特許第6641199号(P6641199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641199
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/00 20060101AFI20200127BHJP
   E05D 15/58 20060101ALI20200127BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20200127BHJP
   E05D 15/48 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   E05D15/00 C
   E05D15/58 A
   E05D15/06 122
   E05D15/48 B
   E05D15/06 124A
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-51257(P2016-51257)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-166183(P2017-166183A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平木 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】坂口 征弘
(72)【発明者】
【氏名】菊野 亘
(72)【発明者】
【氏名】松尾 聖
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−047083(JP,U)
【文献】 実開平04−002879(JP,U)
【文献】 実開昭61−124583(JP,U)
【文献】 特開昭57−081578(JP,A)
【文献】 実開平03−075281(JP,U)
【文献】 実開昭60−187276(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第01795682(EP,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1694995(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103827429(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00 − 15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に設けられたレールを有する上枠と、前記開口部内に配置される障子と、前記障子に連結して当該障子を前記レールに沿って移動可能に吊下げ支持する吊車とを備えた建具であって、
前記吊車は、
前記障子に連結される基準吊車と、
前記障子に対して移動可能に連結し、前記基準吊車との間隔が第1の間隔または当該第1の間隔よりも大きい第2の間隔に変更される可動吊車とを備え、
前記障子には、
当該障子に対して移動可能に支持され、前記開口部の下縁部に設けられた下軸受け部に係合して前記基準吊車とともに鉛直軸を中心とした当該障子の回転軸となる下軸部材と
1ユーザ操作と第2ユーザ操作とを受け付ける操作部材と、が設けられ、
前記操作部材が前記第1ユーザ操作を受け付けた場合には、前記下軸部材が前記障子に対して移動して前記下軸受け部に係合する係合位置に位置付けられるとともに、前記可動吊車が前記障子に対して移動して前記第1の間隔に変更され、
前記操作部材が前記第2ユーザ操作を受け付けた場合には、前記下軸部材が前記障子に対して移動して前記下軸受け部に係合しない非係合位置に位置付けられるとともに、前記可動吊車が前記障子に対して移動して前記第2の間隔に変更され、
前記上枠には、前記障子が前記レールに沿って移動され当該障子を収納するための収納位置に位置した状態で、前記操作部材が前記第1ユーザ操作を受け付けた場合に、前記可動吊車を当該上枠の見込み方向に沿って当該上枠の内外に挿通可能とする切欠部が形成されている
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記上枠における前記下軸受け部に対向した位置には、上軸受け部が設けられ、
前記障子には、
当該障子に対して移動可能に支持され、前記上軸受け部に係合して前記下軸部材とともに鉛直軸を中心とした当該障子の回転軸となる上軸部材がさらに設けられ、
前記上軸部材は、前記操作部材が前記第1ユーザ操作を受け付けた場合に前記障子に対して移動して前記上軸受け部に係合する係合位置に位置付けられ、前記操作部材が前記第2ユーザ操作を受け付けた場合に前記障子に対して移動して前記上軸受け部に係合しない非係合位置に位置付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記基準吊車は、
前記レールに沿って転動する吊車本体と、
前記障子に固定され、鉛直軸を中心軸として回転可能に前記吊車本体を支持する支持部材とを備え、
前記上枠には、前記障子が前記収納位置に位置付けられた場合に、前記吊車本体に係合する係合部材が設けられ、
前記支持部材は、前記吊車本体及び前記係合部材が互いに係合した状態で、前記下軸部材とともに鉛直軸を中心とした前記障子の回転軸となる
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記障子は、複数設けられ、
前記基準吊車、前記可動吊車、及び前記操作部材は、複数の前記障子に対してそれぞれ設けられ、
前記下軸受け部は、複数の前記障子の数と同一の数だけ設けられとともに前記障子の移動方向に離間して配置され、
前記収納位置は、複数の前記障子毎に異なる位置に設定され、
複数の前記可動吊車は、当該可動吊車に対応する前記障子が当該障子に対応する前記収納位置に位置した状態で、当該障子に対応する前記操作部材が前記第1ユーザ操作を受け付けた場合に、同一の前記切欠部を介して前記上枠の内外に挿通可能とする
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の建具。
【請求項5】
前記操作部材は、前記障子に設けられた操作ハンドルを有し、
前記障子には、
前記第1ユーザ操作または前記第2ユーザ操作による前記操作部材の操作力を前記可動吊車及び前記下軸部材に伝達し、前記可動吊車及び前記下軸部材を前記障子に対して移動させる操作力伝達機構をさらに備え、
前記操作力伝達機構は、前記障子の框に設けられている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動間仕切り等の建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内部の空間を2つの空間に仕切った閉塞状態と、当該2つの空間を繋げて仕切りのない1つの空間にした解放状態とを切り替えることができる移動間仕切り等の建具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の建具(吊下移動間仕切)は、建物の開口部に設けられた上枠と、開口部内に配置される障子(矩形パネル)と、上枠のレールに沿って移動可能とし、障子に連結して当該障子をレールに沿って移動可能に吊下げ支持する2つの吊車(主ランナー、副ランナー)とを備える。また、レールには、障子がレールに沿って移動され当該障子を収納するための収納位置に位置した際に、一方の吊車(副ランナー)に対応する位置に、当該一方の吊車を上枠(レール)の内外に挿通可能とする切欠部(切欠開口部)が形成されている。
そして、特許文献1に記載の建具では、ユーザは、障子を収納する際、レールに沿って当該障子を収納位置に位置付けた後、切欠部を介して一方の吊車がレール外部に移動するように、他方の吊車を回転軸として当該障子を回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−124583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の建具では、障子が収納位置に位置付けられると、一方の吊車は、切欠部を介してレール外に移動可能とする位置に位置付けられる。このため、ユーザが障子を回転させる前に当該ユーザの意に反して障子が上枠から外れてしまう(一方の吊車が切欠部を介してレール外に移動してしまう)虞がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、障子を収納位置に位置付けた際にユーザの意に反して障子が上枠から外れることを抑制することができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、建物の開口部に設けられたレールを有する上枠と、前記開口部内に配置される障子と、前記障子に連結して当該障子を前記レールに沿って移動可能に吊下げ支持する吊車とを備えた建具であって、前記吊車は、前記障子に連結される基準吊車と、前記障子に対して移動可能に連結し、前記基準吊車との間隔が第1の間隔または当該第1の間隔よりも大きい第2の間隔に変更される可動吊車とを備え、前記障子には、当該障子に対して移動可能に支持され、前記開口部の下縁部に設けられた下軸受け部に係合して前記基準吊車とともに鉛直軸を中心とした当該障子の回転軸となる下軸部材と、第1ユーザ操作と第2ユーザ操作とを受け付ける操作部材と、が設けられ、前記操作部材が前記第1ユーザ操作を受け付けた場合には、前記下軸部材が前記障子に対して移動して前記下軸受け部に係合する係合位置に位置付けられるとともに、前記可動吊車が前記障子に対して移動して前記第1の間隔に変更され、前記操作部材が前記第2ユーザ操作を受け付けた場合には、前記下軸部材が前記障子に対して移動して前記下軸受け部に係合しない非係合位置に位置付けられるとともに、前記可動吊車が前記障子に対して移動して前記第2の間隔に変更され、前記上枠には、前記障子が前記レールに沿って移動され当該障子を収納するための収納位置に位置した状態で、前記操作部材が前記第1ユーザ操作を受け付けた場合に、前記可動吊車を当該上枠の見込み方向に沿って当該上枠の内外に挿通可能とする切欠部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る建具では、予め操作部材に第2ユーザ操作を行っておけば、可動吊車が第1の間隔から第2の間隔に変更されるため、障子を収納位置に位置付けた場合であっても、可動吊車は、切欠部を介して上枠外に移動することがない。そして、可動吊車は、障子が収納位置に位置した状態で操作部材に第1ユーザ操作が行われた場合に、第2の間隔から第1の間隔に変更され、切欠部を介して上枠の内外に挿通可能とする挿通位置に位置付けられる。すなわち、操作部材に第1ユーザ操作を行う(可動吊車を挿通位置に位置付ける)ことにより、切欠部を介して可動吊車を上枠外に移動させることができる。このため、障子を収納位置に位置付けた際にユーザの意に反して障子が上枠から外れることを抑制することができる。
また、本発明に係る建具では、障子が収納位置に位置した状態で操作部材に第1ユーザ操作が行われた場合には、下軸部材は、障子に対する可動吊車の移動に連動する。そして、下軸部材は、下軸受け部に係合して基準吊車とともに鉛直軸を中心とする障子の回転軸となる。このため、可動吊車が切欠部を介して上枠外に移動した際に基準吊車のみに障子の荷重が加わることがなく、障子を円滑に回転させることができる。
【0008】
また、本発明は、上述した建具において、前記上枠における前記下軸受け部に対向した位置には、上軸受け部が設けられ、前記障子には、当該障子に対して移動可能に支持され、前記上軸受け部に係合して前記下軸部材とともに鉛直軸を中心とした当該障子の回転軸となる上軸部材がさらに設けられ、前記上軸部材は、前記操作部材が前記第1ユーザ操作を受け付けた場合に前記障子に対して移動して前記上軸受け部に係合する係合位置に位置付けられ、前記操作部材が前記第2ユーザ操作を受け付けた場合に前記障子に対して移動して前記上軸受け部に係合しない非係合位置に位置付けられることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る建具では、障子が収納位置に位置した状態で操作部材に第1ユーザ操作が行われた場合には、上軸部材は、障子に対する可動吊車及び下軸部材の移動に連動する。そして、上軸部材は、上軸受け部に係合して下軸部材とともに鉛直軸を中心とする障子の回転軸となる。このため、レールに対する基準吊車の位置ずれを回避し、上下2つの回転軸(上軸部材及び下軸部材)により、障子をさらに円滑に回転させることができる。
【0010】
また、本発明は、上述した建具において、前記基準吊車は、前記レールに沿って転動する吊車本体と、前記障子に固定され、鉛直軸を中心軸として回転可能に前記吊車本体を支持する支持部材とを備え、前記上枠には、前記障子が前記収納位置に位置付けられた場合に、前記吊車本体に係合する係合部材が設けられ、前記支持部材は、前記吊車本体及び前記係合部材が互いに係合した状態で、前記下軸部材とともに鉛直軸を中心とした前記障子の回転軸となることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る建具では、障子を収納位置に位置付けた際に吊車本体に係合する係合部材を備える。このため、支持部材を障子の回転軸とすることができ、別途、回転軸を設ける構成と比較して、構造の簡素化が図れる。
【0012】
また、本発明は、上述した建具において、前記障子は、複数設けられ、前記基準吊車、前記可動吊車、及び前記操作部材は、複数の前記障子に対してそれぞれ設けられ、前記下軸受け部は、複数の前記障子の数と同一の数だけ設けられるとともに前記障子の移動方向に離間して配置され、前記収納位置は、複数の前記障子毎に異なる位置に設定され、複数の前記可動吊車は、当該可動吊車に対応する前記障子が当該障子に対応する前記収納位置に位置した状態で、当該障子に対応する前記操作部材が前記第1ユーザ操作を受け付けた場合に、同一の前記切欠部を介して前記上枠の内外に挿通可能とすることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る建具によれば、複数の障子にそれぞれ連結された各可動吊車を1つの切欠部を介して上枠の内外に挿通することができる。このため、複数の障子に応じて複数の切欠部を設けた構成と比較して、建具(上枠)の外観を良好なものとすることができる。
【0014】
また、本発明は、上述した建具において、前記操作部材は、前記障子に設けられた操作ハンドルを有し、前記障子には、前記第1ユーザ操作または前記第2ユーザ操作による前記操作部材の操作力を前記可動吊車及び前記下軸部材に伝達し、前記可動吊車及び前記下軸部材を前記障子に対して移動させる操作力伝達機構をさらに備え、前記操作力伝達機構は、前記障子の框に設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る建具では、第1ユーザ操作または第2ユーザ操作による操作部材の操作力を可動吊車及び下軸部材に伝達する操作力伝達機構を備える。また、操作力伝達機構は、障子の框に設けられている。すなわち、可動吊車や下軸部材の移動をモータ等で行う構成と比較して、小型の操作力伝達機構により可動吊車及び下軸部材を移動させることができ、障子の框が大型化することがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る建具では、予め操作部材に第2ユーザ操作を行っておけば、可動吊車が第1の間隔から第2の間隔に変更されるため、障子を収納位置に位置付けた場合であっても、可動吊車は、切欠部を介して上枠外に移動することがない。そして、可動吊車は、障子が収納位置に位置した状態で操作部材に第1ユーザ操作が行われた場合に、第2の間隔から第1の間隔に変更され、切欠部を介して上枠の内外に挿通可能とする挿通位置に位置付けられる。すなわち、操作部材に第1ユーザ操作を行う(可動吊車を挿通位置に位置付ける)ことにより、切欠部を介して可動吊車を上枠外に移動させることができる。このため、障子を収納位置に位置付けた際にユーザの意に反して障子が上枠から外れることを抑制することができる。
また、本発明に係る建具では、障子が収納位置に位置した状態で操作部材に第1ユーザ操作が行われた場合には、下軸部材は、障子に対する可動吊車の移動に連動する。そして、下軸部材は、下軸受け部に係合して基準吊車とともに鉛直軸を中心とする障子の回転軸となる。このため、可動吊車が切欠部を介して上枠外に移動した際に基準吊車のみに障子の荷重が加わることがなく、障子を円滑に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る建具を第1空間側から見た正面図である。
図2図2は、図1に示した建具の縦断面図である。
図3図3は、図1に示した建具の横断面図である。
図4図4は、図1に示した基準吊車の構成を示す縦断面図である。
図5図5は、図1に示した可動吊車の構成を示す縦断面図である。
図6図6は、図1ないし図3に示した障子に設けられた可動装置及び回動機構を示す図であって、操作部材に非収納操作が行われた状態を示す図である。
図7図7は、図1ないし図3に示した障子に設けられた可動装置及び回動機構を示す図であって、操作部材に収納操作が行われた状態を示す図である。
図8図8は、図6及び図7に示した操作部材をそれぞれ拡大した図である。
図9図9は、図6及び図7に示した上軸移動部材をそれぞれ拡大した図である。
図10図10は、図1に示した3つの障子の収納方法を示す図である。
図11図11は、本発明の実施の形態2に係る係合部材を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
(実施の形態1)
〔建具の概略構成〕
図1は、本発明の実施の形態1に係る建具1を第1空間Sp1側から見た正面図である。図2は、建具1の縦断面図である。図3は、建具1の横断面図である。
なお、以下で記載する「上下」及び「左右」は、図1中の「上下」及び「左右」に相当するものである。また、以下で記載する「見込み方向」は、図2の矢印Arで示すように、建具1の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った平面については、見込み面と称し、見込み方向に直交する平面については見付け面と称する場合がある。
ここで例示する建具1は、建物内部の空間を2つの第1,第2空間Sp1,Sp2に仕切った閉塞状態(図1ないし図3に示した状態)と、第1,第2空間Sp1,Sp2を繋げて仕切りのない1つの空間にした解放状態(図10(e)参照)とを切り替えることができる移動間仕切りである。この建具1は、図1ないし図3に示すように、枠体2と、複数(本実施の形態1では3つ)の障子3(3a〜3c)と、3つの障子3a〜3c毎にそれぞれ設けられた基準吊車4、可動吊車5、可動装置6(図6図7参照)、及び回動機構7(図6図7参照)とを備える。
【0020】
〔枠体の構成〕
枠体2は、図1ないし図3に示すように、上枠21と、左右の縦枠22とを備え、建物の開口部(躯体B(図2図3))に固定される。それぞれの上枠21及び縦枠22は、アルミニウム合金によって成形した押し出し形材であり、全長にわたって略一様な断面形状を有する。
上枠21は、建物の開口部における上縁部に固定される部分であり、図2に示すように、第1,第2空間Sp1,Sp2側の各見付け面をそれぞれ構成する第1,第2見付け壁部211,212と、第1,第2見付け壁部211,212の間に設けられたレール213とを備える。
本実施の形態1では、第1見付け壁部211は、上下方向の幅寸法が第2見付け壁部212における上下方向の幅寸法よりも短くなるように形成されている。すなわち、上枠21が建物の開口部における上縁部に固定された状態では、第1見付け壁部211の下縁部は、第2見付け壁部212の下縁部よりも上方に位置する。
【0021】
レール213は、基準吊車4及び可動吊車5を左右方向に沿って移動可能に支持しつつ、当該移動を案内する部分である。このレール213は、基部2131と、第1垂設部2132と、第2垂設部2133とを備える(図2図4図5参照)。
基部2131は、建物の開口部における上縁部に対向し、当該上縁部に沿って左右方向に沿って延びる部分である。そして、基部2131における幅方向の略中心位置には、上方に向けて窪み、左右方向に延びる凹条部2131aが形成されている。そして、凹条部2131aには、左右方向に沿って一定の間隔を空けて、3つの上軸受け部8(図2図4参照)が取り付けられている。なお、上軸受け部8の構成については、回動機構7を説明する際に説明する。
【0022】
第1垂設部2132は、第1レール部2132aと、第2レール部2132bとを備える(図2図4図5参照)。
第1レール部2132aは、基部2131における第1空間Sp1側の縁部から下方に向けて略直角に屈曲し、さらに、第2空間Sp2側に略直角に屈曲して延在した部分であり、基準吊車4を左右方向に移動可能に支持する。
第2レール部2132bは、第1レール部2132aにおける第2空間Sp2側に延在した縁部から下方に向けて略直角に屈曲し、さらに、第2空間Sp2側に略直角に屈曲して延在した部分であり、可動吊車5を左右方向に移動可能に支持する。本実施の形態1では、上枠21が建物の開口部における上縁部に固定された状態では、第2レール部2132bにおける下方側の一部は、第1見付け壁部211の下縁部よりも下方に位置する。また、第2レール部2132bには、可動吊車5を見込み方向(図1の紙面に直交する方向)に沿ってレール213内外に挿通可能とする切欠部2132c(図1)が形成されている。
【0023】
第2垂設部2133は、基部2131における第2空間Sp2側の縁部から下方に向けて略直角に屈曲して延在した部分である。また、第2垂設部2133において、下縁部の一部には、当該下縁部から第1空間Sp1側に略直角に屈曲し、第1レール部2132aとともに基準吊車4を左右方向に移動可能に支持する第1レール部2133a(図4参照)が設けられている。
以上説明したように、本実施の形態1では、レール213は、上下2本のレールを利用し、上方側の第1レール部2132a,2133aにて基準吊車4を左右方向に移動可能に支持し、下方側の第2レール部2132bにて可動吊車5を左右方向に移動可能に支持する。
【0024】
〔障子の構成〕
3つの障子3a〜3cは、略同一の構成を有する。このため、以下では、1つの障子3のみを説明する。なお、3つの障子3a〜3cにおいて、同一の構成については同一の符号を付している。
障子3は、建物の開口部内に配置される。この障子3は、図2または図3に示すように、骨組体31と、第1表面材32と、第2表面材33とを備える。
骨組体31は、本発明に係る框としての機能を有する。この骨組体31は、アルミニウムやスチール等の金属材料の成形材であり、障子3の上下両縁部をそれぞれ構成する上框311(図2)及び下框312(図2)と、障子3の左右両縁部をそれぞれ構成する戸尻側縦框313(図3)及び戸先側縦框314(図3)とを四周枠組みすることで矩形枠状に構成されている。
本実施の形態1では、上框311及び下框312の両端部を戸尻側縦框313及び戸先側縦框314の側面にそれぞれ当接させるようにして骨組体31を構成している。そして、上框311及び下框312と戸尻側縦框313及び戸先側縦框314とは、戸尻側縦框313及び戸先側縦框314を介して上框311及び下框312のビスホール3111,3121(図2)にそれぞれ固定ネジ(図示略)が螺合されることにより、互いに連結される。
【0025】
上框311の天面を構成する天面壁部3112には、第1,第2保持部3112a,3112bと、移動案内部3112cとが設けられている(図2図4図5参照)。
第1保持部3112aは、天面壁部3112における第1空間Sp1側の縁部から上方に向けて立設され、第1表面材32を保持する部分である。
第2保持部3112bは、天面壁部3112における第2空間Sp2側の縁部から上方に向けて立設され、第2表面材33を保持する部分である。
移動案内部3112cは、後述する吊車移動部材61を左右方向に移動可能に支持する部分である。この移動案内部3112cは、溝部3112dと、一対の係止片3112eとを備える。
溝部3112dは、天面壁部3112において、下方に向けて窪み、左右方向に沿って延びるように形成されている。
一対の係止片3112eは、溝部3112dを構成する一対の側壁の上端部から互いに近接する方向に突出するように形成されている。
【0026】
第1表面材32は、第1空間Sp1側の面を構成する面材であり、第1保持部3112a等により、骨組体31の一方の面に取り付けられる。
第2表面材33は、第2空間Sp2側の面を構成する面材であり、第2保持部3112b等により、骨組体31の他方の面に取り付けられる。
【0027】
〔基準吊車の構成〕
図4は、基準吊車4の構成を示す縦断面図である。
基準吊車4は、第1レール部2132a,2133aに対して左右方向に移動可能に支持され、障子3の戸先側(図1中、右側)に連結して障子3を左右方向に移動可能に吊下げ支持する。この基準吊車4は、図4に示すように、第1支持部材41と、第1吊車本体42とを備える。
第1支持部材41は、円柱形状を有し、当該円柱の中心軸が上下方向に向く姿勢で、固定金具3140(図6図7図9参照)を介して戸先側縦框314に固定される。そして、第1支持部材41は、当該円柱の中心軸を中心として回転可能に第1吊車本体42を支持する。
この第1支持部材41には、外周面から外側に張り出し、第1吊車本体42を上下方向から回転可能に挟持する一対の挟持部411,412が設けられている。また、この第1支持部材41には、当該円柱の中心軸に沿って、上端部から下端部に向けて貫通した貫通孔413が形成されている。
【0028】
第1吊車本体42は、第1支持部材41に対して回転可能に支持され、第1レール部2132a,2133a上を転動する。この第1吊車本体42は、第1転動部421と、第1軸受け部422とを備える。
第1転動部421は、第1支持部材41が挿通される円環形状を有し、第1レール部2132a,2133aに摺接しながら、第1支持部材41に対して回転する部分である。この第1転動部421の上面には、下方に向けて窪み、平面視で当該円環の中心軸と同心となる円環状の凹部4211が形成されている。
第1軸受け部422は、円環状のボールベアリング(ボール4221を挟持する一対の軌道輪4222が上下方向に対向したボールベアリング)で構成され、凹部4211に収納される。そして、第1軸受け部422は、第1支持部材41における上方側の挟持部411から荷重を受けながら、第1支持部材41を中心として第1転動部421を回転可能にする。
【0029】
〔可動吊車の構成〕
図5は、可動吊車5の構成を示す縦断面図である。
可動吊車5は、第2レール部2132bに対して左右方向に移動可能に支持され、後述する吊車移動部材61を介して障子3の戸尻側(図1中、左側)に連結し、障子3を左右方向に移動可能に吊下げ支持する。この可動吊車5は、図5に示すように、第2支持部材51と、第2吊車本体52とを備える。
第2支持部材51は、円柱形状を有し、当該円柱の中心軸が上下方向に向くように固定金具510を介して後述する吊車移動部材61に固定される。そして、第2支持部材51は、当該円柱の中心軸を中心として回転可能に第2吊車本体52を支持する。
この第2支持部材51には、外周面から外側に張り出し、第2吊車本体52を上下方向から回転可能に挟持する一対の挟持部511,512が設けられている。
【0030】
第2吊車本体52は、第2支持部材51に対して回転可能に支持され、第2レール部2132b上を転動する。この第2吊車本体52は、第2転動部521と、第2軸受け部522とを備える。
第2転動部521は、第2支持部材51が挿通される円環形状を有し、第2レール部2132bに摺接しながら、第2支持部材51に対して回転する部分である。この第2転動部521の上面には、下方に向けて窪み、平面視で当該円環の中心軸と同心となる円環状の凹部5211が形成されている。
第2軸受け部522は、円環状のボールベアリング(径の異なる一対の軌道輪5222が当該径方向にボール5221を挟持するボールベアリング)で構成され、凹部5211に収納される。そして、第2軸受け部522は、内周側の軌道輪5222が第2支持部材51における上方側の挟持部511から荷重を受けながら、第2支持部材51を中心として第2転動部521を回転可能にする。
【0031】
〔可動装置の構成〕
図6は、可動装置6及び回動機構7を示す図であって、操作部材62に非収納操作が行われた状態を示す図である。図7は、可動装置6及び回動機構7を示す図であって、操作部材62に収納操作が行われた状態を示す図である。
可動装置6は、ユーザ操作(収納操作(第1ユーザ操作)や非収納操作(第2ユーザ操作))に応じて障子3に対して可動吊車5を左右方向(レール213の長手方向)に移動させ、可動吊車5が切欠部2132cに挿通可能とする挿通位置(図7)または挿通不能とする非挿通位置(図6)に可動吊車5を位置付ける。
ここで、挿通位置(図7)に可動吊車5を位置付けた場合での基準吊車4と可動吊車5との間隔(第1の間隔)は、非挿通位置(図6)に可動吊車5を位置付けた場合での基準吊車4と可動吊車5との間隔(第2の間隔)よりも小さいものである。
この可動装置6は、図6または図7に示すように、吊車移動部材61と、操作部材62と、操作力伝達機構63とを備える。
【0032】
吊車移動部材61は、左右方向に延びる板体で構成されている。また、吊車移動部材61は、図5に示すように、幅方向の両端部から下方に向けて略直角に屈曲し、さらに、当該幅方向に沿って外側に張り出した一対の張出部611を備える。そして、吊車移動部材61は、一対の張出部611が溝部3112d内で一対の係止片3112eに係止された状態で、上框311(天面壁部3112)に対して移動可能に支持される。
また、吊車移動部材61の上面には、固定金具510を介して可動吊車5が固定される。すなわち、吊車移動部材61は、障子3に対して左右方向に移動することで可動吊車5を挿通位置(図7)または非挿通位置(図6)に位置付ける。
【0033】
図8は、図6及び図7に示した操作部材62をそれぞれ拡大した図である。具体的に、図8(a)は、図6に示した操作部材62を拡大した図であり、図8(b)は、図7に示した操作部材62を拡大した図である。
操作部材62は、ユーザ操作(収納操作や非収納操作)を受け付ける部材である。具体的に、操作部材62は、図8に示すように、所定方向に延びる操作ハンドル(レバー)で構成され、基端側が見込み方向に沿う回転軸RA1を介して回転可能に戸先側縦框314内部に軸支される。また、操作部材62は、基端側が回転軸RA1に軸支された状態で、戸先側縦框314における外周側の見込み面を構成する見込み壁部3141に形成された開口部(図示略)を介して、外部に突出するように配置される。
そして、非収納操作は、ユーザにより操作部材62の先端側が障子3に対して下方に移動(操作部材62が図6ないし図8中、時計回りに回転)されるユーザ操作である。また、収納操作は、ユーザにより操作部材62の先端側が障子3に対して上方に移動(操作部材62が図6ないし図8中、反時計回りに回転)されるユーザ操作である。
また、操作部材62の基端には、見込み方向に沿って延び、操作力伝達機構62に連結する摺動軸621が設けられている。
【0034】
操作力伝達機構63は、操作部材62へのユーザ操作に応じた操作部材62の操作力を吊車移動部材61(可動吊車5)に伝達する。この操作力伝達機構63は、図6または図7に示すように、上下移動部材631と、コーナードライブ632と、一対の第1,第2連結部材633,634とを備える。
上下移動部材631は、操作部材62へのユーザ操作に応じて、障子3に対して上下方向に移動する部材である。この上下移動部材631は、第1上下移動部材6311と、第2上下移動部材6312とを備える。
【0035】
第1上下移動部材6311は、上下方向に延びる板体で構成されている。また、第1上下移動部材6311には、図8に示すように、表裏を貫通し、上下方向に延びる一対のトラック孔6311a,6311bが上下方向に並ぶように形成されている。そして、第1上下移動部材6311は、一対のトラック孔6311a,6311bにそれぞれ挿通された一対のネジSc1,Sc2を介して上下方向に移動可能に戸先側縦框314内部に支持される。
また、第1上下移動部材6311において、一対のトラック孔6311a,6311bの間には、図8に示すように、右端縁から左端縁に向けて切り欠かれ、摺動軸621が挿通される係合溝6311cが形成されている。そして、第1上下移動部材6311は、操作部材62へのユーザ操作に応じて、摺動軸621が係合溝6311cの縁部分を押圧することにより、障子3に対して上下方向に移動(非収納操作に応じて上方向に移動(図8(a))、収納操作に応じて下方向に移動(図8(b)))する。
【0036】
第2上下移動部材6312は、戸先側縦框314の略全長に亘って上下方向に延びる板体で構成され、板面が左右方向に向く姿勢で、上下方向に移動可能に戸先側縦框314内部に支持される。また、第2上下移動部材6312は、固定金具630(図6図8)を介して第1上下移動部材6311の下端部に固定される。すなわち、第2上下移動部材6312は、操作部材62へのユーザ操作に応じて、第1上下移動部材6311とともに上下方向に移動する。
【0037】
コーナードライブ632は、図6または図7に示すように、L字状をなす中空のケース体6321と、ケース体6321内をL字に沿って移動可能に設けられた可撓性を有する板状の中継部材6322とを備える。そして、ケース体6321は、L字の一端側が戸先側縦框314内部に固定され、L字の他端側が戸先側縦框314における内周側の見込み面を構成する見込み壁部3142に形成された開口部(図示略)を介して上框311の天面壁部3112の上方(第1,第2保持部3112a,3112bの間)に張り出すように配置される。
【0038】
第1連結部材633は、吊車移動部材61と同様に上框311(天面壁部3112)に対して移動可能に支持されるとともに、吊車移動部材61とコーナードライブ632における中継部材6322の一端とを連結する部材である。
第2連結部材634は、第2上下移動部材6312と同様に戸先側縦框314内部に上下方向に移動可能に支持されるとともに、コーナードライブ632における中継部材6322の他端と第2上下移動部材6312の上端部とを連結する部材である。
【0039】
そして、操作部材62に非収納操作が行われた場合には、障子3に対する上下移動部材631の上方向への移動にコーナードライブ632が連動し、吊車移動部材61は、障子3に対して左方向に移動して可動吊車5を非挿通位置(図6)に位置付ける。一方、操作部材62に収納操作が行われた場合には、障子3に対する上下移動部材631の下方向の移動にコーナードライブ632が連動し、吊車移動部材61は、障子3に対して右方向に移動して可動吊車5を挿通位置(図7)に位置付ける。
【0040】
〔回動機構の構成〕
回動機構7は、操作部材62へのユーザ操作(収納操作や非収納操作)に連動し、レール213に対して障子3を左右方向に移動可能とする移動可能状態(図6の状態)、または、レール213に対して障子3が左右方向に移動不能とする移動不能状態(図7の状態)に設定する。
この回動機構7は、図6または図7に示すように、下軸部材71と、上軸部材72と、上軸移動部材73とを備える。
下軸部材71は、上下方向に延びる円柱形状を有し、建物の開口部の下縁部に設けられた下軸受け部9(図2)に係合し、鉛直軸を中心とした障子3の回転軸となる。
ここで、下軸受け部9は、図2に示すように、上面の略中心位置に下軸部材71が挿入される係合孔91を有する。そして、下軸受け部9(9a〜9c)は、障子3の数と同一の数(本実施の形態1では3つ)だけ設けられ、建物の開口部の下縁部において、左右方向に所定間隔、離間して配置される(図10参照)。
【0041】
そして、下軸部材71は、固定金具710を介して第2上下移動部材6312の下端部側に固定され、操作部材62へのユーザ操作に応じた障子3に対する第2上下移動部材6312の上下方向の移動に伴い、下軸受け部9に係合する係合位置(図7)または係合しない非係合位置(図6)に位置付けられる。
【0042】
上軸部材72は、上下方向に延びる円柱形状を有し、基準吊車4における第1支持部材41の貫通孔413に挿入される(図4)。そして、上軸部材72は、レール213に設けられた上軸受け部8(図2)に係合し、下軸部材71とともに鉛直軸を中心とした障子3の回転軸となる。
ここで、上軸受け部8は、図4に示すように、下面の略中心位置に上軸部材72が挿入される係合孔81を有する。そして、上軸受け部8(8a〜8c)は、障子3の数と同一の数(本実施の形態1では3つ)だけ設けられ、レール213において、3つの下軸受け部9a〜9cに対向する位置にそれぞれ配置される(図10参照)。
【0043】
図9は、図6及び図7に示した上軸移動部材73をそれぞれ拡大した図である。具体的に、図9(a)は、図6に示した上軸移動部材73を拡大した図であり、図9(b)は、図7に示した上軸移動部材73を拡大した図である。
上軸移動部材73は、上軸部材72を支持するとともに障子3に対して移動可能に支持され、障子3に対して移動することで上軸部材72が上軸受け部8に係合する係合位置(図7)、または係合しない非係合位置(図6)に上軸部材72を位置付ける。この上軸移動部材73は、図9に示すように、第1固定金具731と、回転カム732と、第2固定金具733とを備える。
【0044】
第1固定金具731は、互いに略平行な第1,第2連結部7311,7312を有する断面視クランク状の板体で構成され、戸先側縦框314内部に配置される。
第1連結部7311は、ネジSc3により、第2上下移動部材6312における右側の板面に固定される。すなわち、第1固定金具731は、操作部材62へのユーザ操作に応じて、第2上下移動部材6312とともに障子3に対して上下方向に移動する。
第2連結部7312には、表裏を貫通し、円弧状に延びるトラック孔7312aが形成されている。
【0045】
回転カム732は、第1,第2固定金具731,733に連結し、第1固定金具731の上方向の動力を下方向の動力に変換して第2固定金具733に伝達し、第1固定金具731の下方向の動力を上方向の動力に変換して第2固定金具733に伝達する。この回転カム732は、図9に示すように、回転板7321と、第1,第2軸部7322,7323とを備える。
回転板7321は、平面視円形状の板体で構成され、板面が左右方向に向く姿勢で、固定金具7320を介して戸先側縦框314における見込み壁部3141に対して左右方向に沿う回転軸を中心として回転可能に支持される。
【0046】
第1軸部7322は、円柱形状を有し、当該円柱の中心軸が左右方向に向く姿勢で回転板7321における左側の板面(回転板7321の回転軸からずれた位置)に固定されるとともに、第1固定金具731のトラック孔7312aに挿通される。そして、第1軸部7322は、第1固定金具731が障子3に対して上下方向に移動した場合に、トラック孔7312aの縁部に押圧されながら、トラック孔7312aに沿って移動する。すなわち、回転板7321は、第1軸部7322とともに回転する。
第2軸部7323は、円柱形状を有し、当該円柱の中心軸が左右方向に向く姿勢で回転板7321における右側の板面(回転板7321の回転軸及び第1軸部7322の中心軸からずれた位置)に固定される。そして、第2軸部7323は、回転板7321の回転に伴って第1軸部7322が下方に移動した場合に上方に移動し、第1軸部7322が上方に移動した場合に下方に移動する。
【0047】
第2固定金具733は、障子3に対して上下方向に移動可能に戸先側縦框314内部に支持される。この第2固定金具733は、上軸固定部7331と、カム連結部7332とを備える。
上軸固定部7331は、断面視U字形状を有する板体で構成され、U字の開口部分が左側を向く姿勢で、戸先側縦框314内部に配置される。そして、上軸固定部7331には、上軸部材72の下端部が固定される。
カム連結部7332は、板体で構成され、板面が左右方向に向く姿勢で、上軸固定部7331の下端部に固定される。このカム連結部7332には、表裏を貫通し、円弧状に延びるトラック孔7332aが形成されている。そして、トラック孔7332aには、第2軸部7323が挿通される。すなわち、第2軸部7323は、回転板7321の回転に伴って回転した場合には、トラック孔7332aの縁部を押圧しながら、トラック孔7332aに沿って移動する。すなわち、第2固定金具733は、第2軸部7323にてトラック孔7332aの縁部が押圧されることにより、障子3に対して上下方向に移動する。
【0048】
そして、操作部材62に非収納操作が行われた場合には、下軸部材71は、障子3に対して上下移動部材631とともに上方向に移動して非係合位置(図6)に位置付けられる。また、上軸移動部材73は、上下移動部材631の上方向への動力を下方向に変換し、上軸部材72を非係合位置(図6図9(a))に位置付ける。一方、操作部材62に収納操作が行われた場合には、下軸部材71は、障子3に対して上下移動部材631とともに下方向に移動して係合位置(図7)に位置付けられる。また、上軸移動部材73は、上下移動部材631の下方向への動力を上方向に変換し、上軸部材72を係合位置(図7図9(b))に位置付ける。
【0049】
〔障子の収納方法〕
図10は、3つの障子3a〜3cの収納方法を示す図である。具体的に、図10(a)〜(e)は、図3に対応した図であり、図3に示した閉塞状態(建物内部の空間を2つの第1,第2空間Sp1,Sp2に仕切る状態)から解放状態(第1,第2空間Sp1,Sp2を繋げて仕切りのない1つの空間にした状態)へと切り替える手順をそれぞれ示している。
先ず、ユーザは、障子3aが当該障子3aを収納するための収納位置(図3)に位置した状態で、障子3aに設けられた操作部材62に収納操作を行う。この収納操作により、障子3aに設けられた下軸部材71及び上軸部材72が係合位置(図7図9(b))に位置付けられて最も右側に設けられた下軸受け部9a及び上軸受け部8aにそれぞれ係合するとともに、障子3aに連結された可動吊車5が挿通位置(図7)に位置付けられる。そして、ユーザは、図10(a)に示すように、障子3aに連結された可動吊車5が切欠部2132cを介してレール213外に移動するように、下軸部材71及び上軸部材72を回転軸として、障子3aを第1空間Sp1側に略90°回転させる。
【0050】
次に、ユーザは、レール213に対して障子3bを右側に移動させ、当該障子3bを収納するための収納位置(図10(b))に位置付ける。そして、ユーザは、障子3bに設けられた操作部材62に収納操作を行う。この収納操作により、障子3bに設けられた下軸部材71及び上軸部材72が係合位置(図7図9(b))に位置付けられて下軸受け部9a及び上軸受け部8aの隣りに設けられた下軸受け部9b及び上軸受け部8bにそれぞれ係合するとともに、障子3bに連結された可動吊車5が挿通位置(図7)に位置付けられる。そして、ユーザは、図10(c)に示すように、障子3bに連結された可動吊車5が切欠部2132cを介してレール213外に移動するように、下軸部材71及び上軸部材72を回転軸として、障子3bを第1空間Sp1側に略90°回転させる。
【0051】
最後に、ユーザは、レール213に対して障子3cを右側に移動させ、当該障子3cを収納するための収納位置(図10(d))に位置付ける。そして、ユーザは、障子3cに設けられた操作部材62に収納操作を行う。この収納操作により、障子3cに設けられた下軸部材71及び上軸部材72が係合位置(図7図9(b))に位置付けられて最も左側に位置する下軸受け部9c及び上軸受け部8cにそれぞれ係合するとともに、障子3cに連結された可動吊車5が挿通位置(図7)に位置付けられる。そして、ユーザは、図10(e)に示すように、障子3cに連結された可動吊車5が切欠部2132cを介してレール213外に移動するように、下軸部材71及び上軸部材72を回転軸として、障子3bを第1空間Sp1側に略90°回転させる。
上述した操作により、建具1は、解放状態(図10(e))に設定される。
なお、解放状態(図10(e))から閉塞状態(図3)に切り替える場合には、上述した操作と逆の操作を行えばよい。
【0052】
以上のように、本実施の形態1では、3つの障子3a〜3cに対する各可動吊車5の連結位置(各吊車移動部材61の長さ寸法)を適宜、調整することにより、当該各可動吊車5をレール213内外に挿通可能とする切欠部2132cを共通のものとしている。
【0053】
以上説明した本実施の形態1に係る建具1では、予め操作部材62に非収納操作を行っておけば、可動吊車5が非挿通位置(図6)に位置付けられるため、障子3を収納位置に位置付けた場合であっても、可動吊車5は、切欠部2132cを介して上枠21(レール213)外に移動することがない。そして、可動吊車5は、障子3が収納位置に位置した状態で操作部材62に収納操作が行われた場合に、非挿通位置(図6)から挿通位置(図7)に位置付けられる。すなわち、操作部材62に収納操作を行う(可動吊車5を挿通位置に位置付ける)ことにより、切欠部2132cを介して可動吊車5を上枠21(レール213)外に移動させることができる。このため、障子3を収納位置に位置付けた際にユーザの意に反して障子が上枠21(レール213)から外れることを抑制することができる。
また、本実施の形態1に係る建具1では、障子3が収納位置に位置した状態で操作部材62に収納操作が行われた場合には、下軸部材71は、障子3に対する可動吊車5の移動に連動する。そして、下軸部材71は、下軸受け部9に係合して鉛直軸を中心とする障子3の回転軸となる。このため、可動吊車5が切欠部2132cを介して上枠21外に移動した際に基準吊車4のみに障子3の荷重が加わることがなく、障子3を円滑に回転させることができる。
【0054】
また、本実施の形態1に係る建具1では、障子3が収納位置に位置した状態で操作部材62に収納操作が行われた場合には、上軸部材72は、障子3に対する可動吊車5及び下軸部材71の移動に連動する。そして、上軸部材72は、上軸受け部8に係合して下軸部材71とともに鉛直軸を中心とする障子3の回転軸となる。このため、レール213に対する基準吊車4の位置ずれを回避し、上下2つの回転軸(上軸部材72及び下軸部材71)により、障子3をさらに円滑に回転させることができる。
【0055】
また、本実施の形態1に係る建具1では、3つの障子3a〜3cに対する各可動吊車5の連結位置(各吊車移動部材61の長さ寸法)を適宜、調整することにより、当該各可動吊車5をレール213内外に挿通可能とする切欠部2132cを共通のものとしている。このため、3つの障子3a〜3cに応じて3つの切欠部を設けた構成と比較して、建具1(上枠21)の外観を良好なものとすることができる。
【0056】
また、本実施の形態1に係る建具1では、操作力伝達機構63及び回動機構7を利用して、可動吊車5、下軸部材71、及び上軸部材72を移動させている。また、可動装置6及び回動機構7は、障子3の骨組体31に設けられている。すなわち、可動吊車5、下軸部材71、及び上軸部材72の移動をモータ等で行う構成と比較して、小型の操作力伝達機構63及び回動機構7により可動吊車5、下軸部材71、及び上軸部材72を移動させることができ、障子3の骨組体31が大型化することがない。
【0057】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
以下の説明では、実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
上述した実施の形態1に係る建具1では、鉛直軸を中心とした障子3の回転軸として、下軸部材71の他、上軸部材72を採用していた。
これに対して本実施の形態2に係る建具では、上軸部材72、上軸受け部8、及び上軸移動部材73が省略され、その代わりに、係合部材10を採用している。
【0058】
図11は、本発明の実施の形態2に係る係合部材10を示す横断面図である。
なお、図11では、上述した実施の形態1に対応させ、障子3が3つ設けられている場合に対応させた係合部材10を示している。また、図11では、説明の便宜上、障子3aに連結された基準吊車4における第1支持部材41及び第1吊車本体42をそれぞれ第1支持部材41a及び第1吊車本体42aとし、障子3bに連結された基準吊車4における第1支持部材41及び第1吊車本体42をそれぞれ第1支持部材41b及び第1吊車本体42bとし、障子3cに連結された基準吊車4における第1支持部材41及び第1吊車本体42をそれぞれ第1支持部材41c及び第1吊車本体42cとしている。
【0059】
係合部材10は、レール213内部(基部2131)に取り付けられ、障子3が収納位置に位置付けられた場合に、基準吊車4における第1吊車本体42に係合する。そして、第1支持部材41は、第1吊車本体41及び係合部材10が互いに係合した状態で、下軸部材71とともに鉛直軸を中心とした障子3の回転軸となる。すなわち、第1支持部材41は、本発明に係る支持部材としての機能を有する。また、第1吊車本体42は、本発明に係る吊車本体としての機能を有する。
具体的に、係合部材10は、図11に示すように、断面U字状の基部11と、一対の第1係合片12と、一対の第2係合片13と、一対の第3係合片14とを備える。
一対の第1係合片12は、基部11における断面U字の互いに対向する内面から突出するとともに、互いに近接する側に凸となる円弧を描くように左側にそれぞれ延びる形状を有する。
一対の第2係合片13は、一対の第1係合片12と同様の形状を有し、一対の第1係合片12の左側に設けられている。
一対の第3係合片14は、一対の第1,第2係合片12,13と同様の形状を有し、一対の第2係合片13の左側に設けられている。
以上説明した一対の第1〜第3係合片12〜14は、基部11に接続した部位がそれぞれ弾性変形可能となっている。
【0060】
そして、障子3aが収納位置(図3)に位置している状態では、第1吊車本体42aは、基部11の断面U字状の内部において最も奥側に位置し、一対の第1係合片12により左側への移動が規制された状態(係合部材10に係合した状態)となる。この状態で、第1支持部材41aは、障子3aに設けられた下軸部材71とともに鉛直軸を中心とした障子3aの回転軸となる。
また、レール213に対して障子3bを右側に移動させ、当該障子3bを収納位置(図10(b))に位置付ける際には、第1吊車本体42bは、一対の第3係合片14を弾性変形させながら、当該一対の第3係合片14の間を通過する。また、この後、第1吊車本体42bは、一対の第2係合片13を弾性変形させながら、当該一対の第2係合片13の間を通過する。そして、第1吊車本体42bは、一対の第1係合片12の先端部分にて挟持されるとともに一対の第2係合片13により左側への移動が規制された状態(係合部材10に係合した状態)となる。この状態で、第1支持部材41bは、障子3bに設けられた下軸部材71とともに鉛直軸を中心とした障子3bの回転軸となる。
さらに、レール213に対して障子3cを右側に移動させ、当該障子3cを収納位置(図10(d))に位置付ける際には、第1吊車本体42cは、一対の第3係合片14を弾性変形させながら、当該一対の第3係合片14の間を通過する。そして、第1吊車本体42cは、一対の第2係合片13の先端部分にて挟持されるとともに一対の第3係合片14により左側への移動が規制された状態(係合部材10に係合した状態)となる。この状態で、第1支持部材41cは、障子3cに設けられた下軸部材71とともに鉛直軸を中心とした障子3cの回転軸となる。
【0061】
以上説明した本実施の形態2に係る建具によれば、上述した実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、簡単な構成で鉛直軸を中心とした障子3の回転軸を構成することができる。
【0062】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態1,2によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態1,2では、可動吊車5、下軸部材71、及び上軸部材72の移動を操作力伝達機構63等により機械的に行っていたが、これに限られず、モータ等により電動で行っても構わない。この際、操作部材62は、当該モータ等を駆動するためのスイッチ等で構成する。
【0063】
上述した実施の形態1,2では、基準吊車4及び可動吊車5は、水平面内で回転する第1,第2吊車本体42,52を採用していたが、これに限られず、第1,第2吊車本体が鉛直面内で回転するように構成しても構わない。
【0064】
上述した実施の形態1,2において、上軸受け部8及び下軸受け部9の利用方法として、障子3を収納位置に位置付けた際に当該障子3を回転させるためのみに設けていたが、これに限られず、建具1を閉塞状態(図3)に切り替えた際に障子3が左右方向に移動することを規制するために上軸受け部8及び下軸受け部9を別途、設けても構わない。
【符号の説明】
【0065】
1 建具、3,3a〜3c 障子、4 基準吊車、5 可動吊車、8,8a〜8c 上軸受け部、9,9a〜9c 下軸受け部、10 係合部材、21 上枠、31 骨組体(框)、41,41a〜41c 第1支持部材(支持部材)、42,42a〜42c 第1吊車本体(吊車本体)、62 操作部材、63 操作力伝達機構、71 下軸部材、72 上軸部材、213 レール、2132c 切欠部
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図11