(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641244
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】噴射積層体
(51)【国際特許分類】
B41J 2/19 20060101AFI20200127BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20200127BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
B41J2/19
B41J2/14 605
B41J2/14 305
B41J2/165 205
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-136728(P2016-136728)
(22)【出願日】2016年7月11日
(65)【公開番号】特開2017-30352(P2017-30352A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2019年7月5日
(31)【優先権主張番号】14/814,024
(32)【優先日】2015年7月30日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テランス・エル・スティーブンス
【審査官】
馬渕 貴洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−237478(JP,A)
【文献】
特開2006−255948(JP,A)
【文献】
特開2013−248843(JP,A)
【文献】
特開2013−193445(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0165228(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 〜 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射積層体であって、
本体チャンバーのアレイを形成する一連のプレートであって、噴射口のアレイを有するノズルプレートを含み、各噴射口が本体チャンバーに対応する、一連のプレートを備え、
前記一連のプレートは、
本体チャンバーポートと、本体チャンバーとを有し、この本体チャンバーポートを通して、流体が本体チャンバーに入り、本体チャンバーから出ることができ、
流体が前記本体チャンバーポートに到達できるように、前記本体チャンバーポートに連結される入口チャネルと、
流体が前記入口チャネルに入れるように、前記入口チャネルに連結される入口ポートと、を有し、
前記本体チャンバーポートと前記噴射口との間に、前記本体チャンバーポートとの対向部分に複数の穴を有し、気泡の通過を抑制する気泡通過抑制プレートが配置され、
前記入口チャネルのうち、前記入口ポートとは反対側の部分は、前記噴射口と前記気泡通過抑制プレートとの間に接続される、
噴射積層体。
【請求項2】
前記流体にはインクが含まれる、請求項1に記載の噴射積層体。
【請求項3】
前記噴射積層体が流路を形成し、前記気泡通過抑制プレートにより、気泡が前記流路内に閉じ込めされる、請求項1に記載の噴射積層体。
【請求項4】
前記流路には、前記入口ポートから前記入口チャネルと前記噴射口を介して前記噴射口より流体噴出側に配置された出口ノズルに繋がる経路が含まれる、請求項3に記載の噴射積層体。
【請求項5】
前記一連のプレートには、隔膜プレート、本体チャンバープレート、本体チャンバーポートプレート、入口チャネルプレート、出口プレート、およびノズルプレートが含まれる、請求項1に記載の噴射積層体。
【請求項6】
前記気泡通過抑制プレートが前記穴のアレイを含む、請求項1に記載の噴射積層体。
【請求項7】
それぞれの前記穴の直径のサイズが、気泡の浮力より大きなメニスカス力を生成するよう選択される、請求項6に記載の噴射積層体。
【請求項8】
それぞれの前記穴の直径が18マイクロメートル未満である、請求項6に記載の噴射積層体。
【請求項9】
それぞれの前記穴の直径が50マイクロメートル未満である、請求項6に記載の噴射積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印字ヘッドの構造に関し、より詳細には、並列噴射口の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットの印字ヘッドは、通常、「噴射積層体」、すなわち、プレートの積層体を含み、このプレートの積層体により、インク容器から単一噴射口のアレイまでのインク経路のマニホールドおよびチャンバーが形成され、単一噴射口がそれぞれノズルを有する。インクは、容器から噴射積層体に入り、インク経路を介して、最終プレートへ流れる。この最終プレートにはノズルのアレイが含まれ、インクがこれらのノズルを介して選択的に吐出される。トランスデューサのアレイが、信号により選択的に駆動し、これらのトランデューサが、単一噴射口に関連する圧力チャンバーすなわち本体チャンバーに対して動作する。信号を受けて特定のトランスデューサがインクを噴射する際、そのトランスデューサは、本体チャンバーのインクを噴射口とノズルを通して印刷面へと押し出す。
【0003】
高画質の画像および高い処理能力への要求により、噴射口はより高い記録密度が必要となってきた。記録密度とは、所定の空間内に存在する噴射口の数のことである。各噴射口の空間要求により、その空間内の噴射口の数は制限される。現在の印字ヘッドの設計では、通常、直流経路が採用される。流体は、第1のディスクリート流体要素を介して本体チャンバーに流れ込み、次いで、第2のディスクリート流体要素を介して本体チャンバーから出る。この第2のディスクリート流体要素が、対応する単一噴射開口に繋がっている。これらの流体要素には、それぞれ噴射積層体に関連する特定の広さのスペースが用いられ、これらを分離するために、流体要素間の距離を離すことが必要となる。このことにより、所与の噴射積層体内に詰め込み可能な単一噴射口の数が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2013年12月3日出願の米国特許出願第14/095,127号明細書に記載されている通り、並行流の単一噴射口構造体を用いて記録密度を増やすことができる。しかし、この単一噴射口構造体では、直列の噴射構造体に存在する、ドライバ本体の容積を出入りするインクの貫流が発生しない。さらに、並行流の単一噴射口構造体は、使用中は噴射口の出口部と共に下方を向き、噴射口内に気泡が入り込み、この気泡は浮力があるため、本体チャンバー内に入り込み易い。ドライバ本体を出入りするインクの貫流が発生しないため、本体チャンバー内に入った気泡を、印字ヘッドの向きを変えることなく、真空状態を作り出すことにより、あるいは、噴射流体にゆっくりと吸収されることにより取り除くことは難となる。本体チャンバー内に気泡が残っていると、噴射口は機能しなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、インクジェットプリンタ用の噴射積層体に関する。この噴射積層体は、本体チャンバーのアレイを形成する一連のプレートを含み、これらの一連のプレートが、噴射口のアレイを有するノズルプレートを含み、各噴射口が、本体チャンバーに対応し、本体チャンバーがそれぞれ本体チャンバーポートを有し、この本体チャンバーポートを通して、流体が本体チャンバー内に出入り可能となり、本体チャンバーポートと噴射口の残りの構成要素との間にはバブルスクリーンが配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、バブルスクリーンのない並行流の単一噴射構造体を有するインクジェット噴射積層体の側面図である。
【
図2】
図2は、バブルスクリーンのない並行流の単一噴射構造体の三次元図である。
【
図3】
図3は、バブルスクリーンを有する単一噴射構造体の実施形態の側面図である。
【
図4】
図4は、バブルスクリーンを有する並行流の単一噴射構造体の三次元図である。
【
図5】
図5は、バブルスクリーンがなく、ドライバ本体チャンバーの内側に気泡が入っている並行流の単一噴射構造体を有するインクジェット噴射積層体の側面図である。
【
図6】
図6は、バブルスクリーンを有し、そのバブルスクリーンに気泡が付着した並行流の単一噴射構造体のインクジェット噴射積層体の側面図である。
【
図7】
図7は、バブルスクリーンを有し、そのバブルスクリーンに気泡が付着した並行流の単一噴射構造体のインクジェット噴射積層体の捕捉の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1には、噴射積層体の単一噴射口10の例が示されている。この例では、噴射積層体は、特定の数および構成のプレートで構成されており、噴射積層体の実際の構成、およびトランスデューサの種類や構造などの特定の構成要素は、多様であり得る。さらに、本明細書で議論する特定の流体とは、インクジェットプリンタで使用するインクであるが、本明細書の実施形態は、別の種類の流体の噴射要素にも適用可能である。噴射積層体は、通常、噴射口のアレイを含み、これらの噴射口は、それぞれ対応する入口チャネル、本体チャンバーポート、本体チャンバー、出口、およびノズルすなわち開口を有する。これらの噴射口は、本明細書において噴射口または噴射口要素と呼ばれる個々の構成要素である。本明細書で使用される噴射口という用語は、入口チャネル、本体チャンバーポート、本体チャンバー、出口、そして最終的にノズルまたは開口を含むインクを誘導する全ての要素が含まれる。
【0008】
図1の例では、噴射口要素は、入口ポート16で始まるインク経路、入口チャネル18、および本体チャンバー22にインクを誘導する本体チャンバーポート20から構成される。インクは、出口28と流体連絡する本体チャンバーポートを介して、本体チャンバーに入り、そして本体チャンバーから出て、最終的にはノズルすなわち開口14を介して噴射積層体から吐出される。このトランスデューサ32は、トランスデューサドライバ36からトランスデューサ要素34に送られる信号に応じて作動する。この特定の例では、トランスデューサが、信号に応じて変形し、最初に本体チャンバーを膨らましチャンバー内にインクを引き込む。次いで、トランスデューサは、本体チャンバーを縮ませて、本体チャンバー内のインクをノズルすなわち開口へと押し出す。
図1に示されているチャネル、ポート、チャンバー、およびノズルは、隔膜プレート40、本体チャンバープレート42、本体チャンバーポートプレート44、入口チャネルプレート46、出口プレート48、およびノズルプレート50などの一連のプレートにより形成される。
【0009】
図2には、バブルスクリーンのない並行流の単一噴射構造体の三次元図が示されている。
図1の例と同様に、
図2に示される噴射口要素も、入口ポート16で始まる入口チャネル18、および本体チャンバー22にインクを誘導する本体チャンバーポート20で構成される。インクは、出口28と流体連絡する本体チャンバーポートを介して、本体チャンバーに入り、そして本体チャンバーから出て、最終的にはノズルすなわち開口14を介して、噴射積層体から吐出される。
【0010】
図3には、バブルスクリーンを有する単一噴射構造体60の実施形態が示される。
図1と同様に、この単一噴射構造体60は、入口ポート64、入口チャネル66、本体チャンバーポート68、本体チャンバー70、出口72、ノズルすなわち開口74を有し、その他にバブルスクリーン76も備え、このバブルスクリーンは、本体チャンバーポートと単一噴射構造体の残りの構成要素との間に配置される。
図4には、バブルスクリーンを備えた単一噴射構造体60の実施形態の三次元図が示される。このバブルスクリーン76は、本体チャンバーポート68と、噴射口(出口72で示される)の残りの構成要素との間に配置されている。
【0011】
複数の機構を通して、入口経路またはノズル自体から単一噴射構造体に空気が入る込む可能性がある。本体チャンバーなどの単一噴射口の部分内に気泡が残っていると、噴射口は機能しなくなる。そのような事象が発生した場合、システムにパージサイクルを施し、これにより、入口経路にインクを供給する流体構造体と、ノズルまたはノズルのアレイとの間に圧力差を発生させることにより、インクは入口経路の入口から、単一噴射口のノズルの外に押し出される。このプロセスにより、流体構造体の流路内に留まっていた空気は、単一噴射口のノズルを介して単一噴射口の外に噴出される。
【0012】
図5には、ドライバ本体チャンバー22の内部に気泡84が侵入した状態のバブルスクリーンを備えた並行流の単一噴射構造体を有するインクジェット噴射積層体10の側面図が示されている。
【0013】
矢印100は、上記に記載したパージサイクル中のインクの流路を示す。パージサイクル中、矢印100で示される通り、気泡は本体チャンバー、すなわり、停滞ゾーンにあるため、インクの流路は気泡を迂回する。したがって、パージサイクル中、気泡は流れに巻き込まれず、パージすることはできない。
【0014】
図6には、気泡84がバブルスクリーンに付着した状態のバブルスクリーン76を備えた並行流の単一噴射構造体を有するインクジェット噴射積層体の側面図が示されている。矢印102は、パージサイクル中の、バブルスクリーンを備えたインクジェット積層体内でのインクの流路を示す。矢印102に示される通り、バブルスクリーンに付着する気泡は、流路内に存在する。気泡は流路内に存在するため、気泡はパージ中に流路に巻き込まれ、単一噴射ノズルを通して単一噴射口から排出される。
【0015】
図7には、本体チャンバーポート68と噴射口72の残りの構成要素との間に配置されたバブルスクリーン76と、バブルスクリーンに付着した気泡84の拡大図が示されている。バブルスクリーンの穴を通して、気泡に浮力が作用するが、メニスカス力が働いて、この気泡をバブルスクリーンの穴の下に維持していることが分かる。穴を通して気泡が上昇しないようにするために、メニスカス力F
Mが気泡の浮力F
Bよりも大きくなるよう、穴の直径Dのサイズを調整しなければならない。
【0016】
さらに、噴射中に適切な性能を維持するために、穴の数N、穴の長さL、および穴の直径Dは、本体チャンバーと単一噴射口の残りの構成要素との間に、受け入れられる程度に少ないインピーダンスが導入されるよう、調整しなければならない。この長さLは、
図7に示されている。
【0017】
これら2つの必要条件を満たすために、次の関係Mの値は、約0.001未満で、0.01:M=(L)/(N*(D)
2)より大きくてはならない。穴の直径Dは、約18マイクロメートル(um)未満
とした方がよく、50umより大きくてはならない。なお、適切な縮尺率を維持するために、これらの計測はマイクロメートルで行われる。このようにして、インクジェット印字ヘッドは、本体チャンバー内でインクの貫流が発生しないために生じる問題を回避して、並行流の単一噴射構造体で噴射密度を実現することができる。