にグループ分けされている。また、ノズル列24には、第1インク滴を吐出する第1吐出領域と、第2インク滴を吐出する第2吐出領域と、第3インク滴を吐出する第3吐出領域とが設定されている。第1吐出領域は、ノズル列24における副走査方向Yの両端から所定範囲の領域を除く領域である。第1吐出領域が最も狭く、第2吐出領域が最も広い。また、第3吐出領域は、第1吐出領域よりも広く、かつ、第2吐出領域よも狭い。第1〜第3吐出領域は、インク滴の種類(第1〜第3インク滴)に応じて異なるように設定されている。
【0060】
このように構成されるヘッドを用いたLドット、MドットおよびSドットの形成は、次のようにして行われる。
【0061】
まず、第1走査では、ヘッドが、主走査方向X1(往路方向)に沿った往路で移動しながら第1パス部P1でインク滴を吐出する。第2走査では、ヘッドが、主走査方向X2(復路方向)に沿った復路で移動しながら第1パス部P1および第2パス部P2でインク滴を吐出する。第3走査では、ヘッドが、往路で移動しながら第1パス部P1から第3パス部P3でインク滴を吐出する。第4走査では、ヘッドが、復路で移動しながら第1パス部P1から第4パス部P4でインク滴を吐出する。第4走査以降は、ヘッドの第1パス部P1から第4パス部P4がインク滴を吐出する。また、各走査間では、印刷媒体101が副走査方向Yにバンドの幅ずつ移動することにより、ヘッドが印刷媒体101上でインク滴を吐出する位置が変化していく。第1制御部11aは、各パスにおいて、
図4に示すような吐出デューティ(吐出濃度)でインク滴の吐出を制御する。このようにして4つのパスで分割してインク滴を吐出することにより、Lドット、MドットおよびSドットが完成する。
【0062】
第1制御部11aは、インク滴の吐出を上記のように制御するときに、メモリ13に記憶されているバリアブルカーブデータを参照する。バリアブルカーブデータは、例えば
図5に示すように、色の濃度に対するLドット、MドットおよびSドットの割合を示しており、各濃度に対する割合をLドット、MドットおよびSドットごとに曲線(関数)で示した特性である。また、バリアブルカーブデータは、濃度と割合とを対応付けたテーブルの形態で用意されている。
【0063】
これにより、第1制御部11aは、印刷装置1に入力された画像データから色の濃度を取得すると、この濃度に対応するLドット、MドットおよびSドットの割合をバリアブルカーブデータから得る。第1制御部11aは、その割合と、各パスの吐出デューティと、マスクパターンとに基づいて、各パスにおける、インク滴の吐出・非吐出、インク吐出量などを制御する。
【0064】
なお、
図4に示す例では、第1パス部P1、第2パス部P2、第3パス部P3および第4パス部P4のそれぞれについて、吐出デューティの上限を50%としている。このようにするのは、隣接するノズル23の間の間隔よりも印刷の解像度が高いためである。
【0065】
また、Lドットについては、第1パス部P1、第2パス部P2、第3パス部P3および第4パス部P4の吐出デューティが、それぞれ12.5%、37.5%、37.5%および12.5%に設定され、これらの合計が100%となる。Mドットについては、第1パス部P1、第2パス部P2、第3パス部P3および第4パス部P4の吐出デューティが、それぞれ6.25%、43.75%、43.75%および6.25%に設定され、これらの合計が100%となる。Sドットについては、第1パス部P1、第2パス部P2、第3パス部P3および第4パス部P4の吐出デューティが、それぞれ0%、50%、50%および0%に設定され、これらの合計が100%となる。
【0066】
また、
図4に示す例では、第1制御部11aは、第2吐出領域の中央部分における吐出デューティを、第2吐出領域の副走査方向の両端部分における吐出デューティよりも高くする。具体的には、第1制御部11aは、Lドットの形成において、吐出デューティが山形に(傾斜して)変化するようにインク滴の吐出を制御する一方、Sドットの形成において、吐出デューティが一定すなわち均一(50%)となるようにインク滴の吐出を制御している。これは、均一の吐出デューティに基づいてLドットを形成すると、印刷画像における各バンドの境界部分で生じた段差によって滲みが生じるために、縞やスジが生じやすくなるので、当該境界部分で滑らかにするためである。また、Sドットの形成において、吐出デューティが第1吐出領域の位置に応じて変化すると、第1インク滴の着弾精度が悪化しやすいので、第1吐出領域の位置によらず一定であることにより、第1インク滴の着弾精度を向上させることができる。これにより、印刷画像の粒状感を向上させることが可能となる。また、少ないパス回数で印刷画像を形成させることで、パス毎のインク滴の着弾ずれの発生を抑制することができる。
【0067】
第1制御部11aは、このように設定された吐出デューティに基づいてインク滴の吐出を制御する。具体的には、第2制御部11bは、第1パス部P1および第2パス部P2において、ヘッドの前端部からの距離に応じてヘッドの中央部に向かうにしたがって吐出量が多くなり、第3パス部P3および第4パス部P4において、ヘッドの中央部からの距離に応じてヘッドの後端部に向かうにしたがって吐出量が少なくなるように、インク滴の吐出を制御する。第1制御部11aは、Lドットだけでなく、Mドットの形成においても、パスの境界部分で変化する吐出デューティに基づいてインク滴の吐出量を制御する。
【0068】
さらに、
図4に示す例では、ヘッドの第2パス部P2および第3パス部P3を用いてSドットを形成している。一般に、ヘッドの中央側の部分から吐出されたインク滴の着弾位置が、ヘッドの端部側の部分から吐出されたインク滴の着弾位置よりも揃っている(ばらつきが少ない)。したがって、上記のようにSドットを形成することは、着弾ずれをより小さくする観点で好ましい。
【0069】
以上のように、第1モードでは、Lドットを多くのパスで形成するとともに、Sドットを少ないパスで形成している。このようにLドットを形成するパスを多くすることにより、濃い色のドット、すなわちLドットで目立ちやすい縞やスジの発生が抑えられるので、印刷画像の全体として縞やスジを目立たなくすることができる。また、薄い色のドット、すなわちSドットで目立ちやすい粒状感の悪化については、Sドットを形成するパス数を少なくすることにより、インク滴の着弾ずれの拡大が抑えられるので、粒状感を改善することができる。
【0070】
印刷装置1の第1モードで印刷した画像は、
図6の(a)に示すように、ドットがほぼ均一に分布しており、良好な粒状感を示している。これに対し、従来の印刷装置で印刷した画像は、
図6の(b)に示すように、ドットの分布が不均一であり、一部のドットが重なったり、ドット間の隙間が多くあったりして、粒状感が損なわれている。
【0071】
なお、上記の説明では、パス数を4とした例を挙げたが、パス数は4に限定されない。以降に説明する第2モードおよび第3モードでも、パス数は例示したパス数に限定されない。
【0072】
〔第2モード〕
続いて第2モードについて説明する。第2モードにおいては、UV硬化インクを用いた往復印刷に起因する光縞の発生を抑える。
【0073】
まず、光縞の発生メカニズムについて詳細に説明する。
【0074】
図7の(a)は複数のインク滴が結合して硬化して平坦化する変化を示す図であり、
図7の(b)は複数のインク摘が硬化したドット間に着弾したインク摘が硬化する変化を示す図である。
図8の(a)および(b)は印刷媒体上における隣り合うインク滴が結合して硬化した異なる2つの状態を示す図である。
図9は、往復印刷の結果として各パス間で交互に印刷状態が異なる様子を示す図である。
【0075】
UV硬化インクを用いた往復印刷では、前述のように、印刷画像における往路走査の部分と復路走査の部分とで見る角度に応じて違う色に見える(光り方が違う)ことがある。例えば、印刷画像を正面から見ると、縞は見えないが、斜めから見ると、違う色の部分が往路走査の部分と復路走査の部分とで交互に現れることにより縞状に見えてしまう。これは、印刷画像の表面の凹凸の程度が異なるために光の当たり方によって異なる状態に見える現象である。
【0076】
例えば、グロス部分(光沢部分)では、隣接するインク滴が広がって互いに結合するために、インク滴が硬化したドットがインク滴の原型を留めておらず、全体に凹凸が少ない状態となっている。これに対し、マット部分(艶消し部分)では、インク滴が広がる前に硬化しているために、ドットがインク滴の原型をいくらか留めており、全体に凹凸が多い状態となっている。
【0077】
このような現象は、キャリッジにおけるヘッド(ノズル)とUVランプとの間の距離に応じて、インク滴が吐出してから、印刷媒体に着弾したインク滴にUV照射されるまでの時間(インク滴が吐出してから硬化するまでの時間)が異なるために、上記の凹凸状態の相違として生じる。
【0078】
例えば、
図7の(a)に示すように、印刷媒体101上に、先に間隔をおいて着弾した隣り合うインク滴102の間にインク滴103が着弾した状態では、インク滴102,103は、UV硬化すると、1つに結合して平坦なドット104を形成する。これに対し、印刷媒体101上に、すでに固化した隣り合うドット105の間にインク滴103が着弾した状態では、インク滴103は、ドット105との接触角が小さいためにドット105から弾かれるので、UV硬化しても、ドット105と結合しない。
【0079】
また、濃度の高い部分を印刷する場合、1回の走査におけるインクの吐出量が多いため、
図8の(a)および(b)に示すように、隣り合うインク滴107の間隔が狭い場合、インク滴107同士が結合しやすくなるので、新たなドット108,109が形成される。
図8の(a)に示す場合は、インク滴107の着弾からUVランプによるUV照射までの時間が短いために、ドット108には、インク滴107の結合部分における谷の部分が残っている。これに対し、
図8の(b)に示す場合は、インク滴の着弾からUVランプによるUV照射までの時間が長いために、ドット109は、インク滴107が完全に結合することによって1つの塊となっている。
【0080】
一般に、UV硬化インクは、着弾直後で径の変化が大きく、一定の時間の経過後には径の変化が少なくなる。このため、インク滴の着弾からUV照射までの時間が短いと、
図8の(a)に示すように、インク滴107同士が結合途中の状態でUV照射が行われることにより、谷部および頂部からなる凹凸を有するドット108が形成される。一方、インク滴の着弾からUV照射までの時間が長いと、
図8の(b)に示すように、インク滴107の径の広がりが十分進んだ状態でUV照射が行われることにより、インク滴107同士が完全に結合した状態で硬化したドット109が得られる。
【0081】
通常、キャリッジには、異なる色のインクごとにヘッドが複数並列に設けられていたり、1つのヘッドの中に異なるインクを吐出するノズル列を複数有するヘッドが設けられており、複数のヘッドまたは複数のノズル列を有するヘッドの両側にUVランプが1つずつ設けられている。このため、各ヘッドまたは各ノズル列は、往路走査でのUV照射に用いられる第1UVランプと、復路走査でのUV照射に用いられる第2UVランプとの間でそれぞれ距離が異なる。このようなキャリッジの構造により、往路走査でヘッドのノズル列から吐出されたインク滴が第1UVランプによってUV硬化するまでの時間と、復路走査でヘッドのノズル列から吐出されたインク滴が第2UVランプによってUV硬化するまでの時間とが異なる。それゆえ、
図9に示すように、印刷画像においては、交互に現れる往復走査部分201と復路走査部分202とで、表面の凹凸状態が異なることにより、異なる状態に見えてしまう。
【0082】
インク滴の吐出からUV照射までの時間の相違は、
図3に示す例では、ヘッドH1〜H4とUVランプ21,22との間の距離に応じて生じる。ヘッドH1〜H4は、往路走査でのUV照射に用いられるUVランプ21と、復路走査でのUV照射に用いられるUVランプ22との間でそれぞれ距離が異なる。例えば、ヘッドH1の場合、UVランプ21との間の距離D1がUVランプ22との間の距離D2よりも長い。このような構造により、往路走査でヘッドH1〜H4から吐出されたインク滴がUVランプ21によってUV硬化するまでの時間と、復路走査でヘッドH1〜H4から吐出されたインク滴が第2UVランプ22によってUV硬化するまでの時間とが異なる。それゆえ、
図9に示すように、印刷画像においては、交互に現れる往復走査部分201と復路走査部分202とで、表面の凹凸状態が異なることにより、異なる状態に見えてしまう。
【0083】
続いて、第2制御部11bについて説明する。
【0084】
図10は、印刷装置1の第2モードによるLドット、MドットおよびSドットの形成を示す図である。
図11の(a)〜(e)は印刷装置1の第2モードによる他のLドット、MドットおよびSドットの形成を示す図である。
図12は、印刷装置1の第2モードによる印刷の結果、光縞が解消されている状態の印刷媒体上の印刷状態を拡大して示しており、(a)は印刷媒体上のグロス部分の状態を示す顕微鏡像であり、(b)は印刷媒体上のマット部分の状態を示す顕微鏡像である。
図13は、光縞が発生している状態の印刷媒体上の印刷状態を拡大して示しており、(a)は印刷媒体上のグロス部分の状態を示す顕微鏡像であり、(b)は印刷媒体上のマット部分の状態を示す顕微鏡像である。
【0085】
前述のように、印刷画像における往路走査の部分と復路走査の部分とで表面の凹凸状態が異なることにより、光縞が見えることから、往路走査の部分と復路走査の部分とで同様な凹凸状態となるようにインク滴を吐出すればよい。このため、インク滴が間隔をおいて着弾するように印刷すれば、インク滴が結合することによるドットの接触を回避できるので、
図8の(a)および(b)に示すようなドット108,109のような形状の相違が生じることがない。これにより、印刷画像における往路走査の部分と復路走査の部分とで表面の凹凸状態を揃えることができる。
【0086】
しかしながら、全てのパスにおいてインク滴が間隔をおいて着弾するように印刷する場合、パスの数が膨大になるため、印刷速度が低下するという不都合がある。そこで、第2モードでは、インク滴が着弾直後に結合するような通常の濃度で印刷することにより画像をほぼ完成させた後に、インク滴が間隔をおいて硬化するような低濃度で印刷することにより表面層を形成する。これにより、印刷速度の低下を回避しつつ、印刷画像における往路走査の部分と復路走査の部分とで表面の凹凸状態を揃えることができる。
【0087】
このため、第2制御部11bは、往路走査時および復路走査時のいずれにおいても、規定数のパスのうち、最初のパスから最終のパスの直前のパスまでに、Lドット、MドットおよびSドットを用いて画像がほぼ完成した状態に形成されるようにインク滴の吐出を制御する。また、第2制御部11bは、往路走査時および復路走査時のいずれにおいても、最終のパスにおいて、インク滴が結合しない間隔で着弾することにより広いドット間隔(低密度)で分布するSドットが印刷画像の表面層に形成されるように、インク滴の吐出を制御する。4つのパスで印刷する
図10の例では、第2制御部11bは、先行する3つのパスでLドットおよびMドットが形成されるとともに3つ目のパスでSドットが形成されることにより画像が形成され、少なくとも最後のパスでSドットのみの表面層が形成されるようにインク滴の吐出を制御する。Sドットの形成については、50%の一定の吐出デューティで2つのパスを用いて行われる。
【0088】
第2制御部11bは、
図11に示すように、Lドット、MドットおよびSドットが形成されるようにインク滴の吐出を制御してもよい。
図11の(a)〜(e)に示すいずれの例でも、最大の吐出デューティは50%である。
【0089】
図11の(a)〜(d)は、5つのパスで印刷する例である。
図11の(a)に示す例では、1つ目から3つ目のパスにおいてLドットおよびMドットが形成され、続く4つ目および5つ目のパスにおいてSドットが形成される。
【0090】
図11の(b)に示す例では、1つ目から4つ目のパスにおいてLドットおよびMドットが形成され、3つ目および4つ目のパスにおいてSドットが形成される。Mドットについては、3つのパスにまたがって形成されるが、実質的な形成期間は2つのパスである。この例では、Lドットを多めのパスで形成しているので、前述の第1モードと同様、印刷画像における高濃度の部分に生じる縞やスジを目立たなくすることができる。
【0091】
図11の(c)に示す例では、1つ目から3つ目のパスにおいてLドットおよびMドットが形成され、3つ目から5つ目のパスにおいてSドットが形成される。
【0092】
図11の(d)に示す例では、1つ目から3つ目のパスにおいてLドットおよびMドットが形成され、全てのパスにおいて均一(20%)の吐出デューティでSドットが形成される。
【0093】
上記の
図11の(a)〜(d)に示す例では、往路走査時および復路走査時のいずれにおいても均一の吐出デューティで表面層が形成される。特に、
図11の(c)に示す例では、4つ目のパスにおいて、均一の吐出デューティで表面層が形成される。このように表面層を形成するのは、表面層に均一にSドットを形成する観点から好ましい。これに対し、
図11の(e)に示す例では、3つ目のパスの画像形成期間に、50%均一の吐出デューティでSドットが形成されるが、4つ目のパスで吐出デューティを変化させながら表面層にSドットが形成される。このため、最後に形成される表面層にSドットが均一に分布しなくなるので、
図11の(e)に示す例は好ましくないといえる。
【0094】
第2制御部11bは、
図10および
図11に示すように定められた吐出デューティに基づいて、Sドットを形成するためのインク滴の吐出タイミングおよび吐出量を制御する。また、第2制御部11bは、
図10および
図11に示すように、Lドット、MドットおよびSドットを形成するそれぞれの最初のパスおよび最後のパスにおいて、変化する吐出デューティに基づいてインク滴の吐出を制御する。具体的には、各ドットを形成する最初のパスで吐出デューティが0%(最小値)から50%(最大値)にまで直線的に増加し、各ドットを形成する最後のパスで吐出デューティが50%から0%にまで直線的に減少する。第2制御部11bは、このような吐出デューティの変化にしたがって、第1制御部11aが行うインク滴の吐出制御と同様にしてインク滴の吐出を制御する。
【0095】
少なくとも高濃度のLドットを用いて前段階で画像をほぼ完成させ、低濃度のSドットを用いて後段階で均一な凹凸を形成するには、第2制御部11bは、ヘッドH1〜H4における所定の範囲のノズル23がLドットを形成するために最も多い吐出量のインク滴を吐出するように設定し、ノズル23がSドットを吐出するために最も少ない吐出量のインク滴を吐出するように設定することが好ましい。例えば、
図10に示すヘッドにおいて、第3パス部P3と、後端部から所定の範囲で設けられた第4パス部P4(後走査範囲)との範囲のノズル23が最も少ない吐出量のインク滴を吐出するように設定され、第4パス部P4を除く第1パス部P1から第3パス部P3までの範囲のノズル23が最も多い吐出量のインク滴を吐出するように設定される。
【0096】
以上のように、第2モードでは、先行するパスの主走査(前走査)で、印刷媒体101の表面に吐出されたLドット、MドットおよびSドットを用いて印刷画像をほぼ完成させた後に、少なくとも最後のパスの主走査(後走査)で、表面層におけるドット同士を接触させないように、ほぼ完成した印刷画像上に間隔をおいてSドットの表面層を形成して、画像を完成させる。これにより、ドット同士が接触して平滑化することがなく、それ以前のパスで形成されたドットによる凹凸状態に関わらず、表面層に凹凸を形成することができる。それゆえ、印刷画像の表面層が均一の凹凸状態となるので、印刷画像における往路走査の部分と復路走査の部分とで表面状態に区別がなくなり、光縞を見えなくすることができる。
【0097】
また、全てのパスでドットが接触しないようにインク滴を吐出すると、印刷に必要なパスの数が膨大となるため、主走査方向および副走査方向ともに走査数を増加させなければならず、印刷速度が大幅に低下する。これに対し、第2モードでは、Lドット、MドットおよびSドットを用いて印刷画像をほぼ完成させる段階では、ドット同士が接触する密度でドットを形成するようにインク滴を吐出することにより、パス数を減らして、印刷速度の低下を抑えることができる。
【0098】
印刷装置1の第2モードで印刷した印刷画像の表面は、
図12の(a)に示すグロス部分および
図12の(b)に示すマット部分について、ともにドットの形状が明瞭であり、平坦な箇所が少ない。これに対し、従来の印刷装置で印刷した画像の表面は、
図13の(a)に示すグロス部では、ドットが互いにつながって平坦になった箇所が多く存在する一方、
図13の(b)に示すマット部では、グロス部と比べて平坦な箇所が少なく凹凸が多く存在している。
【0099】
ところで、印刷画像における低濃度の箇所では、インク滴の量が多いと、まばらにしか色の濃度が低下しないために、画質の品位が低下する。これに対し、第2制御部11bは、最後のパスで吐出されるインク滴の量が、その前のいずれのパスで吐出されるインク滴の量よりも少なくなるように、量を調整してインク滴を吐出する。これにより、インク滴の量に基づいて、ドット同士が結合するか否かを制御することができる。それゆえ、色の濃度の高低に関わらず、画質に影響を与えずに光縞を低減させることができる。
【0100】
また、第2制御部11bは、表面層を形成する(印刷画像を完成させる)パスより前の印刷画像をほぼ完成させるパスのうち、少なくとも1つのパス(中間パス)で吐出されるインク滴の量を、他のパスで吐出されるインク滴の量よりも少なくなるように、量を調整してインク滴を吐出する。これにより、印刷画像をほぼ完成させるパスにおいて、大きさの異なるバリアブルドットを形成することができる。したがって、印刷画像の階調数を増加させて、画像品位を向上させることができる。
【0101】
しかも、第2制御部11bは、上記の中間パスの主走査(中間走査)で形成される中間層における隣接するドット同士が接触しないように、インク滴の吐出を制御してもよい。これにより、表面層を形成するパスの前段階で、ドットが間隔をおいて均一に形成されるので、効果的に光縞を抑制することができる。一方、
図11の(a)〜(d)に示す例のように、一定の吐出デューティに基づいてインク滴の吐出を制御することによって表面層を形成することでも、表面層に形成されるSドットが均一の径となって効果的に光縞を抑制できる。したがって、これらの吐出制御を併せて行うことにより、光縞を抑制する効果をより一層高めることができる。
【0102】
なお、第2モードについては、Sドットを印刷画像の表面層に形成する例を説明したが、表面層に形成するのは、Lドットでなければよいので、Mドットであってもよい。
【0103】
〔第3モード〕
最後に第3モードについて説明する。
図14の(a)および(b)は、印刷装置1の第3モードによるインク色に応じたドットの形成を示す図である。また、
図15は、印刷装置1によるインク色に応じた他のドットの形成を示す図である。
【0104】
第3モードにおいては、往復印刷でインクの重なりの順が異なることに起因する色ムラの発生を抑える。
【0105】
往復印刷では、往路走査時と復路走査時とで、主走査方向X1,X2に並ぶ各色のヘッドH1〜H4がインク滴を吐出する順序が入れ替わるので、印刷媒体101上にインク滴が重なる色の順序も入れ替わることになる。このため、印刷画像において、往路走査の部分と復路走査の部分とで、色が異なって見えてしまう。このような状況においては、表面の色が影響されやすくなる。
【0106】
上記の不都合を回避するため、往路走査時と復路走査時とでインクの吐出順が同じになるようにノズルを配置したヘッドが、すでに存在している。また、パス数を減らすように、各色のインクを吐出するヘッドをシフトさせて同時に印刷することでも、上記の不都合を回避することができる。しかしながら、このような構成では、ヘッドの構成が複雑化する。
【0107】
そこで、第3モードでは、往路走査時と復路走査時とで、印刷画像の表面層を形成するインクを同じ色になるようにインクの吐出を制御して、印刷画像における往路走査の部分と復路走査の部分との間で色ムラを抑制する。
【0108】
このため、色別吐出制御部12は、往路走査時および復路走査時のいずれにおいても、最後のパスで指定された色のインクを吐出するようにインクの吐出を制御する。4つのパスで印刷する
図14の(a)に示す例では、色別吐出制御部12は、1つ目のパスから3つ目のパスでシアンのインク滴が吐出され、2つ目のパスから4つ目のパスでマゼンタのインク滴が吐出されるようにインク滴の吐出順を制御する。また、同じく4つのパスで印刷する
図14の(b)に示す例では、色別吐出制御部12は、1つ目のパスから3つ目のパスでシアンのインク滴が吐出され、2つ目のパスから4つ目のパスでイエローのインク滴が吐出されるようにインク滴の吐出を制御する。
【0109】
色別吐出制御部12は、このようなインク滴の吐出順でインク滴が吐出されるように、メモリ13に記憶されたマスクパターンに基づいてインク滴の吐出を制御する。
【0110】
また、色別吐出制御部12は、各色のインク滴を吐出するそれぞれの最初のパスおよび最後のパスにおいて、変化する吐出デューティに基づいてインク滴の吐出を制御する。具体的には、各色のインク滴を吐出する最初のパスで吐出デューティが0%(最小値)から50%(最大値)にまで直線的に増加し、各色のインク滴を吐出する最後のパスで吐出デューティが50%から0%にまで直線的に減少する。色別吐出制御部12は、このような吐出デューティの変化にしたがって、第1制御部11aが行うインク滴の吐出制御と同様にしてインク滴の吐出を制御する。
【0111】
上記の色別吐出制御部12によるインク滴の吐出制御は、具体的には、次のようにして行われる。
【0112】
図14の(a)に示す例では、まず、1つ目のパスにおいて、主走査方向X1にキャリッジ2が移動するとき、ヘッドH1からシアンのインク滴が吐出される。続く2つ目のパスにおいて、主走査方向X2にキャリッジ2が移動するとき、ヘッドH1からシアンのインク滴が吐出されるとともに、ヘッドH2からマゼンタのインク滴が吐出される。さらに続く3つ目のパスにおいて、主走査方向X1にキャリッジ2が移動するとき、ヘッドH1からシアンのインク滴が吐出されるとともに、ヘッドH2からマゼンタのインク滴が吐出される。そして、最後の4つ目のパスにおいて、主走査方向X2にキャリッジ2が移動するとき、ヘッドH2からマゼンタのインク滴が吐出される。これにより、1つのバンド(ここでは「第1バンド」と称する)の印刷が完了する。
【0113】
続くバンド(ここでは「第2バンド」と称する)の印刷では、1つ目のパスにおいて、第1バンドの印刷における2つめのパスの走査時と同じ主走査方向X2であって、第1バンドの印刷における1つめのパスの走査時とは逆方向にキャリッジ2が移動する。このように、隣接するバンド同士では、同じパスの走査が逆の主走査方向Xで行われる。
【0114】
第1バンドにおいて、3つ目のパスでは、主走査方向X1にキャリッジ2が移動するので、
図3に示すように、ヘッドH1から吐出されたシアンのインク滴が印刷媒体101に着弾して、UVランプ22からの紫外線により硬化し、その上にヘッドH2から吐出されたマゼンタのインク滴が着弾して硬化する。一方、第2バンドにおいて、3つ目のパスでは、主走査方向X2にキャリッジ2が移動するので、ヘッドH2から吐出されたマゼンタのインク滴が印刷媒体101に着弾して、UVランプ21からの紫外線により硬化し、その上にヘッドH1から吐出されたシアンのインク滴が着弾して硬化する。このように、3つ目のパスでは、第1バンドにおいてシアンのドットの上にマゼンタのドットが形成され、第2バンドにおいてマゼンタのドットの上にシアンのドットが形成されるので、両バンド間で表面の状態が異なっている。
【0115】
しかしながら、両バンドとも、最後の4つ目のパスにおいて、マゼンタのインク滴が吐出されるので、それぞれの表面層には、必ずマゼンタのドットが形成される。これにより、印刷画像の各バンドの表面層の色差が少なくなるので、色縞を解消することができる。
【0116】
図14の(b)に示す例では、
図14の(a)に示す例のマゼンタのインク滴吐出順をイエローのインク滴吐出順に置き替えただけであるので、印刷画像における各バンドの表面層には、必ずイエローのドットが形成される。したがって、
図14の(a)に示す例と同様、印刷画像の各バンドの表面状態が均一となり、色縞を解消することができる。また、イエローは、縞を目立ちにくくするという特性を有しているので、縞の発生をより抑えるという観点から、イエローのドットを表面層に形成することが好ましい。
【0117】
ところで、
図14の(b)に示す例では、2つ目および3つ目のパスで吐出デューティの相違による濃淡(濃度の差)が生じてしまう。そこで、
図15に示す例のように、色別吐出制御部12は、
図14の(b)に示す例と同様、1つ目のパスから3つ目のパスでシアンのインク滴が吐出されるが、3つ目および4つ目のパスでイエローのインク滴が50%均一の吐出デューティに基づいて吐出されるようにインク滴の吐出を制御する。これにより、上記の濃度差を解消することができる。また、イエローのインクの場合、縞が目立ちにくいので、吐出デューティを変化させなくても縞の発生を抑えることができる。
【0118】
以上のように、第3モードでは、最後のパスの走査において、特定のインク、好ましくは1色以上のインクを吐出するようにして表面層を形成する。これにより、印刷画像における往路走査の部分と復路走査の部分とで表面層が同じ色となるので、特殊な構成のヘッドを用いることなく、色ムラを抑制することができる。
【0119】
なお、前述の例では、説明の便宜上、2種類のインクについての吐出順を説明したが、他の色のインクについては、最後のパス以外のパスで適宜吐出されるものとする。また、
図14および
図15に示す例では、1つ目のパスにおいて、シアンのインク滴を吐出するようにしているが、マゼンタ(
図14の(a))やイエロー(
図14の(b),
図15)も併せて吐出するようにしてもよい。
【0120】
〔ソフトウェアによる実現例〕
印刷装置1の制御ブロック(特に吐出制御部10)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0121】
後者の場合、印刷装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0122】
〔付記事項〕
印刷装置1の印刷方法は、光硬化型インクのインク滴が印刷媒体101に着弾した後に光を照射してインク滴を硬化させることでドットを形成する走査を、所定の単位領域に対して往路方向と復路方向とで交互に行い、インク滴の前記印刷媒体への着弾から硬化までの時間が往路方向と復路方向とで異なる印刷方法であって、複数回の走査のうち、単位領域の表面層を形成する後走査において、前記表面層におけるドット同士が接触しない密度でドットが形成されるようにインク滴の吐出を制御する。
【0123】
また、印刷装置1は、光硬化型インクのインク滴を印刷媒体101に吐出する複数のノズル23を有し、当該ノズル23が主走査方向X1,X2に直交する副走査方向Yに並ぶノズル列24を構成するヘッドH1〜H4と、所定の単位領域に対して主走査方向への走査を往復して複数回行うようにヘッドH1〜H4を主走査方向に移動させるとともに、主走査方向X1,X2への走査毎にヘッドH1〜H4を印刷媒体101に対して副走査方向Yに相対的に移動させる主走査制御部8および副走査制御部9と、印刷媒体101に吐出されたインク滴を硬化させることでドットを形成するように当該インク滴に光を照射し、ヘッドH1〜H4の主走査方向X1,X2の両側に配置された光源と、複数回の走査のうち、単位領域の表面層を形成する後走査において、前記表面層におけるドット同士が接触しない密度でドットが形成されるようにインク滴の吐出を制御する吐出制御部10とを備えている。
【0124】
上記の構成によれば、画像を完成させる後走査でドット同士を接触させないことにより、ドット同士が接触して平滑化することがなく、それ以前の主走査で形成されたドットによる凹凸状態に関わらず、表面層に凹凸を形成することができる。それゆえ、印刷画像の表面層が均一の凹凸状態となるので、印刷画像における往路走査の部分と復路走査の部分とで表面状態に区別がなくなり、光縞を見えなくすることができる。
【0125】
前記印刷方法は、前記後走査において形成される前記ドットのうちの少なくとも一部において、1つの前記ドットを形成するために吐出される前記インク滴の量が、前記後走査よりも前に行われる走査である前走査において形成される1つの前記ドットを形成するために吐出される前記インク滴の量よりも少なくなるように前記インク滴の吐出を制御することが好ましい。
【0126】
上記の構成によれば、インク滴の量を調整することにより、ドット同士が接触するか否かを制御することができる。それゆえ、色の濃度の高低に関わらず、画質に影響を与えずに光縞を低減させることができる。
【0127】
前記印刷方法は、複数回の前記走査のうち、前記前走査において形成される少なくとも一部の前記ドットについて、1つの当該ドットを形成するために吐出されるインク滴の量が、前記後走査において形成される1つの前記ドットを形成するために吐出される前記インク滴の量と同じとなるように前記インク滴の吐出を制御することが好ましい。
【0128】
上記の構成によれば、上記の構成によれば、前走査におけるドットが、後走査におけるインク滴の吐出量と同じ量で形成されるドットと、後走査におけるインク滴の吐出量よりも多い量で形成されるドットとを含むことができる。それゆえ、印刷画像の表面の光縞の抑制だけでなく、画像形成を担う前走査でも、大きさの異なるバリアブルドットを形成することができる。したがって、画像品位を向上させることができる。
【0129】
前記印刷方法は、後走査において、一定の吐出デューティに基づいて前記インク滴の吐出を制御することが好ましい。
【0130】
上記の構成によれば、後走査において吐出デューティを一定とすることにより、画像を完成させる後走査によって表面層の全体にドットが均一に形成される。それゆえ、走査領域の中でムラが生じることなく、効果的に光縞を抑制することができる。
【0131】
前記印刷方法は、前記後走査の前に行われる中間走査において、前記中間走査で形成される中間層におけるドット同士が接触しない密度で前記ドットが形成されるようにインク滴の吐出を制御するとともに、一定の吐出デューティに基づいてインク滴の吐出を制御することが好ましい。
【0132】
上記の構成によれば、後走査において吐出デューティを一定としない場合でも、その前段階における走査領域内でドットが均一に形成されるので、より効果的に光縞を抑制することができる。また、後走査において吐出デューティを一定とする場合には、より効果的に走査領域でのムラを抑制できることから、効果的に光縞を抑制できる。
【0133】
前記印刷方法は、複数回の走査のうち、後走査の前に行われる前走査において、前記印刷媒体の表面に吐出された少なくとも一部の前記ドット同士が結合する密度で前記ドットが形成されるように前記インク滴の吐出を制御することが好ましい。
【0134】
濃度が高い画像を形成する場合、複数回の全ての走査でドットが接触しないようにインク滴を吐出すると、印刷に必要な走査の回数が膨大となるため、走査数を増加させなければならず、印刷速度が大幅に低下する。これに対し、上記の構成によれば、濃度が高い画像では、前走査において、少なくとも一部のドット同士を接触させることにより、走査の回数を減らして画像を形成することができる。それゆえ、印刷速度の低下を抑えることができる。
【0135】
印刷装置1において、吐出制御部10は、ヘッドH1〜H4が印刷媒体101に対して副走査方向Yに相対的に移動するときにヘッドH1〜H4の後方となる側の端部から前方に所定の範囲のノズル23によって、最も少ない吐出量のインク滴を吐出するように設定するとともに、当該範囲に後走査においてインク滴を吐出する後走査範囲をませ、後走査範囲よりもヘッドH1〜H4の前方側の範囲に割り当てられることが好ましい。
【0136】
これにより、ヘッドH1〜H4の相対的移動方向における前後においてサイズの異なるドットを形成することができる。したがって、マルチパスで形成される走査順で所望のサイズのドットを形成することができる
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。