(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るパーキングブレーキレバー装置について、具体化した本実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。尚、当該パーキングブレーキ装置の前後方向、上下方向、及び左右方向は、図面に表した前後方向、上下方向、及び左右方向で定義して説明する。また、当該パーキングブレーキ装置に関し、本発明を特定する事項を除く公知技術については、詳細な説明を省略することがある。
【0023】
[1.第1実施形態]
以下、本発明に係るパーキングブレーキレバー装置の第1実施形態について、
図1乃至
図11を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
[1.−1 パーキングブレーキレバー装置の概要]
図1に表すように、本実施形態のパーキングブレーキレバー装置11は、セクタ13、レバー本体15、グリップ部材17、レリーズノブ19、ブレーキケーブル21、イコライザ装置23、及びパーキングブレーキスイッチBS等を備えている。
【0025】
セクタ13は、略平板形状の部材であり、車両のフロア(図示せず)に略垂直に固定されるものである。セクタ13には、レバー本体15が支持ピンP1,P2を介して回動可能に支持されている。レバー本体15の前方端部は、略円筒形状に形成されており、グリップ部材17が嵌着されている。レバー本体15の前方端部及びグリップ部材17は、操作部Sを構成し、レバー本体15が回動操作される際に運転者によって把持される。操作部Sの前方端部SAには、レリーズノブ19が突出して配設されている。
【0026】
ブレーキケーブル21の前方端部は、後述する
図2に表されたケーブルガイド29を介して、レバー本体15に連結されている。ブレーキケーブル21の後方端部は、イコライザ装置23に連結されている。これにより、ブレーキケーブル21は、レバー本体15の回動操作力をイコライザ装置23に伝達することができる。イコライザ装置23は、レバー本体15の回動操作力を均等化して車両の左右のパーキングブレーキ(図示せず)に伝達するものである。つまり、運転者は、レバー本体15を
図1の時計回り又は反時計回りに回動操作することにより、車両の左右のパーキングブレーキ(図示せず)を作動又は解除させることができる。
【0027】
パーキングブレーキスイッチBSは、接点のオン・オフが切り換わることにより、車両の左右のパーキングブレーキ(図示せず)が作動状態か否かを検出するものである。尚、符号P3,P4は、支持ピンである。
【0028】
図2及び
図3に表すように、本実施形態のパーキングブレーキレバー装置11は、上述したセクタ13、グリップ部材17、ブレーキケーブル21、及びパーキングブレーキスイッチBSに加えて、合成樹脂部材23A、イコライザ本体23B、第1半割体25、第2半割体27、及びケーブルガイド29を備えている。
【0029】
合成樹脂部材23A及びイコライザ本体23Bは、上述したイコライザ装置23を構成するものである。合成樹脂部材23Aは、イコライザ本体23B内に組み付けられる。イコライザ本体23Bには、ブレーキケーブル21の後方端部が合成樹脂部材23Aを介して挿入される。ブレーキケーブル21の後方端部には、係止部材21Aが設けられている。ブレーキケーブル21の係止部材21Aがイコライザ本体23Bに係り合って止まることにより、ブレーキケーブル21の後方端部がイコライザ装置23に連結される。
【0030】
第1半割体25及び第2半割体27は、上述したレバー本体15を構成するものである。第1半割体25には、ピン穴25A,25B,25C,25D及びフランジ部25Eが設けられている。第2半割体27には、ピン穴27A,27B,27C,27D及びフランジ部27Eが設けられている。
【0031】
ケーブルガイド29は、その左側面(内面)にケーブル溝29Aが設けられている。ケーブルガイド29の左側面(内面)は、第1半割体25の右側面(外面)に重ね合わされた状態で、第1半割体25の右側面(外面)に溶接される。この溶接により、ケーブルガイド29の前方下端部にはケーブル溝29Aと連通する下端開口部が形成されると共に、ケーブルガイド29の前方上端部にはケーブル溝29Aと連通する上端開口部が形成される。ケーブルガイド29の前方下端部に形成された下端開口部には、ブレーキケーブル21の前方端部に対してかしめ部材21Bを介して継ぎ合わされたボルト軸21Cが差し入れられる。ボルト軸21Cは、ケーブル溝29A内を通り、ケーブルガイド29の前方上端部に形成された上端開口部から突き出される。ボルト軸21Cの突出部分には、ナット部材21Dが螺嵌される。これにより、ブレーキケーブル21の前方端部がレバー本体15に連結される。
【0032】
さらに、本実施形態のパーキングブレーキレバー装置11は、圧縮コイルバネ31、スラントノブ部材32、蓋部材33、レリーズロッド35、ポール37、及びラチェット39を備えている。
【0033】
圧縮コイルバネ31は、上述したレリーズノブ19を前方に付勢させるものである。かかるレリーズノブ19は、スラントノブ部材32及び蓋部材33で構成される。尚、圧縮コイルバネ31、スラントノブ部材32、蓋部材33、レリーズロッド35、及びポール37の組付等については、後述する。ラチェット39は、略平板形状の部材であり、突起部39A及び歯部39Bが設けられている。
【0034】
セクタ13には、固定用ピン穴13A,13B、切込部13C、回動用ピン穴13D、及び案内用ピン穴13Eが設けられている。固定用ピン穴13A,13Bを介してネジ部材N1,N2がパーキングブレーキスイッチBSにねじ込まれることにより、パーキングブレーキスイッチBSがセクタ13に固定される。切込部13Cには、ラチェット39の突起部39Aがかしめ加工される。これにより、ラチェット39がセクタ13に固定される。
【0035】
回動用ピン穴13Dには、支持ピンP1が嵌通される。支持ピンP1の右方端部は、第1半割体25のピン穴25Aに通された状態で、第1半割体25の右側面(外面)からかしめ加工される。支持ピンP1の左方端部は、第2半割体27のピン穴27Aに通された状態で、第2半割体27の左側面(外面)からかしめ加工される。
【0036】
案内用ピン穴13Eは、回動用ピン穴13Dを中心とした円弧の形状に形成されている。案内用ピン穴13Eには、支持ピンP2が嵌通される。支持ピンP2の右方端部は、第1半割体25のピン穴25Bに通された状態で、第1半割体25の右側面(外面)からかしめ加工される。支持ピンP2の左方端部は、第2半割体27のピン穴27Bに通された状態で、第2半割体27の左側面(外面)からかしめ加工される。
【0037】
このようにして、セクタ13では、第1半割体25及び第2半割体27で構成されるレバー本体15が、支持ピンP1,P2を介して回動可能に支持されている。尚、支持ピンP1は、レバー本体15の回動軸として機能する。
【0038】
さらに、第1半割体25及び第2半割体27で構成されるレバー本体15では、ポール37が支持ピンP3を介して回動可能に支持されている。そのために、ポール37の略中央に設けられた回動用ピン穴37Aには、支持ピンP3が嵌通される。支持ピンP3の右方端部は、第1半割体25のピン穴25Cに通された状態で、第1半割体25の右側面(外面)からかしめ加工される。支持ピンP3の左方端部は、第2半割体27のピン穴27Cに通された状態で、第2半割体27の左側面(外面)からかしめ加工される。尚、支持ピンP3は、ポール37の回動軸として機能する。
【0039】
また、支持ピンP4によって、第1半割体25及び第2半割体27が一体化される。そのために、支持ピンP4の右方端部は、第1半割体25のピン穴25Dに通された状態で、第1半割体25の右側面(外面)からかしめ加工される。支持ピンP4の左方端部は、第2半割体27のピン穴27Dに通された状態で、第2半割体27の左側面(外面)からかしめ加工される。
【0040】
尚、支持ピンP1,P2,P3によっても、レバー本体15を構成する第1半割体25及び第2半割体27が一体化される。
【0041】
このようにして、第1半割体25及び第2半割体27が一体化されることによって、第1半割体25のフランジ部25E及び第2半割体27のフランジ部27Eを一体化させると共に、セクタ13、圧縮コイルバネ31、スラントノブ部材32、蓋部材33、レリーズロッド35、ポール37、及びラチェット39をレバー本体15に内在させている。
【0042】
一体化されたフランジ部25E,27Eは、レバー本体15の回動に応じて、パーキングブレーキスイッチBSの接点に対して圧接又は離間することにより、その接点のオン・オフを切り換える。
【0043】
図3に表すように、スラントノブ部材32には、収容部32Aが設けられている。収容部32Aには、蓋部材33が係着される。蓋部材33の後方側面には、バネ受部33Aが設けられている。レリーズロッド35の前方端部35Aには、抜止部35Xが突設されている。
【0044】
レリーズロッド35の後方端部には、連結突部35Bが設けられている。ポール37の上方端部には、連結用穴37Bが設けられている。連結用穴37Bには、レリーズロッド35の連結突部35Bが係入される。これにより、レリーズロッド35の後方端部とポール37の上方端部とが連結される。ポール37の下方端部には、爪部37Cが設けられている。爪部37Cは、ラチェット39の歯部39Bと噛み合うものである。第1半割体25の前方端部25Fには、その平面部分が切り起こされることにより、略L字状の係止爪41が設けられている。
【0045】
圧縮コイルバネ31は、レリーズロッド35の前方端部35Aからレリーズロッド35に挿通される。レリーズロッド35の前方端部35Aは、その前方端部35Aに設けられた抜止部35Xと共に、スラントノブ部材32の収容部32Aに収容される。スラントノブ部材32の収容部32A内では、レリーズロッド35の抜止部35Xが係止される。さらに、スラントノブ部材32の収容部32Aには、蓋部材33が係着される。これにより、レリーズロッド35の前方端部35Aは、スラントノブ部材32及び蓋部材33で構成するレリーズノブ19に取り付けられる。尚、レリーズロッド35の取付構造及び蓋部材33の係着構造についての詳細な説明は、後述する。
【0046】
圧縮コイルバネ31の第1端部は、蓋部材33のバネ受部33Aに装着される。圧縮コイルバネ31の第2端部は、第1半割体25の係止爪41に係止される。これにより、圧縮コイルバネ31は、僅かに圧縮状態となり、復元力を発生させる。スラントノブ部材32及び蓋部材33で構成するレリーズノブ19は、圧縮コイルバネ31の復元力で前方に付勢される。さらに、圧縮コイルバネ31の復元力は、レリーズロッド35を介して、ポール37を
図3の反時計回りの方向に付勢させるので、ポール37の爪部37Cをラチェット39の歯部39Bに噛み合わさせる。
【0047】
このような状態で第1半割体25及び第2半割体27が一体化されると、第1半割体25の前方端部25Fと第2半割体27の前方端部27Fとが重ね合わされることにより、レバー本体15の前方端部が略円筒形状に形成される。さらに、レバー本体15の前方端部にグリップ部材17が嵌着されると、操作部Sの前方端部SAからレリーズノブ19が突出する。運転者がレリーズノブ19の押込み操作を行うと、レリーズロッド35がポール37側に移動すると共に、ポール37が
図2及び
図3の時計回りの方向に移動して、ポール37の爪部37Cがラチェット39の歯部39Bから離間するので、レバー本体15の回動操作を運転者が行うことができる。これに対して、運転者がレリーズノブ19の押込み操作を解除すると、操作部Sの前方端部SAからレリーズノブ19が突出するに伴い、レリーズロッド35がレリーズノブ19側に移動すると共に、ポール37が
図2及び
図3の反時計回りの方向に移動して、ポール37の爪部37Cがラチェット39の歯部39Bと噛み合うので、レバー本体15の位置を保持させることができる。
【0048】
[1.−2 レリーズロッドの構成]
図4に表すように、レリーズロッド35は、棒状部材であり、その断面が真円の円形である。レリーズロッド35は、上述したように、抜止部35X及び連結突部35Bを備えている。抜止部35Xは、レリーズロッド35の前方端面が鍛造加工されることにより、レリーズロッド35の径方向に突出した円板状に形成されている。
【0049】
レリーズロッド35は、回止部35Y及び回避部35Zを備えている。回止部35Y及び回避部35Zは、レリーズロッド35の一部が夫々プレス加工されることにより、平板状に形成されている。よって、回止部35Y及び回避部35Zの各断面は、略長方形の非円形である。尚、回止部35Y及び回避部35Zは、双方の平面が垂直に交差するような位置関係にある。回止部35Yは、レリーズロッド35の前方端面に形成された抜止部35Xに隣接している。従って、レリーズロッド35の前方端部35Aには、抜止部35X及び回止部35Yが設けられている。
【0050】
[1.−3 スラントノブ部材の構成]
図5に表すように、スラントノブ部材32は、略円筒形状を有し、樹脂から作られている。スラントノブ部材32の一方端面は、その下部が外方に突き出したスラント形状であり、レリーズノブ19の前方端面に相当している。よって、レリーズノブ19は、所謂スラントノブである。
【0051】
スラントノブ部材32の側面には、第1開口部O1が形成されている。スラントノブ部材32の一方端面とは反対の他方端面には、第1開口部O1に連続する第2開口部O2が形成されている。第1開口部O1及び第2開口部O2は、スラントノブ部材32に内設された収容部32Aの開口である。スラントノブ部材32の収容部32Aは、第1開口部O1の縁端からスラントノブ部材32の内部に向かう第1内壁面W1、及び第2開口部O2の縁端からスラントノブ部材32の内部に向かう第2内壁面W2等によって形成されている。
【0052】
第1内壁面W1は、平面である。第2内壁面W2は、略円筒形状のスラントノブ部材32の軸線を中心とした円弧がその軸線に沿って移動することによって形成される曲面である。
【0053】
スラントノブ部材32の収容部32A内には、抜止用遊嵌部32Xが設けられている。抜止用遊嵌部32Xは、略半円の溝形状であり、略円筒形状のスラントノブ部材32の径方向に沿って形成されている。さらに、スラントノブ部材32の収容部32A内には、回止用遊嵌部32Yが設けられている。回止用遊嵌部32Yは、溝形状であり、略円筒形状のスラントノブ部材32の軸方向に沿って形成されている。抜止用遊嵌部32X及び回止用遊嵌部32Yは、スラントノブ部材32の収容部32A内で連通している。
【0054】
スラントノブ部材32の収容部32A内には、第2内壁面W2等によって略円筒状の凹部に形成された嵌入部32Fが設けられている。嵌入部32Fは、第2開口部O2に連続すると共に、スラントノブ部材32の収容部32A内で回止用遊嵌部32Yに連通している。
【0055】
以上より、第1内壁面W1は、第1開口部O1の縁端から抜止用遊嵌部32X又は回止用遊嵌部32Yに向かって設けられている。第2内壁面W2は、第2開口部O2の縁端から回止用遊嵌部32Yに、ひいては抜止用遊嵌部32Xに向かって設けられている。
【0056】
スラントノブ部材32の収容部32A内には、抜止用遊嵌部32Xに第1ビート部B1が設けられている。第1ビート部B1は、略U字の線状であり、抜止用遊嵌部32Xを構成する壁面においてその壁面方向に細長く突出して設けられている。第1ビート部B1は、スラントノブ部材32と同じ樹脂製であって、スラントノブ部材32の成形時に同時に成形される。
【0057】
[1.−4 蓋部材の構成]
図6に表すように、蓋部材33は、第1閉塞部33B及び第2閉塞部33Cを備えている。第1閉塞部33Bは、曲板状である。第2閉塞部33Cは、円板状であって、第1閉塞部33Bの一方端部から垂直方向に屈折して連なった状態で設けられている。
【0058】
第2閉塞部33Cには、第1閉塞部33B側とは反対の側において、バネ受部33Aが設けられている。さらに、第2閉塞部33Cには、第1閉塞部33B側において、略円筒状の凸部に形成された突壁部33Fが設けられている。突壁部33Fの外壁面は、スラントノブ部材32の嵌入部32Fの内壁面と合う形状を有している。
【0059】
第2閉塞部33Cには、略スリット状の差込部33Dが設けられている。差込部33Dは、第1閉塞部33B側とは反対の側からバネ受部33A及び突壁部33Fを切り欠いたように形成されている。
【0060】
[1.−5 組立工程]
次に、本実施形態のパーキングブレーキレバー装置11の組立工程の一例について説明する。尚、以下の説明においては、第1半割体25と、第2半割体27との間に、レリーズロッド35、レリーズノブ19、圧縮コイルバネ31等の構成部品を配置して組み立てるものとする。
【0061】
初めに、レバー本体15の右側部分を構成する第1半割体25を、第1半割体25の左側面(内面)が上方に向くようにして、作業台上に配置する。また、レリーズロッド35に、その抜止部35X側から圧縮コイルバネ31を挿通する。
【0062】
次に、作業台上に配置された第1半割体25上の所定位置に、夫々、レリーズロッド35及びレリーズノブ19を配置する。具体的には、先ず、レリーズノブ19を構成するスラントノブ部材32が、第1半割体25の前方端部25Fにおいて、スラントノブ部材32の側面にある収容部32Aが上方(
図3中、左側)に向かって開口した状態で配置される。次いで、圧縮コイルバネ31が挿通された状態のレリーズロッド35を上方(
図3中、左側)から積層するようにして、当該第1半割体25の所定位置にレリーズロッド35を配置する。
【0063】
この時、スラントノブ部材32の第1開口部O1には、レリーズロッド35の前方端部35Aが装入される。その後、スラントノブ部材32の収容部32A内では、抜止用遊嵌部32Xに対してレリーズロッド35の抜止部35Xが押し込まれると共に、回止用遊嵌部32Yに対してレリーズロッド35の回止部35Yの前方部が押し込まれる。
【0064】
抜止用遊嵌部32Xに対してレリーズロッド35の抜止部35Xが押し込まれると、抜止用遊嵌部32Xの第1ビート部B1が、レリーズロッド35の抜止部35Xによって押し潰される。
【0065】
これにより、
図7及び
図8に表すように、レリーズロッド35の前方端部35Aがスラントノブ部材32に取り付けられる。レリーズロッド35は、スラントノブ部材32の回止用遊嵌部32Yから嵌入部32F及び第2開口部O2を介してスラントノブ部材32の後方に延び出した状態にある。尚、
図7及び
図8では、圧縮コイルバネ31が省略されている。
【0066】
次いで、上方(
図3中、左側)からスラントノブ部材32の収容部32Aに対して、レリーズノブ19を構成する蓋部材33が係着される。
【0067】
具体的には、例えば、スラントノブ部材32の回止用遊嵌部32Yから延び出したレリーズロッド35の回止部35Yに対して、上方(
図3中、左側)から、蓋部材33の第2閉塞部33Cにある差込部33Dが差し込まれる。これにより、蓋部材33の第2閉塞部33Cにある突壁部33Fの先端をスラントノブ部材32の第2開口部O2側に向かわせると共に、蓋部材33の第1閉塞部33Bをスラントノブ部材32の第1開口部O1の縁端に重ね合わせる。その後、蓋部材33の第1閉塞部33Bがスラントノブ部材32の第1開口部O1の縁端に沿うようにして、蓋部材33を前方に移動させることにより、蓋部材33の第2閉塞部33Cにある突壁部33Fをスラントノブ部材32の嵌入部32Fに嵌入させる。
【0068】
これにより、
図9及び
図10に表すように、スラントノブ部材32及び蓋部材33で構成されるレリーズノブ19が組み立てられると共に、レリーズロッド35の前方端部35Aがレリーズノブ19に取り付けられる。蓋部材33の第1閉塞部33Bは、スラントノブ部材32の第1開口部O1を塞ぐことにより、スラントノブ部材32内の抜止用遊嵌部32X及び回止用遊嵌部32Yをスラントノブ部材32の第1開口部O1から覆っている。蓋部材33の第2閉塞部33Cは、スラントノブ部材32の第2開口部O2を塞ぐことにより、スラントノブ部材32内の回止用遊嵌部32Yをスラントノブ部材32の第2開口部O2から覆っている。蓋部材33の第2閉塞部33Cにある差込部33Dからは、レリーズロッド35が延び出している。尚、
図9及び
図10では、圧縮コイルバネ31が省略されている。
【0069】
続いて、第1半割体25上において、レリーズロッド35に挿通された状態にある圧縮コイルバネ31を配設する。具体的には、作業者は、作業台上に配置された第1半割体25の上方から、圧縮コイルバネ31の第1端部を蓋部材33のバネ受部33Aに装着すると共に、圧縮コイルバネ31の第2端部を係止爪41に係止することにより、圧縮コイルバネ31を僅かに圧縮させた状態で第1半割体25に配置する。このようにして、圧縮コイルバネ31は、蓋部材33のバネ受部33Aと第1半割体25の係止爪41との間に配置される。従って、圧縮コイルバネ31は、蓋部材33のバネ受部33Aと第1半割体25の係止爪41との間に位置することにより、レリーズノブ19に対して復元力を作用させる。
【0070】
この時、
図11に表すように、第1半割体25の係止爪41の先方端部は、レリーズロッド35の回避部35Zに対して略平行関係で向かい合った状態にある。そのため、第1半割体25の係止爪41は、レリーズロッド35の回避部35Zとは離間した状態が維持される。これにより、第1半割体25の係止爪41がレリーズロッド35に当たることを防いでいる。
【0071】
このようにして、第1半割体25上に、レリーズロッド35及びレリーズノブ19等を配置した状態で、上方(
図3中、左側)から第2半割体27を積層するように配置する。これにより、当該パーキングブレーキレバー装置11によれば、第1半割体25と第2半割体27の内部に、レリーズロッド35等の構成部品を配置することができる。
【0072】
この時、第2半割体27は、第1半割体25上に配置されたレリーズロッド35等に対して、その右側面(内面)が下方(
図3中、右側)を向いた状態で積層される。
【0073】
尚、上述の説明では省略したが、第1半割体25上に第2半割体27を積層する前に、ポール37や、ラチェット39が固定されたセクタ13等を配置する。これらの部材の配置は、第2半割体27を積層する前であればよく、レリーズロッド35、レリーズノブ19、圧縮コイルバネ31の配置前であっても良いし、レリーズロッド35、レリーズノブ19、圧縮コイルバネ31の配置後であっても良い。
【0074】
第1半割体25と第2半割体27との間に、レリーズロッド35、レリーズノブ19をはじめとする各構成部品を配置した状態で、支持ピンP1,P2,P3,P4に対してかしめ加工を施すことによって、当該パーキングブレーキレバー装置11の組立作業が完了する。
【0075】
[1.−6 まとめ]
第1実施形態のパーキングブレーキレバー装置11では、レリーズロッド35の前方端部35Aがレリーズノブ19に取り付けられる際に、スラントノブ部材32内の抜止用遊嵌部32Xにレリーズロッド35の抜止部35Xが押し込まれると共に、スラントノブ部材32内の回止用遊嵌部32Yにレリーズロッド35の回止部35Yが押し込まれる。そのため、スラントノブ部材32に対してレリーズロッド35を手作業で組み付けることができるので、その組み付けのための設備を使う必要がなくなる。よって、円形断面のレリーズロッド35及びレリーズノブ19の組み付けのための工数を低減させると共に設備費用を削減することが可能である。
【0076】
さらに、円形断面のレリーズロッド35に対して、レリーズノブ19が抜けたり、レリーズノブ19が回転することを防止できる。特に、レリーズノブ19の回転防止は、所謂スラントノブであるレリーズノブ19が円形断面のレリーズロッド35に対して正しい姿勢で組み付けられることを可能にする。
【0077】
第1実施形態のパーキングブレーキレバー装置11では、レリーズロッド35の回止部35Yが平板状であることから、円形断面のレリーズロッド35の一部をプレス加工することにより、レリーズロッド35の回止部35Yを容易に成形できる。この点は、レリーズロッド35の回避部35Zでも同様である。
【0078】
第1実施形態のパーキングブレーキレバー装置11では、レリーズロッド35の前方端部35Aがレリーズノブ19に取り付けられる際に、樹脂製の第1ビート部B1がレリーズロッド35によって押し潰されるので、レリーズノブ19のガタ付きを防止できる。
【0079】
特に、第1実施形態のパーキングブレーキレバー装置11では、レリーズノブ19内の抜止用遊嵌部32Xに設けられた第1ビート部B1がレリーズロッド35の抜止部35Xによって押し潰されるので、レリーズロッド35の軸方向におけるレリーズノブ19のガタ付きを防止できる。
【0080】
第1実施形態のパーキングブレーキレバー装置11では、レリーズロッド35が取り付けられたスラントノブ部材32に対して蓋部材33が係着されると、蓋部材33の第1閉塞部33Bがスラントノブ部材32内の抜止用遊嵌部32X及び回止用遊嵌部32Yを覆うと共に、蓋部材33の第2閉塞部33Cにある差込部33Dに対してレリーズロッド35の回止部35Yが差し込まれる。そのような構成により、スラントノブ部材32に係着された蓋部材33は、レリーズロッド35に対するスラントノブ部材32の取付位置を規制できると共に、スラントノブ部材32がレリーズロッド35から抜けることを防止できる。
【0081】
第1実施形態のパーキングブレーキレバー装置11では、スラントノブ部材32の嵌入部32Fに対して蓋部材33の突壁部33Fが嵌入されることから、蓋部材33のガタ付きを防止できる。さらに、作業者は、嵌入完了時に生じる音又は振動等によって、スラントノブ部材32に対して蓋部材33が正しく組み付けられたことを確認することが可能である。
【0082】
[2.第2実施形態]
以下、本発明に係るパーキングブレーキレバー装置の第2実施形態について、
図12乃至
図18を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下の説明では、上記第1実施形態と実質的に共通する部分には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0083】
図12に表すように、スラントノブ部材32には、長穴状に形成された一対の係止部32E,32Eが設けられている。各係止部32E,32Eは、第1内壁面W1を貫通しており、スラントノブ部材32の内部である収容部32Aと外部とを連通させている。スラントノブ部材32の収容部32A内では、回止用遊嵌部32Yに4つの第2ビート部B2が設けられている。各第2ビート部B2は、線状であり、回止用遊嵌部32Yを構成する壁面においてその壁面方向に細長く突出して設けられている。各第2ビート部B2は、スラントノブ部材32と同じ樹脂製であって、スラントノブ部材32の成形時に同時に成形される。
【0084】
図13に表すように、蓋部材33では、第1閉塞部33Bの先端部分において、一対の係爪部33E,33Eが設けられている。各係爪部33E,33Eは、蓋部材33の外側に向けて形成されている。
【0085】
第2実施形態では、
図14及び
図15に表すように、第1実施形態と同様にして、レリーズノブ19を構成するスラントノブ部材32に対して、レリーズロッド35の前方端部35Aが取り付けられる。但し、回止用遊嵌部32Yに対してレリーズロッド35の回止部35Yが押し込まれると、回止用遊嵌部32Yの各第2ビート部B2が、レリーズロッド35の回止部35Yによって押し潰される。スラントノブ部材32では、一対の係止部32E,32Eが上又は下を向いた状態にある。
【0086】
続いて、
図16及び
図17に表すように、第1実施形態と同様にして、スラントノブ部材32の収容部32Aに対して、レリーズノブ19を構成する蓋部材33が係着される。但し、スラントノブ部材32の各係止部32E,32Eには、蓋部材33の一対の係爪部33E,33Eが係入される。
【0087】
さらに、
図18に表すように、第1実施形態と同様にして、レリーズロッド35に挿通された状態にある圧縮コイルバネ31が配設される。
【0088】
以上より、第2実施形態のパーキングブレーキレバー装置11では、上記第1実施形態の各効果に加えて、下記の各効果を奏する。
【0089】
第2実施形態のパーキングブレーキレバー装置11では、レリーズノブ19内の回止用遊嵌部32Yに設けられた各第2ビート部B2がレリーズロッド35の回止部35Yによって押し潰されるので、レリーズロッド35の円周方向におけるレリーズノブ19のガタ付きを防止できる。
【0090】
第2実施形態のパーキングブレーキレバー装置11では、スラントノブ部材32の各係止部32E,32Eに蓋部材33の各係爪部33E,33Eが係入されると共に、スラントノブ部材32の嵌入部32Fに対して蓋部材33の突壁部33Fが嵌入されることから、蓋部材33のガタ付きを防止できる。さらに、作業者は、係入完了時又は嵌入完了時に生じる音又は振動等によって、スラントノブ部材32に対して蓋部材33が正しく組み付けられたことを確認することが可能である。
【0091】
[3.その他]
ちなみに、本実施形態において、係止部32Eは、「第1係合部」の一例である。嵌入部32Fは、「第2係合部」の一例である。蓋部材33は、「蓋部」の一例である。係爪部33Eは、「第1被係合部」の一例である。突壁部33Fは、「第2被係合部」の一例である。第1ビート部B1及び第2ビート部B2は、「ビート部」の一例である。
【0092】
[4.変更例]
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、レリーズロッド35の回止部35Yは、非円形断面を有していれば、その断面が多角形状又は楕円形状等であっても良い。
【0093】
レリーズロッド35の抜止部35Xは、スラントノブ部材32に取り付けることが可能であれば、レリーズロッド35の前方端面以外に設けても良い。
【0094】
レリーズノブ19は、所謂スラントノブに限定されるものでなく、例えば、レリーズロッド35の円周方向における取付位置が規制されない円筒形状を有するものであっても良い。