特許第6641286号(P6641286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6641286ハイブリッドイオン交換材料およびその作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6641286
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】ハイブリッドイオン交換材料およびその作成方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/08 20060101AFI20200127BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20200127BHJP
   B01J 41/02 20060101ALI20200127BHJP
   B01J 41/18 20060101ALI20200127BHJP
   B01J 47/02 20170101ALI20200127BHJP
【FI】
   B01J20/08 C
   B01J20/30
   B01J41/02
   B01J41/18
   B01J47/02
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-555359(P2016-555359)
(86)(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公表番号】特表2017-511248(P2017-511248A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】US2016019279
(87)【国際公開番号】WO2016140843
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2016年8月30日
【審判番号】不服2018-13353(P2018-13353/J1)
【審判請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】14/637,786
(32)【優先日】2015年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516260785
【氏名又は名称】グレイバー テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(74)【代理人】
【識別番号】100213746
【弁理士】
【氏名又は名称】川成 渉
(72)【発明者】
【氏名】ノール、ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン、ケイティ
(72)【発明者】
【氏名】ボートン、アナトーリー
【合議体】
【審判長】 菊地 則義
【審判官】 豊永 茂弘
【審判官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−29903(JP,A)
【文献】 特開2004−113838(JP,A)
【文献】 特開2007−284757(JP,A)
【文献】 特開2002−307074(JP,A)
【文献】 特開2012−40544(JP,A)
【文献】 CARBON,2009年 9月13日,Vol.48,p.333−343
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/08
B01J 20/30
B01J 41/02
B01J 41/18
B01J 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭担体と、
チタンおよび鉄を含むドーピング多価金属酸化物とアルミナを含む、沈殿させた混合酸化物
ら構成され、
前記混合酸化物はフッ素イオン、リンのオキシアニオン、またはヒ素のオキシアニオンを選択的に吸着するように構成され
前記混合酸化物はナノサイズの粒子として沈殿することにより活性炭担体の細孔に充満または沈着される、
ハイブリッドイオン交換材料。
【請求項2】
前記混合酸化物のアルミナは、オクタヘドラル、ペンタヘドラル、またはテトラヘドラル配位、或いはそれらの組合せである、請求項1に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項3】
前記吸収剤における混合酸化物の含有量は5重量%から30重量%である、請求項1に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項4】
前記吸収剤における混合酸化物の含有量は10重量%から20重量%である、請求項1に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項5】
前記混合酸化物におけるアルミナの含有量は20重量%から80重量%である、請求項1に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項6】
前記混合酸化物におけるアルミナの含有量は50重量%から80重量%である、請求項1に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項7】
前記活性炭担体は、顆粒、粉末、または成形炭ブロック形態である活性炭を含む、請求項1に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項8】
ハイブリッドイオン交換材料は、450℃で2時間焼成した後、イオン交換能の40%、またはそれ以上を喪失することのない特性を備える、請求項1に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項9】
イオン交換材料1gにつきフッ素イオン10mgから25mgを吸着することができるイオン吸着能を備える、請求項1に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項10】
pH5〜6の範囲においてイオン交換材料1gにつき血液透析液から少なくともリンのオキシアニオンPO4 50mgを吸着することができるイオン吸着能を備える、請求項1に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項11】
pH7から8の範囲においてイオン交換材料1gにつきヒ素のオキシアニオンAsO4 10mgから25mgを吸着することができるイオン吸着能を備える、請求項1に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項12】
前記材料は、フッ素イオン並びにヒ素およびリンのオキシアニオンの選択的な吸着に用いられる個々のドーピング多価金属酸化物の80%、またはそれに等しい能力を備える、請求項1に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項13】
ペンタヘドラル配位アルミナの量は10%から30%であり、テトラヘドラル配位アルミナの量は5%から15%である、請求項に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項14】
前記活性炭担体は700〜2000m2/gの範囲の表面積、および0.6〜1.6cm3/gの範囲の細孔容積を備える、請求項に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項15】
H6から7の全範囲においてイオン交換材料1gにつきフッ素イオン10mgから25mgを吸着することができる吸着能を備える、請求項に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【請求項16】
前記ドーピング多価金属酸化物はジルコニウム、錫、セリウム、ランタンまたはマンガン、或いはそれらのいずれかの組合せを含む、請求項1に記載のハイブリッドイオン交換材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として医療および食品産業において適用するための、飲料水、工業用水および排水から、分子(有機)およびアニオン性(フッ素イオン並びにリンおよびヒ素のオキシアニオン)種を選択的に除去する力の高まりを有する高能力ハイブリッドイオン交換材料に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は、数十年間、異なった水処理用途に広範に使用されている。例えば、活性炭は揮発性有機化合物、農薬、臭気、および不快な味を効果的に除去できるように家庭用浄水装置に存在している。活性炭の吸着性能、能力、および選択性は種々の要因によって決まる。最も重要なパラメータは、a)600m2/gから2000m2/gまで変化できる表面積、b)0.5cm3/gから1.5cm3/gまで変化できる総細孔容積、および、c)細孔径分布を含む。
【0003】
2nmより小さい細孔径を有する微小孔性活性炭は小さな有機分子、およびクロロホルムのような揮発性有機化合物について高親和性を示すが、細孔径の排他的な機構によってより大きな有機化合物を吸い上げない。2nmから50nmの細孔径を有するメソ多孔性活性炭は、鉛のコロイド粒子を含むコロイド粒子と同じく、農薬や除草剤のような大きな有機分子について高親和性を有している。
【0004】
活性炭の良好に満たされた表面は、ヒ素のオキシアニオンを含む一部のアニオンを吸収できる弱アニオン交換体を提供する。活性炭のアニオン交換能は、異なった水流からAs、P、V、Sb、Cr、Se等のアニオンを選択的に除去するのに使用される多価金属(Fe、Ti、Zr等)水和酸化物と比べると非常に小さい(例えば、C.B. Amphlett 著「Inorganic Ion Exchangers」、出版 Esevier、New York (1964) 参照)。
【0005】
活性炭のアニオン交換性能を改善するために、種々の多価金属水和酸化物を含浸させて複合イオン交換材料にすることが提案され実施されている。活性無機成分を追加するために、さまざまな含浸技術(過剰な金属含有溶液、初期の湿気、化学蒸着、等)と同様に、粉末から顆粒まで、マイクロポーラスからメソポーラスまでの範囲の種々のタイプの活性炭が試みられてきた。さらに、Fe、Zr、Ti、Al等の水和酸化物が活性媒体として試みられている(例えば、米国特許第4,178,270号、米国特許第4,692,431号、米国特許第5,277,931号、米国特許第5,948,265号、米国特許第6,914,034号、米国特許第7,378,372号、米国特許第7,429,551号、米国特許第7,572,380号、米国特許第8,178,065号、米国特許第8,242,051号、米国特許公開第2014/0021139号、英国特許第1581993号、および、欧州特許出願第0815939号参照)。
【0006】
一般に、複合材料のアニオン交換特性は、基準能力が無機酸化物の含有量の増加に伴ってある点まで増加するので、選択される含浸酸化物の種類によって決まる;しかしながら、ドーパント酸化物の量と能力の間の相関関係は、多くの場合、能力が細孔内に形成される特定の金属酸化物の相/構造の機能であり、そして、同じ多価金属酸化物を同様に載荷しても大きく変化するので、普遍的ではない。さらに、活性金属酸化物成分が活性炭担体の細孔に沈着されるので、高い値の載荷は結果として活性炭の細孔を塞いでしまい、それ故、有機分子の除去効果を減じてしまう。換言すると、複合吸収剤のイオン交換能を最高点以上に増加しようとする試みは有機物について容量を減じることにより行われる。10重量%から20重量%の多価金属酸化物の好適な載荷が、有機と無機の両方の種を効果的に除去する可能性を複合媒体に提供することを実験的に示されている;しかし、最高に可能な載荷であっても、ドーパントとして使用される個々の多価金属水和酸化物のイオン交換能に近似または等しいイオン交換能を有する吸収剤を生み出さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,178,270号明細書
【特許文献2】米国特許第4,692,431号明細書
【特許文献3】米国特許第5,277,931号明細書
【特許文献4】米国特許第5,948,265号明細書
【特許文献5】米国特許第6,914,034号明細書
【特許文献6】米国特許第7,378,372号明細書
【特許文献7】米国特許第7,429,551号明細書
【特許文献8】米国特許第7,572,380号明細書
【特許文献9】米国特許第8,178,065号明細書
【特許文献10】米国特許第8,242,051号明細書
【特許文献11】米国特許公開第2014/0021139号公報
【特許文献12】英国特許第1581993号公報
【特許文献13】欧州特許出願第0815939号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】C.B. Amphlett 著「Inorganic Ion Exchangers」、出版 Esevier、New York (1964)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術における課題と欠点に鑑み、本発明の目的は、フッ素イオンおよびヒ素およびリンのオキシアニオンの選択的な吸着に使用される、有機分子に対する高い親和性および能力(好ましくは、非ドープ支持体の少なくとも80%)と、個々の金属含水酸化物に近似(少なくとも80%)または等しい高い親和性および能力とを保有する費用効果の良い複合炭素−無機物吸収剤(粉末、顆粒、または成形物)を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
当業者にとって明らかとなる上述の課題はハイブリッドイオン交換材料を指向する本発明において達成され、それは、活性炭担体と、アルミナを含む混合酸化物と、チタン、ジルコニウム、錫、セリウム、ランタン、鉄、またはマンガン、或いはそれらのいずれかの組合せを含むドーピング多価金属酸化物とから構成され、混合酸化物またはドーピング多価金属酸化物或いは両者は有機分子、フッ素イオン、またはリンおよびヒ素のオキシアニオンを選択的に吸着するように構成される。
【0011】
アルミナ質混合酸化物は活性炭担体の細孔に含浸または沈着されるのが好ましく、オクタヘドラル、ペンタヘドラル、またはテトラヘドラル配位、或いはそれらの組合せでもよい。ペンタヘドラル配位アルミナの含有量は約10%から約30%であり、テトラヘドラル配位アルミナの含有量は約5%から約15%である。
【0012】
吸収剤における混合酸化物の含有量は好ましくは約5重量%から約30重量%であり、より好ましくは約10重量%から約20重量%である。
【0013】
混合酸化物におけるアルミナの含有量は好ましくは約20重量%から約80重量%であり、より好ましくは約50重量%から約80重量%である。
【0014】
活性炭担体は、顆粒、粉末、または成形炭ブロック形態である活性炭を含む。
【0015】
ハイブリッドイオン交換材料は、約450℃で2時間焼成した後、イオン交換能の40%、またはそれ以上を喪失することはない。
【0016】
フッ素イオンについてのイオン交換材料の吸着能は、イオン交換材料1gにつき約10mgのフッ化物(以下、「○○mg F」のように表記する。)からイオン交換材料1gにつき約25mg Fである。
【0017】
PO4 イオンについてのイオン交換材料の吸着能は、約5〜6の範囲のpH値で、血液透析液からイオン交換材料1gにつき少なくとも50mg PO4 である。
【0018】
ヒ酸塩イオンについてのイオン交換材料の吸着能は、約7から8の範囲のpH値で、イオン交換材料1gにつき約10mg AsO4 からイオン交換材料1gにつき約25mg AsO4 である。
【0019】
ハイブリッドイオン交換材料は、フッ素イオン並びにヒ素およびリンのオキシアニオンの選択的な吸着に用いられる個々の金属水和酸化物の約80%、または等しい能力を有する。
【0020】
アルミナ質混合酸化物は、ナノ寸法の粒子として活性炭担体細孔に含浸または沈着される。
【0021】
活性炭担体は700〜2000m2/gの範囲の表面積、および0.6〜1.6cm3/gの範囲の細孔容積を備える。
【0022】
第2の観点において、本発明はハイブリッドイオン交換材料を作成するための方法を指向しており、それは:(a)多孔性活性炭支持体の粉末または顆粒を用意し;(b)アルミニウム含有混合酸化物前駆体の水溶液を多孔性活性炭支持体の粉末または顆粒に噴霧し;(c)含浸された支持体を乾燥し;(d)含浸された活性炭支持体の顆粒または粉末を支持体細孔内の酸性のアルミニウム含有混合酸化物先躯体を中和するのに十分なpHで基剤試薬の溶液と接触させて細孔内にナノ寸法の水和混合酸化物を形成し;(e)吸蔵された電解液を取り除くようにハイブリッドイオン交換材料を水で洗浄し;そして(f)ハイブリッドイオン交換材料をLOD約10%以下となるまで乾燥する、ことから構成される。
【0023】
アルミニウム含有混合酸化物先躯体は硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、またはそれらの組合せを含む水溶性化合物を含む。
【0024】
本方法はさらに、水溶性硝酸塩、塩化物、チタンの硫酸塩、ジルコニウム、錫、セリウム、ランタン、鉄、マンガン、またはそれらの組合せにより構成される多価金属化合物を沈着することを含む。
【0025】
含浸された活性炭支持体の顆粒または粉末は、アルカリ性水酸化物、水酸化アンモニウム、アルカリ性炭酸塩、炭酸アンモニウム、またはそれらの組合せを含む基剤溶液を用いて約4〜10の範囲のpH値で処理される。
【0026】
多孔性活性炭支持体の粉末または顆粒は、吸収された水を細孔から物理的に排出するように予め乾燥される。
【0027】
アルミニウム含有混合酸化物先躯体の水溶液を多孔性活性炭支持体の顆粒または粉末に噴霧する工程は、支持体の開放細孔の容積の90%になるまで開放細孔を充満するのに十分な量で行われる。
【0028】
含浸された支持体を乾燥する工程は、好ましくは、加えられた水の40%から60%が除去されるまで行われる。
【0029】
本発明の新規と信ずる特徴および本発明特有の構成要素は特に添付の請求の範囲に述べられている。図面は例示だけを目的とするものであり、縮尺に従って描かれてはいない。しかしながら、本発明自体は、機構および稼働方法の両者について、添付の図面と併せて以下に述べる詳細な説明を参照することにより理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、試験材料のイオン交換特性を示す。
図2図2は、実施例1〜4のために用意されたアルミナ水酸化物およびハイブリッド材料のAl−27 MAS NMRスペクトルを示す。
図3図3は、実施例1、TiO2 、およびAl2 3 の種々のベッド体積についてのAs除去(ppb)の比較試験結果を示す。
図4図4は、実施例1、TiO2 、およびAl2 3 の種々のベッド体積についてのフッ化物除去(ppb)の比較試験結果を示す。
図5図5は、実施例1の混合酸化物に吸収するAl2 3 およびフッ素イオンの熱処理効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の好適な実施形態の説明において、参照すべき図1〜5の図面では、本発明の同様な機能部分に同様な参照符号が付されている。
【0032】
従来技術の欠点は本発明の吸収剤によって克服することができる。本発明は、広いpH範囲で、かつ、フッ素イオン並びにヒ素およびリンのオキシアニオンを選択的に吸着するのに用いられる個々の金属水和酸化物に近似(少なくとも80%)または同等な能力を有する大過剰な競合イオンの存在下で、有機分子と同時に、フッ素イオン並びにリンおよびヒ素のオキシアニオンに対して高い親和性および能力を示すハイブリッドイオン交換材料を指向するものである。
【0033】
ハイブリッドイオン交換材料は、特定の比率でテトラ−、ペンタ−およびオクタヘドラル配位で存在し、そしてチタン、ジルコニウム、錫、セリウム、ランタン、マンガン、またはそれらの組合せのいずれかの構成要素のグループから選択された多価金属の酸化物をドープする、アルミナを含むナノ寸法の混合酸化物を含浸させ活性炭支持体で構成される。ハイブリッドイオン交換材料は、おおよそ700〜2000m2/gの表面積およびおおよそ0.6〜1.6cm3/gの細孔容積を有する顆粒、粉末、または成形(例えば、押出成形カーボンブロック)形状にできる。
【0034】
本発明の特有な態様を参照すると、ハイブリッドイオン交換材料は混合酸化物の約5重量%から約30重量%、好ましくは、約10重量%から約20重量%を含む。
【0035】
本発明の別の態様では、混合酸化物吸収剤は約20重量%から約80重量%、好ましくは、約50重量%から約80重量%のアルミナを含む。
【0036】
本発明の別の特徴は、混合酸化物のアルミニウムがテトラヘドラル、ペンタヘドラル、およびオクタヘドラル配位で存在し、ペンタヘドラル配位のアルミニウムの含有量は約10%から約30%、テトラヘドラル配位のアルミニウムの含有量は約5%から約15%である。
【0037】
本発明の予期し得ない結果は混合酸化物と活性炭支持体の間の強力な相乗作用であり、同じ条件で試験したとき、フッ素イオン並びにリンおよびヒ素のオキシアニオンに対する複合媒体のアニオン交換能が、含浸に用いられる個々の多価金属水和酸化物の能力の少なくとも80〜100%になる。ハイブリッドイオン交換材料はフッ素イオンに対し、約7から6のpH範囲で、イオン交換材料1gにつき約10mg Fからイオン交換材料1gにつき約25mg Fの能力を有する。ハイブリッドイオン交換材料はヒ素イオンに対し、約7から8のpH範囲で、イオン交換材料1gにつき約10mg AsO4 からイオン交換材料1gにつき約25mg AsO4 の能力を有する。ハイブリッドイオン交換材料は血液透析液からのPO4 イオンに対し、約5〜6のpH範囲で、イオン交換材料1gにつき少なくとも50mg PO4 の能力を有する。
【0038】
追加の特徴は、本発明のハイブリッドイオン交換材料が450℃で2時間の焼成後でも40%未満のイオン交換能の低下を示すことである。
【0039】
本発明の別の実施形態は、ハイブリッドイオン交換材料の製造方法を指向するものであり、それは:
a.吸収した水を細孔から物理的に排除するように予め乾燥された多孔性活性炭支持体 の粉末または顆粒を用意する;
b.支持体の開放細孔の量の90%まで充満するのに十分な量のアルミニウム含有混合 酸化物先躯体の水溶液を多孔性活性炭支持体の顆粒または粉末に噴霧する。この作 業は、基本的に沈着物のない支持体表面を離れて可溶性先躯体を特に活性炭の細孔 に導き入れることを可能にする。;
c.加えられた水の40%から60%が除かれるまで含浸された支持体を乾燥する。こ の作業は、可溶性混合酸化物先躯体を濃縮して細孔内面に均等に分散させることを 可能にする;
d.支持体細孔内の酸性アルミニウム含有混合酸化物先躯体を中和するのに十分なpH 値で、含浸された活性炭支持体の顆粒または粉末を基剤試薬と接触させて細孔内に ナノ寸法の水和混合酸化物のエレメントを形成する。薄層の混合酸化物の沈降位置 では、細孔寸法に制限されることのない標準的沈殿において数百ナノメートルから 数十ミクロンの寸法を有する大きな初期の粒子凝集体とは対照的に、ナノ寸法の混 合酸化物粒子を形成することが可能である;
e.吸蔵された電解液を除去するようにハイブリッドイオン交換材料を水で洗浄する; そして
f.材料の総変換重量が10%以下となるまで乾燥減量方法(LOD)を介してハイブ リッドイオン交換材料を乾燥する。
【0040】
本方法のアルミニウム含有混合酸化物先躯体の溶液を具体的に言うと、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびそれらの組合せを含む水溶性化合物が用いられ、そして水溶性硝酸塩、塩化物、チタンの硫酸塩、ジルコニウム、錫、セリウム、ランタン、鉄、マンガン、またはそれらの組合せを含む多価金属化合物が用いられる。混合酸化物先躯体溶液のアルミナ含有量は総体的に約20重量%から約80重量%、好ましくは約50重量%から約80重量%である。
【0041】
本方法のまた別の特徴は、含浸された活性炭支持体の顆粒または粉末が、アルカリ性水酸化物、水酸化アンモニウム、アルカリ性炭酸塩、炭酸アンモニウム、およびそれらの組合せから選択された基剤溶液で、好ましくは4〜7の範囲のpH値で、処理されることである。
【0042】
例示の目的だけのために提示され、請求の範囲に記載された発明を限定するものではない後述の実施例を参照して本発明をより具体的に説明する。
【実施例1】
【0043】
活性炭支持体の準備は、吸収された水分を担体細孔から物理的に排除するために、100gの木質系粉末カーボン(好ましくは、表面積1600m2/g、細孔容積1.1cm3/g、フラクション45〜150μmを有する)を150℃で数時間、乾燥することを含む。
【0044】
混合酸化物先躯体溶液100mLの準備は、56.25gのAl(NO3 )3・9H2O、33.9gの15.0重量%(TiO2 として)の硫酸チタニル溶液、および25gの脱イオン水を混合することを伴う。
【0045】
次いで、乾燥活性炭粉末100gが機械的混合機に装着された500mLのガラスビーカーに入れられ、そして混合持続中に、用意された混合酸化物先躯体100mLが噴霧される。全部の先躯体溶液を加えた後、活性炭は乾燥状態の「自由流動」粉末として残る。
【0046】
約215gの総重量を有する含浸活性炭は、100℃の電気オーブンに入れ、重量が185gに減少するまで乾燥された。この作業は、カーボン細孔中に含まれる水の約50%を除去する。熱的に処理された含浸活性炭は、次いで、機械的混合機に装着されそして1MのNaHCO3 溶液500mLを含む1Lのガラスビーカーへ、少量、約25〜30g毎に、移される。反応混合物のpHは、必要ならば、NaOHの25%溶液を加えることにより、約7.2〜7.8の範囲に維持される。すべてのカーボン粉末が中和溶液に加えられると、反応システムは、中和処理を完成して支持体の細孔内にナノ寸法のアルミニウム系混合酸化物の種を形成するように、1時間混合状態に置かれる。中和されたカーボンはフィルタを介して溶液から分離され、そして過剰に吸蔵された電解液を取り除くために、脱イオン水で洗浄される。洗浄された製品は、次いで、約8%のLODを定着するように、100℃の電気オーブンで乾燥される。
【0047】
活性炭に装着する混合酸化物の総量は11重量%(空気中で1100℃で6時間、製品を灰化して決定)である。活性炭細孔に載荷される混合酸化物は60重量%のAl23 と40重量%のTiO2 を含有する。ハイブリッドイオン交換材料の表面積はおよそ1380m2/gであり、総細孔容積は約0.95cm3/gである。材料のイオン交換特性は図1に示す表に纏められている。
【実施例2】
【0048】
活性炭支持体の準備は、吸収された水分を担体細孔から物理的に排除するために、100gの木質系粉末カーボン(好ましくは、表面積1600m2/g、細孔容積1.1cm3/g、フラクション45〜150μmを有する)を150℃で数時間、乾燥することを含む。
【0049】
混合酸化物先躯体溶液100mLの準備は、70.0gのAl(NO3 )3・9H2O、16.9gの15.0重量%(TiO2 として)の硫酸チタニル溶液、1.75gのMnSO4・H2O、および20gの脱イオン水を混合することを伴う。
【0050】
次いで、乾燥活性炭粉末100gが機械的混合機に装着された500mLのガラスビーカーに入れられ、そして混合持続中に、混合酸化物先躯体100mLが噴霧される。すべての先躯体溶液を加えた後、活性炭は乾燥状態の「自由流動」粉末として残る。
【0051】
約209gの総重量を有する含浸活性炭は、100℃の電気オーブンに入れ、重量が185gに減少するまで乾燥された。この作業は、カーボン細孔中に含まれる水の約50%を除去する。熱的に処理された含浸活性炭は、次いで、機械的混合機に装着されそして1MのNaHCO3 溶液500mLを含む1Lのガラスビーカーへ、少量、約25〜30g毎に、移される。反応混合物のpHは、必要ならば、NaOHの25%溶液を加えることにより、約7.2〜7.8の範囲に維持される。すべてのカーボン粉末が中和溶液に加えられると、反応システムは、中和処理を完成して支持体の細孔内にナノ寸法のアルミニウム系混合酸化物の種を形成するように、1時間混合状態に置かれる。中和されたカーボンはフィルタを介して溶液から分離され、そして過剰に吸蔵された電解液を取り除くために、脱イオン水で洗浄される。洗浄された製品は、次いで、約5%のLODを定着するように、100℃の電気オーブンで乾燥される。
【0052】
活性炭に装着する混合酸化物の総量は11重量%(空気中で1100℃で6時間、製品を灰化して決定)である。活性炭細孔に載荷される混合酸化物は75重量%のAl23 と20重量%のTiO2 と5重量%のMnO2 とを含有する。ハイブリッドイオン交換材料の表面積は1350m2/gであり、総細孔容積は0.95cm3/gである。材料のイオン交換特性は図1に示す表に纏められている。
【実施例3】
【0053】
混合酸化物先躯体溶液100mLの準備は、66.15gのAl(NO3 )3・9H2O、18.22gのFeCl3、および25gの脱イオン水を混合することからなる。活性炭の種類、活性炭支持体の準備、およびドーピング処理は実施例1で述べたのと同様である。
【0054】
ハイブリッドイオン交換材料は、LOD=5%まで乾燥される。活性炭に載荷する総混合酸化物は約15.5重量%である。活性炭細孔に載荷される混合酸化物は50重量%のAl23 と50重量%のFe23 を含む。ハイブリッドイオン交換材料の総面積は1220m2/gであり、総細孔容積は0.90cm3/gである。材料のイオン交換特性は図1の表に纏められている。
【実施例4】
【0055】
100mLの混合酸化物先躯体溶液の準備は、77.2gのAl(NO3 )3・9H2O、10gの30%Ce(NO3 )3(CeO2 における)溶液、6gの25%硝酸ジルコニル(ZrO2 における)溶液、および15gの脱イオン水を含む。活性炭の種類、活性炭支持体の準備、およびドーピング処理は実施例1で述べたのと同様である。
【0056】
乾燥させたハイブリッドイオン交換材料はLOD=7%を有する。活性炭へ載荷する総混合酸化物は13重量%である。活性炭へ載荷された混合酸化物は70重量%のAl23、20重量%のCeO2 および10重量%のZrO2 を含む。ハイブリッドイオン交換材料の表面積は1320m2/gであり、総細孔容積は0.95cm3/gである。材料のイオン交換特性は図1の表に纏められている。
【0057】
実施例1〜4について、用意された水酸化物アルミナおよびハイブリッド材料のAl−27 MAS NMRスペクトルは、Bruker Avance III 400MHz(商品名)スペクトロメータで記録され、図2の表に表わされている。
【実施例5】
【0058】
吸着実験は、接触時間18時間、バッチ条件下で行われた。吸着実験には以下の試験溶液が用いられた。
a. フッ素イオン − 10ppm F+2mM NaHCO3+2mM Na2S O4 、pH=6;
b. リン酸イオン − 96ppm PO4 、140mM Na、2mM K、1. 5mM Ca、0.5mM Mg、pH7.4;
および
c. ヒ酸塩イオン − 3.7ppm AsO4+2mM NaHCO3 、pH=8
【0059】
比較のために、商業的吸収剤、粒状酸化鉄(GFO)(Bayer AG社製)、MetSorb(登録商標)(Graver Technologies LLC社製)、活性化アルミナAA400(商品名)、およびジルコニウム水和酸化物が用いられた。
【実施例6】
【0060】
比較試験は、カラム条件下で、アルミニウム水和酸化物(AA400G)、チタン水和酸化物(MetSorb(登録商標))および実施例1のハイブリッドイオン交換体におけるヒ酸塩イオン除去で行った。吸着は、pH値8.3、流率100BV/hrを有する、300ppb As(V)を含む2mM NaHCO3 溶液から実施された。カラムは1.00gの媒体を含んでいた。図3は、実施例1、TiO2 、およびAl23 の種々の総容積についてのAs除去(ppb)の比較試験結果を表わしている。
【実施例7】
【0061】
比較試験は、カラム条件下で、アルミニウム水和酸化物(AA400G)、チタン水和酸化物(MetSorb(登録商標))および実施例1のハイブリッドイオン交換体におけるフッ素イオン除去で行った。吸着は、pH=8.3、流率100BV/hrを有する、6.5ppm Fを混ぜられた水道水を用いて実施された。カラムは1.00gの媒体を含んでいた。図4は、実施例1、TiO2 、およびAl23 の種々の総容積についてのフッ化物除去(ppb)の比較試験結果を表わしている。
【実施例8】
【0062】
実施例1の混合酸化物に吸収するAsO4 およびフッ素イオンへの熱的処理の効果は、図5の表にに示されている。ヒ素試験溶液はpH値8で3.7ppm AsO4 を含んでいた。フッ化物試験溶液はpH値7.5で水道水中に10ppm Fを含んでいた。接触時間は約18時間であった。
【0063】
本発明は、特に、特定の好適な実施形態と共に説明されたが、上述の説明を踏まえて多くの代替手段、修正および変更が可能であることは当業者にとって明らかである。それ故、添付の請求の範囲は本発明の範囲および主旨から逸脱することのないいかなる代替手段、修正および変更をも包含するものである。
図1
図2
図3
図4
図5