特許第6641225号(P6641225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641225
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
   B60K 13/02 20060101AFI20200127BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20200127BHJP
   F02M 35/16 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   B60K13/02 D
   F02M35/10 301V
   F02M35/10 101E
   F02M35/16 S
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-83524(P2016-83524)
(22)【出願日】2016年4月19日
(65)【公開番号】特開2017-193215(P2017-193215A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松橋 高広
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌裕
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/094334(WO,A1)
【文献】 実開平05−032765(JP,U)
【文献】 特許第6594173(JP,B2)
【文献】 特開2007−181762(JP,A)
【文献】 特開2000−320414(JP,A)
【文献】 特開2000−320412(JP,A)
【文献】 特開平08−230491(JP,A)
【文献】 特開平08−091058(JP,A)
【文献】 実開平04−005119(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0101014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 13/02
F02M 35/10
F02M 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気取入口を上側に開口して外殻構造を成すダクト本体と、前記空気取入口を被覆して雨水の直接的な降り込みを阻むルーバーと、該ルーバーの内側に介装されて細かな異物の吸い込みを防止する金網とを備え、前記ダクト本体における空気取入口直下の内壁面に前記金網を伝い落ちる水滴を受け止めるドリップチャンネルを形成し、該ドリップチャンネルを介して前記水滴を前記ダクト本体内における所定の水回収部へ導き得るように構成した車両の吸気ダクトであって、前記ダクト本体に内蔵され且つ該ダクト本体の空気取入口に近い内部空間を仕切板により複数の流路に区画する内部仕切り部品を備え、前記ダクト本体の空気取入口直下の内壁面との間に前記ドリップチャンネルを形成するドリップチャンネル形成部を前記内部仕切り部品に設けたことを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
ドリップチャンネルにより導かれる水滴を回収する水回収部を内部仕切り部品側に装備させたことを特徴とする請求項に記載の吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トラック等の大型の運搬車両は、普通乗用車と比べて未舗装の悪路を走行する機会が多いため、エンジンの吸気としては、塵埃が多く含まれている地面付近の外気ではなく、地面から十分高い部分の清浄な外気を取り入れることが好ましく、また、地面付近では雨水や積雪の跳ね上げを一緒に取り込んでしまう虞れもあるため、地面から十分高い部分で外気だけを確実に取り入れることが好ましい。
【0003】
このため、大型の運搬車両においては、図4に一例を示すように、キャブaの後面に上下方向に長く延在する吸気ダクトbを据え付けるようにしており、この種の吸気ダクトbは、外気をエンジン用吸気として取り入れる空気取入口cを上側に開口して外殻構造を成すダクト本体dと、前記空気取入口cを被覆して雨水の直接的な降り込みを阻む(雪の侵入も同様にして阻まれる)ルーバーeとを備えて構成されるようになっているが、枯れ葉等の細かな異物の吸い込みを防止し得るよう前記ルーバーeの内側に金網fを設置したものもある。
【0004】
尚、前述の如き吸気ダクトに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等が既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5325764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の如きルーバーeの内側に金網fを設置した吸気ダクトbにあっては、空気取入口cに直接的に降りかかる雨水の侵入をルーバーeにより阻むことができても、空気の流れに随伴し易い霧等の細かい水滴が前記ルーバーeを通過して金網fまで到達してしまうことは防ぎきれず、該金網fで凝集した水滴が伝い落ちてダクト本体d内に侵入してしまう虞れがあった。
【0007】
例えば、先に挙げた特許文献1の場合、ダクト本体の空気取入口に近い内部空間を仕切板により複数の流路に区画する内部仕切り部品を前記ダクト本体に内蔵しており、その仕切板の下端にドリップチャンネルを備えた例が開示されているが、これはルーバーの内側に金網を備えないタイプの吸気ダクトを対象としたもので、ここに示されているドリップチャンネルは、空気取入口から侵入して仕切板に衝突した水滴を流し落として回収するためのものであり、ルーバーの内側の金網を伝い落ちる水滴に関して対策を講じた例は未だ提案されていないのが実情である。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、金網で凝集して伝い落ちた水滴を確実に回収してダクト本体内への侵入を防止し得る吸気ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、気取入口を上側に開口して外殻構造を成すダクト本体と、前記空気取入口を被覆して雨水の直接的な降り込みを阻むルーバーと、該ルーバーの内側に介装されて細かな異物の吸い込みを防止する金網とを備え、前記ダクト本体における空気取入口直下の内壁面に前記金網を伝い落ちる水滴を受け止めるドリップチャンネルを形成し、該ドリップチャンネルを介して前記水滴を前記ダクト本体内における所定の水回収部へ導き得るように構成した車両の吸気ダクトであって、前記ダクト本体に内蔵され且つ該ダクト本体の空気取入口に近い内部空間を仕切板により複数の流路に区画する内部仕切り部品を備え、前記ダクト本体の空気取入口直下の内壁面との間に前記ドリップチャンネルを形成するドリップチャンネル形成部を前記内部仕切り部品に設けたことを特徴とするものである。
【0010】
而して、このようにすれば、霧等の細かい水滴が空気の流れに随伴してルーバーの内側の金網まで到達してしまったとしても、該金網にて凝集して伝い落ちる水滴が空気取入口直下のドリップチャンネルにより受け止められ、該ドリップチャンネルを介しダクト本体内における所定の水回収部へ導かれて回収されるので、前記水滴の前記ダクト本体内への侵入が防止される。
【0011】
また、本発明においては、ダクト本体に内蔵され且つ該ダクト本体の空気取入口に近い内部空間を仕切板により複数の流路に区画する内部仕切り部品を備え、前記ダクト本体の空気取入口直下の内壁面との間にドリップチャンネルを形成するドリップチャンネル形成部を前記内部仕切り部品に設けているので、別途製作された内部仕切り部品をダクト本体のブロー成形時に内包させるだけで該ダクト本体の空気取入口直下の内壁面にドリップチャンネルを簡単に形成することが可能となる。
【0012】
更に、このように内部仕切り部品を備える場合には、ドリップチャンネルにより導かれる水滴を回収する水回収部を内部仕切り部品側に装備させることが好ましく、このようにすれば、別途製作された内部仕切り部品をダクト本体のブロー成形時に内包させるだけで該ダクト本体内に簡単に水回収部を備えることが可能となり、ダクト本体の一部を金型で挟み付けて潰すことで水回収部を区画して作る場合と比較して流路断面積を大きく保つことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明の吸気ダクトによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0014】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、金網にて凝集して伝い落ちる水滴を空気取入口直下のドリップチャンネルにより受け止め、該ドリップチャンネルを介しダクト本体内における所定の水回収部へと導いて確実に回収することができるので、前記ダクト本体内への水滴の侵入を防止することができる。
【0015】
(II)本発明の請求項に記載の発明によれば、別途製作された内部仕切り部品をダクト本体のブロー成形時に内包させるだけで該ダクト本体の空気取入口直下の内壁面にドリップチャンネルを簡単に形成することができ、該ドリップチャンネルの新設に要するコスト増を著しく抑制することができる。
【0016】
(III)本発明の請求項に記載の発明によれば、別途製作された内部仕切り部品をダクト本体のブロー成形時に内包させるだけで該ダクト本体内に簡単に水回収部を備えることができるので、ダクト本体の一部を金型で挟み付けて潰すことで水回収部を区画して作る場合と比較して流路断面積を大きく保つことができ、吸気抵抗の大幅な増加を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す分解図である。
図2図1の吸気ダクトの正面図である。
図3図1の吸気ダクトの側面図である。
図4】従来例を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例における吸気ダクト1は、先に図4で説明した従来の吸気ダクトbと同様に、運搬車両のキャブ2後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側で開口した空気取入口3から外気をエンジン用吸気として取り入れるように構成されているが、前記空気取入口3を上側に開口して外殻構造を成すダクト本体4と、前記空気取入口3を被覆して雨水の直接的な降り込みを阻むルーバー5と、該ルーバー5の内側に介装されて細かな異物の吸い込みを防止する金網6とを備え、前記ダクト本体4における空気取入口3直下の内壁面に前記金網6を伝い落ちる水滴w(図2参照)を受け止めるドリップチャンネル7(図2及び図3参照)を形成し、該ドリップチャンネル7を介して前記水滴wを前記ダクト本体4内における水回収部8(図2及び図3参照)へ導き得るように構成したところを特徴としている。
【0020】
特に本形態例においては、ダクト本体4の空気取入口3に近い内部空間を仕切板9,10,11により複数の流路に区画する内部仕切り部品12が前記ダクト本体4に内蔵されており、この別途製作された内部仕切り部品12を前記ダクト本体4のブロー成形時に内包させる際に、前記内部仕切り部品12側に備えたアングル型のドリップチャンネル形成部13(図1参照)を前記ダクト本体4における空気取入口3直下の内壁面に突き合わせて一体化させることで該内壁面との間に前記ドリップチャンネル7(図2参照)が形成されるようになっており、前記水回収部8についても前記内部仕切り部品12側の一部に備えられていて前記ダクト本体4のブロー成形時に該ダクト本体4の内壁面と一体化されるようになっている。
【0021】
ここで、前記内部仕切り部品12の構造に関し補足して説明すると、この内部仕切り部品12が備えている三枚の仕切板9,10,11のうちの二枚の仕切板9,10が空気取入口3と対峙する面を成して手前側と奥側に間隔を隔てて配置され且つその上側が空気取入口3側に向け湾曲して該空気取入口3を上下に三分割するようになっていると共に、残りの一枚の仕切板11は、前記二枚の仕切板9,10に挟まれた流路を左右に二分割するように該各仕切板9,10の相互間に直角な向きで渡されており、これら三枚の仕切板9,10,11でダクト本体4の前記空気取入口3に近い内部空間が四つの流路に区画されるようになっている。
【0022】
更に、前記二枚の仕切板9,10における上下方向の中途部には、ダクト本体4の内壁面に対し全周に亘り内嵌して前記三枚の仕切板9,10,11をダクト本体4側から支えるための支持フレーム14が形成されているが、この支持フレーム14自体が前記ドリップチャンネル形成部13を一部として含んだ同様のドリップチャンネル形成部となっており、前記空気取入口3直下のドリップチャンネル7を一部として含んで全周に亘りドリップチャンネルが形成されるようにしてある。
【0023】
また、この支持フレーム14には、その全周に亘るドリップチャンネル(ドリップチャンネル7を含む)により受け止められた水滴wを回収し得るよう前述の水回収部8(図2参照)が備えられていて、該水回収部8に向け水滴wを流下し得るよう前記支持フレーム14に下り勾配が付されており、更には、前記二枚の仕切板9,10の表面にも前記支持フレーム14と対応する高さ位置にドリップチャンネル15,16が形成されていて、前記水回収部8に向け下り勾配が付されている。
【0024】
尚、前記水回収部8の底部には、前記ダクト本体4を貫通して外部に開通する排水口(図示せず)を後加工により設けておき、この排水口から水抜きが成されるようにしておくことが好ましい。
【0025】
而して、このように吸気ダクト1を構成すれば、霧等の細かい水滴wが空気の流れに随伴してルーバー5の内側の金網6まで到達してしまったとしても、該金網6にて凝集して伝い落ちる水滴wが空気取入口3直下のドリップチャンネル7により受け止められ、該ドリップチャンネル7を介し水回収部8へ導かれて回収されるので、前記水滴wの前記ダクト本体4内への侵入が防止される。
【0026】
また、一般的に、この種の吸気ダクト1は、ブロー成形により製作されることになるが、この際、別途製作された内部仕切り部品12を前記ダクト本体4のブロー成形時に内包させるだけで該ダクト本体4の空気取入口3直下の内壁面にドリップチャンネル7を簡単に形成することが可能となる。
【0027】
しかも、このドリップチャンネル7により導かれる水滴wを回収する水回収部8を内部仕切り部品12側に装備させているので、該内部仕切り部品12を前記ダクト本体4のブロー成形時に内包させるだけで該ダクト本体4内に簡単に水回収部8を備えることが可能となり、ダクト本体4の一部を金型で挟み付けて潰すことで水回収部を区画して作る場合と比較して流路断面積を大きく保つことが可能となる。
【0028】
従って、上記形態例によれば、金網6にて凝集して伝い落ちる水滴wを空気取入口3直下のドリップチャンネル7により受け止め、該ドリップチャンネル7を介し水回収部8へと導いて確実に回収することができるので、前記ダクト本体4内への水滴wの侵入を防止することができる。
【0029】
また、別途製作された内部仕切り部品12をダクト本体4のブロー成形時に内包させるだけで該ダクト本体4の空気取入口3直下の内壁面にドリップチャンネル7を簡単に形成することができ、該ドリップチャンネル7の新設に要するコスト増を著しく抑制することができる。
【0030】
更に、別途製作された内部仕切り部品12をダクト本体4のブロー成形時に内包させるだけで該ダクト本体4内に簡単に水回収部8を備えることができるので、ダクト本体4の一部を金型で挟み付けて潰すことで水回収部8を区画して作る場合と比較して流路断面積を大きく保つことができ、吸気抵抗の大幅な増加を未然に回避することができる。
【0031】
尚、本発明の吸気ダクトは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、空気取入口直下のドリップチャンネルや水回収部については、必ずしも内部仕切り部品を用いて形成することに限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 吸気ダクト
2 キャブ
3 空気取入口
4 ダクト本体
5 ルーバー
6 金網
7 ドリップチャンネル
8 水回収部
9 仕切板
10 仕切板
11 仕切板
12 内部仕切り部品
13 ドリップチャンネル形成部
w 水滴
図1
図2
図3
図4