(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクリル酸系ポリマーの水性エマルジョン(固形分換算)を2〜20質量%、前記発酵セルロースを0.05〜0.6質量%、前記平板状顔料を含む色材を1〜30質量%含むことを特徴とする請求項1に記載のアイメイク用液体化粧料塗布具。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のアイメイク用液体化粧料組成物は、アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマーから選ばれるモノマー同士を重合することにより得られるガラス転移点20℃以下のアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンと、発酵セルロースと、少なくとも平板状顔料を含む色材と、水とを含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明に用いるアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンとしては、アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマー同士を重合することにより得られるガラス転移点20℃以下となる水性エマルジョンであれば、特に限定されず、各種の水性エマルジョンを用いることができる。
用いるアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンは、被膜形成剤として用いるものであり、好ましくは、造膜性、形成される被膜の弾力性の点から、ガラス転移点(Tg)が−20℃以上〜20℃以下となる水性エマルジョンの使用が望ましい。なお、ガラス転移点が20℃超過のものでは、乾燥した化粧料の弾力性、被膜形成性が低下し、化粧持ちが低下することとなり、好ましくない。
本発明において、ガラス転移点(Tg)は、次のようにして測定した。まず、樹脂をラッカー状とし、ラッカー状とした樹脂を成膜し、次いで溶剤を乾燥させることにより、フィルム化した。フィルム化したアクリル系樹脂を、リガク社製の示差走査熱分析器(DSC)を用いて、昇温速度10℃/分で、−20℃から+150℃まで昇温して示差走査熱量を測定し、得られた吸熱曲線を微分して変極点を求め、この変極点をTgと判断した。
【0013】
具体的に用いることができるアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンとしては、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョンであるヨドゾール GH800(ガラス転移点:
−15℃、固形分45%、アクゾノーベル社製)、ヨドゾール GH810F(ガラス転移点:10℃、固形分46%、アクゾノーベル社製)、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョンであるCOVACRYL MS11(ガラス転移点:0℃、固形分57%、SENSIENT社製)等が使用できる。
なお、必要に応じて、中和のために、例えば、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリエタノールアミン、L−アルギニン、アンモニア水、水酸化ナトリウム等を用いてもよい。
これらのアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンの含有量は、固形分(樹脂分)換算で液体化粧料組成物全量に対して、2〜20質量%(以下、単に質量%を「%」という)が好ましく、更に好ましくは、5〜15%とすることが望ましい。
これらの水性エマルジョンの含有量が、固形分(樹脂分)換算で2%以上とすることにより、耐水性を向上させることができ、一方、固形分(樹脂分)換算で20%以下とすることにより、塗布具の塗布部を乾燥せしめることなく、良好な塗布性能を発揮せしめることができる。
なお、被膜形成剤となる水性エマルジョンについて、これらのエマルジョン自体を安定化させる目的で界面活性剤が用いられることがある。ここでの界面活性剤は、液体化粧料の性能である耐水性および肌密着性への影響が少ないため、添加量は特に限定されない。
【0014】
本発明に用いる発酵セルロースは、アセトバクター属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属等に分類されるセルロース産生菌が生産するセルロースをいい、例えば、酢酸菌を適正な培地で通気撹拌培養し、菌体から得られたセルロース繊維を分離・回収したものであり、水媒体中で非常に細かい三次元網目構造を形成する繊維性物質である。
用いることができる発酵セルロースは、市販のものを使用してもよいが、Acetobacter xylinum、Acetobacter pasteurianus等の酢酸菌を窒素源、炭素源、水、酸素などの栄養素を含有する培地で培養することによって得られるものを用いてもよい。例えば、ココナッツの果肉や果汁を上記酢酸菌その他のセルロース生産菌で発酵させて調製したものを本発明の発酵セルロースとして用いてもよい。
【0015】
これらの発酵セルロースの含有量は、液体化粧料組成物全量に対して、0.05〜0.6%を含有することが好ましく、更に好ましくは、0.07〜0.4%とすることが望ましい。
これらの発酵セルロースの含有量、0.05%以上とすることにより、平板状顔料の沈降を抑制し、光輝性で濃密なラインを描くことができ、一方、0.6%以下とすることにより、光輝性で伸びの良いラインを描くことができる。
【0016】
本発明では、色材として、少なくとも平板状顔料を含む色材が用いられる。
本発明に用いる平板状顔料としては、例えば、マイカチタン、カルミン被膜マイカチタン、酸化クロム被膜マイカチタン、酸化鉄被膜マイカチタン、酸化鉄・カルミン被膜マイカチタン、酸化鉄・紺青被膜マイカチタン、青被覆マイカチタン、紺青被膜マイカチタン、ベンガラ被膜マイカ、ベンガラ被膜マイカチタン、ベンガラ・カルミン被膜マイカチタン、ベンガラ・酸化鉄被膜マイカチタン、ベンガラ・紺青被膜マイカチタン、ベンガラ・酸化鉄・紺青被膜マイカチタンなど、また、ガラスフレーク又は塊状フレークを母材とした上に、金属もしくは金属酸化物をコートした光輝性顔料などの少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)が挙げられる。
好ましくは、塗膜の均一性及び塗布性、優れた光輝性の描線が得られる点から、酸化鉄被膜マイカチタン、マイカチタン、青被覆マイカチタンが挙げられ、特に、酸化鉄被膜マイカチタン、マイカチタンの使用が望ましい。
これらの平板状顔料において、好ましくは、平均粒子径は5〜100μmとすることが望ましく、更に好ましくは、10〜60μmであるものが望ましい。
これらの平均粒子径サイズの平板状顔料と発酵セルロースを配合することにより、水中での凝集がなく高分散性を実現でき、十分な色相と塗布具内での詰まりがなく、優れた吐出性能を実現することができるものとなる。ここで、本発明において、「平均粒子径」は、デジタルマイクロスコープVHX−2000(キーエンス社製)より求めた値である。
これらの平板状顔料の含有量は、塗布性能、使用特性、光輝性の描線を得るために、液体化粧料組成物全量に対して、1〜30%、好ましくは、5〜25%が望ましい。
この平板状顔料の含有量が1%以上とすることにより、良好な使用性、光輝性のある塗布性の良好なものが得ら、一方、塗布性能、使用特性、光輝性の描線の点から30%以下とすることが望ましい。
【0017】
本発明において、アイメイク用液体化粧料としての着色の点から、該平板状顔料以外の顔料を用いることができる。
用いることができる顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄粒子(黒酸化鉄粒子、黄酸化鉄粒子等)、酸化チタン、紺青、群青、青色1号、弁柄、酸化クロム、水酸化クロム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、青色2号、青色404号、赤色201号、赤色202号、赤色220号、赤色102号、赤色104号、黄色4号、黄色4号Alレーキなどの顔料や、アルミコーティングポリエステルフィルムなどの少なくとも1種が挙げられる。
この顔料(上記平板状顔料を除く)の含有量の範囲は、後述するように、該顔料と平板状顔料を含む色材との合計含有量の範囲内で好適な量が調整される。
【0018】
これらの平板状顔料を含む色材の含有量は、液体化粧料組成物全量に対して、1〜30%が好ましく、更に好ましくは、5〜25%である。
これらの平板状顔料を含む色材の含有量が1%未満では、発色が薄くて化粧料として不十分となり、一方、30%を超えると、粘度が高くなり過ぎて、液体化粧料塗布具に用いた場合に液がスムーズに吐出されなくなり、好ましくない。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、液体化粧料組成物に用いられている上記顔料以外の有機顔料、染料などの色材を用いてもよい。
【0019】
本発明のアイメイク用液体化粧料組成物は、水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等を含む)を溶媒とする。この水の含有量は、上記各成分、後述する任意成分を含有した残部となるものである。
更に、本発明のアイメイク用液体化粧料組成物には、前記各成分の他に、通常の液体化粧料組成物に用いられる任意成分などを含有せしめることができる。具体的には、界面活性剤、顔料分散剤、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、キレート剤、保湿剤、美容成分、香料、粘度調整剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で適宜量含有せしめることができる。
【0020】
用いることができる界面活性剤としては、例えば、ノニオン系、カチオン系、アニオン系のいずれの種類の界面活剤が使用可能である。具体的には、レシチン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸(燐酸エステル)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル・アルキル硫酸塩(スルホン酸エステル)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。
これらの界面活性剤の含有量は、液体化粧料全量に対して、
3.2%以下
、好ましくは、0.2〜3.2%であることが好ましく、
3.2%を超えて含有すると耐水性に劣り、充分な固着力を得ることが出来ない。
【0021】
本発明では、顔料の分散性を更に向上させるために、分散剤を必要に応じて含有することができる。
用いることができる分散剤としては、特に限定されず、例えば、AMPHOMER HC、アクアデュウSPA−30(ポリアスパラギン酸ナトリウム:味の素社製)、NIKKOL BB30(ベヘニルポリオキシエチレン30モル付加物、日光ケミカルズ社製)、Luvimer 100P(アクリル酸アルキル共重合体、BASF社製)などを用いることができ、これらの分散剤は、液体化粧料全量に対して、0.1〜5%含有することができる。
用いることができるキレート剤としては、例えば、エデト酸又はその塩、エチレンジアミン三酢酸又はその塩、グルコン酸又はその塩、フィチン酸又はその塩、ピロリン酸又はその塩、ポリリン酸又はその塩、メタリン酸又はその塩、及びヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酒石酸、グルコン酸、フィチン酸等が挙げられ、これらのキレート剤は、液体化粧料全量に対して、0.01〜0.5%含有することができる。
用いることができる保湿剤としては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ペンチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の水に可溶なグリコール類等を適宜量用いることができる。
【0022】
用いることができる防腐剤としては、パラベン類、デヒドロ酢酸ナトリウム、フェノキシエタノールなどが挙げられる。なお、本発明の防腐剤には防菌剤を含むものであり、防腐剤であるパラベン類としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル等を適宜量用いることができる。
【0023】
本発明のアイメイク用液体粧料組成物は、安定性、塗布性の点から、EMD型粘度計による温度25℃、ずり速度76.6S
−1で(20rpm)の粘度は30〜200mPa・sとすることが好ましい。
上記粘度範囲における更に好ましい範囲は、アイメイク用液体化粧料組成物の配合成分の種類、用途(アイライナー、アイシャドウ、皮膚化粧料等)により変動するものであるが、更に好ましくは、40〜150mPa・sとすることが望ましい。
この粘度値を30mPa・s以上とすることにより、光輝性で濃密なラインを描くことができ、一方、200mPa・s以下とすることにより、本発明の塗布手段として筆穂又はペン芯を用いる液体化粧料塗布具に内蔵される液体化粧料をスムーズに吐出せしめることができることとなる。
【0024】
本発明において、粘度測定条件(後述する実施例等も含む)は、具体的には、東機産業社製、EMD型粘度計を用いて各ずり速度で測定した値を意味する。
更に好ましくは、温度25℃、ずり速度38.3S
−1で(10rpm)の粘度を40
〜350mPa・s、また、ずり速度383s
−1(100rpm)の粘度を20〜70mPa・sとすることが望ましい。
また、上記粘度範囲にするためには、平板状顔料を含む色材、水、被膜形成剤となる水性エマルジョン、発酵セルロースなどの各成分の量を好適に組み合わせるにより行うことができる。
【0025】
更に、本発明のアイメイク用液体化粧料組成物は、塗布時ののびの良さの点から、Wilhelmy法(プレート法)による温度25℃での表面張力を25〜60mN/mの範囲とすることが好ましく、より好ましくは、30〜45mN/mの範囲が望ましい。この表面張力が25mN/m以上とすることにより、塗布描線に滲みやムラがなく、スムーズな塗布が可能となり、また、60mN/m以下とすることにより、塗布液の追従性を良好にして、スムーズな塗布を行うことができる。
本発明において、表面張力の測定は、協和界面化学社製のCBVP-Z型表面張力計(プレート法)を用い、温度25℃で得られた値をいう。
なお、上記表面張力の範囲にするためには、平板状顔料を含む色材、水、被膜形成剤となる水性エマルジョン、発酵セルロースなどの各成分の量を好適に組み合わせるにより行うことができる。
【0026】
このように構成される本発明のアイメイク用液体化粧料組成物では、アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマーから選ばれるモノマー同士を重合することにより得られるガラス転移点20℃以下のアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンと、発酵セルロースと、少なくとも平板状顔料を含む色材と、水とを含有することにより、低粘度でありながら平板状顔料の沈降を抑制し、かつ、平板状顔料を含む色材で光輝性の優れたラインを綺麗に描けることができ、塗布しても皮膚の上で掠れず、光輝性の色むらもなく、タレ落ち(ボタ落ち)の少ない低粘度で光輝性の描線が濃く描けるアイメイク用液体化粧料組成物が得られることとなる。
また、本発明の液体化粧料組成物では、上述の配合特性を有するために、細長い筆穂を用いた場合にも、色相の上下差による光輝性の描線の色むらもなく、光輝性の描線が濃く描ける液体化粧料組成物が得られることとなる。
【0027】
また、上記構成となる本発明のアイメイク用液体化粧料組成物は、塗布部が筆穂又はペン芯を備えた液体化粧料塗布具に収容して使用に供されることとなる。
本発明において、好適なアイメイク用液体化粧料塗布具としては、目元周りなどのポイントメイクに適したアイライナー、アイシャドウ、アイブロウ、または、皮膚に液体化粧料組成物(塗布液)を好適に塗布することができる構造となる液体化粧料塗布具であれば、特に限定されないが、好ましくは、使用性、簡便性、塗布性に優れる、中綿に液体化粧料を保持させる中綿式容器又は枚葉体に液体化粧料を保持させるコレクター式容器を有するものや、液体化粧料組成物が直接塗布液貯蔵部に貯蔵され、塗布液の吐出機構がノック式、回転(回動)式の液体化粧料塗布具などが挙げられる。
【0028】
本発明において、好ましいアイメイク用液体化粧料塗布具としては、少なくとも塗布部と塗布液貯蔵部を備え、該塗布部は穂筆からなり、該筆穂の繊維は断面が円形以外のものを含み、前記塗布液貯蔵部に本発明の液体化粧料組成物が貯蔵された液体化粧料塗布具が好ましい。
この形態のアイメイク用液体化粧料塗布具としては、
図1〜
図8に示す、液体化粧料塗布具Aが挙げられる。
この実施形態のアイメイク用液体化粧料塗布具Aは、
図1に示すように、塗布具本体となる軸本体10の前方内部に設けられた上記構成となる本発明の液体化粧料組成物である塗布液の貯留部(収容部)11と、前記軸本体10の前端部に装着され、使用開始前は貯留部(収容部)11を密閉する栓体12と、前記栓体12に装着され、前記貯留部(収容部)11の密閉状態を維持し、前記栓体12から取り外されることにより、前記貯留部(収容部)11の密閉状態を開放し、塗布液を貯留部(収容部)11から吐出状態になすシールボール13を備えている。
【0029】
また、この液体化粧料塗布具Aは、前記軸本体10の前端部の外周面に取り外し可能に装着されたストッパー14と、使用開始時に前記ストッパー14が取り外されることによって、そのストッパー14の長さ分、軸方向に移動して軸本体10に直に接合する先軸20とを備えている。
この先軸20には、先軸本体21と、前記先軸本体21に装着された、貯留部11から筆穂(塗布部)23への塗布液の供給を可能とするパイプ継手22と、前記パイプ継手22と筆穂(塗布部)23とを繋ぐ塗布液導通管24とを備えている。
【0030】
このように構成されているため、
図1に示す状態(使用開始前の状態)にあっては、ストッパー14が軸本体10に装着されているため、先軸20は移動することなく、貯留部(収容部)11を密閉する栓体12(シールボール13〉によって、前記貯留部(収容部)11の密閉状態が維持される。
そして、
図2に示すように、使用開始時にストッパー14が取り外されることによって、先軸20は、ストッパー14の長さ分、軸方向に移動して、軸本体10に当接する。即ち、先軸20のパイプ継手22と前記栓体12とが接合し、パイプ継手22の先端部によって栓体12に装着されているシールボール13が取り外される。
その結果、貯留部(収容部)11の密閉状態が開放され、貯留部11から筆穂(塗布部)23への塗布液の供給が可能な状態になされる。
【0031】
また、前記軸筒本体10の後端部には、塗布液吐出機構30が設けられている。この塗布液吐出機構30は、天蓋31を回転することによって、ピストン32を所定距離前進させ、塗布液を所定量導出するように構成されている。また、筆穂23は、キャップ40によって覆われている。
なお、
図1、2において、符号15は、塗布液を撹拌する撹拌ボールである。また前記塗布液吐出機構30については、本出願人が先に提案した特開2012−157611号公報に開示されている。前記塗布液吐出機構30は、天蓋31を回転させることにより、塗布液を導出する回転式のみならず、天蓋31を押圧することにより、塗布液を導出するノック式であっても良い。
【0032】
このように構成されたアイメイク用液体化粧料塗布具Aにあっては、まずストッパー14を取り外し、キャップ40(先軸本体21)を軸筒本体10の後方側へ押す(移動させる)。これにより、前記パイプ継ぎ手22の端部がシールボール13に当接し、前記シールボール13をシール受け12から取り外し、塗布液の供給可能な状態となす。
その後、キャップ40を取り外し、天蓋31を回転させ、ピストン31を所定距離前進させることにより、塗布液を筆穂23に対して所定量導出し、使用者の被塗布部位に対して塗布液を塗布する。
【0033】
次に、筆穂について、
図3乃至
図8に基づいて具体的に説明する。
筆穂23は、先端がテーパ加工された直線状の合成繊維からなり、かつ断面が非円形状の異形断面の繊維のみからなるものであり、本実施形態では断面が非円形状の異形断面の繊維のみからなる筆毛23a,23bの集合体であって、前記異形断面の筆毛23a、23bは、断面形状が異なる複数の種類の筆毛から構成されている。
そして、これらの筆毛23a、23bはその一端部において、一つのリング状の鍔状溶着端部23Aを形成するように互いに溶着されている。
また、前記鍔状溶着端部23Aの中央部には、塗布液の流通性、補給性を良くするための孔23Bが設けられている。なお、塗布液等の液体をそれほど頻繁に流通、補充する必要がない場合において孔23Bは、必ずしも形成される必要はない。
【0034】
また、異形断面の筆毛とは、筆毛の軸方向に垂直な面の形状が円形以外のものをいい、例えば、断面形状が略星型、略まゆ型、略十字状、略三角形状、略Y字状、略半円状、略矩形状等のものを挙げることができ、少なくとも1つ以上の突部を有する形状のものなどが挙げられる。
【0035】
ここでは、異形断面の筆毛について、
図4及び
図5に基づいて、断面形状が略星型、略まゆ型の筆毛を例にとって説明する。尚、断面形状が略星型、暗まゆ型の筆毛を例にとって説明するが、本発明は略星型、絡まゆ型に限定されるもの
ではなく、また2種類の異形断面の筆毛に限定されるものではなく、少なくとも1種類、または、2種類以上の異形断面の筆毛であっても良い。
筆毛の素材として使用される合成樹脂製繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート共縮合重合体等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフイン、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド等の熱可塑性ポリマーを溶融紡糸して得られた合成樹脂製繊維を挙げることができる。
【0036】
図4に示すように、断面形状が略星型の筆毛23aにあっては、凸部先端と相対向する凹部間の寸法Lalは、120μm〜200μmであり、凸部先端と相対向する凸部の間の寸法La2は、140μm〜250μmの範囲内にあるのが好ましい。
前記寸法Lalを小さく、かつ寸法La2を大きくすることが、筆毛の外周面に形成される凹凸を深く(大きく)することができ、多くの塗布液を保持することができるため、好ましい。一方において、前記寸法Lalを小さく、かつ寸法La2を大きくすると、筆の腰が弱くなり、快適に塗布することができないため、上記範囲内に形成するのが好ましい。
【0037】
また、
図5、
図6に示すように、断面形状が略まゆ型の筆毛23bにあっては、その断面形状は、
図5は略同形の二つの円を連結した形状である。
図6は略同形の二つの円を長方形で連結した形状である。
また、略まゆ型の筆毛23bの外周面に形成される凹部深さ寸法(LblとLb2の差)を、大きくするのが塗布液の含み量を多くできることから好ましい。
しかしながら、連結部長さ寸法Lb2が小さすぎる場合には、二つの円の連結状態が破損する虞があり、破損した場合、通常の円形断面の筆毛となり、塗布液の含み量を多くできないため、好ましくない。
したがって、Lbl、Lb3(線対称軸までの寸法)は、70μm〜200μmであり、Lb2は、20μm〜190μmであり、Lb4は、80μm〜390μmの範囲内、より望ましくはLb1、Lb3は、100μm〜150μmであり、Lb2は、50μm〜100μmであり、Lb4は、150μm〜300μmの範囲内とすると、筆毛先端をテーパ加工した際に繊維が二股になりにくく、テーパ加工領域にも窪みが残りやすくなるのが好ましい。
【0038】
また、筆穂23は、断面形状が異なる複数の種類の筆毛、例えば、前記した断面形状が略星型の筆毛と、断面形状が略まゆ型の筆毛とによって構成されている。
このように、断面形状が異なる複数の種類の筆毛を用いるのは、以下の理由から好ましい態様となる。
(1)断面形状が同一の筆毛を用いた場合には、外周面に形成された凹凸部が互いに嵌まり合い、筆毛の外周面に形成された凹部の一部あるいは全部を埋め、筆毛の間の空隙(隙間)を減少させ、筆穂に含む塗布液を減少させる。一方、断面形状が異なる複数の種類の筆毛を用いた場合には、外周面に形成された凹凸部が嵌まり難く、筆毛問の空隙(隙間)の減少が抑制される。
(2)また、断面形状が同一の筆毛を用い、筆毛の外周面に形成される凹凸部を大きくした場合には、筆の腰が弱くなる傾向にある。一方、断面形状が異なる複数の種類の筆毛を用いることにより、一の筆毛の外周面の凹凸部を大きくした場合においても、他の筆毛によって筆の腰の強さを与えることができ、好適な塗布性を得ることができる。
【0039】
また、前記筆毛に使用される上記繊維の太さ等は、必ずしもこれに限定されるものではないが、前記繊維の軸線に垂直な断面の相当径の最小径(直径)で、0.05乃至0.3mm程度、長さが5乃至100mm程度の短繊維が使用される。
【0040】
また、
図7、
図8に示すように、筆毛(合成樹脂製繊維)23a、23bの表面部分には、凹部23a1、23b1を形成しても良い。このように、合成樹脂製織稚からなる筆毛23a、23bの先端部分から長手方向(軸線方向)における繊維表面に、凹部23a1、23b1が形成されているため、筆毛(合成樹脂製繊維)23a、23bの間に多くの微少な空隙が生じる。
その結果、これらの空隙に塗布液が浸透して、多くの液体が筆毛(合成樹脂製繊維)間に保持される。
【0041】
また、このような繊維の表面に形成される凹部の大きさは、特に限定されるものではないが、液体の保持力の観点から、一般に、凹部の深さが20μm以下、特に5乃至10μmの範囲にあり、凹凸の平均ピッチが0.1乃至0.5mmの範囲にあることが好ましい。
また、筆毛(合成樹脂製繊維)23a、23bの表面部分に、凹部が形成された場合においても、前記凹部における軸線に垂直な断面の相当径が0.05mm以上になされる。
【0042】
尚、凹部23a1、23b1は、ラセン状に、筆毛(合成樹脂製繊維)23a,23bの一端部側から他端部側に連続して形成されていても良い。
また、筆毛(合成樹脂製繊維)23a、23bの表面部分に、凸部を形成しても良く、この凸部は、前記凹部と同様に、ラセン状に一端部側から他端部側に連続して形成されていても良い。一般に、凸部の高さが20μm以下、特に5乃至10μmの範囲にあり、凸部の平均ピッチが0.1乃至0.5mmの範囲にあることが好ましい。
【0043】
なお、筆毛(合成樹脂製織維)内に酸化チタン等を含有させて、23a、23bの表面部分に凸部を形成し、繊維聞に隙間を設け、繊維聞の接着を抑制する構成にしてもよい。
また、前記筆穂23は、断面形状が異なる複数の種類の筆毛で構成されていれば良く、前記断面形状が略星型の筆毛と、断面形状が略まゆ型の筆毛とに限定されるものではない。例えば、略十字状、略三角形状、略Y字状、略半円状、略矩形状等のものであっても良く、また2種類に限定されるものでなく、2種類以上の異形断面の筆毛を混合しても良い。
この混合比率は、筆穂の用途、特に要求される保持性の程度に応じて適宜設定されるが、例えば、断面形状が星型の筆毛と断面形状がまゆ型の筆毛を混合した場合、その混合割合は、80:20〜20:80であることが保持力の実質的な向上効果の観点から好ましい。
また、上記形態では、筆穂23のすべての繊維は断面が円形以外のものを用いたが、断面が円形なものと、上記各異形断面(好ましくは混合割合50%以上)とを混合したもの、異形断面が1つ(単独)のものであってもよい。
【0044】
このように構成されるアイメイク用液体化粧料塗布具Aでは、塗布部となる筆穂に断面形状が異なる異形断面の複数種類の筆毛を用いた場合には、筆毛問の空隙(隙間)の減少が抑制され、筆の腰の強さを与えることができ、しかも、上記本発明の液体化粧料組成物は皮膚上に塗布しても皮膚の上で掠れず、タレ落ち(ボタ落ち)の少ない低粘度で色むらもない光輝性の描線が濃く描ける特性のものであるので、該液体化粧料組成物の特性と、液体化粧料塗布具の構造特性との相乗作用により、塗布液となる液体化粧料組成物を筆穂に十分に含ませることができ、快適に塗布することができる液体化粧料塗布具を得ることができる。
【0045】
図9は、本発明のアイメイク用液体化粧料組成物を収容したコレクタータイプの直液式の液体化粧料塗布具を示すものである。
この液体化粧料塗布具Bは、例えば、
図9に示すように、本発明の液体化粧料組成物50を中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となるタンク部51に充填してなるものが挙げられる。このタンク部51の前部には、タンク部51内の空気が温度上昇等によって膨張した場合にタンク部51から押し出される液体化粧料50をペン先や空気孔からボタ落ちさせないために一時的に保溜する枚葉体(インキ保溜体、コレクター部材)52が内蔵され、コレクター部材52の先端部には塗布体となる筆型のペン先(筆穂)53が設けられた構成となっている。筆型のペン先(筆穂)53としては、上記液体化粧料塗布具Aで用いた異形断面の筆穂23などを用いることができる。
【0046】
タンク部51からペン先53への液体化粧料の導出は、コレクター部材52の中心孔に付設された塗布液流路54を設けた中継芯55を介してタンク部51から液体化粧料50を塗布部となるペン先53に導出することにより行われる。
なお、
図9中の56,57はホルダー部材であり、58はタンク部51の後部に固着される後部軸体であり、59はインナーキャップを有するキャップである。また、中継芯55を介在させることなく、ペン先53の後部をタンク部51内に直接配置して液体化粧料の導出を行ってもよいものである。
この形態の液体化粧料塗布具Bでは、キャップ59を取り外すことにより、上記液体化粧料塗布具Aと同様に使用に供されることとなる。
【0047】
図10は、本発明のアイメイク用液体化粧料組成物を中綿式タイプの液体化粧料塗布具に用いたものである。
この形態の液体化粧料塗布具Cは、例えば、
図10に示すように、化粧具本体60内に内軸61を有し、該内軸61内には本発明の液化粧料組成物を含浸した中綿等からなる含浸体62が収容され、該含浸体62の先端側には、液体化粧料を塗布するための上記液体化粧料塗布具Aで用いた異形断面の筆穂からなる塗布体63が設けられており、内軸61の後端に尾栓64が固着される構造が挙げられる。なお、65は、内キャップ部66を有するキャップ体である。この形態の液体化粧料塗布具Cでは、キャップ65を取り外すことにより使用に供されることとなる。
【0048】
このように構成される
図9又は
図10に示すアイメイク用液体化粧料塗布具においても、塗布液となる本発明の液体化粧料組成物を筆穂に十分に含ませることができ、快適に塗布することができる液体化粧料塗布具を得ることができる。
なお、上記実施形態の液体化粧料塗布具A〜Cでは、穂筆の繊維が断面が円形以外の異形断面の筆穂を用いたが、本発明の液体化粧料組成物は上述の如く、皮膚上に塗布しても皮膚の上で掠れず、タレ落ち(ボタ落ち)の少ない低粘度で光輝性の描線が濃く描ける特性を有するので、上記各実施形態A〜Cの筆穂として、先端がテーパ加工された直線状の合成繊維からなり、かつ断面が円形状の断面であってもよいものである。
【実施例】
【0049】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0050】
〔実施例1〜6及び比較例1〜2〕
下記表1に示す配合処方のアイメイク用液体化粧料組成物(配合単位:質量%、全量100質量%)をメディアミルによる湿式粉砕処理とディスパーミキサーによる混合撹拌により調製し、上述の測定方法により、各液体化粧料組成物の各ずり速度における粘度値、粒子径、表面張力を測定すると共に、下記構成の液体化粧料塗布具を用いて、下記各評価方法により、耐ボタ落ち性(液保持力)、筆穂内での光輝性の色むら(色相上下差)、塗布性能(掠れの有無、光輝性のむらの有無)、安定性、化粧持ちについて評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0051】
(液体化粧料塗布具の構成)
図1〜
図3に準拠する液体化粧料塗布具を用いた。
筆穂として下記構成を用いた。
(1)星形断面の繊維(
図4参照):La1 130mm、La2 150mm
まゆ型断面の繊維(
図5参照):Lb1 95mm、Lb2 75mm、Lb3 90mm、Lb4 185mm、星:まゆの混合割合は、70:30とした。
【0052】
〔耐ボタ落ち性(液保持力)の評価方法〕
各液体化粧料組成物(塗布液)を深皿容器に移し、塗布部の先端から1.5mmを塗布液に浸した後、塗布部全体に塗布液が浸された状態で塗布部に含まれた液の量を測定し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:30mg以上
○:25mg以上〜30mg未満
△:15mg以上〜25mg未満
×:15mg未満
【0053】
〔筆穂内での光輝性の色むら(色相上下差)の評価方法〕
各液体化粧料組成物を充填し、塗布部である筆穂に塗布液を吐出させた後、キャップをして塗布部を下向きにして7日間静置し、筆穂先端の濃度と先軸本体先端付近の濃度との差、及び、描画したときの描線内での濃度差・色相差を目視にて下記評価基準で官能評価した。
評価基準:
◎:筆穂内でも描線内でも全く濃度差・色相差が見られない。
○:筆穂内で僅かな濃度差・色相差が見られるが、描画した場合には描線の描き始めと後で全く濃度差・色相差は感じられない。
△:筆穂内で明らかに濃度差・色相差が見られ、描画した場合にも描線の描き始めと後で明らかな濃度差・色相差が見られる。
×:筆穂内での顔料の沈降が確認され、描画できないか描画できても掠れが目立つ。
【0054】
〔塗布性能(掠れの有無、光輝性のむらの有無)の評価方法〕
図2に示す筆ペンタイプの化粧料容器に各液体化粧料を充填し、手の甲に幅1〜2mm、長さ約5cmの線を5本引き、描き具合、描線濃度を下記評価基準で官能評価した。
評価基準:
◎:掠れ、光輝性のむらもなく、光輝性の描線が濃く、描きやすい。
○:上記◎より若干劣り、掠れ、光輝性のむらもなく、描きやすく、光輝感を有する濃度がある。
△:多少の掠れ、にじみがあるが、実用域と判断される。
×:掠れ、にじみがあり、不満を感じる。
【0055】
(安定性の評価方法)
内容液である各液体化粧料組成物を蓋付きガラス容器に入れ、50℃の恒温槽に7日保管し、その外観を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:上澄みが5(mm)以下である。
△:上澄みが5(mm)を超え、8(mm)以下である。
×:上澄みが8(mm)を超える。
【0056】
(化粧持ちの評価方法)
図2に示す筆ペンタイプの化粧料容器に各液体化粧料を充填し、アイラインを引き、5時間経過後のアイラインの状態により、化粧持ちを下記評価基準で官能評価した。
評価基準:
○:変化なし。
△:少し薄くなるが、ほぼ変化なし。
×:ぽろぽろはがれ落ちたり、ラインが広がり、化粧が崩れている。
【0057】
【表1】
【0058】
上記表1中の*1〜*6は、下記のとおりである。
*1:クロイゾネ ゴールデンブロンズ、平均粒子径30μm、BASF社製
*2:メタシャイン MT1080RS、平均粒子径80μm、日本板硝子社製
*3:TAROX BL100P、平均粒子径0.4μm、チタン工業社製
*4:ヨドゾールGH800F(ガラス転移点:−15℃、固形分45%)、アクゾノーベル社製
*5:COVACRYL MS11(ガラス転移点:0℃、固形分57%)、SENSIENT社製
*6:Luvimer 100P、BASF社製
【0059】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜6のアイメイク用液体化粧料組成物は、本発明の範囲外となる比較例1〜2に較べて、耐ボタ落ち性(液保持力)、筆穂内での光輝性のむら(色相上下差)、塗布性能(掠れの有無、光輝性のむらの有無)、安定性、化粧持ちに優れていることが判明した。
比較例を個別的に見ると、比較例1は発酵セルロースの配合しないものであり、比較例2は水性エマルジョンを配合しないものであり、これらの場合は、本発明の効果を発揮できないことが判った。
また、上記実施例は、塗布部(筆穂)23の繊維断面を円形および異形断面の混毛としたが、塗布部(筆穂)23の断面を円形断面の繊維:外径φ:0.15mm、全長17mm、鍔状溶着端部23Aの外径φ3mmとし、先端をテーパ形状に加工したものとした場合も、実施例1〜5に較べ、耐ボタ落ち性(液保持力)、筆穂内での濃度上下差(色相上下差)、塗布性能(掠れの有無、光輝性のむらの有無)は若干劣ったが(各評価順次△、○、○)、安定性(評価:○)であり、比較例1〜2に較べて優れていることが判った。