【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、燃料電池自動車及び水素供給インフラの国内規制適正化、国際基準調和・国際標準化に関する研究開発、水素ステーションにおける水素ガス品質管理方法の国際標準化に関する研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記4群に分類した不純物のうちのアンモニアと硫化水素を分析する際は、前記真空度を他の3群の不純物を分析する際の真空度よりも低真空度とし、前記イオン化電圧を他の3群の不純物を分析する際のイオン化電圧よりも低くしたことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は請求項3に記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法。
前記4群に分類した不純物を分析する際の前記検出器電圧は、アンモニアと硫化水素を分析する際に他の3群の不純物を分析する際の検出器電圧よりも高くするとともに、窒素を分析する際に他の3群の不純物を分析する際の検出器電圧よりも低くしたことを特徴とする請求項3又は4に記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は請求項3又は4に記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法。
前記4群に分類した不純物のうちのアンモニアと硫化水素を分析する際は、前記ジェットセパレータにおける真空圧力を前記他の3群の不純物を分析する際の前記ジェットセパレータにおける真空圧力よりも低真空度とすることにより、アンモニアと硫化水素を分析する際の前記質量分析器における前記真空度を他の3群の不純物を分析する際の前記質量分析器における真空度よりも低真空度となるようにしたことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は請求項3〜5のいずれかに記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法。
燃料電池用の燃料水素ガスは、水素ステーションにおける水素ガスであることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は請求項3〜6のいずれかに記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、特許文献2及び非特許文献1のいずれに記載された従来の技術によっても、水素ステーションなどにおける燃料電池用の燃料水素ガスについての不純物を一台の分析装置によって行うことはできない。また、多重周回飛行時間型質量分析器を用いて、燃料電池用の燃料水素ガス中の不純物ガスの定量分析を行う場合には、大量の水素ガスがイオン化されることによって不純物ガスの分析精度に影響を及ぼす可能性もある。
また、分析センターや研究室に設置された複数の分析装置によって、水素ステーションなどにおける燃料電池用の燃料水素ガスについての不純物の分析を行う場合、試料ガスの運搬や分析に長時間を要し、日常の管理ができないという課題があった。
【0010】
さらに、水素ステーションに分析センターや研究室に設置された複数の分析装置と同様の装置を設置して日常分析を行うことは、費用、設置場所、分析担当者の常駐などから難しいという課題があった。
本発明は、このような従来の技術が有していた課題を解決しようとするものであり、水素ガスの分析装置により、燃料電池用の燃料水素ガス中の特定の複数の不純物の分析を、1台の小型で運搬可能な分析装置及びそれを用いた分析方法とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置は、水素ガス中の特定の複数の不純物を、ジェットセパレータと多重周回飛行時間型質量分析器とを組合わせて分析する燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置であって、
前記ジェットセパレータは、試料ガス中の前記不純物を濃縮するために主として水素ガスの分離除去を行い、
前記質量分析器は、前記ジェットセパレータによる前記不純物の濃縮後の試料濃縮ガスを導入して、試料濃縮ガス中の前記不純物をイオン化するときのイオン化電圧及び真空度と、イオン化された前記不純物の飛行時間に応じたパルス電圧印加タイミングと、検出器電圧とを、それぞれ調節可能にしており、
前記試料ガス中の複数の不純物の予め設定したそれぞれの水素ガス中における最大許容濃度及びイオン化エネルギーに基づいて、
前記ジェットセパレータにより、試料ガス中の不純物を濃縮するとともに、
前記質量分析器により、それぞれの不純物を分析する際の、前記イオン化電圧及び前記真空度と、前記パルス電圧印加タイミングと、前記検出器電圧とを、調節して試料ガス中の複数の不純物の同定と定量とを可能としたものである。
【0012】
請求項2に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法は、水素ガス中の特定の複数の不純物を、ジェットセパレータと多重周回飛行時間型質量分析器とを組合わせて分析する燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法であって、
前記試料ガス中の複数の不純物の予め設定したそれぞれの水素ガス中における最大許容濃度及びイオン化エネルギーに基づいて、
前記ジェットセパレータにより、分析を行う試料ガスから主として水素ガスの分離除去を行って、試料ガス中の不純物の濃縮を行うとともに、
前記質量分析器により、それぞれの不純物を分析する際の、イオン化電圧及び真空度と、イオンの飛行時間に応じたパルス電圧印加タイミングと、検出器電圧とを、調節して試料ガス中の不純物の同定と定量とを可能としたものである。
【0013】
請求項3に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法は、請求項1に記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置の構成に加え又は請求項2に記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法の構成に加え、
前記水素ガス中の特定の複数の不純物は、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、アンモニア及び硫化水素であり、
それぞれの不純物を分析する際の、前記イオン化電圧及び前記真空度と、前記検出器電圧との調節は、窒素と、一酸化炭素と、酸素と二酸化炭素とメタンの3種と、アンモニアと硫化水素の2種との4群に分類してそれぞれ行うようにするとともに、前記パルス電圧印加タイミングの調節はそれぞれの不純物ごとに行うようにしたものである。
【0014】
請求項4に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法は、請求項3に記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置の構成に加え又は請求項3に記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法の構成に加え、前記4群に分類した不純物のうちのアンモニアと硫化水素を分析する際は、前記真空度を他の3群の不純物を分析する際の真空度よりも低真空度とし、前記イオン化電圧を他の3群の不純物を分析する際のイオン化電圧よりも低くしたものである。
【0015】
請求項5に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法は、請求項3又は4に記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置の構成に加え又は請求項3又は4に記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法の構成に加え、前記4群に分類した不純物を分析する際の前記検出器電圧は、アンモニアと硫化水素を分析する際に他の3群の不純物を分析する際の検出器電圧よりも高くするとともに、窒素を分析する際に他の3群の不純物を分析する際の検出器電圧よりも低くしたものである。
【0016】
請求項6に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法は、請求項3〜5のいずれかに記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置の構成に加え又は請求項3〜5のいずれかに記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法の構成に加え、前記4群に分類した不純物のうちのアンモニアと硫化水素を分析する際は、前記ジェットセパレータにおける真空圧力を前記他の3群の不純物を分析する際の前記ジェットセパレータにおける真空圧力よりも低真空度とすることにより、アンモニアと硫化水素を分析する際の前記質量分析器における前記真空度を他の3群の不純物を分析する際の前記質量分析器における真空度よりも低真空度となるようにしたものである。
【0017】
請求項7に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法は、請求項3〜6のいずれかに記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置の構成に加え又は請求項3〜6のいずれかに記載の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法の構成に加え、燃料電池用の燃料水素ガスは、水素ステーションにおける水素ガスである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は請求項2に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法は、試料ガス中の複数の不純物の予め設定したそれぞれの水素ガス中における最大許容濃度及びイオン化エネルギーに基づいて、ジェットセパレータにより、分析を行う試料ガスから主として水素ガスの分離除去を行って、試料ガス中の不純物の濃縮を行うとともに、質量分析器により、それぞれの不純物を分析する際の、イオン化電圧及び真空度と、イオンの飛行時間に応じたパルス電圧印加タイミングと、検出器電圧とを、調節して試料ガス中の不純物の同定と定量とを可能としたから、ジェットセパレータと多重周回飛行時間型質量分析器とを組合わせたことにより、1台の小型で運搬可能な分析装置を用いて、燃料電池用の燃料水素ガス中の燃料電池に有害な複数の不純物が最大許容濃度未満を維持しているか否かを分析することができ、例えば水素ステーションなどの燃料電池用の燃料水素ガスの貯蔵供給所の日常管理を簡単に短時間で行うことができるのである。
【0019】
請求項3に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法は、請求項1又は請求項2に係る本発明の効果に加え、水素ガス中の特定の複数の不純物は、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、アンモニア及び硫化水素であり、それぞれの不純物を分析する際の、イオン化電圧及び真空度と、検出器電圧との調節は、窒素と、一酸化炭素と、酸素と二酸化炭素とメタンの3種と、アンモニアと硫化水素の2種との4群に分類してそれぞれ行うようにするとともに、イオンの飛行時間に応じたパルス電圧印加タイミングの調節はそれぞれの不純物ごとに行うようにしたから、例えば、窒素の最大許容濃度が100ppmで、硫化水素の最大許容濃度が0.004ppmと25,000倍もの濃度差がある7種の不純物の分析を、イオン化電圧、真空度、検出器電圧、電圧印加タイミングの調節を行って高分解度、高感度にして行うことができるのである。
【0020】
請求項4に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法は、請求項3に係る本発明の効果に加え、4群に分類した不純物のうちのアンモニアと硫化水素を分析する際は、真空度を他の3群の不純物を分析する際の真空度よりも低真空度とし、イオン化電圧を他の3群の不純物を分析する際のイオン化電圧よりも低くしたから、例えば、アンモニアのイオン化エネルギーが10.07eVで、硫化水素の最大許容濃度が0.004ppmでイオン化エネルギーが10.46eVであることを利用して、例えば、アンモニアの最大許容濃度が0.1ppmで、硫化水素の最大許容濃度が0.004ppmと、両ガスの最大許容濃度が低い、すなわち試料ガス中に両ガスが極微量にしか含まれないにもかかわらず、キャリアガスの水素ガス及び最大許容濃度の比較的大きな窒素などのイオン化がし難いイオン化電圧により、主として両ガスのイオン化を行って、両ガスの同定と定量とを行うことができるのである。
【0021】
請求項5に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法は、請求項3又は4に係る本発明の効果に加え、4群に分類した不純物を分析する際の検出器電圧は、アンモニアと硫化水素を分析する際に他の3群の不純物を分析する際の検出器電圧よりも高くするとともに、窒素を分析する際に他の3群の不純物を分析する際の検出器電圧よりも低くしたから、例えば、アンモニアの最大許容濃度が0.1ppmで、硫化水素の最大許容濃度が0.004ppmと、両ガスの最大許容濃度が低い、すなわち試料ガス中に両ガスが極微量にしか含まれないにもかかわらず、検出器の感度を高くして、両ガスの定量を行うことができることに加え、窒素の最大許容濃度が100ppmと高いにもかかわらず、検出器の感度を低くして分析のレンジオーバーを防いだので、硫化水素の0.004ppmから窒素の100ppmのように、25,000倍もの濃度比がある不純物を1台で分析することができるのである。
【0022】
請求項6に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法は、請求項3〜5のいずれかに係る本発明の効果に加え、4群に分類した不純物のうちのアンモニアと硫化水素を分析する際は、ジェットセパレータにおける真空圧力を他の3群の不純物を分析する際のジェットセパレータにおける真空圧力よりも低真空度とすることにより、アンモニアと硫化水素を分析する際の質量分析器における真空度を他の3群の不純物を分析する際の質量分析器における真空度よりも低真空度となるようにしたから、例えば、アンモニアの最大許容濃度が0.1ppmで、硫化水素の最大許容濃度が0.004ppmと、両ガスの最大許容濃度が低い、すなわち試料ガス中に両ガスが極微量にしか含まれないにもかかわらず、両ガスの検出器におけるイオン濃度を高めて両ガスの定量を感度よく行うことができるのである。
【0023】
請求項7に係る本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置又は本発明の燃料電池用の燃料水素ガスの分析方法は、請求項3〜6のいずれかに係る本発明の効果に加え、燃料電池用の燃料水素ガスは、水素ステーションにおける水素ガスであるから、これから急増する水素ステーションにおける水素ガスの不純物の確認を小型で安価な分析装置により、例えば、装置を巡回移動させて簡単に短時間で行うことができるのである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を添付した
図1〜
図13を参照して詳細に説明する。
図1において、1は、水素ステーションにおける燃料電池用の燃料水素ガス中の特定の7種の不純物を分析する燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置である。
【0026】
分析装置1は、ジェットセパレータ2と多重周回飛行時間型質量分析器3とを組合わせて燃料水素ガス中の7種の不純物を1台で分析するようにしている。
ジェットセパレータ2には、分析対象の試料ガスである、燃料電池用の燃料水素ガスを収納した試料ガス容器4からマスフローコントローラ41を介設した試料ガス管路42を接続している。
【0027】
また、ジェットセパレータ2には真空ポンプ5を介設した排気管路51を接続して、試料ガスから質量の小さい水素ガスを主として排気することにより、ジェットセパレータ2で主として水素ガスの分離除去を行うようにしている。
そして、ジェットセパレータ2による不純物の濃縮後の試料濃縮ガスを、多重周回飛行時間型質量分析器3に試料濃縮ガス管路43により導入するようにしている。
【0028】
また、ジェットセパレータ2における試料ガスの入口管22の圧力を検出して設定値に調節する圧力調整器6を設けて、入口管22の圧力が設定値となるようにマスフローコントローラ41を調節してジェットセパレータ2に導入する試料ガスの質量流量を調節するようにしている。なお、入口管22の圧力が設定値となればよく、上記マスフローコントローラを利用する方法以外にも、背圧弁などを利用して圧力を調節することもできる。
水素ガス中の特定の7種の不純物は、燃料電池用の燃料水素ガス中の燃料電池に有害な、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、アンモニア及び硫化水素である。
【0029】
なお、これ以降、全炭化水素の一つとしてメタンを、全硫黄化合物の一つとして硫化水素を例に挙げて説明していく。
これら7種の不純物の最大許容濃度は、酸素を5ppm、窒素を100ppm、一酸化炭素を0.2ppm、二酸化炭素を2ppm、メタンを2ppm、アンモニアを0.1ppm及び硫化水素を0.004ppmとして説明していく。
【0030】
このように、窒素の最大許容濃度が100ppmで、硫化水素の最大許容濃度が0.004ppmであり、25,000倍もの濃度差がある7種の不純物の分析を、高性能高分解能として公知の多重周回飛行時間型質量分析器3を単に使用するだけでは不可能である。
前記7種の不純物のイオン化エネルギーは、酸素が12.07eV、窒素が15.58eV、一酸化炭素が14.01eV、二酸化炭素が13.78eV、メタンが12.61eV、アンモニアが10.07eV及び硫化水素が10.46eVである。また、キャリアとなる水素は15.43eVである。
【0031】
そこで、本発明では、分析圧力の異なるガスクロマトグラフと質量分析器とを結合させるインターフェースとして公知のジェットセパレータに着目して、ジェットセパレータ2と多重周回飛行時間型質量分析器3とを組合わせるとともに、大きな濃度差で、性状の異なる7種の不純物をそれぞれ同定と定量が可能となるように、分析時の機器の調節手段を見出したのである。
具体的には、本発明では、試料ガスの前記7種の不純物の水素ガス中の予め設定した前記最大許容濃度及びイオン化エネルギーに基づいて、ジェットセパレータ2における真空度の調節と、質量分析器3のイオン化電圧、真空度、検出器電圧、イオンの飛行時間に応じたパルス電圧印加タイミングの調節を行って、高分解度、高感度にして7種の不純物の分析を1台の分析装置1により行うことができるようにしたのである。
【0032】
ジェットセパレータ2は、
図2に示すように、試料ガス中の不純物を濃縮するために主として水素ガスの分離除去を行うのであり、本体21と、試料ガスの入口管22と、主として水素ガスを排気する排気管23と、試料濃縮ガスの出口管24とを備えている。
また、
図1において説明したように、試料ガス容器4からの試料ガスは圧力調整器6の設定圧力に基づいて質量流量を調節するマスフローコントローラ41により質量流量を調節されて、ジェットセパレータ2の入口管22に導入され、排気管23から排気管路51に設けられた真空ポンプ5により主として水素ガスが排気される。
【0033】
そして、ジェットセパレータ2の出口管24から試料濃縮ガス管路43により試料濃縮ガスを多重周回飛行時間型質量分析器3に導入されるようにしている。
次に、多重周回飛行時間型質量分析器3の分析原理を、
図3に基づいて説明する。
【0034】
質量分析器3は、同一飛行空間を複数回周回させて、長い飛行距離を得て、高質量分解能を有するようにしたもので公知の機器であり、イオン源31と、入射電極32と、周回軌道33と、4つの周回電極34と、イオンゲート35と、出射電極36と、検出器37とを備えている。
質量分析器3は、ジェットセパレータ2による不純物の濃縮後の試料濃縮ガスを導入し、イオン源31で生成されたイオンは、高電圧で加速され、入射電極32により8の字型の周回軌道33に入射される。
【0035】
そして、4つの周回電極34には一定の電圧が印加されており、周回軌道33に入ったイオンが1周して戻る前に入射電極32をOFFにし、イオンの周回を可能としている。
質量分解能は飛行距離に比例するため、必要な分解能が得られるまで周回を行い、出射電極3をONすることで、検出器37にイオンを取り込んで、検出器37によりそのイオンの強度を検出できるように構成されている。
【0036】
入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36には、それぞれパルス電圧を印加するように構成されている。
特定の不純物として、例えば、窒素の濃度を分析する際に、窒素の質量電荷比(m/z)(エムオーバージーと称呼され、正式には斜体の記号で表示されるが、簡略に表示している、以下同じ)と、予め定めた周回軌道33の周回数とから、入射電極32にパルス電圧を印加してからの周回時間を計算したタイミングで出射電極36にパルス電圧を印加すれば、窒素のイオンを検出器37にあてて、その強度を測定することができるように構成されている。
【0037】
また、イオンゲート35では、分析対象外のイオンの到達時にパルス電圧を印加することによりそのイオンを除去して、周回遅れのイオンを検出しないように構成している。
さらに、質量分析器3は、試料濃縮ガス中の不純物をイオン化するときの、イオン源31におけるイオン化電圧及び真空度と、イオン化された不純物の飛行時間に応じたパルス電圧印加タイミングと、検出器電圧とを、それぞれ調節可能に構成されている。
【0038】
そして、本発明の実施の形態では、水素ガス中の前記7種のそれぞれの不純物を分析する際の、イオン化電圧及び真空度と、検出器電圧との調節は、窒素と、一酸化炭素と、酸素と二酸化炭素とメタンの3種と、アンモニアと硫化水素の2種との4群に分類してそれぞれ行うようにするとともに、前記パルス電圧印加タイミングの調節は7種のそれぞれの不純物ごとに行うようにしている。
具体的には、イオン化電圧及び真空度については、アンモニアと硫化水素の2種のイオン化電圧を13eVとするとともに真空度を3.5×10−3Paとし、他の3群の窒素と、一酸化炭素と、酸素と二酸化炭素とメタンからなる5種のイオン化電圧を70eVとするとともに、真空度を3.5×10−4Paとするのである。
【0039】
このように、アンモニアと硫化水素の2種については、最大許容濃度がアンモニアを0.1ppm及び硫化水素を0.004ppmと非常に小さい、すなわち試料ガス中に両ガスが極微量にしか含まれないので、真空度を他の不純物よりも一桁小さくして不純物の質量を大きくしている。
そして、アンモニアと硫化水素の2種については、キャリアの水素や最大許容濃度の大きな窒素よりもイオン化エネルギーが小さいことに着目して、イオン化電圧を13eVとして、他の5種の不純物のイオン化電圧の70eVよりも大幅に小さくして、水素や窒素のイオン化を抑制しながら、アンモニアと硫化水素のイオン化を促進したのである。
【0040】
また、前記4群に分類した不純物を分析する際の検出器電圧は、アンモニアと硫化水素を分析する際に他の3群の不純物を分析する際の検出器電圧よりも高くするとともに、窒素を分析する際に他の3群の不純物を分析する際の検出器電圧よりも低くするのである。
具体的には、検出器電圧について、アンモニアと硫化水素が3000V、窒素が2600V、一酸化炭素が2800V及び酸素と二酸化炭素とメタンの3種が2800Vとして、イオンの濃度が低いアンモニアと硫化水素について、検出器電圧を大きくして感度を高くしているのである。
【0041】
このように、アンモニアと硫化水素の2種については、濃度が非常に小さいにもかかわらず、真空度を小さくして質量を大きくし、イオン化電圧を小さくして他の5種のイオン生成を抑制しながら、アンモニアと硫化水素のイオン化を促進し、検出器電圧を大きくして、質量分析器3での高感度の分析を可能としたのである。
イオン化された不純物の飛行時間に応じたパルス電圧印加タイミングについては、分析対象の各不純物ごとに分析対象の不純物の質量電荷比(m/z)と、存在が予測される分析対象外であって分析対象の質量電荷比(m/z)からの分離の必要な分解能により、それぞれ決定して、調節するのである。
【0042】
例えば、窒素の質量電荷比(m/z)が28.0061であり、一酸化炭素の質量電荷比(m/z)が27.9949であるから、一方を分析するときには他方を分離して検出器で分析できるような各イオンの飛行時間・周回数を導出し、それに応じ、出射電極36などのパルス電圧の印加タイミングを設定するのである。
また、分解能を高くすることにより、例えば、窒素の濃度分析時に、アミノメチリジン(CH2N)の質量電荷比(m/z)が28.0187で、エチレン(C2H4)の質量電荷比(m/z)が28.0313であるから、窒素の質量電荷比(m/z)の28.0061はアミノメチリジンやエチレンが仮に含まれていたとき、分解能が低いとこれらを含めて窒素の濃度として分析し、分析精度が悪くなるのであるが、この実施の形態では、分解能を高くして測定対象ガスと質量電荷比(m/z)が近接したガスを排除して、誤差を小さくしているのである。
【0043】
そして、予め分析して作成した検量線を参照して、検出器電圧の強度から不純物の濃度を定量するのであり、検量線は、予め濃度が既知の標準試料を用いて、上述した実施の形態と同一の分析条件による分析装置1を用いて予め作成して、分析装置1の記憶手段に記憶させておくのである。
以下、上述した分析装置1の測定原理による前記7種の不純物の分析方法を、
図4のブロック図と、
図5及び
図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0044】
ステップS1において、分析装置1を起動し、ジェットセパレータ2に接続した真空ポンプ5及び質量分析器3に内蔵した真空ポンプ(図示せず)により、分析装置1内を排気して真空とする。
このステップS1においては、試料ガス容器4の開閉弁(図示せず)は閉じており、試料ガスは分析装置1には供給されない。
【0045】
ステップS2において、分析装置1の起動時の条件、例えば、各部の温度、圧力を検出して、あらかじめ設定した条件範囲内か否かの準備完了を判断する。
ステップS2で、準備完了を待って、準備が完了したと判断したら、ステップS3に進み、ステップS3において、不純物としての窒素(N2)の分析条件を設定する。
【0046】
窒素の分析条件は、質量分析器3の真空度を3.5×10−4Paとし、質量分析器3におけるイオン源31のイオン化電圧を70eVとし、検出器3aの電圧を2600Vとするとともに、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングを窒素のイオンにあわせて設定するのである。
ステップS3における設定は、圧力調整器6によりジェットセパレータ2の圧力を検出してマスフローコントローラ41を制御して、質量分析器3の真空度を3.5×10−4Paとなるように行うのであり、イオン源31のイオン化電圧を70eVとするとともに検出器3aの電圧を2600Vとする設定は、制御装置3aの設定により行うのである。
【0047】
次に、ステップS4において、不純物としての窒素の分析を行うのであるが、このステップS4の分析を
図6のフローチャートにより説明する。
ステップS21において、試料ガス容器4の開閉弁を開いて、試料ガスを分析装置1に供給するのである。
【0048】
次に、ステップS22において、分析装置1の分析時の条件、例えば、各部の温度、圧力を検出して、ステップS23において、あらかじめ設定した分析条件範囲内か否かの判断を行う。
ステップS22及びステップS23で、分析条件の到達を待って、分析条件に到達したと判断したら、ステップS24に進み、ステップS24において、不純物としての窒素の分析を行い、ステップS25において、検出器3aで検出した強度を累積する。
【0049】
ステップS26において、窒素の分析回数が30,000回に累積されたか否か判断し、累積回数が30,000回に到達するまでステップS24〜ステップS26を繰り返す。
ステップS27において、30,000回の窒素の強度の平均値を演算するとともに、あらかじめ作成して記憶させている窒素の検量線と対比して窒素の濃度を算出するとともに、記憶装置(図示せず)に記憶させると同時に表示装置(図示せず)に表示させるのである。
【0050】
そして、ステップS28において、試料ガス容器4の開閉弁を閉じて試料ガスの分析装置1への供給を停止して、窒素の分析を終了する。
ステップS28において、窒素の分析の終了は、試料ガスの分析装置1への供給の停止のみで、分析装置1については稼働状態、例えば、ジェットセパレータ2に接続した真空ポンプ5及び質量分析器3に内蔵した真空ポンプも稼働状態である。
【0051】
次に、
図5のステップS5に進み、ステップS5において、不純物としての一酸化炭素(CO)の分析条件を設定する。
一酸化炭素の分析条件は、質量分析器3の真空度及びイオン源31のイオン化電圧を、窒素と同様に変更せずにそのままの設定であり、3.5×10−4Pa及び70eVとし、検出器3aの電圧を2800Vに設定変更するとともに、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングを一酸化炭素のイオンに合わせて設定するのである。
【0052】
ステップS5における設定は、ステップS3の窒素と同様に、圧力調整器6によりジェットセパレータ2の圧力を検出してマスフローコントローラ41を制御して、質量分析器3の真空度を3.5×10−4Paとなるように行うのであり、イオン源31のイオン化電圧を70eVとするとともに検出器37の電圧を2800Vとする設定は、制御装置3aの設定により行うのである。
ステップS6において、不純物としての一酸化炭素の分析を行うのであるが、このステップS6の分析は、
図6のフローチャートで説明した窒素の分析と略同様であるので、
図6の各ステップにおいて、窒素を一酸化炭素と読み替えることにより一酸化炭素の分析を行うことができる。
【0053】
次に、
図5のステップS7に進み、ステップS7において、不純物としての二酸化炭素(CO2)の分析条件を設定する。
二酸化炭素の分析条件は、質量分析器3の真空度、イオン源31のイオン化電圧及び検出器3の電圧を、一酸化炭素と同様に変更せずにそのままであり、3.5×10−4Pa、70eV及び2800Vとするとともに、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングを二酸化炭素のイオンに合わせて設定するのである。
【0054】
ステップS7における設定は、ステップS5の一酸化炭素と同様に、圧力調整器6によりジェットセパレータ2の圧力を検出してマスフローコントローラ41を制御して、質量分析器3の真空度を3.5×10−4Paとなるように行うのであり、イオン源31のイオン化電圧を70eVとするとともに検出器3aの電圧を2800Vとする設定は、制御装置3aの設定により行うのである。
ステップS8において、不純物としての二酸化炭素の分析を行うのであるが、このステップS8の分析は、
図6のフローチャートで説明した窒素の分析と略同様であるので、
図6の各ステップにおいて、窒素を二酸化炭素と読み替えることにより二酸化炭素の分析を行うことができる。
【0055】
次に、
図5のステップS9に進み、ステップS9において、不純物としての酸素(O2)の分析条件を設定する。
酸素の分析条件は、質量分析器3の真空度、イオン源31のイオン化電圧及び検出器3の電圧を、二酸化炭素と同様に変更せずにそのままであり、3.5×10−4Pa、70eV及び2800Vとするとともに、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングを酸素のイオンに合わせて設定するのである。
【0056】
ステップS9における設定は、ステップS7の二酸化炭素と同様に、圧力調整器6によりジェットセパレータ2の圧力を検出してマスフローコントローラ41を制御して、質量分析器3の真空度を3.5×10−4Paとなるように行うのであり、イオン源31のイオン化電圧を70eVとするとともに検出器3aの電圧を2800Vとする設定は、制御装置3aの設定により行うのである。
ステップS10において、不純物としての酸素の分析を行うのであるが、このステップS10の分析は、
図6のフローチャートで説明した窒素の分析と略同様であるので、
図6の各ステップにおいて、窒素を酸素と読み替えることにより酸素の分析を行うことができる。
【0057】
次に、
図5のステップS11に進み、ステップS11において、不純物としてのメタン(CH4)の分析条件を設定する。
メタンの分析条件は、質量分析器3の真空度、イオン源31のイオン化電圧及び検出器3の電圧を、酸素と同様に変更せずにそのままであり、3.5×10−4Pa、70eV及び2800Vとするとともに、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングをメタンのイオンに合わせて設定するのである。
【0058】
ステップS9における設定は、ステップS9の酸素と同様に、圧力調整器6によりジェットセパレータ2の圧力を検出してマスフローコントローラ41を制御して、質量分析器3の真空度を3.5×10−4Paとなるように行うのであり、イオン源31のイオン化電圧を70eVとするとともに検出器3aの電圧を2800Vとする設定は、制御装置3aの設定により行うのである。
ステップS12において、不純物としてのメタンの分析を行うのであるが、このステップS12の分析は、
図6のフローチャートで説明した窒素の分析と略同様であるので、
図6の各ステップにおいて、窒素をメタンと読み替えることによりメタンの分析を行うことができる。
【0059】
次に、
図5のステップS13に進み、ステップS13において、不純物としてのアンモニア(NH3)の分析条件を設定する。
アンモニアの分析条件は、質量分析器3の真空度、イオン源31のイオン化電圧及び検出器3の電圧を、3.5×10−3Pa、13eV及び3000Vと、それぞれメタン等の分析条件とは変更するとともに、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングをアンモニアのイオンに合わせて設定するのである。
【0060】
ステップS13における設定は、圧力調整器6によりジェットセパレータ2の圧力を検出してマスフローコントローラ41を制御して、質量分析器3の真空度を3.5×10−3Paとなるように行うのであり、イオン源31のイオン化電圧を13eVとするとともに検出器3aの電圧を3000Vとする設定は、制御装置3aの設定により行うのである。
ステップS14において、不純物としてのアンモニアの分析を行うのであるが、このステップS14の分析は、
図6のフローチャートで説明した窒素の分析と略同様であるので、
図6の各ステップにおいて、窒素をアンモニアと読み替えることによりアンモニアの分析を行うことができる。
【0061】
次に、
図5のステップS15に進み、ステップS15において、不純物としての硫化水素(H2S)の分析条件を設定する。
硫化水素の分析条件は、質量分析器3の真空度、イオン源31のイオン化電圧及び検出器3の電圧を、アンモニアと同様に変更せずにそのままであり、3.5×10−3Pa、13eV及び3000Vとするとともに、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングを硫化水素のイオンに合わせて設定するのである。
【0062】
ステップS15における設定は、ステップS13のアンモニアと同様に、圧力調整器6によりジェットセパレータ2の圧力を検出してマスフローコントローラ41を制御して、質量分析器3の真空度を3.5×10−3Paとなるように行うのであり、イオン源31のイオン化電圧を13eVとするとともに検出器3aの電圧を3000Vとする設定は、制御装置3aの設定により行うのである。
ステップS16において、不純物としての硫化水素の分析を行うのであるが、このステップS16の分析は、
図6のフローチャートで説明した窒素の分析と略同様であるので、
図6の各ステップにおいて、窒素を硫化水素と読み替えることにより硫化水素の分析を行うことができる。
【0063】
そして、ステップS17において、分析装置1の稼働を停止させて、燃料電池用の燃料水素ガスの分析を終了するのである。
また、前記7種の不純物の分析を自動化した分析装置1で行うようにするには、図示を省略するが、分析装置1用の制御装置を設けて、コンピュータと制御プログラムにより、試料ガス容器4の電磁開閉弁の開閉制御、圧力調整器6の制御及び制御装置3aの制御を行えばよい。
【0064】
自動化した分析装置によれば、
図6のステップS24〜ステップS26の30,000回の累積時間は、1回の分析時間が1ミリ秒(ms)であるから、30秒程度で1種類の不純物の分析ができる。
そして、水素ステーションに分析装置を搬入して、試料採取、分析装置の分析準備と試運転、分析、分析データの検証、後片付けなどを含めた日常管理としての水素ガス中の各種不純物が最大許容濃度以下であることの確認は、半日程度で可能となる。
【0065】
次に、以上の実施の形態で説明した分析装置及び分析方法による、燃料水素ガスの前記7種の不純物の分析について、以下に確認実験例を示す。
これらの確認実験例1〜7では、純粋な水素に各不純物ごとに、不純物の濃度を定めた4種類の標準試料を用いて、上記実施の形態で説明した各不純物の同定と定量とが実現できることを確認した。
【0066】
なお、これらの確認実験例では、不純物が1種類の標準試料を用いているが、1種類の不純物が混合した水素の分析と、7種類の不純物が混合した水素の分析とは、水素ステーション等の実用上の水素中の不純物の濃度はppmの単位であることから、確認実験の有効性に影響はない。
また、これらの確認実験の分析データは、不純物の濃度と強度とを示しており、
図4〜
図7で説明した実際の分析における検量線と同様な意義を有している。
【0067】
[確認実験例1]
不純物として窒素の分析についての確認実験例1を説明する。
窒素濃度測定用の標準試料として、高純度水素ガスと、その高純度水素ガスを用いて容積比率で窒素濃度が1ppmと、10ppmと、50ppmにそれぞれなるように調整した4水準の標準試料を準備し、分析装置1の設定を、質量分析器3の真空度が3.5×10−4Paで、質量分析器3におけるイオン源31のイオン化電圧が70eVで、検出器3aの電圧が2600Vで、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングを窒素のイオンに合せて設定し、それぞれの濃度の試料ガスで10回の実験結果を得た。
そして、確認実験例1を表1に示すとともに、表1に記載した濃度の平均値と強度とを
図7に示す。なお、表1及び
図7では、標準試料として高純度水素ガスを用いて測定した結果を“0ppm”の結果として表示しており、以下の確認実験例においても同様である。
【0069】
[確認実験例2]
不純物として一酸化炭素の分析についての確認実験例2を説明する。
一酸化炭素濃度測定用の標準試料として、高純度水素ガスと、その高純度水素ガスを用いて容積比率で一酸化炭素濃度が0.1ppmと、0.2ppmと、0.5ppmにそれぞれなるように調整した4水準の標準試料を準備し、分析装置1の設定を、質量分析器3の真空度が3.5×10−4Paで、質量分析器3におけるイオン源31のイオン化電圧が70eVで、検出器37の電圧が2800Vで、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングを一酸化炭素のイオンに合せて設定し、それぞれの濃度の試料ガスで10回の実験結果を得た。
そして、確認実験例2を表2に示すとともに、表2に記載した濃度の平均値と強度とを
図8に示した。
【0071】
[確認実験例3]
不純物として二酸化炭素の分析についての確認実験例3を説明する。
二酸化炭素濃度測定用の標準試料として、高純度水素ガスと、その高純度水素ガスを用いて容積比率で二酸化炭素濃度が1ppmと、5ppmと、10ppmにそれぞれなるように調整した4水準の標準試料を準備し、分析装置1の設定を、質量分析器3の真空度が3.5×10−4Paで、質量分析器3におけるイオン源31のイオン化電圧が70eVで、検出器37の電圧が2800Vで、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングを二酸化炭素のイオンに合せて設定し、それぞれの濃度の試料ガスで10回の実験結果を得た。
そして、確認実験例3を表3に示すとともに、表3に記載した濃度の平均値と強度とを
図9に示した。
【0073】
[確認実験例4]
不純物として酸素の分析についての確認実験例4を説明する。
酸素濃度測定用の標準試料として、高純度水素ガスと、その高純度水素ガスを用いて容積比率で酸素濃度が1ppmと、5ppmと、10ppmにそれぞれなるように調整した4水準の標準試料を準備し、分析装置1の設定を、質量分析器3の真空度が3.5×10−4Paで、質量分析器3におけるイオン源31のイオン化電圧が70eVで、検出器37の電圧が2800Vで、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングを酸素のイオンに合せて設定し、それぞれの濃度の試料ガスで10回の実験結果を得た。
そして、確認実験例4を表4に示すとともに、表4に記載した濃度の平均値と強度とを
図10に示した。
【0075】
[確認実験例5]
不純物としてメタンの分析についての確認実験例5を説明する。
メタン濃度測定用の標準試料として、高純度水素ガスと、その高純度水素ガスを用いて容積比率でメタン濃度が1ppmと、2ppmと、5ppmにそれぞれなるように調整した4水準の標準試料を準備し、分析装置1の設定を、質量分析器3の真空度が3.5×10−4Paで、質量分析器3におけるイオン源31のイオン化電圧が70eVで、検出器37の電圧が2800Vで、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングをメタンのイオンに合せて設定し、それぞれの濃度の試料ガスで10回の実験結果を得た。
そして、確認実験例5を表5に示すとともに、表5に記載した濃度の平均値と強度とを
図11に示した。
【0077】
[確認実験例6]
不純物としてアンモニアの分析についての確認実験例6を説明する。
アンモニア濃度測定用の標準試料として、高純度水素ガスと、その高純度水素ガスを用いて容積比率でアンモニア濃度が0.05ppmと、0.1ppmと、0.2ppmにそれぞれなるように調整した4水準の標準試料を準備し、分析装置1の設定を、質量分析器3の真空度が3.5×10−3Paで、質量分析器3におけるイオン源31のイオン化電圧が13eVで、検出器37の電圧が3000Vで、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングをアンモニアのイオンに合せて設定し、それぞれの濃度の試料ガスで10回の実験結果を得た。
そして、確認実験例6を表6に示すとともに、表6に記載した濃度の平均値と強度とを
図12に示した。
【0079】
[確認実験例7]
不純物として硫化水素の分析についての確認実験例7を説明する。
硫化水素濃度測定用の標準試料として、高純度水素ガスと、その高純度水素ガスを用いて容積比率で硫化水素濃度が0.020ppmにそれぞれなるように調整した2水準の標準試料を準備し、分析装置1の設定を、質量分析器3の真空度が3.5×10−3Paで、質量分析器3におけるイオン源31のイオン化電圧が13eVで、検出器37の電圧が3000Vで、入射電極32、イオンゲート35及び出射電極36の、それぞれのパルス電圧を印加するタイミングを二酸化硫黄のイオンに合せて設定し、それぞれの濃度の試料ガスで10回の実験結果を得た。
そして、確認実験例7を表7に示すとともに、表7に記載した濃度の平均値と強度とを
図13に示した。
【0081】
以上の実施の形態では、燃料電池用の燃料水素ガスの分析装置及び分析方法として、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、アンモニア及び硫化水素の7種の不純物の同定と定量とを1台の分析装置で行うことについて、説明したが、前記7種以外の不純物の分析が必要となった場合には、以上の実施の形態と同様な技術的思想により、分析を行うことができる。
具体的には、全炭化水素および全硫黄化合物の他の種類について、例えば、エタン、プロパン、ブタン、二酸化硫黄は、硫化水素と同じ条件で分析できることを確認している。
【0082】
また、以上の実施の形態では、具体的数値を一例として示したが、本発明の技術的思想に沿って適宜変更することができることはもちろんである。