(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コイル部品を磁気コア内部に埋設する前に、特許文献1に記載された射出成型に代えてディッピングによって、コイル部品を絶縁体で覆いたいという要望がある。この要望に応えるためには、ディッピング前に、コイルの巻線間の隙間(巻線間距離)が小さくなるようにコイルを収縮する必要がある。更に、ディッピング後にも、この小さな巻線間距離を一定に維持する必要がある。しかしながら、特許文献2に開示されたボビンでは、コイルの伸長を抑制できる一方、コイルの収縮を防止できない。即ち、コイルの巻線間距離を一定に保つことができない。
【0007】
そこで、本発明は、コイルの巻線間距離を小さな一定距離に維持可能な構造を有するコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1のコイル部品として、
コイルと、上側キャップと、下側キャップと、連結部材とを備えるコイル部品であって、
前記上側キャップは、上下方向において前記コイルの上側に取り付けられており、
前記下側キャップは、前記上下方向において前記コイルの下側に取り付けられており、
前記連結部材は、上側連結部材と、下側連結部材とを含んでおり、
前記上側連結部材は、前記上側キャップに固定されており、
前記下側連結部材は、前記下側キャップに固定されており、
前記上側連結部材及び前記下側連結部材の一方は、前記上下方向に並ぶ複数の係合部を有しており、前記上側連結部材及び前記下側連結部材の他方は、少なくとも1つの被係合部を有しており、
前記被係合部は、前記係合部のうちの1つと係合しており、これにより、前記上側連結部材及び前記下側連結部材を前記上下方向において連結して、前記上側キャップ及び前記下側キャップの前記上下方向における離間移動を規制している
コイル部品を提供する。
【0009】
また、本発明は、第2のコイル部品として、第1のコイル部品であって、
前記上側キャップは、対向部と、2つの押圧突起とを有しており、
前記対向部は、前記上下方向において前記コイルと対向しており、
前記押圧突起の夫々は、前記対向部から下方に突出しており、
前記上側連結部材は、前記上下方向と直交する直交方向において2つの前記押圧突起の間に位置している
コイル部品を提供する。
【0010】
また、本発明は、第3のコイル部品として、第1又は第2のコイル部品であって、
前記上側キャップと前記上側連結部材とは、互いに一体の部材であり、
前記下側キャップと前記下側連結部材とは、互いに一体の部材である
コイル部品を提供する。
【0011】
また、本発明は、第4のコイル部品として、第1から第3までのいずれかのコイル部品であって、
前記連結部材は、2つ設けられている
コイル部品を提供する。
【0012】
また、本発明は、第5のコイル部品として、第4のコイル部品であって、
2つの前記連結部材の前記上側連結部材は、前記上下方向と直交する直交平面において、前記上側キャップの中心部を挟んで両側に夫々位置している
コイル部品を提供する。
【0013】
また、本発明は、第6のコイル部品として、第1から第5までのいずれかのコイル部品であって、
2つの位置決め部材を更に備えており、
前記位置決め部材の夫々には、前記位置決め部材を前記上下方向に貫通する位置決め孔が形成されており、
前記上側キャップには、前記上側キャップを前記上下方向に貫通する2つの保持孔が形成されており、
前記位置決め部材は、前記保持孔に夫々挿入されて保持されており、
前記コイルは、本体部と、前記位置決め部材に夫々対応する2つの端部とを有しており、
前記端部の夫々は、前記本体部から引き出され、対応する前記位置決め部材の前記位置決め孔を通過して上方に延びている
コイル部品を提供する。
【0014】
また、本発明は、第7のコイル部品として、第6のコイル部品であって、
前記下側キャップには、固定部が形成されており、
前記位置決め部材のうちの1つは、被固定部を有しており、
前記被固定部は、前記固定部に固定されている
コイル部品を提供する。
【0015】
また、本発明は、第8のコイル部品として、
コイルと、上側キャップと、下側キャップと、2つの位置決め部材とを備えるコイル部品であって、
前記上側キャップは、上下方向において前記コイルの上側に取り付けられており、
前記上側キャップには、前記上側キャップを前記上下方向に貫通する2つの保持孔が形成されており、
前記下側キャップは、前記上下方向において前記コイルの下側に取り付けられており、
前記位置決め部材の夫々には、前記位置決め部材を前記上下方向に貫通する位置決め孔が形成されており、
前記位置決め部材は、前記保持孔に夫々挿入されて保持されており、
前記コイルは、本体部と、前記位置決め部材に夫々対応する2つの端部とを有しており、
前記端部の夫々は、前記本体部から引き出され、対応する前記位置決め部材の前記位置決め孔を通過して上方に延びている
コイル部品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上側キャップ及び下側キャップの一方に設けられた被係合部を、上側キャップ及び下側キャップの他方に設けられた複数の係合部のうちの1つと係合させることで、上側キャップ及び下側キャップの上下方向における離間移動が規制できる。複数の係合部を設けることで、上下方向におけるコイルのサイズの誤差を吸収しつつ、コイルの巻線間距離を小さな一定距離に維持可能である。即ち、本発明によれば、コイルの巻線間距離を小さな一定距離に維持可能な構造を有するコイル部品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、本発明の実施の形態によるコイル部品10は、被覆された導電体からなるコイル40と、樹脂等の絶縁体からなる上側キャップ50と、樹脂等の絶縁体からなる下側キャップ60と、樹脂等の絶縁体からなる2つの連結部材70と、樹脂等の絶縁体からなる2つの位置決め部材86,88(第1位置決め部材86及び第2位置決め部材88)とを備えている。連結部材70の夫々は、上側連結部材54と、下側連結部材64とを備えている。コイル部品10は、例えば、磁性体内部に埋設した状態で車載用リアクトルとして使用できる。但し、本発明は、これに限られず、様々なコイル部品に適用可能である。
【0019】
図4を参照すると、本実施の形態によるコイル40は、被覆された平角導線をエッジワイズ巻きして形成されている。コイル40は、本体部42と、第1端部(端部)46と、第2端部(端部)48とを有している。
【0020】
本体部42は、Z方向と平行に延びる中心軸42Xの周りを螺旋状に巻回している。この巻回により、本体部42には、複数の巻線42Tが形成されている。巻線42Tは、上下方向(Z方向)に並んでいる。巻線42Tの夫々は、中心軸42Xの周りを概ね1周している。本体部42は、上面42Uと、下面42Lとを有している。上面42Uは、Z方向において最も上側(+Z側)に位置する巻線42T(上側巻線42T)の上面であり、下面42Lは、Z方向において最も下側(−Z側)に位置する巻線42T(下側巻線42T)の下面である。
【0021】
本実施の形態の本体部42は、Z方向と直交する直交平面(XY平面)において角の丸い矩形形状を有している。但し、本発明は、これに限られず、本体部42は、XY平面において、矩形形状以外の形状を有していてもよい。例えば、本体部42は、XY平面において、円形状や楕円形状を有していてもよい。
【0022】
コイル40の2つの端部(端部46及び端部48)は、本体部42の第1水平方向(Y方向)における+Y側の部位に設けられている。端部46は、本体部42の下側巻線42Tから引き出されており、端部48は、本体部42の上側巻線42Tから引き出されている。
【0023】
端部46は、曲部462と、引出部466とを有している。曲部462は、本体部42の第2水平方向(直交方向:X方向)における−X側の端から、−X方向に延びた後、弧を描いて上方(+Z方向)に延びている。引出部466は、曲部462の上端(+Z側の端)から、本体部42の上面42Uを超えて上方に延びている。端部48は、曲部482と、引出部486とを有している。曲部482は、本体部42のX方向における中間部から、弧を描いて上方に延びている。引出部486は、曲部482の上端から上方に延びている。端部46及び端部48の夫々は、コイル部品10の使用時に、外部の電子回路(図示せず)等に接続される。
【0024】
本実施の形態による端部46及び端部48の夫々は、単一のコイル40の一部であり、本体部42と一体の部材である。但し、本発明は、これに限られない。例えば、端部46及び端部48の夫々は、本体部42と別体の部材であり、溶接、ネジ、リベットなどで本体部42に接続されていてもよい。また、端部46及び端部48の夫々は、本体部42の+Y側の部位に限らず、本体部42の様々な部位から引き出すことができる。
【0025】
図1を参照すると、上側キャップ50は、コイル40の本体部42に対応した形状を有している。
図2及び
図5を参照すると、上側キャップ50は、Z方向に沿って見たとき、矩形の枠形状を有している。詳しくは、上側キャップ50は、主部50Pと、内周壁50Iと、外周壁50Eとを有している。主部50Pは、矩形の枠形状を有する平板である。主部50Pは、上面50Uと、下面50Lとを有している。内周壁50Iは、主部50Pの内周から下方(−Z方向)に張り出している。外周壁50Eは、主部50Pの外周から下方に張り出している。
【0026】
図5を参照すると、上側キャップ50には、凹部50Rが形成されている。凹部50Rは、主部50P、内周壁50I及び外周壁50Eによって囲まれた空間である。
図1を併せて参照すると、凹部50Rは、コイル40の巻線42Tを略ぴったりと受容可能な形状およびサイズを有している。
【0027】
図5及び
図7を参照すると、上側キャップ50は、2つの対向部50Fと、4つの押圧突起52とを有している。本実施の形態において、対向部50Fの夫々は、下面50Lの一部である。詳しくは、対向部50Fの一方は、下面50Lの+Y側の部位であり、対向部50Fの他方は、下面50Lの−Y側の部位である。押圧突起52のうちの2つは、+Y側の対向部50Fに設けられており、X方向において互いに離れている。押圧突起52のうちの他の2つは、−Y側の対向部50Fに設けられており、X方向において互いに離れている。押圧突起52の夫々は、対応する対向部50Fから下方に突出している。
【0028】
図1、
図2及び
図5を参照すると、上側キャップ50は、第1保持部(保持部)56と、第2保持部(保持部)58とを有している。2つの保持部(保持部56及び保持部58)は、コイル40の端部46の引出部466及び端部48の引出部486に夫々対応するようにして、上側キャップ50の上面50Uに設けられている。より具体的には、保持部56及び保持部58は、上面50UのY方向における+Y側の部位に設けられている。保持部56は、上面50Uの−X側の端から−X方向に張り出しており且つ上方に突出している。保持部58は、上面50UのX方向における中間部から上方に突出している。保持部58の夫々は、X方向において2つの押圧突起52の間に位置している(
図5参照)。
【0029】
上側キャップ50には、2つの保持孔(保持孔568及び保持孔588)が形成されている。保持孔568は、保持部56に形成された孔であり、保持部56をZ方向に貫通している。保持孔588は、保持部58に形成された孔であり、保持部58をZ方向に貫通している。換言すれば、保持孔568及び保持孔588の夫々は、上側キャップ50をZ方向に貫通している。XY平面において、保持孔568及び保持孔588の位置は、端部46の引出部466及び端部48の引出部486の位置と夫々対応している。また、XY平面において、保持孔568のサイズは、引出部466のサイズよりもかなり大きく、保持孔588のサイズは、引出部486のサイズよりもかなり大きい。
【0030】
図5を参照すると、本実施の形態において、上側連結部材54の夫々は、上側キャップ50の一部であり、上側キャップ50と一体に形成されている。2つの上側連結部材54は、XY平面において、上側キャップ50の中心部を挟んで両側に夫々位置している。より具体的には、上側連結部材54の一方は、外周壁50Eの+Y側の部位のX方向における中間部に位置しており、上側連結部材54の他方は、外周壁50Eの−Y側の部位のX方向における中間部に位置している。特に、+Y側の上側連結部材54は、保持部58の真下に位置している。2つの上側連結部材54は、Y方向において対向するようにして、外周壁50Eの下端から下方に延びている。
【0031】
2つの上側連結部材54は、互いに同一の形状およびサイズを有している。
図7を参照すると、上側連結部材54は、6つの係合部546を有している。詳しくは、上側連結部材54には、凹部542が形成されている。凹部542は、下方に開口した空間である。加えて、上側連結部材54は、2つの側部544を有している。側部544は、X方向において凹部542を挟んでいる。側部544の夫々は、3つの係合部546を有している。側部544の夫々において、係合部546は、Z方向に等間隔で並んでいる。また、+X側の側部544の3つの係合部546は、−X側の側部544の3つの係合部546とZ方向において夫々同じ位置に設けられている。即ち、上側連結部材54は、Z方向に等間隔で並ぶ3対の係合部546を有している。
【0032】
係合部546の夫々は、凹部542の内部に突出している。係合部546の夫々は、係合面548を有している。係合面548は、係合部546の上端面であり、Z方向と直交している。側部544の夫々は、X方向において弾性的に撓むことができる。従って、係合部546の夫々は、X方向において移動できる。
【0033】
図1を参照すると、下側キャップ60は、上側キャップ50と同様に、コイル40の本体部42に対応した形状を有している。
図3及び
図6を参照すると、下側キャップ60は、Z方向に沿って見たとき、矩形の枠形状を有している。詳しくは、下側キャップ60は、主部60Pと、内周壁60Iと、外周壁60Eとを有している。主部60Pは、矩形の枠形状を有する平板である。主部60Pは、上面60Uと、下面60Lとを有している。内周壁60Iは、主部60Pの内周から上方に張り出している。外周壁60Eは、主部60Pの外周から上方に張り出している。
【0034】
図1、
図3及び
図6に示されるように、下側キャップ60には、凹部60Rが形成されている。凹部60Rは、主部60P、内周壁60I及び外周壁60Eによって囲まれた空間である。凹部60Rは、コイル40の巻線42Tを略ぴったりと受容可能な形状およびサイズを有している。
【0035】
図3及び
図6を参照すると、下側キャップ60には、固定部62が形成されている。固定部62は、下側キャップ60の上面60Uに形成された溝であり、上面60Uから下方に凹んでいる。固定部62は、上面60Uの+Y側の部位の−X側の端に位置している。
図2を併せて参照すると、XY平面において、固定部62の位置は、上側キャップ50の保持孔568の位置と対応している。
【0036】
図3及び
図6を参照すると、本実施の形態において、下側連結部材64の夫々は、下側キャップ60の一部であり、下側キャップ60と一体に形成されている。2つの下側連結部材64は、上側キャップ50(
図1参照)の上側連結部材54(
図1参照)と夫々対応するように設けられている。即ち、2つの下側連結部材64は、XY平面において、下側キャップ60の中心部を挟んで両側に夫々位置している。より具体的には、下側連結部材64の一方は、外周壁60Eの+Y側の部位のX方向における中間部に位置しており、下側連結部材64の他方は、外周壁60Eの−Y側の部位のX方向における中間部に位置している。2つの下側連結部材64は、Y方向において対向するようにして、外周壁60Eの上端から上方に延びている。
【0037】
2つの下側連結部材64は、互いに同一の形状およびサイズを有している。
図7を参照すると、下側連結部材64は、凸部642を有している。凸部642は、上方に突出した突起である。凸部642は、6つの被係合部646を有している。被係合部646のうちの3つは、凸部642の+X方向における側縁から+X方向に突出しており、被係合部646のうちの他の3つは、凸部642の−X方向における側縁から−X方向に突出している。+X側の3つの被係合部646は、Z方向に等間隔で並んでいる。−X側の3つの被係合部646も、Z方向に等間隔で並んでいる。また、+X側の3つの被係合部646は、−X側の3つの被係合部646とZ方向において夫々同じ位置に設けられている。即ち、下側連結部材64は、Z方向に等間隔で並ぶ3対の被係合部646を有している。
【0038】
被係合部646の夫々は、被係合面648を有している。被係合面648は、被係合部646の下端面であり、Z方向と直交している。
【0039】
図2を参照すると、位置決め部材86は、主部862と、被保持部864と、被固定部866とを有している。被保持部864は、主部862から下方に延びている。被固定部866は、被保持部864の下端の一部から下方に突出している。XY平面において、主部862は、上側キャップ50の保持部56と同じ形状および同じサイズを有している。XY平面において、被保持部864は、上側キャップ50の保持孔568と同じ形状を有しており、且つ、保持孔568よりも僅かに小さなサイズを有している。位置決め部材86には、位置決め孔868が形成されている。位置決め孔868は、位置決め部材86をZ方向に貫通する孔である。
図1を併せて参照すると、XY平面において、位置決め孔868のサイズは、コイル40の端部46の引出部466のサイズよりも僅かに大きい。
【0040】
図2を参照すると、位置決め部材88は、主部882と、被保持部884とを有している。被保持部884は、主部882から下方に延びている。XY平面において、主部882は、上側キャップ50の保持部58と同じ形状および同じサイズを有している。XY平面において、被保持部884は、上側キャップ50の保持孔588と同じ形状同じ形状を有しており、且つ、保持孔588よりも僅かに小さなサイズを有している。位置決め部材88には、位置決め孔888が形成されている。位置決め孔888は、位置決め部材88をZ方向に貫通する孔である。
図1を併せて参照すると、XY平面において、位置決め孔888のサイズは、コイル40の端部48の引出部486のサイズよりも僅かに大きい。
【0041】
コイル部品10は、下記のようにして組み立てられている。
【0042】
図1を参照すると、まず、コイル40を、下側キャップ60の上面60U上に載せて、コイル40の本体部42の下端部を、凹部60Rの内部に受容する。次に、上側キャップ50を、本体部42の上に載せる。
【0043】
図1及び
図2を参照すると、上側キャップ50を本体部42の上に載せたとき、コイル40の端部46の引出部466及び端部48の引出部486は、上側キャップ50の保持孔568及び保持孔588を夫々通過して上方に延びている。また、本体部42の上端部は、上側キャップ50の凹部50R(
図5参照)の内部に受容されている。
【0044】
図1及び
図2を参照すると、次に、上側キャップ50を、本体部42に取り付ける。後に詳しく説明するように、この上側キャップ50の本体部42への取付工程において、上側連結部材54と下側連結部材64とを互いに連結する。上側連結部材54と下側連結部材64とは、互いに対応する凹凸を有しており、スナップフィットによる連結が可能である。換言すれば、上側連結部材54及び下側連結部材64は、スナップフィット構造を有しており、容易且つ確実に連結できる。上側連結部材54と下側連結部材64との連結により、上側キャップ50は、Z方向においてコイル40の上側に取り付けられ、下側キャップ60は、Z方向においてコイル40の下側に取り付けられる。
【0045】
次に、位置決め部材86及び位置決め部材88を、上側キャップ50の保持部56及び保持部58に夫々取り付ける。詳しくは、コイル40の端部46の引出部466が位置決め部材86の位置決め孔868を通過するようにして、位置決め部材86の被保持部864を、上側キャップ50の保持孔568に挿入する。更に、位置決め部材86の被固定部866を、下側キャップ60の固定部62(
図3参照)に挿入して固定する。同様に、コイル40の端部48の引出部486が位置決め部材88の位置決め孔888を通過するようにして、位置決め部材88の被保持部884を、上側キャップ50の保持孔588に挿入する。
【0046】
位置決め部材86及び位置決め部材88が保持部56及び保持部58に夫々取り付けられたとき、コイル部品10の組み立てが終了する。このとき、位置決め部材86及び位置決め部材88は、保持孔568及び保持孔588に夫々挿入されて保持されている。また、位置決め部材86及び位置決め部材88に夫々対応する2つの端部46及び端部48は、コイル40の本体部42から引き出され、位置決め孔868及び位置決め孔888を夫々通過して上方に延びている。
【0047】
図8を参照すると、コイル部品10の組み立てが終了したとき、本体部42の上面42Uは、上側キャップ50の押圧突起52と接触している。上側キャップ50の対向部50Fの夫々は、Z方向においてコイル40の本体部42と対向している。また、上側連結部材54の夫々は、X方向において、対応する2つの押圧突起52の間に位置している。
【0048】
図1及び
図2を参照すると、本実施の形態によれば、XY平面において、上側キャップ50の保持孔568及び保持孔588のサイズは、端部46の引出部466及び端部48の引出部486のサイズよりもかなり大きい。このため、上側キャップ50をコイル40の本体部42の上に載せる際、上側キャップ50をコイル40に対してXY平面において精密に位置決めする必要がない。換言すれば、上側キャップ50の載置が容易である。本実施の形態によれば、上側キャップ50の載置工程が自動化でき、これにより製造コストが削減できる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、上側キャップ50を本体部42の上に載せたとき、コイル40は、上側キャップ50の凹部50R(
図5参照)及び下側キャップ60の凹部60Rによって、XY平面において、ある程度位置決めされている。このため、後述する上側連結部材54と下側連結部材64との連結だけでなく、位置決め部材86及び位置決め部材88の取付が容易である。本実施の形態によれば、位置決め部材86及び位置決め部材88の取付工程が自動化でき、これにより製造コストが更に削減できる。位置決め部材86及び位置決め部材88を取り付けたとき、コイル40の端部46及び端部48の夫々は、XY平面において、位置決め孔868及び位置決め孔888によって、正確に位置決めされている。
【0050】
上述したように、本実施の形態によれば、コイル40の端部46及び端部48の位置決めが容易であり且つ自動化可能である。
【0051】
以下、上側連結部材54と下側連結部材64との連結工程について詳しく説明する。
【0052】
図7を参照すると、上側キャップ50をコイル40の本体部42の上に載せたとき、本体部42の上面42Uは、上側キャップ50の押圧突起52と接触している。上側キャップ50の対向部50Fの夫々は、Z方向においてコイル40の本体部42と対向している。上側連結部材54の夫々は、X方向において、対応する2つの押圧突起52の間に位置している。このとき、本体部42において上下に隣り合う2つの巻線42Tの間には、距離G0の隙間が形成されている。このため、巻線42Tは、上下に移動しやすく、且つ、XY平面においても移動しやすい。換言すれば、本体部42の形状が崩れやすい。
【0053】
図7及び
図8を参照すると、上側キャップ50のうちの2つの押圧突起52の間に位置する所定部位に対して上方から力FPを加えて押圧すると、所定部位は弾性変形して下方に撓む。力FPを加え続けると、上側連結部材54を含む上側キャップ50全体が下方に移動し、下側連結部材64の凸部642は、上側連結部材54の凹部542に挿入される。このとき、コイル40の本体部42は、力FPによって下方に圧縮される。詳しくは、上下に隣り合う2つの巻線42Tが近接又は接触する。この結果、巻線42T間の隙間が距離G1まで小さくなる。
【0054】
本体部42を可能な限り下方に圧縮したのちに力FPによる押圧を停止すると、本体部42は僅かに伸長し、下側連結部材64の被係合部646は、上側連結部材54の係合部546と係合する。詳しくは、被係合部646の被係合面648は、係合部546の係合面548と面接触する。これにより、上側連結部材54及び下側連結部材64は、Z方向において連結される。更に、上側キャップ50及び下側キャップ60のZ方向における離間移動が規制される。
【0055】
図1を参照すると、上述の連結工程により、コイル40の本体部42は、テープ等によって固定することなく、その形状を維持できる。詳しくは、上側キャップ50及び下側キャップ60は、本体部42を間に挟んで上下にしっかりと連結されており、これにより、本体部42の巻線42Tがばらけることが防止されている。更に、上側キャップ50及び下側キャップ60は、XY平面において確実に位置決めされており、これにより、本体部42の捩れ(XY平面における巻線42Tの移動)が防止されている。即ち、本体部42の形状が仮固定されている。
【0056】
本実施の形態によれば、上側キャップ50及び下側キャップ60をテープや接着剤等によって本体部42に固定することなく、上述のように、本体部42の形状を維持できる。従って、テーピング工程、接着剤塗布工程、乾燥工程等の工数を削減しつつ、本体部42の形状を仮固定できる。また、本体部42の形状を仮固定したまま、ディッピングによって、コイル部品10を絶縁体で覆い、これにより、コイル部品10の絶縁性を高めると共に、本体部42の形状を最終的に固定できる。
【0057】
図7及び
図8を参照すると、本実施の形態による上側連結部材54は、複数の係合部546を有しており、下側連結部材64は、複数の被係合部646を有している。複数の係合部546が複数の被係合部646と夫々係合することにより、上側連結部材54と下側連結部材64とを強固に連結できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、
図9を参照すると、変形例によるコイル部品10Aは、下側連結部材64(
図7参照)に代えて、下側連結部材64Aを備えている。下側連結部材64Aは、1対の被係合部646のみが設けられた凸部642Aを有している。
図7から
図9までから理解されるように、下側連結部材64Aも、下側連結部材64と同様に、上側連結部材54に連結できる。
【0058】
以上の説明から理解されるように、上側連結部材54及び下側連結部材64(下側連結部材64A)の一方が、Z方向に並ぶ複数の係合部546を有していればよく、上側連結部材54及び下側連結部材64(下側連結部材64A)の他方が、少なくとも1つの被係合部646を有していればよい。上側キャップ50及び下側キャップ60の一方に設けられた被係合部646を、上側キャップ50及び下側キャップ60の他方に設けられた複数の係合部546のうちの1つと係合させることで、上側キャップ50及び下側キャップ60のZ方向における離間移動が規制できる。
【0059】
更に、複数の係合部546を設けることで、Z方向におけるコイル40の本体部42のサイズの誤差を吸収しつつ、コイル40の巻線42T間距離を小さな一定距離に維持可能である。換言すれば、コイル40の巻線42T間距離を小さな一定距離G1に維持可能な構造を有するコイル部品10(コイル部品10A)が得られる。コイル40の巻線42T間距離を小さな一定距離G1に維持できるため、コイル部品10(コイル部品10A)をディッピングによって絶縁体で覆う際に生じうる様々な問題を解決できる。例えば、巻線42T間に必要以上の絶縁体が吸い込まれたり巻線42T間から必要な絶縁体が吐き出されたりすることによる巻線42T間距離の変動を防止できる。また、コイル40の中心軸42X(
図4参照)方向における熱伝導性を高めることが可能となる。
【0060】
更に、本実施の形態によれば、2つの押圧突起52の間に位置する所定部位を下方に撓ませることで、上側連結部材54を、押圧突起52に対して下方に移動できる。これにより、押圧突起52が設けられていない場合と比べて、係合部546を大きく下方に移動でき、より下方の被係合部646と係合できる。従って、コイル40の巻線42TのZ方向の移動を、より確実に抑制できると共に、巻線42TのXY平面上の移動を、より確実に抑制できる。但し、押圧突起52は、必要に応じて設ければよい。
【0061】
本実施の形態によれば、上側キャップ50と上側連結部材54とは、互いに一体の部材であり、下側キャップ60と下側連結部材64とは、互いに一体の部材である。但し、本発明は、これに限られない。上側連結部材54が上側キャップ50に固定されており、下側連結部材64が下側キャップ60に固定されている限り、上側キャップ50と上側連結部材54とは、互いに別体の部材であり、下側キャップ60と下側連結部材64とは、互いに別体の部材であってもよい。例えば、上側連結部材54及び下側連結部材64は、上側キャップ50及び下側キャップ60に夫々接着されて固定されていてもよい。
【0062】
図3、
図5及び
図6を参照すると、本実施の形態によれば、連結部材70(上側連結部材54と下側連結部材64とのセット)は、2つ設けられている。
図1を併せて参照すると、連結部材70は、コイル40の本体部42を挟んでY方向両側に夫々位置している。この配置により、上側キャップ50と下側キャップ60とを確実に連結できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、本体部42の外側に部位を設けたくない場合、連結部材70の夫々の上側連結部材54は、上側キャップ50の内周壁50Iに設けてもよく、連結部材70の夫々の下側連結部材64は、下側キャップ60の内周壁60Iに設けてもよい。この場合、2つの連結部材70は、本体部42の内側に位置しており、Y方向に対向している。
【0063】
本実施の形態によれば、連結部材70の一方は、上側キャップ50の保持部58の下に位置している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、2つの連結部材70は、コイル部品10の+X側及び−X側に夫々位置するように設けてもよい。更に、コイル部品10に、3つ以上の連結部材70を設けてもよい。
【0064】
本実施の形態は、以上に説明した変形例に加えて、以下に説明するように、更に様々に変形可能である。
【0065】
図10から
図12までを参照すると、変形例によるコイル部品10Bは、上側連結部材54Bと、下側連結部材64Bとを備えている。上側連結部材54Bは、上側キャップ50の外周壁50Eに固定されており、下側連結部材64Bは、下側キャップ60の外周壁60Eに固定されている。
【0066】
上側連結部材54Bは、被ガイド部542Bと、1つの被係合部546Bとを有している。被ガイド部542Bは、外周壁60Eを超えて下方に延びている。被係合部546Bは、被ガイド部542Bの+X側の側面から+X方向に突出している。下側連結部材64Bは、2つのガイド部(ガイド部642B及びガイド部644B)と、4つの係合部646Bとを有している。ガイド部642B及びガイド部644Bは、X方向において対向しつつ、外周壁60E上をZ方向に延びている。係合部646Bは、ガイド部642Bの−X側の側面に設けられている。4つの係合部646Bは、Z方向に並んでおり、且つ、−X方向に突出している。
【0067】
上側キャップ50をコイル部品10Bのコイル40(
図1参照)に取り付ける際、上側連結部材54Bの被ガイド部542Bは、下側連結部材64Bのガイド部642B及びガイド部644Bによってガイドされて下方に移動する。この結果、被係合部546Bは、係合部646Bのうちの1つと係合し、これにより、上側連結部材54B及び下側連結部材64BをZ方向において連結して、上側キャップ50及び下側キャップ60のZ方向における離間移動を規制する。
【0068】
本変形例によれば、被ガイド部542Bを、ガイド部642B及びガイド部644BによってX方向に挟むことで、被ガイド部542Bを位置決めでき、且つ、上側キャップ50の回転を防止できる。また、被ガイド部542Bは、X方向において弾性的に撓むことができる。このため、被ガイド部542BのX方向における位置が多少ずれていても、ガイド部642B及びガイド部644Bによる位置決めが可能である。
【0069】
図13を参照すると、別の変形例によるコイル部品10Cは、上側連結部材54Cと、下側連結部材64Cとを備えている。上側連結部材54Cは、下方に開口した円筒形状の孔を有している。下側連結部材64Cは、割ピン形状を有している。下側連結部材64Cを上側連結部材54Cの内部に挿入して固定することにより、上述した実施の形態や変形例と同様に、上側キャップ50(
図1参照)と下側キャップ60(
図1参照)とを連結可能である。
【0070】
図14を参照すると、コイル部品10Cは、上側連結部材54C及び下側連結部材64Cに代えて、連結部材70Cを備えていてもよい。連結部材70Cは、上側キャップ50及び下側キャップ60のいずれとも別体の単一部材であり、且つ、上側連結部材と下側連結部材とを一体化した部材である。連結部材70Cを使用することで、上述した実施の形態や変形例と同様に、上側キャップ50と下側キャップ60とを連結可能である。
【0071】
図15を参照すると、変形例によるコイル部品10Dは、コイル部品10(
図1参照)の各部材に加えて、アルミニウム等の非磁性体からなるケース20と、軟磁性体からなる磁気コア30とを備えている。本実施の形態による磁気コア30は、鉄系合金やフェライト等からなる軟磁性の磁性体粉末322を、樹脂等からなる結合剤324によって結合したものである。
【0072】
コイル部品10Dは、例えば以下のように製造できる。まず、コイル部品10(
図1参照)をディッピングによって絶縁体で覆う。次に、コイル部品10を、ケース20の底板から上方に離しつつ、ケース20の内部に配置する。次に、結合剤324に磁性体粉末322を混合して磁性スラリーを作成する。次に、磁性スラリーをケース20の内部に注いでコイル部品10の本体部42(
図1参照)全体を覆う。次に、磁性スラリーを硬化させて磁気コア30を形成する。このように製造したコイル部品10Dは、例えば車載用リアクトルとして使用できる。