(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の面に、少なくとも1種以上の凸形状を有する凹凸形状層を有し、前記凹凸形状層が、ポリオレフィン系樹脂架橋体を含有し、前記凸形状を有する面上に疎水性酸化物微粒子およびフッ素系共重合体樹脂を含有する撥液層を備え、前記凹凸形状層の表面が、油系液体または界面活性剤系液体と接触したときの接触角が130°以上であり、かつ転落角が40°以下である、撥液性樹脂シート。
一方の面に、少なくとも1種以上の凸形状を有する凹凸形状層を有し、前記凹凸形状層が、ポリオレフィン系樹脂架橋体を含有し、前記凸形状を有する面上に疎水性酸化物微粒子およびフッ素系共重合体樹脂を含有する撥液層を備え、前記ポリオレフィン系樹脂架橋体が、230℃でのメルトマスフローレートが5g/10分以上であるポリオレフィン系樹脂の架橋体である、撥液性樹脂シート。
前記凹凸形状層の凸形状を有する面の反対側の面に、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、及びアクリル系樹脂から選択される樹脂からなる層を少なくとも1層以上有する基材層が積層された、請求項1から4の何れか一項に記載の撥液性樹脂シート。
前記凹凸形状層と前記基材層との間に、変性オレフィン系樹脂および水添スチレン系熱可塑性エラストマーから選択される1種又は2種の樹脂を含有するシーラント樹脂層を有する、請求項5に記載の撥液性樹脂シート。
前記凸形状が、第1の凸形状と第2の凸形状とからなり、第1の凸形状の高さおよび第2の凸形状の高さがそれぞれ20μm〜150μmであり、隣接する凸形状の頂点間隔が20μm〜100μmである、請求項1から6の何れか一項に記載の撥液性樹脂シート。
前記撥液層中の前記疎水性酸化物微粒子の含有量が20〜70質量%であり、前記フッ素系共重合体樹脂の含有量が70〜30質量%である、請求項1から9の何れか一項に記載の撥液性樹脂シート。
【0008】
上記課題を解決する本発明は、下記より構成される。
(1)一方の面に、少なくとも1種以上の凸形状を有する凹凸形状層を有し、前記凹凸形状層がポリオレフィン系樹脂架橋体を含有し、前記凸形状を有する面上に疎水性酸化物微粒子およびフッ素系共重合体樹脂を含有する撥液層を備えた撥液性樹脂シート。
(2)前記凹凸形状層が、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物に電子線照射して架橋させてなる(1)に記載の撥液性樹脂シート。
(3)前記ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂を35〜100質量%含む(2)に記載の撥液性樹脂シート。別の態様では、次のように構成することもできる。前記ポリオレフィン系樹脂架橋体を含有する凹凸形状層は、ポリオレフィン系樹脂35〜100質量%からなる凹凸形状層を架橋させたものである(1)または(2)に記載の撥液性樹脂シート。
(4)前記凹凸形状層の他方の面に、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、及びアクリル系樹脂から選択される樹脂からなる層を少なくとも1層以上有する基材層を積層した(1)から(3)のいずれか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(5)前記凹凸形状層と前記基材層との間に、変性オレフィン系樹脂および水添スチレン系熱可塑性エラストマーから選択される1種又は2種の樹脂を含有するシーラント樹脂層を有する、(1)から(4)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(6)前記凸形状が、第1の凸形状と第2の凸形状とからなり、第1の凸形状の高さおよび第2の凸形状の高さがそれぞれ20μm〜150μmであり、隣接する凸形状の頂点間隔が20μm〜100μmである(1)から(5)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(7)前記第1の凸形状と第2の凸形状が千鳥配置され、第1の凸形状に対する第2の凸形状の高さの比が0.4以上0.8以下である(6)に記載の撥液性樹脂シート。
(8)前記ポリオレフィン系樹脂架橋体が、230℃でのメルトマスフローレートが5g/10分以上であるポリオレフィン系樹脂の架橋体である(1)から(7)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(9)前記疎水性酸化物微粒子が、その表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子である(1)から(8)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(10)前記撥液層中の前記疎水性酸化物微粒子の含有量が、20〜70質量%であり、前記フッ素系共重合体樹脂の含有量が70〜30質量%である(1)から(9)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(11)前記凹凸形状層の厚みが、50μm〜200μmである(1)から(10)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(12)前記凹凸形状層の表面の油系の液体または界面活性剤系の液体との接触角が、130°以上、かつ転落角が40°以下である(1)から(11)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(13)(1)から(12)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シートを加熱延伸してなる成形品。
(14)前記凹凸形状層の表面と油系の液体または界面活性剤系の液体との接触角が120°以上、かつ転落角が70°以下である(13)に記載の成形品。
(15)前記撥液性樹脂シートの凸形状高さに対する、凸形状高さの低下率が30%以下である、(13)または(14)に記載の成形品。
(16)フランジ部および底面部を有する成形品であって、フランジ部の厚みに対する底面部の厚みの比が0.40〜0.95である、(13)から(15)の何れか一つに記載の成形品。
(17)生活品用容器である(13)から(16)の何れか一つに記載の成形品。
(18)食品用容器である(13)から(16)の何れか一つに記載の成形品。
(19)一方の面に、少なくとも1種以上の凸形状を有する凹凸形状層を形成する工程と、前記凹凸形状層がポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂組成物からなり、前記凹凸形状層の表面に電子線を照射してポリオレフィン系樹脂を架橋する工程と、前記凹凸形状層の前記凸形状を有する面上に、疎水性酸化物微粒子およびフッ素系共重合体樹脂を含有する撥液層を形成する工程と、を有する撥液性樹脂シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<樹脂シート>
本発明に係る撥液性樹脂シート(以下、「樹脂シート」と略す。)は、樹脂シートの一方の面に、少なくとも1種以上の凸形状を有する凹凸形状層が形成され、凹凸形状層がポリオレフィン系樹脂架橋体を含有し、凸形状を有する面に疎水性酸化物微粒子およびフッ素系共重合体樹脂を含有する撥液層を備えた撥液性樹脂シートである。「ポリオレフィン系樹脂架橋体」とは、凹凸形状層に含有されるポリオレフィン系樹脂が、少なくとも部分的に三次元的な架橋構造を形成することを意味する。架橋体は、凹凸形状層のみならず、本発明の効果を損なわない範囲であれば、凹凸形状層の他方の面に積層する基材層が架橋体を形成したものであってもかまわない。以下、樹脂シートの種々の実施形態を説明し、ついで樹脂シートの製造方法について説明するが、一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している。
【0012】
ここで、本発明に係る樹脂シートは、非延伸のシートのみならず、加熱により延伸したシートも包含するものである。さらに、本発明において、撥液性を有する樹脂シートの「撥液性」とは、樹脂シートへの油系の液体、界面活性剤系の液体の付着を防止するのに十分な程度の撥液性を意味する。具体的には、樹脂シートに対する液体の接触角が、130°以上、転落角が40°以下である。また、樹脂シートを加熱延伸した成形品においては、撥液層を形成した凹凸形状層の表面と、油系の液体、または界面活性剤系の液体との接触角が、120°以上、かつ転落角が70°以下であることを意味するものとする。
【0013】
この樹脂シートの厚みは、好ましくは150μm〜1200μm、より好ましくは300μm〜1000μmである。150μm未満では、熱成形して得られる成形品の厚み分布が不良となる可能性があり、1200μmを超えると、容器の製造コストが高くなる場合がある。
【0014】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る樹脂シートは、
図1および
図3に示すように、一方の面に少なくとも1種類以上の凸形状を備えた、凹凸形状層(1a)を有し、凹凸形状層(1a)はポリオレフィン系樹脂架橋体を含む。また、凸形状の一方の面には撥液層(2)を備え、撥液層は、疎水性酸化物微粒子を含むフッ素系共重合体樹脂からなる。
【0015】
(凹凸形状層)
凸形状は、
図1に示すように1種類の凸形状であってもかまわないが、
図3に示すように、形状の異なる第1の凸形状と第2の凸形状を有することが好ましい。また、形状の異なる3種以上の凸形状を設けてもよい。ここで、第1の凸形状の高さは、第2の凸形状の高さより高いものとする。第1の凸形状と、第2の凸形状を用いる場合、その配置には制約がないが、第1の凸形状と第2の凸形状は交互に配置されていることが撥液性の面で好ましい。凸形状の配置形態は特に限定はされず、縦横に配置した碁盤目配置、千鳥配置がある。より撥液性を維持したければ、千鳥配置が好ましい。
【0016】
凸形状は、高さ(h)が20μm〜150μmであることが好ましい。凸形状高さが20μm未満では、撥液性を十分には確保できない場合があり、凸形状高さが150μmを超えると凹凸形状を付与するための金型での凹凸形状寸法が不安定になる場合がある。なお、凸形状高さは、後述する撥液層の厚み(100nm〜4000nm)を加えたものである。
【0017】
隣接する凸形状の頂点間隔(t)は20μm〜100μmであることが好ましい。なお頂点間隔とは、隣接する凸形状の頂点の間隔であり、相互の凸形状が異なっても隣接するものであれば、その凸形状の間隔を意味する。頂点間隔が20μm未満では、凹凸形状を付与するための金型での凹凸形状寸法が不安定になる場合がある。また、100μmを超えると撥液性が低下する場合がある。
【0018】
2種類の凸形状を用いる場合、第1の凸形状に対する第2の凸形状の高さの比は、0.4以上0.8以下であることが好ましい。高さの比を0.4以上0.8以下にすることで、より効果的に撥液性を得ることができる。
【0019】
凸形状の底面は、三角錐、四角錘、六角錐、八角錐、円錐などの錐形状、角錐台形状、円錐台形状でもよいが、本発明者が本実施形態に係る樹脂シートの構成において種々検討した結果、六角錐形状の凸形状が特に好ましいことが分かった。
【0020】
凹凸形状層は、ポリオレフィン系樹脂架橋体を含有する。ポリオレフィン系樹脂架橋体は、ポリオレフィン系樹脂を35〜100質量%含む樹脂組成物を架橋させたものであることが好ましい。35質量%以上とすることで、凹凸形状の転写性、架橋性を向上することができる。また、ポリオレフィン系樹脂架橋体は、230℃でのメルトマスフローレートが5g/10分以上であるポリオレフィン系樹脂を架橋させたものであることが好ましい。5g/10分とすることで、凹凸形状の転写性を向上することができる。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂とは、α−オレフィンを単量体として含む重合体からなる樹脂を意味し、特にポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を含むことが好ましい。ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状中密度ポリエチレン等が挙げられ、また単体のみならず、それらの構造を有する共重合物やグラフト物やブレンド物も含まれる。後者の樹脂としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体や、さらにこれらの共重合体と酸無水物との3元共重合体等とブレンドしたもののようにポリエチレン鎖に極性基を有する樹脂を共重合およびブレンドしたものが挙げられる。電子線照射による架橋性を考慮すると、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状中密度ポリエチレンを用いることが望ましい。
【0022】
また、ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなどが挙げられる。ホモポリプロピレンを用いる場合、該ホモポリプロピレンの構造は、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックのいずれであってもよい。ランダムポリプロピレンを用いる場合、プロピレンと共重合させるαオレフィンとしては、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数4〜12のものが挙げられ、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどを例示できる。ブロックポリプロピレンを用いる場合、ブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。これらオレフィン樹脂を単独で使用する以外に、他のオレフィン系樹脂を併用することもできる。電子線照射による架橋性を考慮すると、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンを用いることが望ましい。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂架橋体を形成する方法としては、後述するように、樹脂シートを成形した後、凸形状を有する面に電子線を照射する方法や、予め有機過酸化物を添加したポリオレフィン系樹脂組成物の樹脂シートの凸形状成形時または凸形状成形後に、加熱及び加湿により形成する方法が挙げられる。これらの中では、電子線の照射により架橋体を形成することが好ましい。
【0024】
架橋体の形成度合いの調整については、成形品の形状により任意に調整することができる。架橋体の形成度合いの評価については、成形した樹脂シートの、電子線照射前後引張強度変化率および伸びの変化率から評価することができる。
【0025】
(撥液層)
撥液層には、疎水性酸化物微粒子とフッ素系共重合樹脂とを含む。撥液層の厚さは、100nm〜4000nmであることが好ましいが、本発明の効果が得られればこの数値範囲に限定されない。
【0026】
疎水性酸化物微粒子としては、疎水性基を有するものであればよく、表面処理により疎水化されたものであってもよい。例えば、親水性酸化物微粒子シリカをシランカップリング剤等で表面処理を施し、表面状態を疎水性とした微粒子シリカを用いることもできる。酸化物の種類も、疎水性を有するものであれば限定されない。例えばシリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、チタニアまた、シリカ等の少なくとも1種を用いることができる。これらは公知又は市販のものを採用することができる。例えば、シリカとしては、製品名「AEROSIL R972」、「AEROSIL R972V」、「AEROSIL R972CF」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RY200」(以上、日本アエロジル株式会社製)、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」、(以上、エボニック デグサ社製)等が挙げられる。チタニアとしては、製品名「AEROXIDE TiO2 T805」(エボニック デグサ社製)等が例示できる。アルミナとしては、製品名「AEROXIDE Alu C」(エボニック デグサ社製)等をシランカップリング剤で処理して粒子表面を疎水性とした微粒子が例示できる。
【0027】
このなかでも、具体的には、疎水性シリカ微粒子を好適に用いることができる。とりわけ、より優れた撥液性が得られるという点において、表面にトリメチルシリル基やジメチルシロキサン基を有する疎水性シリカ微粒子が好ましい。これに対応する市販品としては、例えば前記「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」「AEROSIL RY300」(何れもエボニック デグサ社製)等が挙げられる。
【0028】
疎水性酸化物微粒子としては、一次粒子の平均粒子径が5nm〜1000nmであるものが好ましく、7nm〜200nmであるものがより好ましい。一次粒子の平均粒子径を5nm〜1000nmとすることで、撥液性が良好となると共に、フッ素系共重合体樹脂への分散性が良好となる。なお、一次粒子の平均粒子径は、疎水性酸化物微粒子を電子顕微鏡写真より任意の3000個〜5000個の粒子を測定し、その粒子径を算術平均した数値を意味する。
【0029】
フッ素系共重合体は、共重合体(1)と共重合体(2)とを含有することが好ましい。共重合体(1)と共重合体(2)は、構成単位(a)〜(d)を含有できる。ただし、共重合体(1)は、構成単位(a)および構成単位(b)を含有し、共重合体(2)は、構成単位(a)および構成単位(c)を含有する。共重合体(1)が主に樹脂シートの撥液性の発現に寄与し、共重合体(2)が主に樹脂シートの耐久性に寄与する。
【0030】
構成単位(a)は、アルキル基の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換された基であり、炭素原子数は1〜6である。(a)は、炭素−炭素不飽和二重結合などの不飽和基を1個以上有する鎖状ポリフルオロ炭化水素基であってもよい。不飽和基としては(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
構成単位(b)は、炭素原子数が16〜40の飽和炭化水素基を有する単量体であるのが好ましく、炭素原子数16〜40のアルキル基を含有する(メタ)アクリレートであるのがより好ましく、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートであるのがさらに好ましい。
【0032】
構成単位(c)は、フッ素原子を含まず、架橋しうる官能基を有する単量体に由来する単量体である。架橋しうる官能基としては、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、アルコキシメチルアミド基、シラノール基、アンモニウム基、アミド基、エポキシ基、水酸基、オキサゾリン基、カルボキシル基、アルケニル基、スルホン酸基等が好ましい。また、エポキシ基、水酸基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、カルボキシル基がより好ましい。
【0033】
構成単位(c)を形成する単量体としては、(メタ)アクリレート類、共重合可能な基を2個以上もつ化合物、ビニルエーテル類またはビニルエステル類が好ましく挙げられる。構成単位(c)は、2種以上の混合物を由来としてもよい。構成単位(c)は、主に撥液膜の造膜性、撥液性組成物の基材との接着性や密着性に影響し、耐久性を高めることに寄与する。
【0034】
構成単位(d)は、構成単位(a)、(b)および(c)以外の重合性基を有する単量体に由来する構成単位である。また、造膜性が良好で、均一な共重合体溶液または分散液が得られる単量体に由来するものであるのが好ましい。構成単位(d)としては、特に、塩化ビニル、塩化ビニリデン、シクロヘキシルメタクリレート、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレートのアルキルエーテル、ジオクチルマレエートを由来とするのが好ましい。構成単位(d)は、組成物の基材への密着性の改良や、分散性の改良に寄与できる。
【0035】
これに対応する市販品としては、「AG−E070」、「AG−E550D」(旭硝子社製)等が挙げられる。
【0036】
撥液層は、好ましくは、疎水性酸化物微粒子の含有量が20質量%〜70質量%、フッ素系共重合体樹脂の含有量が70質量%〜30質量%であることが好ましい。この範囲の組成とすることによって、液体の転落性を得ることができる。これに対して、疎水性酸化物微粒子の含有量が20質量%未満では、満足できる撥液性、液体の転落性を得られない場合があり、疎水性酸化物微粒子の含有量が70質量%を超えると、疎水性酸化物微粒子が剥がれ落ちる場合がある。
【0037】
凹凸形状面に撥液層を形成する方法としては、予めイソピルアルコール(IPA)に疎水性酸化物微粒子を添加した分散液を調整し、その後、フッ素系樹脂共重合体の水分散液とで任意の割合で調整した分散液を前記凹凸形状面にコーター等で塗布する方法が採用される。
【0038】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る樹脂シートの例としては、
図5に示すように、表面に撥液層(2)が積層された凹凸形状層(1)と基材層(4)との間に、シーラント樹脂層(3)が形成された樹脂シートである。すなわち、第二実施形態に係る樹脂シートの層構成は、上から下に向かって、撥液層(2)、凹凸形状層(1)、シーラント樹脂層(3)、基材層(4)である。ここで、撥液層と凹凸形状層は、第一実施形態において説明したものと同じであるので、説明を省略する。但し、凹凸形状層の厚みは、好ましくは50μm〜200μmである。50μm未満であると、凹凸形状の転写が不良なる場合がある。また、200μmを超えると、生産コストが高くなる場合がある。
【0039】
(基材層)
基材層は、スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン、ポリブタジエン−ポリスチレン−ポリアクリロニトリルグラフト重合体など)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ナイロン系樹脂(ナイロン6、ナイロン−66など)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましい。また、積層する場合、共押出成形による積層や無延伸フィルム、二軸延伸フィルムを用いた押出ラミネート成形、ドライラミネート成形による積層がある。
【0040】
スチレン系樹脂としては、好ましくは、60質量%〜15質量%、より好ましくは55質量%〜15質量%のポリスチレン樹脂と、40質量%〜85質量%、より好ましくは45質量%〜85質量%の耐衝撃性ポリスチレン樹脂とを含んでなるスチレン系基材層が好ましい。
【0041】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、および共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル樹脂などを用いることができる。
【0042】
ナイロン系樹脂としては、カプロラクタム、ラウロラクタム等のラクタム重合体;6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体;ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体;及びこれらの共重合体等が挙げられる。具体的には、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等があり、なかでもナイロン6、ナイロンMXD6が好適である。
【0043】
アクリル系樹脂としては、メタクリル酸エステル単量体に基づくビニル重合体であれば、その構造などは特に限定するものではない。このメタクリル酸エステル単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル及びメタクリル酸ヘキシルなどが挙げられる。これらのうち、特にメタクリル酸メチルが好適である。また、メタクリル酸エステル単量体におけるプロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基などのアルキル基は、直鎖であってもよく、枝分かれしてもよい。また、本実施形態の樹脂組成物に配合されるメタクリル酸エステル樹脂は、メタクリル酸エステル単量体の単独重合体や、複数のメタクリル酸エステル単量体の共重合体であってもよい。又は、メタクリル酸エステル以外の公知のビニル化合物であるエチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル及びアクリル酸などに由来する単量体単位を有してもよい。
【0044】
基材層には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、顔料、染料などの着色剤、シリコンオイル系等の離型剤、ガラス繊維等の繊維状強化剤、タルク、クレイ、シリカなどの着色剤、スルホン酸とアルカリ金属などとの塩化合物やポリアルキレングリコール等の帯電防止剤及び紫外線吸収剤、抗菌剤のような添加剤を添加することができる。また、本発明の多層樹脂シートの製造工程で発生したスクラップ樹脂を混合して用いることもできる。
【0045】
(シーラント樹脂層)
シーラント樹脂層は、凹凸形状層と基材層の接着性を発現させるものである。樹脂成分としては、100質量%の変性オレフィン系樹脂あるいは100質量%の水添スチレン系熱可塑性エラストマーがある。
【0046】
変性オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1等の炭素数2〜8程度のオレフィン;それらのオレフィンと、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のオレフィンとの共重合体や、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体等のオレフィン系ゴムを、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、または、その酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等の誘導体、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸グリシジル等でグラフト反応条件下に変性したものが代表的なものとして挙げられる。
【0047】
なかでも、不飽和ジカルボン酸またはその無水物、特にマレイン酸またはその無水物で変性した「エチレン−プロピレン−ジエン共重合体」又は「エチレン−プロピレン又はブテン−1共重合体ゴム」が好適である。
【0048】
水添スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系モノマーとブタジエンやイソプレンとの共重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体)などが挙げられる。これらの中では、特にスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。
【0049】
シーラント樹脂層の厚みは、好ましくは20μm〜90μm、より好ましくは40μm〜80μmである。20μm未満であると、凹凸形状層と基材層間で層間剥離が発生する場合があり、また、90μmを超えると、生産コストが高くなる場合がある。
【0050】
[第三実施形態]
本発明の第三実施形態に係る樹脂シートは、
図6に示すように、第二実施形態で示したシーラント樹脂層(3)を用いずに、凹凸形状層(1)と基材層(4)を直接積層したものである。すなわち、第三実施形態に係る樹脂シートの層構成は、上から下に向かって、撥液層(2)、凹凸形状層(1)、基材層(4)であり、第二実施形態に係る熱可塑性樹脂シートからシーラント樹脂層を除いた層構成を有している。ここで、撥液層と凹凸形状層は、第一実施形態及び第二実施形態における層と同じであるので、説明を省略する。一方、本実施形態における基材層(4)は、凹凸形状層と十分な接着性を備えたものとするのが好ましい。
【0051】
よって、第三実施形態に係る樹脂シートにおいて、基材層としては、凹凸形状層との接着性に優れるスチレン系樹脂を使用することが好ましい。水添スチレン系熱可塑性エラストマーを添加したスチレン系樹脂組成物を用いることもできる。耐衝撃性ポリスチレン樹脂と水添スチレン系熱可塑性エラストマーとを併用するときは、耐衝撃性ポリスチレン樹脂が90質量部〜95質量部に対して、5質量部〜10質量部の水添スチレン系熱可塑性エラストマーを添加することが好ましい。この場合、水添スチレン系熱可塑性エラストマーの添加量が5質量部未満では、凹凸形状層との接着性が不十分になり、層間剥離が発生する場合があり、10質量部を超えると生産コストが高くなる場合がある。
【0052】
[第四実施形態]
本発明の第四実施形態に係る樹脂シートは、
図7に示すように、撥液層(2)、凹凸形状層(1)、第1のシーラント樹脂層(3a)、酸素バリア基材層(5)、第2のシーラント樹脂層(3b)、基材層(4)の順に積層した樹脂シートである。第1のシーラント樹脂層と第2のシーラント樹脂層は組成が同じでも異なってもよい。凹凸形状層の厚みは、好ましくは50μm〜250μmである。50μm未満であると、凹凸形状の転写が不良なる場合がある。また、200μmを超えると、生産コストが高くなる場合がある。
【0053】
(酸素バリア基材層)
酸素バリア基材層としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ナイロン系樹脂が挙げられる。そのなかでも、加工性、成形性の面でエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂が好ましい。
【0054】
エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂は、通常、エチレン−酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られるものであり、酸素バリア性、加工性、成形性を具備する為に、エチレン含有量が10モル%〜65モル%、好ましくは20モル%〜50モル%で、鹸化度が90%以上、好ましくは95%以上のものが好ましい。
【0055】
また、ナイロン系樹脂としては、カプロラクタム、ラウロラクタム等のラクタム重合体;6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体;ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0056】
ナイロン系樹脂として、具体的には、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等があり、なかでもナイロン6、ナイロンMXD6が好適である。
【0057】
(シーラント樹脂層)
シーラント樹脂層としては、変性オレフィン系樹脂が好ましい。変性オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1等の炭素数2〜8程度のオレフィンの単独重合体;それらのオレフィンの単独重合体と、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のオレフィンとの共重合体や、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体等のオレフィン系ゴムを、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、または、その酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等の誘導体、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸グリシジル等でグラフト反応条件下に変性したものが代表的なものとして挙げられる。
【0058】
なかでも、不飽和ジカルボン酸またはその無水物、特にマレイン酸またはその無水物で変性したエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、又はエチレン−プロピレン又はブテン−1共重合体ゴムが好適である。
【0059】
シーラント樹脂層の厚みとしては、何れの側も、好ましくは10μm〜50μm、より好ましくは20μm〜40μmである。10μm未満であると、十分な層間接着強度が得られなくなる場合があり、また、50μmを超えると、生産コストが高くなる場合がある。
【0060】
<撥液性樹脂シートの製造>
本発明に係る樹脂シートの製造方法は、限定されず、如何なる方法によってもよいが、典型的には、一方の面に少なくとも1種類以上の凸形状を有する単層シート又は該凹凸形状層を含む積層樹脂シートを作製し、次いで凹凸形状層を架橋させ、表面に撥液層を形成する工程を含んでなる。
【0061】
先ず、一方の面少なくとも1種以上の凸形状を有する単層シート又は該凹凸形状層を含む多層樹脂シートの作製に際しては、任意の樹脂シート成形方法を使用できる。例えば、単層の場合は1台の単軸押出機を、複層の場合は複数台の単軸押出機を用いて、各々の原料樹脂を溶融押出し、Tダイによって樹脂シートを得る方法が挙げられる。多層の場合は、マルチマニホールドダイを使用してもよい。なお、本発明の樹脂シートの各実施形態の層構成は、基本的に前述した通りであるが、他に、例えば、本発明の樹脂シートや成形容器の製造工程で発生したスクラップ原料を、物性等の劣化が見られない限り、基材層へ添加してもよいし、更なる層として積層してもよい。
【0062】
次に、単層又は多層樹脂シートに凹凸形状を形成するが、この方法も特に制限はなく、当業者に知られている任意の方法を使用することができる。例えば、押出成形方式を用いて製造する方法、フォトリソグラフィー方式を用いて製造する方法、熱プレス方式を用いて製造する方法、パターンロールとUV硬化樹脂とを用いて製造する方法等である。
【0063】
次に、凹凸形状層の凹凸形状を、成形後においても保持し、所望の撥液性を維持するために、凹凸形状層に架橋体を形成する。この架橋処理は、樹脂シートの凹凸形状層が存在しているシート表面に対して電子線を照射することが好ましい。すなわち、前述のように、凹凸形状層は、ポリオレフィン系樹脂を含有する組成物を用いて形成されている。ポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレンが好ましい。ポリオレフィンは、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ビニルアルコール、ポリアミドなどと同様に、電子線照射により分子鎖架橋が優先的に進行する架橋型高分子である。なかでも直鎖状低密度ポリエチレンや直鎖状中密度ポリエチレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンが架橋しやすく、特に直鎖状低密度ポリエチレンが最も架橋しやすい。よって、凹凸形状層が存在しているシート表面に対して電子線を照射すると、凹凸形状層を架橋体とすることができる。
【0064】
ポリオレフィン系樹脂組成物に対する電子線照射の条件は、加速電圧が110kV〜210kV、線量が120kGy〜350kGyであることが好ましい。この条件範囲で電子線を凹凸形状シートの表面に照射することで、成形後でも凹凸形状を維持する架橋体とすることが可能となる。また、単層の場合に凹凸形状シート全体へ照射しても、凹凸形状が形成されている反対面への電子線照射量は少量になるため、物性等に影響する虞はなく、また複層の場合に凹凸形状層を越えて照射しても、シーラント樹脂層等への電子線照射量は少量になるため、層間接着性等に影響する虞はない。これに対して、この条件よりも弱い照射条件では、凹凸形状層の凹凸形状部分を、その形状が加熱延伸後もほぼ維持される程度まで架橋させることができない一方、この条件よりも強い照射条件では、包装用の蓋材とのシール性不良(十分な剥離強度が発生しない)の虞がある。ここで、凹凸形状層の架橋度合いは、特に限定されるものではないが、樹脂シートの成形後に凸形状の高さが十分に維持され、好ましくは高さの低下率が30%以下、より好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下となる程度に架橋させる。この条件を満たすシートによって成形した容器では、前述の撥液層との併用で、所望の撥液性が得られる。
【0065】
最後に、凹凸形状層の表面に撥液層を形成する。撥液層を形成する方法は特に限定されず、例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、刷毛塗り、粉体静電法等の公知の塗工方法を採用することができる。また塗工液を調製する際の溶媒も、特に限定されず、水の他、例えばアルコール(エタノール)、シクロヘキサン、トルエン、アセトンIPA、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ペンタメチレングリコール、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ヘキシルアルコール等の有機溶剤を適宜選択することができる。この際、微量の分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤等を併用することもできる。
【0066】
なお、上記においては、電子線照射による凹凸形状層の架橋処理を、凹凸形状層の上に撥液層を形成する前に行う例を説明したが、凹凸形状層の上に撥液層を積層した後に架橋処理を行ってもよい。
【0067】
<成形品>
本発明の成形品は、本発明の樹脂シートを成形してなる。成形方法としては、一般的な真空成形、圧空成形やこれらの応用として、シートの片面にプラグを接触させて成形を行うプラグアシスト法、又、シートの両面に一対をなす雄雌型を接触させて成形を行う、いわゆるマッチモールド成形と称される方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、成形前にシートを加熱軟化させる方法として、非接触加熱である赤外線ヒーター等による輻射加熱等、公知のシート加熱方法を適応することができる。
【0068】
樹脂シートの凸形状高さに対する凸形状高さの低下率は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下である。低下率を30%以下とすることで、容器に所望の撥液性が得られる。凸形状高さの低下率は、成形に用いた樹脂シートおよび成形したトレー容器の底面部の凸形状高さを、レーザー顕微鏡等を用いて測定し、下記の式で算出することができる。
凸形状高さの低下率=[(樹脂シートの凸部高さ)−(トレー容器の底面部凸部高さ)]/樹脂シートの凸部高さ×100(%)
上述のように、架橋時の電子線照射の条件(加速電圧、線量)を適正にすることにより、成形後の凹凸形状を維持して、凸形状の高さの変化率を少なくすることができる。
【0069】
成形品にフランジ部および底面部を有する場合は、ブランジ部の厚みに対する底面部の厚みの比は0.40〜0.95であることが好ましい。厚みの比をこの範囲に調整することで、容器に所望の撥液性が得られる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は実施例等の内容に何ら限定されるものではない。
【0071】
実施例等で用いた各種原料は以下の通りである。
(1)凹凸形状層
(A−1)ランダムポリプロピレン「PM921V」(サンアロマー社製)
(A−2)ブロックポリプロピレン「PM854X」(サンアロマー社製)
(B−1)直鎖状中密度ポリエチレン樹脂(C4)「ネオゼックス 45200」(プライムポリマー社製)
(B−2)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(C6)「ウルトゼックス 20200J」(プライムポリマー社製)
(C)スチレン−共役ジエンブロック共重合体樹脂「730L」(電気化学工業社製)(ジエン含有量25質量%)
(D)GPPS樹脂「G100C」(東洋スチレン社製)
【0072】
(2)撥液層
(E)疎水性酸化物微粒子:疎水性シリカ「AEROSIL R812S」(エボニック デグザ社製)
(F−1)フッ素系共重合体樹脂:「AG−E070」(旭硝子社製)
(F−2)フッ素系共重合体樹脂:「AG−E550D」(旭硝子社製)
【0073】
(3)シーラント樹脂層
(G)水添スチレン系熱可塑性エラストマー「タフテックP2000」(旭化成社製)
(H)水添スチレン系熱可塑性エラストマー「タフテックM1943」(旭化成社製)
(I)変性オレフィン系樹脂「モディックF502」(三菱化学社製)
(J)変性オレフィン系樹脂「アドマー SE810」(三井化学社製)
(K)HIPS樹脂「トーヨースチロールH850N」(東洋スチレン社製、ブタジエン含量9.0質量%)
【0074】
(4)基材層
(H)水添スチレン系熱可塑性エラストマー「タフテックM1943」(旭化成社製)
(K)HIPS樹脂「トーヨースチロールH850N」(東洋スチレン社製、ブタジエン含量9.0質量%)
(L)GPPS樹脂「HRM23」(東洋スチレン社製)
(M)PET樹脂「TRN−8550FF」(帝人社製)
(N)ナイロン6樹脂「1022B」(宇部興産社製)
(O)エチレン−ビニルアルコール共重合体「エバールJ−171B」(クラレ社製)
(P)アクリル樹脂 「HBS000」(三菱化学社製)
(Q)ポリカーボネート樹脂 「L−1225L」(帝人社製)
【0075】
実施例および比較例で作製した樹脂シートとその樹脂シートを使用して成形した容器についての各種特性の評価方法は、以下の通りである。
【0076】
(1)凸形状高さ、凸形状頂点間隔
シートの凸形状および成形したトレー容器の底面部(
図8参照)の凸形状高さ、凸形状頂点間隔を、レーザー顕微鏡VK−X100(キーエンス社製)を用いて測定した。なお、測定した試料は、ミクロトームを用いて凹凸形状の断面を切断したものを用いた。凸形状高さは、シートおよびの成形品の任意の3箇所より、それぞれ形状が同じ10個の高さを測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。凸形状が2種類以上である場合は、第1の凸形状および第2の凸形状の高さをそれぞれについて同様な方法で求めた。頂点間隔については、シートおよび成形品の任意の3箇所より、隣接する10個の凸形状の頂点間隔を測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。凸形状が2種類以上である場合は、第1の凸形状と第2の凸形状の頂点間隔を測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。
【0077】
(2)接触角及び転落角
接触角及び転落角は、シートおよび成形したトレー容器の底面部について、自動接触角計DM−501(協和界面科学社製)を用いて測定した。また、試験液はサラダ油(日清オイリオグループ社)、ハンドソープ「キレイキレイ」(ライオン社製)、乳液「雪ごこち」(ロート製薬)、絵具「黒」(ぺんてる社製)を用い、滴下量は、接触角測定時は8μL、転落角測定時は20μLとした。
シートの場合は、接触角が130°以上であると撥液性が高く、液体の付着を防止できると判定できる。また転落角が40°以下であると撥液性が高く、液体の付着を防止できると判定できる。トレー容器の場合は、接触角が120°以上であると撥液性が高く、液体の付着を防止できると判定できる。また転落角が70°以下であると撥液性が高く、液体の付着を防止できると判定できる。
【0078】
(3)シール性評価
成形したトレー容器のフランジ部(
図8参照)を切り取り、ヒートシールテスター(佐川製作所製)を用いてヒートシールを実施した。ヒートシールテスターのシールコテ幅は1.0mmのものを使用し、シール材はミルクポーション容器に用いられている蓋材(PET樹脂とアルミニウム箔の積層体を基材とし、シーラント剤にアクリル系樹脂またはポリエステル系樹脂を用いた蓋材、厚さ:80μm)を使用した。シール温度は210℃であり、シール圧は0.36MPaである。また、剥離強度はストログラフVE1D(東洋精機社製)を用いて、ストログラフの一方のチャック部に蓋材を挟み、もう一方のチャック部にはシートサンプルを挟んで測定した。剥離速度は200mm/minである。剥離強度が2.8N以上であると、シール性が良好であると判定できる。
【0079】
(4)厚み比
成形したトレー容器のフランジ部の厚みに対する底面部(
図8参照)の厚みを、下記の式で算出した。
厚み比=底面部の厚み/フランジ部の厚み
【0080】
(5)凸形状高さの低下率
凸形状高さの低下率は、成形に用いた樹脂シートおよび成形したトレー容器の底面部の凸形状高さを、レーザー顕微鏡を用いて測定し、下記の式で算出した。低下率が30%以下であると、成形前後で凹凸形状が維持されていると判定できる。
凸形状高さの低下率=[(樹脂シートの凸部高さ)−(トレー容器の底面部凸部高さ)]/樹脂シートの凸部高さ×100(%)
【0081】
(6)メルトマスフローレート
JIS K 7210に準拠し、試験温度:230℃、荷重:2.16Kgの条件下で、測定した。使用した試験機器はメルトインデックサ F−F01(株式会社東洋精機製作所製)を用いた。
【0082】
(7)酸素透過率
シートの酸素透過率は、OX−TRAN酸素透過率測定装置(Mocon社製)を用いて、JIS K7126−B法に準拠し、温度25℃、相対湿度65%の測定条件下で測定した。酸素透過率が3.0ml/m
2・day・atm未満であると酸素バリア性が良好であると判定できる。
【0083】
<実施例1(
図1の層構成)>
1台の65mm単軸押出機を使用し、Tダイ法により、樹脂シートを押し出した。この押出しシートを、レーザー彫刻法で表面に凹凸形状を付与した転写ロールとタッチロールでキャスティングし、表面に凹凸形状を付与した凹凸形状層からなる樹脂シートを得た。
【0084】
上記で得た凹凸形状を付与した樹脂シートを、電子線照射装置(岩崎電気社製)を用いて、加速電圧:200kV、線量:250kGyの照射条件で電子線照射し、凹凸形状層の架橋処理を実施した。電子線照射前後の樹脂シートの破断点伸び率を測定したところ、電子線照射前の破断点伸び率は700%であったが、電子線照射後の破断点伸び率は10%であった。なお、破断点伸び率は樹脂シートの押出方向に打ち抜いたJIS2号ダンベルを5本作製し、23±1℃、相対湿度50±2℃の条件下、引張速度10mm/分で引張った際に破断するまでの伸び率を算術平均した値である。
【0085】
ついで、凹凸形状層の表面に撥液層を形成するために、疎水性シリカとフッ素系共重合体樹脂を、撥液層中の疎水性シリカが66質量%、フッ素系共重合体樹脂が34質量%となるように混合した分散液(溶媒は精製水/イソプロピルアルコールの混合液)を作製した。この混合分散液を、バーコーターを用いて、コロナ処理した凹凸形状層表面にコーティングし、これを90℃〜150℃で乾燥させて撥液層を形成させた。この凹凸形状層の表面に撥液層を形成した樹脂シートの組成を表1に示した。
【0086】
また、上記のようにして作製した樹脂シート、成形したトレー容器について、その各種特性を前述の方法によって評価した。結果を表2、表3に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
<実施例2〜12、比較例1〜7>
凹凸形状層及び撥液層の組成、厚み、MFRを、表1に示すように設定した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜12及び比較例1〜7に係る樹脂シートを作製し、またその樹脂シートを成形したトレー容器を用いて、実施例1におけるものと同様の評価試験を実施し、結果を表2、3に示した。
【0091】
なお、比較例1では撥液層を形成せず、比較例2では凹凸形状を付与していない。比較例3では疎水性シリカを含有せず、比較例4では撥液層にフッ素系共重合体樹脂が用いられていない組成である。比較例5では撥液層に疎水性の表面処理を実施していないシリカを用いた組成であり、比較例6では凹凸形状が釣鐘型の樹脂シートでHIPS樹脂のみ用いた組成であり、比較例7は電子線照射を実施していない。
【0092】
表2に示した結果から以下のことが明らかになった。実施例1〜12の全てにおいて、樹脂シートでの各液体に対する撥液性(接触角、転落角)凸形状高さの低下率に関する評価基準を全て満足する結果が得られた。これに対して、比較例1〜4、6、7では、樹脂シートは精製水以外の液体が転がらなかった。比較例5では、すべての液体が転がらなかった。
【0093】
<実施例13(
図5の層構成)>
3台の40mm単軸押出機を使用し、フィードブロック法により、凹凸形状層80μm、シーラント樹脂層40μm、基材層(ナイロン系樹脂)380μmという層構成をこの順で有する、厚み500μmの多層樹脂シートをTダイ法より押し出した。
【0094】
上記で得た押出シートは、レーザー彫刻法で表面に凹凸形状を付与した転写ロールとタッチロールでキャスティングし、シート表面に凹凸形状を付与した多層樹脂シートを得た。
【0095】
上記で得た凹凸形状を付与した樹脂シートを、電子線照射装置(岩崎電気社製)を用いて、加速電圧:200kV、線量:250kGyの照射条件で電子線照射し、凹凸形状層の架橋処理を実施した。
【0096】
ついで、凹凸形状層の表面に撥液層を形成するために、疎水性シリカとフッ素系共重合体樹脂を、疎水性シリカが66質量%、フッ素系共重合体樹脂が34質量%となるように混合した分散液(溶媒は精製水及びイソプロピルアルコールの混合液)を作製した。この混合分散液を、バーコーターを用いて、コロナ処理した凹凸形状層表面にコーティングし、これを90℃〜150℃で乾燥させて撥液層を形成させた。この凹凸形状層の表面に撥液層を形成した樹脂シートの各層の組成、層構成を表4に示した。
【0097】
【表4】
【0098】
また上記のようにして作製した樹脂シート、成形したトレー容器について、その各種特性を前述の方法によって評価した。結果を表5、6に示す。
【0099】
【表5】
【0100】
【表6】
【0101】
<実施例14〜24、比較例8、10〜14>
凹凸形状層、撥液層、及びその他の多層樹脂シート各層の組成、厚み、MFRを、表4に示すように設定した以外は実施例13と同様にして、実施例14〜24及び比較例8、10〜14に係る樹脂シートを作製した。その樹脂シートを成形したトレー容器を用いて、実施例13におけるものと同様の評価試験を実施し、結果を表5、6に示した。
【0102】
なお、比較例9では撥油層を形成していない。比較例10では凹凸形状層にMFRが1.1g/10minのポリエチレンを用いたため、転写性が不良であり、比較例11では撥液層に疎水性シリカが用いられていない組成である。比較例12では撥液層にフッ素系共重合体樹脂を用いていない組成であり、比較例13では撥液層に疎水性の表面処理を実施していないシリカを用いた組成であり、比較例14は電子線照射を実施していない。
【0103】
表5、6に示した結果から以下のことが明らかになった。実施例13〜24の全てに、樹脂シートでの各液体に対する撥液性(接触角、転落角)、凸形状高さの低下率、シール性に関する評価基準を全て満足する結果が得られた。これに対して、比較例8、10〜12、14では、精製水以外の液体が転がらなかった。また、比較例13ではすべての液体が転がらず、高線量のため、シールが出来なかった(シールコテで凸形状が潰れない)。
【0104】
<実施例25(
図6の層構成)>
2台の40mm単軸押出機を使用し、フィードブロック法により、凹凸形状層90μm、基材層610μmという層構成を有する、厚み700μmの樹脂シートをTダイより押し出した。なお、基材層として、耐衝撃性ポリスチレン樹脂と水添スチレン熱可塑性エラストマーを質量比95/5(HIPS/水添スチレン系熱可塑性エラストマー)で混合したものを用いた。上記で得た押出シートについて、実施例13と同様の評価試験を行った。結果を表5および6に示す。
【0105】
<実施例26、比較例9>
凹凸形状層、撥液層、スチレン系樹脂層の組成、厚み、MFRを、表3に示すように設定した以外は実施例25と同様にして、実施例26及び比較例9に係る樹脂シートを作製し、その特性の評価結果を表5および6に示した。なお、比較例9は凹凸形状を付与していない組成である。
【0106】
表5および6に示した結果から以下のことが明らかになった。実施例25〜26においては、樹脂シートでの各液体に対する撥液性(接触角、転落角)、凸形状高さの低下率、シール性に関する評価基準を全て満足する結果が得られた。これに対して、比較例9では、精製水以外の液体は転落しない結果となった。
【0107】
<実施例27(
図7の層構成)>
5台の40mm単軸押出機を使用し、フィードブロック法により、凹凸形状層80μm、第1のシーラント樹脂層10μm、酸素バリア性樹脂層15μm、第2のシーラント樹脂層10μm、基材層385μmをこの順で有する、厚み500μmの多層樹脂シートをTダイより押し出した。
【0108】
上記で得た押出しシートは、レーザー彫刻法で表面に凹凸形状を付与した転写ロールとタッチロールでキャスティングし、シート表面に凹凸形状を付与した樹脂シートを得た。
【0109】
上記で得た凹凸形状を付与した樹脂シートを、電子線照射装置(岩崎電気社製)を用いて、加速電圧:200kV、線量:250kGyの照射条件で電子線照射し、凹凸形状層の架橋処理を実施した。
【0110】
ついで、凹凸形状層の表面に撥液層を形成するために、疎水性シリカとフッ素系共重合体樹脂を、疎水性シリカが66質量%、フッ素系共重合体樹脂が34質量%となるように混合した分散液(溶媒は精製水及びイソプロピルアルコールの混合液)を作製した。この混合分散液を、バーコーターを用いて、コロナ処理した凹凸形状層表面にコーティングし、これを90℃〜150℃で乾燥させて撥液層を形成させた。各層の構成を表7に、評価結果を表8および表9に示す。
【0111】
【表7】
【0112】
【表8】
【0113】
【表9】
【0114】
<実施例28〜39、比較例15〜21>
凹凸形状層、撥液層、その他の多層樹脂シート各層の組成、厚み、MFRを、表7に示すように設定した以外は実施例27と同様にして、実施例28〜39及び比較例15〜21に係る樹脂シートを作製した。
【0115】
なお、比較例15では撥液層を形成せず、比較例16では凹凸形状を付与していない。比較例17では凹凸形状層にMFRが1.1g/10minのポリエチレンを用いたため、転写性が不良であり、比較例18では撥液層に疎水性シリカが用いられていない組成である。比較例19ではフッ素系共重合体を用いていない組成であり、比較例20では撥液層に疎水性の表面処理を実施していないシリカを用いた組成であり、比較例21は電子線照射を実施していない。
【0116】
表8および9に示した結果から以下のことが明らかになった。実施例27〜39の全てに、シートでの各液体に対する撥液性(接触角、転落角)、凸形状高さの低下率、シール性、酸素バリア性に関する評価基準を全て満足する結果が得られた。これに対して、比較例15〜19、21では精製水以外の液体は転落しない結果となった。また、比較例20ではすべての液体が転がらず、高線量のため、シールが出来なかった(シールコテで凸形状が潰れない)。
【0117】
以上、様々な実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。